明治八年・ボアソナード『憲法論』小考 url right - …...明 治 八 年 ・ ボ ア...
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Hitotsubashi University Repository
Title 明治八年・ボアソナード『憲法論』小考
Author(s) 向井, 健
Citation 一橋論叢, 78(4): 465-479
Issue Date 1977-10-01
Type Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL http://doi.org/10.15057/13368
Right
明治八
年・
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
『
憲法論』
小者
( 8 3 ) 明治八 牛 ・ ポ ア ソ ナ ー F 『憲法論』 小 考
は
し
が
き
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
の
『
憲法論』
とそ
の
周辺
む
すぴに
か
えて
一
は
しが
き
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
(
G
已t
甲
く①
M
mi
-
e
世○
訂
岩戸
邑0)
-1彼こ
そ
は、
数あ
る
御雇外人の
なか
に
あっ
て、
び
と
き
わ
吃立
す
る
巨
器で
ある
。
「
明
治以
来我
邦に
招碑せ
ら
れ
た
外人の
数は
多く
、
そ
の
功績か
ら
すれ
ば、
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
に
世屑
すべ
き
もの
は
敢て
必
ずし
も
絶無で
ほ
ない
が、
眞個日
本の
立
場に
立っ
て
日
本
の
為め
に
囲っ
た
もの
は、
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
に
此
すべ
き
も
の
ほ
(
l)
多くは
ない+
。
か
つ
て、
杉山
直治郎博士が
彼を
た
た
えて
、
向
井
健
(
2)
「
洋才
和魂の
法学者+
とよ
ば
れ
た
の
も、
また
故な
し
と
し
ない
。
た
し
か
に
彼の
ご
とき
、
「
すぐれ
た
学者を
迎
え
る
こ
とが
で
き
た
こ
と
は
黎明
期の
日
本の
法
学界に
とっ
て
は
得難
(
3)
い
幸福だっ
た
とい
わ
ね
ば
な
ら
ない+
で
あ
ろ
う。
昭
和四
八
年、
奇し
く
も
そ
の
年は
、
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
の
来日
一
〇
〇
周
年とい
う
記
念すべ
き
年に
当っ
た。
た
ま
た
ま
筆者ほ
、
「
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
の
自然
法
論+
と
題す
(
4)
る
小
稿を
発表して
こ
の
偉大な
先人
を
偲ぶ
よ
すが
とし
た
が、
こ
れ
を
契機と
して
、
彼の
周
辺
領域を
め
ぐる
諸
家の
労作が
踵を
接し
て
世に
お
く
ら
れ、
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
研究に
一
期
を
画
(
5)
(
6)
す
る
に
い
た
っ
た
こ
と
は、
まこ
とに
欣快の
い
た
り
で
ある
。
も
ち
ろ
ん、
こ
れ
で
充分とい
うわ
けで
ほ
けっ
し
て
ない
。
】
八
レ
「
今後ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
の
影響を
測定する
作業ほ
、
あ
くま
で
胡
一 橋論叢 第 七 十 八 巻 第四 号 ( 8 4 )
も
自国の
主
体
性を
貫こ
うと
した
日
本とい
う国の
近
代法史
の
重
要な
一
環と
して
、
こ
の
学問の
全体
的コ
ン
テ
ク
ス
ト
の
中で
正
し
く
位置づ
けて
い
か
ね
ば
な
ら
ない
。
そ
の
際一
種の
比
較文化
的か.
つ
学際的研
究グ
ル
ー
プ
が、
フ
ラ
ン
ス
法、
ド
イ
ツ
法、
日
本法
制史
、
実定法
、
政
治
史、
経済
学な
どの
専
門家
を
集めて
形成さ
れ
る
必
要が
ある。
か
くし
て
そ
の
業績
を
ト
ー
タ
ル
に
把
捉
評価する
こ
と
は、
自らの
能力の
すぺ
て
を
わ
が
国の
た
めに
さ
さ
げつ
く
した
老
博士に
対
する
、
日
本
(
7)
人の
最小
限の
礼儀で
あ
る
に
違い
ない+
と
説く
先
学の
指摘
と
提言は
正
鵠で
あ
ろ
う。
さ
て、
徳川
幕府の
瓦壊する
や、
弱体な
が
ら
も
明
治
新政
府の
樹立
・
発足を
み
る
に
い
た
っ
た
が、
幕藩体
制に
とっ
て
か
わる
新た
な
国
内政
治
体
制の
整序は
、
新政
権の
た
だ
ち
に
直面
した
焦眉の
緊急課題で
あっ
た。
そ
れ
は、
「
一
口
で
言え
ば、
封建的諸
制度の
近
代
化
で
あ
る.が
、
二
百
余年の
鎖国の
夢か
ら
醒め
て、
開国
し
て
み
れ
ば、
周
囲に
は
欧米の
列強が
帝
国主
義的志
向を
もっ
て
進出
し
て
来て
い
る。
こ
の
状勢の
な
か
で
国の
独
立を
維持し
、
欧
米列強と
互
椅の
地
位を
保つ
に
は、
早
急に
こ
れ
らの
勢力
と
対
抗し
得る
体制の
確立が
必
要で
あっ
た
が、
そ■
れ
ほ
諸制
度
の
急速なヨ
オ
。
ッ
パ
化
-当
時に
お
ける
欧
米の
最も
先
進
郷
的な
国
国
(
イ
ギ
リ
ス
、
フ
ラ
ン
ス、
ア
メ
リ
カ
等)
を
模範と
する
こ
と
-を
意味し
た。
と
くに
、
開国に
あ
た
り、
幕府
が
列強と
締結した
条約は
、
幕府当
路者の
国際法
的知識の
欠
如の
故に
、
結果的に
ほ
そ
の
内容が
極め
て
日
本に
とっ
て
不
利で
あ
り、
屈辱
的で
あっ
た
か
ら、
こ
れ
が
改正
は
明
治政
府に
とっ
て
ほ
ま
さ
に
緊要の
こ
とが
らで
あっ
た。
そ
して
こ
の
改正
の
前提と
し
て
列強は
、
日
本の
法
制度の
近
代化
(
ヨ
オ
ロ
ッ
パ
化)
を
要求して
い
た
か
ら、
法
制度を
出来る
だ
け
短
期間内
に
ヨ
オロ
グ
パ
先
進国の
そ
れ
に
近づ
ける
こ
とが
新
(
8)
政
府に
とっ
て
の
至
上
命令となっ
た+
。
た
し
か
に、
明
治期を
大き
く
特徴づ
ける
もの
の一
つ
は、
き
わ
めて
旺
盛
な
立
法活動で
あっ
て、
明
治三
〇
年代
-そ
れ
は
日
本
資本
主
義の
産業資本
確立
期で
もあ
る
が
1ま
で
に、
近
代的な
諸
法典が
出揃
っ
た
こ
とは
、
まこ
とに
驚嘆に
催する
で
き
ご
と
で
あっ
た。
こ
れ
ら
諸
法典の
編
纂事業の
歩み
を
克明に
辿り
、
そ
れ
を
生
み
だ
した
国際的
・
国内
的諸
条件を
分
析・
吟味する
こ
と
ほ、
諸法典編修の
意義を
開明
する
に
と
どま
ら
ず、
わ
が
国
の
近
代化の
特質の
解明に
とっ
て
も
ま
た
重
要で
ある。
なぜ
「‡
1
.
