情報と地域 オープンソースと地域振興 ·...
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情報と地域-オープンソースと地域振興-
オープンソースとコミュニティ(1)
tetsuo.noda.18
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本日のAgenda
1.ソフトウェア開発の歴史とオープンソースUNIX,フリーソフトウェア運動とオープンソースの文化
2.コンピュータ産業の歴史とオープンソースIBM、Microsoft、そしてオープンソース
3.オープンソースの開発スタイルとビジネストランザクションコストの開発とビジネスの可能性
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティコミュニティの生産性とアメリカの世界戦略
1.ソフトウェア開発の歴史とオープンソース1-1 バッチ処理からタイムシェアリング UNIXの開発
• 1960年代からコンピュータを複数のユーザ
で共有し、擬似的に同時に複数のユーザが使える方法、タイム・シェアリング(TSS )の考え方が登場した。
• TSSの思想に基づいた最初のOSはMITとAT&Tベル研究所およびGEの共同プロジェクトとして始まり、1964年にMulticsとして開発。
• 1968年にはベル研究所のKen Thompson
とDennis MacAlistair Ritchieにより軽くて使いやすいOS、UNIXが開発されミニコンピュータに採用された 。
1.ソフトウェア開発の歴史とオープンソース1-2 分散処理とネットワーク インターネットへ
• 1974年にLANの思想がミニコンやUNIXマ
シンに普及し、大型コンピュータの端末としての機能だけをもつ端末型ワークステーションから専用のハードウェア構造とグラフィック処理能力を持つUNIXワークステーションとして一般化していく。
• また、UNIXのTSSの技術と相まって、コン
ピュータ・ネットワークを仕事の分散のために利用する方法も進んだ。
• ランド(Rand)研究所のPaul Baran(1926-
)が1964年に「分散ネットワークの概念」に基づく分散通信システムを考案した。
→ ARPANET → インターネット
1.ソフトウェア開発の歴史とオープンソース1-3 UNIXからフリーソフトウェア運動へ
• UNIXのソース・コードは世界中の大学や研究機関に非常に安価な値段で販売され、普及していった。
• UNIXが普及するにつれて多くの企業がAT&Tとライセンス契約を結んでUNIXを販売・サポートするビジネスに乗り出した。
• これに対し1984年にMITのRichard Matthew Stallman(1953-)がソース・コードを公開する考え方を進めたフリーソフトウェア運動・GNU プロジェクトを開始する。GNUプロジェクトによって多くのソフトウェアが開発・公開されたが、UNIX自体がまだ高価で、専門家が使うOSであったため、一般にはあまり関心をもたれなかった 。
1.ソフトウェア開発の歴史とオープンソース1-4 Linuxとオープンソース
• フィンランドのヘルシンキ大学の学生Linus Benedict
Torvalds(1969 -)は大学在学中の1991年、パーソナルコンピュータで動くUNIX互換OS=Linuxを開発した。
• LinuxはGNUプロジェクトを利用して開発されたので、LinusはLinuxのソース・コードを公開した。インターネットが本格的に普及し始めた時期でもあり、Linuxはインターネット経由で世界中の開発者を引き付け、改良とバージョンアップが加え続けられている。
• Linuxの普及以降、同様の開発スタイルのソフトウェアが次々と開発された。そして1997年にはEric Steven
Raymond(1957-)によってこのような開発スタイルがオープン・ソース(Open Source)と名づけられ、ソフトウェアの新しい開発のスタイルとして企業の関心を集めるようになった。
1.ソフトウェア開発の歴史とオープンソース1-5 オープンソースの歴史と「文化」
• Linuxに代表されるオープン・ソース・ソフトウェア(OSS)や、これによる新たなソフトウェアやシステムの開発はインターネットも利用して自主的に参加する人材が集まり、自由に利用できるソース・コードと、迅速な対応が可能となる 。また統一した規格や標準化もオープンな場で議論し、決めることが可能である。
