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ダイナミック・スペクトル・マッパー DSM_V2

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Page 1: ダイナミック・スペクトル・マッパー DSM V25 4. 画面の解説 「DSM V2」のウインドウは使いやすさを考え、大きく4 つのセクションに分割されています。

ダイナミック・スペクトル・マッパー DSM_V2

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1. イントロダクション

「Dynamic Spectrum Mapper V2(以降 DSM V2)」はオーディオ信号をスペクトル応答とダイナミ

クス応答の双方からコントロールするプラグインです。革新的なオーディオ処理をサウンド・エ

ンジニアに提供します。斬新なオーディオ処理とキャプチャー・アルゴリズムを用いてコンプレッ

サーやエンハンサー、またはボーカル/楽器の補正処理に似た効果を従来より素早く行うこと

が可能です。キャプチャー、修正、スペクトル特性への再適応という処理の流れによりパワフ

ルでクリエイティブな環境を提供します。レコーディング、ミキシング、マスタリングのあらゆる場

面で活用可能です。

お使いの「V2」は初期バージョンの DSMプラグインを強化した新バージョンです。

2. 動作の原理

「DSM V2」はマルチ・バンド・コンプレッサーと似たコンセプトのプラグインです。マルチ・バンド・

コンプレッサーに比べ、帯域の分割方法が異なり中高音域と高音域の解像度が大幅に向上し

ています。優れた高音域スペクトル解像度により補正を含む高度な機能を実現しています。

従来の帯域分割方式のダイナミクス処理とは異なりテープ・サチュレーションに似たソフトな高

音域成分を特徴とする新しいキャラクターを作ることが可能です。

信号はFFTを用いて複数のバンドに分割されます。柔軟なダイナミクス・ゲイン処理が各バンド

で施され出力段で再びミックスされます。

スレッショルド・カーブにより各バンドで異なるスレッショルド値による処理が行われます。これ

により時間と周波数の両方におけるダイナミクスの変化に対し信号が処理されることになりま

す。ダイナミクス・ゲイン処理は原音から解析された周波数情報(またはユーザーが指定した

設定)をパラメーターとして使用するため、以下にあげる斬新な機能を実現しています。

・聴感上の音量を上げ、ミックス内での存在感を増します。

・コンプレッション処理が難しかったソースでも、より正確に音楽的にコンプレッション処理が可

能です。

・全く新しい方法により原音のキャラクターを強調し特徴的なサウンドを生成します。

・質感の異なるトラック同士を均一化します。

・退屈なボーカル・トラックをかつてない程の正確さとスピードで改善します。

・ポスト・プロダクションにおいて台詞の聴き取りやすさが劇的に改善します。

・楽器のトラックをモデリングしキャラクターを強調することでクリエイティブで芸術的なサウンド

を生成します。

・レベル、周波数双方からのアプローチによるユニークなダイナミクス・エフェクトによりエキサ

イティングで斬新なエフェクトを作成します。

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3. システム要件

「DSM V2」は他の全ての「Plugin Alliance」プラグインと併用可能です。

「DSM V2」を含む全ての「Plugin Alliance」プラグインは Brainworx社独自のソフトウェア開発シ

ステム「bx_framework」で作成されており多くのホスト・アプリケーションに最適化されています。

システム要件と互換に関する詳細は国内代理店のウェブサイトをご参照下さい。

情報は随時更新されます。

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4. 画面の解説

「DSM V2」のウインドウは使いやすさを考え、大きく 4つのセクションに分割されています。

以下では各セクション毎に解説を行います。

4.1 グラフとセレクター

グラフ表示画面にはレベルと周波数が 2つのカーブで表示されます。

青いカーブ(リンク・モードでは赤)は入力信号のスペクトル(アクティブ・スペクトル)です。リア

ルタイムで更新されます。

黄色いカーブはキャプチャーされた(または手動で設定された)スレッショルド・スペクトルを表

