ヒューマノイドロボットのもつ関節粘弾性の力学同定に関す...

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ヒューマノイドロボットのもつ関節粘弾性の力学同定に関する研究 Study on dynamics identification of the joint viscoelasticity of a humanoid robot ベンチャー研究室 岩崎 透 Toru Iwasaki This paper describes the dynamics identification of humanoid robots. It is important to know correctly dynamics parameters of link and joint which constitute a robot for its control. Humanoids have shock absorber and damper at its sole. In walking, humanoids receive impulsive force each step. This structure is simulated in their simulator. In simulation, accuracy of inertial parameters and viscoelastic parameters that compose robot model is important to simulate their motion accurately. Then, we identify the viscoelastic parameters of legged systems using the base-link dynamics and viscoelastic joint dynamics. We modeled HRP-2 sole damper with simple structure and identify viscoelastic parameters with parallel model that is composed with elasticity and viscosity and offset torque. We finally validate the identified parameters with some motion. Key Words: Humanoid, Dynamics identification, Viscoelasticity, HRP-2 1 序論 現在,コンピュータ技術および制御理論の進歩によりロ ボット技術が発展し,ヒューマノイドも実験室レベルでは あるが開発が行われている.代表的なロボットとして本田 技研工業の ASIMO [1],川田工業,産業技術総合研究所ら HRP シリーズ [2]がある.これらの構造は産業用ロボッ トの延長線上にあり,各関節は剛性の高い構造をしており, 基本的に柔軟性を持たない.剛性の高い構造は運動制御に は有利であり,産業用ロボットに見られる高速な反復動作 には適している.しかしながら,複雑な環境下での動作を 期待されるヒューマノイドにおいては,この高い剛性が意 図せぬ衝突などで大きな衝撃力を引き起こし,外乱となる. これは,実環境での動作では重要な問題である.現在のヒ ューマノイドでは,環境と最も頻繁に発生する衝撃力は歩 行による接地衝撃力である.ヒューマノイドはこれを緩和 するために,あらかじめ環境を正確に把握し動作を計画す [3] [4],接地時衝撃緩和用のダンパを備える [5]という 対策をとっている.本研究では後者の方法に着目し,ヒュ ーマノイドに付随する衝撃緩和用のダンパについて,その 特性同定を行う.2 足歩行ロボットにおいて,足裏部は環 境との主な接触点であるため,その挙動が重要となる.ヒ ューマノイドロボットにおいて,実機での動作前にシミュ レータを用いて動作の検証を行う.ヒューマノイドは人間 に近い身長,重量であるため,意図しない動作は大変危険 である.そのため,シミュレータにおけるロボットの挙動 の正確性はロボットの挙動を把握するうえで重要であり, その動作を実機の動作に近づけるためにロボットの特性を 正確に計測する必要がある.ヒューマノイドにおいて,計 測すべき特性はリンク・ジョイントの質量,慣性テンソル, 重心位置,関節の粘弾性特性である.本研究ではヒューマ ノイド自身の動作より力学特性を把握する力学同定を行う. この方法は CAD などの設計情報を用いる方法やロボット をリンク・ジョイント単位に分解し,直接,計測器を用い て測定する方法に比べモデル化されていない部品の影響ま で含めて把握することができる.本研究ではこれまで提案 されたベースリンク運動方程式を用いた力学同定手法をベ ースとして HRP-2 の足裏ダンパについて,その特性を明ら かにする.本研究の流れは以下である.まず,ベースリン ク運動方程式を用いて同定した慣性パラメータを用いて関 節粘弾性を同定する手法について述べる.次にヒューマノ イドロボット HRP-2 について目的とする足裏ダンパの関 節モデルおよび粘弾性モデルについて定義を行う.そして, 上記手法を用いて実ロボットについて粘弾性同定を行い, 同定結果について検証を行う. 2 力学同定 2 足歩行ロボットの運動方程式は移動システムとして立 式される.この運動方程式は空間自由度のベースリンク運 動方程式と関節数に依存する関節空間の方程式で構成され る.力学同定においては一般的には関節空間の方程式を用 いる.しかしながら,この手法では各関節の関節トルクを 要求し,一般に関節トルクを正確に計測することが難しい 問題がある.そこで,ベースリンク運動方程式を用いた力 学同定手法が提案されている [6] [7] [8].これは,ベース リンク運動方程式が関節トルクおよび関節粘弾性のダイナ ミクスの影響を受けない特性を利用したものである.慣性 パラメータを誘起するために十分な運動を行えば,関節空 間での同定手法と同様に慣性パラメータを得ることができ [9] [10] [11].ここでは,このベースリンク運動方程式 を用いた力学同定手法について,その式展開および,関節 粘弾性同定のための拡張について述べる.2 足歩行ロボッ トの運動方程式を慣性パラメータおよび関節パラメータ (関節粘弾性)について線形化したものを式(1) に示す. [ Y BI 0 Y JI Y JJ ] [ ϕ I ϕ J ]=[ 0 ]+∑[ K Bk K Jk ] k N c =1 (1) ここで, n : ロボットを構成するリンク数 N I : 慣性パラメータの総数. N J : 関節パラメータの総数. Y BI : 慣性パラメータをベースリンク発生力に変換する 行列 (リグレッサ行列)N I 行列. Y JI : 慣性パラメータを関節トルクに変換する行列 (リ グレッサ行列)N I 行列. Y JJ : 関節パラメータを関節トルクに変換する行列 (リ グレッサ行列)N J 行列.関節の粘弾性モデルに より変化する. ϕ I : 慣性パラメータ.リンク質量,慣性テンソル,重 心位置で構成される. = [ 1 ] T = [ ] ここで [kg] はリンク質量 , , [kg ∙ m] はリンクの慣性 1 次モー メント , , , , , [kg ∙ m 2 ] は慣性 テンソル.N I ×1 行列. ϕ J : 関節パラメータ.弾性係数,粘性係数,摩擦係数 専攻外秘 B-22

