ビジネスレターの基本構成モデルと 定型表現 chap-3.pdf ·...

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3 ビジネスレターの基本構成モデルと 定型表現 して ジネスレター まず より Keep it simple and short. (= KISS) いう きれ 1 ページ、 くて 2 ページ以 めたい。した がって、ただ いつくままに よい いうわけ く、 きるだけ に、しか にして がある。さらに、 ジネスレター まっ ているだけ く、 1 ページ めくくり 、いわゆる があり、 するため レトリック すくするため 、さまざま まれている。 ある を、 よく って える 、それが あれ英 あれ、しっかり したロジック ある あるこ いうま い。 ころが、 し、それを によくわかるよう にする いうこ 、そ い。しかし、 ジネスレター パターン、 いし「 み」があり、それに って てていけ 、だれに ある った けるように っている。 パターン が、いわゆる3 部構成の原則」によ るレター ある。これ をそ にかかわらず、 )、 )、 3 って する あり、 ジネスレターに らず、 、エッセー め、 ある。 3.1 英文ビジネスレターの一般モデルと「3 部構成の原則」 ページ 、す Figure 34 (p.62) セミインデントフォーム (semi-indented form) して した「 レター ある。こ 、英 して にごく あるが、ここ より メッセージ 」に 意していただきたい。こ レター およそ おり ある。 1. まず We saw your advertisement . . . いう が、ある された Model Z-5 いう ったこ らせて し、 2. 2 パラグラフ 、まず第 1 メッセージ 題を く第 2 れを し、 3. に対する める えて 159

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Page 1: ビジネスレターの基本構成モデルと 定型表現 chap-3.pdf · しかし、ビジネスレターの書き方 ... された相手方の広告を見てModel Z-5 ... てより明確にすることができる(letter

第3 章

ビジネスレターの基本構成モデルと

定型表現

実務文書としてのビジネスレターはまず何よりも Keep it simple and short. (= KISS) という

ことを念頭に作成すべきもので、できれば 1ページ、長くても 2ページ以内に収めたい。した

がって、ただ思いつくままに書けばよいというわけではなく、できるだけ簡潔に、しかも必要

にして充分な情報を盛り込む必要がある。さらに、良いビジネスレターとは単に情報が詰まっ

ているだけでなく、1ページの中にも切り出しと締めくくりなどの、いわゆる起承転結があり、

相手を説得するためのレトリックや、文章を読みやすくするための工夫など、さまざまな要素

が含まれている。

内容のある情報を、要領よく説得力をもって相手に伝えるとなると、それが日本語であれ英

語であれ、しっかりとしたロジックのある展開が必要であることはいうまでもない。ところが、

論理的にものごとを整理し、それを相手によくわかるような形で文章にするということは、そ

う簡単なことではない。しかし、ビジネスレターの書き方には一定のパターン、ないし「枠組

み」があり、それに従って必要な情報を組み立てていけば、だれにでもある程度の論理性をも

った文章が書けるようになっている。

そのパターンの中でも最も基本的で実用性の高いものが、いわゆる「3 部構成の原則」によ

るレター構成法である。これは、文書をその長短にかかわらず、前文(導入部)、主文(展開

部)、末文(結部)の 3部をもって構成する方法であり、ビジネスレターに限らず、報告書、

論文、エッセーなどを含め、ものを書く際の基本的な原則である。

3.1 英文ビジネスレターの一般モデルと「3部構成の原則」 次ページの例文は、すでに Figure 34 (p.62) でセミインデントフォーム (semi-indented

form) の例として紹介した「資料請求」のレターである。この例文は、英文としては語句、構

文ともにごく基礎的なものであるが、ここではその言語的な内容よりもメッセージ全体の「構

成」に注意していただきたい。このレターの構成はおよそ次のとおりである。

1. まず冒頭の We saw your advertisement . . . という書き出しで、自分が、ある雑誌に掲載

された相手方の広告を見て Model Z-5 という新製品に関心を持ったことを知らせて導入文

とし、

2. 第 2 パラグラフでは、まず第 1 文でこのメッセージの本題を簡潔に述べ、続く第 2 文でそ

れを敷衍し、

3. 最後に相手に対する礼を述べ、返事を求める言葉を添えて結ぶ。

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Figure 124: 英文ビジネスレター本文の基本構成 (Figure 34, p.62)

Request for Information We saw your advertisement in the May issue of Engineer-ing Journal, and are very interested in knowing more about your new oil processing equipment, Model Z-5. Could you please send us any information you may have concerning this equipment. We are particularly interested in the technical specifications. Thank you very much for your attention, and we look forward to hearing from you soon.

Sincerely yours,

┐│┘

┐│┘

導入部

展開部

結部

【仮訳】5 月号のエンジニアリングジャーナル誌にて広告を拝見しましたが、貴社の新しい精

油装置、モデル Z-5につきましてさらに詳細を知りたいと存じます。(つきましては)本装置

に関する資料をお送りいただけませんでしょうか。当方は特にその技術仕様に関心を持ってお

ります。以上よろしくお願いします。できるだけ早い機会にご返信をいただけると幸いです。

このように、このレターは「導入部」「展開部」「結部」の 3つの部分からなる典型的な「3

部構成」となっている。この構成を図式的に示すと次のような一般モデルができあがる。

Figure 125: 英文ビジネスレター本文の一般構成モデル(3部構成モデル)

160

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このモデルを構成する各パラグラフの役割、および注意事項は次のとおり。

3.1.1 Opening paragraph(導入部) 一般に日本語文書では、本題に入る前に儀礼的・形式的な挨拶言葉を置き、これを導入文(前

文)とする。これは伝統的な慣習であって、商用文書、私用文書の別を問わない。一方、英文

ビジネスレターでは導入部にもっと機能的・実質的な役割を与えている。つまり、英文ビジネ

スレターの opening paragraph は当該文書の「フレームワーク、あるいは主題を設定し、そ

れが何について書かれたものであるかを明らかにする」ことを、その主たる目的としているの

である。

後述のように、英文ビジネスレターでは書き出し文 (opener) のための定型表現が発達して

おり、状況、内容に応じたいくつかのパターンがある。これをうまく活用することによって、

この目的を効率的に達成することができる。また、文書の主題は letter subject の設定によっ

てより明確にすることができる(letter subject については pp. 114-116参照)。

なお、導入部の長さは 3±1行程度が最も読みやすく、長くても 5行程度に収めるのがよい。

導入部がこれ以上の長さになるのは、ほとんどの場合、展開部で述べるべき内容をここで述べ

ているからである。

3.1.2 Middle paragraph(s)(展開部) middle paragraph(s) は文字どおりメッセージ全体の中心となる部分であり、ここで主要な

議論を具体的に展開する。この部分は必要に応じていくらでも長くすることができるが、一般

に、われわれ日本人が英語でものを書くとなると、その長さに比例して間違いを犯す可能性も

増えてくる。したがって、なるべく短く、できればひとつのパラグラフで済ます工夫も必要に

なってくる。

とはいえ、場合によっては 3つあるいはそれ以上のパラグラフが必要になることもある。た

とえば、ある主題を A、B、C という 3 つのポイントに分けて説明するようなケースではパラ

グラフの数もそれに応じて 3つになる。パラグラフの数は原則としてトピックの数と同じにす

るのである。これを 「one paragraph, one topicの原則」という。もっとも、ひとつのパラグ

ラフに実質的に複数のトピック(またはサブトピック)がある場合でも、それぞれが、あるい

は一方がひとつのセンテンスだけで完結しており、独立したパラグラフとして展開する必要が

ない場合にはパラグラフ分けをしないことがある。ただし、同一パラグラフの途中から別の話

題に移る場合は、原則として also や in addition、あるいは in the meantime のような連結詞・

移行詞66 を置いてトピックの変わり目を示しておく。 たとえば、次のような例である(Figure

124の第 2パラグラフのバリエーション)。

• Could you please send us any information you may have concerning this equipment, in-

cluding the technical specifications. We would also like to know whether this model is

currently available in Japan.

66 代表的な連結詞・移行詞の種類とその用例については巻末の「文法編」第 10項 (pp. 574-585) 参照。

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なお、ひとつのパラグラフの長さはおよそ 9行を上限とし、長いものでも平均 7行以内、通

常のビジネスレターでは 5±2行程度に収めるのがよい67。

3.1.3 Closing paragraph(結部) ビジネスレターの「結部」は、導入部ないし展開部で提示された主題を補足・確認しながら、

メッセージ全体を締めくくる部分である。したがって、ここもできるだけ簡潔な文面がよく、

ひとつのセンテンスで closing paragraph を構成することも珍しくない。一般に、結部の長さ

が 4~5行を超える長さになっているものは、ここで新しいトピックを起こしてしまった結果で

あることが多い。

ここはどちらかといえば儀礼的、ないし社交的性格の強くなる部分であり、必要に応じて「礼」

や「詫び」を述べたり、相手の返事や引き続きの協力を求める文言を置くことになる。たとえ

ば Thank you very much for your time, and we look forward to hearing from you soon. あ

るいは Thank you in advance for your cooperation in this matter. We hope to hear from

you soon. などといった文言がその代表的なものである。こうした儀礼的・社交的文言の中に

は実質的な内容を伴わないものも少なくないが、そのおもな目的は、「メッセージ全体を締め

くくりながら、これを次のアクションにつなげる」ことにある。これがビジネスレター結部の

最大の役割であるといってよい。なお、後述のように、「書き出し」と同じように「結び」の

言葉にもたくさんの定型表現があり、こうした定型表現をできるだけたくさん覚えてしまうこ

とがビジネスレターライティング上達への早道である。

*

いうまでもなく、ビジネス文書はレターであれメモランダムであれ、ただ思いつくままに言

葉を並べればよいというものではない。そこには、おのずと一定のルールがあり、それに従っ

て考えをまとめ、最も簡潔明瞭な形で伝達すべきものである。心理学者の説によれば、そもそ

も人間はあらゆる思考・行動をなんらかの「モデル」に基づいて行っており、ある行動をとる

際に何か適当なモデルがないとはなはだしく混乱に陥ってしまうのだという。上述の「3 部構

成」の原則とは、メッセージをある一定のフレームワークに沿ってまとめ相手に伝えるための

基本モデルであり、通常のビジネスメッセージは多少のバリエーションこそあれ、基本的には

上図に示したような構成になっている(べき)ものである。また、これは文書作成に限らずあ

らゆるプレゼンテーションに共通する大原則でもある。

ものごとにはすべてその「始まり」と「展開」があり、かならず「終わり」があるという「3

部構成」の考え方は、じつはキリスト教的な世界観の基本パラダイムでもある。これは同時に

人間の最も原初的な思考・表現パターンでもあり、その歴史は人類と同じくらいに古い。また

一方では、ふたつの相反する要素がたがいに作用し合いながら、つねに新しい段階へと発展し

ていくという、いわゆる「正・反・合」の弁証法的世界観があり、「終わり」がすなわち「始

まり」であり、ものごとはすべて輪廻するという東洋的思想がある。

たかがビジネス文書といえども、それが人間の思考活動の一表現形態である限り、やはりこ

のような思想的、哲学的、つまり広い意味での文化的影響を濃厚に反映しているのである。た

とえば、キリスト教的なパラダイムのもとで生活している人たちにとっては、それ以外の思考

67 「ビジネスレターのチェックリスト」第 3項パラグラフのチェックポイント (pp. 296) 参照。

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パターンで表現されたメッセージは、理解不能とはいわないまでも、はなはだ奇妙で理解しに

くいものになってしまうだろう。多くの識者が指摘しているように、いわゆる異文化コミュニ

ケーションのむずかしさは、単なる道具としての言葉の問題以上に、その背景にある社会・文

化的パラダイムの問題なのである。

いわゆる「3 部構成」の原則は、どの文化にも共通した基本的な思考・表現モデルであり、

日本文化においても、さまざまな分野でこの原則、あるいは理念が応用されている。たとえば

「序・破・急」と呼ばれる雅楽/舞楽の楽曲構成法がある。「序」は導入部であり、舞人が無

拍子の中に静かに登場する。「破」(展開部)で緩やかなテンポの中に舞いが演じられ、一転

して「急」の早拍子の中で舞いが終結する。世阿弥は、この「序・破・急」の演出効果に着目

し、やがてこれを能全体の時空間を統御する一大秩序理念として完成させたのは広く知られて

いるとおりである。

「序・破・急」の 3部構成は、身近なところでは「まくら・さわり・落ち」という落語の構

成法としても応用されている。同じことを、故大宅壮一氏はジャーナリストとしての基本的な

文章作法として説き、作家の宇野千代氏は「どんな文章も、結局は 3文節であり、長編小説も

3 文節が積み重なってできている」と述べている。世阿弥の「序・破・急」が能芸術の全体か

ら細部までを統御する基本理念であるように、どんなに長い文章でも、その全体からひとつの

段落、文にいたるまで 3部構成の原則が適用されているというのである。この「序・破・急」

の 3部構成を、文章芸術として極限にまで煮詰めたものが「5・7・5」の俳句である。「夏草や/

つわものどもの/夢のあと」というとき、作者はまず全体の情景を提示し、中心となるイメー

ジ(主題)をそこに配置した後、余韻を残して一気に終結することによって、ひとつの完結し

た小宇宙を作り出しているのである。

もちろん、ビジネスレターのような実用文においては「夏草や/つわものどもの/夢のあと」

のような「芸術的」な文章は必要ない。むしろ有害である。あらゆる芸術は読者の思い入れや

解釈(つまり鑑賞作用)があって初めて成立するものであるが、実用文の目的は鑑賞ではなく、

意志の伝達である。したがって、相手の思い入れや解釈の余地を可能な限り排除する必要があ

る。「夏草や」という代わりにこれを具体的に説明し、「つわものども」がそこで何をし、な

ぜ「夢のあと」なのかを余すところなく説明しつくすのである。

鑑賞用の文章と実用文とは、おのずとその表現形式に違いがあるが、これはそれぞれの目的

が違うからである。しかしいずれの場合も、「前提を述べ、主題を提示し、全体をまとめて終

結する」という基本的な構成は同じである。言語によって「意味」のあるまとまり(メッセー

ジ)を構成するためには、この 3つのパーツが必要不可欠なのである。

Figure 131 に示した 3部構成のモデルは、ビジネスレターだけではなく報告書、論文、ある

いはエッセーなどを書くときの文章構成のガイドラインとして、そのまま応用することができ

る。しかし、実はこのモデルはひとつの文書を closed systemとして扱っている。つまり、あ

るメッセージがそれ自体で完結した静的なものとして提示されているのである。

ところが、実際のビジネスではそれ自体で完結する性質の行動・行為というものはほとんど

ない。ビジネスでは、あらゆる行動がある流れの中のひとコマとしてあり、ひとつの行動はほ

かの行動と密接に関連しながら次のアクションへと切れ目なく結び付いているのである。した

がって、ビジネス文書もまたその「流れ」の中で構想され作成されるべきものなのである。Figure

124の例文では 3部構成のそれぞれの部分がうまく呼応し合い、全体としてひとつの明確な「流

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れ」を作りだしている。この点をもう少し詳しく解説してみよう。

3.2 3部構成の原則と循環法モデル あらゆる行動にはそのきっかけとなった事実がある。これを仮に initiator(起因)と呼んで

おこう。Figure 124 (p.160) に例示したケースでは “your advertisement in the May issue of

Engineering Journal” がこのレターの initiator であり、これを冒頭の We saw . . . という書き

出しでリファーしながら、このメッセージを書くにいたった経緯を具体的に明らかにしている。

続いて andで文をつなげて、話を “your advertisement” から “our interest” (= and [we] are

very interested in . . . ) へと転換し、第 2パラグラフの本題へと導入している。

第 2パラグラフの展開部では、このメッセージの本題が Could you please send us . . . とい

うセンテンスで簡潔に述べられており、以下の第 2文がこれを補足・詳述している。なお、後

述のように、展開部はそれ自体で完結した内容をもった full statement となるのが普通であり、

ここだけを取り出しても十分に話が通じるようなものでなければならない。しかも、この例で

もそうであるように、本題に直接関係のない事柄は一切述べてはならない。

展開部で簡潔に本題を述べた後、第 3パラグラフではまず Thank you for . . . と、相手に対

する礼を述べ、続いて (. . . , and) we look forward to hearing from you soon. という定型文を

置いて全体を結んでいる。さきほど、closing paragraph のおもな目的は、導入部ないし展開

部で述べた主題を補足・確認しながら、メッセージを「後につなげる」ことにある、と述べた。

この例文では、最後の「返信をお待ちしております (we look forward to hearing from you

soon.)」という文でそれを行っている。つまり、このメッセージは形式的にはこれで完結して

いるが、内容的には次のアクション(相手の返信)へとつなげた形でメッセージを結んでいる

のである。あとは、こちらが投げかけたボールを相手が投げ返してくるのを待つことになる。

言い換えれば、(1) きっかけとなった事実 (initiator)で話を起こし、(2) こちらの関心に話題

を移して本題を述べ、(3) 最後に相手の返信を期待しながら全体を結ぶこのメッセージは、内

容的には決して自己完結型の closed system ではなく、「終わり」がすなわち「始まり」であ

るような open system として構成されているのである。これを図式的にまとめると、次ペー

ジの Figure 126のような、より包括的な基本モデルを導き出すことができる。

すでに述べたとおり、「3 部構成の原則」とは、ものごとにはその「始まり」と「展開」が

あり、かならずその「終わり」があるという事実ないし考え方を図式的に整理したものであっ

た。しかし、実際のビジネスではひとつのアクションは次のアクションへのきっかけでもあり、

ひとつのビジネスサイクルが完了すれば、またそこから次の仕事が始まるという循環系として

存在する。ビジネス行為を英語で business transaction というのはこの現実を正しく反映した

用語であって、まさにビジネスとは “trans-” (go above and beyond, into a different state) な

“action” なのである。この基本モデルは、ビジネスを切れ目のない連続行為ととらえ、それを

より一般的な形でモデル化したものである。

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Figure 126: 3部構成の原則と循環法モデル

165

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3.3 基本モデルの応用練習 前出の基本モデルの有効性を検証する意味で、次に、これに基づいて Figure 124 (p.160) で

見た資料請求レターに対する「返信」の書き方を検討してみよう。

ステップ 1:イニシエータと導入部 (initiator and opening paragraph)

ビジネスレターに限らず、ものを書くときの最大の問題は「何を

(何から)」あるいは「どのように」書き始めるかという問題で

ある。Figure 126 のモデルによれば、これは自動的に解決されることになる。つまり「メッセージを書くきっかけとなった事実 (initiator) に言及しながら、全体のフレームワーク(主題)を設定」すればよいのである。この例では Figure 124 (= Figure 34) の資料請求レターそのものがイニシエータということになる。そこで、

まず次のような書き出しが考えられる。

• Thank you for your letter of May 10 concerning our new oil processing equipment, Model

Z-5.

