マーケティングオートメーションの開発進捗に注目 · ム「webcas...

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アナリストレポート・プラットフォーム 1 売上高 百万円 前期比 営業利益 百万円 前期比 経常利益 百万円 前期比 当期純利益 百万円 前期比 EPS 2018/3 1,523 14.5 348 21.3 361 24.0 236 33.6 57.98 2019/3 (2018 年 5 月発表) 1,700 11.6 420 20.6 420 16.0 275 16.4 67.47 アナリスト予想 1,700 11.6 420 20.6 420 16.0 275 16.4 67.47 2020/3 アナリスト予想 1,920 12.9 510 21.4 510 21.4 330 20.0 80.97 エイジア (2352・東証 1 部) (株)QUICK 前田 俊明 自社開発の CRM(Customer Relationship Management)ソフトウェ アを中心としたアプリケーションの企画・開発・販売・保守などを手 掛ける。パッケージシステムを用 いることで低価格・短期間での 導入を可能としている。パッケ ージ導入版とクラウドサービス を提供する。CRM ソフトウェア は「WEBCAS(ウェブキャス)」ブ ランドでメール配信システム 「WEBCAS e-mail」など各種製品を展開する。 18/3 期の連結業績は売上高が前期比 14%増収、同 21%営業増益。主 力のアプリケーション事業は好採算かつ、継続的に収益貢献するスト ック型ビジネスのクラウドサービス(ネット経由型サービス)が順調 に推移した。開発体制強化の一環で従業員数を増やしてきたが、新卒 社員の戦力化が進んだことで中途採用の抑制につながり人件費や採用 費が効率化。営業利益率は同 1.3 ポイント上昇の 22.9%となった。製 品開発では、「WEBCAS シリーズ」のうち4 製品のメジャーバージョンア ップを期中に予定していた。3 製品は開発を終えたが、注力するマーケ ティングオートメーションは開発途中に新たな仕様を追加したため開 発完了の時期を 19/3 期上期に先送りした。 同社は 19/3 期の連結業績について前期比 12%増収、同 21%営業増 益を計画。アプリケーション事業はクラウドサービスを牽引役に伸び る見通し。コンサルティング事業はスポット大型制作案件の反動から デザインが減少するが、コンサルティングが伸長する見通し。QUICK 企 業価値研究所は会社計画が妥当な水準と判断し、同額の予想とする。 東京都品川区 美濃 和男 1995/4 322 百万円 (2018/3/31 現在) 2005/10/5 http://www.azia.jp/ 情報・通信業 マーケティングオートメーションの開発進捗に注目 ベーシックレポート 2018 年 6 月 25 日 主要指標 2018/6/21現在 1,608 円 年初来高値 1,971 円 (1/12) 年初来安値 1,296 円 (2/14) 発行済株式数 4,552,400 株 100 株 7,320 百万円 20.0 円 E P S 67.47 円 P B R 4.39 倍 メール配信システムなどを提供 18/3 期の営業利益率は 1.3 ポイント上昇の 22.9% 19/3 期はクラウドサービスの拡大で 21%営業増益の見通し

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Page 1: マーケティングオートメーションの開発進捗に注目 · ム「WEBCAS e-mail」を中核製品として、アンケートシステム「WEBCAS formulator」、メール共有システム「WEBCAS

アナリストレポート・プラットフォーム 1

業 績 動 向売上高

百万円

前期比

営業利益

百万円

前期比

経常利益

百万円

前期比

当期純利益

百万円

前期比

EPS

2018/3 実 績 1,523 14.5 348 21.3 361 24.0 236 33.6 57.98

2019/3

会 社 予 想(2018 年 5 月発表)

1,700 11.6 420 20.6 420 16.0 275 16.4 67.47

アナリスト予想 1,700 11.6 420 20.6 420 16.0 275 16.4 67.47

2020/3 アナリスト予想 1,920 12.9 510 21.4 510 21.4 330 20.0 80.97

エイジア (2352・東証 1部)

(株)QUICK

前田 俊明

自社開発の CRM(Customer Relationship Management)ソフトウェ

アを中心としたアプリケーションの企画・開発・販売・保守などを手

掛ける。パッケージシステムを用

いることで低価格・短期間での

導入を可能としている。パッケ

ージ導入版とクラウドサービス

を提供する。CRM ソフトウェア

は「WEBCAS(ウェブキャス)」ブ

ランドでメール配信システム

「WEBCAS e-mail」など各種製品を展開する。

18/3 期の連結業績は売上高が前期比 14%増収、同 21%営業増益。主

力のアプリケーション事業は好採算かつ、継続的に収益貢献するスト

ック型ビジネスのクラウドサービス(ネット経由型サービス)が順調

に推移した。開発体制強化の一環で従業員数を増やしてきたが、新卒

社員の戦力化が進んだことで中途採用の抑制につながり人件費や採用

費が効率化。営業利益率は同 1.3 ポイント上昇の 22.9%となった。製

品開発では、「WEBCAS シリーズ」のうち 4製品のメジャーバージョンア

ップを期中に予定していた。3製品は開発を終えたが、注力するマーケ

ティングオートメーションは開発途中に新たな仕様を追加したため開

発完了の時期を 19/3 期上期に先送りした。

同社は 19/3 期の連結業績について前期比 12%増収、同 21%営業増

益を計画。アプリケーション事業はクラウドサービスを牽引役に伸び

る見通し。コンサルティング事業はスポット大型制作案件の反動から

デザインが減少するが、コンサルティングが伸長する見通し。QUICK 企

業価値研究所は会社計画が妥当な水準と判断し、同額の予想とする。

会 社 概 要

所 在 地 東京都品川区

代 表 者 美濃 和男

設 立 年 月 1995/4

資 本 金 322 百万円

(2018/3/31 現在)

