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ベトナムの持続的発展と直接投資 ―日系製造業の技術移転の実態調査より―
中央大学法学部 国際企業関係法学科3年 菅原 航
(グループ応募:山田 亜由子、菊池 華子、中村 裕紀)
要約
近年、途上国において直接投資が注目されているが、単に資本や労働の投入量の
増加では、持続的経済発展に限界がある。中国のリスクヘッジとして近年注目され
ているベトナムも、国際統合を控え積極的に直接投資を受け入れているが、本当に
持続的発展ができているのだろうか。
直接投資を利用した持続的経済発展には、資本と労働だけでなく、技術移転が不
可欠であると考え、2005 年 9 月にはベトナムへ赴き日系企業 5 社および JICA、
JETRO へインタビュー調査、ベトナムに進出している日系製造業 150 社に対して
「ヒト・モノ・技術の現地化」に関するアンケート調査を行った。その結果、現在
のベトナムにおいて裾野産業が未発達であることや専門的技術者が不足している為
に、技術移転や現地裾野産業とのリンケージがなされていないことがわかった。
このような状況の中、裾野産業が未発達であることを前提とし、『経営ビジョン』に
注目して積極的に技術協力を行い現地産業の発展に貢献しているのがホンダベトナ
ムであった。経営ビジョンとは、日本の進んだ技術を現地の技術と融合させて成長
していこうという向上心と、それを具体的に PDCI(計画、実行、確認、改善)と
して行動に移せることを指す。経営ビジョンを持った現地部品企業は、ホンダから
進んだ生産技術、経営ノウハウを得ることで育成され、ホンダに供給できる高品質
の部品を生産することが可能となる。
この事例をもとに、日系企業に対して「経営ビジョンを重視し、指導者の育成を行
う」事を提言した。重要なのは、生産技術・経営ノウハウ共にベトナム人指導者を
育成し、その社会のニーズに合った生産・経営活動を行うことである。同時に、ベ
トナム政府も技術者・経営者を育成する指導者の育成を行うことが急務である。こ
れらを通して、ベトナムの産業競争力が強化されることで、ベトナムの持続的発展
に繋がるのである。
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<目次>
はじめに
第 1章 ドイモイと直接投資
1節 持続的発展を望むベトナムの背景
2節 ドイモイ政策
3節 ベトナムへの直接投資流入状況
第2章 直接投資と持続的発展 ‐技術移転を通じて‐
1節 持続的経済発展と技術移転
2節 企業内技術移転と持続的発展
3節 企業間技術移転と持続的発展
第3章 直接投資がベトナムの持続的発展に与えた影響
-日系製造業の技術移転の実態調査より-
1節 企業内技術移転
1.生産技術
2.経営ノウハウ
2節 企業間垂直技術移転
3節 まとめ
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第4章 ケーススタディ -Honda Vietnam-
1節 Honda Vietnamの概要
2節 技術移転
1.企業内技術移転
(1)生産技術
(2)経営ノウハウ
2.企業間技術移転
第5章 ベトナムの持続的発展に向けて
1節 日系企業に対する提言
2節 政府に対する提言
参考文献
付表 アンケート回答の分析結果
謝辞
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はじめに
近年、途上国において公的資金に比べ直接投資が多く流入している。直接投資の受け入
れは先進国の進んだ経営資源を取得し、発展途上国の経済発展に貢献すると言われている。
東アジアの急速な発展も直接投資の積極的利用が大きいとされている。
ベトナムは、2003年に発生した中国での SARS、2004年の反日デモなどによるチャイ
ナリスクを避けるため、多くの日系企業からチャイナ・プラス・ワンとして注目を浴び始
めている。そして、フランス・日本・アメリカから長い期間占領されてきた歴史を持ち、
自分たちの力で持続的に発展を遂げたいという思いがあるため、1986年にドイモイ政策を
打ちだし直接投資を積極的に利用してきた。さらに現在 WTO、AFTA といった国際統合
を控え、発展の近道として直接投資をより積極的に利用している。
しかし、ベトナムは直接投資の受け入れによる先進国の進んだ経営資源を取り入れた経
済発展ができているのだろうか。私達の仮説は「進んだ経営資源を取り入れられていない。
つまり直接投資の受け入れは、ベトナム人による持続的経済発展に貢献していない」であ
る。なぜなら途上国は知識が乏しく一般的に進んだ経営資源を取り入れる基盤を持ってい
ないと考えられるためだ。ベトナムも、8.4%1の経済成長を遂げているものの、外資によ
る生産額はベトナム全体の総生産額の 36.6%=約3分の1も占めており、資本と労働力の
投入量を増大しただけの、外資に依存した成長になっていると考えられる。このような状
況で、もし外資企業がベトナムの賃金の上昇などのリスクにより将来撤退してしまったら、
ベトナムは持続的に経済発展を維持することができるのだろうか。
1 『International Herald Tribune』p.17
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私達は資本や労働の投入量の増加だけではなく、「技術移転」を通じたベトナム人による
自立的発展が必要と考えた。そこでベトナムにおける技術移転の進歩状況を知るために、
実際に 2005年 9月、ベトナムに進出している日系製造業 160社を対象にした人材、モノ
の現地化に関するアンケート調査と、Honda Vietnam、Nidec TOSOK、Ojitex Haiphon、
JICA、JETRO、Thang Long Industrial Park Corporation、Vietnam-Japan Human
Resources Cooperation Centerでインタビュー調査を行った。どのようにすれば直接投資
による技術移転が行われ、持続的経済発展につながるのだろうか。これを明らかにするの
が本稿の目的である。
1 章では、ベトナムにおける直接投資の流入状況について概観し、2 章では直接投資が
どのようなプロセスで持続的発展に貢献しているのかを一般論として述べる。3 章では、
ベトナムにおける直接投資が技術移転を通じて持続的発展に貢献しているかをアンケート
調査をもとに実証分析し、4 章では、前章の分析結果を踏まえつつ、ケーススタディとし
て HONDA Vietnamを例に挙げ、「技術移転」を中心に分析し、ホンダが技術移転を通し
てベトナムの持続的発展にどのように貢献しているのかを明らかにする。5 章では、アン
ケートと HONDAのケースをもとに、ベトナムにおいて直接投資が持続的発展に貢献する
ための課題とその課題克服のための方法を企業側、途上国側に向けて提言する。
最後に、本稿では「ベトナム人による持続的発展」をベトナム人が自分たちの力で技術
の進歩、つまり生産性を向上し続けることと定義することを付け足しておく。
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1章 ドイモイ政策と直接投資
1 節 持続的発展を望むベトナムの背景
近年、ベトナム経済は GDP 成長率 8%という数字からも判るように、近年急速に発展して
いる。本稿では、直接投資(FDI)を利用したベトナムの持続的経済発展の可能性を述べるが、
なぜ依存的な発展ではなく、自立的かつ持続的発展を切望しているのかを、まず最初に理
解しなくてはならない。そこで本節では、ベトナムの経済史を踏まえて、持続的経済発展
を切望している理由を見ていきたいと思う。
ベトナムは第二次世界大戦中に日本に占領された後も、フランス・アメリカと戦争を交
え、長期にわたり占領されていたという歴史がある。これらの戦争はベトナムに対して多
額の復興費の負担のみだけでなく、ベトナム人のアイデンティティをも喪失させる結果に
なった。
長期にわたったベトナム戦争が終了し、サイゴンが陥落し、ベトナムが国家建設に着手
できるようになると、政治の主導権を北の社会主義が南の民主主義を呑み込み、共産党に
よる一党独裁体制をとるようになった。そこでベトナム政府は、ベトナム戦争による被害
