レーダエコーからみた東北地方の降ひょう*551. 509. 311; 551. 577. 11...
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551. 509. 311; 551. 577. 11
レーダエコーからみた東北地方の降ひょう*
佐々木 芳 春
要旨
東北地方の降ひょうの発生は,5月~8月に多く,地域的には福島県を中心とした内陸・山沿い地方に多
い.5月・6月は上層の強い寒気移流による対流不安定が原因であり,7月・8月は下層の高温湿潤による
対流不安定が主な原因である.
エコーパターソでみると,団塊状エコー(孤立した対流性エコー,直径数十kmまで発達する)によるも
のが63%を占めているが,帯状エコーによるものは32%と少なく,このパターソでは大雨の発生している例
が多い.エコー頂高度(∬),反射強度(Z)で分類すると,雷雨期間ではEが8km以上でZが106・omm6/m3
(R=200mm/hrの降雨強度に相当),雷雨期間外では∬が8km以上でZが105・5mm6/m3(1~=・100
mm/hr)で降ひょうの発生が期待され,さらにエコー頂が一40。Cの高度に達するかどうかが重要である.
しかし,同じ条件にありながら降ひょうの発生していない例も多く,時間的・空間的にスケールの小さい降
ひょうの解析はかなり難しい.
1.まえがき
落雷・降ひょうを伴うような激しい雷雨(以下強雷と
いう)は,水平的な広がりが小さく,また時間的な変動
も激しいことから,現在の観測網でその全貌をとらえる
ことは非常に困難である.
東北地方の雷雨についての調査は数多くあるが,川添
(1967)は,SSI*(850mb以上は飽和していると仮定
したときのSSI)によって発雷を予想し,加藤等(1970)
は,SSI*と∠P(LCL-CCL)を組み合わせた仙台方式
(SSI*≦0,∠P≦105mbで7km以上の対流性エコー
の発現を予想する)によって,レー・ダエコーからみた発
雷予想について高い精度をあげている.しかし,降ひょ
うについての調査は,現象の把握が難しいこともあって
ほとんどなされていない.
今度の調査は,1970年から1974年までの東北地方の降
ひょうについて調べたもので,さらに1975年6月9日に
発生した降ひょうにっいても追跡調査したので併せて報
*The Hailstorms in Tohoku District Observed
by Radar.**Y.Sasaki,深浦測候所.
一1977年1月6日受領一 一1977年8月1日受理一
1977年9月
告する.
2.調査の方法
資料は秋田・仙台の高層資料とレーダ天気図,印刷天
気図,雷雨概報,異常気象報告および農業気象月報など
である.
雷の資料数は65例(強雷を伴うもの60例)で,降ひょ
うについては観測時刻等の記事が比較的明瞭なもの39例
であるが,レーダ資料との関係から実際の発生数より少
ない.
高層資料は,秋田で青森・秋田・岩手の各県を,仙台
で山形・宮城・福島の各県で発生した雷について対応さ
せた.また,SSI*・∠P等は09時~21時に発生した雷は
09時,21時~09時の雷にっいては21時の資料を用いた.
レーダの探知範囲は,等ビーム高度4km以内をほぼ
有効とした(第1図).これは,ひょうの生成される高
度としては10km以上のエコーが対象になると考え,
4kmのビームカットの影響は少ないと考えたこと,お
よび,探知範囲を拡大することで降ひょうの資料が多く
なるという理由によるものである.
雷とニコーの対応では,雷観測地点とニコーの距離20
kmを有効範囲とした.降ひょうとエコーの対応では,
エコー頂高度・反射強度,および位置的な関係を知るう
21
520 レーダエコーからみた東北地方の降ひょう
第1表 降ひょうの月別発生目数
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1970年
1971
1972
1973
1974
5月
02222
8
6月
01254
12
7月
24102
9
8月
20401
7
9月
00120
3
47
10
99
39
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JUL -IO。C
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第1図
AUG -IO◎C
降ひょうの発生分布図(1970年5月~1974年9月).●はひょう観測地点,○は気象官
署(通報所を含む).点線は仙台および秋田
レーダの4Kmの等ビーム線.