ここでは、まずイニシエータ(相手の問い合わせ)を特定しながら、これに対する礼を述べ、

さらに concerning と続けて来信の趣旨を要約して全体のフレームワークを設定している。後

述のとおり、この Thank you for . . . concerning . . . というパターンは返信の書き出しに使わ

れる常套句のひとつである。もちろん、concerning のほかにも、たとえば requesting, asking

for, inquiring about, informing (us of . . . /that) などのように「動詞-ing 形」を使って来信の

趣旨を要約することもできる。また、「全体のフレームワーク」の設定は文書の冒頭に「文書

主題」を加えることによってさらに明確にできる。たとえば、“Model Z-5” というキーワード

を文書主題とし、次のような形で来信趣旨の要約をするのである。

• Thank you for your letter of May 10 expressing your interest in the above(-mentioned) oil

processing equipment.

上例中の above(-mentioned) は「上記の」という意味(通例、mentioned を省略して above

だけで「上記の」という形容詞として使う)で、文書主題として明示されている “Model Z-5”

を指す。なお、この例文の後半部は . . . , in which you expressed your interest in . . . のように

関係代名詞を使って書き換えることもできる。このほか、次のような書き出しも可能である。

• We have received your letter of May 10, and are pleased to learn of your interest in our

new oil processing equipment, Model Z-5.

この文例では、まず相手の問い合わせを受け取ったという事実をストレートに述べ、続いて

and [we] are pleased . . .と間接的に礼を述べながら、最終的には our new oil processing

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equipment, Model Z-5 に焦点を絞って主題を確認するという構成である。ここで使われている

We have received . . . , and are pleased to . . . という構文も典型的な返信の書き出し例である。

もちろん、この場合でも “Model Z-5” を文書主題として使った場合は、後半部を in the above

oil processing equipment. のように書き換えることになる。この 3つの文例は、いずれも「相

手」から「自分」へとごく自然に話題を移しながら、「で、(自分は)どうするのか」という

主題部へとつながっていく。

ステップ 2:展開部 (middle paragraph)

ここでは「メッセージの本題」を述べる。相手の求めているもの

は、Model Z-5 についての情報、特にその技術仕様書 (technical specifications)である。請求どおり、これに関する資料を送付するのであれば、その返信の文面はおよそ次のようになる。 • I am pleased to enclose the literature68 which you requested.

I trust that this information will suit your needs. If you have any specific questions, or require any further infor-mation, however, please [do not hesitate to] contact me at any time.

この文例では、まず第 1文に「ご請求の資料を同封します」という主要メッセージを置いて

いる。続く第 2文で、その資料が「貴社のご要望に沿ったものと存じます」と受け、さらにこ

れを「もし何か具体的なご質問、あるいはさらに必要なインフォメーションなどがあれば、い

つでもご [遠慮なく] ご連絡くださるようお願い申し上げます」という形でまとめている。つ

まり、ここでは第 1文を第 2文がフォローアップし、さらに第 2文を第 3文がフォローアッ

プするという文章構成となっているのである。ちなみに、この文例ではすべて主語を “I” にし

て書いてあるが、これは意図的に “I” を主語にすることで、よりパーソナルな感じを出してい

るのである。したがって、第 3文でも please [do not hesitate to] contact me のように一人称単

数形の目的格人称代名詞を使っている。

ステップ 3:結部 (closing paragraph)

メッセージの本題はすでに第 2パラグラフで述べたとおりであり、このレターは実質的にはこれで終わりである。ただし、ビジネスレ

ターでは、最後に「メッセージ全体を締めくくりながら、相手にボ

ールを投げかけ次のアクションへとつなげる」のである。この例で

は「資料請求」に対して必要な資料を送付しているのであり、当然、

その後は相手の発注、ないしそれにつながるアクションを期待する

ことになる。したがって、このレターは、たとえば次のような表現

で全体を結ぶことになる。

68 この literature は「印刷物 (printed material) 」の意味。

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• Thank you again for your interest in our product. I look forward to the opportunity of

serving you in the near future.

ここで Thank you again . . . となっているのは、第 1パラグラフ冒頭ですでに Thank you . . .

という表現を使っているためである。look forward to は「…を心待ちにする」という意味の

定型イディオムで、ビジネスレターの必須表現のひとつである(詳しい解説は pp. 194-196参

照)。なお、この例文は Appreciating your interest in our product, I look forward to the

opportunity of serving you in the near future. のような分詞構文を使った結び(これを

participial ending と呼ぶ)にすることもできる。このスタイルは現在ではあまり使われず、特

に米国ではほとんど排斥されているといってもよいほどであるが、英国系の企業からくるレタ

ーではいまだによく使われている。このような participial ending は心理的な「持続感・継続

感」を表現しており、上例の場合は「appreciate しつつ look forward to」している、という

意識である。これを I appreciate your interest in . . . , and look forward to . . . のような通常文

にしてもよい。一般には、このような通常文がよいとされているが、これはあくまでもレター

全体のトーン、文章のバランス、およびライターのスタイルによって決まる問題である。

*

以上、Figure 126 (p.165) に示した基本モデルに従って、Figure 124 (p.160) の資料請求レタ

ーに対する返信例を検討してみた。全体は原則どおり 3部構成とし、各部の文面とその流れは

循環法モデルに準拠して作成した。3 つのパラグラフをまとめると、次ページに示すようなレ

ターになる69。もちろん、細部の表現、用語、構文などについては書き手によって多少の違い

が出てくる。また、たとえば同封資料について簡単な解説や注記を加えたり、もっと積極的に

売り込むための文言を加えることもできる。しかし、いずれにせよメッセージ全体の基本的な

構成はその内容にかかわらず一定である。

69 この返信例は Figure 37 (p. 65) に掲載したサンプルレターとほぼ同じ内容。そのほかのバリエーション

については Figure 38 および Figure 39 (pp. 66-67) 参照。

168

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Figure 127:「資料請求」(Figure 124) に対する返信例

The Engineering Company *-* Ichiban-cho Chiyoda-ku, Tokyo 102 JAPAN Attention: Mr. Taro Yamada, Plant Division Manager Re: Model Z-5 Dear Mr. Yamada: Thank you for your letter of May 10 concerning our new oil processing equipment, Model Z-5.

I am pleased to enclose the literature which you requested. I trust that this information will suit your needs. If you have any specific questions, or require any further information, however, please do not hesitate to contact me at any time.

Thank you again for your interest in our product. I look for-ward to the opportunity of serving you in the near future.

Sincerely yours,

John H. Doe John H. Doe Manager Customer Services Div. JD/ys Enclosure

【仮訳】弊社の精油装置、モデル Z-5 に関する貴社 5 月 10 日付けのお手紙ありがとうございました。ご

請求の資料を同封させていただきます。本資料は貴社のご要望に沿ったものと存じますが、もし何か具体

的なご質問、あるいはさらに必要なインフォメーションなどがあれば、いつでもご遠慮なくご連絡くださ

るようお願い申し上げます。弊社製品に対するご関心に再度お礼を申し上げますとともに、近いうちに貴

社のお役に立つ機会を得ることを心待ちにしております。

169

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この「3部構成の原則」と「循環法モデル」は、ビジネスレターには一定のパターンがあり、

これを積極的に活用することによってレターの作成をある程度「技術化」できることを示して

いる。もちろん、レター作成の技術化のためにはレターを構成するパーツとしての文章の標準

化も欠かすことのできない要素である。

いうまでもなく、ビジネスレターの内容は多種多様であり、その文章をあらかじめ決定して

しまうことはできない。しかし、すでに繰り返し述べたように導入部と結部については、状況・

内容に応じたたくさんの定型表現があり、これを適宜アレンジして使うことによって、ほとん

どのレターを効率よく処理することが可能になる。ビジネスレターライティング上達の秘訣は、

こうした定型表現をできるだけたくさん覚えてしまうことにある。特に「書き出し」と「結び」

については、ほとんど自動的に処理できるようにしておきたい。

3.4 ビジネスレターの「書き出し」と「結び」 およそレターを書こうというときには、その内容についてのアウトラインがあらかじめ頭の

中にあるはずである。そうでなければ、そもそもレターを書こうとするはずがない。しかし、

このアウトラインは、いわば「ぼんやりとした理解」としてあるのが通例であり、これを明確

な理解とするためには一定の構成ないし構造を与えて情報を整理する必要がある。ぼんやりと

した理解をそのまま書き出せば、構造のない、わかりにくい文章になるのは避けられない。

前述の「3 部構成の原則」と「循環法モデル」は、ぼんやりとした理解に形を与え、整理す

るためのフレームワークであり、これに従って必要な情報を組み立てていくことによって、一

定の論理性をもった文章を書くことができる。しかし、これだけでことが済むというわけでも

ない。実際には「それでも、なお書けない」という人も少なくないだろう。ひとつには言葉自

体の問題がある。たしかに、われわれ日本人にとって外国語である英語を使ってものを書くと

いうことはそう簡単なことではない。しかし、ビジネスレターを書くのにそう高度な英語力は

必要ない。多くの識者が指摘するとおり、高校卒業程度の知識があれば十分なのである。

筆者は、これまでに各地でビジネスマンを対象にした英文レターライティングの研修会や各

種セミナーを指導してきたが、ビジネスレターの初心者は、ほとんど例外なく、まず「書き出

し」でつまずいている。そもそも書き出しの 1行がなかなか出てこないので時間ばかりかかっ

てしまい、そのうちに嫌になってしまうのである。レターを書くたびにこれを繰り返していた

のでは、いつまでたってもビジネスレターなど書けるようになるはずがない。なぜ最初の 1行

がなかなか出てこないかというと、要するに「書き出し」のパターンを知らないからだ。これ

は英語ができるかどうかという問題ではない。知らないものは、そもそも書きようがない。

これは日本語文書を書く場合でも同じである。日本語文書にはたとえば「皆様にはますます

ご隆盛のこととお喜び申し上げます」とか「平素は何かとお引立てにあずかり誠に有難く御礼

申し上げます」などといったたぐいの決まり文句がある。これを導入として、次に「さて」と

起辞を置いて本題に入るのである。このような決まり文句とその使い方を知らなければ、たと

え日本語をよく知っていたとしても、それらしいビジネス文書はほとんど書けないだろう。

適当な書き出しさえスムーズに出てくれば、あとは割合に簡単に書き進めることができる。

展開部で述べるべきことはあらかじめわかっているからである。ところが、ひととおり必要な

ことを書き終え、いよいよこれをまとめようという段階で再度ノッキングを起こしてしまう人

がいる。これも適当な結びの言葉を知らないからである。

170

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「始めの 1行がなかなか出てこない」、あるいは「適当な結びの文句が浮かんでこない」と

いう経験はだれにでもある。もちろん、小説やエッセー、あるいは本格的な論文を書く場合に

は書き出しと結びの 1行にそれなりの創意工夫をこらすことも必要だろう。しかし、通常のビ

ジネスレターではこの部分に頭を悩ませ、時間を費やしてもあまり意味がない。実用文として

のビジネス文書はまず何よりも必要な時に手早く作成することが大切で、しかもできあがった

文書はだれが読んでもよくわかり、かつ同じように理解されるものでなければならない。その

意味でもワンパターンの文章こそが最も「ビジネス的」であるといっても過言ではない。先ほ

ど検討した返信例がいかにもビジネスレターらしい文面になっているのは、それぞれ一定の定

型表現を活用して文面を構成しているからである。なかには、このようなレターをまさに「ワ

ンパターン」だからという理由で批判する人もいる。しかし、これをクリエィティブに書いた

としてなんの意味があるというのだろうか。そもそもビジネスは文学ではないのであって、ビ

ジネス文書で「文才」を発揮しても意味がないばかりか、むしろ有害でさえある。

3.4.1 「書き出し」のパターン ビジネスレターは原則として opening, middle, closing の 3部から構成されることはすでに

述べたとおりである。このうち opening paragraph の役割は「主題を設定し、それが何につ

いて書かれたものであるかを明らかにする」ことにある。したがって、ここではなるべく簡潔

かつ的確な導入が必要となる。

ビジネスレターは、その案件の内容にかからわず、(1)こちらから初めて出すもの、および (2)

返信とその後のフォローアップのふたつに大別できる。このうち、ひとつの案件に対する初信

はひとつきりであるのに対し、その返信およびフォローアップは数通から数十通におよぶこと

がある。したがって返信の内容は多様であるが、その「書き出し」の形式はほぼ一定である。

a) 「返信」の書き出し例 1(単文型)

相手からなんらかの問い合わせがあって、それに対する返事を出すという場合には、まず冒

頭でその問い合わせの受領確認をし、その内容を簡潔に要約しながら本題に入るのが一般的な

パターンである。たとえば次のとおり。

• Thank you for your letter of May 10 concerning our new oil processing equipment, Model

Z-5. 「弊社の精油装置、モデル Z-5に関する 5月 10日付けの貴信ありがとうございました」。

ここでは、次の 3つのことを同時にしている。

(1) 相手に対する礼を述べ (Thank you for . . .)

(2) 相手の手紙(イニシエータ)を特定し (your letter of May 10)

(3) その通信の主題を要約し確認する (concerning . . .)

つまり、この短いセンテンスに書き出し文に必要なことはすべて述べられているのである。

前述のとおり、この Thank you for . . . concerning . . . という文型は特に返信で多用される書

き出し (opener) であるが、返信でよく使われる定型的な opener としては次のようなものが

171

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ある。これらの文例は、どれもそれぞれ単文として完結しており、これを「単文型」の opener

と呼ぶ。なお、以下に示す文例中のカギカッコは省略可能な語句を示し、スラッシュまたはセ

ミコロンで区切られたイタリック表示の語句は直前の語句の代替表現であることを示す。たと

えば、6番目の We regret receiving; that we [have] received . . . では receivingの代替語句が that

we [have] received であり、[have] は省略可能であることを示している(そのほかの記号解説

については p. 294参照)。また、人称主語は便宜上 We で統一してあるが、もちろん必要に

応じて I に置き換えてもかまわない。

Figure 128: 返信の書き出し例 1(単文型)

1. Thank you [very much] for . . . 2. We were pleased to receive . . . 3. We appreciate . . . 4. Please accept our thanks for . . .

5. We were sorry to receive . . . 6. We regret receiving; that we [have] received . . .

7. We have received . . . 8. We are in receipt of . . . 9. We acknowledge [the receipt of]70 . . . 10. This is to acknowledge [the receipt of; that we have received] . . . 11. This is in response to . . . 12. We refer to . . . 13. Reference is made to . . .

このうち、最もよく使われるのは 1 と 2、および 5 と 7 の 4 つのパターンであり、その

ほかのものはいちおう知識として知っていればよい。1 から 4 はいずれも「…をありがとうご

ざいました」という意味で、1 から 4 の順にフォーマルな表現になる。ただし、一般のビジネ

スレターでは 1 か 2 を使うのが普通である。以下、これらの表現を使うに当たって特に注意

すべき点について解説を加えておく。

□Thank you for . . .