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Page 1: ヒューマノイドロボットのもつ関節粘弾性の力学同定に関す …web.tuat.ac.jp/~gvlab/ronbun/Maesuri/M2013_IwasakiToru.pdfKey Words: Humanoid, Dynamics identification,

ヒューマノイドロボットのもつ関節粘弾性の力学同定に関する研究

Study on dynamics identification of the joint viscoelasticity of a humanoid robot

ベンチャー研究室 岩崎 透 Toru Iwasaki

This paper describes the dynamics identification of humanoid robots. It is important to know correctly dynamics

parameters of link and joint which constitute a robot for its control. Humanoids have shock absorber and damper at its sole. In walking, humanoids receive impulsive force each step. This structure is simulated in their simulator. In simulation, accuracy of inertial parameters and viscoelastic parameters that compose robot model is important to simulate their motion accurately. Then, we identify the viscoelastic parameters of legged systems using the base-link dynamics and viscoelastic joint dynamics. We modeled HRP-2 sole damper with simple structure and identify viscoelastic parameters with parallel model that is composed with elasticity and viscosity and offset torque. We finally validate the identified parameters with some motion.

Key Words: Humanoid, Dynamics identification, Viscoelasticity, HRP-2

1 序論

現在,コンピュータ技術および制御理論の進歩によりロ

ボット技術が発展し,ヒューマノイドも実験室レベルでは

あるが開発が行われている.代表的なロボットとして本田

技研工業の ASIMO [1],川田工業,産業技術総合研究所ら

の HRP シリーズ [2]がある.これらの構造は産業用ロボッ

トの延長線上にあり,各関節は剛性の高い構造をしており,

基本的に柔軟性を持たない.剛性の高い構造は運動制御に

は有利であり,産業用ロボットに見られる高速な反復動作

には適している.しかしながら,複雑な環境下での動作を

期待されるヒューマノイドにおいては,この高い剛性が意

図せぬ衝突などで大きな衝撃力を引き起こし,外乱となる.

これは,実環境での動作では重要な問題である.現在のヒ

ューマノイドでは,環境と最も頻繁に発生する衝撃力は歩

行による接地衝撃力である.ヒューマノイドはこれを緩和

するために,あらかじめ環境を正確に把握し動作を計画す

る [3] [4],接地時衝撃緩和用のダンパを備える [5]という

対策をとっている.本研究では後者の方法に着目し,ヒュ

ーマノイドに付随する衝撃緩和用のダンパについて,その

特性同定を行う.2 足歩行ロボットにおいて,足裏部は環

境との主な接触点であるため,その挙動が重要となる.ヒ

ューマノイドロボットにおいて,実機での動作前にシミュ

レータを用いて動作の検証を行う.ヒューマノイドは人間

に近い身長,重量であるため,意図しない動作は大変危険

である.そのため,シミュレータにおけるロボットの挙動

の正確性はロボットの挙動を把握するうえで重要であり,

その動作を実機の動作に近づけるためにロボットの特性を

正確に計測する必要がある.ヒューマノイドにおいて,計

測すべき特性はリンク・ジョイントの質量,慣性テンソル,

重心位置,関節の粘弾性特性である.本研究ではヒューマ

ノイド自身の動作より力学特性を把握する力学同定を行う.