から早急に復興し、国内経済を建て直すことを政治の第一優先事項とした。しかし、78 年
に実施された改革では復興・発展を急ぎすぎ、資本主義的な商工業セクターの廃止、貿易
業務や銀行業務の私的経営の禁止、独占資本化や投機商人の排除、資産の押収など、急激
な社会主義化が計画された。それが決定的に労働者の生産意欲を減退させ、供給システム
や商品の物流経路を破壊し、資本主義商工業者は闇市場を拡大したため、インフレを引き
起こす結果になってしまったのである。
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そこで国営企業がそれにとって代わり市場をコントロールするようになったが、効率の
悪い経営を続け、価格を低価格で固定したため、商品は正規市場には出回らず闇市場に流
れ、ますますのインフレを引き起こした。また、工業部門においても軽工業をまず発展さ
せてから重工業の発展へ進展する、という従来の発展段階を踏まずに、いきなり重工業の
発展に重点を注いだ。しかし、経済基盤が整っていない状態での急激な発展は期待してい
たほど遂げられなかった。更には 1978 年のカンボシア侵攻による国際社会から孤立したこ
とにより、アメリカや日本などからの援助が滞るようになり、最大の支援国家である旧ソ
連や東欧諸国からの援助も激減するようになった。このようなことが重なり、ベトナム経
済は非常に危機的な状況に追い込まれたのである。
総括すると、ベトナムは長期にわたり他国に占領されていたという歴史を持ち、かつ国
内経済が低迷し、危機的状況に追い込まれたという歴史的背景があるため、自立的で持続
的な発展を望むようになったのである。
2節 ドイモイ政策
1節で述べたように、ベトナム経済は経営効率の悪い国有企業が経済主流であること、
最大の援助国であった旧ソ連や東欧諸国が崩壊し、援助額が激減するなど様々な要因が重
なり、危機的状況に陥るようになった。この状況を打破し国内経済を立て直すため、1986
年、第6回共産党大会で政府は共産党の一党独裁を堅持しながら、資本主義的な生産活動
や流通システムを活用してベトナム経済を活性化しドイモイ(刷新)政策を打ちたて、政
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治・経済・社会等の面で改革を行うようになった。特に経済面では以下の3つが挙げられ
る。
第一に、国内経済低迷の一要因であった計画経済から市場経済への経済体制の移行があ
る。ドイモイ以前は、賃金の支払いが配給制度であり、労働量の多少に関わらず収入が一
定であったため、労働者の意欲が低く、生産性も非常に低かった。そのため政府は経済体
制を計画経済から市場経済へと移行させることで、競争を生み、市場の活発化、労働者の
労働意欲、生産性の向上を図った。
第二に、国営企業の民営化・株式化である。国営企業などの社会主義セクターに対する
国家補助をやめ、国家財政と各企業の経営を分離し、国営企業などに市場経済に基づいた
独立採算制を導入した。また、経営効率の悪い国営企業が経済の主流であったため、国営
企業を民営化し株式化にすることにより、競争を生ませ、国内経済の回復をはかった。
そして第三に、対外経済関係の開放政策がある。ベトナムは他国に占領されていたとい
う歴史的背景にもとづき、自立的な発展を強く切望していたが、工業製品では先進国との
競うほどの競争力を持ち合わせておらず、資源に関しても豊富に持ち合わせているにも関
わらず、それらを有効に使う技術や資本を有していなかった。そこでベトナムは近隣の
ASEAN 諸国や、同じく社会主義でありながら開放経済を唱え急速な発展を遂げた中国を例
にとり、先進国の進んだ生産技術や経営ノウハウを吸収し、国際競争力を身につける一番
の近道である直接投資を導入するようになった
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3節 ベトナムへの直接投資流入状況
前節で述べてきたように、1986 年末のドイモイ政策採択以降、自由経済へと移行し、従
来は国有企業一本化であったのを、外資導入を図るとともに民間セクターの育成に力を注
いだ。そして 1990 年代に入ると、インフレ克服・為替レートの安定などマクロ経済が安定
するようになり、GDP も上昇するなど経済の成長と安定が見えてきたことに加え、日本な
どからの ODA が本格的に供与されインフラ整備のめどがついてきた。
また、ベトナム人は非常に勤勉で教えたことを吸収するのが早く、総人口の4割を 25~
30 代の働き盛り世代が占めており、賃金が安く離職率も低いと言われている。さらに東ア
ジアの中心にあり、中国の広州に近いという地理的アドバンテージがある。さらには人口
8000 万人を抱える大きなマーケットの存在、近年の中国投資一極集中のためのリスクヘッ
ジ先など、ベトナムへの進出を促進するメリットがたくさんあるので、外資に対する規制
や政治的問題などの問題点が残っていても新たな改革によりいずれ改善されるとの期待の
もと、多くの投資家・企業に評価され、1992 年からベトナムで FDI ブームがおこった(図
1)。しかし1997年のアジア通貨危機により多くの投資家がASEANへの投資を控えたこと、
ベトナムの投資環境の改善が期待したほどされなかったこと、さらには 1998 年ごろから新
たな FDI 市場として中国が注目され世界中の企業が中国に競って進出した結果、FDI 市場
としてのベトナムの魅力は薄らぎ、投資登録額は 2000 年にはピーク時(1996 年)の約4分
の1にまで激減してしまった。ベトナム政府はこの事態を打開するため、効率の悪い経営
をしている国有企業の削減や裾野産業育成プログラムの作成等の投資環境改善に取り組み、
外資企業の誘致に努力してきた。
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2001 年には米越通商協定を結び平均 40%であった関税率が約 3%にまで引き下げられ、台
湾などから多くの繊維産業企業が進出してアメリカとの貿易額・件数は急速に伸びてきて
いる。さらに、2003 年に発生した中国での SARS、2004 年の反日デモなどによるチャイナ
リスクを避けるため、多くの日系企業がチャイナ・プラス・ワンとしてベトナムに進出し
てきている。そして現在 50 以上の国の企業がベトナムに進出しており、ベトナムへの FDI
セクターは投資総額の4分の1、工業生産額の 34%、輸出総額(石油・ガスを除く)の 23%、
GDP の 13%を占め、この国にとって必要不可欠の経済セクターなのである2。
(図1)
日本からベトナムへの直接投資 認可件数・認可額の推移
0
2
4
6
8
10
12
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 (年)
(億㌦)
0
10
20
30
40
50
60
70
80 (件)
金額(左) 件数(右)
JETRO『ハノイセンター資料』より筆者作成
2 JICA 『競争力強化のための投資環境整備に関する日越共同イニシアティブ』p46
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第2章 持続的経済発展と直接投資-技術移転を通じて-
前章では、ベトナムが持続的発展を望む背景、ドイモイ政策、ベトナムにおける直接投
資の流入状況について述べてきたが、本章ではその直接投資の持続的経済発展へのプロセ
スを述べていく。その際に、直接投資を通じた「技術移転」に注目して述べる。技術移転
を企業内技術移転、企業間技術移転に分類し3、それらが持続的発展にどのように貢献する
か、そのプロセスを述べる。
1節 持続的経済発展と技術移転
序章でも述べた通り、発展途上国においては、直接投資を受け入れても先進国の進んだ
経営資源を取り入れる基盤がないことが多い。つまり市場経済に関する基本的な知識が乏
しく、経営資源を受け入れる専門的人材が不足し、裾野産業が未発達な場合が多い。その
ため、直接投資を積極的に取り入れても、途上国に比較優位のある未熟練労働者による大
量の労働力と外資の資本だけの投入増加による量的な経済成長になる。したがってベトナ
ムが経済成長を遂げていく過程で、金融危機、賃金の上昇などのリスクにより外資企業が
将来撤退してしまったら、ベトナムは自立的に経済発展を維持することができるとは考え