上 場 日 2005/10/5

U R L

http://www.azia.jp/

業 種 情報・通信業

マーケティングオートメーションの開発進捗に注目

ベ ー シ ッ ク レ ポ ー ト

2018 年 6 月 25 日

主 要 指 標 2018/6/21現在

株 価 1,608 円

年 初 来 高 値1,971 円

(1/12)

年 初 来 安 値1,296 円

(2/14)

発 行 済 株 式 数 4,552,400 株

売 買 単 位 100 株

時 価 総 額 7,320 百万円

予 想 配 当( 会 社 )

20.0 円

予 想 E P S( ア ナ リ ス ト )

67.47 円

実 績 P B R 4.39 倍

メール配信システムなどを提供

18/3 期の営業利益率は 1.3 ポイント上昇の 22.9%

19/3 期はクラウドサービスの拡大で 21%営業増益の見通し

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アナリストレポート・プラットフォーム 2

会社概要

主に大企業・中堅企業向けに eメールを活用した販売促進ソリューション

を提供する。社名のエイジアはアジアに由来。創業当初より日本だけでなく、

海外展開を視野に入れていた。

経営者 代表取締役 美濃 和男氏

1989 年、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。2005 年、同社に入社し取

締役。09 年、創業者である江藤晃氏に代わり代表取締役に就任、現在に至る。

経営方針

同社では、以下の経営方針を掲げ、社員・役員が遂行する全ての企業活動

の指針としている。

■経営理念

クライアントに満足を買ってもらいたい

当社では「クライアントの満足」を判断基準として、企業活動を推進してお

ります。

■ビジョン

「メールアプリケーションのエイジア」から

「eコマース売上 UP ソリューションを世界に提供するエイジア」へ

多くのお客様は「売上を向上させるため」に当社のシステムやサービスを導

入します。ですから当社が目指すのは、真に売上向上に資するソリューショ

ン。システムに加えて、システムの効果を最大化するコンサルティングサー

ビスも併せて提供し、さらにお客様に貢献したいと考えています。このトー

タルソリューションを、世界へ拡げてまいります。

■ミッション

私たちは、IT 技術とサービスで、人と企業の心の距離を縮めます

私たちの製品やサービスが目指すのは、企業と顧客の心の距離が今よりもっ

と近づいて、双方が幸せになれる世界です。当社が培った技術で、この世界

を実現できるよう尽力してまいります。

会 社 概 要

会 社 概 要

経 営 者

経 営 方 針

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アナリストレポート・プラットフォーム 3

沿革

1995 年 4 月 ホームページ制作を主たる事業として、資本金 1,000

万円で東京都品川区大井にエイジアを設立

1997 年 6 月 ウェブサイトの受託開発を中心とした事業を開始

2001 年 10 月 メール配信システム「WEBCAS e-mail」を発売

2002 年 2 月 アンケートシステム「WEBCAS formulator」を発売

6月 「WEBCAS」ASP 事業を開始

12 月 「WEBCAS connector」「WEBCAS manager」を発売

2005 年 10 月 東京証券取引所マザーズに株式を上場

2006 年 10 月 メール共有管理システム「WEBCAS mailcenter」を発

2007 年 10 月 CMS「WEBCAS creator」を発売

2013 年 6 月 スマートフォン向けフォームデザイン最適化ツール

「SFO for WEBCAS」を発売

10 月 FUCA を連結子会社化

12 月 通知メール販促システム「WEBCAS marketing

receipt」を発売

2014 年 6 月 データベース作成システム「WEBCAS DB creator」

を発売

電子レシートメール送信サービス「レシートメール」

を発売

2015 年 5 月 SMS 配信システム「WEBCAS SMS」を発売

CRM システム「WEBCAS CRM」を発売

11 月 セグメント抽出型 LINE メッセージ配信システム

「WEBCAS taLk」を発売

12 月 DM 印刷・配送サービス「WEBCAS DM」を発売

2016 年 1 月 MARVELOUS INTERNATIONAL SDN.BHD.を連結子会社

化(17年6月、AZIA MARKETING MALAYSIA SDN.BHD.

に社名変更)

6月 マーケティングオートメーション「WEBCAS Auto

Relations」を発売

人工知能テキストマイニング「WEBCAS Sense

Analyzer」を発売

8月 上場市場を東証 2 部に変更

2017 年 12 月 上場市場を東証 1 部に変更

(出所)17/3 期有価証券報告書、会社ホームページ

沿 革

会 社 概 要

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アナリストレポート・プラットフォーム 4

直近のコーポレートアクション

2017 年 12 月に上場市場を東証 2部から東証 1部に変更

●大株主

(出所)株主総会招集通知書(18 年 3月 31 日現在)

株主所有株式数

(株)

所有比率

(%)