この方法は CAD などの設計情報を用いる方法やロボット

をリンク・ジョイント単位に分解し,直接,計測器を用い

て測定する方法に比べモデル化されていない部品の影響ま

で含めて把握することができる.本研究ではこれまで提案

されたベースリンク運動方程式を用いた力学同定手法をベ

ースとして HRP-2 の足裏ダンパについて,その特性を明ら

かにする.本研究の流れは以下である.まず,ベースリン

ク運動方程式を用いて同定した慣性パラメータを用いて関

節粘弾性を同定する手法について述べる.次にヒューマノ

イドロボット HRP-2 について目的とする足裏ダンパの関

節モデルおよび粘弾性モデルについて定義を行う.そして,

上記手法を用いて実ロボットについて粘弾性同定を行い,

同定結果について検証を行う.

2 力学同定

2 足歩行ロボットの運動方程式は移動システムとして立

式される.この運動方程式は空間自由度のベースリンク運

動方程式と関節数に依存する関節空間の方程式で構成され

る.力学同定においては一般的には関節空間の方程式を用

いる.しかしながら,この手法では各関節の関節トルクを

要求し,一般に関節トルクを正確に計測することが難しい

問題がある.そこで,ベースリンク運動方程式を用いた力

学同定手法が提案されている [6] [7] [8].これは,ベース

リンク運動方程式が関節トルクおよび関節粘弾性のダイナ

ミクスの影響を受けない特性を利用したものである.慣性

パラメータを誘起するために十分な運動を行えば,関節空

間での同定手法と同様に慣性パラメータを得ることができ

る [9] [10] [11].ここでは,このベースリンク運動方程式

を用いた力学同定手法について,その式展開および,関節

粘弾性同定のための拡張について述べる.2 足歩行ロボッ

トの運動方程式を慣性パラメータおよび関節パラメータ

(関節粘弾性)について線形化したものを式(1)に示す.

[YBI 0YJI YJJ

] [ϕI

ϕJ] = [

0𝜏

] + ∑ [KBk

KJk] 𝐹k

Nc

𝑘=1

(1)

ここで,

n : ロボットを構成するリンク数

NI : 慣性パラメータの総数.

NJ : 関節パラメータの総数.

YBI : 慣性パラメータをベースリンク発生力に変換する

行列 (リグレッサ行列).6×NI行列.

YJI : 慣性パラメータを関節トルクに変換する行列 (リ

グレッサ行列).n×NI行列.

YJJ : 関節パラメータを関節トルクに変換する行列 (リ

グレッサ行列).n×NJ行列.関節の粘弾性モデルに

より変化する.

ϕI : 慣性パラメータ.リンク質量,慣性テンソル,重

心位置で構成される.

𝜙 = [𝜙1 ⋯ 𝜙𝑛]T

𝜙𝑖 = [𝑚𝑖 𝑚𝑠𝑥𝑖 𝑚𝑠𝑦𝑖 𝑚𝑠𝑧𝑖 𝐼𝑥𝑥𝑖 𝐼𝑦𝑦𝑖 𝐼𝑧𝑧𝑖 𝐼𝑥𝑦𝑖 𝐼𝑦𝑧𝑖 𝐼𝑧𝑥𝑖]

ここで

𝑚𝑖 [kg] はリンク質量

𝑚𝑠𝑥𝑖 , 𝑚𝑠𝑦𝑖 , 𝑚𝑠𝑧𝑖 [kg ∙ m] はリンクの慣性 1 次モー

メント 𝐼𝑥𝑥𝑖 , 𝐼𝑦𝑦𝑖 , 𝐼𝑧𝑧𝑖 , 𝐼𝑥𝑦𝑖 , 𝐼𝑦𝑧𝑖 , 𝐼𝑧𝑥𝑖 [kg ∙ m2] は慣性

テンソル.NI×1 行列.

ϕJ : 関節パラメータ.弾性係数,粘性係数,摩擦係数

専攻外秘 B-22

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などで構成される.関節の粘弾性モデルにより変

化する.

𝜏 : 関節トルクベクトル.n×1 行列.

Nc : ロボットと環境との接触点数

KBk : 環境との接触力をベースリンク発生力に変換する

行列.6×6 行列.

