カルボン酸の共重合と共重合体の性質 - kt polymerを溶媒として,ubbelohde型...

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目 イヒ,1981,Nα6 瀬尾 ・金井。加 倉 井=ア ク リ ロお よ び メ タ ク リ ロ グ ア ナ ミン と不 飽 和 カ ル ボ ン 酸 の 共 重 合 と共 重 合 体 の 性 質 1013, (日本 化 学 会 誌,1981,(6),p。1013~1020) ◎1981TheChamicalSocietyoまJapan ア クリロお よび メタク リログアナ ミンと不飽和 カルボン酸の共重合と共重合体の性質 (1980年10月2日 受 理) 弘*・金 孝 ・加倉井 酸 存 在 下 で の ア ク リ ログ ア ナ ミ ン(2,4-ジ アミノ-6-ビニル-1,3,5-ト リア ジ ン)の単独重 合 お よび ア ク リロニ トリル との共重合 を ジ メチル スル ポキ シ ド(DMSO)中60。Cで,開始剤 と して α,α'-ア ゾ ビス イ ソプチ ロニ トリルを用 い て検 討 した。ア ク リログアナ ミン塩酸塩 では,単 独重合 お よび共 重合 速度 が ア ク リ ログ ア ナ ミンに く らべ て 減 少 し,ま たQ,e値 が 増 大 す る な ど重 合 反 応 性 が 大 き く変 化 す る こ と がわかった。 ア ク リログアナ ミンお よび メタ ク リログアナ ミン(2,4-ジ ア ミノ-6-イソプロペ ニル-1,3,5-ト リアジ ン)とアク リル酸お よび メタク リル酸 との共重 合 を同様 の条件 で行 な った と ころ,交 互性のよい共重合 体 が 容 易 に 得 られ た。こ れ ら の 原 因 と し て,弱 塩 基 で あ る ア ミ ノ トリ ア ジ ン環 と酸 との 相 互 作 用 の 影 響 を 考 え た。31~75mo1%の トリア ジ ン環 を 含 む メ タ ク リル 酸-メタ ク リ ロ グ ア ナ ミン共 重 合 体 は,DMSO に 可 溶,酸 お よび ア ル カ リ水 溶 液 に 易 溶 で,中 性 付 近 のpH域 で は不 溶 とな った。こ れ ら共 重 合 体 の 中 和滴 定お よび粘 度測定 に よ り,酸性 側 では ポ リ(メタ ク リログアナ ミン),アル カ リ性 側 では ポ リメタ ク リル 酸 と類 似 の 挙 動 を 呈 す る こ とが わ か った。ま た,共 重 合 体 の酸 お よ び 塩 基 水 溶 液 中 の 還 元 粘 度 は 希 釈 に よ りい ち じるし く上昇 したが,塩 化ナ ・トリウム添 加系 お よびDMSO中 で は 直 線 的 に 低 下 し,両 性 電 解 質 的 挙 動 を示 した。さ らに,ト リア ジ ン環 組 成 が 増 す に した が い 等 電 点 がpH4.2~6.1まで 変 化 し,一 方,カ オ リ ン懸 濁 液 に 対 し凝 集 作 用 の効 果 も認 め られ た。 1緒 ア ミノー1,3,5一 トリアジン環を もつ高分子は反応 性高 分子 とし て期待 され・一・方その剛直性・分子間相互作用・塩基性などのた め側鎖に導入 した場合,高 分子の性質に大きな影響を与えると考 え られ る◎ す で に 種 々 の ア ク リロ グ アナ ミン(2,4一 ジ ア ミ ルー6一 ニル ー1,3 ,5一トリアジン)お よび メ タ ク リ ログ ア ナ ミン(2,4一 ジア ミ ノー6一 イ ソプ ロペ ニル ー1,3,5一 ト リア ジ ン)が 合 成 され,そ の重 合 に つ い て 報 告 され て い る1)2》。し か し,グ ア ナ ミン の 置 換 基 の 種 類や数および生成ポ リマーの構造,組 成 と諸性質の関係を研究 し た 例 は きわ め て 少 な い。1 著 者 らは さ きに ジ カ ル ボ ン 酸 ジ エ ス テ ル と ジ ビ グ ア ニ ドの 反 応 に よ り高分子 量 のポ リグ アナ ミン3)を合成 し,つ い で トリアジ ン 環 を 含 む 種 々 の ポ リ ア ミ ド,ポ リエ ス テ ル を 得 た4)。0さ ら に,含 / 東 京 工 業 大 学 工 学 部 高 分 子 工 学 科,152東京 都 目黒 区 大 岡 1) C. G. Ove-be -ger, S. L. Shapiro, J. Am. Chem. Soc., 76, 1061(1954) ; C. G. Overb- rgcr, F. W. Michelloti, ibid., 80, 988(1958). 2) Y. Yuki, T. Kakurai, T. Noguchi, Bull. Chem. Soc. ノpn.43,2123(1970);結 城 康 夫,六 鹿 広 文,鬼 頭 鏡 貴, 高 分 子 論 文 集,36,385(1979). 3)瀬 尾 利 弘,石 皓,加 倉井敏夫 日 化,1974,2419. 4)瀬 尾 利 弘,岡 本 博 史,加 倉 井 敏 夫,日 化,1975,165. ニ トリル共重合 体 とジ シアン ジ ア ミドの反 応5》お よび ア ク リル酸 エ ステル含有 共重合 体 と ビグ ア ニ ドの反 応6)によ り ,ア ク リ ログ ア ナ ミン 構 造 を も つ ポ リ マ ー を 合 成 し,そ の 性 質 を 調 ぺ た ◎ ま た,既 報 η に お い て 著 者 らは 置 換 ピグ ア ニ ド と不 飽 和 力ル ボ ン酸 エ ス テ ル ま た は 酸 無 水 物 を 用 い て,ほ ぼ 定 量 的 に 純 粋 な メ タ ク リ ログ アナ ミン を得た◎ さらに,こ れ らモ ノマ ー と各種 メ タク リル 酸 エ ス テ ル との 共 重 合 性 や,生 成 重 合 体 の 構 造 と 諸 性 質 の 関 係 を 検 討 した8)◎ 高分 子側鎖 へ の ア ミノ ト、リアジン環 の導入 は 高分子 鎖 の可 と う 性を減 じ,軟 化点や ガ ラス転 移点 を大 幅に 上昇 させ,ま た 比重 の 増 大 や 溶 解 性 の顕 著 な 変 化 も認 め られ た。こ れ ら の 性 質 に は ア ミ ノ ト リ ア ジ ン 環 の 含 有 率 お よび ポ リマ ーb構 遇 組 成が 大 き く影 響 す る こ とが わ か った0》8)A 本 研 究 で は,い ままでに報告のない酸が存在する系でのアクリ ロお よび メ タ ク リ ログ ア ナ ミン の 重 合 性 や ア ク リル 酸 お よ び メ タ 5)瀬 尾 利 弘 加 倉 井 敏 夫,野 口達 弥,高 分 子 化 学,30,76 (1973);瀬 尾 利 弘,加 倉 井 敏 夫,野 口達弥,一高分 子化 学 , 30,451(1973). 6)瀬 尾 利 弘,加 倉 井 敏 夫,高 分子論文集 ,32,308(1975); 瀬 尾 利 弘,石 渡 皓,加 倉 井 敏 夫,日 化,1980,87. 7)瀬 尾 利 弘,青 木 義 久,加 倉 井 敏 夫,臼 化,1980 ,342. 8)瀬 尾 利 弘,加 倉 井 敏 夫,日 本 化 学 会笛30森 駆鉱合轟毒 (1974) ; T. Seo, K. Abe, H. Honma, T. Kakurai , P olym. Prepr., 20, 661(1979).