1 日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口) 216,800 5.22

2 SBI 証券 162,900 3.92

3 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 129,200 3.11

4 美濃 和男 128,500 3.09

5 西田 徹 118,400 2.85

6 北村 秀一 94,900 2.28

7日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口

5)75,600 1.82

8日本マスタートラスト信託銀行(株式付与

ESOP 信託口・75960 口)72,972 1.75

9 システムインテグレータ 65,600 1.58

10BNYM SA/NV FOR BNYM FOR BNY GCM

CLIENT ACCOUNTS M LSCB RD56,300 1.35

大 株 主

会 社 概 要

コーポレートアクション

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アナリストレポート・プラットフォーム 5

事業の内容

自社開発の CRM(Customer Relationship Management:顧客の購入・利

用履歴や苦情・意見など企業と顧客とのあらゆる接点での情報を統合管理す

る経営手法)ソフトウェアを中心としたアプリケーションの企画・開発・販

売・保守を手掛ける。CRM ソフトウェアは「WEBCAS(ウェブキャス)」ブラン

ドで各種製品をシリーズ展開する。顧客毎にシステムを受託開発するのでは

なく、パッケージシステムを用いることで低価格・短期間での導入を実現。

パッケージ製品では対応していない機能要件に対しても顧客の要望に応じ

て個別カスタマイズを施すことができる柔軟な設計となっている。

提供形態は、サーバー導入型と月額課金をベースとするクラウドサービス

型の 2種類あり、サーバー導入型「WEBCAS」は保守サービスを提供する。

「WEBCAS」シリーズを活用したメールマーケティングのプランニングおよ

びメールコンテンツの企画・制作、「WEBCAS」シリーズの付加機能開発、ホ

ームページ・ウェブコンテンツの企画・制作、各種システムの受託開発・保

守なども提供する。

売上構成

アプリケーション事業を中核に、コンサルティング事業、オーダーメイド

開発事業の 3事業部門。

アプリケーション事業は「WEBCAS」シリーズの企画・開発などを手掛ける。

連結売上高の 8割を占める主力事業(18/3 期)。コンサルティング事業は、

「WEBCAS」を効果的に活用したインターネットマーケティングのプランニン

グ・コンサルティング、メールコンテンツの企画・制作、アンケート設計や

顧客分析などを中心に展開する。オーダーメイド開発事業は、「WEBCAS」と

関係する業務システムやホームページなどを個別にオーダーメイドで開発

する。

事 業 の 内 容

売 上 構 成

事 業 概 要

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アナリストレポート・プラットフォーム 6

製品・サービスの種類

「WEBCAS」シリーズは用途に応じて各種展開しており、メール配信システ

ム「WEBCAS e-mail」を中核製品として、アンケートシステム「WEBCAS

formulator」、メール共有システム「WEBCAS mailcenter」、マーケティング

オートメーション「WEBCAS Auto Relations」などがある(表 1参照)。

「WEBCAS Auto Relations」は中核製品に育てるべく、改良版の開発に経

営資源を投入し、本格展開を目指している。

「WEBCAS e-mail」は毎時 300 万通を実現する高速メール生成機能やマー

ケティング成果を高めるための外部システム連携に加え、様々なデバイスへ

の対応を進めており、大規模運用から複雑な運用まで柔軟に対応できる。同

業他社の製品に比べ高性能を強みとし、特に大量の顧客データを扱う通信販

売業界との相性が良く業界大手向けでは高シェアを誇る。

「WEBCAS formulator」は、パソコン、スマートフォン、携帯電話に対応

したウェブアンケート、資料請求・問合せ、キャンペーンやイベント応募な

どのフォーム入力ページを作成できるウェブアンケートシステム。

「WEBCAS mailcenter」は、企業の問い合わせ窓口に届く大量のメールや

フォームからの問い合わせをサーバー上で一元管理することで、複数の部署

や担当者がグループウェアとして共有・管理することができるシステム。こ

れにより返信漏れ・二重対応を防ぎながら効率的に返信対応することが可能

となる。

80.7%

17.9%

1.4%図1.事業別売上構成比(18/3期)

アプリケーション

コンサルティング

オーダーメイド開発

(出所)決算短信より当研究所作成

製品・サービスの種類

事 業 概 要

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アナリストレポート・プラットフォーム 7

製品・サービスの特徴

「WEBCAS」シリーズは様々なオペレーティングシステム(OS)・データベ

ース・Web サーバー・Mail サーバーに対応しているため、導入の際にクライ

アントの使用環境に左右されにくい。顧客情報などの複数のデータベースと

も自由に接続・連携ができ、それぞれのデータベースから同一の条件で顧客

情報を抽出することができる。

「WEBCAS」シリーズは導入企業の予算や用途、運用環境などに応じ、自社

環境に導入できるパッケージ導入版からサーバー管理が不要なクラウドサ

ービスまで、幅広い提供形式・料金プランを用意する。EC(electronic

commerce:電子商取引)運営企業やメーカー、生命保険、金融機関、官公庁

など大手企業を中心に 4000 社以上の採用実績がある。処理能力の高い高性

能な製品を特徴としていることから、主要取引先には性能要求が高い傾向が

ある大手企業がずらりと並ぶ。

クラウドサービスはインターネット経由でシステムを利用するのに対し、

パッケージ導入版は顧客の環境にシステムを構築・運用(オンプレミス型)