1番目の Thank you [very much] for . . . は We thank you [very much] for . . . のように

We または I という主語を加えて使うこともある。後者のスタイルはフォーマルな表現で、相

手や手紙の内容によってごくフォーマルなトーンにしたい場合は意識的にこのように主語を加

えることがある。ただし、通常は Thank you . . . または Thank you very much . . . というスタ

イルで十分に丁寧である。

70 9および 10 の the receipt of の the は省略可能。また、receipt of もすでに acknowledge に包含さ

れているので省略されることが多い。

172

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□We were pleased to . . .

2 番目の We were pleased to receive . . . では、be 動詞が wereと過去形になることに注意。

ただし、We are pleased to receive(または have received). . . のように現在形を使った用例

もないわけではない。この場合は返信を書いている現在の気持ちについて述べているというこ

とになる。ただし、一般には相手の手紙を受け取った時点での気持ちについて述べるというこ

とで過去形にするのが普通である。また、この文型では (be) pleased to の代わりに、ほぼ同

じ意味の (be) glad toを使うこともできる。ただし、後者はどちらかといえば願望が実現した

り、心配事が消えてうれしいという場合に好んで用いられる(この場合、glad にはたんにうれ

しいというだけでなく「ほっとする (be relieved)」というニュアンスがある。e.g. I’m glad to

hear that.「それを聞いてうれしく思う/ほっとした」)。通例、ビジネスレターの返信の書き

出しとしては (be) pleased to のほうが好まれる。

□We appreciate . . .

3 番目の We appreciate . . . という表現は Thank you . . . のフォーマルな代替表現である。

この appreciateは「(物・事に)感謝する」いう意味の文語表現で、一般に望外の助力に対す

る強い謝意を表す場合やごくフォーマルな状況で使う。したがって、単に「お手紙ありがとう

ございました」という意味で We appreciate your letter . . . とすると、ややおおげさな感じに

なってしまうことがある。なお、前述のとおり、appreciate は「(物・事に)感謝する」いう

意味であり、We appreciate you for your letter . . . のように「人」 を直接目的語にすることは

ないので注意されたい71。

□Please accept our thanks for . . .

4 番目の Please accept our thanks for . . . という表現も Thank you for . . . のフォーマルな

バリエーションである。thanks の代わりに appreciation を使えばもっとフォーマルな表現に

なる。ただし、単に「お手紙ありがとうございました」というだけなら Thank you for your

letter . . . で十分であり、一般的なビジネスレターの返信の書き出しとしての使用頻度はあまり

高くない。この Please accept . . . というパターンは、いわゆる「祝い状」とか「礼状」など

の business social letters の中で使うことが多い。たとえば次のような例である。

• Please accept my sincere appreciation for . . .「…に対する心よりの感謝を申し上げます」。

• Please accept my deepest gratitude for . . .「…に対して心から感謝申し上げます」。

• Please accept my congratulations on . . .「…に対するお祝いを申し上げます」。

• Please accept my condolences.「お悔やみ申し上げます」。

□We were sorry . . . と We regret . . .

1 から 4 までの書き出し例はいずれも手紙の内容が肯定的なものであることを前提としたも

のだが、なかには、たとえば苦情や支払い催促などのような、常識的に見て肯定的とはいえな

71 appreciateの用法についての詳しい解説は第 5章「英文ビジネス文書基本フォーム」収録の Form Letter

No. TK-200の「コメント」 (p. 427) 参照。

173

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いような内容の文書を受け取ることもある。このような場合には 5 番目の We were sorry

to . . . という書き出しを使う。このフォーマルな代替表現が 6番目の We regret receiving . . .

(または We regret that we have received . . .)である。なお、regret はこの後に to 不定詞を

とる場合と動名詞をとる場合とで意味が違うことに注意。regret to do のように to 不定詞を

とった場合は「(現在またはごく近い未来のことについて)…することを残念に思う、残念な

がら…する」という意味で、regret doingは「(過去のことについて)…したことを残念に思

う、後悔する」という意味になる。したがって「…という内容の手紙を受けとって残念に思う」

という場合は、We regret receiving . . . というスタイルになる(We regret that we have re-

ceived . . .という現在完了形の例文に対応させる場合は We regret having received . . . となる)。

□We have received . . .

1 から 6 までが相手の手紙に対する感謝の気持ちや残念な気持ちを含んでいるのに対し、7

番目の We have received . . . は感情を込めずに「…を受けとりました」という事実をそのまま

伝えるもので、おもに事務的なもの、ないし事務的に処理したい内容のものについて使うこと

が多い。たとえば、請求書を受け取ったときや、ある種の苦情で We are sorry . . . と言いたく

ない場合などに好んで使われる表現である。前者については Thank you . . . としてもかまわな

いが、請求書の送付に対してことさら礼を述べる必要もない。また、苦情の手紙に対する返信

を We were sorry . . . という書き出しで始めたとすれば、こちらの非をほぼ認めたうえでの返

信というニュアンスになるが、これに対して、次のような書き出しにした場合は、その件につ

いてはこちらには非がないという説明が後に続くことを予感させる。

• We have received your letter of April 1 informing us of the damage to the goods we sent to

you last week. 「当方が先週お送りした品物が破損していたという内容の 4月 1日付けの貴

信、拝受しました」。

この例文は We received . . . と過去形にしてもかまわないが、いまもその手紙が手元にあり、

それを参照しながら返信を書いているという感じを出すために、このように現在完了形を使う

ことが多い。これは 6番目の We regret that we have received . . . の場合も同じである。なお、

We have received your letter of . . . の代わりにWe have received with thanks your letter of . . .

のように感謝の言葉を挿入するバリエーションもある。ただし、感謝を示すなら最初から

Thank you . . . とすればいいのであって、こういうもってまわった表現は感心しない。8 番目

の We are in receipt of . . . も「…を受け取りました」という意味の表現で、これもごく事務

的な内容のものについて使う書き出しである。なお、receipt は receive の名詞形で「受領」

の意味であるが、receipt の “p” は発音しないので注意されたい。

□We acknowledge . . . と This is to acknowledge

9番目 の We acknowledge . . . および 10番目の This is to acknowledge . . . という表現も

「(相手の手紙その他を)受けとりました」という意味の、ごく事務的、ないし官僚的な表現

である。この acknowledge は「(…の受領を)確認する」という意味で、用例は Figure 39 (p.

67) に見られる。ただし、これは形式ばった事務的なトーンを意図的に狙う場合に使うもので、

174

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普通のビジネスレターでは 7番目の We have received . . . という表現を使っておくほうがよ

い。なお、この acknowledge という単語は文脈によって「(認めた上で)感謝の意を表す」

という意味も含むが、これをより明確にするために We acknowledge with thanks your letter

of . . . のようにして感謝の念を明示的に表すこともできる。

□This is to . . .

10 番目の書き出し例に見られる This is to . . .というパターンは、後述のように初信の

opener としてもたいへん便利なフレーズであり、使用頻度はかなり高い。日本語にすれば「…

するためにこの手紙を書いております」という意味で、to 以下には必要に応じて任意の動詞を

入れることができる。たとえば、This is to inform you that . . . や This is to remind you

that . . . など、さまざまな展開が可能である。11番目の This is in response to . . .(用例は

Figure 35, p. 63参照)はこのパターンの返信用のバリエーションのひとつであり、しいて日本

語に訳出すれば「…への返信としてこれを書いています」ということになる。

□Reference is made to . . .

11番目と 12番目の表現は、おもに公文書、あるいはそれに準じた性格の文書などに使われ

るごく事務的な(あるいは官僚的な)トーンをもった書き出しで、いずれも、「…についてご

連絡申し上げます」という意味の表現である。refer (to sth) という動詞は「(…に)言及する、(…

を) 参照する」という意味で、reference はその名詞形である。実際の使い方としては、たと

えば We refer to your letter of April 1 concerning . . .、あるいは Reference is made to your letter

of April 1 concerning . . . のようになる。いずれも「…に関する 4 月 1 日付け貴信について

ご連絡申し上げます」という意味である。ただし、前述のとおりこの表現は、ごく事務的、か

つ官僚的なトーンをもった書き出しであって、「礼状」とか「祝い状」などのような儀礼的・

社交的な、あるいはパーソナルな性格の文書に対して This is to acknowledge . . . とか Ref-

erence is made . . . のような書き出しを使うのは適当ではない。

*

以上、Figure 131 に挙げた 13 の表現について簡単に説明した。どの表現を使うかは要する

にケースバイケースということになるが、前述のとおり、一般的なビジネスレターの返信に使

う書き出しとしては、1 と 2、および 5 と 7 の 4 つのパターンのいずれかということにして

おくのが無難である。たいていのものはこの 4 つのいずれかで間に合うはずであり、そのほか

のものは、もっと実際の用例に数多く当たり、それぞれのニュアンスや適切な使い方がよくわ

かってから使うようにしたほうがよい。

通常、これらの opener は次のようにイニシエータを特定しながら、さらに必要に応じて来

信の主題、あるいはその内容を簡単に要約する形で文を完結することになる。

Thank you [very much] for We were pleased to receive We were sorry to receive We have received This is in response to

┐ │ │ │ │ ┘

+ your letter of (date) concerning sth.

175

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このうち、your letter of (date) のところは実情に応じて適宜、入れ換える。たとえば、letter

の代わりに faxや e-mailなどが入ることもあるし、場合によっては inquiry, quotation, offer,

proposal などといった単語を入れることもできる。(date) のところには相手のレターの日付

が入る。ここは April 1, 19-- のように年号まできちんと入れることもあるが、相手の手紙(あ

るいはファクスその他)がその年に発行されたものであれば年号を省略してもかまわない。た

だし、1 年前とか 2 年前のものについて言及しているのであれば、当然、その年号をはっきり

と書いておく必要がある72。

b) 「返信」の書き出し例 2(「導入句+主節」型)

単文型の書き出しのほかに「導入句+主節」型の書き出しがある。たとえば Figure 45 (p. 93)

の第 1パラグラフにある In reply to your inquiry of August 20, we are pleased to enclose

our quotation for the PC-56. のような例である。この文例では前半の In reply to . . . の部分が

導入句で、後半の we are pleased to . . . 以下が主節ということになる73。この「導入句+主節

型」の書き出しにもさまざまなものがあるが、代表的な例は次のとおり。

Figure 129: 返信の書き出し例 2(「導入句+主節」型)

1. In reply to . . . , S+V 74 2. In response to . . . , S+V 3. In answer to . . . , S+V 4. In receipt of . . . , S+V

5. With reference to . . . , S+V 6. With regard to . . . , S+V 7. Further to . . . , S+V 8. In further reply to . . . , S+V

9. As per . . . , S+V 10. As you/we requested/informed/etc. [in . . .], S+V

ここにあげた例は、いずれも返信の書き出しとしてごく標準的なものであるが、このうち最

も頻繁に使われる表現は 1番目の In reply to . . . という書き出しである。これは、前出の In

72 なお、your letter of April 1 の代わりに your letter dated April 1 としてもよい。この dated は「…日

付けの」という意味であるが、この場合 your letter dated on April 1 とする間違いが多いので注意された

い。これは「4月 1日付けの」という意味ではなく、「4月 1日に日付を記入した」という意味になって

しまう。

73 文法的にはこのような「導入句+主節型」のセンテンスも「単文」(simple sentence) の一種というこ

とになるが、ここでは Figure 131 (p. 172) にあげたようなごく単純な構造の単文と区別して、このような

タイプの書き出し文を「導入句+主節型」の書き出しと呼んでおく。 74 主節については Figure 130 (p. 178) 参照。

176

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reply to your inquiry of August 20, we are pleased to enclose our quotation for the PC-56. とい

う文例のような使い方をするが、そのほかのものについても使い方はほぼ同じであり、次のよ

うに In reply to の代わりに 2 番目から 6 番目のパターンをそのまま当てはめることができ

る。

In response to In answer to In receipt of With reference to With regard to

┐ │ │ │ │ ┘

+ your letter of (date), we are pleased to do sth.

このうち 5番目と 6番目は「…に関して」という意味で、話題を特定したり主題を設定する

ときに使う表現である。したがって、返信の書き出し以外にも、いろいろな場面で使うことが

できる。

7 番目の Further to . . . は、おもにある案件に関する追信(追加連絡)または確認文書など

の書き出しとして使い、ニュアンスとしては「…についてのフォローアップとして」という感

じになる。たとえば Further to our letter of April 8, we wish to inform you that . . . と書けば、

「4月 8日付けの弊社文書に関して(に付け加えて)ご連絡いたします」という意味になる(用

例は第 5章の Form Letter CF-300, p.374参照)。

8 番目の In further reply to . . . は In reply to と Further to をミックスした表現で、同じ

案件に対して再度、追加連絡する場合(返信への追信)などに使う。なお、further は far の

比較級で、程度や範囲などについて「さらに」「もっと」という意味で使う副詞である。

9 番目の As per . . . という書き出しにある “per” という単語はラテン語からの借入語で、

「…につき、…ごとに」という意味と、「…によって、…で(手段・方法)」という意味があ

る。前者の用例としては、たとえば 10 dollars per day(1 日当たり 10 ドル)とか 50 hours per

week(1 週当たり 50 時間)などがあり、この用法の per は不定冠詞の “a” で置き換え可能

である。後者の用例としては、send a letter per express mail(手紙を速達便で送る)のような

使い方があり、こちらの perは by で置き換えることができる。as perというイディオムの per

は後者の用法で、「…のとおり(に)、…に従って」(in accordance with) という意味になる。こ

れは、もともと口語的な略式表現とされているが、ビジネスレターではたとえば As per your

letter of April 1 . . .とか As per your request in your letter of April 1 . . . のような形でよく使

われる表現である75。

10番目の As you/we requested/informed/etc. [in . . .] というパターンは、たとえば As you

requested [in your letter of April 1] . . .( [4月 1日付けのお手紙で] ご請求のとおり)という

ような使い方をする。As you/we . . . の後の動詞は request や inform のほかに、instruct(指

示する)、explain(説明する)、mention(述べる) など、状況に応じてそれぞれ適切なものを使

うことができる。

75 as per の as は強調語で、しばしば省略されることがある。e.g. (as) per your request「ご要望により」。

177

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このグループの書き出しは、いずれも In reply to や As perなどのフレーズで始まる導入句

の後に主節を加えて文を完結するが、この主節によく使われる定型表現としては次のようなも

のがある。

Figure 130:「導入句+主節」型書き出し文の主節

1. . . . , we are pleased to do sth. 76 2. . . . , we have the pleasure of doing sth. 3. . . . , we wish to do sth. 4. . . . , we would like to do sth. 5. . . . , we are sorry to do sth; that . . . 6. . . . , we are writing to do sth.

□(be) pleased to . . . と have the pleasure of . . .

このうち、1番目の (be) pleased to doは「喜んで…いたします」の意味で、2 番目の have

the pleasure of doing もほぼ同じ意味に使う。ただし、後者のほうがよりフォーマルな表現に

なる。have the pleasure of というイディオムは、take [a] pleasure in doingという形で使うこ

ともある。この場合、take の代わりに haveを使うこともある(通例、不定冠詞の a は省略す

る)。ちなみに、「喜んで…する」という意味の類似表現を口語的か文語的かという意味での

フォーマル度の順に並べると、have the pleasure of → (be) pleased to → (be) glad to → (be)

happy to の順になる。一般のビジネスレターで使う表現としては (be) pleased to がちょうど

いいフォーマル度ということになる。

□wish to . . . と would like to . . .

3 番目の wish to と 4 番目の would like to はいずれも「…したい」という意味の丁寧な

表現である。このふたつの間に特に顕著なニュアンスの違いはないが、願望表現としては want

to → hope to → would like to → wish to の順に丁寧さが増すと考えてよい。このうち

want to はダイレクトな欲求の表現で、相手に遠慮するところがない場合に用いる。hope to は

「(それが可能と思って)そう望む」というニュアンスで、wish to は「(できるかどうかわ

からないが)ぜひそうしたい」という意味である。したがって、願望の表現としては hope to よ

りも wish to のほうがより丁寧な表現ということになる。would like to はいわゆる仮定法の

丁寧用法で、「よろしければ/もしできれば」というニュアンスを言外に含んでいる。したが

って、これも wish to と同じくらい丁寧な表現と考えてよい。ただし、wish to のほうが願望

の強さという点では強く感じられる。

76 各文例の末尾にある do sth の部分にはそれぞれ状況に応じて適当な動詞とその目的語を代入する。た

だし、1 と 5 では目的語として to不定詞の代わりに that 節をとることができる。

178

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□we are sorry that . . .