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Page 1: カルボン酸の共重合と共重合体の性質 - KT Polymerを溶媒として,Ubbelohde型 粘度計を用いて30土O.・05 で測定 した 塩酸水溶液および水酸化ナトリウム水溶液中の粘度はOst・

目イヒ,1981,Nα6 瀬尾 ・金井。加 倉 井=ア ク リロお よび メ タク リログアナ ミン と不飽 和 カルボ ン酸 の

共重 合 と共 重合体 の性質

1013,

論 文 (日 本 化 学 会 誌,1981,(6),p。1013~1020)

◎1981TheChamicalSocietyoまJapan

ア クリロお よび メタク リログアナ ミンと不飽和

カルボン酸の共重合と共重合体の性質

(1980年10月2日 受 理)

瀬 尾 利 弘*・金 井 俊 孝 ・加倉井 敏 夫

酸存在下でのアクリログアナ ミン(2,4-ジ ア ミノ-6-ビ ニル-1,3,5-ト リアジン)の単独重合お よびアク

リロニ トリルとの共重合をジメチルスルポキシ ド(DMSO)中60。Cで,開 始剤 として α,α'-アゾビス

イソプチ ロニ トリルを用 いて検討 した。ア クリログアナ ミン塩酸塩では,単 独重合お よび共重合速度が

アクリログアナ ミンに くらべて減少 し,ま たQ,e値 が増大するな ど重合反応性が大 きく変化すること

がわかった。アクリログアナ ミンお よび メタク リログアナ ミン(2,4-ジ ア ミノ-6-イ ソプロペ ニル-1,3,5-ト リアジ

ン)と アク リル酸お よび メタク リル酸 との共重合を同様の条件で行なった と ころ,交 互性のよい共重合

体が容易に得られた。こ れらの原因として,弱 塩基であるアミノ トリアジン環 と酸 との相互作用の影響

を考えた。31~75mo1%の トリアジン環を含むメタクリル酸-メ タクリログアナ ミン共重合体は,DMSO

に可溶,酸 お よびアルカリ水溶液に易溶で,中 性付近 のpH域 では不溶 とな った。こ れ ら共重合体の中

和滴定お よび粘度測定によ り,酸 性側ではポ リ(メタクリログアナ ミン),ア ルカ リ性側ではポ リメタク

リル酸 と類似の挙動を呈することがわか った。ま た,共 重合体の酸 および塩基水溶液中の還元粘度は希

釈によ りいちじるしく上昇 したが,塩 化ナ・トリウム添加系お よびDMSO中 では直線的に低下 し,両 性

電解質的挙動を示 した。さ らに,ト リアジン環組成が増すに したがい等電点がpH4.2~6.1ま で変化

し,一 方,カ オ リン懸濁液に対 し凝集作用の効果 も認め られた。

1緒 書

ア ミノー1,3,5一トリアジン環を もつ高分 子は反 応 性 高 分子 とし

て期待 され・ 一・方そ の剛直性・ 分子 間相互 作用・塩 基性 な どのた

め側鎖 に導入 した場合,高 分 子の性質 に大 きな影響 を与え る と考

え られ る◎す でに種 々の ア ク リログ アナ ミン(2,4一ジ ア ミルー6一ビ

ニルー1,3,5一トリアジン)お よび メ タク リログ アナ ミン(2,4一ジ ア

ミノー6一イ ソプ ロペ ニルー1,3,5一トリアジン)が 合 成 され,そ の重

合につ いて報 告 され てい る1)2》。しか し,グ アナ ミン の置換基 の種

類や 数お よび 生成 ポ リマーの構造,組 成 と諸性 質の関 係を研 究 し

た例 は きわ めて少 ない。1

著者 らは さきに ジ カルボン酸 ジエ ステル とジ ビグア ニ ドの反応

に よ り高分子 量 のポ リグ アナ ミン3)を 合成 し,つ い で トリアジ ン

環を含 む種 々の ポ リア ミ ド,ポ リエ ステルを 得た4)。0さ らに,含

/東京工 業大学 工学 部高分子 工学科,152東 京 都 目黒 区大 岡

1) C. G. Ove-be -ger, S. L. Shapiro, J. Am. Chem. Soc.,

76, 1061(1954) ; C. G. Overb- rgcr, F. W. Michelloti, ibid., 80, 988(1958).

2) Y. Yuki, T. Kakurai, T. Noguchi, Bull. Chem. Soc.

ノpn.43,2123(1970);結 城 康 夫,六 鹿 広 文,鬼 頭 鏡 貴,

高 分 子 論 文 集,36,385(1979).

3)瀬 尾 利 弘,石 渡 皓,加 倉 井 敏 夫 日化,1974,2419.

4)瀬 尾 利 弘,岡 本 博 史,加 倉 井 敏 夫,日 化,1975,165.

ニ トリル共重合 体 とジ シアン ジ ア ミドの反 応5》お よび ア ク リル酸

エ ステル含有 共重合 体 と ビグ ア ニ ドの反 応6)に よ り,ア ク リログ

アナ ミン構造 を も つ ポ リ マ ー を 合 成 し,そ の性質 を調 ぺ た◎ ま

た,既 報η におい て著者 らは 置換 ピグ ア ニ ドと不 飽和 力ル ボ ン酸

エ ステル または酸 無水物 を用 い て,ほ ぼ定 量的 に純粋 な メタ ク リ

ログ アナ ミン を得た◎ さらに,こ れ らモ ノマ ー と各種 メ タク リル

酸エ ステル との共重 合 性や,生 成 重合体 の構 造 と諸性 質 の関係 を

検 討 した8)◎

高分 子側鎖 へ の ア ミノ ト、リアジン環 の導入 は 高分子 鎖 の可 と う

性を減 じ,軟 化点や ガ ラス転 移点 を大 幅に 上昇 させ,ま た 比重 の

増 大や 溶解 性 の顕 著な変 化 も認 め られ た。こ れ らの性質 には ア ミ

ノ トリアジン環 の含有 率お よび ポ リマ ーb構 遇 組 成が 大 き く影

響す る こ とがわ か った0》8)A

本研 究 では,い ままで に報告 のな い酸が 存在 す る系 での ア ク リ

ロお よび メタ ク リログ アナ ミンの重 合性や ア ク リル酸 お よび メ タ

5)瀬 尾 利 弘 加 倉井 敏夫,野 口達 弥,高 分 子化学,30,76

(1973);瀬 尾 利弘,加 倉井 敏夫,野 口達弥,一高分 子化 学,30,451(1973).