にくい。つまり、このような投入量の増加では持続的な経済発展につながらないと考えら
れる。この考えに関しては、東アジアの急速な経済成長に対してのポール・クルーグマン
の指摘が参考になる。
3 トラン・ヴァン・トゥ『移行経済への技術移転:ベトナムの事例とその含意』p3 技術移転の分類方法を参考にした。
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「東アジアの高い急速な経済成長は、労働や資本の生産要素投入の増大によるもので、生
産性の上昇によるものではないことから、遅かれ早かれ、成長率が低下するであろう。」4
このクルーグマンの指摘から持続的経済発展を達成するためには、労働や資本の投入量
の増加だけでなく、途上国の人々による技術の革新、生産性の上昇による自立的な発展が
重要と考えられる。したがって直接投資による持続的経済発展を達成するには、先進国の
進んだ技術を取り入れるための「技術移転」が必要不可欠であることがわかる。
その「技術移転」には、現地の人々によって生産、新技術の導入、新製品の開発などが
行えるようになる「生産技術の移転」、現地の人々によって経営していけるようになるため
の「経営ノウハウの移転」がある。それでは技術移転がなされた場合どのようなプロセス
で持続的経済発展に貢献するのだろうか。直接投資による技術移転は、大きく捉えて2つ
のプロセスがある。進出している外資企業からその企業内で働いている途上国現地人への
企業内技術移転、外資組み立て企業から現地部品企業への企業間技術移転がある。そのプ
ロセスを次節で述べていく(図2参照)。
4 ポール・クルーグマン 『まぼろしのアジア経済』p62~p78
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(図 2) 直接投資による技術移転が持続的発展につながるプロセス
2節 企業内技術移転と持続的経済発展
企業内技術移転とは、途上国に進出した外資企業がコスト削減のために現地化をすすめ
ることである。現地人従業員に対する OJT、研修や本国への派遣研修を通して、外資企業
が持つ進んだ生産技術や経営ノウハウを移転し、現地人の専門的技術者や中間管理職を育
成することである。
したがって企業内技術移転が進むことによって、現地人の専門的生産技術者、中間管理
職が増加する。つまり投資、労働量の投入量の増加による経済発展から、現地人による技
術の革新が可能になり、もし外資が撤退するような事態が生じても、現地の人々による自
企業内技術移転 企業間技術移転 垂直移転 水平移転
産業競争力の強化
人材育成 裾野産業の形成
持続的経済発展
技術の開発の促進 生産性の向上
直接投資
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立的発展が可能になっているため、持続的に発展していくことが可能になる。
企業内技術移転に関してトラン5は以下のように述べている。生産技術に関しては、外資
が積極的に技術を移転すると述べている。なぜなら、作業者の訓練、工場での管理者への
知識・経験の伝授が円滑に行われなければ、生産活動が進められないためである。
しかしながら技術移転の制約要因もいくつか存在する。それは2つの理由による。一つ
は、生産技術の性格による。もし、先端技術の場合、その拡散・漏洩を防止するために外
資が子会社をコントロールする傾向が強く、ハイレベルの技術者、マネージャーの現地化
を回避、または延期する可能性がある。二つ目に現地人材の供給状況である。例えば、ハ
イレベルの技術者・マネージャーの現地化が子会社の活動にとって有利であっても、適切
な人材が十分存在しなければ現地化できないのである。逆に、もし人材供給が豊富であり、
技術がハイレベルなものでなく標準的な場合、外資企業はコスト削減の観点から現地化を
促進するであろう。
3節 企業間技術移転と持続的経済発展
発展途上国において、進出した外資の組み立てメーカーに部品を供給する裾野産業が未
発達なため、外資企業は部材を現地部品企業から調達できない場合が多い。そのため外資
企業は、高価な部材を本国から輸入するため、現地で部材を調達するよりもコストが高く、
配達の時間も手間もかかってしまう。したがって外資企業は現地部品企業と技術協力関係
を結び、専門的技術者を派遣することによって生産技術、経営ノウハウの移転を行い、現
5 トラン・ヴァン・トゥ『移行経済への技術移転:ベトナムの事例とその含意』p2~p6
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地人技術者・経営者を育成する。これらによって途上国の現地部品企業の製品の品質・生
産効率が向上し、組み立て外資企業に部材を供給可能な現地部品企業が生まれる。これら
を企業間垂直技術移転と呼ぶ。
さらに、途上国の現地人労働者が外資企業で働き、外資の進んだ経営資源を習得した生
産技術者、経営者が現地部品企業に転職または起業することで、その技術が外国企業から
現地人や周辺の現地企業に移転すること、つまり外資企業の進んだ経営資源のスピルオー
バー効果が期待できる。また、ある産業の外資が進出することにより、以前から存在して
いた現地企業は、競争力のある外資と共存していかねばならない環境に追い込まれ、企業
努力がなされる。それによって製品の品質・効率の向上につながる可能性がある。このよ
うに同じ産業内で外資企業の生産技術、経営ノウハウが現地企業へ伝わっていくことを企
業間水平技術移転という。
以上のように、企業間において技術移転がなされることで、組み立て企業に部品を供給
できる現地部品企業が増え、次第に部品企業間で競争が生まれることによって裾野産業が
育成される。そして裾野産業の発展は、技術の改良、新技術の開発を促進することによっ
て組み立て企業に供給する部材の品質向上、生産効率が向上し、国内で品質の高い部材を
低価格かつ早期に組み立て企業に供給することが可能になる。つまり、裾野産業の形成は
産業間で必要な部材を製造し、効率よく供給するという産業リンケージの役割を担うよう
になる6。
6 さらに、裾野産業の発展には貿易収支のバランス改善効果もある。なぜなら、裾野産業の発展以前
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そして、ある産業内に部品企業が多く存在し、競争せざるを得ない環境ならば、組み立
て企業は常に新たなニーズに対応するため、製品の設計・開発を行うことが予想できる。
したがって最終品メーカーのような組み立て企業が新製品の開発・製造をする場合、裾野
産業が存在することは、研究開発・新製品開発を促進する。つまり裾野産業の発展は、産
業リンケージを有機的に機能させ、産業間の競争力が強化されることにより持続的発展に
貢献していくと考えられる。
今まで述べてきた直接投資による持続的経済発展のプロセスをまとめると、直接投資に
より進んだ生産技術や経営ノウハウが移転され、現地人「技術者」や「中間管理職」とい
った人材が育成され裾野産業が形成される。それにより、産業内で競争が生まれ、企業は
新しい技術の開発や生産性の向上を促進し、産業間に有機的効果をもたらす。したがって
産業間の競争力が強化されることにより、途上国の持続的経済発展につながっていくと考
えられる。
は、組み立て企業に供給する部材を途上国現地企業からの調達が不可能なため、外資企業本国からの品質
は良いが、高価な部材を輸入するためコストが高くつき、貿易収支が赤字になりやすい。したがって、裾
野産業の発展により、国内で、部材を安く調達することができるため、貿易収支のバランスが改善される。
直接投資はこういった面からも途上国の持続的経済発展に貢献する。
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16
第3章 直接投資がベトナムの持続的発展に与えた影響
-日系製造業の技術移転の実態調査より-
前章では直接投資、特に技術移転による持続的な発展達成への貢献の一般論を述べてき
たが、本章ではベトナムにおける直接投資の貢献を技術移転を中心に分析する。ここでは、
私達が海外調査を行った際に実施した日系製造業 150社(回答 37社 回収率 25%)を対
象としたアンケート結果をもとに以下分析する(巻末資料参照)。
1節 企業内技術移転