する違いがある。提供対象別では、クラウドサービス(SaaS 型)は主に大

手企業から中堅企業、クラウドサービス型(ASP 型)は主に中堅企業から中

小企業、パッケージ導入版は主に大手企業を中心に中堅企業までとなってい

る。

表1.WEBCASラインナップメッセージを届ける

メール配信システム

e-mail

マーケティングオートメーション

Auto Relations

LINE配信システム

taLk

SMS配信システム

SMSDM印刷・郵送システム

DM

声を集める・理解する

アンケート・フォーム作成システム

formulator

問い合わせに対応する

問い合わせメール共有システム

mailcenter

会員登録の仕組みをつくる

顧客管理システム

CRM

(出所)会社ホームページより当研究所作成

問い合わせメールを複数人で一元管理できるメール

共有

会員を集めて管理し、メルマガやアンケートで

コミュニケーションができるお手軽CRM

PC・モバイル対応、毎時300万通の高速配信がで

きるOne to One メール配信システム

行動に基づきメールマーケティングを自動化する

マーケティングオートメーション

LINE ビジネスコネクトと連携してパーソナライズ

LINEメッセージ配信を実現

モバイルにショートメッセージを配信

DMハガキをネットで注文

PC・モバイル対応アンケート・フォーム作成システム

製品・サービスの特徴

事 業 概 要

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アナリストレポート・プラットフォーム 8

クラウドサービスはパッケージ導入版より低価格での導入が可能。共有ア

プリケーションを利用することで安価かつ迅速に導入可能な ASP 型と、カス

タマイズにも対応する SaaS 型を提供する。パッケージ導入版は導入費用が

高くなるが、個人情報をクラウド環境に預けられない、クラウド環境ではセ

キュリティ要件が満たせないといった顧客に向く。自社環境にシステムを構

築するため個人情報などを厳重に管理し易い。

メール配信システム「WEBCAS e-mail」の場合、表 2 のような提供形式・

価格体系を用意している。

営業活動

営業活動は、同社の営業部門であるセールスマーケティンググループが営

業および販売を担う。こうした直接販売のほか、一部で販売協力契約を締結

したパートナー企業(販売代理店)を通じた間接販売も行う。直接販売では

多くの場合、商談への入り口となる Web 経由での問い合わせから始まる。大

まかな流れは図 2の通り。

表2.「WEBCAS e-mail」の提供形式・価格体系パッケージ導入版

ASP型 SaaS型 導入型

概要

「WEBCAS」の各機能を、インターネット

を通じて、顧客が利用期間に応じてレン

タルできるサービス。顧客企業が共有

でアプリケーションを利用するため、安

価かつ迅速に利用できる。

「WEBCAS」の各機能を、インターネットを通

じて、顧客が利用期間に応じてレンタルでき

るサービス。顧客専用のアプリケーションを

用意することができるため、大規模運用や

他システムとの連携、カスタマイズが可能。

「WEBCAS」をパッケージとして提供する

形式。自社サーバーに導入して運用す

ることができるため、自社環境で個人情

報を厳重に管理したい場合などに向く。

初期費用:3万円~ 初期費用:50万円~ ライセンス費用:200万円~

月額費用:1万円~ 月額費用:10万円~ 保守費用:別途

利用開始まで2営業日

契約期間は最短1カ月

(出所)会社ホームページ、有価証券報告書より当研究所作成

自社の既存システムとフレキシブルに

連携可能

VPN等で自社のデータベースとも接続可能 自社のセキュリティポリシーに対応可能

形式クラウドサービス(月額課金)

費用

特徴など

クラウド環境ながら必要な機能をカスタマイ

ズで拡張可能

事 業 概 要

営 業 活 動

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アナリストレポート・プラットフォーム 9

図2.システム(「WEBCASシリーズ」)を提供するまでの流れ

(出所)各種資料、ヒアリングなどより当研究所作成

エイジア顧客(EC業界、アパレル、

化粧品、保険会社など)