6)瀬 尾利 弘,加 倉井 敏夫,高 分 子論文 集 ,32,308(1975);

瀬 尾利 弘,石 渡 皓,加 倉 井敏 夫,日 化,1980,87.

7)瀬 尾 利弘,青 木 義久,加 倉井 敏夫,臼 化,1980 ,342.8)瀬 尾利 弘,加 倉井 敏夫,日 本 化 学 会笛30森 駆鉱 合轟 毒

(1974) ; T. Seo, K. Abe, H. Honma, T. Kakurai , Polym. Prepr., 20, 661(1979).

Page 2: カルボン酸の共重合と共重合体の性質 - KT Polymerを溶媒として,Ubbelohde型 粘度計を用いて30土O.・05 で測定 した 塩酸水溶液および水酸化ナトリウム水溶液中の粘度はOst・

1014 日 本 化 学 会 誌  1981  N6.6

ク リル酸 との共 重合 を検討 した◎ つ いで,得 られ た メ タ ク リル

酸一メタ ク リ緯グ ア ナ ミン共重合 体 の両性電解 質的 挙動や 凝集作

用 の効果 につ いて調 べた。

2 実 験

  2.1試  薬

  2. 1.12,4一 ジ ア ミノー6-一ビニルー1, 3, 5一ト リア ジ ン(DAVT)

および その塩 酸塩(DAVT・HC1)の 合成:大 戸 らの 方法9)に よ

りN一 ア ミジ ノーo一メチ ル イ ソ尿素塩 酸塩 とアンモ ニ ア との反応

で ビグ ア ニ ド塩 酸塩(mp  220~223℃)を 合成 した◎ っ ぎに,ビ

グ ア ニ ド塩 酸塩 を メタ ノール 中水酸化 カ リウ ムで 中称 して得た遊

離塩 基 とア ク リル酸 ク ロリ ドの反 応 をジ クロロメタ ン中,0~5℃

で行 ない,目 的 とす るDAVTを 得た2)。ビ グ ア ニ ド塩酸 壇か ら

の収 率23、  6%,分 解 点(空 気 中)300~310℃,メ タ ノールか ら

再結 晶 した。

  分析値   C44.  05%,  H  5. 09%,  N 50. 86%

  計算 値 ℃43. 80%,H5.11%,  N 51. 09%

  DAVT・HC1はDAVTを メチルセ ロソル ブに 溶 解 し氷冷却 し

な が ら塩 化水素 ガスを吹 き込 み,溶 液 をエ ーテ ル中に注 ぎ沈殿 と

して 水 和 物 と して 得 た。収 率92. 5%,分 解 点(空 気中)240~

250。C,メ タ ノールか ら再 結 晶した◎

  分析 値  C31.・30%,  H 5.20%,  N 36・71%,  C119・43%

  計算 値  C31.33%,  H  5.22%,  N  36・55%,  Cl 18・ 54%

  2.1.22,4一 ジ ア ミノー6一イ ソプ ロペ ニ ルー-1, 3, 5一ト リア ジ ン

(AIPT)お よび2一 ア ミノ4一 アニ リノー6一イ ソプ ロベニ ルー1・ 3・ 5一

トリア ジン(AAIPT)の 合成:既 報7)の方法 にした がい,ピ グ ア

ニ ド遊離塩 基 または フ ェニル ビグ ァニ ドとメ タク リル酸 フ ェニル

との反 応 をジ メチル スル ポキ シ ド中,室 温で72時 間行な ったの

ち,反 応液 を濃 アル 力 リ水溶 液 中に注加す る。沈 殿物 を炉過後 水

で洗浄 し減 圧乾燥 して 目的 とす るAIPTお よびAAIPTを 得 た。

AIPT  : mp  247~248℃(収 率75.0%),メ タ ノールーメチ ルセ ロ

ソル ブか ら再 結 晶した。

  分析 値  C47。34%,  H 5・81%,  N 46・30%

  計算 値   C47.68%,  H 5. 96%,  N 46.36%

 AAIPT:mp  174~175。C(収 率85.4%),メ タ ノールー水 か ら

再 結晶 した。

  分析 値  C63.  04%,  H 541%,  N 30.72%

  計算 値  C63.44%,  H 5.73%,  N 30.83%

 前 記 モ ノマ ーの構 造式 と略 号をっ ぎ に示 す◎

     峯

 CH2mC

H点

X=H,R魑NH2{DAVTl

X鷹CH3,R=NH2{AIPT,

X零CH3,  R冨NHC6HsIAAIPTl

  ア ク リ冒ニ トリル,ア ク リル酸 お よび メタ ク リル酸は市 販品 を

蒸 留精製 して用 いた。ジ オ キサ ンは金属 ナ トリウ李で・ ジ メチル

スル ポキ シ ド(DMSO)は 水素 化 カル シ ウムで それ ぞれ乾 燥後 蒸

留 して使 用 した。α,αLア ゾビス イ ソブチ ロニ トリル(AIBN)お

よび カオ リンは市 販品 をそ め まま用い た◎

 2.2  重  合

 重 合 は,あ らか じめ所 定 濃度 に調製 した モ ノマ 「溶液 と開始 剤

 9)河 野 賢太 郎,大 戸 敬 二郎,有 合 化,20,649(1962).    、

溶液を コッ ク付 きの ガラス重 合管 に仕込み,凍 結,脱 気後真 空下

で封管 した。封 管 した アンプルは所 定温度 の恒温槽 中で静 直重合

を行 な った◎所 定時 間後,封 管内容物 を メ タ ノールまた はジエチ

ルエ ーテル中 に注誉,沈 殿 を炉過洗 浄後,減 圧乾燥 して ポ リマー

の収量 を求め た。共 重 合体 の組 成は炭 素お よび窒素 の元素 分析値

か ら求 めた。

  2.3  分解 点 および粘度 測定

  分解 点は島津 自記示差 熱分 析DTA-20  B型 お よ び ミクB示 差

熱 分析 装置MDM-20型 を使 用 して測定 した◎固 有粘度 はDMSO

を溶媒 として,Ubbelohde型 粘度計 を用 いて30土O.・05℃ で測定

した◎塩 酸水溶液 お よび水酸化 ナ トリウ ム水溶液 中の 粘度 はOst・

wald型 粘度計 を用 いて30±O.  05℃ で測定 した。

  2.4  中和滴 定お よび濁度 滴定

  ポ リマ ー0.29を0.019N塩 酸水 溶液80m勘 こ溶解 し, O. 02N

水 酸化 ナ ㌧リウ ム水溶 液を滴 下 しなが ら・溶 液 のpH、 変化 を 日立

軸 場製M-5型pHメ ー ターを用い て測定 した◎ 同時に濁度 は 日

立135型 分光光 度計を用 いて,525nmの 波 長で溶液Q透 過 率か

ら調べ た。

  2.5沈 降 速 度1。)