5 番目の we are sorry that . . . または we are sorry to do sth. というパターンはすでに

Figure 128の「返信の書き出し例 1」(p. 172) のところで紹介したとおりだが、これをもう少

しフォーマルな表現にしたければ (be) sorry の代わりに regret という動詞を使うことができ

る(regret の動詞型は p.343参照)。参考までに、「導入句+主節」型書き出し文の主節とし

て使った we are sorry that . . . の用例を以下に紹介しておく。

• In reply to your letter of April 1, we are sorry [to inform you]77 that your proposal has not

been accepted for the following reasons: 「4月 1日付けの貴信につきまして、残念ながら

貴社のご提案は以下のような理由で採用できないことになりました」。

□we are writing to . . .

6 番目の we are writing to do sth. という表現は、直訳すれば「…するためにこの手紙を書

いております」という意味だが、これは we are pleased to inform that . . . や we would like to

do sth. などの同種の表現と比べていくらか堅い表現になるが、ストレートに本題を導入する

ための opener としてごく頻繁に使用される表現のひとつである。実際の用例としてはたとえ

ば次のようになる。

• In reply to your letter of April 1 [concerning . . . ], we are writing to inform you that . . .「4

月 1日付けの貴信へのお答えとして、…をお知らせいたします」。

• Further to your letter of April 1 [concerning . . . ], we are writing to ask you whether . . .「4

月 1日付けの貴信につきまして、…かどうかお尋ねします」。

なお、この we are writing to . . . というパターンは、前出の「単文型の書き出し」例にあっ

た This is to . . . と同じく、初信の書き出しとしてもよく使われるフレーズである。たとえば、

上記の例文中の In reply to . . . や Further to . . . の部分を省略して We are writing to . . . と

すれば、そのまま単刀直入な初信の書き出しになる。

c) 来信の内容を要約するための語句

ここまで説明してきた各種の書き出し文は、いずれの場合にもイニシエータ (Figure 126, p.

165) を明示する形でフォローし、その後に concerning などの前置詞を使って来信の内容を簡

単に要約しておくというスタイルをとっていた。この concerning と同じ役割を果たすつなぎ

言葉にはさまざまなものがあるが、大きく分けて「前置詞/前置詞句型」「関係代名詞型」「分

詞構文型」の 3 つのタイプがある。

77 この例文では、主節の to inform you の部分は省略することができる。もっとも、厳密にいえば、これ

は相手の手紙への返事として that 以下のことを「お知らせすることを残念に思う」という意味なので to

inform you があったほうが筋は通るわけだが、一般に、あってもなくても同じ意味のものは省略される

傾向にある。これを “economy of words” の原則という。

179

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Figure 131: 来信の内容を要約するための語句

前置詞/前置詞句型

1. . . . about sth 2. . . . concerning sth 3. . . . regarding sth

4. . . . as to sth

5. . . . with regard to sth 6. . . . with respect to sth 7. . . . in respect of sth 8. . . . in relation to sth 9. . . . on the subject of sth

関係代名詞型

10. . . . , in which S+V

分詞構文型

11. . . . requesting [us to do] sth* …を […するよう] 依頼・要求する

12. . . . asking about sth …について尋ねる 13. . . . asking for sth …を求める 14. . . . asking if/whether S+V …かどうか尋ねる 15. . . . inquiring about sth …について問い合わせる 16. . . . inquiring for sth …を求める

17. . . . informing us of/about sth* …を/…について知らせる

18. . . . advising us of/about sth* …を知らせる/…について助言する

19. . . . suggesting that S+V …を示唆・提案する

20. . . . proposing [to do; doing] sth* …を提案する

21. . . . explaining sth* …を説明する

22. . . . confirming sth* …を確認する

23. . . . indicating sth* …を示す

24. . . . giving us sth …を与える 25. . . . sending us sth …を送る 26. . . . enclosing sth …を同封する

27. . . . reminding us of sth* …について注意を喚起する

* 印の動詞はいずれも目的語として that 節を従えることができる。たとえば informing that . . . ; pro-

posing that. . . ; explaining that . . . ; confirming that . . . など。なお、2重目的語をとるケースでは「人」

目的語はすべて usとした。これは必要に応じて me(またはその他の人称代名詞)に置き換えることがで

きる。

180

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このうち、最初の「前置詞/前置詞句型」のグループにある 9 つの用例はいずれも「…(の

件)について/…に関して」という意味で、それぞれの前置詞あるいは前置詞句の後にくる目

的語はすべて名詞あるいは名詞句になる。このグループの 8つの語句のうち、最も口語的かつ

一般的なのは about で、次によく使われるのが concerning, regarding, as to の順になる。こ

の 3つは about よりは文語的だが、5~9番目の 5つのフレーズよりは一般的な表現である。

「前置詞/前置詞句型」のつなぎ言葉が、名詞ないし名詞句しか続けることができないのに

対し、「関係代名詞型」では、たとえば We were pleased to receive your letter of May 20, in

which you asked us about . . . のように which 以下に主語、動詞、目的語その他の文要素をも

ったフルセンテンスを続けることができる。したがって、concerningや aboutではまとめきれ

ない比較的長い説明が必要な場合にはこのパターンを使うとよい。ちなみに、この We were

pleased to receive your letter of May 20, in which you asked us about sth. という例文は、次の

ようにふたつの独立したセンテンスを関係代名詞を使ってひとつにまとめたものである。

• We were pleased to receive your letter of May 20. You asked us about sth in this letter.

• We were pleased to receive your letter of May 20, in which you asked us about sth.

この例文の後半部を分詞構文を使って書き換えると、. . . asking us about sth. となるが、こ

のパターンが 3つ目の「分詞構文型」のつなぎである。これは、単にその内容に応じた動詞を

現在分詞形にしただけのものだが、この分詞構文型のつなぎをうまく使うと文章を簡潔なもの

にすることができる。この「分詞構文型」のグループに入る動詞は無数にあるが、Figure 131 に

例示した 17の動詞はその中でもビジネスレターで特に使用頻度の高い必須語句である。

以上述べた返信の書き出しパターンを図式的にまとめると、次のようになる。

Figure 132: 返信の書き出し 4つのパターン

1 単文型の書き出し + 前置詞(句)型の要約語

礼を述べ 相手の通信を特定し 主題を設定する。

Thank you for (your letter of April 1) concerning (the ABC Project).

2 単文型の書き出し + 関係代名詞型の要約語

手紙の受領を知らせ その内容を要約する。

We have received (your letter of April 1), in which (you asked us to . . . ).

3 導入句+主節型の書き出し + 前置詞(句)型の要約語

相手の通信を特定し その内容を確認して 本論に入る。

In reply to (your letter of April 1) concerning (the ABC Project), we (are pleased to . . . ).

181

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4 導入句+主節型の書き出し + 分詞構文型の要約語

相手の通信を特定し その内容を確認して 本論に入る。

As per (your letter of April 1) (asking for our proposal for the ABC Project), we (have the pleasure of . . . ).

( ) の部分は可変データ部

d) 初信の書き出し例

これまで見てきた例は、いずれも相手からのレターその他に対する「返信」の書き出し文で

あった。前述のとおり、ビジネスレターはその数からいえば返信、あるいはその後のフォロー

アップの形で出すケースが圧倒的に多い。とはいえ、そうした一連のコレスポンデンスも、ど

ちらかが発信する初信がなければ成立しない。

初めて出すレターの書き出しはその内容によって千差万別であり、これを一概に定型化する

ことはできない。しかし、「メッセージを書くことになったきっかけ(理由・目的・背景)に

言及し、全体のフレームワークを設定する」という原則は同じである。したがって、初信の場

合も、次の例のように具体的なイニシエータがある場合には、これを特定しながら出状理由を

述べ、本題に入ることになる。

Κイニシエータを特定しながら、出状理由を述べて書き出しとした例 We saw your advertisement in The Japan Times of April 1, and are very interested in

knowing more about your products.「御社の広告を 4月 1日付けのジャパンタイムズ紙で

見まして、貴社の製品についてさらに詳しいことを知りたいと思います」。

この例と同じパターンの書き出し例はすでに Figure 124 (p. 160) で見たとおりである。これ

に対して、具体的なイニシエータがない初信では、次のように簡単な自社紹介(または自己紹

介)から入るのもひとつの方法である。

Κ自社紹介から始め、出状の背景を述べた書き出し例 We are one of the leading computer manufacturers in Japan, and are very interested in

promoting our products in the United States.「弊社はコンピューターの製造では日本で有数

の会社でありますが、米国での販売拡大に多大の関心を持っております」。

この例文では、まず最初に We are . . . という書き出しでごく簡単な自社紹介をし、これを

and で受けて (we) are very interested in . . . と本題に入っている。センテンスの基本的なパタ

ーンはさきほどの例文と同じである。いずれも、本題はこの後のセンテンスで具体的に展開さ

れることになる。日本語文書では「つきましては」のような起辞を置いてから本論に入るのが

普通だが、英語ではたとえば In this regard, we would like to ask you if . . .(この点につきまし

て、…かどうかお尋ねしたいと存じます)のようなつなぎ方をすることが多い。

次の例は、前置きなしにただちにレターの本題を述べたものである。英文ビジネスレターで

は、このような単刀直入な書き出しが珍しくない。

182

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Κ出状の理由・目的を述べて書き出しとした例 We are writing to ask if you would be interested in representing us in your country.「この

手紙は、貴社が弊社の代理店となることにご関心がおありかどうか、お尋ねするために書い

ております」。

いずれにせよ、初信では出状の理由・目的を明確に述べることが最も大切なポイントであり、

その意味では We are writing to . . . あるいは This is to . . . という書き出しが最も効率的で有

効範囲の広い opener である。この書き出しでは、to の後に ask, inquire, request, inform,

remind, confirm, order, send, invite, introduce, announce など、状況に応じた任意の動詞を挿

入することができる。初信の書き出し例のうち代表的なものは次のとおり。

Figure 133: 初信の書き出し例

1. This is to . . . 2. We are writing to . . . 3. We are pleased to . . . 4. We have the pleasure of . . . 5. It is our pleasure to . . . 6. We are interested in . . . , and would like to . . .

この 6 つのパターンについては、いずれもこれまでの説明の中に出てきたものであり、特に

説明を要しないと思われるが、参考までに、これらの書き出しを使った例文をいくつか以下に

紹介しておく。

• This is to (or I am writing to) propose that we buy a new copy machine in order to help

improve job efficiency at our office.「オフィスでの業務効率を高めるためにコピー機を 1 台

購入することを提案します」。

• We are writing to (or This is to) confirm your order made by telephone yesterday for the

following products: 「昨日お電話で承った以下の品物に対するご注文を確認いたします」。

• We are pleased to invite (or We have the pleasure of inviting; or It is our pleasure to invite)

you to a dinner party to commemorate the 25th anniversary of Japan Trading Co., Ltd.「ジ

ャパントレーディング社創立 25 周年を記念して開催されるディナーパーティに、貴殿を

ご招待させていただきます」。

e) 「送達状」の書き出し例

ビジネスでは、たとえば商談の内容を要約したミーティングメモや正式な議事録 (minutes

of meeting)、あるいは見積書 (quotation) その他の各種書類を、関係者や顧客に送付する機会

が多い。「送達状 (transmittal letter)」とは、一般にそういう書類を送付するときに添付するカ

バーレターのことを指す。最近ではファクスで書類を電送するケースが多くなってきたが、フ

ァクスを出すときに使うカバーシートも一種の送達状ということになる。

183

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送達状はその数が多いだけにフォームレターとして定型化されたものも多い。そのうちのい

くつかは第 5章で具体的に紹介することになるが、とりあえずここでは一般的な送達状の書き

出し例として次の 8つのパターンを覚えておいていただきたい。なお、以下の文例中の enclose,

attach, send はそれぞれ「同封する」「添付する」「送付する」の意味だが、このうち enclose

は同封物を手紙に折り込んで送付するときに使い、attach はホチキスなどで止めて添付する場

合に使う。ただし、実際にはかならずしもそう厳密に区別しているわけではない。カバーレタ

ーに添付した書類をファクスで送付するときは一般に attach を使うのが普通だが、この場合も

慣習的に enclose を使っているケースが少なくない。

Figure 134:「送達状」の書き出し例

1. We have the pleasure of sending you; enclosing sth. 2. We are pleased to send you; enclose sth. 3. We have enclosed sth. 4. We are sending you; enclosing sth. 5. Here is/are sth. 6. Enclosed (or Attached) is/are sth. 7. Enclosed (or Attached) you will find sth. 8. Enclosed (or Attached) please find sth.

この 8 つの表現はいずれも同じような意味で、1 番目から 5 番目まではほぼフォーマルさの

度合に応じて並べてある。つまり、最初の We have the pleasure of . . . というのがこの中で

は最もフォーマルな表現で、5 番目の Here is/are . . . はごく軽い感じの口語的な表現である。

送達状の中にはいちいち (be) pleased や have the pleasure といった感情表現を加える必要

のないものもたくさんある。そういう場合は、3 番目あるいは 4 番目のパターンを使っておけ

ばよい。このふたつはどちらを使っても大差はないが、3番目の We have enclosed . . . という

パターンのほうがいくらかフォーマルな感じがある。なお、We have enclosedの代わりに We

enclose . . . と encloseを原型のまま使うこともあるが、これは後者のほうが堅い表現になる。

ちなみに、米国ではどちらかといえば We are (or I am) enclosing . . . という形が好まれている。

5 番目の Here is/are . . . というパターンは「これは(同封/添付したものは)…です」と

いう意味の口語的な表現で、一般に米国ではこの Here is/are . . . の casualなトーンを好んで

使う傾向がある。特に社内メモランダムなどでは圧倒的にこのパターンが多い(Form Letter

TM-100, p. 377の「コメント」参照)。もっとも、米国人といってもいろいろな人間がいるわ

けで、中には Here is/are . . . のような表現は通常のビジネスレターで使うには軽すぎるという

人がいないでもない。

6 番目の Enclosed (or Attached) is/are . . . は . . . is/are enclosed (or attached). の倒置構

文で、たとえば Enclosed is a copy of our catalog describing the general features of our prod-

ucts. のような使い方をする。この場合、A copy of our catalog describing . . . is enclosed. とし

たのでは頭でっかちの文になってしまうため、主部と述部を倒置してセンテンスのバランスを

整えるのである。もっとも、We have enclosed . . . または We are enclosing . . . という書き出

しにすれば問題はないわけで、特にこのような倒置構文の使用を正当化するほどの強い理由は

184

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ない。ただし、ごく事務的な連絡文書においては、We や I を主語にする代わりに、Enclosed

is/are . . . という表現で代表されるような非人称主語構文をしばしば使うことがある。これは、

簡潔さとビジネスライクなトーンを意図してのことである。

7番目と 8 番目のふたつはビジネス文書や公文書などで伝統的に使われてきた表現で、現在

では一般にいわゆる cliché(クリシェー=使い古された陳腐な決まり文句)とみなされている

言い回しである。したがって、知識として知っておくことは必要であっても、実際に文書を書

く際にはあまり乱用しないほうがよい。構文上は、いずれも 6番目の Enclosed is/are . . . と同

じく受動態の倒置構文である。参考までにそれぞれ適当な目的語を代入したうえで通常文に書

き換えると次のようになる。

• Enclosed you will find our latest catalog. → You will find that our latest catalog is en-

closed.

• Enclosed please find our latest catalog. → Please find that our latest catalog is enclosed.

なお、これを Enclosed, you will find . . . のような分詞構文として例示し、あるいは説明し

ている解説書もあるが、これでは Enclosed の意味上の主語は you ということになってしまい、

意味がおかしくなる(分詞構文では原則として分詞の意味上の主語と主節の主語が一致してい

なければならない。たとえば、Walking down the street, I met Mr. Yamada. では、walking の

意味上の主語は Iであり、同じように Surprised, he run away. という文では surprised の意味

上の主語は主節の主語に一致する)。

ちなみに、このふたつの文例に使われている find という動詞はもともと「(捜して)…を

見つける、発見する、…であることがわかる」という意味だが、ここではこの意味からの転用

として、日本語の「ご査収ください」に相当する一種の business jargon(ビジネス用語/決ま

り文句)として使われている。また、find の堅苦しさを嫌って Enclosed you will see . . . のよ

うに see という動詞を使うこともある。このほうが find よりも自然な表現になるとされてい

るが、これはどちらかといえば趣味の問題である。

3.4.2 「結び」の基本定型表現 すでに述べたとおり、ビジネスレターの「結び」のおもな目的は「メッセージ全体を締めく

くりながら、次のアクションにつなげる」(p. 162) ということである。たとえば、これまでに

見てきた英文レターの例文では次のような「結び」が使われていた。

• Thank you very much for your attention, and we look forward to hearing from you soon.

(Figure 34, p. 62)

• Thank you in advance for your cooperation in this matter. We hope to hear from you soon.