えでエコーの測定時間が重要である.1回のレーダ観測
に要する時間は20~30分であるが,有効時間として観測
時までの10分間をとった.しかし,報告されている資料
では,降ひょうの観測地点・時刻等の不明なものが多
く,エコーとの対応をより困難なものにした.
3.降ひょうの発生日数と地域分布
降ひょうの月別発生日数と分布図を第1表および第1
図に示す.
発生日数は5月~8月に多く,とくに6月は30%を占
める.地域的には福島県を中心に,内陸・山沿い地方で
多い.これは,山川(1971)による対流性エコーの発生
分布とも一致するが,エコーの連続写真による解析がな
く,セルの発生から強い雷雲に発達するまでの変化およ
び降ひょうとの位置的な対応にっいて詳しい調査ができ
なかった.
22
第2図
一6.7
-6.2
誕ξ,書
降ひょう時における500mbの特定等温線(降ひょう前日21時,21時以降に発生した
ものは当日21時の状態).右下の数字は秋田
(上),仙台(下)の7』oo平年値(21時).
4.総観解析
牛1.上層寒気
異常気象概報等で報告される資料には,500mbの特
定等温線が寒気移流の示数として示される例が多い.第
2図は,降ひょうの発生数が多い5月~8月についての
特定等温線で,降ひょうの発生した前日21時のものであ
る.
この特定等温線として,5月の場合は一20。C,6月は
一15。C線を示すが,強い寒気移流による成層不安定が
うかがえる.7月・8月については一10。C線を示した
が,5月・6月に見られるような強い寒気の南下してい
る例は少ない.
寒天気”24.9.
OC-30
一28
一26
一24
一22
一20
←一18
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レーダニコーからみた東北地方の降ひょう
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第3図 7』5-7もoとSSI*(+5,0および一5の
等値線で示す)に対する降ひょうの分類.
図中の小黒点は21時以降に発生したもの.
第4図
0 50 10◎
△P(LCし一CCL》
SSI*と∠.Pによる雷の分類.
たは非常に弱い雷を含む.
150 2◎O mb
×は雷なし,ま
第2表 エコーパターソによる強雷の分類.
牛2.大気安定度
対流性エコーの発達には大気の安定度が深く関係す
る.三瓶等(1960)は,福島県の観測所の50%以上で発
雷した場合を調査し,7』5-7もoが6月では25。C以上,
7月・8月では23。C以上であり,300mbの気温は6月
は一33。C以下,7月・8月は一28。C以下であるという
判定値を得ている.この7』5-Tム。およびSSI*と降ひ
ょうの関係をみたのが第3図である.
各月とも点線で囲む領域内で発生している例が多く,
傾向的には三瓶等の結果と類似している.また,500mb
の気温では5月・6月と7月・8月の差が大きい,すな
わち,5月・6月は上層の寒気移流が強く,7月・8月
は下層の昇温がひとつの原因であることを示している.
また,SSI*が負の場合の発生率が88%と高いが,5
月・6月はSSI*が正でも発生しており注意する必要が
あろう.
第4図は,仙台方式によって65例の雷を検討したもの
である.上段が秋田の資料でみた北部3県,下段が仙台
5月
6月
7月
8月
9月
団塊状
▲
1441
11
111
監
0121
82
0113
団塊状(線状構造)
▲
3331
40
131
K0131
2061
帯状・線状
▲
11
,53
22
21
21
128
監
0132
32
21
95
その他
▲
300003
隅
000000
1977年9月
▲はひょうを伴う雷雨,Kはひょうを伴わな
い雷雨.右下の数字は大雨で被害が出ている
例.5月・6月でKが少ないのは,雷雨期間
外の資料を省いたため.
の資料でみた南部3県での降ひょう・発雷状況である.
