ミルクmfg-e8/lactadherinの乳脂肪品質管理における役...

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ミルクMFG-E8/lactadherinの乳脂肪品質管理における役 誌名 誌名 ミルクサイエンス = Milk science ISSN ISSN 13430289 著者 著者 安枝, 武彦 大島, 健司 西尾, 俊亮 中谷, 肇 灘野, 大太 松田, 幹 巻/号 巻/号 62巻3号 掲載ページ 掲載ページ p. 125-129 発行年月 発行年月 2013年12月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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ミルクMFG-E8/lactadherinの乳脂肪品質管理における役割

誌名誌名 ミルクサイエンス = Milk science

ISSNISSN 13430289

著者著者

安枝, 武彦大島, 健司西尾, 俊亮中谷, 肇灘野, 大太松田, 幹

巻/号巻/号 62巻3号

掲載ページ掲載ページ p. 125-129

発行年月発行年月 2013年12月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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Milk Science Vol. 62, No. 3 2013

睡謹覇盟麗盟謹調鵠平成25年度酪農科学シンポジウム

ミルク MFG-ES/lactadherinの乳脂肪品質管理における役割

安枝武彦1*・大島健司し西尾俊亮1・中谷肇2・灘野大太1・松田 幹l

(1名古屋大学大学院生命農学研究科,名古屋市千種区不老町, 464-8601)

(2名古屋大学大学院工学研究科,名古屋市千種区不老町, 4648603)

A possible role of milk MFGーE8/lactadherinin milk-fat quality control

Takehiko Yasueda1*, Kenzi Oshima1, Shunsuke Nishio1, Hajime Nakatani2, Daita Nadano1, and Tsukasa Matsudal

(1Graduate School of Bioagricultural Sciences, Nagoya University, Furo

(2Graduate School of Engineering, Nagoya University, Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya 464-8603, Japan)

1. ユニークな生体脂質としての乳脂肪球

乳脂肪は乳腺が合成,分泌するユニークな脂質であ

り,乳腺上皮細胞由来の脂質膜構造(乳脂肪球膜:

MFGM)で被覆された微小な油滴である乳脂肪球とし

て乳中に分散して存在する。乳脂肪球は, トリグリセリ

ドの油滴として乳腺上皮細胞の小胞体で合成された後,

細胞質内を移動し頂端側細胞膜により被覆されながら,

出芽により乳中へと分泌される。このような乳腺特異的

な経路により離出分泌される乳脂肪球は,小胞体膜

(MFGM内側リン脂質単層膜)で被覆されたトリグリ

セリドの脂肪滴が,さらに乳腺上皮細胞の細胞膜

(MFGM外側リン脂質二重層膜)で被覆された特徴的

な構造を持つ。 MFGMには,乳腺上皮細胞由来の多様

な膜タンパク質が局在し,膜貫通型のブチロフィリン

や,膜表在型のキサンチンオキシダーゼ,アディポフィ

リンや MFG-ES /lactadherinなどが存在する。凍結割

断法や凍結超薄切片を用いた電子顕徴鏡観察により,乳

脂肪球の微細構造を解析すると,乳脂肪球内部に複数の

徴小脂肪滴が密集して存在する様子が観察され,複数の

脂肪滴が複合体として離出分泌されることも示唆されて

いる1)。

高等動物の生体内における脂質はリボタンパク質とし

て輸送される。一方,母乳を介して乳児に輸送される乳

脂肪は,リボタンパク質ではなく乳脂肪球である。乳脂

*連絡者安枝武彦(やすえだたけひこ)干4648601 名古屋市千種区不老町名古屋大学大学院生

命農学研究科

(Tel : 052-789-5514, E-mail : [email protected]) 2013年11月5日 受付2013年11月11日受理[doi:l0.11465/milk.62.125]