本節では、ベトナムにおける日系企業の企業内技術移転の移転状況を、アンケートによ
る生産・経営技術の移転状況から得られた結果をもとに分析する。
1.生産技術の移転
持続的な発展に重要となる新技術の導入や開発などの高度な技術移転は一般的にされづ
らいとされている。企業が現地人スタッフにどれほど生産技術を移転しているかを尋ねた
ところ、以下のような結果となった。
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17
1)このアンケート項目の技術は、浦田『日本企業の東アジア現地法人における技術移転』をもとに作成
している。
2)生産技術を 9種類の技術に分類し、上から順に高度な技術を大まかに分類している。
図3から分かることは、操作技術、保守点検、品質管理など、企業が生産活動を行う際
に必要不可欠な技術については多くの企業がベトナム人に任せている。実際訪問させてい
ただいた工場では、生産ラインの責任者はほぼ現地スタッフに任されており、品質の管理
など徹底して行われていた。一方で、金型工具の開発から上の高度な技術を現地人が担当
している企業数は減少している事が明確である7。
7 アンケートを行った企業の中には、輸出拠点として、ただ製品を生産するだけの企業もあるので、
開発などの高度な生産技術を必要としていない企業もある。したがって、グラフでは導入している企業
数のみを示している。
生産技術の移転の進歩状況
30
25
19
10
4
3
3
2
2
0 5 10 15 20 25 30 35
保守点検
操作技術
品質管理
技術改良
金型工具の開発
設計技術
製造設備開発
新技術導入
新製品開発
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18
このグラフから読み取れる事として、もう一つ重要な点が挙げられる。それは、「『技術
の改良』が少しずつベトナム人に任されてきている」という点である。操作技術、保守点
検、品質管理に比べると少ないものの、今回のアンケートでは37社中10社と、徐々に
ベトナム人にまかせる傾向が見える。つまり、高度な技術の移転の段階までは達していな
いものの、技術の改良という、日本の生産技術を少しずつベトナム人に適した技術へと改
良することが可能となっている。これは、持続的に発展を遂げていく際に必要な高度な技
術の移転への一歩であると考えられるのではないか。
このように、技術移転が着実に進んできていることは分かったが、やはり重要な高度な
生産技術の移転は行われづらい状況である。それでは、なぜ、高度な技術移転は行われづ
らいのだろうか。生産技術の移転の問題点を聞いたところ、圧倒的に多かった回答は、現
地人材の不足が挙げられる。(図4参照)技術者、技術指導者共に人材の不足と能力が大き
な問題として捉えている企業も多く、「とても制約がある」と答えている企業も他の問題点
よりも多い。これらから、技術者の不足だけでなく、技術者を指導する立場の人材の不足
も大きな問題として感じている企業が多い事がわかった。その他には、派遣要員の限界や
技術の流出などといった問題点もある。技術の流出に関しては、企業側としては悩ましい
問題でないかと考える。コスト削減のために移転したくても、日系企業の持つ根幹の技術
が移転してしまえば、日系企業にとっては時に大損につながることもある。いずれにせよ、
現在のベトナム進出日系企業にとって生産技術の移転を大きく制約しているのは、現地人
材にあると言える。
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19
2.経営ノウハウの移転
経営ノウハウの移転に関してアンケート調査結果から言えることは(図5参照)、生産技
術に比べてそれぞれの技術の導入に関して大きな開きはないものの、相当修正して導入さ
れていることが分かる。特にボーナスやユニフォーム着用など、比較的簡単に導入できる
のは、相当修正しているものの、導入している企業数は多い。このように、日本的経営ノ
ウハウを程度はあるものの、ベトナムに適したように修正し導入していることは積極的に
捉えられる点である。しかし、結局は日本的経営ノウハウであって、ベトナム人による経
営ノウハウではない。
図 4 生産技術移転の際の問題点
0 5 10 15 20 25 30
専門的技術者の不足
技術指導者の不足
派遣要因の限界
現地人の吸収能力不足
指導方法が見つからない
技術の流出
指導者の派遣期間が少ない
偽物
製品競合の懸念制約
厳しい制約
(回答企業数)
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経営ノウハウを移転するためには、中間管理職にベトナム人を登用していかなければ
ならない。アンケートでは、個々の企業によって現地人登用数はまちまちであったが、
ヒアリングを通して、どの企業も現地の中間管理職を増やしていこうとする意欲は感じ
られた。現地人材を育成するにはある程度時間がかかり、また中間管理職の育成は操業
してすぐに行うことは難しいために、ある程度の時間を要する。そのために、まだ進出
してまもない企業が多いベトナムにおいて多くの中間管理職がいることを望むことは現
時点では難しい。しかし、企業のコスト削減のためにも今後ますます管理職の登用は進
む可能性がある。
それでは、現地人材を登用する際の問題点は何だろうか。アンケート(図6)による
と、第一に現地人材の不足が挙げられる。単なる制約と感じるだけでなく、厳しい制約
としている企業も多い。他にも、ジョブホッピングによる定着性の低さは長い時間をか
けて中間管理職に就く人材を育成していく場合に、特に問題であると言える。
経営技術の移転状況
0 5 10 15 20 25 30 35
ユニフォームの着用
ボーナス制度
各種手当て
年功序列制
全社的品質管理システム
稟議制度
提案制度
雇用安定策
小集団活動
JIT(カンバン方式)導入
相当修正して導入
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以上、企業内技術移転を生産技術、経営技術と分けて見てきたが、徐々に技術の改良が
行われてきているという、積極的な面も挙げられるが、高度な技術の移転と中間管理職の
登用はなかなか行われづらい。その中でも、特に制約となっているのは人材不足、指導者
不足である。よって、現在のベトナムに必要なことは人材の育成であると言える。
2節 企業間垂直移転8
ここでは、日系企業とベトナム現地企業間における技術移転を分析する。企業間技術移
転は現地企業と技術協力を結び、その際に様々な技術が移転され、裾野産業が育成する可
能性がある。
まず、日系企業がどの程度現地企業から部品を調達しているか見てみる。図7から分か
るように、36社中 19社は現地地場企業からの調達率が 0~10%であり、現地企業から調
8 本節では 2章でも述べたように、私達の海外調査においても企業間水平移転について実証できるデーターを得られなかったため、企業間水平移転に関しては割愛する。
現地人材登用の際の問題点
0 5 10 15 20 25 30
人材不足
定着性に乏しい
コミュニケーション能力
経営ノウハウの理解吸収能力不足 制約
厳しい制約
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達している企業が少ない。つまり多くの日系企業が部品の供給をベトナムに進出している
外資企業か、日本やアジア諸国からの輸入に頼っていることが分かる。
それでは、なぜこのように現地企業から部材を調達できてないのだろうか。現地企業か
らの部材調達の問題点をアンケートで伺った所、図8のような結果になった。調達の制約
となっているのは、主に品質面である。現地企業の製品の品質自体に問題があることと、
例え品質が多少よくても、常にいい品質を安定して供給できない事に大きな制約を感じて
いる。日系企業の要求する品質があまりにも高いという事を考慮したとしても、ベトナム
の裾野産業が発達していないことが改めて認識できる。訪問させていただいた企業でも裾
野産業の未発達が問題として取り上げられていた。
このように品質面で特に問題がある現地企業を育成するために、優れた技術を持つ外資
企業の技術移転の必要性を感じる。
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23