÷レ
( 8 5 ) 明 治八 年 ・ ボ ア ソ ナ ー ド 『憲法 静』 小 考
な
ら、
諸
法典は
そ
れ
ぞ
れ
程度の
差ほ
あ
る
に
もせ
よ、
明
治
初年以
降の
法
的発展を
如実に
反映
する
もの
で
あ
り、
法典
の
内容
・
実効性お
よ
び
限
界は
、
日
本
近
代化の
一
つ
の
指標
とな
り
うる
もの
だ
か
らで
あ
る。
そ
して
ま
た、
「
こ
の
法典
化
事業こ
そ、
そ
の
後今日
に
ま
で
至る
日
本近
代法お
よ
び
法
(
9)
学の
性格を
根本的に
規定した
もの+
で
あっ
た
に
ちが
い
な
か
ろ
う。
そ
の
近
代日
本に
お
ける
法典化
運
動の
事実上の
推
進軸の
役割を
演じた
代表
的人
物こ
そ
が、
すな
わ
ち
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
に
ほ
か
な
ら
ない
。
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
が、
彼に
とっ
て
は
異国の
港都
・
横
浜に
記
念すべ
き
第一
歩を
印した
の
は、
明
治
六
年一
一
月一
五
日
の
こ
とで
、
彼の
自筆履歴書に
は、
「
千
八
百七
十
三
年
十一
月
名
村氏卜
同
船シ
テ
日
本二
到着シ
同年ヨ
リ
名村氏ノ
通
訳ヲ
(
m)
以
テ
司
法省官吏ノ
諮問会二
出席セ
ヱと
記載さ
れ
て
い
る。
同年
一
一
月二
九
日、
彼は
法典編纂に
関する
一
編の
上
申(
1 1)
書を
司法
卿・
大
木喬任の
も
と
に
提出して
所見を
開陳し
た。
(
1 2)
「
尋常
一
様の
法実務家で
は
な
かっ
た+
司
法省御雇外
人ジ
(
13)
ヨ
ル
ジュ
・
ブ
ス
ケ
(
のe
O
r
g①
∽
H-
-
巴r
e
申。
転
宅et
)
との
連
(
M)
名で
ある
。
東京千
八
百七
十
三
年第十
一
月
廿九
日
奉呈
司
法卿閣下
辱モ
日
本政
府ノ
尊大ナ
ル
指揮ヲ
奉シ
日
本
国一
般ノ
法律
編成ノ
大
業ヲ
相
倶二
勉励セ
ン
為メ
我等両
名ヲ
十八
ケ
月
間ヲ
置テ
仏国ヨ
リ
召
寄セ
ラ
ル
然レ
ト
モ
我等ノ
職
掌上ノ
権ヲ
判然定メ
ラ
レ
タ
ル
ニ
モ
非ス
又夕
両
人ノ
等別
立
テ
ラ
レ
タ
ル
身分ニ
モ
非ス
就テハ
我等両
名ノ
間二
不
和ヲ
生ス
ル
コ
ト
且
ツ
職掌上ノ
権二
付
テ
生ス
ル
争論ノ
原因等ヲ
成
ル
可L
ポr
除撰セ
ン
コ
ト
ヲ
上
申ス
可
キコ
ト
我
等ノ
党
務
卜
奉存候然レ
ト
モ
日
本政
府ノ
御用ヲ
勤ム
ル
コ
トニ
付
抜
群奮発シ
又夕
御依顧ヲ
蒙り
候事業二
琴フ
精力ヲ
尽サ
ン
コ
ト
ヲ
先ツ
政
府二
現ハ
ス
コ
ト
最良ニ
シ
テ
且
高上ナ
ル
方
法卜
奉存候
(
マ
マ
)
熱々
謹案仕ル
ニ
職掌上
ノ
棒ヲ
特
別二
分
部ス
ル
コ
トハ
性
然現
業二
於テ
甚シ
キ
難事ヲ
生ス
ル
ニ
至ル
可ク
奉存候
稔シ
テ一
般ノ
法
律ノ
分
則ハ
白ラ
相
連
管シ
テ
維持ス
ル
モ
ノ
ニ
御
座候故二
違反ノ
説ヲ
避ン
ニ
ハ
同一
ノ
原意二
因り
同一
ノ
旨考ヲ
設
立シ
テ
相
倶二
法律ヲ
編成ス
ル
コ
ト
ヲ
巽
望
仕ル
耳、
、
、
ナ
ラ
ス
実二
必
要卜
申ス
モ
ノニ
御座候
■7
故二
我
等
二般ノ
法律霹輯二
付左ノ
順序二
由り
給ハ
ン
舶
+
一 橋 論叢 第七 十 八巻 第四 号 ( き6)
コ
ト
ヲ
卿閣
下二
只
管建言シ
奉り
侯
第一
日
本政
府ノ
主
幹タ
ル
目
途ヲ
承
知セ
ン
為メ
先ツ
郷関
下
及
其他
管係ノ
重
官ヨ
リ
概子
一
般ノ
御教諭ヲ
受ケ
度奉
存候
凡ソ
法律ヲ
編輯ス
ル
コ
トニ
付拠ル
可キ
順序ハ
法律ノ
国二
管シ
テ
肝
要ナ
ル
所卜
国ノ
必
要ト
ス
ル
所二
因テ
定
メ
ラ
ル
可シ
然ル
上
又日
本政府ノ
達セ
ン
ト
欲ス
ル
所ノ
目
途二
付
便宜ナ
リ
ト
存候儀ハ
具二
上
申仕ル
可ク
候
若
シ
又
政
府二
於テ
先ツ
我
等一
同ヨ
リ
見込
書ヲ
可差
出ト
ノ
御沙
汰候ハ
、
仰セ
ニ
任七
速二
報命可仕侯
第二
法律ヲ
編輯ス
ル
為メ
ノ
条件ノ
順序
一
卜
度ヒ
極マ
リ
タ
ル
上ハ
一
応政府ノ
御趣意ヲ
何ヒ
又
夕
国ノ
要ス
ル
所二
付キ
必
要ナ
ル
御教諭ヲ
請ヒ
且
ツ
其極マ
リ
タ
ル
条件二
付
我
等ノ
存意ヲ
モ
具申セ
ン
為メ
前以
一
両
度ノ
集会
御
国キ
奉願度候而シ
テ
後チ
我
等一
同ヨ
リ
緒言ヲ
載シ
タ
ル
法
律ノ
見込
書ヲ
記
載シ
差出ス
可ク
侯問翻訳ノ
上
卿
閣
下二
於テ
御一
覧ノ
上
之ヲ
後ノ
集会ノ
為メ
ニ
備へ
テ
ル
可ク
候
若シ
著述ノ
改
正ス
可キ
モ
ノ
ア
ル
ト
キハ
卿閣下ノ
賢断
細
工
従ヒ
改正
可仕候
第三
法律ノ
見込
書最終ノ
検閲ア
ル
時二
当テ
若シ
正
院二
於
テ
更二
抗説生ス
ル
時ハ
御通
達
有之
次
第疑問弁解致ス
トモ
又ハ
著述ヲ
再ヒ
改正
ス
ル
ト
モ
尊命二
任七
可
申侯
第四
法律ノ
見込ノ
現
今進歩ス
ル
処ノ
モ
ノ
ハ
柳力
変セ
ス
シ
テ
従
来ノ
通リ
ニ
存シ
置キ
可
申候
第五
新法
律ノ
意義不
明ナ
ル
場合ヲ
避ン
為メ
之ヲ
実地二
施
ス
時ハ
日
本語及
仏蘭西
語ニ
テ一
同
御頗布
有之
度侯
然ル
ニ
我
等二
於テハ
右二
演述仕候方法二
因り
候トモ
又
ハ
卿閣下
ノ
可然御見込ノ
方
法二
従ヒ
侯トモ
唯々
可奉仰
専断候因テ
我
等両
名向
後出省仕り
相
倶二
勉励可
仕二
付
当時御省中二
有之候書庫ノ
傍ラ
ー
二
室御設被下
候様伏
テ
奉願候
恐
憧頓首敬白
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ル
ド
ブ
ス
ケ
ー
( 8 7 ) 明治八 年 ・ ボ ア ソ ナ ー F 『憲法 論』 小 考
来朝早々
の
御雇外人が
起草
・
上
申した
建議と
して
は、
周
到な
配慮と
実践的
な
構憩が
ほ
どこ
さ
れ
た、
た
しか
に
注
(
1 5)
日に
伍する
内
容と
評言し
て
よ
か
ろ
う。
(
1 6)
か
く
して
、
「
法律界ノ
…
…
団十
郎+
た
る
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
の、
瞳
目
すぺ
き
活躍が
縦横に
展開さ
れ
る。
「
こ
ゝ
に
遺憾なの
は、
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
の
事蹟を
以て
単な
る
立
法事業の
範囲に
止
まる
か
の
如く
説く
もの
ゝ
あ
る
こ
と
で
ある
。
そ
れ
も、
そ
の
畢生の
大事業た
る
甘民
法が
実施せ
らる
ゝ
に
至
ら
ざり
し
よ
り、
こ
れ
を
軽視し
、
単に
、
旧
刑法
の
起草者と
して
の
み
推奨し
、
また
は
裁
判所構成
法の
立
案
者とし
て
の
み
称揚する
も
の
ゝ
あ
る
の
は、
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
の
為めに
採ら
ない
の
で
ある
。
素よ
り
是等の
事
柄も
、
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ドの
事業の
中に
お
い
て
ほ、
重
要な
る
足跡を
印
した
も
の
に
相
違ない
が、
こ
れ
ほ
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
の一
面に
過ぎ
ない
(
1 7)
の
で
あ
る+
と
指摘する
尾佐
竹猛
博士の
言は
青紫に
催し
ょ
>
フ○
とこ
ろで
い
ま、
焦点を
立
法事業を
め
ぐる
彼の
活動領域
の
み
に
限
局
した
とき
、
従
前の
研
究業績に
洩れ
た一
つ
の
重
要な
問題点が
照
射の
な
か
に
浮び
あ
が
る。
そ
れ
ほ
な
に
か
1ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
と
憲法典制定作業との
関係に
ほ
か
な
ら
ない
。小
稿は
、
明
治八
年四
月に
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
に
よ
り
執筆さ
れ
た
とお
ぼ
し
き
論策『
憲法
論』
を、
筆者所
蔵文
書に
拠りつ
つ
覆刻
・
紹介し
、
あ
わ
せ
て
そ
の
周
辺
事情に
杜撰な
ア
プ
ロ
ー
チ
を
こ
こ
ろ
み
よ
うと
する
もの
で
ある
。
(
l)
尾
佐
竹
猛「
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ドの
思出+
『
文
化
と
大
学』
九
五
頁。
(
2)
杉山
直治郎「
洋才
和魂の
法
学者+
『
帝
国
大
学
新
聞』
昭
和
〓年
一
一
月二
六
日
号。
(
3)
野田
良之
「
日
本に
お
ける
外
国法の
摂取
-フ
ラ
ン
ス
法
.