KJk : 環境との接触力を関節トルクに変換する行列.n×6

行列.

𝐹k : 環境との接触力.6×1 行列.

式(1)はベースリンクに関する 6自由度の方程式および各

関節の方程式で構成される.これよりベースリンクに関す

る方程式には関節トルクの情報を含まないこと,および,

関節粘弾性がベースリンク運動方程式には影響を与えない

ことが確認できる.リグレッサ行列はロボットの運動から

計算される.各関節の角度,角速度,角加速度および重力

加速度から計算される.右辺については各関節の発生する

トルクおよび環境からの外力により計算される.

以上を用いて,リグレッサ行列をロボットの運動から求

め,反力を外力センサから得ることにより力学パラメータ

の同定を行う.この計算にはリグレッサの逆行列が必要に

なる.しかし,ここでリグレッサが正則行列になるとは限

らない.そのため,ここでは疑似逆行列 [12]を用いること

で逆行列計算を行う.なお,この計算は各パラメータに対

して最小二乗法を適用したことと等価である.以上より,

慣性パラメータを求める式は式(2)となる.なお,ここでリ

グレッサ行列の上付き添え字”+”は疑似逆行列を表す.

ϕI=YBI+ ∑ KBkFk

Nc

k=1

(2)

また,関節パラメータについては式(2)より求めた慣性パ

ラメータを用いて関節空間の方程式に代入することにより

式(3)を用いて求める.

ϕJ = YJJ+(𝜏 + ∑ KJK

Nc

k=1

𝐹k − YJIϕI) (3)

ここで,式(3)において関節トルクを計算に用いている.

これは,アクチュエータを備えた関節であればトルクを計

算に必要とするが,関節構造がダンパなどの受動関節のみ

によって構成される場合,関節トルクは 0 として計測は必

要ない.そのため,受動関節においても外力およびロボッ

トの運動が計測可能であれば同定を行うことは可能である.

受動関節のリグレッサ行列の定義について述べる.受動

関節のモデル化により定義が変わるが,ここでは一例とし

て,ばね―ダンパ-オフセット項で定義される関節パラメ

ータおよびリグレッサ行列を式(4), (5)に示す.ここで,オ

フセット項とは外力を計測する力センサのゼロ点の影響や

関節角度のゼロ点の影響を吸収するための要素である.こ

れは計算上,要求されるものであり関節特性自体には特に

影響しない.K はばねによる弾性項,C はダンパによる粘

性項,O はオフセット項を表している.また,リグレッサ

行列について q は関節角度,qp は関節角速度,1 は各要素

が数値 1 である行列を表している.

ϕJ = [KCO

] (4)

YJJ = [𝐪 𝐪𝐩 𝟏]

(5)

ここでϕJは 3×1 行列.YJJはサンプル数×3 行列となる.

3 研究対象

本研究では同定対象としてヒューマノイドロボット

HRP-2 を用いる.HRP-2 は人間協調・共存型ロボットシス

テムの研究開発 (HRP:Humanoid Robotics Project)の成果物

として製作されたヒューマノイドロボットである.HRP-2

の外観および各関節の配置を Fig. 1 に示す.腕部の自由度

は 7 自由度.脚部は 6 自由度.腰部は 2 自由度.頭部は 2

自由度.自由度の合計は 30 自由度である.ベースリンクは

腰に設定されている.なお,手先部分に自由度が設定され

ており,関節数としては 5 であるが,これらはパラレルリ

ンク構造となっており,実質的には 1 自由度である.本論

文では手先の自由度は運動に影響がないものとして,これ

を無視している.以上の自由度より HRP-2 は手先での細か

い動き以外は人間に近い動作が可能となっている.

HRP-2 は内界センサとして各関節にエンコーダ,胸部に

IMU(Inertial Measurement Unit:加速度センサおよびジャ

イロセンサで構成される姿勢推定装置)を有している.ま

た,外界センサとして,両手首,両足首に 6 軸力センサお

よび頭部に環境測定用のカメラを有している.足首部には

本研究で同定対象となる,歩行動作などでの接地時の衝撃

を吸収し,歩行を安定化するためのダンパが設置されてい

る.ダンパの外観を Fig. 2 に示す.HRP-2 のダンパは上部

から力センサを設置するセンサマウント,センサと足裏構

造体とをつなぐダンパおよびブッシュ,足裏構造体,足裏

全体を覆うゴムで構成されている.ダンパは閉リンク構造

をなしている.粘弾性同定を行う対象としてこれを見たと

き,足裏を覆うゴムについては十分に硬く,自重によって

もそれほど形状が変化しないためモデル化の際にはこれを

無視する.そのため,今回同定対象となるのは図中

の”DAMPER”および”ABSORBER BUSH”部分である.これ

らは弾性および粘性をもつ構造としてモデル化が可能であ

ると考えられる.