⑤構築・提供

①主にWeb経由で問い合わせ

④発注

②資料・情報などを提供

③要件提示、提案内容の検討を経て導入シ

ステムを決定。複数社の場合は各社の提案

内容を比較・検討

①必要に応じて複数の事業者に資

料請求・問い合わせ

②提供された資料などを比較・検討

③自社の要件を事業者に提示。複

数社が提案に応じた場合はコンペ

④正式に発注。独自要件の追加な

どカスタマイズが必要な場合は、開

発・構築作業も含めて依頼

⑥「クラウドサービス」は初期費用・

月額費用、「パッケージ導入版」は

ライセンス費用・保守費用を支払う

①商談上有効と判断した問い合

わせを「有効リード」としてカウント。

見込み顧客の数を示す指標

③顧客の要件などに則して提案

⑤「クラウドサービス」のうち、

「ASP型」はサービス提供まで最

短2営業日。「SaaS型」や「パッ

ケージ導入版」は開発・構築作業

の期間(数週間~数カ月)が加わ

⑥月額費用はシステムの利用が

続く限り、継続的な(ストック)収益

となる ⑥初期費用・月額費用

事 業 概 要

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アナリストレポート・プラットフォーム 10

同社の主力製品であるメール配信システムは取り扱う事業者が国内に数

多くある。同社の製品よりも低価格で提供する事業者も多いが、同社では低

価格路線から距離を置いている。同社の製品は大規模配信などが可能な高性

能を特徴としており、信頼性や機能性、柔軟性などシステム性能に対する要

求水準が高い大手企業~中堅企業を中心に据えている。中小企業も対象とし

ているものの、高機能を前面に押し出すことで、価格競争に巻き込まれない

ようにしている。高機能・高価格帯の市場に対応した製品を供給可能な業者

は限られる模様で、実質的な競合先はそれほど多くないようだ。

システムの所有から利用というクラウドサービスの流れが強まる中で、提

供方法をクラウドサービスのみに絞る同業他社も増えているようで、オンプ

レミス型を希望する顧客は必然的に同社製品を採用するケースが増えてい

るようだ。同社は顧客要望への対応があり、残存者利益が享受できるパッケ

ージ導入版の提供を続けつつ、クラウドサービスを重点強化している。

同社と直接競合する上場企業は限られることから、ここでは同社と事業領

域が近い類似企業と財務比較をしてみたい。対象企業は、クラウド型の情報

資産プラットフォームを提供するパイプド HD(3919)、Web サイト最適化技

術等を用いたサービスを展開するショーケース・ティービー(3909)、EC サ

イト構築・ネット通販総合支援の E ストアー(4304)、インターネットメデ

ィアや広告主の広告収益や効果を最大化させるシステムやマーケティング

オートメーションプラットフォームを提供するジーニー(6562)の 4社。会

社によって決算月が異なるが、実績はすべて直近本決算ベースとする(表 3

参照)。

競 合 分 析

高性能を武器に低

価格製品と一線を

画す

エイジアと類似企

業との財務比較

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アナリストレポート・プラットフォーム 11

各社の直近本決算の業績を見ると、事業規模ではジーニーが大きく、次い

でパイプド HD、Eストアー、ショーケース・ティービー、エイジアの順。一

方、営業利益率は好採算のクラウドサービスを牽引役にエイジアが 20%超

で群を抜き、パイプド HDが 15%、Eストアーが 11%、ショーケース・ティ

ービーが 10%で続く。ジーニーは事業規模に比べ利益水準が低く、売上高

はエイジアの 10 倍近くあるが、営業利益は 1.5 倍にとどまる。

各社の今期の業績計画をみると、エイジア、ショーケース・ティービー、

ジーニーは増収、営業増益を見込む。パイプド HD は人材採用と育成など人

材関連の先行投資費用から、Eストアーも積極投資を計画していることから、

ともに営業減益の計画で営業利益率も 1桁に落ちる見通し。

表3.類似企業の財務比較 単位:百万円

18/3期 19/3期 18/2期 19/2期 17/12期 18/12期 18/3期 19/3期 18/3期 19/3期売上高 1,523 1,700 5,143 5,800 1,859 2,500 5,044 5,540 14,380 20,054

営業利益 348 420 750 500 191 500 554 531 527 729 (営業利益率) 22.9% 24.7% 14.6% 8.6% 10.3% 20.0% 11.0% 9.6% 3.7% 3.6%

経常利益 361 420 749 490 163 500 582 531 467 712純利益 236 275 457 300 12 300 411 367 63 505総資産 1,851 - 5,107 - 2,577 - 3,979 - 5,541 -

現預金 1,022 - 1,916 - 1,141 - 2,778 - 2,541 -有利子負債 0 - 1,652 - 1,080 - 0 - 349 -ネットキャッシュ 1,022 - 264 - 61 - 2,778 - 2,192 -

自己資本 1,492 - 2,368 - 1,210 - 1,462 - 3,203 -自己資本比率 80.6% - 46.4% - 46.9% - 36.7% - 57.8% -

ROE 17.6% - 20.6% - 1.0% - 31.2% - 2.6% -財務レバレッジ 1.2 - 2.3 - 2.2 - 2.8 - 2.0 -総資産回転率 0.9 - 1.0 - 0.7 - 1.4 - 3.0 -

売上高純利益率 15.5% 16.2% 8.9% 5.2% 0.6% 12.0% 8.1% 6.6% 0.4% 2.5%営業CF 349 - 647 - 41 - 691 - 291 - (営業CFマージン) 22.9% - 12.6% - 2.2% - 13.7% - 2.0% -

投資CF -54 - -461 - -563 - -39 - -329 -財務CF -51 - -413 - 875 - -124 - 1,392 -

FCF 295 - 186 - -522 - 652 - -38 -(注1)ショーケース・ティービーは17/12期から連結決算を開始したため、ROEは期末自己資本で計算(注2)Eストアーは単独決算

(注3)各社の業績は、直近実績→今期の会社計画(注4)CF:キャッシュフロー、FCF:フリーCF=営業CF-投資CF、営業CFマージン=営業CF÷売上高、

    ネットキャッシュ=現預金-有利子負債、ROE:自己資本利益率(分解式は表3補足を参照)(出所)各社決算短信より当研究所作成

エイジア パイプドHDショーケース・

ティービーEストアー ジーニー

2352 3919 3909 4304 6562

表3補足.ROEの3分解式

財務 総資産 売上高

レバレッジ(倍) 回転率(回) 純利益率(%)