肪球とリボタンパク質の形態,徴細構造,構成成分を比

較すると,脂質とタンパク質の複合体という基本構造は

類似しているが,粒子の大きさ,油滴を被覆する膜構

造,膜の構成成分などが大きく異なる(表 1)。リボタ

ンパク質は, トリグリセリドやコレステローlレエステル

などの脂質をリン脂質一重層とアボタンパク質が被覆し

た直径10-80nmの球状粒子であるのに対し,乳脂肪球

はトリグリセリドの油滴をリン脂質一重層と小胞体膜タ

ンパク質が被覆し,さらに乳腺上皮細胞の細胞膜および

膜タンパク質が被覆した1,000-8,000nmの球状粒子と

して乳中に分散している。リボタンパク質および乳脂肪

球の細胞内での生合成経路は,小胞体でトリグリセリド

が合成されるまでは同じであると推定される。しかし,

その後の分泌経路が全く異なり,リボタンパク質は小胞

体内腔へ離出し分泌タンパク質と同じ分泌小胞経路でゴ

ルジ体を経て細胞外へと分泌されるが,一方,乳脂肪球

は小胞体から細胞質に離出し細胞内油滴として輸送され

細胞膜に包まれて乳腺管腔へ離出分泌される。このよう

に,乳脂肪球はリボタンパク質などの他の生体内脂質と

大きく異なり極めて特有の形態・構造的特徴を持つが,

乳中の脂質が血中と同じリボタンパク質ではなく,脂肪

表 1 乳脂肪球とリポタンパク質の構造比較

乳脂肪球 リボタンパク質

直径 1,000-8,000 nm 10-80nm

分泌様式 油細胞滴膜が細胞覆質に出て 一般体的な経小胞体分, ゴにわれて離 ルジをる泌小

出分泌 胞経路

膜構造

体(リ+細膜ンリ胞脂由ン膜質来脂由単)来質層)二付重岨層体リ膜ン脂由質来単)層 (小胞

膜タンパク質 多(乳様腺な上膜皮タ由ン来パ)ク質 アボタンパ来ク質) (小腸,肝臓由

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MFGMに含まれる MFG-ESに相当する膜タンパク

質は, PAS6-7あるいは lactadherinとして長い研究の

歴史がある2~10)。MFG-ESはマウス MFGMに表在す Spike3

る膜糖タンパク質として同定され,全アミノ酸配列が決

定された2)。MFG-ESはヒト(lactadherin ),ウシ

(PAS 6-7),マウスを含む晴乳類でオルソログが存在

し,分子構造は N末端のシグナル配列に続き, lつも

しくは 2つの EGF(epidermal growth factor)ーlikedo-

main,血液凝固第Vおよび第四因子に相向性をもっ 2つ

のCdomainから構成される。既に立体構造が解析され

ているウシ MFG-ESのCdomain (PDB ID: 3BN6)と

ヒト Del-1(PDB ID: 4D90) (MFG-ESのパラログと

推定される分子)のデータを基に,分子モデリングプロ

グラム MOE(Molecular Operating Environment)を用

いて作成したウシ MFG-ES/PAS6-7の推定立体構造

モデルを図 1に示す。 EGF

(Arg一Gly一Asp)配列は分子から突出したル一プ上に位

置し, 細胞の受容体である αvβ3,α'.V(J5インテグリンに

結合する。一方, Cdomainはβシートに富む球状の構

造で, EGFlike domainと繋がる領域の反対側に3つの

突き出たループ構造を持つ。この突き 出たループは

spike 1, 2および3と名付けられ, spike1, 3構造を形

成する疎水性および塩基性アミノ酸残基がホスファチジ

Jレセリンとの結合に必要であると考えられている3,4)。

MFG-ESはアポトーシス細胞表面に露出したホスフ

ァチジルセリンに結合し,被貧食標識分子となることが

報告されている5)。MFG-ESは全身の多様な組織で発

現しているが,特に泌乳期乳腺で高発現しており,その

発現量は離乳後にさらに高まる6)。MFGMタンパク質

として同定された MFG-ESは,長らく MFGMの内在

性成分であると考えられてきたが7),脂肪滴の分泌に関

与しない活性化マクロファージなど, 乳腺上皮細胞以外

の多様な細胞種においても MFG-ESが発現し,分泌さ

れることが明らかとなってきた5)。Aの主e8遺伝子欠損マ

ウスを用いた近年の研究によ りsl,MFG-ESは乳脂肪

球の分泌に必須な内在性成分ではなく,また乳清にも遊

離あるいは膜小胞に結合した状態で相当量が含まれるこ

とが明らかにされた6)。さらに,表面に MFG-ESが検

出できない乳脂肪球も一部存在し(図 2),乳脂肪球が

分泌された後に MFGM外葉のホスファチジルセリンに

結合することが示唆されている9,10)。以上のこ とから,

乳中における MFG-ESは,乳脂肪球結合型に加えて,

乳清画分に存在するリン脂質膜小胞結合型,遊離型の 3

126

球の形態をとる生理的意義,目的は明らかではない。

2. 乳脂肪球膜(MFGM)タンパク質として同定され

たMFG-EB/PAS6-7 /lactadherin

第62巻

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図1 ウシ MFG-ES/PAS6-7の推定立体構造モデル