-+
『
岩
波
講座現
代法・
外
国
法
と
日
本
法』
二
〇二
頁。
(
4)
向
井健
「
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ドの
自然法
論+
『
法
律
時
報』
四
五
巻七
号一
二】
頁以
下。
(
5)
ボ
ア
ソ
ナ
ー
F
研
究の
深
化芯
寄与
し
た
近
時の
主
要研
究
業
ヽ
ヽ
ヽ
ヽ
績と
し
て、
た
と
え
ば、
福
島
正
夫
「
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
博士の
人
格
と
拷問制
反対
活
動+
『
法
学セ
、、
、
ナ
ー』
二一
六
専一
八
頁以
下、
大久保寮甫「
ボ
ワ
ソ
ナ
ア
ド+
『
日
本の
法
学者』
二
七
頁以
下、
国「
ギエ
ス
タア
ブ・
ポ
ワ
ソ
ナ
ア
ド
(
一
八二
五
-一
九一
〇)
+
『
日
仏法
学』
八
号
五
八
東以
下、
同「
フ
ラ
ン
ス
の
法
学者が
見
た
ポ
ワ
ソ
ナ
ア
ド
法
典
H+
『
各省
星
大
学法
政
論
集』
六
三
号-
9
貞以
下、
野田
良
之
「
ポ
ワ
ソ
ナ
ー
ド
と
陸掲
再+
『
盤学
志
林』
舶
一
ノ
ー 橋論叢 第 七 十 八 巻 第 四号 ' ( 8 8 )
七一
巻二
。
三
‖
四
合併
号二
六
頁以
下
な
どの
譜
労作が
ある
ほ
か、
向
井健「
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
の
身
分法
思
想+
『
家
族
1政
策
と
法
-・
近
代日
本の
家族
観』
〓ハ
五
頁以
下
もさ
い
き
ん
の
一
文
献で
ある
。
堀内
節「
御雇
法
律教
師の
ブ
ス
ケ
とボ
ア
ソ
ナ
ー
ド+
『
比
較
法
建誌』
八
巻一
号一
二一
頁以
下、
同
「
明
治初
年に
お
け
る
司
法
省御雇外
国人
関
係記
録抄+
『
比
較法
連
詩』
九巻
一
号
二
七
頁以
下の
両
前は
、
と
も
に
稀
親資料の
覆刻
をこ
こ
ろ
み
て
貴重
で
ある
。
さ
らに
、
西堀
昭
「
元日
本
政
府
法
律顧問ギ.ユ
ス
タ
ー
グ・
エ
、
、
、
-
ル
・
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド・
ド・
フ
ォ
ン
タ
ラ
ピ
ー
(
一
八
二
五
-一
九一
〇)
資料
H
臼+
『
千
葉
商大
紀要』
一
四
巻二
号
五
五
頁以
下、
四
号
八三
頁以
下、
同
「
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
博士の
こ
と
な
ど+
『
創文』
一
五
六
号
九
頁以
下も
、
と
く
に
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ドの
キ
ャ
リ
ア
を
め
ぐる
重
要な
新資料を
収
め
て
看
過で
き
ない
作業
で
あ
ろ
う。
なお
、
野田
・
前
掲「
日
本に
お
ける
外
国
法の
摂
取
-フ
ラ
ン
ス
法
-+
一
八
四
頁以
下、
野田
良
之
「
明
治
初年に
お
け
る
フ
ラ
ン
ス
法の
研
究+
『
日
仏法
学』
一
号三
頁以
下、
同
「
日
仏
法
学交
流の
回
顧と
展望+
『
日
仏法
学』
六
号一
頁以
下
の
諸
編
ほ、
き
わ
めて
有益
な
基
礎的
研
究と
し
て
必
読の
価値
が
ある
。
(
6)
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
を
めぐ
る
従
前の
主
要先
行
業績に
つ
い
て、
昭
和三
三
年の
時点
ま
で
に
発表さ
れ
た
文
献は
、
向
井健「
ボ
ア
ソ
ナ
ー
F
の
『
家督相
続見
込』
に
つ
い
て+
『
法
学
研
究』
三
二
巷五
号五
六
頁以
下の
脚註に
網
羅的に
挙
示し
て
あ
り、
そ
れ
以
降か
ら
同
四
八
年に
い
たる
文
献に
関し
て
は、
向
井・
前掲「
ポ
乃
ア
ソ
丁トの
自
然法
論+
一
二
二
頁の
脚註に
掲出し
た。
大
方
4
の
参看をい
た
だ
けれ
ば
偉い
で
あ
る。
(
7)
大
久
保
泰
甫
「
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
研
究の
意
義+
『
朝日
新
聞』
昭
和四
八
年一
一
月一
五
日
号。
(
8)
野田
良
之
「
日
本に
ぉ
ける
此
較法の
発
展
と
現
状
H+
『
法
学協会
雑
誌』
八
九
巻一
〇
号一
七
卜一
八
頁。
(
9)
福島正
夫
「
明
治
初年に
お
け
る
西
欧
法の
継受と
日
本の
法
お
よび
法
学+
『
仁
井田
陸
博士
追
悼論
文
集・
日
本
法と
ア
ジ
ア』
一
七一
頁。
(
1 0)
堀
内・
前掲
「
御
雇法
律教
師の
ブ
ス
ケ
と
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド+
二
二一
頁。
ち
な
みに
、
文
中に
み
える
「
名
村氏+
と
は、
の
ち
貴族院
議
員に
なっ
た
名
村泰薇の
こ
とで
あっ
て、
彼ほ
幕
末ま
で
は
北
村
元
四
郎
と
名の
り、
横
須賀製鉄
所
で
通
訳
を
し
た
経験が
あ
りフ
ラ
ン
ス
語に
堪能で
かっ
た。
明
治
五
年の
時点で
は、
司
法
省
七
等出仕で
ある
。
(
1 1)
明
治六
年一
〇
月二
五
日、
参議・
大
木喬任
が
司
法
卿を
兼
任し
た。
し
た
がっ
て、
こ
の
上
中書に
い
う
「
司
法
卿閣下+
は
と
うぜ
ん
大木
を
指し
て
い
る。
(
1 2)
野田
・
前