純利益 総資産 売上高 純利益

自己資本 自己資本 総資産 売上高

ROE = × ×

= × ×

競 合 分 析

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アナリストレポート・プラットフォーム 12

財務面をみると、エイジアの財務体質の良さが際立つ。自己資本比率やネ

ットキャッシュに注目すると、自己資本比率はエイジアが 81%と高く、20

ポイント以上離れてジーニー、さらにショーケース・ティービー、パイプド

HD、E ストアーが続く。エイジア、E ストアーは有利子負債がなく、残る 3

社も現預金が有利子負債を上回り、ネットキャッシュはプラス(いわゆる実

質無借金)といずれも財務体質は健全とみなせる。なお Eストアーは現預金

が多く、有利子負債もないにもかかわらず自己資本比率が低い。これは多額

の預り金(流動負債)の存在が大きい。預り金の大部分は顧客の決済代行に

係る回収金。同社が一時的に保管しているに過ぎず、自由に投資にまわせる

余剰資金ではない。これを補正(現預金と預り金を同額差し引く)した実質

でみれば、ネットキャッシュは見かけほど多くないが、自己資本比率はかな

り高いと考えられる。

次に、株主の持分である株主資本(≒自己資本)を使って効率的に利益を

稼いだかをみるために、ROE(自己資本利益率)を比較する。ROE は 8%を上

回ることが目安とされる。エイジアは高収益を背景に 18%とかなり高いが、

E ストアーとパイプド HD はこれを上回り、各々30%、20%に達する。ショ

ーケース・ティービー、ジーニーは ROE が 8%を下回る。この違いを読み解

くには ROE を 3分解すると理解しやすい。

エイジアと比較すると、パイプド HD と E ストアーは収益性を示す売上高

純利益率が半分強にとどまる半面、負債活用の程度を示す財務レバレッジが

高い。E ストアーは効率性を示す総資産回転率も大きく上回る。なお、E ス

トアーは預り金を補正すると、財務レバレッジが下がり、総資産回転率がよ

り一層高まる。財務レバレッジは高め過ぎると財務健全性を損なう(財務レ

バレッジの逆数が自己資本比率)が、パイプド HDは自己資本比率が 50%弱

あり、ネットキャッシュもプラス。財務健全性を損なうことなく有利子負債

をうまく活用していると考えてよさそうだ。ショーケース・ティービー、ジ

ーニーの ROE が低いのは、特別損失の計上による純利益率の低下が主因。シ

ョーケース・ティービーは総資産回転率もやや低い。ただ、期末自己資本を

ベースに今期の会社計画から ROE を試算すると、売上高純利益率の向上に伴

って 2社ともに改善する見通し。

以上からエイジアの特徴として、事業規模こそ類似企業より小さいが、ク

ラウドサービスの着実な拡大で営業利益率は 20%を上回り、収益性はかな

り高い。強固な財務基盤にも優位性がある。財務レバレッジは低いが、財務

健全性とは表裏一体の関係にあり、ネガティブに捉える必要はなかろう。た

だ、類似企業に比べ総資産回転率が低い(5社中 4番目)ことから、現預金

競 合 分 析

各社ともにネット

キャッシュはプラス

エイジアは規模こ

そ小さいが収益性

が高く、強固な財

務基盤に優位性

エイジアの ROE は

10%台後半

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アナリストレポート・プラットフォーム 13

など資産の有効活用には工夫の余地がありそうだ。活用手段として、M&A(合

併・買収)を含めた投資拡大、配当性向の引き上げ(19/3 期の会社計画 30%)

や自社株買いによる株主還元の強化などが考えられる。とはいえ、ROE は

10%台後半とかなり高く、既に効率的な事業運営がなされていると評価でき

る。

競 合 分 析

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アナリストレポート・プラットフォーム 14

業績解説

18/3 期の連結業績は売上高が前期比 14%増の 15.2 億円、営業利益は同

21%増の 3.5 億円となり、会社計画(売上高 14.9 億円、営業利益 3.4 億円)

も上回った。主力のアプリケーション事業は好採算かつ、継続的に収益貢献

するストック型ビジネスのクラウドサービス(ネット経由型サービス)が順

調に推移し(図 3参照)、コンサルティング事業もメールコンテンツ企画・

制作を主としたコンサルティングサービスの大幅拡大などから伸長した。利

益面では、開発体制強化の一環で従業員数を増やしてきたが、新卒社員の戦

力化が進んだことで中途採用の抑制につながり人件費や採用費が効率化。広

告宣伝施策の見直しによる費用低減も利益を押し上げた。営業利益率は

22.9%となり、同 1.3 ポイント上昇した。従業員数は前期末比で同社単体の

8名増を含め全体で 18名増の 123 名体制(前期末比 17%増)となっている

(図 4参照)。

表4.業績動向 単位:百万円

17/3期

通期

A B B/A B-A

売上高 1,330 1,523 14.5% 193

事 アプリケーション 1,125 1,228 9.2% 104

業 コンサルティング 182 272 49.2% 90

別 オーダーメイド開発 22 21 -3.6% -1

営業利益 287 348 21.3% 61

営業利益率 21.6% 22.9% - -

経常利益 291 361 24.0% 70

純利益 176 236 33.6% 59

(出所)決算短信などより当研究所作成

18/3期

通期

0

10

20

30

40

50

0

200

400

600

800

1,000

12/3期 13/3期 14/3期 15/3期 16/3期 17/3期 18/3期

(%)(百万円)

(出所)決算説明資料より当研究所作成

図3.クラウドサービス売上高の推移

金額-左軸

前期比-右軸

業 績

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アナリストレポート・プラットフォーム 15

中核のアプリケーション事業は売上高が前期比 9%増の 12.3 億円。クラ

ウドサービスの強化と製品開発の強化に取り組んでおり、クラウドサービス

は同 12%増加。顧客専用環境を用意する高価格帯の「SaaS 型」、同一環境を

複数の顧客が共同利用する「ASP 型」ともに伸びた。ライセンス販売は好調

だった前期並みを確保し、ライセンス保守は増収となった。「WEBCAS シリー

ズ」の累計の導入企業数は 17年 8月末時点で 4000 社を突破、18年 3月末

時点では一段と顧客数が拡大しているようだ。

コンサルティング事業は売上高が同 49%増の 2.7 億円。コンサルティン

グサービスが同 36%増となり、Web 制作を主としたデザインサービスは同

70%増加した。子会社 FUCA は、前期より推進してきた Web の戦略提案から

入る営業施策、体制構築が奏功し、FUCA 単体で同 50%増収だった。オーダ

ーメイド開発事業は売上高が同 4%減の 21百万円。優先順位の高いアプリ

ケーション事業での製品開発に社内エンジニアを優先投入する当初の方針

の通り、新規の受注活動を積極的には展開せず、利益率の高い案件のみ手掛

けた。

「WEBCAS シリーズ」のうち 4製品のメジャーバージョンアップを期中に

予定していた。メール配信「WEBCAS e-mail」、顧客管理システム「WEBCAS

CRM」など 3製品は計画通りに開発を終えたが、マーケティングオートメー

ション「WEBCAS Auto Relations」は開発途中に新たな仕様を追加したた

め Ver3 の開発の完了時期を 19/3 期上期に先送りした。「WEBCAS Auto

Relations」は Ver1、2が発売済みだが、本格展開には Ver3 の投入が不可欠

な模様。Ver3 の開発完了後にはクロスチャネル対応開発(Ver4)に着手す

る方針。e-mail、LINE、DM(ダイレクトメール)を連携させワンプラットフ

ォームで統合管理できる製品になるとしている。

46 49 58 62 69 74 82

0

40

80

120

160

12/3期末 13/3期末 14/3期末 15/3期末 16/3期末 17/3期末 18/3期末

(人)