Fig. 1 Over view of the HRP-2

Fig. 2 Leg damper of the HRP-2

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4 粘弾性同定

4.1 ダンパのモデル化

ダンパの粘弾性同定を行うため,ダンパのモデル化を行

う.HRP-2 の足裏ダンパは前述のとおり閉リンク構造をし

ているが,実際にはその構造はブラックボックス化されて

おり,その構造を正確に模擬するのは容易ではない.その

ため,ここでは粘弾性同定のために計算の容易な構造とし

て足裏ダンパのモデル化を行う.本研究ではダンパのモデ

ルとして,ピッチ・ロール・Z 軸並進関節で構成される直

列構造とした [13] [14].このモデルはダンパの動作を表現

するうえでもっとも簡単なモデルである.なお,このモデ

ル化は HRP-2 のシミュレータモデルにおいても使用され

ている.ここでは,各リンクは慣性を持たない仮想リンク

としてモデル化している.このような仮定を置くことで粘

弾性同定の計算を簡略化することができる.

4.2 ダンパ変位の推定

ダンパの同定に必要なダンパ変位の推定方法を述べる.

HRP-2 のダンパは受動ダンパとして構成されており,その

変位を直接測定する装置は設置されていない.そのため,

他の計測装置を用いて間接的に測定を行う必要がある.本

研究では胸部に設置された IMU およびロボットの運動学

を用いて推定を行う.ダンパ角推定のための模式図を Fig. 3

に示す.ここで,HRP-2 は床面に両足を接地しており,床

面とパラレルリンクを構成しているとも捉えることができ

る.両足ともに床面と滑らずに接地している限り,この構

造は変化しない.ここでは,この接地条件を用いてダンパ

変位を推定する.IMU より得られた胸部姿勢および足裏,

すなわち床面との姿勢差分よりダンパ姿勢を推定する.こ

れよりダンパロール・ピッチ角を推定する.なお,ダンパ

の Z軸変位推定においては胸部の位置が直接測定できない

ため,チェーンルールだけでは計算することができない.

そのため,本論文では Z軸変位の推定については扱わない.

Fig. 3 Identification model of the HRP-2

4.3 粘弾性モデル

粘弾性同定を行う上で使用する粘弾性のモデルについて

述べる.HRP-2 の足裏ダンパは前述したようにブッシュと

ダンパで構成されている.これを簡単にモデル化すると,

弾性-粘性でモデル化することができる.ここで,問題と

なるのは乾性摩擦をモデルに含むかどうかである.なお,

乾性摩擦をモデル化する場合,前述のリグレッサ行列にお

いて,その要素として関節角速度の符号を追加すればよい.

本研究においては,摩擦の有無での同定結果への影響に

ついて予備調査を行い,摩擦項は同定モデルに含めないこ

とが適切だと判断した.これは,摩擦項の同手結果が他の

要素に対して値が小さく影響が少ないこと,得られた同定

結果について標準偏差が大きいためである.以上から関節

粘弾性に用いる同定式を式(6)に示す.

ϕJ = YJJ+Fext (6)

式(6)において慣性パラメータの項は省略した.これは,

HRP-2 はダンパの上に力センサが設置されており,慣性パ

ラメータの項を力センサによる測定に含むことができるた

めである.また,ここで,Fextは力センサから得られる値

であり,ここではロール軸もしくはピッチ軸トルクのデー

タ列を用いることに注意する.

4.4 同定動作

本論文で提案する粘弾性同定手法を用いるためには,前

述したようにロボットと床面との接触状態が一定に保たれ

る必要がある.そのため,接触状態を維持し,かつ同定に

必要なダンパ角を誘起する動作が必要になる.本研究で使

用する同定動作および同定結果を検証するための検証動作

について述べる.

4.4.1 Tilt 動作

Tilt 動作は同定に使用する動作である.Tilt1 から Tilt6 ま

で 6 つ作成した.これらの動作は共通してその場に静止し

た状態から胸部を前後左右に水平移動する.水平移動は振

幅 0.02 m,周期 0.1 Hz であり,前後 2 往復,左右に 2 往復

移動する.また,Tilt4,5,6 動作では同時にロボット鉛直方

向に振幅 0.07 m,周期 0.1 Hz で動作する.また,スクワッ

ト動作(Squat)も合わせて行った.スクワット動作は鉛直方

向に 0.1 m 移動し,周期は 0.1 Hzである.