• また、オープンソースの開発が、商用ソフトウェアの開発・市場化のアンチテーゼとして始まったフリー・ソフトウェア運動に起因していることもあり、大学を中心とした研究者の間には「科学的知識の産物であるソフトウェアがライセンスという特定の企業の管理下に置かれるのは間違っており、その成果は公開され自由に活用されるべきである」との考え方がある。
2.コンピュータ産業の歴史とオープンソース2-1 大型コンピュータの時代 IBMの市場支配(1960~70年代)
• プログラム言語の開発によってソフトウェアの応用分野が広がる一方ハードウェアは汎用化していく。1964年に発表されたIBM のSystem/360本格的なOS (OS/360)を搭載し、ハードウェアの仕様の違いをOSが吸収した。
• 一方、コンピュータ・ハードウェアを中心としたシステムは汎用化することによって本格的な量産化が可能になり、市場を拡大していくことになった。
• IBMのコンピュータ・システムの全体系を統合化するとともに、販売において包括レンタル価格方式によって、他の企業に対して高い参入障壁を形成し、コンピュータ産業全体を支配していった。
2.コンピュータ産業の歴史とオープンソース2-2 パーソナルコンピュータの登場とMicrosoftの市場支配(80年代~)
• パーソナル・コンピュータの登場と市場の拡大に対して、IBMもこの市場への参入を図り。1981年にIBM-PCの発売にこぎつけたがOSに採用されたのがMicrosoftのものであった。
• IBMがオープン・アーキテクチャー戦略をとったことで、IBM-PCのクローン製品や周辺機器、ソフトウェアが次々と発売され、IBM-PCの売上げを拡大することにつながった 。
• だがそれ以上に、OSの開発・販売者であるMicrosoft社のソフトウェア市場とコンピュータ業界における支配を強めていくことになった。
2.コンピュータ産業の歴史とオープンソース2-3 インターネットの登場、そしてオープンソース(90年代~2000年代)
• インターネットを中心とした情報ネットワーク網の普及によって、コンピュータハードウェアに続き、OSに依存しな
いソフトウェアの普及・配信が技術的に可能になってきた。
• ユビキタスやWeb2.0(あるいはSaaSやクラウドコンピューティング)
に象徴されるネットワークの活用や、そこへの「消費者」の「参加」を活用したビジネスがコンピュータ産業の中心になりつつある。
2.コンピュータ産業の歴史とオープンソース2-4 ネットワーク・参加型とオープンソース(そしてIBM)
• Web2.0に象徴される「参加型」による集合地の形成(Wikipedia)や、ビジネススタイル(GoogleやAmazon)は、同
じく参加型の開発スタイルを持つオープンソースと親和性を持っている、と言われている・・・・
• Googleや、日本でも楽天市場などWebでサービスを行う多くのオンラインショップはOSSを組み合わせてシステムの構築を行っている。
・オープンソースを最も積極的にサポートしているのはIBM,Google,Oracleなどの米国大手IT企業である。
3.オープンソースの開発スタイルとビジネス3-1 オープンソースとディストリビューションビジネス
• オープンソースは導入する企業にとってもコスト・ダウンのメリットがあるだけでなく、ソースコードが公開されているので、企業が新たに機能を付加したり、システムを構築するなどのビジネス機会を広げることになる
• 「製品(ソフト)は無料でも、サービス(展示・説明、受発注処理、決済、配送・伝送、品質保証、メンテナンス、サポート、インテグレーション、コンサルティング、教育、講演、およびそれらにより確立するブランドの活用など)を事業として課金することは全く自由だし、逆に製品が無料になれば、サービスがより重要となり発展することは十分に起こり得ることである。」(京都大学経営管理大学院・末松千尋教授)
3.オープンソースの開発スタイルとビジネス3-2 伽藍型からバザール型へ
• 従来のソフトウェア
• 開発に膨大な時間と莫大な投資が必要
• ソースコードは非公開、ソフトウェアも知的財産
• ウォーターフォールモデル
• 下請け・孫請け、委託・受託の連鎖
• オープンソース・ソフトウェア
• 自主的に参加する人材
• ソースコードを公開、標準化もオープンな場で
• 多数の企業、開発者の参加
企業
従来のソフト開発 オープンソース・ソフトウェア
プログラマーなど 企業
コミュニティ販売
公開・無償利用サポートビジネス
下請け・孫請け派遣
3.オープンソースの開発スタイルとビジネス3-3 オープンソースの開発スタイルとビジネス
中小企業のビジネス参加の可能性!