端「
日
本に
お
ける
外
国法の
摂取
-フ
ラ
ン
ス
払
-+
二
〇一
頁。
(
1 3)
ジ
ョ
ル
ジ
ュ
・
ブス
ケ
に
つ
い
て
は、
向
井健
「
司
払
省
御
傭
外
人ブ
ス
ケ
と
商法
講
義+
『
法
学
研
究』
四
四
巻一
号一
〇
四
頁
( $ 9 ) 明 治 八 年 ・ ポ ア ソ ナ ー F 『憲法 論』 小 考
以
下
参照
。
な
お、
向
井
健「
《
ブ
ス
ケ
案》
小
論+
『
法
学新報』
八
三
巻一
〇‖
一
一
‖
一
二
合
併号
九一
頁以
下
参照
。
(
1 4)
法
務
図
書館所
蔵
文
書に
拠る。
(
1 5)
ジ
ョ
ル
ジ
ュ
・
ブ
ス
ケの
来日は
、
明
治五
年二
月で
あ
る。
な
お、
済
ヨ
ル
ジ
ュ
・
ブ
ス
ケの
単独
執筆に
か
か
る
重
要な
建議
に
つ
い
て
は、
向
井
こ別
掲
「
《
ブ
ス
ケ
案》
小
論+
九
二
頁以
下
参照
。
(
1 6)
磯
部四
郎「
民
法
編
纂ノ
由来三
関ス
ル
記
憶
談+
『
法
学
協
会雄
誌』
三一
巻八
号一
五
四
頁。
(
1 7)
尾
佐
竹・
前掲
「
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ドの
思
出+
九
〇
-九
一
頁。
〓
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
の
『
憲法論』
と
そ
の
周
辺
数年前
、
某古書韓よ
り
<
仏国法律博士
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
氏
(
1)
見込
書∨
と
表題さ
れ
た一
冊の
写
本を
筆者は
購入
した
。
こ
の
なか
に、
『
憲法
論』
とい
う一
都訳文
書が
収録
さ
れ
て
い
る。
こ
の
文
書の
末尾に
、
「
東京千
八
百
七
十五
年四
月三
日
プ
ア
ソ
ナ
ヅ+
と
あ
る
とこ
ろ
か
ら、
お
そ
ら
くほ
明
治八
年四
月
三
日
の
執筆に
か
か
る
論
稿と
推断さ
れ
る。
冒頭に
い
う。
頃余司
法
省ヨ
リ
国憲故
官省ノ
権限
及ヒ
司
法裁判ノ
管轄
ノ
事ノ
問ハ
ル
然ル
ニ
此
等ノ
事未嘗テ
其趣向
如何ン
ニ
在
ル
ヲ
示メ
サ
レ
ス
因テ
余力
自由二
任セ
テ
之ヲ
言フ
凡言其
自由ヨ
リ
発セ
サ
ル
モ
ノ
ハ
亦
遂二
益ナ
シ
抑余力
本
邦二
在ル
ヤ
月ヲ
閲、
、
、
ス
ル
コ
ト
偉力ニ
十
六
未夕
本
邦ノ
言語二
通セ
ス
是ヲ
以
テ
某氏
意ノ
向フ
所慕フ
所及
ヒ
共有用二
係ル
所ノ
モ
ノ
果シ
テ
何物タ
ル
ヲ
知ラ
ス
ト
雄
モ
其職事二
因リ
テ
日
二
諸君卜
講論セ
シ
モ
ノ
ニ
由り
之ヲ
考発ス
勿論日
ヲ
累子
テ
之ヲ
考思セ
ハ
更二
其精詳ヲ
尽ク
ス
ヘ
シ
ト
雄モ
今ヤ
脚力
其愚
衷ヲ
述フ
ル
ノ、
、
、
均シ
タ
之レ
人ナ
リ
天ノ
命ス
ル
所萱弐ア
ラ
ン
ヤ
其性霊ノ
固ヨ
リ
全
書ナ
ル
智巧ノ
時卜
長ス
ル
貿文ノ
世卜
閲ク
ル
モ
ノ
天下
万
国同然
一
理ナ
リ
而シ
テ
進歩ノ
効或ハ
遅速ア
リ
盛
香ア
ル
モ
ノ
ハ
唯其土地
ノ
形勢卜
時ノ
汗隆二
管シ
テ
互
二
異同ナ
キ
ヲ
得ス
ト
雄モ
之力
天全
ヲ
求メ
テ
速二
開明二
重ラ
シ
ム
ル
ハ
則チ
英政
府ノ
義務タ
リ
(
2)
「
日
本
近
代
法史上
、
永
久に
その
名を
止
め
る+
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
に
よ
っ
て、
『
憲法論』
な
る
論稿が
明
治八
年に
も
の
さ
一
∫▲
れて
い
た
事実は
、
い
ま
だ
学界に
報
告さ
れ
て
い
ない
。
と
す
4 7
一 橋論叢 第 七 十 八巻 第四 号 ( 9 0 )
れ
ば、
まさ
に
待望の
新資料とい
っ
て
よ
い
で
あ
ろ
う。
とこ
ろで
、
明
治八
年四
月三
日
とい
えば
、
か
の
立
窟政
体
の
詔の
禿せ
ら
れ
る
直前に
当る
。
こ
れ
よ
り
さ
き
の
同
年二
月、
当時の
在朝・
在野の
政
界の
巨
頭た
ちが
-す
な
わ
ち、
東
京か
ら
大
久
保利
通が
、
山口
よ
り
木戸孝允が
、
土
佐
か
ら
板
垣
退
助が
-そ
れ
ぞ
れ
大
阪に
会し
、
伊藤博文
・
■井上
馨ら
の
斡旋を
加えつ
つ、
征
韓論分
裂以
降の
政
局
収拾の
方
途を
商
議した
。
世に
い
う大
阪会議が
、
こ
れ
で
あ
る。
か
くて
、
同年四
月一
四
日、
太
政
官布告第五
八
号
を
もっ
て、
立
志政
体の
詔が
下
命さ
れ
た。
朕即位ノ
初首ト
シ
テ
群臣ヲ
会シ
五
事ヲ
以
テ
神明二
誓ヒ
国是ヲ
定メ
万
民
保全ノ
道ヲ
求ム
幸二
祖宗ノ
霊卜
群臣ノ
カト
ニ
頼り
以
テ
今日
ノ
小
康ヲ
得タ
リ
顧二
中興日
浅ケ
内
治ノ
事当二
振作更
張ス
ヘ
キ
者少シ
ト
セ
ス
朕
今誓文ノ
意
ヲ
拡充シ
鼓二
元
老
院ヲ
設ケ
以
テ
立
法ノ
源ヲ
広メ
大
審院
ヲ
置キ
以
テ
審
判ノ
権ヲ
筆ク
シ
又地
方
官ヲ
召
集シ
以テ
民
情ヲ
通シ
公
益
ヲ
図り
漸次二
国家立
憲ノ
政
体ヲ
立テ
汝衆
庶卜
供二
其慶二
載ン
ト
欲ス
汝衆庶
或ハ
旧二
泥、
、
、
故二
慣
ル
、
コ
ト
莫ク
又
或ハ
進ム
ニ
軽ク
為ス
ニ
急ナル
コ
ト
莫ク
其レ
能朕力
旨ヲ
体シ
テ
巽賛ス
ル
所ア
レ
さ
らに
同日
、
大
政
官布告第五
九
号に
よ
り、
元
老
院・
大
(
3)
(
4)
審院の
創置を
み
る
に
い
たっ
た。
さ
て、
元
老
院の
誕
生ほ
、
すな
わ
ち
左
院の
廃
止を
意味す
ヽ
ヽ
ヽ