します。このカーブにより各バンドのスレッショルド値が決定されます。

「Link」ボタンをオンにすると左右のチャンネルがリンクされステレオ・モードでの処理が行われ

ます。リンク・モードがオンのときは2本の青いカーブが 1本の赤いカーブに変化します。「Link」

ボタンをオフにしリンクが解除されると各チャンネルが再び青いカーブで表示されます。

黄色いスレッショルド・スペクトル・カーブは「Capture」ボタンを押すことで生成されます。「DSM

V2」は「Capture」ボタンが押される間に入力される信号のトランジェント・スペクトルを解析しま

す。「Capture」ボタンを長く押し続けると、その間のスペクトルの平均値がキャプチャーされま

す。

メモ:入力信号を正確に解析するには信号のレベルと周波数スペクトルの両方がキャプチャー

される必要があります。つまり黄色いスレッショルド・カーブの生成には十分なレベルの入力信

号が必要となります。入力信号が小さすぎるとコンプレッションのスレッショルド・レベルも小さく

なってしまうのでご注意ください。

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メモ:スレッショルド・スペクトルは「DSM V2」の他のパラメーターと同様にホスト・アプリケーショ

ンに保存されます。

プリセットを保存することで他のトラックやプロジェクトで使用することも可能です。

青い(リンク時は赤い)アクティブ・スペクトル・カーブが黄色いスレッショルド・カーブより高くな

る全ての箇所でコンプレッションとゲインの変更処理が行われます。アクティブ・スペクトル・カ

ーブがスレッショルド・カーブより低い箇所は処理は行われず原音が保たれます。

「Freeze Gains(フリーズ・ゲイン)」ボタンをオンにするとダイナミクス処理が中断され、その時

点のアクティブ・スペクトル・カーブを基に処理が行われます。以後ゲイン・コンプレッションは行

われずアクティブ・スペクトル・カーブも固定されるため、一般的な EQ に近い処理が行われま

す。

「Limit」ボタンをオンにするとリミッターが起動しオーバーロードをサンプル単位でカットすること

ができます。ラウドネスを損なうことなく信号のピークを抑えることが可能です。ハード・クリップ

を防ぎながら可能な限りのラウドネスを稼ぐことができます。

「16bit」ディザリング・ボタンは 24ビットのソースを 16ビットにディザリングするときに使用します。

「Process」ボタンは入力信号と出力信号の比較に使用します。

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4.2 マスター・セクション&ダイナミクス・コントロール

「Dynamics(ダイナミクス)」セクションには一般的なコンプレッサーと同様のパラメーターが搭載

されておりダイナミクス・ゲイン処理の設定を行います。

「Dry/Wet(ドライ/ウェット)」にて原音とプロセス音とのミックスの割合を設定できます。

「Gain Out(ゲイン・アウト)」は「DSM V2」の最終的な出力レベルを調整するマスター・フェーダ

ーです。

「Threshold(スレッショルド)」にてキャプチャーしたスペクトル・カーブに対するアクティブ・スレッ

ショルド・カーブのレベルを変更できます。このパラメーターを変更すると黄色いスレッショルド・

カーブが全体的に垂直移動します。スレッショルド値が 0dB の場合、アクティブ・スレッショルド

はキャプチャーされた(または手動で設定された)スペクトルのレベルと同一になります。スレッ

ショルド値を変更することでアクティブ・スレッショルドの全体的な調整が可能になります。レベ

ルの低いソースからキャプチャーしたスペクトル・カーブを適切なレベルまで持ち上げる際に使

用できます。

「Ratio(レシオ)」にて全帯域のコンプレッション・レシオを設定します。

「Gain(ゲイン)」にてゲイン・リダクションで変化したレベルを調整する全体のメイクアップ・ゲイ

ンを設定します。

「Attack(アタック)」と「Decay(ディケイ)」にて全帯域におけるコンプレッションのアタック・タイム

とディケイ・タイムを設定します。

「Knee(ニー)」にてソフト・ニーのカーブを設定します。信号がスレッショルドに達する前にコン

プレッションが開始される値をデシベル数で表します。

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4.3 Timing profile (タイミング・プロファイル)