SSI*≦0,∠P≦105mbという条件で判定すると,北
部・南部での降ひょう・雷の発生率は55%,60%とあま
りよくない.これは下層が非常に乾燥している場合や逆
転層・安定層がある場合でも強い雷が発生することを意
味している.また,北部・南部とも分布が一様ではない
が,南部は安定度が悪く,∠P>105mbでもSSI*が負
23
522
Km15
14
13
12Q.
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2畠lo
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8、δ8=
7
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レーダエコーからみた東北地方の降ひょう
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第5図 エコー頂高度・反射強度に対する強雷の分類(雷雨期間).(A)はS(団塊状),5-L(団塊状で
線状構造をもつ)エコーで熱雷が発生.(B)はβ(帯状),L(線状)エコ」による界雷.(1)は
強雷の判別線,(2).(3)は発雷有無の判別線.▲は降ひょう,●は落雷,○は発雷,×は雷なし.
であれば強い雷の発生している例が多い.しかし,降ひ
ょうを伴う雷としての特徴は得られない.
5.レーダ解析
5-1.エコーパターンと雷
第2表はエコーパターンによって65例の雷を分類した
ものである.団塊状エコーによる降ひょう・雷が63%と
多く,降ひょうも62%がこのパターンで発生している.
このパターンでは局地的な豪雨は発生するが,被害をも
たらすような大雨になる例は少ない.帯状エコーによる
降ひょう・雷は32%で,降ひょうの発生率も31%と少な
く規模が小さい.しかし,強雨・大雨を伴う例が多く大
きな被害を及ぼしている.
5-2.エコー頂高度・反射強度による強雷の判定
レーダエコーによる発雷の予想として,加藤等は高度
7km以上の対流性エコーの出現を対象としたが,反射
強度による予想は■一1~関係の多様性,Zの時間的な
変動の大きさなどからかなり難しいとしている.
第5図は,比較的資料の多い雷雨期間(6月15日~9
24
月15日)に発生した雷を,エコー頂高度(π),反射強度
(Z)で分類したもので,Aは団塊状エコーにより熱雷が
発生,Bは帯状(線状)エコーにより界雷が発生してい
る例である.A・Bとも一様な分布を示していないが,
平均的にAではπが9~13km,Zが105・5~106・omm6/
m3(1~ニ100~200mm/hr),Bでは∬が8~11km,Zが
105・o~105・6mm6/m3(50~120mm/hr)の範囲に分布し
ており,AはBにくらべ∬も高く,また同じ高度で
もZが大きい値を示しているのが注目される.
前にも述べたように,降ひょうは確認が難しく,発達
した強いエコーを観測してもそれがひょうを伴うものか
どうかの判断が困難であり,Aでもひょうに対応してい
るエコーは僅か11例に過ぎない.
強雷を伴うエコーの目安として判別線一1を考える
と,Eが10kmでZが106・omm6/m3(200mm/hr)程度
に発達すると降ひょうの発生が期待され,また,■が
105・5mm6/m3(100mm/hr)程度でも丑が13km以上に
発達するとその可能性は高くなる.Donaldson(1958)に
、天気”24.9.
κm
14
13
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レーダエコーからみた東北地方の降ひょう
(陰》 sas一しType
、 15JUN-15SEP 、 、 1970-1974 ▲ 、 、 、、▲
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}AY-Fir3奮 holf of JUN“971-1975》
第6図 エコー頂高度・反射強度による強雷の分類(雷 雨期間外).(1)は第5図の強雷判別線,(4)は雷
雨期間外の強雷判別線.記号は第5図と同じ.
よると,ひょうの発生率が50%になるところは,等価反
射係数(る)が106・omm6/m3より大ぎく,Eが13kmを
越えるものに見られるとしているが,この調査では∬が
10~11.5kmで約30%の出現率で降ひょうが見られる.
ひょうの発生している高度が11km前後に集中してい
るのが注目されるが,Douglas(1961)によると,エコ
ー頂が一40。Cの高度に達すると,ひょうの発生率が急
増し80%を越すようになる (一40~一50。Cで80%以
上).秋田・仙台の高層資料によると,7月・8月の一40。
Cの高度は11km前後(250mb)であり,ひょうの発生
している高度に等しい.すなわち,一40。Cをひょう生
成の特定温度と考えるならば,エコー頂がこの高度に達
するかどうかが降ひょう予想の目安となるだろう.ま
た,この高度以上でひょうの発生が少ないのは,ひょう
が生成されにくいのか,あるいは降ひょうがあっても観
測されなかったものか不明である.
