インテリジェント・ビジネス・ クラウドの実現 ポテンシャル...

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インテリジェント・ビジネス・ クラウドの実現 ポテンシャルを最大限に 活用する

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インテリジェント・ビジネス・クラウドの実現ポテンシャルを最大限に 活用する

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デジタル・ビジネスの実現に向けて、クラウド・テクノロジーを導入する企業がますます増加しています。しかし、これらの企業の大半は、クラウド・テクノロジーから必要なものすべて(あるいは得られるものすべて)をまだ引き出すことができていません。その一方で先駆的な企業は、クラウドのポテンシャルを解き放つために不可欠な、経営モデルとプロセスの見直しを強力に推し進めています。このような中で誕生した次世代のハイブリッド・クラウド、すなわち「インテリジェント・ビジネス・クラウド」はやがて、複数のクラウドとベンダーを横断した運用環境を企業に提供し、真にデジタルな未来へとつながる確かな道筋を示すことになるでしょう。

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この問いに対し、今日の多くの IT リーダーおよびビジネス・リーダーは明快な回答をためらうでしょう。しかし、Airbnb(エアビーアンドビー)の共同創設者であるネイサン・ブレチャージクなら、創業 7 年の同社のビジネスがクラウドなしでは成り立たないことを明言してくれるはずです。Airbnb は、俊敏かつ即応性に富んだクラウド・インフラを活用することによって、不動産所有者および旅行者の巨大コミュニティにおいてメンバー同士を結び付け、世界中のユーザーに宿泊場所を提供しています 1。

こうした熱意は、IT 系のスタートアップ企業に特有のものではありません。米国の農業機械メーカー、ディア・アンド・カンパニーの経営幹部に同じ問いを投げかければ、「わが社はもはや単なる機械メーカーではない、世界各国の農業生産性の拡大をサポートする精密農業ソリューションのパイオニアである」と答えるはずです。同社の刺激的なビジョンとケイパビリティの広がりを支えているのが、クラウドなのです。

こうした企業の例は、スリルに満ちた新たな競争市場の一端にすぎません。小さなスタートアップ企業であれ、100 年の歴史を誇る大企業であれ、先駆的な企業はいずれもインテリジェント・デジタル・ビジネスの構築に向かって邁進しています。デジタ

ル化の進んだ世界で競争に打ち勝つためには、適応性に富んだアプリケーションから、コンテキストリッチなデータ、柔軟な IT インフラに至るまでのすべての能力を結び付ける次世代のハイブリッド・クラウドが不可欠です。アクセンチュアでは、この次世代クラウドを「インテリジェント・ビジネス・クラウド」と名づけました。先駆的な企業は、この新たなクラウド環境の構築にすでに着手しています。

たとえばダイムラーのような大企業も、フェイスブックのような若い企業も、先駆者たちはビジネス・プロセスと情報とデバイスをスマートにつなぐことによって、顧客体験やビジネス・インタラクションの価値向上に努めています。先駆者たちは、効果的にエンドツーエンドの成果を達成するために不可欠なあらゆる要素を相互に結び付け、関連付けることがいかに重要かについて、正しく理解しているのです。すべてがサービスになる現代においては、サービスとしてのテクノロジーこそが、これまで以上に迅速に、かつてない規模で機能し、戦略を実践するための鍵となるのです。

「より迅速に対応し、より迅速にイノベーションを起こし、業界の内外で競争のハードルを引き上げる。」これこそが先駆者たちのビジョンなのです。

このビジョンは、クラウドの目指すゴールでもあります。自社のクラウド利用について明言を避けているその他のビジネス・リーダーや IT リーダーは現在、どのような状況にあるのでしょうか――実は彼らの多くは今なお、クラウドから得られるすべてのものを引き出せていないのです。

クラウド・コンピューティングから、 必要なものすべてを引き出せていますか。

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真のデジタル・ビジネスを展開できる企業には、クラウド化がもたらす 3 つの要素の一部または全部が備わっているとアクセンチュアでは考えています。3 つの要素とは、「スピードと機動性」

「統合力」「あらゆるモノをサービスとして消費する力」です。企業はこれらの要素の有無を踏まえて、未来に向けた投資領域と投資方法を判断する必要があります。

あらゆるモノをサービスとして消費する

先進的な IT リーダーは、ほぼあらゆるモノがサービスとして提供/消費される時代を見据えています。アクセンチュアが実施している『ハイパフォーマンス IT 調査』でも、優れた IT 部門が「クラウド・ファースト」なアプローチで新しいシステム・アーキテクチャを構築していることが明らかになりました。具体的には、ワークロードをクラウドに移行し、テクノロジーをサービスとして購入しているのです。