(注)従業員、子会社従業員は契約・派遣社員を含む

(出所)会社資料より当研究所作成。計画は会社

図4.役職員数の推移

子会社従業員

子会社役員

従業員

役員

8896

74

5653

105

123

アプリケーション事

業は 9%増収

製品開発の取り組

み。3製品をバージ

ョンアップ

業 績

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アナリストレポート・プラットフォーム 16

「WEBCAS Auto Relations」は、EC 事業者が管理する様々なデータを取

り込み、顧客のアクションや属性などに応じた One to One(1 対 1)メー

ルを適切なタイミングに自動配信するマーケティングオートメーションツ

ール(システムイメージは図 5参照)。米国を中心にマーケティング活動を

自動化するマーケティングオートメーションが拡大中で、日本国内も導入企

業が増えるなど関心が高まっている。

「WEBCAS シリーズ」の製品開発に並行して、既存の大手顧客 3社と AIの

マーケティング活用に関する実証実験を進めている。最初の顧客との実証実

験では配信時間の最適化を目的とした AI の活用に取り組んだ結果、配信時

間を最適化する効果を確認した。AI アルゴリズム自体の改善を更に推し進

め、現在 2社目との実証実験準備に着手している。

会社計画

同社は 17 年 5 月に公表した 3カ年(18/3 期~20/3 期)の中期経営計画を

推進している。進捗状況を踏まえ 2年目の 19/3 期は計画を若干見直した。

売上高は 17.0 億円(前期比 12%増)、営業利益は 4.2 億円(同 21%増)を

計画。売上高はアプリケーション事業とオーダーメイド開発事業を引き下げ

る一方、コンサルティング事業を引き上げ、全体で増額。同社単体での労働

生産性が向上したことから、営業利益も引き上げた。前期比では、アプリケ

ーション事業は同 14%増の 14.0 億円を計画。クラウドサービスを牽引役に

伸びる見通し。ライセンス保守はクラウド移行が進む想定でやや減少、ライ

センス販売は増加する見通し。コンサルティング事業は同 5%増の 2.9 億円。

デザインはスポット大型制作案件の反動から減少す

業 績

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アナリストレポート・プラットフォーム 17

るが、コンサルティングが 2桁伸長する見通し。オーダーメイド開発事業は

アプリケーション事業での製品開発にエンジニアを優先投入し、保守案件も

縮小する計画。なお、中計最終年度の 20/3 期は計画値を見直していない。

当研究所予想

当研究所では、19/3 期の連結業績について会社計画は妥当と判断してい

る。全体として従来の当研究所予想をほぼ据え置く。事業別では小幅見直し、

会社計画とほぼ同額とする。コンサルティング事業は子会社 FUCA が営業施

策、体制構築などの成果で想定以上に伸びていることから、売上高を増額し、

オーダーメイド開発事業は同社の縮小方針を踏まえ減額した。アプリケーシ

ョン事業はマーケティングオートメーション「WEBCAS Auto Relations」

の新バージョンの発売が想定より遅れたことなどから売上高を小幅減額し

た。ただ、一部製品の開発時期の遅れを除けば、新製品・サービスを相次い

で投入しているほか、AI活用による実証実験など今後に繋がる取り組みも

継続している。2桁増収は確保できよう。

中計での成長加速に向け人員増強を重ね人件費負担は増えているが、戦力

化が進み開発体制は充実している。アプリケーション事業に比べ収益性が劣

るオーダーメイド開発事業を戦略的に縮小するなど、メリハリの利いた経営

資源の配分も評価できる。営業利益率は引き続き 20%を上回る見通し。

当研究所は 20/3 期の連結業績について、売上高 19.2 億円(前期比 13%

増)、営業利益 5.1 億円(同 21%増)を予想する。「WEBCAS Auto Relations」

の本格展開が遅れたことから、アプリケーション事業は従来の想定をやや下

回る見通し。クラウドサービスはストック型ビジネスモデルであることから、

発売時期の後ずれは翌 20/3 期にも影響があろう。ただ、前期比では継続的

表5.業績見通し 単位:百万円

変更

前期比 なし 前期比

売上高 1,650 1,700 1,700 1,700 11.6% 1,870 1,940 1,920 12.9%

アプリケーション 1,418 1,400 1,430 1,400 13.9% 1,650 1,600 14.3%

コンサルティング 208 285 246 287 5.4% 266 307 7.0%

オーダーメイド開発 24 13 24 13 -40.5% 24 13 0.0%

営業利益 400 420 420 420 20.6% 502 510 510 21.4%

営業利益率 24.2% 24.7% 24.7% 24.7% - 26.8% 26.3% 26.6% -

経常利益 402 420 423 420 16.0% 505 513 510 21.4%

純利益 260 275 275 275 16.4% 325 330 330 20.0%

(注1)19/3期の会社予想は開示資料の関係で事業別を合算しても全体に一致しない

(注2)20/3期の会社予想は中計公表当初(17年5月)の計画値

(出所)決算短信などより当研究所作成

19/3期予想 20/3期予想

会社 当研究所 会社 当研究所

旧 → 新 旧 → 新 旧 → 新

19/3 期は 12%

増収、21%営業増

益を予想

業 績

20/3 期は 13%

増収、21%営業増

益を予想

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アナリストレポート・プラットフォーム 18

な収益に繋がるクラウドサービスが拡大しつつあり、着実な売上拡大が見込

める。「WEBCAS Auto Relations」の成否次第では上乗せ余地もあるとみる。

業 績

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アナリストレポート・プラットフォーム 19

2016/3 2017/3 2018/32019/3 予

(アナリスト)