帯状(線状)エコーによる降ひょうは,第2表で示さ
れるように12例あるが,Bではひょうに対応する例がな
い.これは,レーダ観測が行なわれていないこと,降ひ
523
1977年9月
ようの発生時刻が不明であること,および,レーダの観
測時刻と降ひょうの発生時刻が一致しない(有効時間を
10分間としたため)ことなどの理由によるが,有効時間
に多少の巾をもたせて対応関係を見ると,4例が該当
し,∬が10~13km,Zが105・7~106・6mm6/m3(130~
500mm/hr)となり,Aで示される判別線一1で判定す
ることができるようだ.なお,このような原因で対応が
得られなかったのは,Aにおいても同様である.
判別線一2・3は発雷の可能性を判定したものである
が,Zが105・5mm6/m3(100mm/hr)でπが7~8kmに
達すると可能性が高くなることを示す.
第6図は,雷雨期問外(6月15日以前と9月15日以
降)に観測された降ひょうとエコーの関係である.この
期間は雷雨概報による資料がなく,エコーと降ひょうの
対応した例も少ないが,1975年6月9日の資料を加えて
作成した.πが10km以上で発生している降ひょうの
ほとんどは6月9日のもので,必ずしもこの期間を代表
するものではない.また,丑が9km以下で発生してい
る降ひょう6例のうち,5例は5月に発生したもので,
Zが105●8mm6/m3(150mm/hr)程度になるとπが8km
前後でも降ひょうの発生する可能性がある.
この期間の強雷の判別線一4を考えると,Hが8km,
Zが105’5mm6/m3(100mm/hr)程度で降ひょうの可能性
があるが,Aの判別線一1にくらべ,Zは106・omm6/m3
(200mm/hr)以下と弱く,丑も3~4km低いエコーで
発生している.しかロし,この期間は資料が少なく今後の
課題である.
6.事例解析
6-1.団塊状エコー・帯状エコーによる強雷
第7図のAは,1972年9月12日に発生した団塊状エコ
ーによる降ひょうの例である.
この目東北地方は強い寒気場にあり,不安定な状態に
あった.昼頃になって,岩手・宮城・山形・福島の各県
で雷雨が発生,13時頃から激しくなり14時頃から16時頃
にかけて所々で強い降ひょうがあった.とくに岩手県の
滝沢村・玉山村では13時40分頃から直径1~3cmのひ
ょうが降り,玉山村門前地区では15cmも積もった.ま
た,山形県の朝日町でも13時45分頃から大豆大の降ひょ
うがあり,農作物にかなりの被害がでている.
レーダエコーは,09時頃からすでに10~12kmの高さ
のものが出現していたが,11時頃から組織的となり各地
で発雷しはじめた.
Aは13時30分観測のレーダスケッチ図であるが,岩手
25
524 レーダエコーからみた東北地方の降ひょう
lA》
Akifα a Sendoi Rαdqr
Composi†e MσP l B》
1330JSTSEP I2 1972
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第7図強雷発生時の団塊状エコー(A)と帯状エコー(B).
発生時刻.
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CuA+ 口,H NC
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A誰”O(130,
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S-VS IOO・./
VS I30 》(130》
・レ~磐()内の測定値は降雨強度.矢印は降ひょうの
県の降ひょうに対応して,πが8.5km,Zが106・omm6/
m3(200mm/hr)のエコーが観測されており,また,山
形県中部で発生した降ひょうも丑が10.5km,Zが106●o
mm6/m3のエコーによるものと考えられ,時間的に多少
のずれはあるが,これらのエコーがさらに発達して降ひ
ょうをもたらしたと見られる.
福島県北西部にもπが9km,Zが106・3mm6/m3(300
mm/hr)の発達したエコーが観測されているが,降ひょ
う・落雷等の報告はない.