  内径1。4℃m,高 さ16・cmの 共栓付25  mZ沈 降管 に 力オ リン

1.259ワ お よび水23、5mZを 入 れ,は げ し くふ りまぜ25土0.05℃

恒 温槽 中に約50分 静置 す る。つ ぎにポ リマ ー0。1gをO、 ・eSN

塩 酸水溶 液100  mlに 溶 解 し た 溶 液 を 添 加 し て,1さ らに全 量が

25mZに な る ように水 を加え,40秒 間に10回 転 して か きまぜ る。

か きまぜ が終 った らた だちに沈降 管を 垂直に 立て,沈 降界面 の 目

盛 が1m彦 ずつ沈 降す るこ とに 時間を記 録 し,初 期 の25・mlか ら

18mJま での等速 沈降部分 の速度 を も って沈降 速度 とした。な お,

沈降 速度 は1分 間あ た りの 沈 降界面 の 高 さ の変化 量(cm/min)

に換 算 して表 示 した◇

  2.6清 澄 性le)

  沈 降速度 を測定 しな が ら,清 澄性を 沈降試験 開始後5分 の上澄

液 の600nmに おけ る透過率 で示 した。

  2。7  最 終沈降 容積(Vf)le)

  24時 間 ほ どで沈 降界面 はほ ぼ平衡値 に達す るの で,そ の ときの

沈 降容積 を最終 沈降容積(Vf)と した。

  2.8済 過 速 度10)

  図1に 示 す ような 炉過 装置 の 目皿 付漏斗 に東洋 炉紙No.5cを

しいて,ア ス ピ レ ー ターで大気圧 か ら15エmmHgだ け減 圧にす

る。Vf測 定 後の凝 集 した カ オ リンを静 かに5回 ほ ど転 倒 してか

き まぜ,均 一 に懸濁 した液 を 目皿漏 斗上へ 静か に しか も一気 に注

ぎ込み 炉過を 行な う。流 出す る炉液を メ ス シ リン ダ ー に受 け,

1mZ増 す ご とに 所 要時 間を記録 し,1戸 過 流量対 時間 の等速 部分

を とって炉過 速度(ml/min)と した。

3 実験結果と考察

3。1ア ク リログアナ ミン塩 酸塩 の重 合および共 重合

  ア ミノー1,3,5一トリアジ ン環 を 含 む ビ テルモ ノマ ーは弱 塩基 で

あ り,環 窒素へ の プ ロ トンの 付加 に よって,ビ ニル基の重 合反応

性が 大 き く変わ ると考 え られ る2)。そ こで,ア ク リログ アナ ミン

塩酸 塩 としてDAVT・HC1を 選 びその 単独重合 お よび ア ク リロ

ニ トリル との共重 合を 行な った6

10)坂 口嘉    長 瀬 邦 彦,工 化,69,1187(1966).

Page 3: カルボン酸の共重合と共重合体の性質 - KT Polymerを溶媒として,Ubbelohde型 粘度計を用いて30土O.・05 で測定 した 塩酸水溶液および水酸化ナトリウム水溶液中の粘度はOst・

日化,19Sl,  No.6 瀬尾。金 井 ・加 倉井:ア ク リ滋お よび メ タク リ揖グア才 ミンと不 飽和 カル ボ ン酸 の

共重合 と共重合 体の性 質

1015.

Table  2  Copolymerizationのof  DAVT  or DAVT・HC1

       (M2)with  acrylonitrile(M笈)

M2  in mo難o艶er  Time  Conversi◎n  M2  i捻copolymer                                         (mo1%)                 (h)    (wt%)  (mo1%)

  Fig  1  ApParatus  for  filtration  of  th6  aggregate

(A):Funnel  with  filter  plate,  (B):Measuring

cylinder,  (C):Aspirator,  (D):Filtering  flask,

(E):Valve  for  air  leak,(F):Me勾cury  manometer

Table  l  Homop◎1ymerizationのof  acryloguanamine

      and  hydrσchloride

M・n・mer諮C邪 曙 嶽(Rp×102mOlll・h)

M2:DAVT  I

    10. 0

    30.0

    50.0

    70。0

    90.0

M2:DAVT・HC1

10.0

30.0

50.0

70.0

90.0

221

2/31/3

  4

  9

13'16

18

a)  [M1コ 十[M2]=o.  20 mol/l,

   in DMSO  at 60℃.

15.2

12。5

24.8

25.5

18. 6

15.3

19.9

13。7

17.4

21.5

18.6

35.7

48。0

59.9

77.8

3.7

22.8

38。9

67.5

85.3

[AIBNコ=1.35×10儒8鵬OI/'

  Table  3  Copolymerization  para憲neters  of DAVT  and

         DAVT・HCl

M1の      M2      γ1   γ2  γ二r2  1/γ2  Q2    e2

 DAVTb)        2、 、     67・1,      6・7

DAVT・耳c1{釜   ll:1  8:ll

の   [M]=o.20mo1/1,[AIBN]=1、35×10禰3mol/z  in  DMsσ

    at  60。C.

ゐ)  2,4-Diamin◎-6-viny1-1,3,5-triazine。

 DAVTのDMSO中 の単独 重合 は不均一 系 とな った が,£' DAVT  t                                    き

HC1は 均一系 で重 合が進 行 した ◎ しか し,表1に 示す よ うに重 合

速度(Rp>は 塩酸塩 の方 が非常 に小 さい◎

 表2にDAVTお よびDAVT・HC1と ア クリロニ トリル との共

重合結果 を示 し,ま た表3にFin  eman--Ross  ,法に よって求め た

共重 合パ ラ メーターを既報 の デー タ とともに載 せた。

 共重 合 速 度 はAN-DAVT系 で は2。3×10-2~2.4×10-i  m◎1/

1・hでDAVTの 仕込 比が多 くな るほ ど増大 し, AN-DAVT・HC1

系 では2.5×10""3~8.6×10-3mol11・hで 前者 に くらべ 非常 に小

さい値で あ った。

  DAVTラ ジ カル に対す る異種 モ ノマーの反応 性 を示 す1/r2は

ア ク リロニ トリル(AN)〉 スチ レン(St)と な ってお り, e値 が

同 じマ イナ スの スチ レン とは共重合 性が悪 く,ア ク リロニ ト リル

とは共重 合性 が零い。一 方,DAVT・HC1ラ ジ 力ルに対 す る反 応

性 はSt>ANと な ってお り, e値 の符 号が反対 の ス チ レ ン とは

非 常に共重 合 しや すい ことがわ か る。

  以上 の よ うに,DAVT・HC1は 約2と い う正 の大 きなe値 を も

ち,DAVTと は異 な る重 合性 を示 す◎ また 共鳴 因子 であ るQ値

が大 きいため ポ リマ ーラ ジ カルは アク リログ アナ ミン塩酸塩 と反

応 し安定 化 されやすい ◎単独 重合速 度 が小 さいの もこの ため と思

わ れ る。こ の よ うなQ-e値 を示す の は,環 窒素 にプPト ンが 付

加した トリアジ ニル基 が カチ オン とな り側鎖 ア ミノ基 まで共鳴 が

広 ま り,そ の電 子求 引性 が ビニル基 に影 響を 与 え るため と説 明 さ

れ る§)◎

  3.2ア ク リ口お よび メタ ク リログ ア ナ ミ ン と不飽和 カ ルボ ン

酸の共 重合

  ここでは,ア ク リロお よび メタ クリ冒グ アナ ミン とア ク リ座酸

AN   DAVT      O.40  0.30  0.12  3.33  0.58  --0。26

AN   DAVT・HC1  1.44  0.62  0。89  1.62  1.56    2。35

St    DAVT     1.30  0.65  0.85  1.54  0.552)-O.382》

St    DAVT・HC10.10  0.16  0。02  6.25  1.252》   1.802)