3.オープンソースの開発スタイルとビジネス3-4 オープンソースとトランザクションコスト
• オープンソース・ソフトウェアが導入される最大の理由はコスト削減である。企業はシステムインテグレーション提供をビジネスの中心に据える。
• トランザクションコストの概念。
• 供給側の企業にとってもこのトランザクションコストが新たな市場創造要因
生産コスト
ハードウェア等
プログラム等
←トランザクションコストを発生させるのは、プログラマの労働
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-1 プログラマの生産性とモチベーション(1)
• プログラマの生産性の差異
• 組織にとらわれない「コミュニティ」は、最初から下位のプログラマが排除、平均的作業者(中央値)の約2.5倍にあたる最優秀者が、組織の枠を超えて自発的に集められる。
人数
人のいろいろな作業に対する測定値
劣る優秀
中央値1:2 .
5
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-2 プログラマの生産性とモチベーション(2)
• オープンソース・ソフトウェアに参加する開発者の動機
• The Boston Consulting Group がSourceForge(2001年)に行った調査 (回答者526
名、複数回答)によると、「ソースはオープンソースであるべきだという信念」が34.2%、「知的刺激や楽しみのため」が25%、「技能向上のため」と「オープン
ソースが仕事の役に立つので貢献している」がそれぞれ20%の結果となっている。
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-3 プログラマの生産性とモチベーション(3)
• 「オープンソースソフトウェア技術者の人材開発に関する調査」(2003年、日本)によると
「新たなスキルを学びたいため」(64.9%)、「知識とスキルを共有したいため」(48.9%)、「プロプラエタリソフトウェアでは解決できない問題を解決するため」(29.2%)と知的向上心が上位にランクされ、「収入を得るため」は9.6%に止まっている。またコミュニティに対する期待も「知識とスキルを共有すること」(58.5%)、「プロプラエタリソフトウェアでは解決できない問題を解決すること」(36.8%)、「ソフトウェア商品の新しいアイデアを実現すること」(33.3%)
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-4 プログラマの生産性とモチベーション(4)
• 「オープンソースソフトウェア開発者実態調査」(2008年、OSC島根での調査、N 150)
• オープンソース開発に関わる意識
知的刺激や楽しみのため 88%新たなスキルを学ぶため 88%
収入を得るため 24%名声を得るため 24%
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-5 プログラマの生産性とモチベーション(5)
• 「オープンソースソフトウェア開発者実態調査」(2008年、OSC島根での調査、N 150)
• 業務時間内の開発時間配分
56% 44%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
1
業務時間内一般業務時間 業務時間内OSS開発時間
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-6 プログラマの生産性とモチベーション(6)
• 「オープンソースソフトウェア開発者実態調査」(2008年、OSC島根での調査、N 150)
• 1日の開発時間配分
38% 31% 31%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
1
業務時間内一般業務時間 業務時間内OSS開発時間
業務時間外OSS開発時間
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-7 プログラマの生産性とモチベーション(7)
• オープンソース・ソフトウェア開発におけるコミュニティの可能性を分析しているWeber, S. [2004]
プログラミング問題を解決する楽しみ、喜びに加えてさらに「芸術性」を追加。
「開発者たちはコード書きを単なるエンジニアリング問題としてのみならず、審美的な探求、コーディングを自己表現にするスタイルやエレガンスの問題として語る。」
ここには開発者の芸術性と同時に、芸術性に優れた開発者間同士でしか共有できない芸術性とその中での自己顕示欲とエゴイズムも見て取れる。
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-8 プログラマの生産性とモチベーション(8)
• Yonsei University School of BusinessのShin,DongyoubとYi,Sangmook