ダイナミクス・セクションにあるパラメーターはスペクトルの全帯域に対

して適応される静的な値です。「Timing Profile(タイミング・プロファイ

ル)」設定を用いることで周波数レンジに関するパラメーターを動的に

変化させることができます。これによりソースに適した処理が行えるだ

けでなく効果的なエフェクトを作成することもできます。

「LF ATT(低音域アタック)」は信号の低音域成分のアタック・タイムを

徐々に増加する設定です。スペクトルにおける低音域のコンプレッショ

ンのアタックを遅くする効果があります。

「HF ATT(高音域アタック)」は信号の高音域成分のアタック・タイムを

徐々に減少させる設定です。スペクトルにおける高音域のコンプレッ

ションのアタックを短くする効果があります。

4.4 Parametric Threshold(パラメトリック・スレッショルド)

「Parametric Threshold(パラメトリック・スレッショルド)」セクションにて、キャプチャーしたスレッ

ショルド・スペクトル・カーブを変更できます。カーブを一から作成することも可能です。

「Thresh(スレッショルド)」と一般的な EQ と同様の「Freq」、「Q」設定によりスレッショルド・カー

ブを変更します。

メモ:この設定により入力信号そのものやサイドチェイン信号がイコライジングされる訳ではあ

りません。あくまでスレッショルド・カーブを設定するものであることにご注意ください。

パラメトリック・スレッショルドの設定は現在のスレッショルド・カーブに追加されます。パラメトリ

ック・スレッショルドとキャプチャーされたスレッショルド・カーブの設定は個別に保存されるため、

後でリコールした際にパラメトリック・スレッショルド設定だけを変更するとこも可能です。

「On/Off」ボタンは原音との比較に使用します。

メモ:パラメトリック・スレッショルド設定を用いて手動でスレッショルド・カーブを変更した場合、

変更が適応されたサウンドが出力されるまでにしばらく時間がかかります。「DSM V2」のコンプ

レッサー設定に対する変更が反映されるまでの時間はダイナミクス・コントロール・セクションの

静的な設定の変更が反映される時間に合わせて固定されていることが原因です。

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5. 「DSM V2」を使用する

「DSM V2」の基本構造を理解してしまえば使い方は分かりやすいはずです。以下に一般的な

用途における使い方の手順を解説します。

5.1 キャプチャー・スペクトルの設定

「DSM V2」は一般的なコンプレッサーと異なり原音のスペクトル特性を利用して処理を行いま

す。それゆえ最初にスペクトル・スレッショルドを設定する必要があります。

分かりやすい例としてゲイン・リミッティングを行う場面を想定してみましょう。「Threshold」を

-24dB に、「Gain」を+24dB に、「Ratio」を 100:1 に、「Attack」を約 10ms に「Release」を 30secs

に設定します。それ以外のパラメーターは全て最小に設定してください。これらの設定によりコ

ンプレッサーはキャプチャーした特性に合わせたゲイン・リミッターとして機能します。

「DSM V2」起動時のデフォルト設定はこれらのパラメーターが設定されています。

キャプチャー機能を用いると「DSM V2」は入力信号のスペクトルを解析します。入力するソース

の一番音量が大きい箇所をキャプチャーはすると良い結果が得られることが多いようです。

「DSM V2」の起動時の設定はキャプチャーしたスペクトル特性に合わせたゲイン・リミッター設

定です。「IN」ボタンを用いて処理のオン/オフを行い原音との比較を行うと、キャプチャーを行

った箇所では原音とエフェクト音の違いがほとんど無いことが分かるでしょう。

これでコンプレッションが正しく行われていることが確認できました。スレッショルド・スペクトル

をオーバーした箇所のダイナミック・レンジがカットされ、キャプチャーした信号のスペクトルとレ

ベルに合わせた処理が行われます。

ここで挙げた設定はスタート・ポイントとしてとても良い設定例です。

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5.2 コンプレッサーによるダイナミクス処理の設定

「Threshold」設定はキャプチャーしたスレッショルド・スペクトルの全体的なレベルを変更する際

に使用します。スレッショルド・スペクトルを高めに設定することで原音のレベルが大きい箇所