水平移動を開始する初期状態を 3 種類設定した.初期状

態を Fig. 4 に示す.これらは動作開始時の足裏位置に変化

を与えている.初期状態としては,右足を右側に 0.05m 踏

み出す初期状態,もしくは右へ 0.05m,前方へ 0.1m 踏み出

す初期状態である.これら初期状態を 3 種類用いるのは初

期状態の違いによりダンパのロール・ピッチ軸変位に変化

が現れることを期待するためである.Tilt および Squat の動

作一覧を以下に示す.

Tilt1 は初期状態(a)で搖動

Tilt2 は初期状態(b)で搖動

Tilt3 は初期状態(c)で搖動

Tilt4 は初期状態(a)で上下運動しながら搖動

Tilt5 は初期状態(b)で上下運動しながら搖動

Tilt6 は初期状態(c)で上下運動しながら搖動

Squat は初期状態(a)で上下運動

Tilt1,2,3 および Squat 動作について ZMP 軌跡を Fig. 5 に

示す.これよりすべての動作において ZMP は支持多角形

内の中心付近に存在し,立位安定性を保っていることが確

認できる.また,搖動動作に合わせて十字状の ZMP 軌跡

を示していることが確認できる.

(a) Normal (b) Half right step (c) Half step

Fig. 4 Initial state of Tilt series motion

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(a) Tilt1 (b) Tilt2

(c) Tilt3 (d) Squat

Fig. 5 ZMP trajectories of Tilt and Squat motion (Black: trace of

the feet Blue: support polygon Red: the trajectory of the ZMP

during the movement)

4.4.2 Myrand 動作

Myrand 動作は同定結果を検証するための検証動作であ

る.Myrand4 と Myrand5 動作の 2 つ作成した.これらは腰

より上体の各関節にスイープ波を入力し動作する.上体,

特に腕部をランダムに振ることになるため,得られるダン

パ変位にもランダム性が見られることを期待している動作

である.動作生成に際して,関節角度および速度,トルク

の定格内に動作が収まるように配慮した.動作の様子を Fig.

6 に示す.また,ZMP 軌跡を Fig. 7 に示す.

Fig. 6 Motion of the Myrand4

(f) Myrand4 (g) Myrand5

Fig. 7 ZMP trajectory of Myrand series motion

4.5 同定結果

前節で述べた各同定動作について,そのダンパ角推定結

果および粘弾性同定結果を示す.

4.5.1 角度推定結果

Tilt1,3 動作についてダンパ角度の推定結果を Fig. 8,Fig.

9 に示す.これらの結果より,右足を一歩踏み出した Tilt3

動作においてピッチ・ロール軸ともに十分な変位を得られ

ることが確認できる.また,ピッチ軸とロール軸ではピッ

チ軸変位の方が大きいことも確認できる.これは,ヒュー

マノイドがその構造上,前後方向に動作しやすいためであ

る.これらの角度推定結果より,同定動作にはピッチ・ロ

ール軸ともに十分な変位を誘起できる Tilt3 動作,または,

同様の傾向を示す Tilt6 動作が適していると考えられる.

Fig. 8 Estimation results of damper angles of the Tilt1

Fig. 9 Estimation results of damper angles of the Tilt3

4.5.2 粘弾性同定結果

Tilt3 動作を用いて同定した HRP-2 の粘弾性特性を Table

1 に示す.ここで,粘弾性の同定において弾性,粘性およ

びオフセット項を求めた.表中の括弧内の数値は各同定結

果の相対標準偏差(百分率表記)である.この結果より,各

同定結果の相対標準偏差は十分に小さく,同定結果は信頼

できるものと考えられる.また,Fig. 10,Fig. 11 に Tilt 動

作および Myrand 動作より得られた同定結果を示す.ここ

で,図中の rand4,5 については Myrand4,5 を略記したもので

ある.相対標準偏差に注目すると,弾性およびオフセット

項の同定結果については,その数値が小さく精度よく同定

できていると考えられる.しかしながら,粘性項について

は動作によるが精度が良いとは言えない.これは,今回使

用した同定動作が足裏と床面との接地状態が一定であるこ

とを要求しており,速度を十分に誘起するだけの運動が実

現できなかったためである.粘性の同定に関しては,同定

動作の見直しが必要である.