(Figure 35, p. 63)

• Thank you again for your interest in our product. I look forward to the opportunity of

serving you in the near future. (Figure 37, p. 65)

この 3つの例文では、いずれも相手に対する礼を述べながら全体を締めくくり、さらに返事

185

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を求める言葉を添えて次のアクションにつなげている。その意味で、この 3つの例文はビジネ

スレターの「結び」としてひとつの典型的なパターンを示しているということができる。この

ほかにも、たとえば We hope that the information provided above is (or will be) of assistance

to you.(上記のインフォメーションがお役に立てると幸いです)のような、いわば「結論を補

足する」ための表現や、If you have any questions, please contact us at any time.(何かご質問

があれば、いつでもご連絡ください)のような「協力を申し出る」表現がある。

このように、ビジネスレターの closing paragraph では、必要に応じて「礼を述べ」「結論

を補足」しながら、相手の「返事を求め」、あるいは「今後につなげる」ための言葉を添えてレ

ターを結ぶ、という一定のパターンがある。場合によっては「礼」を述べる代わりに、「お詫

びの言葉」を添える場合もある。いずれの場合にもいわゆる定型表現というのがあって、これ

をうまく活用することによって適切な結びを効率的に作成することができる。

以下、各種の「結びの定型表現」の中から代表的なものを次の 5つのグループに分けて掲載

し、各文例についてそれぞれ注意すべきポイントを解説する。

①感謝の言葉を添えて結ぶ

②相手の返事・アクションを求めて結ぶ

③お詫びの言葉を添えて結ぶ

④今後につなげるための言葉を添えて結ぶ

⑤その他

Figure 135:「結び」の定型表現 45

①感謝の言葉を添えて結ぶ

1. Thank you again for writing to us. お手紙ありがとうございました。もう一

度お礼を申しあげます。

2. Thank you very much for your attention in this matter.

この件に関するご配慮にお礼を申し上げ

ます。

3. Your kind attention to this matter will b e highly appreciated.

この件についてよろしくご配慮いただけ

れば幸いです。

4. We [would like to; wish to] thank you in advance for your cooperation in this matter.

この件に対する貴社のご協力に、あらか

じめお礼を申し述べさせていただきま

す。

5. We would appreciate your cooperation inthis matter.

よろしくご協力のほど、お願い申し上げ

ます。

186

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6. I shall be most grateful to you for what- ever assistance you may be able to give us in this connection.

この件につきまして何なりとご協力いた

だければ幸いです。

7. Thank you again for the pleasure of serv- ing you.

貴社のお役に立てましたことに、再度お

礼を申し上げます。

8. Please accept our sincere gratitude for your cooperation.

貴社のご協力に対して、心から感謝いた

します。

9. I wish to thank you once again for e v e r y - thing you did for me/us. I certainly look forward to an early opportunity to reci- procate your kindness.

いろいろとお世話になり感謝の言葉もご

ざいません。このご親切にお返しできる

日が遠からず来ることを楽しみにしてお

ります。

10. Thank you again for all the help and valuable advice you have give us, and I hope you will continue to favor us with your generous support.

数々の貴重なご助言とご援助に対し、再

度、感謝の意を表するとともに、今後と

も引き続きのご支援をお願い申しあげま

す。

②相手の返事・アクションを求めて結ぶ

11. We [are] look[ing] forward to hearing from you.

お便りを楽しみにしています/お待ちし

ております。

12. We look forward to [receiving] your favorable reply.

よいお返事を楽しみにしています/お待

ちしております。

13. We would appreciate your early reply. 早めにお返事をいただけると幸いです。

14. Your prompt reply will be [highly] appre-ciated.

早めにお返事をいただけると幸いです。

15. We hope to receive your reply by April 1,if possible.

できましたら、4月 1日までにお返事をいただきたく存じます。

16. Please acknowledge receipt of this letter by return mail/fax/e-mail.

折り返し、郵便/ファクス/電子メール

にて本状の受領確認をお願いします。

17. Please fax/e-mail your reply upon receiptof this letter.

本状を受領しだい、お返事をファクス/

電子メールにてご送付ください。

18. Please let us know immediately if you have any questions regarding the above.

上記の件に関して何かご質問がある場合

には、ただちにご連絡ください。

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19. Kindly provide us with the above infor- mation as soon as possible.

上記のインフォメーションをできるだけ

早くいただけるようお願いします。

20. We would appreciate it if you would/could do sth.

…していただけると幸いです。

21. It would be highly appreciated if you would/could do sth.

…していただけると幸いです。

22. We must therefore ask you [again] to g i v ethe matter your immediate attention, andto do sth [by date].

したがいまして、ただちに本件の処理に

当たっていただき、[~日までに] …していただくよう [再度] お願い申し上げます。

③お詫びの言葉を添えて結ぶ

23. Once again, we are sorry for the delay in sending our reply.

返事を出すのが遅くなりましたことを、

再度お詫びいたします。

24. We are sorry for the trouble we have given you, and we thank you for your understanding.

ご迷惑をおかけしたことをお詫びすると

ともに、(この件についての)ご理解に

感謝いたします。

25. We regret having caused you inconve- nience (, and . . . ).

不都合/ご迷惑をおかけしたことを残念

に思います。

26. Please accept our thanks for the trouble you have taken in this connection.

この件に関しましてお骨折りをいただ

き、たいへん感謝しております。

27. Once again, please accept our sincere apologies [for sth].

再度 […についての] 心よりのお詫びを申し上げます。

28. We are very sorry that we are unable to comply with your request, but we hope you will kindly understand the above.

貴社のご期待に添えないことをお詫びす

るとともに、上記の件、よろしくご理解

いただけるようお願い申し上げます。

29. I am very sorry that we have to disap-point you in this matter, but I hope that we may be of more help in the future.

この件に関し、ご期待に添えないことは

誠に残念に思いますが、いずれ何かのお

役に立てることを願っております。

④今後につなげるための言葉を添えて結ぶ

30. If you have any questions, or need further information, please contact us again.

もし何かご質問があれば、あるいはさら

に詳しい情報が必要であれば、再度ご連

絡ください。

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31. If you have any questions, please feel free

to call 03-123*-567*. もし何かご 質問があり ましたら、

03-123*-567*までお電話ください。

32. If we may be of help to you in some otherway, please feel free to call us at your convenience.

もし何かほかの件で(方法で)お役に立

てることがあれば、いつでもご都合のよ

いときにお電話ください。

33. If there is anything [else] I can do for you,please let me know.

もし [ほかに] 何かできることがありましたらお知らせください。

34. If I can provide you with any further information, or answer any questions you may have pertaining to the above matter, please do not hesitate to contact me at any time.

上記の件に関し、より詳しい情報がご必

要の節は、あるいは何かご質問があれば、

いつでもご遠慮なくお申しつけくださ

い。

35. We look forward to your continued co- operation.

御社の引き続きのご協力を期待しており

ます。

36. We look forward to the pleasure of serv- ing you in the near future.

近日中に御社のお役に立てることを楽し

みにしております。

37. We look forward to doing business with you [again] in the near future.

近日中に [再度] 御社とお取り引きいただけることを願っております。

38. We look forward to a long and rewardingbusiness relationship.

今後とも御社との末長く実りのある取り

引きが続くことを期待しております。

⑤その他

39. We trust that the matter will receive yourprompt attention.

本件に関し、御社の迅速なご配慮をいた

だるものと存じます。

40. We hope that we have been of service to you. (If there is anything else we can do for you, please let us know at any time.)

御社のお役に立てましたなら幸いです。

(もし、ほかに何かできることがありま

したら、いつでも [ご遠慮なく] お知ら

せください。Κ文例 33参照)

41. We hope that the information provided above is of assistance to you. (If you haveany questions, or need further informa- tion, however, please contact us again. Thank you.)

上記のインフォメーションが御社のお役

に立てれば幸いです。(もし何かご質問

があれば、あるいはさらに詳しい情報が

必要であれば、再度ご連絡ください。Κ文例 30参照)

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42. We hope that the above will meet with your approval. Thank you for your con- sideration.

上記の件、御社のご承認をいただけるこ

とを望んでおります。以上、よろしくご

配慮のほどお願い申し上げます。

43. We trust that the above is acceptable to you. (If you have any questions, however,please contact us again [at any time]. Thank you.)

上記の件、ご了承いただけるものと存じ

ます。(もし何かご質問があれば、ある

いはさらに詳しい情報が必要であれば、

再度ご連絡ください。Κ文例 30参照)

44. We trust that you will find the above to beof interest. (If you have any questions, however, please contact us again [at any time]. Thank you.)

上記の件、貴社のご関心に沿ったものと

存じます。(同上)

45. It has been a pleasure to work with you on this project (, and we look forward to another opportunity of serving you in the near future).

本プロジェクトにてご一緒に仕事をする

ことができて幸いでした。(近日中に御

社のお役に立てることを楽しみにしてお

ります。Κ文例 36参照)

□文例 1: Thank you again . . .

文例 1は、問い合わせに対する返信などの末尾に軽く添えて、Thank you again for writing to

us. という形で使う。ここで againという単語を使っているのは、書き出しが Thank you for

your letter of April 1 . . . のようなスタイルになっていることを想定したものである。この文例

は次のように for 以下を適当に書き換えるだけで、ほとんど無限のバリエーションを作ること

ができる。

• Thank you again for doing business with us.

• Thank you again for placing an order with us.

• Thank you very much again for your help/support/cooperation, etc.

文例 7も文例 1のバリエーションのひとつである。また、相手の返事がほしい場合には、たと

えば文例 11にある We look forward to hearing from you soon. のようなセンテンスをこの後

に加えることができる。

□文例 2, 3: attention in this matterと attention to this matter

文例 2は汎用性の広い表現であるが、通例、相手の理解やアクションを求めた手紙の末尾に

添えて使うことが多い。末尾の in this matter は「この件(について)」の意味であるが、「こ

の件」というのが何を指すかは、当然、展開部で具体的に述べられていなければならない。な

お、文例 2では attention in this matter となっているのに対し、文例 3では attention to this

matter となっているが、この attentionという名詞は、pay attention to sth(…に注意を払う)

190

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や draw sb’s attention to sth([人の] 注意を…に向けさせる)などのイディオムの中で使われ

た場合は to をともなって使われることが多い。ただし、これらのイディオムにおける to とい

う前置詞はその前の payや drawなどの動詞を受けて、その動作の「方向」を示しているので

あって、attention という語と直接結びついているわけではない。したがって、attention はか

ならずしも to をとるとはかぎらず、状況に応じて in や of をとることもあることを覚えてお

きたい。

文例 2の in this matterと文例 3の to this matterは、意味的にはほぼ同じであり、この前置

詞の使い分けは、書き手の意識がそのまま用語法に反映されたものと考えるべきである。つま

り、in this matter の in は「…について、…に関して」という意味のいわゆる「限定の in」で

あり、your attention が向けられる範囲を限定している。一方、to this matter のほうは明らか

に Thank you for (paying) your attention to this matter. という意識であり、こちらは atten-

tion を向けるべき「方向」をより強く意識しているということになる。なお、文例 3はいわゆ

る「受動態 (passive voice)」の文例で、これを「能動態 (active voice)」に書き直すと We would

[highly] appreciate your kind attention to this matter. となる78。

□文例 4: We thank you . . . と We would like to [or wish to] thank you . . .

文例 4 は We thank you . . . という形で使う場合と、We would like to (or wish to) thank

you . . . という形で使う場合がある。Figure 128 (p. 172) の解説でも述べたとおり、We thank

you . . . は Thank you . . . のフォーマルなスタイルであるが、これはかなり形式ばった堅苦し

い表現になる。このため、一般には、would like to や wish to (いずれも「[できれば]…し

たい、[ぜひとも] …させていただきたい」という意味の丁寧表現)を加えることが多い。これ

によって、We thank you . . . の堅苦しさが柔らぎ、お礼の表現としてより自然なトーンになる

からである。ちなみに、文例 9も I wish to thank you once again . . . となっているが、これも I

thank you . . . というスタイルの堅苦さをなくして、柔らかな丁寧さを強調した表現にしたも

のである79。

thank you in advance について

文例 4 には in advance という表現が出てくる。これは「前もって、あらかじめ」という意

味のイディオムで、たとえば pay in advance(前払いする)や discuss the matter in advance [of

a meeting](その件について [会議の] 事前に打ち合わせする)のように使う。thank you in

advanceという形で使われた場合は「あらかじめお礼を申し上げます」という意味になる。

この表現は、Figure 35 (p. 63) の文例にも出てきたとおり、ビジネスレターでは比較的よく

使われる表現であるが、「あらかじめお礼を述べる」というのはある意味で相手がこちらの思

うとおりのことをしてくれるものと一方的に決め込んでおり、自分本位の失礼な表現であると

する人もいる。たとえば R. L. Shurter は Effective Letters in Businessの中で、この表現につい

78 受動態と能動態の使い分けについては文例 21の解説 (pp. 199-200) 参照。appreciate の用法について

は文例 5の解説 (p. 192) 参照。 79 もうすこしくだけた感じにしたい場合には文例 7や文例 10のように主語を省略して Thank you . . . と

いうスタイルにする。もちろん、これでも丁寧さは十分に伝わる。

191

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て次のように述べている。

“. . . Poor psychology because it antagonizes the reader by too obviously assuming that

he is going to do what you want him to.”「この表現は、自分が相手にしてほしいと思うこ

とを、当然のようにそうしてもらえるものと決め込んでおり、手紙を受け取った相手に反

発を感じさせる。したがって心理学的にはお粗末な表現ということになる」。

この見解に従えば thank you in advance という表現はあまり好ましい表現ではないという

ことになるが、実際にはこれは相手に何かを依頼した場合の決まり文句として一般に使われて

おり、これ自体が特に offensive な表現であるとは思えない。むしろ、丁寧さを強調した表現

として受け取るのが普通である。もっとも、文脈によっては自分では気づかずに結果的にかな

り押しつけがましい感じを与えてしまうこともある。その意味では注意が必要だろう。また、

いわゆる “economy of words” の見地から thank you in advanceという表現に異を唱える人も

いる。つまり、仮に文例 4で in advanceというフレーズを省略しても実質的な意味は変わず、

また丁寧さが失われるということもない。したがって、冗語の排除という立場からすれば、こ

のフレーズは当然省略されてしかるべき対象だというのである。この意見は簡潔さを重視する

最近のライティング理論にも合致するもので、傾聴に値するものである。とはいえ、さほど神

経質になる必要があるほどの問題とも思われない。要は前後の文脈やセンテンスのリズム、あ

るいは相手との関係などを勘案して、そのつど判断すればいい問題である80。

□文例 5: We would appreciate . . . と We will appreciate . . .

appreciate は望外の助力に対する強い謝意を表す場合やフォーマルな文脈で、しばしば

thankの代替語として使う(「返信の書き出し例 1」Figure 128, p. 172参照)。文例 5は [We]

Thank you [in advance] for your cooperation in this matter. と書き換えることができる。もち

ろんこれも十分に丁寧な表現である。なお、We would appreciate . . . の代わりに We appre-

ciate . . . とすると、すでにすんだことに対する現在の謝意の表明ということになってしまうの

で注意されたい。文法的には We will appreciate . . . とすることも不可能ではないが、丁寧さ

を意識した場合にはいわゆる「仮定法丁寧用法の would」を使う。文例 5は明らかに丁寧さ(ま

たはフォーマルさ)を意識した表現であり、We would appreciate . . . とするのが自然な表現と

いうことになる。

□文例 6: I shall be most grateful . . . の shall の用法

伝統的な規範文法によれば、1 人称の単純未来、および話者の意志を表す意志未来には助動

詞の shall を使うことになっている。たとえば I shall be 20 years old next month.(単純未来)

80 ちなみに、パソコン通信(電子メール)では、何らかの情報や助けを求める場合のネット儀礼(ネチケ

ット)のひとつとして Thank you in advance.(または Thanks in advance.)という表現、およびその頭文

字をとった TIAという略語が定着している。なお、日本人の書いたビジネスレターにはしばしば Thank

you for your cooperation in advance. のような語順になっているものを見かけるが、これでは「あらかじ....

めのご協力.....

にお礼を申し上げます」というおかしな意味になってしまうので注意されたい。

192

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や I shall be back in two days.(意志未来81)のようなケースである。ただし、現在の英語では

willと shallの区別はかなりあいまいになってきており、特に米国では Shall I open the win-

dow? のような「相手の意志を尋ねる shall」のほかはすべて willで代用する傾向が強い82。し

たがって、上記のふたつの例文も、通例、それぞれ I will be 20 years old next month. および I

will be back in two days. となる。

もっとも、米語でも 1人称の単純未来・意志未来に shallを絶対に使わないというわけではな

く、「形式ばった表現」を意識した場合や、「話者の強い意志や決意」といった観念を表す場

合には shallを用いることが多い。たとえば I shall be very happy to see you. や I shall re-

turn.83 のような例である。文例 6の shallは、この「形式ばった shall」の用例として提示した

ものである。ただし、これを will に置き換えても特に不都合はない。

□文例 8: Please accept our sincere gratitude for . . .