  a)  Acrylonitrile(AN):Qエ=0.60,  eゴ=1.20,  Styrene.

       (St):Q1=1.0,  el』-0.80.

1◎0

おヨ 80

a

86。

.ヨ

}40

愚20ぢ

0・   2。  4。  6◎   80竃。O

   Mo1%of  M2  in monomer

Fig2  Monomer-copolymer  composition  curves  for  the

    copolymer  ◎f acrylo-  or   1nethacry1◎gua登a艶ine

    [M2⊃with  acrylic  acid[臨]

  〔M己 十 〔M2コ=(L  20題01/1,[AIBN]=真 ・35×10-9  mo1/l  in  DMSO  at 60℃

  ○=DAVT  with  acrylic  acid(AA),△:AIPT  with

  AA,口:AAIPT  with  AA

また は メ タク リル酸 との共 重合 行 ない,ア ミル トリアジン 環 と不

飽和 カル ボン酸 の相 互作用 が重 合 にお よぼ す 影 響 に つ い て調 ぺ

た◎ 図2にAAとDAVTお よびAAとAIPTの 共重 合結 果

を,図3にMAAとAIPTお よびMAAとAAIPTの 共 重合

結 果を示 した。こ れ らの結果 か ら求 めた 共重 合 パ ラ メー ターを 表

4に 載 せた。

  ア ク リル酸(AA)-DAVT系 に くらべ,メ タ ク リログ アナ ミン

とア ク リル酸 お よび メ タク リル酸 との 共重合 性 が きわめ て よい こ

Page 4: カルボン酸の共重合と共重合体の性質 - KT Polymerを溶媒として,Ubbelohde型 粘度計を用いて30土O.・05 で測定 した 塩酸水溶液および水酸化ナトリウム水溶液中の粘度はOst・

1016 目 本 化 学 誌 会 1981    No.6

  で◎0

お鍾  80

&

8  60

.餐ぶ

Σ  40

愚20も

    o            0    20   40   60    80  100

               Mo1%of  M2  in monomer

Fig  3  M◎nomer-copolymer  compositi◎n  curves  for the

    copolymer  ◎f methacryloguanamine  [M2■with

    methacrylic  acid[M1]

  [M二 〕十[M2]=o・  20mol/l,[AIBNコ=1・35× 手o脚3molll  at  60℃

    △:AIPT  with  MAA  in DMSO

    口:AAIPT  with  MAA  i捻DMSO

    ■:AAIPT  with  MAA  in Dioxane

とが,rユra値 の 小 さい ことか らわ か る◎ と くに, AA-AIPT系

では比 較的交 互性 の高 いポ リマ ーが 得 られ る と思われ る。一 ・方,

メタ ク リル酸(MAA)とAAIPTの 共重合 にお いて 非 プ ロ トン

性 極性 溶媒 であ るDMSOよ り極 性の低 い ジオキサ と中 では,仕

込 比に よらずほ ぼ1:1のMAA-AAIPT組 成 を もつ ポ リマ ー

が生成 しやす く,ま たMAA!AAIPT=1の 仕込比 の とき重 合率

が 最大 とな るQが 注 目され る。

  1/ri値 の比較 か ら,ア ク リル酸 ラジ カルは メタ ク リル酸 ラジ カ

ル よ りAIPTお よびAAIPTに 対 し非 常に反 応性 が高 い。AAIPT

ラジ カルお よびAIPTラ ジカル の ア ク参ル酸 または メタ クリル酸

に 対す る反応 性は,11r2値 よ りほ ぼ同程 度で あ るが ア ク リル酸 に

対す る活 性 の方 が やや大 きい◎ さ らに,表4か らメ タク リログ ア

ナ ミン と不飽 麹 力ル ボン酸 との共重 合性 は,メ タ クリル酸 エ ステ

ル8)と のそれ よ りきわめ て よい こ とがわ か る◎

 以 上の結 果 か ら,弱 塩 基 であ る ア ミノ トリアジ ン環 と不 飽和 力

Table  4  Copoly瓢erization、  parameters◎f  dcry1◎-and

       methacry1②guanamines

M1の     M2ib)    γ1    r2    γユfa   1/γユ    1/γ2

AA

AA

AA

MAA

MAA

EMA

EMA

DAVT"L

AIPT

AAIPT

AIPTAAIPT

AIpT

AAIPT

  1,50     0.50     0.75        き

、0.053    0.26     0.014

<0.1  1<0.1    〈 α01

  0,69     0.48     0。33

  0..29     0.25     0.07

  0.688>    1.108か    0.75

  0.638)   ユ.398>    0,88

:O.67     2.00

18.9     3.85

>10    >10

1.45     2.08

3.45     4,00

1.47     0、91

1.58     0.72

AA:Qユ ・=1.14,  e1=O、  90,卜MAA(methacrylic  acid):

Q1=1。59,  e1=O.66,£MA(ethyl  methacrylate);Q蒐

==0.7g, el=0.44.

DAVT:Q2=0.55,  e2=-0.38  f◎f St[M1],  AIPT:Q2

=1.07,e2=  -O.  13  for  EMA[M1],  AAIPT:Q2=

1.15,e2=O,05  for  EMA[M1].