ヽ
る
が、
そ
れ
ほ
また
、
筆者の
い
わ
ゆる
立
法事業の
左
院専管
(
5)
が
消滅し
たこ
と
も
意味する
。
法典編
纂作業の
本流を
自負
する
司
法
省に
とっ
て、
そ
れ
ほ
ま
た
と
な
き
朗報で
あっ
た
に
ちが
い
ない
。
事実
、
司
法省は
こ
の
新た
な
事態に
対
応する
た
め
体
制を
再整備し
、
つ
ぎの
局
面に
進展する
姿勢を
み
せ
る。
立
塞政
体の
詔が
発せ
ら
れ
る
直前の
同
年四
月三
日
に
は、
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
自身も
すで
に
あ
る
笹度の
情報は
え
て
い
た
で
あ
ろ
うこ
と
ほ、
想像に
難く
ない
。
後掬する
よ
うに
、
「
政
府二
於テ
既二
改制二
者意ア
リ
ト
聞ク
是レ
誠二
空前ノ
美事
ニ
シ
テ
人
民二
於テ
モ
蓋シ
大草ノ
雲
寛ナ
ラ
ン+
と
彼ほ
述べ
て
い
る。
司
法省ほ
新事態を
さ
き
ど
り
し、
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
に
「
国
憲+
に
つ
い
て
の
意見書の
捉出を
命じ
た
も
の
で
あっ
た
ろ
う。
こ
こ
で、
すで
に
引
用
した
<
前文∨
に
ひ
き
つ
づ
き、
『
憲法
4 ア2
トト
( 9 1 ) 明治八 年 ・ ボ ア ソ ナ ー ド 『憲法 論』 小 考
論』
の
∧
絵論>
に
該当
する
部分
をつ
ぎに
示そ
う。
や
や
冗
長に
わ
た
る
き
らい
が
ない
わ
けで
は
ない
が、
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
の
思考方
法が
巧ま
ずし
て
看取さ
れ、
すこ
ぶ
る
興
味ふ
か
い。
夫レ
本邦ノ
民ハ
天下ノ
治メ
易キ
民タ
ル
コ
ト
余ノ
素ヨ
リ
察ス
ル
所ナ
リ
是レ
則チ
余力
臆
量二
非ス
余二
先タ
チ
テ
本
部二
在ル
他ノ
外国
人
又ハ
本
邦有権ノ
人ハ
夙ト
ニ
英明
識
ア
ラ
ン
抑英治メ
易キ
ヤ
斯民ノ
志果シ
テ
罪弱ナ
ル
ニ
由ル
カ
将夕
其心
果シ
テ
姑息二
安ン
ス
ル
カ
真二
然ル
ト
キハ
則
チ
本
邦ノ
民ハ
皆下
僚ノ
人
種ナ
ル
カ
余以フ
ニ
香ラ
ス
本邦
歴世ノ
天
皇
其徳化
民二
存ス
ル
モ
ノ
固ヨ
リ
尊ム
ヘ
ク
敬フ
ヘ
キモ
ノ
ア
リ
シ
コ
ト
則チ
史書二
照
照タ
リ
囁是其然ル
所
以ン
ナ
リ
且
其徳化ノ
苛
酷二
流レ
サ
リ
シ
コ
トハ
仮会ヒ
史書二
拠ラ
ス
ト
雄モ
カチ
斯民ノ
治メ
易キ
ヲ
以
テ
之ヲ
徴ス
ル
ニ
足ル
蓋シ
其尊ム
ヘ
ク
敬フ
ヘ
キ
ノ
徳化
推シ
テ
群僚二
及ヒ
率テ
斯民二
発輝ス
ル
コ
トハ
即チ
理ノ
当
然ニ
シ
テ
其政
令悉ク
民
情二
合セ
ス
ト
雄モ
蹄チ
不
軌ノ
大
好ヲ
起ス
ニ
至ラ
ス
或
ハ
民
間蹟々
ノ
諾言ナ
キ
ヲ
得サ
レ
ト
モ
亦則チ
唯々
然ニ
シ
ニア
止ム
然ラハ
則チ
時勢今日
二
重ル
モ
所
謂三
法二
基キ
別
ニ
攻制ヲ
加ヘ
ス
シ
テ
可ナ
ラ
ン
カ
日
ク
香蓋シ
今日二
在リ
テハ
政
府二
於テ
既二
改制二
著
意ア
リ
ト
聞ク
是レ
誠二
空
前ノ
美事ニ
シ
テ
人
民二
於テモ
蓋シ
大
草ノ
雲
冤ナ
ラ
ン
其
レ
亦人
民ノ
嘗テ
政
府二
伸望セ
シ
モ
ノ
果シ
テ
徒爾二
帰セ
ス
ト
云
フ
ヘ
シ
井言二
非ラ
サ
ル
ナ
リ
況ヤ
今日
改制ノ
著意
ハ
人
民ノ
迫促二
因リ
テ
然ル
ニ
非ラ
ス
政
府方
サニ
民
情ノ
向フ
所ヲ
察シ
テ
優カ
ニ
機会二
授ス
ル
モ
ノ
ナ
リ
大
凡
政
府
民
情ヲ
体ス
ル
如此モ
ノハ
欧洲二
於テ
モ
英国
常二
富強ナ
リ碩咽”
見
其如此
ナ
ラ
サ
ル
モ
ノ
ハ
英国常二
革命多シ
然り
而シ
テ
本邦千
八
百
六
十
八
年ノ
一
新ハ
頗ル
欧洲ノ
趣
意卜
離齢セ
リ
其故ハ
当時ノ
目
的
専ハ
ラ
中古以
降覇府
-
一
帰セ
シ
大権ヲ
奪除シ
テ
皇家ノ
権ヲ
回
復ス
ル
ニ
ア
レ
ハ
従
テ
各藩二
分レ
タ
ル
所ノ
権力ヲ
容易二
之ヲ
一
統シ
タ
リ
其
レ
一
新ノ
業勢ヒ
既二
此二
重ル
於是力
政
府善後ノ
箸策其
筍モ
ス
ヘ
カ
ラ
サ
ル
モ
ノ
最モ
以
テ
務ム
ヘ
キ
ノ
急タ
リ
抑彼封建ノ
時卜
雄モ
各藩敬
テ
皇家ヲ
巽戴シ
痛ク
公忠ヲ
尽ク
ス
ニ
於テハ
楷其皇権ヲ
横取ス
ル
モ
ノ
ハ
之レ
有リ
ト
雄モ
亦
以
テ
国家二
稗益
ナ
シ
ト
セ
ス
而シ
テ
封建己テ
ニ
廃
シ
テ
以
来郡県ノ
制反テ
未夕
共著績ヲ
見ス
蓋シ
欧
洲ノ
習
ニ
テハ
既二
之ヲ
改
革ス
レ
ハ
即チ
必ス
善
後ノ
方ア
リ
余故
∽
一 橋論叢 第 七十 八 巻 第 四号 ( 9 2 )
ニ
千
八
百六
十
八
年ノ
一
新ハ
欧
洲ノ
趣意卜
髄齢セ
リ
ト
云
フ
故二
現
今ノ
郡
県ノ
如キ
ハ
必ス
シ
モ
国
家二
神益ア
リ
ト
シ
難シ
(
中略)
(
一
字不明)
夫レ
本
邦諸
ノ
権ハ
全ク
天
皇ノ
徳化二
拠リ
テ
行ハ
ル
ト
錐モ
其権限
甚分
明ナ
ラ
ス
職務由テ
以テ
混同シ
彼此ノ
官
(
一
字不明)
衝相
撃肘
軌猫セ
サ
ル
モ
ノ
ハ
則チ
必ス
手
束カ
ネ
テ
事ヲ
委廃ス
是レ
両
ツ
ナ
カ
ラ
危キ
ヲ
招ク
ノ
道タ
リ
呼如此モ
ノ
彼一
新ノ
効尚
以
テ
全シ
ト
ス
ル
ニ
足ラ
ン
ヤ
唯其全シ
ト
ス
ル
ニ
足ラ
サ
ル
ヤ
彼封建ノ
制固ヨ
リ
不
可
ナ
リ
ト
雄モ
儲
侯
ニ
ア
リ
テ
尚
能
幾分ノ
治ヲ
助
ケ
シ
モ
ノ
ア
リ
是レ
寧口
其止
ム
ニ
愈サ
ル
カ
雉然若シ
現
在有権ノ
大臣果シ
テ