現地企業からの調達比率
0
2
4
6
8
1 0
1 2
0%
~10%
~20%
~30%
~40%
~50%
~60%
~70%~80%
~90%
~100%
社
現地企業からの調達の問題点
0 5 10 15 20 25
品質
品質の安定性
量の確保
調達先の確保
値段
制約
厳しい制約
図7 (回答企業数) ( 調 達 比
図8 (回答企業数)
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3節 まとめ
これらのアンケート結果をまとめると、高度な生産技術が移転されていないこと、現地
企業から部品を調達できていないことが分かった。これらの要因として、専門的人材の不
足、専門的人材不足による裾野産業の未発達が挙げられる。特に単に人材の不足ではなく、
指導者の不足も技術移転の際の大きな制約となっていることが分かった。
また、JETRO では、上述した技術移転とは違う企業間移転例を伺うことができた。
JETRO は、現地企業の要望により、日系企業と現地企業を取り次いだり、「逆見本市9」
を開催したりして、現地企業と日系企業の技術協力関係を結ぶきっかけを作ることがある
そうだ。しかし、どちらにおいても、特に品質面で日系企業の基準に達しておらず、結局
部材を供給することができていない。つまり、技術協力関係を結ぶことはできず、直接的
に技術の移転も行われていない、ということが言える。
しかし、これらは現地企業にとってメリットもある。日系企業の要求する部品はどのよ
うな品質なのか、調達先としてどこが不適切なのか、どう品質の向上と改善をしていけば
よいか、などと考えるようになる。このように、外資企業の進出により、直接技術の移転
を行うことだけでなく、外資企業に部材を供給したいがために、製品の質の改善などを行
い、品質を向上させる現地企業もあるなど、間接的にも現地企業に影響を与えている。
しかしながら、現在のベトナムの実情は専門的人材の不足と裾野産業が未発達であるこ
となどの理由から企業内・間における技術の移転は行われていないのである。
9逆見本市とは、サプライヤー探しが目的の展示会で、出展する日系外資企業はブースに調達したい製品を展示する。展示会ではその部品ひとつひとつを作ってくれる部品メーカーを募集する。展示会に来る現
地企業は、製品の買い付けに来るのではなく、自社の部品を売り込みに来る。第 1回開催は 2004年 12月ホーチミン市、日系企業 40社参加。第 2回は 2005年ハノイで行われる予定。
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第4章 ケーススタディ -Honda Vietnam-
前章ではアンケート・およびインタビュー調査により技術移転がされづらい現状を述べ
てきた。本章ではベトナムの自立的かつ持続的な発展によい影響を与えている、好例とし
て「Honda Vietnam」を紹介する。
1節 Honda Vietnamの概要
Hondaは 1997年、工業省の国営企業 VEAMと合弁し、Honda Vietnamを立ち上げ
た10。現在まで、総生産量 560,000台を生産し、2004年は年間 1,830万台をした。中国コ
ピー製品の輸入や関税制度や規制政策の度重なる変更により、工場のラインの停止や製品
価格の値下げを強いられることもあった。しかし、市場調査を行い、消費者ニーズに適応
させたバイクを販売したり、サービスの向上を図ることで、現在 Honda バイクはベトナ
ム国内市場で 36%のシェア11をもつ。
2節 技術移転
1.企業内技術移転
(1)生産技術
まず、生産技術の移転状況を見てみる。特に注目できる点は、高度な技術に関しては、
日本人だけでなく、双方で担当しているという点である12。まだ高度な技術を現地人に任
10 出資比率はホンダが 70%、VEAMが 30%。 11 中国からのコピー商品が 24%、残り 40%をヤマハ、スズキ、他外資企業数社で分け合っている。 12新技術の投入のみ日本人が担当している。
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せる段階ではないが、双方で担当することで、高度な技術が OJTを通して徐々に現地人に
移転していく可能性がある。いずれは高度な技術も現地人に任せていくようになるであろ
う。生産に関する技術である、操作技術、保守点検、品質管理、改良技術はベトナム人が
担当している。
(2)経営ノウハウ
次に、経営ノウハウの移転について見ていく。経営ノウハウはアンケートによると、全
ての技術を移転している。さらにユニフォームの着用以外はすべて、相当修正して導入し
ていた。どれも日本的経営ノウハウであることには変わりないが、ベトナム人に合うよう
に導入されている。
Honda Vietnam は先程述べたように、国営企業と合弁している。そのため、現地人ト
ップは第一副社長である。副社長は社長の補佐をする役割を持ち、経営の決定権に大きく
影響を及ぼす役職である。次にマネージャー9名、部長 1名を管理職にベトナム人を登用
している。まだ進出して 7年程しか経っていないため、重要なポストへの現地人の登用は
まだ行われづらい状況にあるが、今後より多くの現地人の登用は進められるだろう。OJT
や社内研修制度、また、ハノイ貿易大学の経営セミナーに参加することで、経営ノウハウ
の移転、また人材育成を積極的に行っている。
2.企業間垂直移転
Honda Vietnam は品質面でトラブルが起きたときに対応しやすいこと、低価格な製品
![Page 28: ベトナムの持続的発展と直接投資 ―日系製造業の技術移転の ......てHONDA Vietnam を例に挙げ、「技術移転」を中心に分析し、ホンダが技術移転を通し](https://reader033.vdocuments.site/reader033/viewer/2022060922/60ae5c1f78232e25987d4e3d/html5/thumbnails/28.jpg)
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を提供することを考えて、現地調達を積極的に行っている企業である。どの製品において
も近年では現地調達率13は 8 割を超えており、日系外資企業の中でも特に現地調達率が高
い。
また、ホンダは表1から分かるように、現地部品企業から調達しており、その提携企業
数は年々増えている。それでは、どのように、未発達なベトナム現地部品企業と技術協力
関係を結んでいるのだろうか。私たちは、ホンダの技術協力関係の結び方に注目した。
表1 Honda Vietnamに供給している企業数の推移(1997~2004年)
年度 97 98 99 00 01 02 03 04
現地企業(社) 5 5 5 8 10 11 12 14
出所)Honda Vietnam資料
日系企業は技術協力関係を結ぶ時、基本的に現地企業の Q(quality:品質)・C(cost:
価格)・D(delivery:調達)を調査する。それらが日系企業の要求するある程度の基準を
満たしている場合に、技術協力関係を結び、部品を調達する。しかし、アンケートの結果
から容易に理解できるように、ベトナムの現地部品企業に QCD を重視する考えが浸透し
ているとは考えにくい。ホンダも元から現地部品企業に日系企業の基準を満たす QCD が
ないと考える。そこで、ホンダは違う所に目をつけた。それが、『経営ビジョン』である。
現地企業の経営者や工場長と話をする際に、彼らの経営ビジョンに注目する。この場合の
13 現地調達率とは、ベトナムに進出している外資企業、現地企業からの調達、内製化も含まれる。
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経営ビジョンとは、2つの要素からなる。日系企業の進んだ技術を取り入れ、それらを利
用して、企業を発展させていこうとする向上心と、実際に計画、実行、確認、改良のプロ
セスを継続的に行っていく能力である。向上心を持っているだけでなく、それらを実際に
行動に移すことができるかどうかも重要なポイントである。つまり、現地企業にある経営
ビジョンという、部品の『潜在的供給能力』14に注目し、技術協力関係を結んでいる。ト