ル ボン酸 との相 互作用 のた め,両 モ ノマーが1:1に 近 い弱い結

合をつ くり共重 合 しや す くな り,と くに活 性な ア ク リル酸 は含 ト

リアジン環 モ ノマー と交互 性の よい ポ リマーをつ くると考 え られ

る。さ らに,DMSOの よ うな極性溶 媒 中では モ ノマ ーは 溶媒和

されて モ ノマー間の強 い結合 は形成 し難 い が,極 性 の低 い溶媒中

では トリアジン環 と酸 との付加 が起 こ りやす く,1:1に 遮 \組成

の共重 合体が生 成す るの であろ う。

  つ ぎ に,AA-DAVT,  MAA-AIPTお よびMAA"AAIPT共

重 合体 の溶解性 を調 べた(表5)。

  これ ら酸成分 と トリアジ ン環を含 むポ リマ ーは,ベ ンゼン,ア

セ トン,ク ロ ロホル ムな どの有機溶 媒には不 溶 であ るが,酸 また

は アル 力 リ水溶液 に溶 け る。こ こで,MAA-AIPT共 重 合伽 ま

DMSOお よび 酸,ア ル カ リ水 溶液 に よ く溶 け る ことがわ か る。

また,ア ミノ基 を フ ェニル置換 したAAIPTとMAAの 共重合体

では,酸 アル カ リ水 溶液 に対す る溶解性 が低下 し,メ チルセ ロ

ソル ブやDMSOに 易溶 とな るのが特 徴的 であ る◎一方, P(MAA-

co-AIPT)に くらべP(AA-co-DAVT)がDMSO,酸 アル 力 リ水

溶 液に溶 け難い のは,後 者 のポ リマー では トリアジ ン環 とカル ボ

ン酸 との塩 形成 や トリアジン環 同志 の相互 作用が 強いた めで あろ

                                                                                  け ち

  Table  5  Solubilities◎f  copolymers  of acryi◎-or  methacryloguan3mi早e  with

        acrylic  or methacrylic  acid

助 …   楠 翻 ㎞t瀦MCS  DMS。釜i詔it器;ICl diLMQH

P(AA-co-DAVT)

P(MAA-co-AIPT)

P(MAA-co-AAIPT)            や

1ール隻

1

19.3

35.6

56,8

5.14

31,3

43.8

54.5

75.2

29.4

46.0

48。6

70.9

0.37

0.31

0。28

0.52

0。51

0.45

0.55

碁什

+

一荘

ロ廿

H廿

H廿

u廿

洞廿

+

+

一昔

粁耗

の   In DMSO  at 30℃.

り 趨 耀1獣 赫 ε麟v'鯉 鷺 認9㏄ 聯ti警s◎1ub'e・ 一

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F

日イヒ,1981,No.6 瀬尾 ・金井 ・加 倉 井:ア ク リ鷲お よび メ タク リログァナ ミン と不 飽和 カル ボ ン酸 の共重 合 と共 重合体 の性 質

1017

類似

7

5

5

4

3

2

壌go

50

(W )

O⇔楼邸り↑刷ε

紛儲縄』臼、

505鴇

Millieq.Hc1!9← →Millieq.NaoH19

Fi34pHandTurbidimetricchangeofaqueoussolu・

tionofcopolymersbytheadditionofHCIorNaOH

-:PI(MAA:AIPT=0 .947:0.053),一 一:P∬

(MAA:AIPT=0。687:0.313),一 一・一:PW(MAA:

AIPT=α455:0.545),一 一:PV(MAA:AIPT=

0.248:0.752)

↓:Triaz加eringeq"ivalentpqin㌻,↑:Methacrylic

acidequivalentpoint。

う。

3。3メ タケ リル 酸0メ タク リログアナ ミン共 重合体 の酸,塩 基

水溶液 中の挙動

3。3.1共 重 合体 の中和滴 定お よび濁度 滴定;著 者 らはす でに,

ポ リア ク リログ アナ ミン2)お よび酸,ア ル カ リ水 溶液 と相溶性 の

ない メタク リル酸エ ステル と メ タ ク リログ アナ ミンの共 重合体8)

がギ酸 中では電解 質的 挙動を呈 す る ことを 報告 した。こ の こ とか

ら,メ タク リル酸 を含む よ うな含 トリアジン環高 分子 は水に溶 け

や す くな りfま た その ポ リマーは両性 電解 質的挙動 を示 す と考 え

られ る。

タンパ ク質,函 リヌ クレオチ ドな ど天然 高分子 の多 くは両性 電

解 質であ り,そ の電 解質的 挙動 は複雑 であ る◎ そ の モデル ポ リマ

ーあ るいは脱塩膜 への応 用 を意図 しrア ク リル酸 また は メタ ク リ

ル酸 とビ ニル ピ リジ ン の共重 合体11}やア ク リル酸一ビ ニル アル コ

ール共重合 体 の ア ミノアセ タール化物12)な どい くつか合 成 されそ

の挙動が調 べ られ てい るが,両 性 の合成高 分子電解 質 に関す る知

見は まだ少 ない◎ そ こで,MAA-AIPT共 重 合体が 希塩酸 お よび

希水酸 化ナ トリウム水 溶液 に易溶 な こ とに着 目し,こ の ポ リマ ー

の 中和 滴定お よび濁度 滴定 を行 な った。共 重 合体 として,AIPT

含有率5. 14mo1%[PI],31・3mol%[P皿 コ,43。8mol%〔P皿 〕,

54.5 mo1%[PN],75・2mo1%[PV]の5種 を用 い て行 な った結

果 を図4に 示 した◎

ポ リマーを希塩 酸 に溶 か し水酸 化ナ トリウム水溶液 を添加 して

中和滴定 を行な うと,塩 酸 と水酸 化ナ トリウムの中和 点のpHは

トリアジン環含有 率の多V舷 どpH4~6へ と大 き くな った。ま

た,メ タク リル酸 と水酸 化 ナ トリウムの 当量点付 近 に変 曲点 が見

られ,そ の変 曲点 は メ タク リル酸含 有率 が多い ほ ど計 算 当量 点 の

手前 で現わ れ,ト リアジン環含 有率 の多いPVで は両 者は ほぼ

11) T. Alfrey, Jr., H. Morawetz, J. Am. Chem. Soc., 74, 436(1952) ; T. Alfrey, Jr., R. M. Fuoss, H. Morawetz , ibid., 74, 438(1952) : M. Kamachi , M. Kurihara, J. K.

Stille, Macromolecules, 5, 161(1972) .

§ 乾。U 

v *一+

霧奮一犠

ぢ δ 覧o

雪臥零

巴4ρむ さむ て ミ

Mo1%ofAIPTi血copoly恥6r

Fig.  5E狂ecゼ ・fc・P・lymer  c・mp・$iti・nup・nis・electricロ き

pomt

偽ざ

甑o

5.o

4.◎

03

tO

01050蕊 壌O

Millieq・Hc1/9← →Millieq.NaoH/9

Fig6Solut三 〇nvisc◎sities◎fcopolymersasafunction

ofdegreeofneutrali箔ationatCニ1  g/dl

O:P皿(MAA:.  .=0.687=0.313),△lP皿(MAA澗

:AIPT=0.562:0.438),》 ●:PV(MAA:AIPT=

0.248:0.752)

↓:firiaZineringequivalentpoint,↑:Methacrylic

acidequivalentpoint.

12)松 本 恒 隆,高 分 子 化 学,8,412(1951).