第3表は,9月10目~13日の高層資料であるが,500
mbでは一15。C以下の強い寒気が流入しており,SSI*・
聡5-Tもoで見ても強い雷の発生しやすい状態にあった
と言える.
第7図のBは,帯状エコーによって強雷の発生した例
であるが,降ひょうに対応するものがないことは前にも
述べた.この図もその1例である.
8月2日,沿海州に発達した低気圧があり,北日本は
高気圧の縁辺部にあって不安定な状態となっていた.こ
の低気圧に伴う寒冷前線の接近により,2日夜から3日
26
朝にかけて,奥羽山系には100mm以上に達する激しい
雷雨があり各地で被害が発生した.
岩手県では3日00時過ぎ各地で落雷が発生,湯田で
ひょうを観測しているが,詳細は不明である.
レーダエコーは,2日午後から団塊状エコーが発生し
はじめ,21時頃になって北部では組織的な線状エコーと
なった.Bは3日00時のスケッチ図であるが,秋田・
岩手県南部で観測される強いエコーにより落雷が発生し
ているが,ひょうについては発生時刻が不明でエコーと
の対応は得られない.しかし,県境付近で観測される強
いエコー一により降ひょうの発生することは十分考えられ
る.
福島県南部では,21時30分頃から22時頃にかけて降ひ
ょうが発生している.22時のレーダ観測によれば,πが
11.5kmでZが106・6mm6/m3(500mm/hr)の団塊状エコ
ーがよく対応していたが,このエコーはO O時のスケッ
チ図では福島県沿岸部まで移動しており,この時点では
降ひょうとの対応は得られなかった.また,朝日山系に
も強いエコーが観測されているが,降ひょう・落雷等の
寒天気”24.9.
レーダエコーからみた東北地方の降ひょう 525
第3表 秋田,・仙台の高層気象表(1972年9月).
850mbT(上段)T-丁凝下段)
700mb T
T-Td
500mb T
T-T4
T85-T50
SSI*
A
S
A
S
A
S
A
S
A
S
10 目
09 時
14.80.5
15.20.0
4.6
3.9
8.4
2.0
一8.5
1.5
一5.3
2.4
23.3
20.5
一1.O
十1.4
21
13.812.2
13.81.8
2.6
12.36.0
19.9一12.8
16.0
一10.6
17.0
26.6
24.4
一3.8
一1.7
11 日
09
11.07.0
13.215.02.4
10.O2.2
7.O
一15.1
12.O
一一12.5
14.O
26.1
25.7
一1.7
一2.6
21
13.620.010.00.0
2.2
7.0
1.2
7.0
一16.3
2.2一15.7
14.0
29.9
25.7
一7.0
一〇.8
12 日
09
9.8
0.1
11.80.9
1.1
5.0
1.1
11.0一17.7
0.5一14.9
6.O
27.5
26.7
一2.7
一2.9
21
11.03.0
9.O
O.0
0.2
4.5
0.2
0.0
一15.3
16.0
一15.7
7.0
26.3
24.7
一2.0
十〇.7
13 目
09
9.6
3.8
9.4
0.1
1.2
13.0一〇.1
3.9
一15.7
18.0
一13.9
17.0
25.3
23.3
一〇.2
十1.9
21
10.81.7
8.6
0.7
1.4
7.0
0.0
2.7
一15.1
22.0
一14.5
19.0
25.9
23.1
一1.5
十2.5
A 秋田 S:仙台
第4表 秋田・仙台の高層気象表(1972年8月)
850mb T
T-Td
700mb T
T-Td
500mb T
T-T4
T85-7』o
SSI*
A
S
A
S
A
S
A
S
A
S
1 日
09 時
16.83.1
16.22.3
8.8
4.6
8.2
4.5
一6.7
4.4
一6.9
8.0
23.5
23.1
一2.4
一1.7
21
17.64.3
17.02.O
9.2
7.0
7.2
3.7
一7.8
2.8
一8.2
1.5
25.4
25.2
一4.7
一4.2
2 日
09
17.81.5
19.610.08.2
4.9
9.0
2.7
一7.3
0.7
一7.7
1.6
25.1
27.3
一4.3
一7.5
21
17.41.0
19.22.6
6.8
2.3
9.8
7.0
一9.9
2.5
一7.9
6.0
27.3
27.1
一6.4
一6.9
3 日
09
16.81.3
18.27.0
6.8
0.6
7.4
2.2
一6.7
1.4
一7.9
0.1
23.5
26.1
一2.4
一5.5
21
15.46.0
17.63.9
7.2
3.4
8.2
4.1
一6.9
7.0
一7.7
4.3
22.3
25.3
一〇.4
一4.6
4 日
09
15.40.8
16.22.2
7.6
4.1
6.4
0.0
一7.3
8.0
一6.3
7.0
22.7
22.5
一〇.8
一1.0
21
15.610.O
17.21.1
9.0
16.08.0
0.0
一6.3
16.0一6.5
6.O
21.9
23.7
一〇.1
一2.8
A 秋田 S 仙台
報告はない.深夜に発生するこのような現象の把握はと
くに困難なものであろう.