このような視点のスタートラインとなるのが、「小さな資本」に基づく財務構造への転換です。この新たな財務構造が、IT に大きな資本を投じて大規模に管理するアプローチからの脱却を加速させ、小さな運用予算を柔軟に活用しながら堅実に管理する組織へのシフトを可能にするのです。このシフトは、スピードと機動性にも大きな影響を及ぼします。クラウドならわずか数分でできるプロビジョニングに、時間を費やし、資本を投じる必要はもはやありません。またこのような視点を奨励する IT リーダーは、クラウドが可能にするプラットフォーム・ベースのビジネス・モデルにおいて、他社のサービスや IT 製品を利用すれば予算

クラウドが可能にするデジタル・ビジネス

「クラウドならわずか数分でできるプロビジョニングに、時間を費やし、資本を投じる必要はもはやありません」

スピードと機動性

成功企業は、スピードと機動性を区別して捉えていません。この 2 つは、いわばコインの表と裏なのです。成功企業にとって、クラウドは単なるコスト削減策ではなく、機動性を向上するための手段となります。グローバルビジネスを展開するある医薬品大手の CIO(最高情報責任者)も「ITをコスト面でしか捉えていない企業は、最大のチャンスを逃し、大きな価値を生み出すために必要なリスクを受け入れることもできないだろう」と指摘しています。優れた CIO は今、ソフトウェアの開発を開発者と運用者が協力して行う手法(DevOps)に迅速にシフトすることで、開発のスピードを高め、開発業務と IT オペレーションの一層の連携を推し進めています。彼らが重視するのは、ソフトウェアの絶え間ないリリースです。この手法は、リリースのタイミングを慎重に見計らい、その後はアップデートやパッチ配布を繰り返す従来のアプローチとは大きく異なります。優れた CIO は「すぐに成功するか、あっという間に失敗するか」という理念をビジネス・チームと共有し、クラウドが可能にするラピッド・エクスペリメンテーション(敏速な実験)を奨励しているのです。

優れた CIO はまた、自動化がスピードと機動性の鍵を握ると考えています。CIO とそのチームが、各種の業務に何らかのパターンがないか、ルーチン化して反復できるプロセスがないか常に探しているのはそのためです。プロセスの自動化だけではなく、パターンの探査と検知にもソフトウェアを有効利用できれば、プロセスの信頼性を高めながら、さらに安く速く実践することが可能になります。

統合力

先駆的な CIO は、クラウド・テクノロジーの導入によってかつてない方法と規模でインテグレーションを実現できることを知っています。なぜなら、クラウドはあらゆるモノをより巧みに、より迅速に、より広範につなぐことを可能にするからです。クラウドを導入することで企業は、何と(他社を含む)どのようにつながるべきかを見極めることができます。それだけではありません。クラウドは、多対多の容易な接続を可能にします。デジタルな企業はクラウドのコンセプトを基盤とすることで、強力な統合戦略を策定し、まったく新しいビジネス・モデルを創出できるのです。

このレベルの統合力を備えた企業は、単に製品やサービスを売る組織から、測定可能な「成果を売る」組織への転換を果たし、「成果を売る経済(Outcome Economy)」を創出できるようになります(5 ページのコラム「農業従事者がクラウドを愛するべき新たな理由」を参照)。優れたマーケターはかねてから、単なる製品ではなくソリューションを売ることの重要性を指摘してきました。たとえば、ハーバード大学のマーケティング学教授を務めるセオドア・レビットは数十年前の時点で、学生に対して「消費者が求めているのは 4 分の 1 インチのドリルではない、4 分の 1 インチの穴だ」と説いています。にもかかわらず、「成果を売る経済」はなかなか実現されずにいました。消費者が求めるものを継続的に深く理解するための効果的な方法がなかったからです。しかし現在、企業はデジタル・ツールを手に入れ、それらを活用することで消費者を理解し、消費者にとっての成果が何であるかを学べるようになりました。

