バッテリーパックと構成部品開発動向 - fourin...jaguar...
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第 4 章 世界自動車産業の電動車用バッテリーパック開発動向
170 Copyright 2019 FOURIN Inc. All Rights Reserved.
▽バッテリーパック
完成車メーカー各社が電動車の普及を進める中、駆動用電池の 新の技術動向をみると、航続距離の拡大と同
時に、高価なリチウムイオン電池のコスト削減を目指した技術開発が活発化している。航続距離 300km 以上の大容量
BEV の場合、電池搭載容量で 50kWh 以上となるモデルの投入が増える。しかし、リチウムイオン電池のセルが高額で
あり BEV の車両価格の 3 分の 1 を電池が占めるとされる。米国、欧州、中国などの主要市場で環境規制に対応する
ため BEV や PHEV などの拡販が求められる中、高コストの一因となっている電池で高効率化と低コスト化に向けた技
術開発が続いている。
バッテリーパックと構成部品開発動向
【バッテリーパックをめぐる技術的トレンド】
(FOURIN 作成)
BEV/PHEV/HEV/MHEV/(FCEV)向けバッテリーパック(モジュール、セル)
安全性強化
⇒強度向上:バッテリー及び
車体室内保護
⇒衝突等からの保護
<バッテリーパックの技術開発トレンド>
◆トータルアーキテクチャー化
⇒シャシ一体型バッテリーパック
◆バッテリーパックの軽量化
⇒樹脂、アルミ素材の採用拡大
◆バッテリーセル、モジュールの 適配置による体積及び高さの低減
⇒高さを低くしたバッテリーセルやモジュールの開発
<バッテリーパックをめぐる課題(特に BEV 向け)>
◆バッテリーセルのコスト低下が遅い
⇒2025 年までに 100 ドル/kWh 以下に低下しない可能性、全固体バッテリー等次世代バッテリーの商業化遅延
◆バッテリーエネルギー密度・容量向上遅延
⇒従来のリチウムイオンバッテリーの正極材、負極材の改善等でエネルギー密度や容量向上を図るが、開発できても、商業化が遅延
◆バッテリーパックのコスト高
⇒バッテリーパック技術をめぐる完成車・部品メーカーの技術競争、パッケージ技術は大手 Tier 0.5 / Tier1 を中心にほぼ独占
熱マネージメント
⇒バッテリー効率性向上
:航続距離延長、安全確保
コモディティ化
⇒オープンプラットフォーム、
多数モデルへの適用視野
システムのコンパクト化
⇒バッテリーパックを搭載す
る車体の設計自由化向上
自動車メーカー/部品メーカー、そしてバッテリーセルメーカー
が、バッテリーパックの製造・供給をめぐって競争中
バッテリーセル、パッケージ素材、冷却素材/システムといった
構成部品の価格低下も必要条件
第4章 バッテリーパックと構成部品開発動向
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リチウムイオン電池価格は、2008 年に平均セル価格で 1,000 ドル/kWh だったのが、2016 年には同 200 ドル/kWh
水準に下がっている。しかし、エネルギー効率については、重量・エネルギー密度で 150Wh/kg と改善の余地が残
る。こうした中、各社はリチウムイオン電池のエネルギー密度の改善に向けて、極材料の変更や改善、添加剤の使用
などによる性能向上を図る。また、効率や安全性を向上させた全固体電池の開発も進んでおり、トヨタなど完成車メー
カーを中心に 2020 年以降の商業化計画を明確化している。
極材料の改善では、韓国化学技術院(GIST)と米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の共同研究チームが 2017
年 1 月に負極にリチウム/シリコン、正極に硫黄/セレンを用いた新型リチウムイオン電池を開発。これにより容量を 4
倍、寿命は 2 倍に増やした。このほか、Samsung SDI は 2021 年をめどに従来のリチウムイオン電池に比べエネルギー
密度を 2 倍に増やした電池を量産化する(2017 年 1 月発表)。また、2017 年 5 月に FDK と富士通研究所は共同研
【バッテリーパックと車両アンダーボディをめぐる技術トレンド】
サスペンションは電子式エアスプリングを採用
振
動
振
動
バッテリーパック(容量)に合わせてフレキシブルに対応
バッテリーパックと車体を一体型し、車体剛性を強化→安全性の確保狙い(衝突などから保護)
機電一体ユニットを前後に配置し、前後 50:50 の重量配分を実現⇒車両振動は横ではなく縦へ変化
NVH
<課題> <ソリューション>
熱マネージメント
エアロダイナミックス
軽量化
アンダーボディ
・樹脂化を主とした軽量化
・異種合金(マルチマテリアル)の採用拡大
・車体保護性能を向上させるための設計
・多様な走行状況への対応(耐久性等)
パッケージ(一体)化
・多目的
・低コスト
・追加部材省略
・一体化(モジュール化)
Jaguar i-PACE のプラットフォーム(左)、Mercedes-Benz EQC のプラットフォーム(右)
(各社広報資料、各種報道等より FOURIN 作成)
i-PACE と EQC プラットフォームの共通点は、バッテリーパックを車体に一体化したことによる車体剛性を確保した点。前後 50:50 配分も実現