ラン(2004)15において、「現地部品企業の存在だけでは外資企業とのリンケージが必然的
に成立しない」とあるように、現地部品企業に潜在的供給能力があれば、外資企業の技術
移転により現地企業が十分に育成される可能性はあるのである。ホンダはその潜在的供給
能力を経営ビジョンとして捉えているのではないかと考える。
なぜ、経営ビジョンがある現地部品企業と技術協力関係を結ぶかというと、初め QCD
が備らずとも、技術移転を行い、時間をかけて育成していくと、いい部品を供給できるよ
うになるからだそうだ。そして、供給できる部材を生産できるようになってからも、品質
維持・向上のために定期的にホンダの社員が現地企業を訪れている。以前は駐在していた
日本人が訪ねていき、QCD+経営ビジョンの確認と向上のための技術移転を行っていたが、
現在ではベトナム人スタッフに任せている。以上の事からホンダは、経営ビジョンを重視
して技術協力関係を結び、現地部品企業の育成に時間と資金は惜しまずに、技術移転を行
っている。この結果として、現地部品企業は育成され、裾野産業が発達していくのである。
したがって、ホンダによる技術移転はベトナムの自立的発展に貢献していることが分かる。
14 トラン・ヴァン・トゥ『移行経済への技術移転:ベトナムの事例とその含意』p5 15 脚注 14と同じ
![Page 30: ベトナムの持続的発展と直接投資 ―日系製造業の技術移転の ......てHONDA Vietnam を例に挙げ、「技術移転」を中心に分析し、ホンダが技術移転を通し](https://reader033.vdocuments.site/reader033/viewer/2022060922/60ae5c1f78232e25987d4e3d/html5/thumbnails/30.jpg)
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第5章 ベトナムの持続的発展にむけて
1節 日系企業に対する提言
アンケートおよび日系企業へのインタビュー調査からわかるように、現在のベトナムに
おいては外資企業が技術移転、人材育成を行えるような環境が整っていない。つまり専門
的人材が不足しているために企業内においては高度な技術が移転されておらず、企業間に
おいても裾野産業が未発達であり、部品企業との技術協力関係も生まれていない。したが
って日系企業の進出がベトナムの持続的発展に貢献していないケースが多いことがわかっ
た。ベトナム人が自ら技術の革新と生産性の向上を遂げ、持続的経済発展を達成する為に
は、産業を支える専門的人材と裾野産業の発展が不可欠である。
そこで私たちは日系企業に対して、「経営ビジョンを重視したベトナム人技術指導者の育
成」を提言したい。ここで述べる経営ビジョンとは、前章で述べたように日本の進んだ技
術を自国の技術と融合させて成長していこうという向上心と、それを具体的に PDCI(計
画、実行、確認、改善)として行動に移せることを指す。指導者とは①生産技術を持った
指導者と、②経営ノウハウを持った指導者を示す。アンケートの分析結果より、ただ人材
を育成するのではなく、より具体的に「ベトナム人指導者」の育成が必要であると考える。
いつまでも日本人が指導者として育成するのではなく、ベトナム人指導者によって育成し
続ける事が理想的である。
したがって、企業内技術移転においては生産技術に関して4章で述べたHonda Vietnam
のように多くの技術を日本人、ベトナム人双方で担当させ、ベトナム人が高度な生産技術
にも関わっていることが重要である。そして、その中でも特に経営ビジョンを持ったベト
![Page 31: ベトナムの持続的発展と直接投資 ―日系製造業の技術移転の ......てHONDA Vietnam を例に挙げ、「技術移転」を中心に分析し、ホンダが技術移転を通し](https://reader033.vdocuments.site/reader033/viewer/2022060922/60ae5c1f78232e25987d4e3d/html5/thumbnails/31.jpg)
30
ナム人を指導者として育成することで、将来的にベトナム人が技術者を育成できるように
なり、そこからさらに新たなベトナム人指導者が生まれるという好循環が生まれる可能性
がある。経営ノウハウに関しても、中間管理職を積極的にベトナム人に任せることが必要
である。アンケートの結果より「日本的経営を現地に合わせて相当修正して導入している」
という企業が多くあったが、これはあくまで「日本人」がベトナム人に合ったものと判断
し、修正して導入したと判断できる。ベトナム人が自分達の社会に合った方法へアレンジ
できるようになることが持続的に発展を遂げていく過程で重要である。
企業間技術移転においては、一般企業のように、QCD(品質、価格、調達)が整ってな
いために諦めるのではなく、経営ビジョンを持ち、PDCI(計画、実行、確認、改善)を
実行できる経営能力を持った経営者に目を向け、技術協力するべきだろう。ここから技術
協力関係が生まれ、外資の持つ生産技術、経営ノウハウが移転される。もちろん、企業間
技術移転においても企業内技術移転と同様、指導者を育成していくことは重要である。
以上のように、日系企業は『経営ビジョンを重視し、ベトナム人指導者を育成すること』
を重視するべきではないだろうか。技術移転の後にベトナム人指導者が増え、裾野産業が
発展し、現地企業から部品を調達できるようになれば、様々なメリットが期待できる。具
体的にベトナムで訪れた Honda Vietnam以外の企業の事例を述べると、ダンボールを製
造している Ojitex Haiphon は現地で部材調達をすることにより、コストの削減や時間の
短縮はもちろん、部品に問題が起きた時にすぐ対処できるようになった。近くにいるから
こそ、頻繁に行き来し品質の改善指導が出来ることがメリットだと伺った。現地化を進め
た結果、部材の調達コストが3割も削減できるようになり、部品の納入もスムーズに行え
![Page 32: ベトナムの持続的発展と直接投資 ―日系製造業の技術移転の ......てHONDA Vietnam を例に挙げ、「技術移転」を中心に分析し、ホンダが技術移転を通し](https://reader033.vdocuments.site/reader033/viewer/2022060922/60ae5c1f78232e25987d4e3d/html5/thumbnails/32.jpg)
31
るようになったようだ。ダンボールという製品は数日で納品しなければならない場合が多
いため、国外から部品を輸入するよりも現地から調達する方がメリットは大きい。Ojitex
Haiphonは、部材の現地調達促進により成功した企業のひとつと言えるだろう。
しかし、全ての企業が Honda Vietnamや Ojitex Haiphonのように現地企業を育成でき
るわけではない。中小企業など資金面で余裕のないところもある。そこで、人材派遣費用
や人材育成費用を含めた資金面で限界がある中小企業については、JODC(海外貿易開発
協会16)などの機関を積極的に活用することでその問題は緩和できるのではないかと考え
る。
2節 政府に対する提言
日系企業と同時に、ベトナム政府も技術者養成学校などを設立し「ベトナム人指導者」
の育成に力を入れ、外資企業が技術移転をしやすい環境を整えなければならない。具体的
には、今までにベトナム政府と JICA(国際協力機構)が協力して JOVC(ベトナム・日
本人材協力センター17)を設立している。ここでは中間管理職クラスの人材育成を行って
いるが、こういった指導者の育成をさらに強化するべきである。専門的人材の育成に関し
ては、外資企業による進出や合弁企業の設立が進む中で技術労働者の能力向上が重要な課
題であるとの認識から、JICAの事業として「ハノイ工科短期大学機械技術者要請計画18」
を実施し、日本から専門家を派遣し育成を行っている。このような事業の促進をより積極
的に取り組むことが望ましい。 16 2003年設立。「海外の関連会社での生産性の向上、製品の品質向上、技術レベル等を向上させるため、自社の従業員等を派遣している。」(JOVCのHPより一部抜粋)
17 JICAの技術協力のひとつ。「ビジネス」「コンピューター」「日本語」の教科で、市場経済化を狙う人材を育成している。所在はホーチミン市。(同上)