能ク
其
権
力ヲ
平均シ
テ
萄モ
公
平事二
臨マ
ハ
亦復不
可ナ
ル
ナ
カ
ル
可シ
而シ
テ
之ヲ
為ス
ニ
這ア
リ
人
民
ヲ
シ
テ
幾分力
政
治二
与力
ヲ
シ
ム
ル
ノ
外他ノ
術ナ
シ
抑改制ヲ
要ス
ル
ト
キハ
予シ
メ
憲法ヲ
定
立シ
百
度之レ
ニ
本ツ
カ
サ
レ
ハ
蹄チ
不
可ナ
リ
其
眼目ハ
一
二
民
撰議院ナ
リ
但其
権限
及ヒ
総代ヲ
撰フ
投票ハ
憲法ノ
外特別ノ
詔
勅ヲ
以
テ
之ヲ
審定ス
ヘ
シ
ニー
行政ノ
権ナ
リ
但参議改二
諸
卿
及ヒ
コ
ン
セ
イ
デ
タ
ノ
権限ヲ
審定ス
ヘ
シ
尤憲法ノ
首ニ
ハ
無論天
皇ノ
権限並二
伝詐及ヒ
摂政ノ
事ヲ
審定ス
ヘ
シ
捌
以
上を
<
総論>
と
し、
ひ
きつ
づ
い
て、
「
民
撰議院+
・
「
行
政ノ
権+
の
二
節を
配置する
。
「
民
撰議院+
の
個
所を
左
に
掲出し
よ
う。
民
撰議院
本邦ノ
繁栄ヲ
致サ
ン
コ
ト
ヲ
要ス
ル
ニ
ハ
共時
宜ノ
緩急
遅
(
一
字不明)
速
余未夕
之ヲ
審カ
ニ
セ
ス
ト
雄モ
専ラ
法
律職務
経済等
ノ
事二
改
制ヲ
ナ
サ、
ル
ヘ
カ
ラ
ス
元
来改
制ナ
ル
モ
ノ
ハ
痛
ク
心
ヲ
用
ヰ
テ
室
公
至
平ノ
理
ヲ
尽ス
ト
雄モ
亦
必ス
人ノ
慣
習ヲ
破り
人ノ
利益ヲ
害ス
ル
コ
ト
ア
ル
カ
故二
更二
精究シ
テ
人
情二
合セ
ン
コ
ト
ヲ
求メ
ン
カ
タ
メ
必ス
人
民ヲ
シ
テ
幾
分力
政
事二
与カ
ラ
シ
ム
ヘ
シ
尤
英人
民ヲ
政
事二
与カ
ラ
シ
ム
ル
ノ
道ハ
頗ル
心
ヲ
用ヰ
テ
之ヲ
考繹ス
ヘ
シ
諸宗…
一㌫
題相
何ン
ト
ナ
レ
ハ
本邦ノ
人
民ハ
未夕
悉ク
政
理ノ
是非ヲ
弁ス
ル
コ
ト
能ハ
女
又
議貞投
票ノ
事二
重リ
テ
モ
就中国ノ
繁栄
暢開ス
ヘ
キ
所以ン
ノ
追加何ン
ヲ
知ル
モ
ノ
甚稀少ナ
ル
カ
故二
投票二
当ル
ヘ
キモ
ノ
腰フ
ル
霊室タ
ル
ヘ
シ
況
ヤ
総代タ
ル
モ
ノ
ニ
於テ
ヲ
ヤ
是ヲ
以
テ
最初ニ
ア
リ
テハ
多少
( 9 3 ) 明治八 年 ・ ボ ア ソ ナ ー ド 『意払静』 小 考
ノ
不
都合モ
之レ
有ル
ヘ
シ
ト
雄モ
文
明ノ
進ム
ニ
従ヒ
テハ
漸々
異議貝ノ
体
度ヲ
得ル
ニ
至ラ
ン
抑彼総代ナ
ル
モ
ノ
ニ
ハ
何等ノ
権ヲ
許シ
然ル
ヘ
キ
ヤ
則チ
天
皇卜
権力
ヲ
相
分チ
テ
立
法ノ
梅ヲ
許シ
然ル
ヘ
キ
カ
日
ク
未可ナ
リ
今ヤ
天皇ノ
権力
赫々
下二
輝ヤ
ク
然ル
ヲ
其権ヲ
穀イ
テ
之ヲ
下モ
ニ
分ツ
ト
キ
ハ
甚夕
危キ
ヲ
生ス
ル
ニ
至ラ
ン
若共
棲ヲ
分
ツ
ヤ
勢ヒ
人
民ノ
権卜
互二
背馳シ
テ
必ス
ヤ
不
測ノ
患害ヲ
起サ
レ
又
本邦二
於テ
モ
欧
洲二
同シ
タ
英人
民ノ
自由ハ
広カ
ル
ヘ
ケレ
ト
モ
天
皇ハ
亦
其随意ニ
テ
民
撰
議員ヲ
解
集セ
シ
ム
ヘ
シ
然レ
ト
モ
或ハ
屡之ヲ
解ケハ
則チ
人
望ヲ
失ヒ
却テ
民
心ヲ
シ
テ
姦駐ナ
ヲ
シ
メ
ン
日
夕
然ラ
ハ
則チ
寧口
改制ヲ
施ス
ノ
期ア
ラ
ン
ヤ
因テ
思ア
ニ
今本邦ノ
民
撰議員ハ
潜ク
之ヲ
相
談人二
充テハ
弊ナ
カ
ル
ヘ
シ
然レ
ハ
彼ノ
政
事職務経
済等ノ
事二
付
テ
天皇ヨ
リ
之ヲ
下
問シ
其条目二
就テ
其答
議ヲ
取ル
ヘ
シ
尤其答
議ノ
可
香ハ
天
皇
二
於テ
随意二
之ヲ
取
舎ス
ル
ヲ
善シ
ト
ス
亦其民
撰議員タ
(
マ
マ
)
ル
モ
ノ
ハ
務メ
テ
天皇ヲ
シ
テ
自然万
民ノ
向フ
所ヲ
暁ト
ラ
シ
メ
ン
コ
ト
ヲ
意ト
ス
ヘ
シ
蓋シ
仏国ノ
例ノ
如ク
指針
㍍柑
国王ハ
固ヨ
リ
共通意ニ
テ
民
撰議院ノ
統長タ
ル
ヘ
シ
ト
雄
モ
乎
草一
ア
リ
テハ
別二
其首長ヲ
置クヘ
シ
又
議貞藤代ハ
(
一
字不明)
其全
数ノ
ニ
更二
其半数ヲ
増撰ス
ヘ
シ
譜詣代か
頚詩
仙
鴇”
岬
石
仏国ニ
テハ
セ
ナ
ト
ゥ
ル
謂人
ハ
国
王ヨ
リ
之ヲ
任
ス
ル
ト
錐モ
自
耳
義亜
米利加ニ
テハ
人
民ノ
投票ニ
テ
之ヲ
撰フ
・コ
ト
タ
リ
夫レ
民
撰議院ノ
評論済
、、
、
ノ
公布ノ
勅命ノ
、
、
、
ハ
之ヲ
名ツ
ケ
テ
法律卜
云
フ
若シ
其勅命ヲ
後二
重り
変更ス
ル
ト
キハ
例ノ
如ク
民
撰議院ノ
再評ヲ
経テ
之ヲ
公
布ス
ヘ
シ
又
其勅
命ニ
ハ
必ス
民
撰議院ノ
公
評タ
ル
コ
ト
ヲ
掲ク
ヘ
シ
其書式
ハ
若シ
天
皇其評論ヲ
允可ス
レ
ハ
民
撰議
院ノ
評論ノ
通
卜
書ス
ヘ
シ
若シ
天
皇之ヲ
允可セ
サ
レ
ハ
民
撰議院ノ
評論卜
書ス
ヘ
シ
若シ
民
撰議院万
民ノ
向フ
所二
従ヒ
タ
ル
評論ナ
レ
ハ
民
撰議院ヨ
リ
ノ
望、
、
\
ノ
通リ
ト
書ス
ヘ
シ
其
総代ノ
期限ハ
六
ケ
年又ハ
九
ケ
年二
定ム
ヘ
シ
ト
雄モ
其
期限中共人
員ノ
三
分ノ
一
ヲ
三
ケ
年毎二
交
換ス
ヘ
シ
但其
期限ノ
畢リ
タ
ル
総代人ハ
再ヒ
撰
挙二
当ツ
ヘ
カ
ラ
サ
ル
ニ
非ス
又
其投票ヲ
ナ
ス
コ
トハ
何
人ニ
ア
ル
カ
日
ク
万
民
中ニ
(
一
字不
明)
於テ
名
誉ア
ル
モ
ノニ
シ
テ
則チ
嘗テ
官ニ
ア
リ
職事
勉労
セ
シ
モ
ノ
カ
又ハ
豊カ
ニ
産業商業
等ヲ
営、、
、
得ル
モ
ノ
投票
ヲ
ナ
ス
ノ
権ア
リ
ト
ス
一
入
J
其戯票者ノ
倍毅二
五
等ア
ル
ヘ
シ
滞一
等ハ
現二
官ニ
ア
ル
卯
+
一 橋論叢 第 七十 八 巻 第 四 号 ( 9 4 )
モ
ノ
嘗テ
官ヲ
罷メ
シ
者ノ
一
等官ヨ
リ
八
等官マ
テ
第二
等
サ
ム
ヲ
イ
ハ
一
等官同
等ノ
海陸軍ノ
士官
第三
等ハ
非役士人
ナ
ウ
但
非役士
人二
於テ
ハ
彼レ