これと同じパターンの表現はすでに「返信の書き出し例 1」(Figure 128, p. 172) の中で紹介

したとおりであるが、結びの言葉として使う場合は文例 23および文例 27 にあるように、Once

again, please accept . . . という形で使うことが多い。詳しくは文例 23の解説 (p. 200) 参照。

□文例 9: I wish to thank you . . .

文例 9は、いわゆる「礼状」の典型的な結びの言葉。文例 9の wish to は want to の丁寧

表現で、これを省略して I (or We) thank you . . .とするとかなり堅苦しいトーンになる(文例 4

の解説参照)。なお、この thank you . . . for everything you did for me/us. の for を to に

すると「いろいろ意地悪をしてくれて(ありがとう)」という皮肉になってしまうので注意さ

れたい。この文例のバリエーションは第 5 章「ビジネス文書の基本フォーム」収録の Form

Letter No. TK-100 (p. 422) の第 3パラグラフ参照。reciprocateは reciprocus (= returning) とい

うラテン語を語源とするもので、「返礼する、報いる」という意味。reciprocate your kindness

で「あなたのご親切にお返しをする」という意味になる。

81 「意志未来」と「単純未来」はかならずしも明瞭に区別できないことがある。この I shall be back in two

days. も場合によっては単純未来(=話し手の意志とは無関係に実現すること)と解釈することができる。

82 ただし、法律文書や契約書では shall と willを明確に区別して用いる。契約書においては、shallで表

された条項・既定は法的強制力を伴なう契約上の義務 (compulsory obligation) であることを示す。詳しく

は巻末資料「文法編」の 2参照 (p. 557) 参照。 83 太平洋戦争中、ダクラス・マッカーサーが日本軍に追われてフィリピンから撤退するときに言った有名

な言葉。「私はかならず戻ってくる」という意味であるが、この例のように話者の強い決意を表す場合は

米語でも shall を用いるのが普通。これを I will return. としたのでは、shall に含まれた「強い決意」の

気持ちを十分に表すことができない。will と shall の使い分けについては巻末資料「文法編」の 3 参照 (p.

558) 参照。

193

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□文例 10: Thank you again for . . .

これも文例 9と同じく、「礼状」の典型的な結びの言葉。Thank you again for . . . という

書き出しは、Once again, I wish to thank you for . . . あるいは Once again, please accept our

sincere gratitude for . . .(文例 8および文例 27のバリエーション)のようにすることもできる。

advice は「助言」という意味の名詞であるが、この単語は不可算名詞であり、advices と複数

形にすることはできない(ただし shipping advice のように「通知状」という意味で使われた

場合は可算名詞扱い)。後半部の I hope you will continue to favor us with your generous

support. の favorは give の敬語・謙譲表現で、「(好意・親切から)…してくれる、…してあ

げる」という意味(動詞型は favor sb with sth)。ビジネス文書では Please favor us with your

order.(ご用命のほどお願い申し上げます)のような文脈で使うことがある。We hope to be

favored with . . . のように受動態で使うこともできる。ただし、いずれも、やや古臭い表現で

ある(関連解説は文例 35の解説参照)。文例 10のバリエーションは第 5章「ビジネス文書の

基本フォーム」収録の Form Letter No. TK-200 (p. 424) の第 3パラグラフ参照。

□文例 11, 12: We look forward to . . .

文例 11および文例 12は相手の返事やアクションを求めて結ぶときの最も基本的な表現であ

る。look forward to は「…を楽しみにする、心待ちにする」という意味で、to の後には名詞、

または動名詞をおく(look forward to hear from you や look forward to receive your reply の

ように動詞を続けることはできない)。したがって、文例 12では look forward to receiving your

favorable reply. および look forward to your favorable reply. のいずれも可能。ただし、この

後に soon や in the near future のような副詞(句)が加わった場合にはこれを受ける動詞また

は動詞相当語句が必要になるため、We look forward to receiving your favorable reply soon. の

ようにする84。

look forward to と (be) looking forward to

look forward toというイディオムは We (or I) look forward to . . . のように現在形で使う場

合と We are (or I am) looking forward to . . . のように現在進行形で使う場合がある。どちら

の形を使っても実質的な意味の違いはないが、前者のほうがいくらかフォーマルなトーンにな

るとされる。したがって、一般には We look forward to . . . のように We を主語にしたフォー

マルな文体を意識した場合には look forward toもそれに合わせて現在形で使い、フォーマルさ

よりもパーソナルでカジュアルな文体を意識して書く場合には、主語を Iにしたうえで、look

forward to を現在進行形で使うことが多い。後者の場合、I’m という口語的な短縮形表記を使

うことでカジュアルで親しみやすいトーンをいっそう強調することができる85 。

84 なお、favorable replyは「よいお返事」という意味の常套句であるが、この意味での favorable とい

う形容詞の使用を、相手の返事のよしあしをあらかじめ指定するべきではないという理由で戒める向きも

ある。実際にはさほど気にする必要はないが、もし favorable を使わないとすれば、単に We look forward

to hearing from you soon. のようにしておけばよい。 85 Writing Business Letters. A. B. Kench. Macmillan Press, 1982. (p. 55)

194

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look forward toと wait for

look forward to は前述のとおり「…を楽しみにする、心待ちにする」という意味であるが、

「お返事をお待ちしています」というときに、日本人の書いたビジネスレターの中には日本語

の表現形式にひきずられて We are waiting for your reply. としているケースが少なくない。こ

れは、たしかに「返事を待っている」という意味ではあるが、通例、このセンテンスは相手の

返事の遅れを催促して(ないし、なじって)いるように受け取られる。この点について、Peter

Strutt は We’re waiting for the goods to arrive. という例文をあげ、これを次のように分析し

ている86。

“. . . there is a strong implication that the goods should have arrived earlier. Their late

delivery is possibly preventing further action.”「この品物は本来もっと早く届けられるべ

きであったのに [届いていない]、というニュアンスが強く感じられる。配達の遅れのため

におそらく仕事も滞っているであろう [ことも、このセンテンスからうかがわれる]」。

ちなみに、We are waiting for your reply. というセンテンスを、We will be waiting for your

reply. のように未来進行形にした場合には返事の遅れをなじっているということにはならな

いが、この場合もやはり waitという行為が強調されすぎており、適当ではない。たとえば「だ

れかを駅で待つ」というような状況ならもちろん wait という動詞を使うことに問題はないが、

「お返事をお待ちしております」というのは相手の返事を「心待ちにする・楽しみにする」と

いう心理状態について述べているのであり、やはり look forward to というイディオムを使っ

て表現するのが最も適当である。なお、wait forの形式語である await を使って We await your

reply. とすることは可能。ただし、これはかなり堅苦しい表現になる。

look forward to と hope to

前述のとおり、look forward to は、将来のあることに対する期待感を表明するときに使うが、

通常、その「将来のあること」は「既定の事柄」であることが想定されている。たとえば、次

のふたつの例文を比較していただきたい。

• I look forward to seeing you next Monday.

• I hope to see you next Monday.

この場合、look forward to のほうは、この相手と次の月曜日に会うことはほぼ既定の事柄

であることが前提となっている。一方、hope のほうは、会うことがあらかじめ決まっている

わけではなく、できればお会いしたいという話者の一方的な「希望」を表明しているにすぎな

い。したがって、たとえば文例 15の We hope to receive your reply by April 1, if possible. で

は原則として hopeの代わりに look forward to を使うことはできない。ここでは「4月 1日ま

でに返事をもらう」ということを「既定の事柄」という前提で話をすることはできないからで

ある。もっとも、同じ「お返事をお待ちしております」という場合でも、文例 11 や文例 12 の

86 Longman Business English Usage. Longman, 1991. (p. 82)

195

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ようなごく一般的なケースでは、こちらのレターに対して相手が何らかの返事を書くことはご

く当然のビジネス慣行だと考えられており、この場合に(返事があることを暗黙の前提として)

look forward to を使うのは特に問題ない87。

□文例 13, 14: early reply と prompt reply

文例 13と文例 14は同じことをそれぞれ能動態と受動態で表現したものである。いずれもで

きるだけ早く返事をいただきたいという気持ちを表明したセンテンスであるが、ビジネスレタ

ーでは、このように相手の返事やアクションを求めるときに prompt や immediate などの形

容詞、あるいはその副詞形がよく使われる。これらの語句は、「できるだけ早く」という書き

手の<気分>を伝えるには有効であるが、本当に急いでいる場合には実効性を持たないのが普

通である。たとえば、次の例文では immediate や as soon as possible というのが実際にどの

程度の「迅速さ」を求めているのかはっきりしない。

• We look forward to your immediate payment. 「貴社の迅速なお支払いをお待ちしておりま

す」。

• We hope to receive your payment as soon as possible.「できるだけ早くお支払いいただくよ

うお願いします」。

いわゆる信用状取引の一般的なルールをまとめた『荷為替信用状に関する統一規則および慣

例』 (Uniform Customs and Practice for Documentary Credits, 1983 Rev.) によれば、

immediate(ly), prompt(ly), as soon as possible およびこれに類する語句が使われた場合には、

その文書の発行日から 30日以内に当該の行為が行われることを要求(または通知)したものと

解釈することになっている。「早急に」といっても、30日の猶予があるとなれば、これらの語

句はすでにその実質的な意味を失っていると考えていい(なお、1993 年改訂版では "Such

expressions as "prompt", "immediately", "as soon as possible" and the like should not be used.

If they are used, banks will ignore them." [第 46条 b] という記述になっている)。上記の例文

の場合も、単に気分的に「できるだけ早く」ということならこのままでもかまわないが、支払

い催促などのように一定の期限があるものについては、原則として次のようにその期限を明示

しておくべきである。

• We look forward to receiving your payment within this month. 「今月中のお支払いをお待

ちしております」。

• We hope to receive your payment by April 1. 「4月 1日までにお支払いいただけると幸い

です」。

87 ちなみに、hope は「(実現可能なことについて)希望する」という意味であり、I hope to see you . . .

という発言は、この相手と会う可能性が十分にあり、おそらくそうなるだろうという想定に基づく発言で

ある。実現不可能なことについて言う場合は I wish I could see you . . . となる(I wish to see you . . . は I

want to see you . . . の丁寧表現で、「是非ともお会いしたい」という意味になる。この場合、事柄の可能

性とは別に、話者の一方的な希望・願望について述べていることになる)。

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もっとも、場合によっては相手の返事やアクションの期限をこちらから区切るのは失礼に当

たることもある。上記の例文のような支払い催促に関する文書では、普通、相手にも一定期間

内に支払う義務がある。したがって、こちらから期限を指定するのはある意味で当然のことで

あるが、一般的な問い合わせに対する返信などについては、あまり押しつけがましくならない

ような書き方をしたい。このためには、次の文例 15 のような書き方をするのがよい。

□文例 15: We hope to receive . . . by April 1, if possible.

この文例では、相手の返事の期限を by April 1 と明確に指定しているが、主動詞に hopeと

いう希望表現を使い、さらに文末に if possible というフレーズを加えたことで、返事の期限

を指定しているにもかかわらず押しつけがましいトーンがなくなっている。この if possible

は「できれば」という意味の譲歩表現で、if it is possible を短縮したものである。譲歩の気持

ちをさらに強調して . . . , if possible at all. とすることもできる。

このほか、許可を求める助動詞の may を使って、May I/we have your reply by April 1[, if

possible]?([できれば] 4月 1日までにお返事をいただけるでしょうか→いただければ幸いです)

のようにしてもよい。この場合は末尾の if possible を省略しても押し付けがましさはあまり感

じられない。

by April 1 と until April 1 の違い

文例 15のように特定の日時を指して「…までに」という場合は、通常、前置詞の by を使う

が、この代わりに間違って until を使っている例が少なくない。両者の使い分けをひとことで

いうと、by はある行為・行動の「期限(…までに)」を示し、until は「継続(…まで)」を

表すということになる。両者の例文は次のとおり。

• Please reply by May 10. 「5月 10日までにお返事をください」。

• I must finish this work by 6:00 p.m.「午後 6時までにこの仕事を終えなければならない」。

• This quotation is effective until May 10.「この見積書は 5月 10日まで有効です」。

• I usually work until 6:00 p.m. 「通常、私は午後 6時まで働く」。

なお、by や untilで指定された日時はそれぞれ指定の期限内に含まれる。したがって、Please

reply by May 10. は「5月 10日」を含み、I must finish this work by 6:00 p.m. は「午後 6時(き

っかり)」を含む88。

□文例 16: Please acknowledge . . . by return mail/fax.

この文例の acknowledge は「…の受領を確認する」という意味で、手紙の末尾に Please

acknowledge receipt of this letter . . . とあった場合には、ただちに返信を出してその受領を文

書によって確認しておく必要がある。文例 16の末尾に添えられている by return は「折り返

し」という意味で、by return mail あるいは by return fax のように返信の手段を指定するこ

88 このほかの「時を表す前置詞」の用法については巻末資料「文法編」の 1 参照 (pp. 554-556) 参照。

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ともできる。なお、この by return という表現は一般に 24 時間以内に相手の返事が来ること

を求めたものと解釈することになっている。ただし、特にそういう決まりがあるわけではなく、

あくまでも暗黙の了解としてそのように解釈されているに過ぎない。したがって、これも特定

の日時までに相手の返信が必要な場面では、前述の文例 15のような書き方をとって具体的な日

時を示しておく必要がある。

□文例 19: Kindly provide us with . . .

この文例に使われている kindlyは、通例、動詞の直前に置いて「親切に (in a kind manner)」

の意味で使う(e.g. He kindly showed me how to get to the station.)。また、依頼文や命令文

ではしばしば please の代用として使うことがある (e.g. Would you kindly [= please] close

the door?)。そのほか、以下の例文に示すとおり、文脈によって heartily, cordially, favorably,

pleasantly などの意味で使われることがある。

• We thank you kindly (= heartily).「心からお礼を申し上げます」。

• You are kindly (= cordially) requested to . . .「…していただけると幸いです」。

• Your comment was taken kindly (= favorably; pleasantly). 「あなたのコメントは好意的に

(快く)受け取られた(受け入れられた)」。

文例 19の kindly は please の代用であり、したがってこのセンテンスは Please provide us

with . . . と書き換えることができる。Kindly do sth. というパターンの定型表現としては、文

例 19のほかに Kindly understand our position in this matter. という表現もしばしば見られ

る。これは、「この件についての弊社の立場をよろしくご理解ください→ご理解いただければ

幸いです」という意味で、要求などを拒否する場合によく使われる決まり文句である。やや日

本語的な言い回しではあるが、英語としても十分に通用する。その他の用例については第 5章

の Form Letter No. FW-300 (p. 322) および Form Letter No. CF-100 (p. 370) の第 3パラグラフ

参照。なお、provide sb with sthは「(人に)…を与える」の意味。米語では with を省略し

て provide sb sthという形で使うこともある。

□文例 20: We would appreciate it if you would/could . . .

文例 20は仮定法丁寧用法のセンテンスで、相手に何かを依頼する場合の最も丁寧な表現であ

る。ちなみに、依頼表現の丁寧度は Please . . . → Will you . . . → Would you . . . → Could

you . . . → I would appreciate it if you . . . の順に高くなる。

なお、この I/We would appreciate it if you . . . という構文では if 節に仮定法助動詞の

wouldまたは should を使うが、通例、どちらを使っても実質的な意味の違いは生じないこと

が多い。ただし、この両者のニュアンスをしいて区別すると、would のほうは「相手がそうし

ようと思えばできることについて、たぶんそうしてくれるだろうと思いながら」相手の意志を

丁寧に尋ねているのに対し、could のほうは「相手がそうしてくれるかどうか、あるいは実際

問題としてそれが可能かどうかわからないが、もし可能なら是非ともそうしていただきたい」

というニュアンスになる。つまり、後者は「事柄の可能性」について尋ねる(あるいは、事柄

の可能性について尋ねることで間接的に相手の意志を尋ねる)場合に使うのである。この違い

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は次のふたつの例文を比べると明らかである。

• We would like to know if you would send me five copies of your latest catalog.「最新カタ

ログを 5 部お送りいただけるかどうかお尋ねしたい」。

• We would like to know if you could accommodate 500 conference participants at your ho-

tel during the above period. 「上記の期間中、貴ホテルにて 500名の大会参加者を収容で

きるかどうかお尋ねしたい」。

最初の例文では、相手がカタログを送ってくれるかどうかはもっぱら相手の「意志」または

「好意」にかかわる問題であり、しかも、これは「相手がそうしようと思えばできること」に

ついて述べている。したがって、この場合は wouldを使うのが適当ということになる89。これ

に対して、2 番目の文例の「500 名を収容できるかどうか」というのは相手の「意志」にかか

わる問題ではなく、可能性(収容能力)の問題である。したがって、ここでは原則として would

は使えない。

We would appreciate it if . . . の “it” について

なお、文例 20 のように appreciate の後に if節が続く場合には、We would appreciate it if . . .