に対してのみ処理を行うことができます。スレッショルド・スペクトルのレベル変更が黄色いスペ

クトル・カーブに反映されることを確認してください。

「Ratio」は設定したダイナミック・レンジをオーバーした信号を原音と比べてどのくらい小さくす

るかを設定します。従来のコンプレッサーのレシオと同等の設定です。「Knee」はスレッショルド

前後のコンプレッションの挙動を緩やかにするための設定です。「Gain」は原音に対してレベル

変化が大きくなりすぎた場合に使用します。

「Attack」、「Decay」は従来のコンプレッサーと同様のパラメーターです。アタック・タイムを大き

くするとピークに対する反応が遅くなり、ディケイ・タイムを小さくするとコンプレッション処理が

終わった後に原音のレベルに復帰するまでの時間が早くなります。

「LF ATT」は低音域のコンプレッションにおけるアタック・タイムを遅くします。これにより、聴感

上の低音域のエネルギーが増します。

「HF ATT」は高音域のコンプレッションが原音に復帰する時間を早くします。これにより、高音

域のエネルギーが全体的に増し、「空気」感や「埋まった」雰囲気をサウンドに加えることができ

ます。

メモ:キャプチャー機能は信号の処理と同じアーキテクチャーで行われるため、タイミングの設

定によるコンプレッション・ゲインの変化はキャプチャーをし直すことで修正することができます。

タイミング設定をエフェクトとして使用する際に特に有効です。幅広い設定による様々な効果を

得ることができます。

広い帯域に対しコンプレッションが行えることでサウンドに重み付けが加わり素晴らしいコンプ

レッション効果を得ることができます。特に高音域のパーカッシブなサウンドを含むソースの場

合、従来のコンプレッサーに比べて低音域への影響が少なく、強めにコンプレッションをかけた

場合でも原音の特徴を保持してくれるのが特徴です。

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5.3 キャラクターの修正

入力ソースの周波数スペクトル・キャラクターを他のソースに適応するには、ソースをキャプチ

ャーし目的のソースを再生するだけの簡単な操作で行うことができます。

「4.1」で解説したスタート・アップ時の設定を再び行なって下さい。次にソースとなるトラックをキ

ャプチャーします。この状態で別のトラックを(キャプチャーせずに)「DSM V2」に通すと最初に

キャプチャーしたソースのスペクトルが入力信号に適応されます。

ダイナミクスの設定は従来のコンプレッサーと同様に行うことができます。

ダイナミクスのコンプレッションが不要な場合は「Freeze」ボタンをオンにすることでコンプレッシ

ョン処理を中止し、キャプチャーしたスペクトル・カーブが設定された EQ として使用することが

できます(フリーズ・ゲイン機能)。コンプレッションが中止された瞬間の不自然さを最小限に抑

えるにはアタック・タイムとリリース・タイムを遅めに設定すると良いでしょう。

革新的な技術であるスペクトル・スレッショルドは「 Parametric Threshold(パラメトリック・スレッ

ショルド)」セクションにて修正が可能です。また「pink」と「white」の周波数スペクトルのプリセッ

トを修正することにより、カーブを一から作成することも可能です。

5.4 ディエッサーとして使用する

ボーカル・トラックの歯擦音が発生していない箇所をキャプチャーし、適切なスレッショルド・レ

ベルを設定することにより「DSM V2」をボーカル・ディエッサーとして使用することができます。

設定方法は次の通りです。

「4.1」で解説したゲイン・リミッター設定に再び戻りましょう。「Threshold(スレッショルド)」と

「Gain(ゲイン)」を 0dBに設定し、入力信号と出力信号が同一になることを確認してください。

ボーカルの歯擦音が発生していない箇所をキャプチャーした後にボーカル・トラック全体を

「DSM V2」に通します。歯擦音の大きい箇所が再生されるとキャプチャーしたスレッショルド・ス

ペクトルに基づいた処理が行われ歯擦音が軽減します。

キャプチャーしたスペクトルはそのシンガー自身の特性であるためディエッサーとしての効果は

絶大です。必要であれば「Ratio(レシオ)」と「Knee(ニー)」を調整することでディエッシング効果

を強めたり、適切な結果を得るために「Threshold(スレッショルド)」を調整してください。