Table 1 Identified parameters with Tilt3 motion

Axis K [Nm/rad] C [Nms/rad] O [Nm]

Right

ankle

Pitch 251(0.3%) 110.77(0.8%) 4.98(0.2%)

Roll 573(0.1%) 87.57(1.1%) 1.70(0.2%)

Left

ankle

Pitch 488(0.1%) 51.28(1.2%) 3.04(0.2%)

Roll 653(0.1%) 93.02(1.2%) -0.43(1.7%)

0.2 -0.0 -0.2-0.2

0

0.2

Y [m]

X [

m]

0.2 -0.0 -0.2-0.2

0

0.2

Y [m]X

[m

]

0.2 -0.0 -0.2-0.2

0

0.2

Y [m]

X [

m]

0.2 -0.0 -0.2-0.2

0

0.2

Y [m]

X [

m]

0.2 -0.0 -0.2-0.2

0

0.2

Y [m]

X [

m]

0.2 -0.0 -0.2-0.2

0

0.2

Y [m]

X [

m]

0 30 60 90-0.04

-0.02

0.00

0.02

0.04

Time [sec]Pitch

[ra

d]

0 30 60 90-0.04

-0.02

0.00

0.02

0.04

Time [sec]

Roll [

rad

]

0 30 60 90-0.04

-0.02

0.00

0.02

0.04

Time [sec]

Pitch [

rad]

0 30 60 90-0.04

-0.02

0.00

0.02

0.04

Time [sec]R

oll [

rad]

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Fig. 10 Identified parameters with all motion

(Blue: Right leg, Red: Left leg)

Fig. 11 Relative standard deviation [%] of identified

parameters with all motion (Blue: Right leg, Red: Left leg)

4.6 Cross validation

本節では前節での同定結果を踏まえて同定したパラメー

タの妥当性に関して検証を行う.

Cross validation とは同定結果を同定に用いた動作とは別

の動作を用いて,その動作を再現することである.ここで

は同定動作として Tilt3動作を用い,Tilt1動作および Squat,

Myrand4 動作での各軸の発生トルクを再現できるか検証す

る.検証結果を Fig. 12 から Fig. 14 に示す.また,cross

validationとトルク測定結果との誤差評価を Table 2に示す.

ここでは,同定結果を用いて同定動作自体を再現する

Direct validation の結果を併記している.これより,同定動

作自体の妥当性についても検証を行うことができる.これ

らの結果よりピッチ軸トルクについてはおおむね一致する

がロール軸についてはずれが見られることがわかる.特に

Myrand4 動作について大きなずれが見られる.これは

Myrand4 動作がロール軸角度および角速度を十分に誘起で

きていないためだと考えられる.そして,この原因として

はダンパ特性に摩擦状態に固着・滑り状態の遷移が存在す

るためだと考えられる.これは,一般的にヒステリシスと

よばれる非線形要素である.ヒステリシスにおける,状態

遷移の閾値として関節角度もしくは関節角速度を用いて,

状態遷移を考えることはできる.しかしながら,実際問題

としてこの遷移条件を決定することは困難であると考えら

れる.そのため,今回の同定対象は主に弾性―粘性―オフ

セット項に限定する.これより,ロール軸に関して軸の摩

擦状態が滑り状態に限って言えば同定結果は良好である.

5 結論

本章では関節粘弾性の同定手法を HRP-2 の足裏ダンパ

に適用し,以下の結果を得た.

HRP-2 の足裏ダンパをロール・ピッチ・Z 並進関節とし

てモデル化し,ロール・ピッチ軸変位を推定する方法を示

した.粘弾性モデルについて実験を通して検討し,

K-C-O(ばね―粘性-オフセット項)モデルが適しているこ

とを示した.同定動作について同定精度の評価を行い,関

節粘弾性の同定に適した動作はピッチ・ロール軸変位をと

もに十分励起するTilt3,6すなわち一歩踏み出した状態で上

体を揺らす動きが適していることを示した. Cross

validation を行い,得られた同定結果について,再現性を示

した.