MFG-ES ー+

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’P 圃圃・i 凶.‘「-.. MFG-ES -「て|「,...I

図2 マウス乳における MFG-ES抗体染色陰性の乳脂肪球および乳清画分に含まれる MFG-ES

種の形態で存在すると考えられる。マウス乳腺組織切片

を抗MFG-ES抗体を用いて,蛍光免疫組織化学的手法

により観察すると,離乳直後の乳腺組織切片では乳腺管

腔の中央部に MFG-ESのシグナルが観察されるが,離

乳後の経過時間とともにそのシグナルは上皮頂端近辺へ

と集積する様子が観察される6)。しかし,乳脂肪球や乳

清中に存在するMFG-ESの機能や乳に含まれる生理的

意義ついては明らかではない。

3. 授乳停止により乳腺胞に滞留した乳脂肪球の変化と

動態

泌乳期の乳腺上皮細胞で合成,分泌された乳は,乳腺

胞内に一定時間保持される。乳腺胞内が乳で満たされる

と乳成分の分泌は停止し,授乳や搾乳により排出される

と再度合成,分泌されるというサイクルが泌乳期聞を通

して繰り返される。授乳や搾乳にはインターパルがあ

り,その間,乳は乳腺管腔内に滞留し,授乳や搾乳後も

一部の乳は乳腺胞内に残留するため,乳の入れ替えは不

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第 3号

乳の合成・分泌〈貯留〉

(一部の乳は残留)