入力信号のスレッショルド・カーブから歯擦音の箇所を視覚的に特定し「Parametric Threshold

(パラメトリック・スレッショルド)」セクションを調整することでディエッサーとしての設定を行うこ

とも可能です。カーブの歯擦音に相当する飛び出た箇所に対して適切な処理の設定を行うこと

ができます。

歯擦音は高音域にのみ生じる現象であるため、多くの場合アタック・タイムとリリース・タイムは

早めに設定すると効果的です。

アタック・タイムを遅めにするとボーカルの歯擦音を残しつつ不要な長めのサ行の音声を抑え

ることができます。

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5.5 ボーカル・エンハンサーとして使用する

ボーカルを強調し聴き取りやすくするという意味では上で述べたディエッサーと同じコンセプト

です。ディエッサーと異なる点は、ボーカルのキャラクターとダイナミクスを意図的に修正する

点です。レベル、スペクトル特性、タイミング設定を適切に調整することで求めるサウンドを得

ることができます。

キャプチャーしたスペクトルをボーカル・トラック全体に適応することでボーカルのキャラクター

を確実に保持することができます。また他のボーカル・パートやボーカル・トラックをキャプチャ

ーすることで別テイクとの差を無くしたり別のトラックの特性に意図的に近づけたりという使い

方もできます。

キャプチャーしたスペクトルを用いるか「Parametric Threshold (パラメトリック・スレッショルド)」

セクションを設定することで、異なるキャラクターへ「モーフィング」させることが可能です。この

ときスレッショルド値は中間のレベルに、レシオとアタック・タイム、リリース・タイムは適切に設

定する必要があります。

レシオを低めに設定するとスレッショルド・スペクトルのキャラクターが強調され、ボーカルのレ

ベルは大きくなります。

アタック・タイムとリリース・タイムを調整することで原音とスレッショルド・スペクトルの特性との

混ざり具合を歯擦音を潰さずに調整できます。サスティーン・ボイスを和らげたい場合に有効で

す。

コンプレッションはシンガー自身のスペクトル情報に基いて処理されるため、レベルが急激に

上がったり不要な音声が生じた場合でもボーカルのキャラクターを極力保ちながら適切な処理

を行うことができます。

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5.6 ラウドネスを上げ存在感を強調する

「DSM V2」のリミッター機能(「Limit」ボタン)をレベル・コントロールおよびコンプレッション機能

と組み合わせることで、クリップ無しにラウドネスを稼ぎミックス内での存在感を増すことが可能

です。

これにはスレッショルド・スペクトル、アタック・タイム、リリース・タイムを適切に設定する必要が

あります。スレッショルドを全体的に上げるか、ゲインを数 dB上げることによりリミッター・セクシ

ョンでクリップすること無しに信号をドライブさせることができます。

処理するトラック自信のスレッショルド・スペクトルを使用するだけでなく、中音域が大きく盛り上

がったスレッショルド・スペクトル・カーブを用いてトラックのレベルが大きな箇所またはパーカッ

シブな成分が多く含まれる箇所に対して処理することで面白いサウンドを作ることができます。

中音域が大きく盛り上がったスレッショルド・スペクトル・カーブを作成し、全体的に高めのスレ

ッショルド設定で原音のダイナミック・レンジの上から数 dBに対して処理を行ってください。

この設定の一例として搭載される「louder」というプリセットを参考にすると良いでしょう。通常

「Parametric Threshold (パラメトリック・スレッショルド)」を用いてスレッショルド・スペクトルを

作成する場合のスタート・ポイントとしては「pink」が最適です。

メモ:素材にパーカッシブな成分が多く含まれる場合はアタック・タイムを遅めに設定し、トラン

ジェントを強調することでサウンドにパンチを与えることが可能です。

メモ:ラウドネスを最大限大きくしたい場合は「Knee(ニー)」を最小に設定しコンプレッションが

早めにかかるのを避けると良いでしょう。

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5.7 サウンド・エフェクト

「DSM V2」は革新的な技術により従来のコンプレッサーと異なる信号処理を行います。これを

応用することで幅広いサウンド・エフェクトを作ることが可能です。キャプチャーしたソースのス