一致 して い る。こ れ は メタ ク リル酸 が隣接す れ ばす るほ どカル ボ

キ シル基 の解離抑 制作用 が大 き くな るた めで あ るユ%な お,酸 性

域 では ア ミノ トリアジン環 が弱塩基 のた め明瞭 な変 曲点 は観 察 さ

れな か った。

一方 ,濁 度 滴定 ではPIが 不 溶 領域を もた ない 以外す べ て中

和点 付近 に透過率0の 不 溶 領域 を もつ。そ こで濁度 が最 大の とき

のpHを 等電点 と して.  .含 有率 に対 し プ ロ ッ トす ると図5

が得 られyト リアジ ン環含 有量 が多 くな る に し た が い 直線 的 に

pH4.2~6.1ま で増 加す る。こ れ と類似 の結果 が,2一 ビ ニル ピ リ

ブン とメタ ク リル酸 との プ ロヅ クポ リマーめ場 合1ユ》に得 られ て お

り,弱 酸型 と弱塩 基型 の ポ リマーの 分子 内塩 形 成の 場合 に この よ

うなpH依 存性 が多 く見 られ る。

3.3. 2共 重合 体 水溶液 の粘度 の酸,塩 基 濃 度 依 存 性:図6に

1 1 i i共 重 合体 水溶液 の酸 お よび塩 基濃 度を 変 えた場 合 の

粘度変化 を示 した。中 性付近 に ポ リマ ーの分子 内塩 形成 に よる不

溶 領域 があ り,酸 濃度 の増 加 と ともに相 対粘 度は 上昇 し極 大点 を

示 して下 降す る。こ の傾 向は トリアジ ン環含 有率 の 多い ポ リマ ー

ほ どい ち じるし く・ また その極 大点 は酸 と トリアジ ン環 との 中和

当量点 よ り手 前 に現わ れ る よ うにな る。

13)坂 口康義,岩 垣 義久,玉 置 克 之t高 分子 化学,29,73

(1972)。

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1018 日  本  イヒ  学   会  誌    1981   N◎.6

50

らo

ao 

 

 

(切\、℃)

Q\偽。魯

1.e

                  〇            〇         〇.5         鳳O

                        C(9/dl)

Fig. 7  Viscosity  behavior  of copolymers  in acid  solu、-

    tion(10・5millieq.  HC1/9)and  in DMSO

      O:P皿(MAA  AIPT=0。687:0。313)

      △:P皿(MAA  AIPT=0.562:0.438)

      口:PN(MAA  AIPT二 〇.455:0.545)

      ●:PV(MAA  AIPT二 〇.248:0.752)

           :In  acid  solution,一 一一:In  DMSO

  アセ トグ アナ ミン(PKa=5.  14)は 酸 性溶液 におい て,3位 の

環 窒素 に プ ロbン 付 加 が起 こ りイ ミニウム カチ オ ン 〔1〕 とな る

こ とが知 られ てい る粉。

             濫          H2N人轟2

              〔1〕

 共重合体においても塩酸中では 〔1〕のようなポリ力チオンが

生成しており,そ のイオン間の反発によってポリマーの分子内塩

の結合がこわされ高分子鎖が引き伸ばされて粘度が上昇すると思

われる。中 性域より盗基側ではポリマーが可溶化し粘度が高くな

るが,塩 基濃度の増加にともない低下する。こ れは一般のポリメ

タクリル酸の水酸化ナトリウム水溶液における挙動と同じであ

る0

  3.3。3共 重合体水溶液の粘度の濃度依存性; MAA-AIPT共

重合体の酸性および塩基性における水溶液の粘度の濃度依存性を

調べたところ,図7に 示すように酸性側では トリアジン環含有率

が多いほど希釈による粒度上昇が大きく,含 有率が低い場合は極

大点が見られ,2一 ビニルピリジンーメタクリル酸共重合体ll)と同

様な傾向を示した。ま た図8に 示すように塩基側ではポリメタク

リル酸と類似した希釈による粘度上昇が見られた。塩 化ナトリウ

ムを添加した系では図9の ようにいちじるしい粘度低下を示し,

さらに希釈により還元粘度はDMSO中 の値に近 くなった◎ この

ようにMAA-AIPT共 重命体はいままでに合成されている両性

高分子電解質と同様の挙動を顕著に示す。

 一方,MAA-AAIPT共 重合体はアルカリ水溶液に不溶であり,

窃x` 

εv、ざ

o   O.5

C(9/dり

り、o

Fig,8  Viscosity  behavi◎r  of  copolymers  in  basic  s◎1u・

    ti◎n(5。  O millieq.  NaOHlg)

○ 二P皿(MAA:AIPT=O.687:0,313)

●=PV(MAA:AIPT=O,248:0.752)

O-鱒-

6,0

5.o

§ 屯。ミ

ミ3.◎ぎ

  2.0

                      

        1メo 

                   〇              〇         〇.5        1.O

                       c(91dl)

Fig。9  Visc◎sity  behavi◎r  of copolymer皿(MAA:AIPT

    =0,562:0.438)in  acid selution(5.  O millieq. HC1/g)

    and  in DMSO

14)  田代辰夫,安 田  誠,高 分 子化学,26,853(1969).

    :In  acid  solution  l

-」:In  acid  Solution  with  O 。04N  NaC1

-一:In  DMSO

酸性水溶液に亀DMSOを 加えないと溶解せず,ま だ図10,11

に示すように酸添加および希釈たよる粘度変化が少なく電解質的

挙動はあまり顕著に見られない。こ れは,ア ミノ基をフェニル置

換したためより疎水結合の影響が大きくなったものと考えられ                                ず                                        

る。                              '

 3.4  共 重 合体の凝 集剤 と して の効果

  高分 子凝集剤 と して代表的 な ポ リア ク リル ア ミドは,非 イオン

性 で主 として ア ミド基 が水 素結合 に よって分散,懸 濁 粒子 に吸着

し粒子 間の橋か けに よって凝 集す る。負 電 荷を帯 びた カオ リンの

よ うな浮遊 粒子 に対 しては 非 イオン性 よ,りも陽 イオン性の高 分子

電解 質の方 がす ぐれた凝 集効果 を示 す と考 え られ,ポ リ(ビ ニル

イ ミダ ゾリン)15),ポ リア ク リル ア ミドのMannich変 性物16)な

15)  Rohm&Haas Co.,特 公 昭42-6271;特 公 昭42-9653.