18 ベトナム国からの要請により、2000.4.1~2005.3.31の期間で行っている。
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また、2003年にはより包括的なプロジェクトとして、ベトナム政府と日本政府が協力し
て「競争力強化のための投資環境整備に関する日越共同イニシアティブ」を立ち上げた。
2004年の中間報告では、個々のプロジェクトの達成度合いにばらつきはあるものの、投資
に対する規制の緩和など政策面では概ね達成されたようである。しかし、裾野産業への恩
典措置や、地場裾野企業のデータベース化などは未だ進展せず、ベトナム政府からの情報
提供がなされていないのが現状である。そして、日系企業がベトナム投資をする際に問題
としているのが「頻繁に変わる政府の投資政策」であるため、あまりにも安直な政策変更
は逆に信頼をなくしてしまう可能性がある。ベトナム政府、日本政府双方の協力と共に、
情報交換を強化し、投資環境を整えるべきである。
この提言により、直接投資は「経営ビジョン」を重視した技術移転により人材が育成さ
れる。ここで「指導者」を育成することによりベトナム人による企業経営が可能になる。
そして、裾野産業が育成されることにより裾野産業内で競争が発生し、組み立て企業との
研究開発などが促進され、産業競争力が強化される。そうすれば、いずれはベトナムの自
立的発展、つまりベトナム人による持続的発展が実現されるのではないだろうか。
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33
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35
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関満博 『ヴェトナム南部に進出する日本企業』2004
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/04j038.pdf
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36
付表 アンケート回答の分析結果(2005年 9月)
1:進出場所 (社/%)
2:出資比率 (社/%)
進出地域 ホーチミン ハノイ その他 N.A 11 30.6 9 25.0 14 38.9 2 5.6
ベトナム進出企業 N.A ~25% 1 2.8 2 5.6 26~50% 4 11.2 2 5.6 51~75% 11 30.8 2 5.6 76~99% 0 0 2 5.6 100%
18 50.0 2 5.6
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3:経営ノウハウの移転 (社/%)
4:生産技術の移転 (社/%)
移転せず 修正して移転 現地流に相当 修正して移転
N.A
ボーナス制度 6 16.7 14 38.9 15 41.7 1 2.8 年功序列制度 16 44.4 7 19.4 12 33.3 1 2.8 各種手当て 11 30.6 11 30.6 13 36.1 1 2.8 雇用安定策 20 55.6 8 22.2 7 19.4 1 2.8 ユニフォーム着用 2 5.6 25 69.4 8 22.2 1 2.8 稟議制度 18 50.0 11 30.6 6 16.7 1 2.8 提案制度 18 50.0 10 27.8 7 19.4 1 2.8 小集団サークル活動 22 61.1 7 19.4 6 16.7 1 2.8 会社的品質管理システム 16 44.4 15 41.7 4 11.1 1 2.8 JIT(カンバン方式) 30 83.3 4 11.1 1 2.8 1 2.8
現地人が担当 日本人が担当 双方で担当 N.A 操作技術 25 69.4 3 8.3 7 19.4 1 2.8 保守点検 30 83.3 2 5.6 4 11.1 0 0 品質管理 19 52.8 5 13.9 11 30.6 1 2.8 技術改良 10 27.8 10 27.8 13 36.1 3 8.3 新技術の導入 2 5.6 20 55.6 29 19.4 3 3.3 設計技術 3 8.3 13 36.1 3 8.3 17 47.2 新製品開発 2 5.6 9 25.0 6 16.7 19 52.8 金型工具・開発 4 11.1 6 16.7 5 13.9 21 58.3 製造設備開発 3 8.3 6 16.7 7 19.4 20 55.6
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5:技術移転の方法 (社/%)
6:部材の各調達先に関する調達率構成比(調達率) (社/%)
導入 自社内研修 OJT 生産技術研修 18 50 自社内研修 OJT 経営技術研修(一般研修) 13 36.1 自社内研修 OJT 経営技術研修(管理職研修) 12 33.3 自社内研修 定期的な社内研修制度 生産技術研修 8 22.2 自社内研修 定期的な社内研修制度 経営技術研修(一般研修) 9 25 自社内研修 定期的な社内研修制度 経営技術研修(管理職研修) 9 25 自社内研修 社内セミナー 生産技術 3 8.3 自社内研修 社内セミナー 経営技術研修(一般研修) 5 13.9 自社内研修 社内セミナー 経営技術研修(管理職研修) 5 13.9
日本本社へ OJT生産技術研修 7 19.4 日本本社へ OJT 経営技術研修(一般研修) 3 8.3 日本本社へ OJT 経営技術研修(管理職研修) 4 11.1 日本本社へ 恒常的な派遣研修 生産技術研修 6 16.7 日本本社へ 恒常的な派遣研修 経営技術研修(一般研修) 3 8.3 日本本社へ 恒常的な派遣研修 経営技術研修(管理職研修) 2 5.6 日本本社へ 本社セミナーへ 生産技術研修 3 8.3 日本本社へ 本社セミナーへ 経営技術研修(一般研修) 3 8.3 日本本社へ 本社セミナーへ 経営技術研修(管理職研修) 5 13.9
現地での社外研修 生産技術研修 14 38.9 現地での社外研修 経営技術研修(一般研修) 10 27.8 現地での社外研修 経営技術研修(管理職研修) 10 27.8
0% 1~25% 26~50% 51~75% 76~99% 100% N.A 現地調達 4 11.1 16 44.4 5 13.9 2 5.6 6 16.7 0 0 3 8.3 自社 27 75.0 2 5.6 0 0 0 0 0 0 0 0 7 19.4 現地日系企業 15 41.7 5 13.9 0 0 1 2.8 1 2.8 4 11.1 10 27.8 現地調達地場
企業 11 30.6 6 16.7 2 5.6 0 0 1 2.8 7 19.4 9 25.0
日本からの輸入 4 11.1 11 30.6 4 11.1 5 13.9 8 22.2 1 2.8 3 8.3 アジアからの輸
入 4 11.1 18 50.0 4 11.1 5 13.9 3 8.3 0 0 2 5.6
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7:現地調達の際の問題点 (社/%)
8:販売先(総販売に占める販売先構成比) (社/%)
9:現地人材の登用 (社/%)
0人 1~4人 5~9人 10~15人 課長級 5 13.9 7 19.6 18 50 6 16.8 部長級 15 41.7 15 41.6 6 16.7 0 0 現地人材トップ 13 36.1 22 61.1 1 2.8 0 0 日本人駐在員 1 2.8 26 72.2 7 19.4 2 5.6
制約 かなり制約 制約(合計) 部材の品質に問題点 16 44.4 9 25.0 25 69.4 品質の安定性 15 41.7 6 16.7 21 58.4 量の確保 6 16.7 2 5.6 13 22.2 調達先の確保 6 16.7 3 8.3 9 25.0 値段 5 13.9 0 0 5 13.9
0~25% 26~50% 51~75% 76~99% 100% N.A 現地市場 12 33.4 0 0 2 5.6 8 22.2 8 22.2 1 2.8 日本 18 50.0 4 11.1 0 0 8 22.2 5 13.9 1 2.8 アジア諸国 30 83.4 3 8.3 1 2.8 1 2.8 0 0 1 2.8