ハ
可
ナ
リ
此ハ
不
可等ノ
差別ヲ
ナ
ス
ヲ
書シ
ト
セ
ン
カ
第四
等ハ
公私学ノ
教師但是レ
モ
亦彼
ハ
可
此ハ
不可
等ノ
差別
ヲ
ナ
ス
ヲ
ヨ
シ
ト
セ
ン
カ
第五
等ハ
農業拉二
職業商業ヲ
ナ
ス
モ
ノ
ナ
リ
但共作高税高ノ
次第
ヲ
以テ
之二
充ツ
ヘ
シ
抑前文サ
ン
ヅ
ラ
リ
ザ
シ
ョ
ン
ノ
段二
於テ
ハ
大二
官員症類ヲ
挙ケ
而シ
テ
忽チ
此
段二
於テハ
投
票者ノ
第一
等二
置テ
之ヲ
論シ
タ
ル
ハ
頗フ
ル
前後ノ
詞ハ
綜理ナ
キ
カ
如シ
ト
雄モ
其実ハ
官員ナ
ル
モ
ノ
ハ
久シ
タ
職
工
居り
事二
熟シ
且
投票ノ
事ニ
テハ
別二
忌
嫌二
触ル
、
ホ
ト
ノ
事ナ
シ
故二
爾力
云
フ
又
鼻業職業商業二
於テハ
作高
税高二
俵リ
テ
之ヲ
論セ
シ
ハ
共和政
治ノ
政
体ノ
旨意二
非
ラ
ス
ト
雄モ
本
邦ノ
政
体ノ
因襲二
本ツ
キ
其改
制二
臨ミ
テ
偏ヘ
ニ
物
議ヲ
生セ
サ
ラ
ン
コ
ト
ヲ
要ス
ル
ノ、、
、
又
僧侶二
於
テハ
鮒絹畑
其民
権二
於テ
如何ナ
ル
模様ナ
ル
ヤ
ヲ
知ヲ
サ
ル
カ
故二
之ヲ
投票者二
充テ、
可ナ
ル
ヤ
香ヤ
ヲ
弁ス
ル
コ
ト
能ハ
ス
ト
雄モ
願ハ
ク
ハ
之レ
モ
用
ヰ
タ
キモ
ノ
ナ
リ
各国ニ
テハ
宗旨ヲ
尚フ
カ
故二
別二
之ヲ
好ム
ニ
非ヲ
サ
レ
ト
モ
多
タ
ハ
其
便僧ヲ
以
テ
平
民卜
同シ
タ
投票者二
充ツ
本
邦ニ
テ
ハ
絶代人並二
投票者ノ
年次ハ
並ユ
ニ
十
五
歳以
∽
上二
定ム
ヘ
シ
右ヲ
総代人ハ
三
十
歳投票者ハ
廿
五
歳卜
定
ム
ル
ト
キハ
甚不
都合ヲ
生セ
ン
何ン
ト
ナ
レ
ハ
英人三
十
朱
満卜
雄モ
英人
ト
ナ
リ.英敏ナ
レ
ハ
国ノ
タ
メ
年ノ
少
キ
ヲ
以
テ
之ヲ
棄ツ
可
カ
ラ
ス
尤兵ノ
議員ノ
体
裁ナ
ラ
ハ
共立
法ノ
権二
管係ス
ル
カ
故二
甚夕
年次ノ
満タ
サ
ル
ヲ
嫌フ
ト
雄モ
前二
途フ
ル
カ
如キ
相
談人ノ
体
裁ナ
レ
ハ
猶
更年少キ
ヲ
嫌
フ
ニ
足ラ
ス
稔代
人ハ
投票者ヨ
リ
差ヤ
其撰ヒ
方ヲ
重ン
ス
ヘ
シ
其
故ハ
現二
官職ニ
ア
ル
モ
ノハ
以テ
総代
人
ト
ナ
ス
ヘ
カ
ラ
ス
右二
ニ
ッ
ノ
趣意ア
リー
ツ
ハ
職ニ
ア
ル
モ
ノ
ハ
人
民
ヲ
圧
制■スル
コ
ト
ア
ル
カ
故ナ
リー
ツハ
其
職事ヲ
暁フ
ス
ル
カ
故ナ
リ
然レ
トモ
前へ
こ
職ア
リ
テ
現二
職ヲ
退キ
タ
ル
モ
ノハ
之ヲ
嫌ハ
ス
尤モ
其前職ノ
等級四
等以上ナ
ラ
サ
リ
シ
サ
ム
ラ
イ
ハ
此限二
入レ
ス
又
非役華族
及ヒ
士人モ
総代人タ
ル
ヘ
シ
但是モ
亦深ク
差別ヲ
ナ
ス
ヘ
シ
又
農業職業ヲ
ナ
ス
モ
ノ
モ
総代人
タ
ル
ヘ
シ
但シ
之レ
ハ
其収
税高財産高ニ
テ
之ヲ
限
ル
ヘ
シ
彼ノ
天
皇二
在リ
テ
之ヲ
撰フ
モ
ノ
ハ
官員汝
海陸軍
士
官ノ
内ヨ
リ
其専意二
任セ
テ
之ヲ
撰フ
モ
可ナ
リ
都テ
此
民
撰議員ノ
大
益ア
ル
ハ
己
テニ
上二
途ル
カ
如ク
法
律経済二
於テ
大二
人
民ノ
俵信ヲ
取り
又フ
ホ
ン
ク
シ
ョ
ナ
( 9 5 ) 明治八 年 ・ ボ ア ソ ナー
ド 『意払 静』 小 考
リ
ス
ム
ノ
危キ
ヲ
救ヒ
天
皇参議諸
卿二
於テ
モ
其未夕
知ラ
サル
人
材ヲ
識ル
コ
ト
ヲ
得ヘ
シ
然レ
ト
モ
其
頓二
識り
得タ
ル
人
材ヲ
其必
用ノ
場所二
挙用ス
レ
ハ
其代リ
ニ
ハ
又別
人
ヲ
撰ン
テ
議員ト
ス
ヘ
シ
又
総代ハ
人ヲ
シ
テ
利ノ
タ
メ
ニ
之ヲ
欲セ
ス
シ
テ
国ノ
タ
メ
ニ
之ヲ
欲セ
シ
メ
ン
タ
メ
俸給ナ
シ
ト
錐モ
其議院ノ
相
距ル
コ
ト
精ヤ
里
程ア
ル
モ
ノ
ハ
相
当ノ
旅費並二
宿料ヲ
給ス
ヘ
シ某氏
撰議員ハ
不
断之レ
ア
ル
ヘ
キ
モ
ノ
ニ
非ス
一
年間
春秋
二
期二
定メ
テ
之ヲ
会集ス
ヘ
シ
先ツ
本邦ノ
今日ニ
テハ
総代ハ
多人
数ヲ
要セ
ス
シ
テ
可ナ
ラ
ン
カ
喩ヘ
ハ
一
県ヨ
リ一
人ヲ
撰、
、
、
テ
総テ
七
十二
人
又
其
半数ノ
増員三
十
六
人ハ
天皇ヨ
リ
之レ
ヲ
特撰シ
テ
都合百
八
人ナ
ル
可キ
カ
っ
い
で、
彼は
、
「
行政ノ
権+
を
め
ぐっ
て
説明
を
加
え
る
が、
末尾に
「
副陳+
とし
て、
「
余力
前論ノ
旨趣二
俵ラ
ハ
更二
憲法ノ
条目ヲ
掲ケ
ン
コ
ト
容易ナ
リ
若シ
再嘱ヲ
蒙ラハ
別二
之ヲ
陳セ
ン
カ+
と
附記し
て、
こ
の
『
憲法
論』
を
結ん
で
い
る。
とこ
ろで
、
彼・
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
と
憲法
典の
編修との
関係
は、
すで
に
触れ
た
ご
と
く、
先
行業績に
お
ける
一
つ
の
盲点
とい
っ
て
よ
い。
こ
こ
に
注目
すべ
き一
記
述が
残さ
れ
て
い
る。
すな
わ
ち、
彼の
自筆履歴書に
み
える
、
「
千
八
百
七
十五
年司
法
卿ヨ
リ
(
6)
日
本憲法草案ノ
起草ヲ
命セ
ラ
ル
+
との
筆録で
ある
。
い
い
こ
の
記載が
真実を
伝え
て
い
る
な
ら
ば、
彼は
、
司
法省案た
る
「
日
本憲法
草案ノ
起草+
に
着手し
た
こ
と
に
なる
。
本稿
で
は
じめ
て
世に
公
け
に
さ
れ
た
彼の
『
憲法論』
は、
実ほ
、
未知の
<
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
憲法草案∨
の
プ
ロ
ロ
ー
グ
で
あ
り、
ひ
き
つ
づ
い
て
彼は
、
「
更二
憲法ノ
条目ヲ
掲
ケ+
た
の
で
あ
っ
た
ろ
うか
。
新
資料の
出現に