のように、かならず itを必要とする。この itはいわゆる「形式目的語」であるが、これについ

て C. T. Onionは次のように説明している90。

“The reason for this insertion of it seems to be that the noun clause is not clearly felt to be

the object of the sentence.” 「ここで itを挿入するのは、[if 以下の] 名詞節がその文の実

際の目的語に相当することが、[itなしでは] はっきりしないからであると思われる」。

実際にはネイティブスピーカーの書いた文章の中にも、この it を抜かしている例が少なく

ない。おそらくそのうち itなしの用法も認められるようになるものと思われるが、現時点では

itを入れるのが正用法ということになっている。したがって、自分で書くときはきちんと itを

入れておくほうがよい。ちなみに、文型上この it が必要なことは次の文例 21 の受動態構文

の例を見れば明らかである。

□文例 21: It would be highly appreciated if . . . と受動態構文

文例 21は、上記の文例 20を受動態 (passive voice) にしたものである。一般に、このよう

な受動態の使用はできるだけ避けるべきものとされている。これは受動態構文(とりわけ非人

称主語の受動態構文)が、多くの場合、不必要に格式ばった impersonalなトーンをもっている

からである。このため、ビジネス文書では、英語として、より自然な能動態 (active voice) を

89 ただし、この場合でも could を使って、実際には十分に可能なことを「それが可能かどうかわかりま

せんが」という、間接的 (indirect) で遠慮がち (diffident) な表現で尋ねることで、より丁寧なニュアン

スの依頼文とすることができる。

90 Modern English Syntax. Routledge & Kegan Paul. 1971. (p. 135)

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使うのが原則である。したがって、Figure 135 にある文例 3、文例 14、および文例 21 のよう

な受動態のセンテンスは、特に理由がないかぎり、それぞれこれに対応する能動態の例文を使

っておくほうがよい。

受動態を使うふたつのケース

ただし、これは受動態の使用をまったく排除するものではない。受動態構文は、①修辞的な

理由から特定の主語を立てる必要がある場合、および②文体のバリエーションを出すために意

図的に受動態を使用する場合のふたつのケースについては、むしろ積極的に活用してしかるべ

きものである。

たとえば、President Reagan was shot by a man. というセンテンスを主題文とするパラグラ

フを書く場合、話題の中心となるのはあくまでも President Reaganであって、この後 President

Reagan を中心に話が展開していくとすれば、当然、この主題文の主語は President Reagan で

なければならない。このように、修辞的な理由からある特定の主語を立てる必要があり、結果

的にそのセンテンスが受動態構文になるというケースについては、受動態の使用は何ら問題が

ない。これを、単に受動態だからという理由で機械的に A man shot President Reagan. という

能動態の文に書き換えるのはライティングの基本的な原則を無視した暴挙といってよい(ちな

みに、A man shot . . . という構文では a man が話題の中心であり、この男についての記述が

この後に続くことを読者に予告していることになる)。

また、ビジネスレターでは各センテンスの主語が We, I あるいは You になることが多く、

場合によってはすべての、あるいは大部分のセンテンスの主語がこのいずれか(ほとんどの場

合は We か I)で統一されてしまうことがある。このような場合、文体のバリエーションを出

すために、しばしば意図的に受動態を使うことがある。Figure 135 の文例 3、文例 14、および

文例 21のような受動態のセンテンスは、主としてこのような場合に使うものである。

このように、一般には評判の悪い受動態構文も、一定の明確な使用理由のもとに適切にコン

トロールされて使うかぎり特に問題にはならない。ただし、一般的な目安として、ひとつのレ

ターでの受動態の使用は最大ふたつを限度とし、それ以上出てきた場合には乱用と考えたほう

がよい。

□文例 23, 27: Once again, . . . の使い方とバリエーション

文例 23と文例 27では冒頭に Once again, . . . という導入句が使われているが、これはもち

ろんレターの最初のほうで一度お詫びを述べていることを想定したものである。たとえば、ま

ず第 1パラグラフの冒頭に Thank you for your letter of April 1 [concerning . . . ], and we are

very sorry that we couldn’t respond earlier. (…に関する 4月 1日のお手紙ありがとうござい

ました。早いうちにお返事ができなかったことをお詫びいたします)といった感じのイントロ

をおき、その後、第 2パラグラフで本題に入り、ひととおり話がすんだところで最後にもう一

度、Once again, we are sorry for the delay in sending our reply.(文例 23)のようにお詫び

の言葉を添えて結ぶというスタイルである。

この Once again, . . . というスタイルはほかの文例にも必要に応じて使うことができる。た

とえば文例 24 の場合でも、上述のようにまずレターの冒頭に簡単なお詫びの言葉をおき、最

終パラグラフでもう一度、Once again, we are sorry for the trouble we have given you, . . . と

お詫びを述べながら、最後に and we thank you for your understanding. と簡単なお礼の言葉

200

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を添えて全体をまとめることができる。展開部の後、結びのパラグラフをいきなり We are

sorry . . . と始めるよりも、Once again, . . . とクッションをおいて始めるほうがパラグラフの

移行がスムーズになる。

また、このパターンはいわゆる「詫び状」だけではなく、「礼状」にも使うことができる。

たとえば、I wish to thank you once again for everything you did for me/us . . . という書き出し

で始まる文例 9や、Thank you again for all the help and valuable advice you have given us, . . .

という書き出しの文例 10も、そのまま使うだけではなく、Once again, I wish to thank you

for . . . という形にしたり、あるいは Once again, thank you for all the help and valuable

advice . . . のように書き換えるなどして、いろいろと工夫して使うことができる。参考までに、

文例 28と 29を適当に組み合わせて、冒頭に Once again を使った結びの文例を以下に示す。

• Once again, we are very sorry that we have to disappoint you in this matter, but we hope

you will kindly understand the above.「この件に関し、ご期待に添えないことは誠に残念

に思いますが、以上よろしくご理解いただけるようお願い申し上げます」。

□文例 25: We regret having caused you inconvenience . . .

文例 25の regret having caused は regret doing の現在完了形(regret having+過去完了形

動詞)で、「…したことを残念に思う」の意味(regretの動詞型については p. 343参照)。regret

の代わりに (be) sorry を使うと、We are sorry to have (or that we have) caused you inconve-

nience . . . となる。cause sb inconvenience は「(人)に迷惑・不都合をかける」という意味

のイディオム(convenientについては文例 32の解説参照)。inconvenience の代わりに trouble

という名詞を使うこともできる。ただし、後者の場合は、give sb trouble のように、giveとい

う動詞との組み合わせで使うことが多い(用例は文例 24参照。関連イディオムは文例 26参照)。

□文例 26: Please accept our thanks for . . .

文例 26 の Please accept our thanks for . . . という表現については Figure 131の「返信の書

き出し例 1」(p. 128) のところでも紹介したが、この Please accept . . . というパターンは書き

出し文だけでなく、結びにも使うことができる。We や I などの主語を明示する必要がないた

め、文体のバリエーションがほしいときにも便利な表現である。もちろん、必要に応じて文例

27のように Once again, . . . という導入句を添えて使ってもよい。なお、文例 26の the trouble

you have taken (in this connection) は、「…するよう骨を折る、尽力する、わざわざ…する」

の意味の take [the] trouble to do というイディオムの応用である。

□文例 27: apology の使い方

文例 27にある apology またはその動詞形の apologize は、原則としてこちらの非を認めて

相手に謝罪するという意味であり、ビジネスでは安易に使ってはならない言葉のひとつとされ

ている。とりわけ、ビジネス上のクレームに対して簡単に We apologize . . . などということ

は避けたい。文書であれ口頭であれ、公式に apologyを表明してしまうと、後で訴訟にでもな

った場合にはこちらが決定的に不利になってしまうからである。

一般に欧米人や中近東の人たちは、よほどのことがないかぎり apologyや apologize という

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表現は使わない。なんでも簡単に apologizeしてしまうのはおそらく日本人くらいのものだろ

う。もっとも、欧米でも、たとえば友人との約束の時間に遅れた場合などにはごく軽い気持ち

で My apologies for being so late!(遅れてごめんなさい)ということがある。通例、このよう

なケースでは謝罪がそのままなんらかの責任問題に発展するということは考えられず、単に

I’m sorry . . . や I regret . . . と同じく「残念に思う気持ち」の表明として apologyを使ってい

るのである。例文 27の場合も、基本的にはこれといった責任問題に発展するようなことがない

ケースでのみ使うべき表現である。

なお、apology を「お詫び・謝罪(の言葉・気持ち)」という意味で使うときは例文 27 に

あるように複数形で使うのが普通。これは、thanks や congratulations あるいは condolences

などと同じである(ただし gratitudeと appreciationは複数形にはしない)。動詞の apologize

は自動詞91 として apologize [to sb] for [doing] sth([人に] …の謝罪をする、お詫びを述べる)

という形で使う。しばしば、apologize you のように「人」を直接目的語にとったり、apologize

that . . . のように that節を続けている例を見かけるが、これは誤用である。

□文例 28: the above と the following

文例 28の末尾にある the above は「上記の(前述の)こと」という意味で、この above は

名詞用法。aboveの後に具体的な名詞をともなって the above information(上記の [前述の] イ

ンフォメーション)のように使う場合の aboveは形容詞ということになる。これは「以下の」

という意味の followingの場合も同じ。the following informationのように名詞をともなって

使う場合の followingは形容詞で、The following is/are . . . という場合の followingは名詞用

法である。ちなみに、この the following と the above は単数・複数兼用で、「以下の(こと)」

とか「前述の(こと)」という場合の「こと」の内容が複数の場合でも The followings are . . .

や The aboves are . . . とはしない。

この文例に出てくる (be) unable to は cannotの意味のイディオム。同じ否定でも、cannot

の断定的なトーンに比べて柔らかな響きがあるため、ビジネス文書では好んで用いられるイデ

ィオムのひとつである。用例は第 5章掲載の Form Letter No. NG. 300 (p. 330) の第 3パラグラ

フ、Form Letter No. OR-400 (p. 342) の第 2パラグラフ、および Form Letter No. CL-600の標

準文例 [MP-069] (p. 368) を参照。また、kindly については文例 19の解説 (p. 198) を、hope

については脚注 87 (p.196) および脚注 96 (p.207) をそれぞれ参照のこと。

□文例 30, 31: If you have any questions, please . . .

文例 30 は「今後につなげるための言葉を添えて結ぶ」というカテゴリーの中の代表的な表

現である。基本型は If you have any questions, please contact us/me. で、必要に応じて文例

30 や文例 31 に見られるようなバリエーションを加える。また、この基本型のうち、前半部の

If you have any questions, . . . は Should you have any questions, . . . のように書き換えるこ

とができる。これは If you have . . . の文語的な倒置表現(仮定法の倒置構文)で、フォーマル

91 自動詞 (intransitive verb) とは直接目的語なしに完結する動詞のことを指す。例えば apologize は I

apologize. のように主語と動詞だけで文を作ることができる。これに対して、直接目的語がなければ文と

して完結しない動詞を他動詞 (transitive verb) と呼ぶ。e.g. I asked him a question.(I asked. は不可)。

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な性格のビジネス文書ではしばしば見られる表現である92。後半部の please contact me/us. の

部分は please do not hesitate to contact me/us (Figure 37, p. 65) あるいは please feel free to

contact me/us (Figure 39, p. 67) のように書くこともある。いずれも「ご遠慮なく」という意味

の定型フレーズである。文例 31は後者の応用例ということになる93。

contact について

ビジネス文書では、しばしば contact を「…と連絡をとる、…に連絡する」という意味で使

うが、規範的な語用論者の中にはこの意味での contactの動詞用法を略式 (informal) または口

語体 (colloquial) とし、正式な文章中では容認できないとの立場を取る人も少なくない。Harper

Dictionary of Contemporary Usage (William and Mary Morris. 1985) の語法委員会 (Usage Pan-

el) もその 65パーセントがこの立場を取り、容認派の中にも “Yes, but reluctantly.” という人

が多いことが報告されている。一方、American Heritage Dictionary (3rd edition) では、“In 1969

only 34 percent of the Usage Panel accepted the use of contact as a verb, but in our most recent

survey 65 percent of the Panel accepted (this usage)” と述べ、さらに「現在ではこの用法への

反対論はおおむね消滅している (opposition to that form has more or less disappeared)」とい

うコメントを加えている。Random House Dictionary (2nd edition) の解説はこの点についてもっ

と明快である。

“. . . Hence, grammatically at least, there is no historical justification for the once fre-

quently heard criticism of contact used as a verb meaning to communicate with. Despite the

earlier objections to it and probably largely because there is no other one-word verb in

the language to express the same idea, this use of contact has become standard in all types

of speech and writing.” 「したがって、少なくとも文法的には、contactを communicate

with という意味の動詞として使うことに対する批判には、歴史的な妥当性がない。初期

のこうした批判にもかかわらず、おそらくは英語にはこれと同じ観念を 1語で表す動詞が

ないという理由のために、contactの(この意味での)使用はあらゆるタイプの話しことば、

および書きことばにおいて、すでに標準的な用法になっている」。

この記述からも明らかなとおり、現在では contact を「…と連絡をとる、…に連絡する」と

いう意味で使うのは口語・文語を問わず標準用法となっており、とりわけビジネス用語として

は完全に定着しているものと考えてよい。ちなみに、contactの代替表現としは callや write [to]

あるいは get in touch withなどがあるが、callや writeでは連絡手段を具体的に指定してしま

うことになり、get in touch with はいかにもまわりくどい感をまぬがれない(ただし、特に口

語的なトーンを意図する場合はこれでもよい)。なお、contact を本来の名詞形で使うことに

92 用例と関連解説は第 5章の Form Letter No. IQ-300の「コメント」(p. 307) 参照。なお、この表現のバ

リエーションは Figure 37 (p. 65) および Figure 38 (p. 66) にも見られる。 93 なお、「…番に電話してください」は please call 03-123-456* のように call の後にそのまま電話番号

を続ける場合と、please call me/us at 03-3123-456* のように call sb at (number) というスタイルをとる場

合がある。後者の用例は第 5章の標準文例 [CP-018] (p. 319) および [CP-067] (p. 391) 参照。

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ついては特に問題はなく、この場合には make contact with sb あるいは get in contact with

sb の形をとる。ただし、1語で済むところをわざわざ 3語、ないし 4語も使う必要があるとも

思われない(関連解説は第 5章の Form Letter No. RP-500 (p. 316) および Form Letter No.

DL-100 (p. 382) の「コメント」参照)。

□文例 32: at your convenience

文例 32 にある at your convenience という表現は「ご都合のよい時に」という意味で、at any

time(文例 34)のフォーマルな表現である。at your earliest convenience というバリエーショ

ンもある。直訳すれば「最も早くご都合のよいときに」ということで、要するに「できるだけ

早く」という意味である。用例は第 5 章の標準文例 [MP-031] (p. 315), [MP-049] (p. 352),

[CP-023] (p. 204) および [CP-100] (p. 435) などに見られる。類似表現の as soon as possible と

比べると押しつけがましさが少なく、ビジネスレターではしばしば使われる表現だが、前述の

とおり、これもいわゆる「気分表現」のひとつであって、本当に急いでいる場合にはできるだ

け期限を区切っておくほうがよい。

convenience (-ent) の意味と使い方

なお、convenienceは名詞として「便利、便宜、好都合 [な事・事情]」の意味で、文例 25

で見た inconvenience はこの否定形である。convenience を使ったイディオムのうち代表的

なものは次のとおり。

• Let’s just call him Mr. Doe for convenience. (= for convenience’s sake.) 「便宜上、彼を Mr.