オープンソースの知名度とプロジェクトに参加する開発者の動機付けとの相関を調査し、オープンソースの知名度が上がるに連れて参加者の動機付けとの関連での屈折点(逆U
型カーブ)が存在することを導き出している 。
→現在共同で実証研究中
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-9 プログラマの生産性とモチベーション(9)
• Lerner J. ,Tirole J. [2000]
既にこの問題をより単純に解決し「エゴの満足が重要なのは、それが同業者の認知から来るからだ。同業者の認知が重要なのは、それが評判を創り出すからだ。偉大なプログラマーという評判に価値があるのは、それが商業的な環境でお金になるからだ。」と開発者のインセンティブを費用便益分析的に描き出している。
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-10 プログラマの生産性とトランザクションコスト
• コミュニティの開発者の開発の一次的動機が知的刺激や技術力、芸術性であるのは確か。
• そこに大手ITベンダーを中心とした、開発コミュニティを「組織化」することにより、開発者のモチベーションをトランザクションコストの「開発」につなげる仕組みができあがる。
• そして「人数×時間(月)×2.5」分の「売上」がエンタープライズ(企業)領域においてトランザクションコストとして「開発」される。
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-11 アメリカの戦略:オープンソースのメッカ・オレゴン
オレゴン州は産官学でオープンソースを支援
• Linus Torvaldsが在住し、彼ががフェローとして在籍するThe Linux Foundation(IBMなどの大手IT企業が出資)やIBM Linux Technology Centerがある。
• Open Technology Business Centerがオープンソースを活用したベンチャー企業を支援する。
• オレゴン州立大学にはオープンソースのホスティング・サービスを行っているOpen Source Lab もある。
• 毎年世界中からオープンソース導入を進める政府機関を集めてサミットを開催。
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-11 アメリカの戦略:オープンソースのメッカ・オレゴン
• オレゴン州は産官学でオープンソースを支援
• Beaverton市にはLinus Torvalds氏が在住し、彼ががフェローとして在籍するThe Linux
Foundation(IBMなどの大手IT企業が出資)やIBM Linux Technology Centerがある。
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-11 アメリカの戦略:オープンソースのメッカ・オレゴン
• Open Technology Business Centerがオープンソースを活用したベンチャー企業を支援する。
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-11 アメリカの戦略:オープンソースのメッカ・オレゴン
• Corvallis市にあるオレゴン州立大学にはオープンソースのホスティング・サービスを行っているOpen Source Lab もある。
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-12 アメリカの戦略:技術革新とオープンソース
• Googleは自らのシステムの大部分を自前で、オープン
ソースを組み合わせることで構築。そして、コミュニティも積極的に支援。(例:Summer of Code)
• Sun Microsystemsは激しい技術競争に対応するため、OSのSolaris と開発言語のJavaをオープンソース化し、開発コミュニティを活用した戦略を進めてた。
←後にOracleに買収される
• 開発企業側では完全にオープンソースのコミュニティを取り込んだ形で開発が行われ、またオープンソース開発を行うコミュニティの側でもキャリアアップの場として位置づけられている。
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-13 アメリカの戦略とオープンソース、コミュニティ
• アメリカでは開発系の企業から大手ITベンダー、そして中小のベンチャー企業に至るまで各段階においてオープンソース・ソフトウェアの技術的開発やサービスビジネス、そしてトランザクションコストの「開発」が進んでいる。
• オープンソースの開発コミュニティの労働モチベーションを維持しつつ、組織を超えたコミュニティの開発の成果を吸収する仕組みができあがっている。
4.オープンソースの開発スタイルとコミュニティ4-14 アメリカの戦略とオープンソース、企業
• Linuxルネーカ 3.2までコードに関する貢献度
The Linux Foundation 」Linux ルネーカ位上業企援支発開 30 社「りよ