第4表は,8月1日~4日の高層資料で,上層気温も
平年より2~3。C低く,安定度等から見ても雷雨の発生
1977年9月
しやすい場であったと言える.
6-2.1974年5月24日~6月9日の降ひょう
この期間は,3日~4日周期で降ひょうが発生してい
るが,5月31日と6月6日は内陸地方・太平洋沿岸部で
27
526 レーダエコーからみた東北地方の降ひょう
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一26
-28
一:30
第8図lO98765432131302928272625242309JST JUN MAY
1974年5月24日~6月9日の降ひょう.上段はエコー頂高度と降ひょうの発生時刻.N・EはNo echoを示す.
下段は秋田の高層資料.実線:T50,破線:SSI*,鎖線:∠T50(09時・前日との差).
かなりの大雨が降った.
第8図は,秋田における上層寒気の強さ,SSI*および
エコー頂高度を示す.
上層の谷を伴った強い寒気の流入により,大気は著し
く不安定になっており,降ひょうの発生した日は500mb
の気温もかなり低く,前日からの寒気移流にその特徴が
あらわれている.SSI*も位相としてはほぼ合っている
が,必ずしもよい対応は示しておらず,とくに雷雨期間
外ではSSI*のみによる強い雷の判定には注意が必要で
ある.
降ひょうの発生時刻は,ほとんど13時~15時である
が,エコー頂は昼前後には,いずれも7km以上に発達
しており,2~3時間後に降ひょうの発生している例が
多い.しかし,エコーとの対応がよかったものは5月27
日の1例だけで,満足すべき結果は得られなかった.
6-3.1975年6月9日の降ひょう
この日は青森・宮城県を除く4県で記録的な降ひょう
が発生,各地に大きな被害をもたらした.この時の高層
資料を第5表,09時の地上天気図と500mbの気温を第
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28
第9図 1975年6月9日09時の地方天気図と500mb気温(破線).
9図,レーダ天気図を第10図に示す.
地上天気図で,低気圧は日本海中部と紀伊半島南海上
にあり,本州は気圧の谷の場となっている.東北地方は
低気圧前面の南東風により,各地とも最高気温がかなり
上昇した.また,500mbでは一15。C以下の強い寒気が
、天気”24.9.
レーダエコーからみた東北地方の降ひょう 527
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第10図 1975年6月9日16時, 時刻.
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17時のレーダスケッチ図. ()は降雨強度,矢印は降ひょうの発生
流入しており,不安定な成層状態が3~4日続いた.第
5表を見ると,下層で温暖化しており,500mbでも気
温が・一13~一15。Cと低く,SSI*,T85-7もoから見ても
強い雷の発生する状態にあったことがうかがえる.
降ひょうは13時頃からはじまり,16~17時頃を最盛期
として20時頃まで断続した.降ひょうの継続時間は,平
均して10~30分間である.