Doe と呼んでおこう」。

• I have enclosed a return envelope for your convenience.「お手数を省くために(= 便利なよ

うに)返信用封筒を同封しておきます」。

• Please come tomorrow if it is to your convenience. (= if it suits your convenience) 「ご都合

がよろしれば明日いらしてください」。

• Give me a call at your convenience. 「ご都合のよい時にお電話をください」。

このうち 4番目の用例が文例 32の at your convenience というイディオムと同じ用例である。

ちなみに、このイディオムのように convenience が「都合」という意味で使われることから、

「ご都合をお知らせください」というときに、Please let me know your convenience. [sic]とする

人が少なくないが、これは英語としてかなり不自然な表現になる。「ご都合をお知らせくださ

い」というのは一種の省略表現であり、正確には「ご都合のよい日時・場所などをお知らせく

ださい」、または「これでよろしいかどうか(…できるかどうか)ご都合をお知らせください」

という意味である。したがって、これを英語にする場合には、前者は以下の例文 1または 2の

ようにし、後者は 3または 4のようにして、それぞれの前後関係を明確にしなければ意味の通

じる英語にはならない。

1. Please let me know a convenient date/time/place [for you to do sth]. 「[…するのに] ご都合

のよい日/時刻/場所をお知らせください」。

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2. Please let me know when/where/whether it will be convenient [for you to do sth].「[…するの

に] ご都合のよい時/場所/(都合がよい)かどうかをお知らせください」。

3. Please let me know if/whether this is convenient for you.「これでよろしいかどうか、ご都

合をお知らせください」。

4. Please let me know if/whether it is convenient for you to do sth.94 「…するのにご都合がよ

ろしいかどうかお知らせください」。

なお、convenienceの形容詞形の convenient は「(事が)都合がよい」という意味であって、

Please let me know if you are convenient [sic] のように「人」を主語にして使うことはないの

で注意されたい。このほか、文例 32に出てくる be of helpという表現については後述の文例

40の解説 (p. 208) 参照。

□文例 35: continued cooperation か continuous cooperation か

文例 35の continued cooperation は「引き続きのご協力」という意味で、いかにもビジネス

的な表現であるが、「続く、続ける」という意味の continue の形容詞には continuous と

continued とのふたつがあり、しばしば混同して使われることがあるので注意されたい。

このうち、continuousのほうは「間断のない、連続的な (without a break; uninterrupted)」

という意味で、あることが(時間・空間的に)途切れることなく続くさまを表す。たとえば

continuous rain というと「ひっきりなしの雨」ということになり、a continuous supply of water

といえば「(途中で途切れることなく)水を継続して供給すること」という意味になる。

一方、continued は過去分詞形の形容詞で、こちらのほうは、あることがいったん終わって、

再び同じように繰り返されるさまを表すときに使う。したがって、ひとつの取り引きが終わっ

て「今後ともよろしく」という意味で使う「引き続きのご協力」を英語にする場合は、例文 35

に示されているとおり、continued cooperation とするのが正しいということになる。文法的

には “continuous cooperation” も可能ではあるが、これでは「間断のない(ひっきりなしの)

協力」といった妙な意味になってしまう。

なお、参考までに付け加えておくと、continue には continual という形容詞形もある。これ

は continuous(間断なく続く)と repeated([断続的に] 繰り返される)の両方の意味をもっ

ており、Longman Language Activator (1993) では “(continual is used to describe) something

unpleasant, annoying, or frightening that happens continuously or repeatedly.”「continual は、

連続的に、あるいは繰り返し起こる出来事のうち、不快なこと、当惑するようなことと、ある

いはぞっと [ぎょっと] するようなことについていうときに使う」と定義している。これに従

えば、continual はおもに「好ましくない出来事」について使う単語ということになる。した

がって、似たような意味ではあっても「引き続きのご協力」という場合にはふさわしくない。

94 ifと whetherの用法については第 5章の Form Letter No. AP-300 の「コメント」(p. 417) 参照。なお、

3の用例では . . . convenient for you の代わりに. . . convenient to you も可。ただし、この後に to不定詞

を伴なう場合は for you (to do sth) とするのが普通。

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「よろしくお引立てのほど」

日本語では上記の「引き続きのご協力を」という表現のほかに、「今後ともよろしくお引立

てのほどお願い申し上げます」や「よろしくご支援のほどお願い申し上げます」などといった

結びの決まり文句がある。同じように、英語にもこれに相当する伝統的な決まり文句として We

hope to be favored with your continued patronage. や We hope that we may receive fur-

ther favor from you. のような言い回しがある。

このうち、favor は名詞として「好意、親切(な行為);支持、引き立て;(婉曲に)ご注

文」の意味で、動詞として (be) favored with というイディオムで使った場合は「(好意・支

援・引き立てなど)にあずかる、を賜る」という意味になる95。

patronage [��������������-] は「(店・取引先などへの)ひいき、愛顧、引き立て、(芸

術活動・社会事業などへの)支援、後援」という意味で、たとえば We appreciate your patronage.

(ご支援・お引き立て感謝します)のように使う。ただし、いずれも英語としてはかなり古臭

い表現で、下手に使うと陳腐な感じになってしまうことがある。したがって、あくまでも受信

用のボキャブラリーとして覚えておくにとどめるのがよい。

□文例 36, 37: in the near futureと soon の時間感覚

文例 36と文例 37には「近いうちに(近日中に)」という意味の in the near future という

フレーズが出てくる。これはビジネス文書では頻繁に使用される表現であるが、できるだけ簡

潔な英語 (plain English) を使うべきであるという立場から、これを soonという副詞に置き換

えるべきであると主張する人もいる。ただし、in the near futureと soon はかならずしも互換

可能であるとはかぎらない。

ネイティブスピーカーの平均的感覚からすると、soon は数日から数週間(長くても数カ月)

の時間感覚で、in the near future は数カ月から数年の幅を意識した表現である。したがって、

同じような意味ではあるとはいえ、場合によってはこの両者をきちんと使い分ける必要がある。

たとえば、例文 36や例文 37のようなコンテクストでは soonよりも in the near future のほう

がより適切な語選択であり、反対に、問い合わせへの返事をもらいたい場合に I look forward

to hearing from you in the near future. としたのではいささか間延びした感じになるのは否め

ない。

なお、文例 29に出てくる in the futureは「将来、将来のいつか;これから先 (from this time

onwards)」という意味であるが、定冠詞を省略して in future とする場合もある(通例、米語

では定冠詞をともなって使い、無冠詞の future は in future plans のように形容詞として使う)。

ただし、in the near future という場合は定冠詞を省略することはできない。

□文例 39, 43, 44: We trust . . . の意味

文例 39には日本語の「…と存じます」という表現に相当する We trust . . . という表現が使

われている。この trustという動詞はもともと “tree” と同じ語源の単語で、「大地に根を張る

木のようにしっかりした (firm as a tree)」というイメージがあり、そこから「(人や話などを)

信頼する、信用する;(人を信頼して物を)預ける、委託する;(…であると [自信をもって])

95 文例 10の解説 (p.194) 参照。用例は第 5章の Form Letter No. TK-200 (p. 424) 参照。

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思う、確信する」などの意味が派生してきたものである。

文例 39、文例 43、および文例 44 に出てくる trust はこのうち「(…であると [自信をもっ

て])思う、確信する」の意味で、辞書的に定義すると “to expect with confidence or with hope”

ということになる96。

ビジネスレターでは、「…と思います」という意味の表現を頻繁に使うが、同じ「思う」で

もいろいろなレベルの違いがある。ごく軽く「…だと思いますよ」というときは thinkでよい

が、これより強く、話し手の「確信の表明」として「…と思います/存じます」というときに

は trust と believe が最も多く使われる。両者のニュアンスの違いは、前者が何か具体的な理

由や根拠があってそう思っていることを示唆する (to assume on the basis of some evidence)

のに対し、後者は主観的、かつ一方的にそう信じているだけで、その根拠の有無は問わない、

という点にある。文例 43を例にとってこの両者のニュアンスの違いを比較すると、およそ次の

ようになる。

• We trust that the above is acceptable to you. 「上記の件、ご了承いただけるものと存じま

す」(Κ根拠のある確信として) • We believe that the above is acceptable to you.「上記の件、ご了承いただけるものと存じま

す」(Κごく主観的な確信として)

この違いは実際にはかならずしも常に明瞭に意識されているわけではないが、ビジネス文書

で「…と思う」という場合は「具体的な理由や根拠があってそう思う」というニュアンスを伝

えたいことが多いことから、どちらかといえば trust が好まれる傾向がある。

なお、これに対して、文例 40から文例 42で使われている hope は「希望..の表明」であって、

話者の確信を示す表現ではない点に注意されたい 97。したがって、上記の例文で trust や

believe の代わりに hope を使った場合には「上記の件、ご了承いただければ幸いです....

」とい

う意味になる。また、この場合には「確信」を示さない表現として We hope that the above will

be . . . のようにすると、より丁寧な表現になる98。

96 Funk & Wagnalls Standard Dictionary (1969) による定義。なお、この定義文のうち、expect は “to look

forward to as certain or probable” という意味であり、“implies a considerable degree of confidence that a

particular event will happen.” (Webster’s New World Dictionary, 1979) というニュアンスをもつ。hope は

“to desire with expectation of fulfillment (= want and expect)” という定義であり、“implies a desire for

something, accompanied by some confidence in the belief that it can be realized.” (Webster’s) というニュ

アンスになる。

97 関連解説は文例 11-12の解説 (pp. 195-196) 参照。 98 通例、hope以下に名詞節を続ける場合は I hope (that) you will/can come. または I hope (that) you

like it. のように直説法現在形......

を用いる(したがって、原則として I hope you would/could come. のような

仮定法は不可。ただし I was hoping you could come. のように主節に過去形を使った丁寧用法の場合は

時制の一致で couldを使うことがある)。

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□文例 40:「be of+名詞」の用法

文例 40、文例 41、および文例 44にはそれぞれ have been of service; is of assistance; (to) be

of interestという表現が出てくる。同様の表現は文例 32 ([may] be of help) にも見られる。こ

れはいずれも「be of+名詞」というパターンのごく文語的な表現の用例である。この構文は、

名詞(または名詞句)の前に of を加えて形容詞化し、全体として「…という性質・状態の」

という意味の形容詞句を作るもので、たとえば次のような使い方をする。

• We are of the same blood type.

• This is of no importance to me.

最初の例文は the same blood type という名詞句に ofを加えて形容詞化したもので、「われ

われは同じ血液型(という性質・状態)だ」という意味になる。2番目の例文も同じように no

importanceという名詞句を形容詞化しており、全体として「これは自分にとっては重要でない

(という性質・状態のものだ)」という意味になる。いずれも、普通の英語にすれば We have

the same blood type. および This is not important to me. または This has no importance to

me. となる。このほうが英語としては自然であり、したがって日常会話の中ではこの「be of

+名詞(句)」という構文はあまり使われることがない。ただし、ビジネス文書では、例文 40

の be of service(お役に立つ・立てる)、例文 41の be of assistanceと例文 32の be of help

(助力となる、お手伝いできる)、および例文 44 の be of interest(興味の持てる、関心に沿

う・かなう)などはよく使う表現である。

□例文 41: assistance/assist と help のニュアンスの違い

文例 41の (be of) assistance と文例 32 の (be of) help は基本的には同じ意味だが、ニュア

ンスが少し違う。一般に help は同等の(あるいは上位の)立場から手を貸すというニュアン

スがあり、手を貸す側の積極的・主体的な参加を想定しているのに対し、assistance/assist は

補佐的な立場での手伝いということで、行為の主体はあくまでも相手であることを示唆する。

したがって、手助けを申し出る表現としては assistance のほうが丁寧になる。ただし、これは

あくまでも一般論であって、実際上は helpを使ったからといって失礼に当たるということはな

く、むしろ、friendly なトーンになることのほうが多い(文例 41の assistanceはフォーマルな

丁寧さを意識した表現で、文例 32の help は friendlyなトーンを意識した表現ということにな

る)。

ちなみに、「何かお手伝いしましょうか」という意味で May I help you? と言う場合は、通

例、手を貸す側の積極的・主体的な行動が想定されており、この場合は helpという単語が適切、

かつ慣用的である。これに対して、Do you need any help? というセンテンスには相手の能力

の不足を補うための手助けといったニュアンスが感じられる(ただし、実際にどのように受け

取られるかは相手との関係や発言のコンテクストによる)。したがって、あくまでも相手の主

体性や能力を認めた上での「補助的」な手助けの申し出であることを明示するためには、Do you

need any assistance? のように言うのが普通。

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□文例 42: meet と meet with

文例 42に meet with your approval という表現がある。これは「…の承認を得る」という

意味の meet sb’s approval というイディオムの応用例であるが、meet という動詞は meet

sb/sth という形で「…に会う、出会う」という意味に使うほかに、「(要求・希望などを)満

たす、かなえる」という意味で使うことがある。たとえば meet sb’s needs (…の求めに応じ

る、ニーズを満たす)や、meet sb’s requirements(…の要求 [事項] を満たす)などの表現が

その代表的な例である。これは meet the needs of sb というパターンにすることもできる。

一方、文例 42 に出てくる meet withというパターンはやや特殊な語法で、これは「物・事」

を目的語にとる場合と、「人」を目的語にとる場合とで少し使い方が違ってくる。前者の場合

は「(親切・好意・賞賛・非難・反対・不幸・災難などを/に)経験する、遭遇する、出くわ

す、受ける (experience, encounter, receive, undergo)」といった意味になり、言外に「幸運に

も、不幸にも、偶然にも、たまたま」などのニュアンスを含む。たとえば次のようなセンテン

スがその例である。

• We met with a large order last week.

• My proposal met with a strong objection.

最初の例文は「先週、大きな注文があった」という意味であるが、仮に書き手がこれをただ

の事実として受け止め、あるいは伝達しているのであれば、We had a large order last week. の

ような事実伝達文にするのが普通である。そうしないで、わざわざ met with としたところに

前述のようなニュアンスを読みとることができる。

同じように、2番目の例文の場合も、My proposal received a strong objection. とせずに meet

with というイディオムを使って表現することで、「私の提案は強い反対に会った」という事

実の伝達のほかに、「思わず、予想外に、たまたま」などの気持ちを同時に伝達しているとい

うことになる。文例 42の We hope the above will meet with your approval. というセンテン

スの場合も、lucky enough to receive(幸運にも…をいただく)や happen to receive(たまた

ま…をいただく)などといったニュアンスが込められているものと解釈できる。このニュアン

スは We hope the above will receive your approval. という事実伝達のセンテンスでは十分に

伝えることができない。

次に「人」を目的語にとる場合であるが、通例、「…に(偶然)会う、出くわす」という意

味では、I met Mr. Yamada (at the station). のように SVO という文型で使う。実際にはこの

意味で I met with Mr. Yamada (at the station).99 という場合もあるが、一般には、withをとも

なう場合は「…と(約束して)会う、(正式に時間を決めて)会談する」の意味で使う。した

がって、I met with Mr. Yamada. と言った場合は、単に「山田氏に会った(出会った)」とい

う意味でなく、「(正式に時間を決めて)会談した」という意味になる。この意味での meet with

の用例は、第 5章掲載の Form Letter No. AP-100 (p. 410) の第 3パラグラフ参照。

99 英国式非標準用法では I met with Mr. Yamada at the station.で「駅で山田氏に(偶然)出会った」の意

味になる。ただし、この意味では I met Mr. Yamada at the station. が標準。

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Page 52: ビジネスレターの基本構成モデルと 定型表現 chap-3.pdf · しかし、ビジネスレターの書き方 ... された相手方の広告を見てModel Z-5 ... てより明確にすることができる(letter

□文例 43, 44: “Thank-you exit” について

例文 43および文例 44の末尾には Thank you. という結びが使われているが、このように最

後に Thank you. という結辞を置いて締めくくるスタイルを “Thank-you exit” と呼ぶ。文例

42の Thank you for your consideration. という結びも、この Thank you exitの応用例である。

これは、スピーチなどではごく普通のスタイルであるが、ビジネスレターにも応用できる便利

な方法である。たとえば、Figure 135の前半部 (pp. 186-187) で「感謝の言葉を添えて結ぶ」

パターンをいろいろと見てきたが、このうち文例 3や文例 5、あるいは文例 6のようなごく形

式ばったセンテンスの場合、それぞれのセンテンスだけで終えるよりも、その後に軽く Thank

you. と付け加えておくほうが全体のおさまりがよくなる。文例 3 の場合なら、Your kind

attention to this matter will be highly appreciated. Thank you. というスタイルにするのであ

る。ただし、この方法は文例 9や文例 10のように結びのセンテンス自体に thank you という

フレーズが入っている場合には使えない100。

□文例 45: It has been a pleasure to work with you . . .

例文 45の It has been a pleasure to do sth. は「…して/…できて幸いでした」の意味のご

くフォーマルな表現。用例は第 5章の Form Letter No. GR-100 (p. 444) 参照。It has been a

pleasure doing sth のように動名詞をとることもできる。基本型は It is my/our pleasure to do

sth. で、こちらの用例については標準文例 [OP-001] (p. 478)、 [OP-092] (p. 490)、および

[OP-118] (p. 494) 参照。

*

以上、45例の代表的な「結び」の定型表現について解説した。本文中でも述べたとおり、こ

こに挙げた 45の基本文例は、必要に応じて部分的に変更したり、いくつかの文例を組み合わせ

て使うというのが基本的な考え方である。これらの文例の実際の使用例および応用例について

は第 5章に掲載した各種の「フォームレター」を参照していただきたい。

100 Thank you exitの用例は、第 5章掲載の Form Letter No. RP-200 (p. 310), FW-300 (p. 322), OR-200 (p.

338), CL-100 (p. 358), AP-300 (p. 416), IN-100 (p. 430), EM-200 (p. 457) などを参照。

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