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ベトナムにおける日系企業の人材・モノの現地化に関するアンケート調査票
・企業名: ・日本側の出資比率: ・住所: ・Tel: ・e-mail: ・記入者: ・部署: 〔1〕貴社の調達及び販売の流通経路について伺います 〔A〕部品材料の調達先について、全体の調達費に占める構成比(%)を記入してくださ
い。数字の記入が難しい場合は、該当する調達先に○をしてください。 (1)現地での調達 %
・自社内の部品・材料の使用 ・現地日系企業から調達 ・ベトナムの地場企業から調達 うち、技術指導などを行っている関連企業から ・その他( )
(2)日本からの輸入 %
・本社から輸入 ・日本の系列企業から輸入 ・その他( )
(3)アジア諸国からの輸入(主な輸入国名: ) %
・アジアの子会社から輸入 ・その他( )
〔B〕現地での部品材料の調達における問題点を伺います 該当する場合には○、特に深刻な問題の場合には◎をしてください。 (1)部品材料の品質に問題がある
(2)品質に安定性がない (3)恒常的に必要な量が十分確保できない (4)現地で安定した調達先を確保できない (5)値段が合わない (6)その他( )
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〔C〕貴社の製品の販売先について、全体の販売額に占める構成比(%)を記入してくだ
さい。数字の記入が難しい場合は、販売先に○をしてください。 (1)現地市場での販売 %
・現地市場の消費者への自社直販 ・現地日系企業への製品販売 ・地場企業への製品販売 ・現地外資系企業(日系を除く)への製品販売 ・その他( )
(2)日本への輸出 %
・本社への輸出 ・日本の系列企業への輸出 ・その他( )
(3)アジア諸国への輸出(主な輸出国; ) % ・アジアの子会社への輸出
・その他( )
〔2〕現地人材の採用・登用および育成について伺います 〔A〕現在、貴社における現地人材および派遣日本人の人数について記入してください 現地一般従業員 (女性の比率 %) 人
課長級 人 現地中間管
理職
部長級 人
現地人材トップ (取締役級)
主な役職( ) 人
日本人駐在員 人 〔B〕現地人材の登用における問題点について伺います
問題になっている場合には○、特に厳しい制約になる場合には◎記入をしてください (1)登用したい人材の不足 (2)現地人材の(派遣日本人との間の)コミュニケーション能力の不足 (3)ジョブホッピングなどで定着性に乏しい (4)日本的経営手法の理解・吸収能力の不足
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(5)本社サイドの人事昇進制度に合わせて、現地人材登用の制約 (6)その他( )
〔C〕現地人材の研修方法について伺います
研修を実施している場合には○を記入してください。(なお、日本本社への派遣研修
については、もし可能ならば、昨年度の派遣人数をお聞かせください。)
経営技術研修 生産技術研修
一般研修 管理職研修
(1)自社内研修
・OJT ・定期的な社内研修制度 ・社内セミナー等への随時参加
・その他( )
(2)日本本社への派遣研修
・OJT ・恒常的な派遣研修制度 ・本社セミナー等への随時参加
・その他( )
(3)現地での社外研修
・セミナーなどへの派遣研修 ・その他( )
〔3〕貴社の技術移転の実施状況について伺います 〔A〕 生産技術の管理状況について伺います。該当するところに○をしてください。 主に現地人材に任せている 主に派遣日本人が担当 双方で担当 (1)操作技術 (2)保守・点検 (3)品質管理 (4)技術改良 (5)新技術導入 (6)設計技術 (7)新製品開発
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43
(8)金型・工具 開 発
(9)製 造 設 備 開 発
〔B〕生産技術の移転の際に、どのような問題点が制約要因になっていますか。制約になっているに場合には○、特に厳しい制約になっている場合には◎を記入してください。 (1)人材面
・現地に専門的技術者が少ない ・現地人材の吸収能力に限界がある ・本社から(生産技術関連の)派遣要員の供給に限界がある ・その他( )
(2)技術指導体制
・現地で技術指導の責任者を見つけるのが困難 ・日本からの指導者の派遣期間が短い ・現地人材の資質や能力に合わせた指導方法が見つからない ・その他( ) (3)その他問題点
・移転した技術の外部への流出懸念 ・本社および他の海外子会社との製品競合の懸念 ・現地で偽物がすぐに出回る懸念 ・その他( )
〔C〕 経営技術の移転について伺います。どのような日本的経営手法や慣行を移転していますか。日本の本社と同じ内容を移転している場合には○、現地に合うように相当修正
して導入している場合には、◎を記入してください。 (1) ボーナス制度 (2) 年功賃金制度 (3) 各種手当て (4) 雇用安定策 (5) ユニフォーム着用 (6) 稟議制度 (7) 提案制度
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44
(8) 小集団サークル活動 (9) 全社的品質管理システム
(10) JIT(カンバン方式)
(11) その他移転している日本的経営技術 ( )
以上
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45
謝辞
私たちの研究は、企業が利益を追求するための手段のひとつである直接投資が途上国の
発展にどう貢献できるのかという疑問から始まった。班は 2005年の春に結成され、直接投
資の基本的な理論やベトナムという国を知ることから始まった。勉強を進めていくうちに、
直接投資は途上国の発展に貢献しているが、その発展が持続的に続くのかということに疑
問を持ち、また悲惨な歴史をもつベトナムが自分達で持続的な発展を遂げるために直接投
資はどうあるべきかを研究してきた。今回は、ベトナムが持続的に発展するためのひとつ
の要素として「技術移転」に注目して研究してきたが、他にもベトナム政府の投資政策や
法整備に関してなど様々な視点からさらなる研究がなされるべきである。今回訪問した企
業でも「製造業の実態を知らない政府の政策によって、多くの外資系製造業企業が困って
いる」という声があった。さらに今回の研究では日系企業への調査のみであり、ベトナム
現地企業に対しての調査を行うことができなかった。ベトナムの持続的発展を考える上で、
ベトナム政府の政策や、ベトナム企業側の声を取り入れることは不可欠である。これこそ
が私達の研究の次なる課題である。
そして、本稿を執筆するにあたって数多くの方々にお世話になった。中央大学大学院の
西藤輝先生には、数多くの貴重なご指摘を頂き、学術面だけでなく精神面でも多くのこと
を教えて頂いた。緒方俊雄先生には研究当初からご指導頂き、現地調査の際には企業訪問
に同行させて頂いた。他にも、鈴木洋一先生、早稲田大学トラン・ヴァン・トゥ先生、住
友商事株式会社・海外工業団地部の山口様、日本電産トーソク株式会社の前田様、現地で
は JICAハノイセンター・押切様、JETROハノイセンター・小林様、Thang Long Industrial
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46
Park Corporation・小俣社長と吉田様、Vietnam-Japan Human Resources Cooperation
Center倉原様、Nidec TOSOK・皆様、社長西原様と副社長小川様、Ojitex Haiphon・追
永様。そして Honda Vietnam・菊池様。多くの方々の協力を得てこの論文を完成すること
ができた。Honda Vietnamの菊池様には、現地で多くのことを教えて頂き、帰国後も私た
ちの疑問に丁寧に答えてくださった。
指導教授である田中拓男先生には、夜遅くまでご指導頂きました。そして、辛い時期を
一緒に支えあって乗り越えた 30 期の仲間、いつでも相談に乗り支えてくれた 29 期の先輩
たち、励ましてくれた 31期の後輩たち。この場をかりてご協力頂いたすべての方々に班員
一同心からお礼申し上げます。ありがとうございました。