期待する
こ
と、
まこ
とに
切
な
る
もの
が
あ
る。
(
1)
B
6
判
大の
無罫
紙に
筆
録さ
れ
た
浄
書本
で
あっ
て、
一
〇
数
編の
郁
訳
論稲を
収
める
。
裏
打に
よ
る
修
復の
あ
と
が
う
か
が
える
が、
遺
憾な
が
ら
すで
に
虫喰の
個所が
あ
る。
旧
蔵著
その
他は
、
まっ
た
く
分
明で
は
ない
。
(
2)
福島
・
前掲
「
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
博士の
人
格と
拷問制反
対
活
動+
一
八
東。
-7
(
3)
元
老
院の
創設
に
つ
い
て
は、
尾
佐
竹猛「
元
老
院の
性
蒋+
4 7
一 橋論叢 第 七 十 八 巻 第四 号 ( 9 6 )
『
明
治文
化の
新
研
究』
二七
頁以
下、
稲田
正
次
『
明
治
意
法
成
立
史
田』
二
四
七
頁以
下
参照
。
(
4)
大
審院の
設
立に
関し
て
は、
向
井健
「
大
審院の
創設
とボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
意見
書+
『
法
学研
究』
四
四
巻六
号九
八
頁
以
下
参
照。
(
5)
筆
者の
い
わ
ゆる
立
法
事
業の
左
院専管に
関
して
ほ、
向
井
健「
明
治
初年に
お
ける
民
事
訴訟
法
典の
編
纂+
『
綜合
法
学』
六
巻八
号四
頁以
下
参照
。
(
6)
堀
内・
前掲「
御
雇
法
律
教
師の
ブ
ス
ケ
と
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド+
二
二一
頁。
三
む
すび
に
か
え
て
<
資料は
資料をもっ
て
語ら
し
め
よ
>
とい
う。
明
治八
年四
月に
執筆さ
れ
た
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
の
『
憲法論』
を
め
ぐ
る
小
稿に
お
い
て、
意識的に
そ
の
方
法を
採っ
て
み
た。
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
の
法律観ない
し
法
哲学の
よっ
て
た
つ
とこ
(
1)
ろほ
、
自然法思
想で
あっ
た。
し
か
し、
か
つ
て
彼は
、
「
余
(
2)
ハ
憲法二
付テハ
性法ヲ
論セ
ス+
と
説
い
た
こ
と
が
あ
る。
『
憲法論』
に
お
い
て
も、
そ
の
点は
容
易に
窺
知で
き
る。
「
ポ
ワ
ソ
ナ
ー
ド
は
自
由主
義者で
あり
、
経
済学上で
もた
し
か
に
オ
プ
テ
ィ、
、
、
ス
テ
イ
ク
な
自由主
義経
済の
信奉
者で
あっ
た。
か
れ
の
民
法典は
こ
の
思想の
ゆ
え
に、
か
れ
の
あの
使徒
抑
的情熱に
も
か
か
わ
ら
ず、
遂に
絶対
主
義の
た
めに
葬り
去ら
(
3)
れ
て
し
まっ
た+
と
する
先
学の
指摘は
正
鵠で
あ
り、
賛意を
惜し
ま
ない
が、
『
憲法
論』
の
底流に
ある
彼の
思
想
ほ
保
守
的な
色彩が
濃厚とい
え
よ
う。
「
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
ほ
純
真
な
る
(
1)
君
主
制の
礼讃者と
して
の
理
想
家
肌+
との
評言は
、
よ
く
彼
の
一
側面を
示
し
て
い
る。
と
まれ
、
彼の
「
努力
は
今
日
なお
、
われ
わ
れ
の
法の
遺産
(
5)
の
なか
に
生き
て
い
る+
。
「
我々
は
特に
新なる
光を
以
て
ボ
ア
ッ
ソ
ナ
ー
ド
の
思
想を
再吟味再評価し
、
以て
明
治の
創業時
代に
於ける
我が
国家
社会の
一
人の
偉大
な
恩人に
対
する
我
(
6)
我の
感謝を
新に
する
時期+
で
あ
ろ
う。
『
憲
法
論』
を
め
ぐ
ヽ
ヽ
る
小
論が
、
もし
そ
の
一
助
に
な
れ
ば、
望外の
伴い
で
ある
。
(
l)
彼の
自然法
思
想に
つ
き、
さ
し
当
り、
向
井・
前掲
「
ボ
ア
ソ
ナ
ー
ド
の
自然法
論+
一
ニー
頁以
下、
向
井・
前掲
「
ポ
ア
ソ
ナ
ー
Fの
身分
法
思
想+
一
六五
頁以
下
参照
。
な
お、
向
井健
「
《
性
法
論》
点
描+
『
三
色
旗』
三
丘
三
号
二
頁以
下
参照
。
(
2)
『
明
治文
化
全
集・
法
律篇』
四六
八
頁。
(
3)
野田
・
前掲
「
日
本に
お
け
る
外
国法の
摂取
-フ
ラ
ン
ス
一一
( 9 7 ) 明治八 年 ・ ボ ア ソ ナ ー F 『憲法論』 小 考
4 7 9
L
法
-+
二
〇三
頁。
(
4)
尾佐
竹・
前掲
「
ボ
ア
ソ
ナ
ー
Fの
思出+
九三
頁。
(
5)
野田
・
前掲
「
日
本に
お
け
る
外
国法の
摂取
-フ
ラ
ン
ス
法
-+
一
九
三
頁。
(
6)
田
中
耕太
郎「
ポ
ア
ァ
ソ
ナ
ー
ド
の
洪
律哲学+
『
法
律
哲
学
論集白』
一
五
五
頁。
追記
本
稿九二
頁・
上
段
最終行に
み
え
る
「
コ
ン
セ
イ
デ
タ+
は、
お
そノ
ら
くコ
ン
セ
イユ
・
デ
タ
(
c
OロSe
i
-
d.
Et
賢)
の
こ
とで
あ
ろ
1
フ0
小
論で
ほ、
紙幅の
関
係も
あり
、
「
コ
ン
セ
イ
デ
タ+
を
ふ
く
め
た
『
憲法
論』
中の
「
行
政ノ
権+
に
まっ
た
く
触れ
る
こ
と
が
で
き
な
か
っ
た。
こ
の
点に
つ
い
て
ほ、
『
憲
法
論』
以
外の
学
界
未
発
表
資料も
投入
し
て、
続稿を
もつ
予
定に
し
て
い
る。
大
方の
御海容
を
乞
うも
の
で
あ
る。
(
一
橋大
学
講師)