図3 泌乳期の乳腺胞における乳の排出と貯留のサイクル

完全である(図 3)。一方,離乳により授乳が終了する

と乳腺管腔に乳が長期間蓄積し,乳腺は乳の産生を終了

し,次の妊娠に備えるための不可逆的な組織リモデリン

グの第一段階である乳腺の退縮を始める。泌乳期におけ

る授乳や搾乳の一時休止の間,また,離乳後の乳腺退縮

期における乳腺管腔内に残留した乳成分の変化に関する

情報は限定的である。筆者らは,授乳停止後の乳成分,

特に乳脂肪球の量的,質的変化を明らかにすることを目

的とし,授乳停止後3時間および48時間後のマウスか

ら搾乳により乳サンプルを調製し,乳成分を生化学的手

法により,定量 -定性的に分析した。その結果,乳中の

タンパク質含量および組成は,乳腺管腔に滞留した時間

に関わらず,顕著な変化はみられなかったが,乳中の脂

肪含量は授乳停止後48時間で 1/2以下に減少し,対照

的に乳脂肪球表面の MFGESの染色強度が増加し

た10)。また,マウス乳腺組織切片を脂溶性蛍光色素で

蛍光染色し観察すると,授乳停止48時間後の乳腺組織

切片では乳腺上皮近傍もしくは上皮内部に脂肪滴が局在

する様子が観察され,これは MFG-ESの離乳後の乳腺

胞内での動態6)と類似していた。授乳停止後に,乳中の

脂肪含量のみが急速に減少する原因として,乳脂肪が乳

腺上皮に結合,もしくは再吸収された結果,脂肪含量が

低下すると推定している。

4. 乳腺上皮細胞による一部の乳脂肪球の再吸収と

MFG-ESの関与

乳脂肪球と乳腺上皮細胞の相互作用を明らかにするた

めに,培養マウス乳腺上皮 HCll細胞株での invitroモ

デル系を用いて解析した。マウスから搾乳した乳を添加

し,乳脂肪球は密度が低く培地中で浮いてしまうため細

胞層を上下反転させる工夫をして細胞と乳脂肪球を相互

作用させた後,細胞を固定し,脂質を染色して乳脂肪球

乳を培地に添加し、5時間培養

↓ 事L入り培地を除去後、血清培地で18時間培養

↓ 4目パラホJレムアルデヒドでHC11細胞を固定

↓ Nile redもし〈はOilred 0 により脂質を染色

↓ 共焦点レーザー顕微鏡or位相差顕微鏡で観察

127

長言語Lみ局、γ一一一~イ~も単語~ E転 きごコギツ

支柱(パスツールピペットの先端〉

HC11を褒面に培養したカパ グラス

図4 乳腺上皮細胞一乳脂肪球の相互作用を研究するための細胞培養法

と乳腺上皮細胞の相互作用を解析した(図的。乳脂肪

球が乳腺上皮細胞の表面に結合している様子が観察さ

れ,このような乳脂肪球の乳腺上皮細胞への結合は,授

乳停止3時間後の乳よりも48時間後の乳の方が顕著で

あった10)。さらに,いくつかの乳脂肪球は乳腺上皮細

胞の細胞骨格 F-actinで被覆され細胞内部に局在してお

り,乳脂肪球が細胞内に取り込まれている様子が観察さ

れた(Yasueda T et al.,未発表)。先行研究での,ウシ

の乳腺組織切片の電子顕微鏡観察においても,乳脂肪球

が乳腺上皮細胞に貧食されることが示唆されてお

り11),乳腺管腔に分泌された乳脂肪球の一部は,何ら

かの目的を持って,乳腺上皮細胞に再吸収されることが

示唆された。授乳停止後の時間経過とともに乳脂肪球表

面の MFGESが増加し, MFG-ESの増加に比例して

乳脂肪球の乳腺上皮細胞による取り込みが増加するこ

と,抗 MFG-ES抗体の添加により乳脂肪球の取り込み

が回害されたこと10)'l¥の主e8遺伝子欠損マウスの乳脂

肪球では乳腺上皮細胞による取り込みが顕著に低下した

こと(YasuedaT et al.,未発表)から,乳脂肪球の再

吸収に MFG-ESが重要な役割を持つことが示された。

乳腺胞内に滞留した乳脂肪球表面には MFGESが多く

存在することから,分泌後の時間経過とともに脂肪球外

葉に露出したホスファチジルセリンに MFG-ESが結合

し,これが乳腺胞内に長く滞留した乳脂肪球の識別シグ

ナルになっている可能性が考えられる(図 5)。

5. 乳腺における乳脂肪球の再吸収と乳脂肪の品質管理

MFG-ESの分子構造や機能に関する理解は, MFG-

ESが遺伝子として同定されてから急速に進んできたが,

MFGMの構成成分としての MFG-ESの機能や乳中に

存在する生理的意義や役割に関する理解は乏しい。離乳

に伴い,乳中のタンパク質含量やカゼインを含む主要な

乳タンパク質の組成は変わらないが,乳中の脂肪含量が

急激に低下するという現象や,培養乳腺上皮細胞による

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①乳脂肪球の分泌

②再吸収の標識(MFG-ESの結合)

③乳脂肪球の再吸収

④乳脂肪球の代謝(再利用?)

図5 MFG-ESが関与する乳腺上皮細胞による乳脂肪球の再吸収機構(推定模式図)

乳脂肪の取り込み現象は,乳腺管腔に一部残留する乳脂

肪球を離乳後のある時点で乳腺上皮細胞が選択的に再吸

収することを示唆している。授乳の一時休止や離乳によ

り吸引刺激や乳の乳腺胞からの排出が中断すると,乳脂

肪球の分泌は停止するとともに乳脂肪球は乳腺胞内に滞

留し,次の授乳以降も部分的に残留する。その結果,一

部の乳脂肪球は乳腺内に長期間滞留し,乳児栄養に重要

な多価不飽和脂肪酸などが酸化的劣化を受ける可能性が

ある。今後詳細に解析する必要があるが,マウス乳中の

過酸化脂質産物を TBARS法により測定すると,授乳

停止後48時間で乳の TBARS値が上昇傾向を示すとい

う予備的な結果も得られている(Yasueda et al.,未発

表)。乳腺管腔内には感染防御のために,好中球,マク

ロファージが浸潤し,これら免疫細胞は活性酸素種

(ROS)を産生する12)。また,乳中には,活性酸素種の

消去に関与するセルロプラスミンが存在し,離乳後に乳

腺での発現と乳中濃度が顕著に上昇する13)。このよう

に,乳腺管腔内は酸化ストレスに曝されていると推定さ

れ, 一部の乳脂肪の再吸収は,酸化的劣化を受けた乳脂

肪を乳児に供給しない,言い換えると,できるだけ新鮮

な乳脂肪を供給するための機構の一つであるかもしれな

し、。

乳腺胞中の乳脂肪球の量と品質は,授乳や搾乳による

乳の排出,乳腺上皮細胞による乳脂肪の生合成,分泌,

再吸収に依存した需要と供給の微妙な均衡により適切に

維持されていると推定される。このような乳腺における

乳脂肪球の動態制御を介して MFG-E8が脂質成分の品

質管理に何らかの役割を持つ,という作業仮説の下に,

それを実証するための研究を進めている。

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