レーダエコーは,昼過ぎから対流性のエコーが発生し
はじめ,急速に発達した.1時間毎のレーダ天気図か
ら,ひょうに対応するエコー群として13例を解析した
が,そのうち8例が第10図に含まれている.観測時刻の
関係で第6図の判別線一4に適合しないものもあるが,
総じて対応はよく,位置的にもほぼ一致している.エコ
ー群の寿命を見ると,3~5時間と長いものが7例,1
~2時間と比較的短い6例は,いずれも16時以降に発生
したものであるが,エコー写真による解析がなくはっき
りしない.エコー群が長時間維持されるには,すでに存
1977年9月一
在している対流性エコーの発生源またはその近傍で新し
いセルの発生・発達が繰り返されることが必要であると
言われており,新井(1975)の調査を裏づけているよう
に思われる.
7.あとがき
レーダエコーによる解析を中心に,降ひょうについて
調べてきたが,ひょうを伴う雷,伴わない雷を分類する
までには至らなかった.
このように変動の激しいじょう乱の解析には,連続的
なエコー一の資料が必要であるし,とくにニコーの発達を
知るには,RHIによる解析が有効である.
今後さらに事例を増やし,また総観場との関係につい
ても検討してみたい.
最後に,心よく資料を提供して下さった仙台・秋田レ
ーダならびにいろいろ助言を下さった各位に深く感謝致
します.
29
528 レーダエコーからみた東北地方の降ひょう
第5表 秋田・仙台の高層気象表(1975年6月)
850mb T
T-Td
700mb T
T-Td
500mb T
T-Td
T85-7もo
SSI*
A
S
A
S
A
S
A
S
A
S
7 日
09 時
10.22.6
10.10.0
0.7
0.7
3.4
0.0
一10.5
0.0
一8.4
4.6
20.7
18.5
十4.O
十6.3
21
10.52.2
11.22.9
2.6
4.2
3.4
4.8
一・11.1
14.0
一7.7
26.0
21.6
18.9
十3.0
十5.3
8 日
09
10.811.O
11.86.0
1.0
14.O
3.2
7.0
一14.3
8.0
一12.1
14.O
25.1
23.9
・一〇.5
O.O
21
11.86.0
13.41.6
1.4
5.0
3.0
6.0
一16.9
7.0
一14.5
13.0
28.7
27.9
一4.8
一4.9
9 日
09
11.85.0
15.49.0
3.6
5.O
3.4
6.O
一14.7
2.8
一13.3
14.0
26.5
28.7
一2.6
一6.5
21
13.43.8
11.80.0
1.4
1.1
3.8
8.0
一15.5
12.0
一14.7
1.4
28.9
26.5
一5.6
一2.6
10 日
09
13.06.0
12.64.7
2.0
5.0
2.2
0.7
一14.3
5.0
一12.5
4.3
27.3
25.1
一4.0
一1.5
21
11.86.0
9.O
O.0
1.8
4.5
2.2
4.5
一14.3
6.O
一14.9
6.0
26.1
23.9
一2.1
十1.6
A:秋田 S 仙台
文 献
新井俊男,1975:昭和50年6月9日福島周辺の降ひ
ょうを伴った雷雲のレーダエコー,昭和50年度仙
台管区調査研究会資料.
Donaldson,R.J。,1958:Analysis ofsevere conve-
ctive storms observed by Radar,J.Met.15,
44-50.
Douglas,RH.,1961:Radar observation ofAlberta
hailstorms,Nubila,4.,No.2,52-58.
加藤一靖,猪股清夫,山川 弘,1970:レーダによ
る東北地方の雷調査,研究時報,22,257-279.
川添信房,1967:東北地方における夏期の雷雨予報
について,昭和42年度東北地方調査研究会資料.
三瓶次郎,干葉重夫,1960:福島県の雷予報のため
の基礎的調査,昭和35年度山形福島地区気象研究 会資料.
山川 弘,1971:地表付近の状態から決定される対
流性エコーの発現分布,研究時報,25,179-188.
30 、天気”24.9.