ペクトルに基づいた処理を別の素材に対して行うことができるためキャプチャー・ソースと処理

するターゲットの組み合わせ次第で斬新なエフェクトを生み出すことが可能です。以下の設定

例を参考にしてください。

5.7.1 高音域成分をソフトにする

コンプレッションは多くの帯域で同時に行われるため、アタック・タイムとリリース・タイムをかな

り速く設定すると全体のレベル変化は比較的小さくなります。これは特に高音域で顕著に見ら

れるため、これを利用することで高音域を和らげる効果を得ることができます。

高音域成分をコンプレッションしたスレッショルド・スペクトルを用いることでテープ・サチュレー

ションに似た効果を得ることが可能です。搭載されるプリセット・カーブのいくつかはこの効果を

利用しています。

5.7.2 高音域成分を強調する

低めのスレッショルドとレシオを設定し、「HF REL」設定にて高音域のコンプレッションからの回

復を早めることで高音域の明瞭度が増しサウンドが前に出てきます。これは「オーラル・エンハ

ンサー」として知られる効果です。

EQ だけの処理と異なりコンプレッションによる高音域調整を行うため耳障りなサウンドになる

心配はありません。

アコースティックの弦楽器、木管楽器、フルートなどの高音域倍音に対して効果的です。

5.7.3 低音域を強調する

「LF ATT」を大きくすることで低音域成分のアタック・タイムを優先的に遅くすることができます。

これを用いることでサウンドをウォームにし、短いパーカッシブなレゾナンスが過度にカットされ

ることを防ぐことができます。

スレッショルド・スペクトルの低音域を十分に高いレベルでロール・オフさせることで低音域を適

度にブーストすることができます。ダイナミック・レンジの大きなソースのラウドネスを最大限の

稼ぎたい場合に低音域のオーバーロードを抑えることができます。

「DSM V2」の前段で立ち上げた EQでソースの一部の帯域を事前にブーストし「DSM V2」で高

品質な処理によりその帯域を再び抑えます。このような EQ の「アンドゥ」処理により、レベルが

低い歯擦音やウォームな質感などを強調することが可能です。

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6. 追加情報

6.1 ピーク・レベルとリミッター機能

「DSM V2」は周波数レスポンスを修正することで信号に処理を行うため、比較的大きなピーク・

レベルが発生する可能性があります。EQ のみの処理と同様、特定の帯域のレベルが変化す

るためオーバーロード対策としてリミッター機能を搭載しています。

「DSM 」はバージョン 1.3 以降、-1dBFS 以上のレベルのみをカットするリミッターが搭載されて

います。歪みの原因となるピーク以外のサウンドには影響を与えません。

バージョン 1.3 以降、入出力メーターは理論上の最大値として+6dBFS までを表示可能となりま

した。出力レベル・メーターはリミッターに入力される前の信号をモニター可能です。メーターの

黄色いセクションがリミッターが適応されるレベルとなります。

6.2 周波数帯域の相対的な分布

「DSM V2」はアクティブ周波数カーブの生成に FFTの技術を使用しています。FFTの性質上、

処理が有効な帯域の密度は低音域から高音域に向かってナチュラルに増加していく傾向にあ

るため、「DSM V2」は高音域の処理能力が特に高いのが特徴です。

これにより多くのソースにおいて重要な帯域である中高音域〜高音域を効果的に処理できる

だけでなく低音域をナチュラルに抑えることが可能です。つまり「DSM V2」は一部の帯域の処

理にのみ特化したエフェクト処理では到底実現できないサウンドを得ることができるのです。

6.3 レイテンシー

「DSM V2」の処理により生じるレイテンシーは多くの場合以下の通りです

44.1kHz と 48kHz:52サンプル

88.2kHz と 96kHz:100サンプル

176.4kHz と 192kHz:196サンプル

6.4 AAX プラグイン

「DSM V2」は AAX DSP フォーマットに対応予定です。ステレオ・バージョンは DSPパワーの問

題からサンプリング・レートが 48kHzでの使用に限定されます。

モノラル・バージョンの場合サンプリング・レートの制限はありません。ステレオ・チャンネルや

マルチ・チャンネルでマルチ・モノラル・モードで使用可能です。

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