株 価 推 移

株価(年間高値) 円 1350.0 1660.0 1971.0 -

株価(年間安値) 円 439.5 785.5 911.0 -

月間平均出来高 百株 27,540 23,090 13,290 -

業 績 推 移

売 上 高 百万円 1,145 1,330 1,523 1,700

営 業 利 益 百万円 239 287 348 420

経 常 利 益 百万円 242 291 361 420

当 期 純 利 益 百万円 161 176 236 275

E P S 円 40.52 43.04 57.98 67.47

R O E % 15.6 15.1 17.6 17.3

貸 借 対 照 表

主 要 項 目

流 動 資 産 合 計 百万円 1,134 1,136 1,370 -

固 定 資 産 合 計 百万円 271 368 480 -

資 産 合 計 百万円 1,405 1,505 1,851 -

流 動 負 債 合 計 百万円 238 269 315 -

固 定 負 債 合 計 百万円 12 29 36 -

負 債 合 計 百万円 250 299 352 -

株 主 資 本 合 計 百万円 1,128 1,190 1,375 -

純 資 産 合 計 百万円 1,155 1,206 1,498 -

キャッシュフ

ロ ー 計 算 書

主 要 項 目

営業活動による CF 百万円 185 239 349 -

投資活動による CF 百万円 84 -167 -54 -

財務活動による CF 百万円 20 -122 -51 -

現金及び現金同等

物 の 期 末 残 高百万円 930 878 1,122 -

(注)17 年 3月 29 日を権利落ち日として、株式分割(1株→2株)を実施。株価、月間平均出来高、EPS はこれを遡及修正

(出所)㈱QUICK上記チャート図の一部又は全部を、方法の如何を問わず、また、有償・無償に関わらず第三者に配布してはいけません。

上記チャート図に過誤等がある場合でも㈱QUICK社及び大阪証券取引所は一切責任を負いません。

上記チャート図の複製、改変、第三者への再配布を一切行ってはいけません。

(出所)㈱QUICK

上記チャート図の一部又は全部を、方法の如何を問わず、また、有償・無償に関わらず第三者に配布してはいけません。

上記チャート図に過誤等がある場合でも㈱QUICK 社及び東京証券取引所は一切責任を負いません。

上記チャート図の複製、改変、第三者への再配布を一切行ってはいけません。

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アナリストレポート・プラットフォーム 20

事業に関するリスク

※競合他社について

自社開発アプリケーション「WEBCAS」シリーズが属する CRM 市場は、ベン

チャー企業を中心に多数の企業が参入している分散型市場となっている。し

かし、資金力、ブランド力を有する大手企業の参入や全く新しいコンセプト

および技術を活用した画期的なシステムを開発した競合他社が出現した場

合には、同社の事業に影響を及ぼす可能性がある。

※法的規制について

電子メールによる一方的な商業広告の送りつけ(いわゆる迷惑メール)の

問題に対応するため、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」が

制定されている。主要製品「WEBCAS e-mail」に制約を受ける事実はないが、

悪徳業者が迷惑メール等に利用できないよう、「WEBCAS e-mail」が接続す

るメールサーバーには技術的制限をかけている。これにより、悪徳業者がメ

ールサーバーを意図的に変更し、制限を避けてメール配信をすることができ

ない仕組みになっている。

販売先に対しては、「メール配信を行う際は、顧客からメールを受け取る

許可を必ず得ること」を確認または指導してから販売しているほか、迷惑メ

ールの配信業者への販売防止のため、納入先を調査している。しかし、

「WEBCAS e-mail」が悪徳業者に利用され、信用の失墜が生じた場合には、

同社の業績に影響を及ぼす可能性がある。

※納期遅延等

アプリケーション事業では、自社製品「WEBCAS」のカスタマイズを行って

おり、サービスソリューション事業でも顧客からの個別仕様に基づきウェブ

サイトや企業業務システムの開発、コンテンツ制作などを行う。その際、開

発案件で想定外の工数増加や納期遅延等が生じた場合には、同社の業績に影

響を及ぼす可能性がある。

リ ス ク 分 析

事 業 に

関 す る リ ス ク

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アナリストレポート・プラットフォーム 21

デ ィ ス ク レ ー マ ー

1.本レポートは、株式会社東京証券取引所(以下「東証」といいます。)が実施する「アナリストレポー

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2.本レポートは、本レポートの対象となる企業が、その作成費用を支払うことを約束することにより作

成されたものであり、その作成費用は、当該企業が東証に支払った金額すべてが、東証から株式会社当

研究所(以下「レポート作成会社」といいます。)に支払われています。

3.本レポートは、東証によるレビューや承認を受けておりません(ただし、東証が文面上から明らかに

誤りがある場合や適当でない場合にレポート作成会社に対して指摘を行うことを妨げるものではありま

せん)。

4.レポート作成会社及び担当アナリストには、この資料に記載された企業との間に本レポートに表示さ

れる重大な利益相反以外の重大な利益相反の関係はありません。

5.本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を唯一の目的として作成されたもので、有価証券の

取引及びその他の取引の勧誘又は誘引を目的とするものではありません。有価証券の取引には、相場変

動その他の要因により、損失が生じるおそれがあります。また、本レポートの対象となる企業は、投資

の知識・経験、財産の状況及び投資目的が異なるすべての投資者の方々に、投資対象として、一律に適

合するとは限りません。銘柄の選択、投資判断の最終決定は、投資者ご自身の判断でなされるようにお

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