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日化,1981,No.6 瀬尾 ・金井 ・加 倉井:ア ク リ湿お よび メ タク リログア ナ ミンと不 飽和 カル ボ ン酸 の共重合 と共重合体 の性質

1019`

2。O

1.5

露to

O.5

        0          6   5    4    3    2    1    0

                    Millieq;  Hc1/9←              ド                            を

Fi9. IO  $01晦qn  visc◎sitiサs pf MAA-AAIpT  cop◎1ymers

     as a functi◎n  of d6gree◎f  neutralizati◎n  at C=1

     9/dl                            `

          O  MAA  AAIPT=0.706:0。294

          △   MAA  AAIPT=0.540:0.460

          口   MAA  AみIPT=0.39ユ:0.709

4.5

 

嵐◎

(迦

)

O\貸ψ魯

O.5

            0              0         0.5         嘩.O

                      C(9/dl)

Fig  ll  Visc6sity  behavior  of MAA-AAIPT  copolymers

      in acid s◎1ution(1。25  millieq.  Hc119)

       O  MAA:AAIPT=0.706:0.294

      △   MAA:AAIPT=0.540:0.460

      口   MAA:AAIPT=0.291:0.709

            1n acid  soluti◎n

      -・-  In acid  solution  with  O.04NNaC1

      -一 一  In DMSO

どがつ くられて い る。ま た これ らは 微生物 の凝集 に有 効 とされ て

いる17)。前 述の メタク リル酸一メタ ク リPグ ア ナ ミン共 重合体 は

塩酸 中で ポ リカチ オン とトての挙動 を示す。そ こで,こ の性質 を

利用 し凝集 剤 と して の可能 性を検 討 してみた。こ の 場合 ,両 性電

解質のた め酸性 で凝集 させ,ア ル 力 リ性 に して可溶 化 しふたた び

使用で き るこ とも考 え られ る。

  高分子凝 集剤 に よって懸濁液 を凝 集 させ る場合,よ く凝集 され

た ものほ ど沈降,炉 過 お よび清澄 性が促進 され,し か も最終 容積

16)  A・M・Schiller,  T・J.Suln,  lnd. Eng,  Chem .,48,2132

     (1956)。

17)  大森 英三,"高 分 子凝 集剤",高 分子 刊行 会(1973)P .36,

曾'壼な。

喜      (03.0  100)

9       8鍍

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馨t。5・1

慧     緩

1・。____8_㎝ 鋭 ←        Weigh㌻percent  of poly魚er  for kaolin

Fig  12  Relationship  ◎f sedimentation  rate  and  degree

      e⑨f clarification  vs.  a搬ounts  of added  copoly斑er

      皿(MAA:AIPT=0.562:0.438)

曾 届                      o

量乳。         羅§            鱒書.9 ・・5                 11曼奎                    魂k。

。。ゆ1α ρ2。鯛a。4。ゆ5α ◎6。。7aρ3α。90.雪。。"窒。、2。崖

        Weight  percent◎f  po1ymer  for kao聡n

Fig.13  Relationship ,of filtering  rate  and  final  volume

      [vf]vs・amounts  of added  copolymer皿(MAA=

      AIPT=0.562;0.438)

L紙

oo

  O

 曹  1

A

l   書

  A

l   l

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1   1

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 1   聾

●■幽

鯛幽

17

が 大 き くな る とい う研究 が あ る18)。そ こで,MAA-AIPT共 重 合

体(AIPT含 有 率43・ 8mo1%)に つい て こ れ ら の測 定を 行 な っ

た。図12に 沈降速 度 と共重 合体添 加 量の関 係を 示 した。分 子 量

100万 程 度の ポ リア ク リル ア ミド,ポ リ(4一ビニル ピ リジン)塩 酸

堪 の沈降 速度8)14)にくらべ ややMAA-AIPT共 重 合体 の方 が遅 い

が・[η]=O・ ・30(DMSO中,30℃)と 分子量 が小 さい ことを考 え

る と十分 速 く沈 降 させ る効果 が あ るといえ る。L添 加量 に関 しては 約O. 03 wt%(ポ リマ ー/力 オ リン)ま では,

沈降 速度 は急激 に立 ち上 が り,そ れ 以 上 で は 徐 々に 増大 して い

る。一 方,図13に 示 す よ うにi戸過 速度,最 終 容積(Vf)に つい て

は他 の高 分子量 の ポ リマーの場 合 と比 較す る と小 さい 値 であ る。

  これ らの こ とを考 え合わ せ る と,MAA-AIPT共 重合 体は 分 子

量が小 さい ため に フ ロッ ク状態 か ら さらに集 ま って アグ リゲ ー ト

の大 きな集合 体 にな り難 く,添 加量 が多 くな って も凝 集体 の径 は

大 き くな らず カオ リン粒子 は小 さ く密に かた まる。そ の ため 沈降

速 度 は速 くな るが,源 過度 速は ほぼ 飽 和値 に達 し また 最終 容 積 も

大 き くな らない と考 え られ る。な お,図12の 添 加 量が 多 くな る

に したが って清 澄性 が低下 す るのは,沈 降速 度 が速 くな るほ ど凝

集 体 の徴小 な粒子 がか きまぜ られ て 浮遊 残 存す るた めで あ ろ う。

  以上 の結果 を もとに さ らに 高分 子量 の各種 共重 合体 に つい て検

討す れば毒 性の 少 な い 高分子 凝集 剤 と し て の 可能 性 も期待 され

る。

    (1974年6月,高 分 子学 会SS 23回 年次 大会(一一部)発 衷)

18)坂 口嘉 平,長 瀬 邦 私 工 化,69,1192(1966)。

Page 8: カルボン酸の共重合と共重合体の性質 - KT Polymerを溶媒として,Ubbelohde型 粘度計を用いて30土O.・05 で測定 した 塩酸水溶液および水酸化ナトリウム水溶液中の粘度はOst・

1020 日 本 化 学 会 誌"1981Nα6

Copolymerization of Acrylo- or Methacryloguanamine with

Unsaturated Carboxylic Acid and Properties

of the Copolymers

Toshihiro SEo*, Toshitaka KANAI and Toshio KAKURAI

Department of High Polymer Technology, Tokyo Institute of Technology ; Ookayama, Meguro-ku, Tokyo 152 japan

The homopolymerization of acryloguanamine (2, 4-diamino-6-vinyl-1, 3, 5-triazine) and the copolymerization of this with acrylonitrile in the presence of acid were investigated in dimethyl

sulfoxide (DMSO) at 60°C using a, ce-azobisisobutyronitrile as an initiator. The rate of polymerization of acryloguanamine hydrochloride was less than that of free acryloguanamine, and Q and e values of the former were larger than those of the latter. This suggested that the reactivity of polymerization of acryloguanamine could be controlled by the addition of an acid. When the copolymerization of acrylo- and/or methacryloguanamine (2, 4-diamino-6-isoprope-ny1-1, 3, 5-triazine) with acrylic and/or methacrylic acid was carried out under above-mentioned conditions, a highly alternating excellent copolymer was easily obtained, which could be due to hydrogen bonding formed by an interaction between a weak base of amino-1, 3, 5-triazine ring and unsaturated carboxylic acid. Methacrylic acid-methacryloguanamine copolymers con-taining 31-75 mol% of triazine rings were soluble in DMSO, readily soluble in either acid or alkaline aqueous media, and insoluble in aqueous solution whose pH showed near neutral values. The titration curves of these copolymers in alkaline solution were similar to that of poly (methacrylic acid). The reduced viscosity increased with dilution in the case of acid or basic solution, but decreased linearly in the case of aqueous sodium chloride solution or DMSO. These results indicated that the copolymers were ampholytes. The isoelectric point of these ampholytes increased, with triazine ring content from pH 4. 2 to 6. 1 and showed an aggregation effect toward aqueous suspension of kaolin.