Table 2 Results of cross validation error

Motion Axis Leg Mean of

error [Nm]

Standard

deviation of

error [Nm]

Condition

Number

Tilt1

Pitch Right 0.554 1.165 144

Left 0.258 0.526 146

Roll Right 0.269 0.382 1159

Left 0.571 0.680 546

Squat

Pitch Right 0.784 0.702 343

Left 0.626 0.617 379

Roll Right -0.337 0.135 1219

Left -0.040 0.282 524

Myrand4

Pitch Right -0.358 1.942 277

Left -0.022 0.981 303

Roll Right -1.897 1.375 1000

Left -2.401 1.780 796

Tilt1 Tilt2 Tilt3 Tilt4 Tilt5 Tilt6 Squat rand4 rand5 0

400

800

Pit

ch

Tilt1 Tilt2 Tilt3 Tilt4 Tilt5 Tilt6 Squat rand4 rand5 0

400

800

Roll

Tilt1 Tilt2 Tilt3 Tilt4 Tilt5 Tilt6 Squat rand4 rand5-150

0

150

Pit

ch

Tilt1 Tilt2 Tilt3 Tilt4 Tilt5 Tilt6 Squat rand4 rand5-150

0

150

Roll

Tilt1 Tilt2 Tilt3 Tilt4 Tilt5 Tilt6 Squat rand4 rand5-6

0

6

Roll

Tilt1 Tilt2 Tilt3 Tilt4 Tilt5 Tilt6 Squat rand4 rand5-6

0

6

Pit

ch

Tilt1 Tilt2 Tilt3 Tilt4 Tilt5 Tilt6 Squat rand4 rand5 0

1

2

Pit

ch

Tilt1 Tilt2 Tilt3 Tilt4 Tilt5 Tilt6 Squat rand4 rand5 0

1

2

Roll

Tilt1 Tilt2 Tilt3 Tilt4 Tilt5 Tilt6 Squat rand4 rand5 0

40

80

Pit

ch

Tilt1 Tilt2 Tilt3 Tilt4 Tilt5 Tilt6 Squat rand4 rand5 0

40

80

Roll

Tilt1 Tilt2 Tilt3 Tilt4 Tilt5 Tilt6 Squat rand4 rand5 0

2

4

Roll

Tilt1 Tilt2 Tilt3 Tilt4 Tilt5 Tilt6 Squat rand4 rand5 0

2

4

Pit

ch

O[N

m]

C

[Nm

s/ra

d]

K[N

m/r

ad

] O

C

K

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Fig. 12 Cross validation results of Tilt1

(Blue: reconstructed force (cross validation), Green:

reconstructed force (direct validation), Red: sensor )

Fig. 13 Cross validation results of Squat

(Blue: reconstructed force (cross validation), Green:

reconstructed force (direct validation), Red: sensor )

Fig. 14 Cross validation results of Myrand4

(Blue: reconstructed force (cross validation), Green:

reconstructed force (direct validation), Red: sensor )

謝辞

研究の助言および実験データを頂いた次の方々に感謝いた

します.吉田英一先生,Dr. A. Kheddar (CNRS- AIST JRL)

Dr. Thomas Moulard (JSPS Postdoc - AIST JRL),Dr. O. Ramos

Ponce,Dr. N. Mansard,Dr. O. Stasse (Humanoid Motion Group

(Gepetto), LAAS-CNRS).

参考文献

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http://www.honda.co.jp/ASIMO/. 2/5 閲覧

[2] “川田工業ロボティクス事業,”

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Proceedings of the Intelligent Robots and Systems (IROS),

pp. 3641-3647, 2 November 2007.

20 40 60 80-20

-10

0

10

20

Pit

ch

-Rig

ht [N

m]

20 40 60 80-20

-10

0

10

20

Pit

ch

-Left

[N

m]

20 40 60 80-20

-10

0

10

20

Time [sec]

Ro

ll-R

igh

t [N

m]

20 40 60 80-20

-10

0

10

20

Time [sec]

Ro

ll-L

eft

[N

m]

20 40 60 80 100-20

-10

0

10

20

Pit

ch

-Rig

ht [N

m]

20 40 60 80 100-20

-10

0

10

20

Pit

ch

-Left

[N

m]

20 40 60 80 100-20

-10

0

10

20

Time [sec]

Ro

ll-R

igh

t [N

m]

20 40 60 80 100-20

-10

0

10

20

Time [sec]

Ro

ll-L

eft

[N

m]

20 40 60 80 100 120-20

-10

0

10

20

Pit

ch

-Rig

ht [N

m]

20 40 60 80 100 120-20

-10

0

10

20

Pit

ch

-Left

[N

m]

20 40 60 80 100 120-20

-10

0

10

20

Time [sec]

Ro

ll-R

igh

t [N

m]

20 40 60 80 100 120-20

-10

0

10

20

Time [sec]

Ro

ll-L

eft

[N

m]