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すべてのビジネスは デジタル・ビジネスに

ビッグデータ・アナリティクス

すべてがサービスに

インテリジェント・アプリケーション状況やコンテキストを予測して適応

インテリジェント・データ承認の有無やビジネスプロセス・ルールに応じて保護/公開

インテリジェント・インフラ自動化されたダイナミックで適応性と予測性に富んだインフラ――オンデマンドでいつでもサービスとして入手/利用できる

BYOD

インテリジェン

ト・デジタル・ビジネス

クラウドモビリティ

ソーシャル

コラボレーション

インテリジェント・ビジネス・プロセス

農業従事者がクラウドを愛するべき新たな 理由化学企業大手のモンサントは現在、エンドツーエンドの知識を収集・管理することによって、農業従事者により確実な成果を提供している。モンサントは数年前に農業用インテリジェント・ソフトウェア・メーカーのクライメート・コーポレーションを買収した。同社のソフトウェアは精密農業センサー & システムとの統合利用により、現在と未来の天候や土壌、収穫に関する深い知見をユーザーに提供することができる。モンサントは同社の買収により、農業従事者のリスク軽減と収穫高の向上をサポートしながら、収益拡大に向けた実用的な知見を提供することが可能になった。クライメートのソフトウェアは、地理空間および土壌組成データをトラクターに取り付けたセンサーから収集し、それらを複雑かつ正確な天候予測データと統合。さらに一次産品市場の体系的予測データと組み合わせることによって、考えられるシナリオを農業従事者に明確に提示できる。シナリオには最も収益性の高い作物種だけではなく、購入するべき種子の種類や、種まきの時期、手入れ方法、収穫時期、予想収穫高、収穫後の予想利益など網羅的な情報が含まれる 2。

をより有効に活用できることを知っています。さらに、クラウドがアプリケーション開発の手法をも変えることを知っています。

「サービスをまずは消費し、それから創造する」のが彼らのモットーなのです。

先進的な IT リーダーはまた、ソフトウェアの有効活用とストレージやネットワークの仮想化および自動化を推進することによって、あたかもパブリック・クラウド環境のようにプライベート・クラウドの導入を自動化しています。つまり、データセンターとネットワークを効率性と機動性に富んだプライベート・クラウドに移行し、ソフトウェアを基盤としたインテリジェント・インフラを構築することで、パブリック・クラウド特有の多くのメリットをデータセンター内で享受しているのです。このようにパブリック・クラウドのメリットを兼ね備えたソフトウェア定義のインフラこそが、

極めて強力で機動性と拡張性が高く、コスト効率に優れたハイブリッド・クラウドです。リソースのありかにかかわらず、企業はこのようなハイブリッド・クラウドを

「サービスとして」消費することが可能になります。

その一方で、クラウドに精通した ITリーダーはソフトウェア分野の未来にも注目しています。SAP やマイクロソフト、オラクルといった大手ベンダーが今後、ソフトウェアをサービスとして提供する機会がどんどん増えてくるというのが IT リーダーの共通認識です。このシフトは、大手ベンダーの現在の投資状況を見れば明らかでしょう。ソフトウェアの実装/導入といったレガシー・アプローチからの転換をベンダーが図る中で、IT リーダーもこのアプローチからの変革を目指さなければなりません。

デジタル化の進んだ世界において成功を収めるためには、スピードと機動性、さらに統合力が不可欠です。他社と違うアプローチを実践するだけではなく、まったく新しい手法で顧客体験とビジネス・インタラクションの価値を高めていかなければなりません。

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アバナード(マイクロソフト・ソリューションの導入にフォーカスした、アクセンチュアとマイクロソフトの合弁事業)の最近の調査でも、企業がハイブリッド・クラウドを競争優位性の 1 つと見なしていることが確認されました 4。

調査参加者の約 75% は、ハイブリッド・クラウド・ソリューションの導入は組織にとって強みになると答えています。また、今後3 年以内に重要なアプリケーションの多くがパブリック・クラウドからハイブリッド・クラウドに移行されるだろうとの回答は、75%以上に達しました。同調査では、ハイブリッド・クラウドの活用に対して、IT 分野の意思決定者よりも経営幹部のほうが前向きな姿勢であることも明らかになっています。

しかしながら大部分の業界の企業にとって、クラウドはさまざまな課題の解決策を提供すると同時に、複雑性ももたらします。今

日の企業は、人事には Workday クラウドを、営業には Salesforce クラウドを、アプリケーションの開発と運用には Azure クラウドをといった具合に、大量のクラウド・アカウントの管理を余儀なくされています。

クラウドにはプライベート、パブリック、ハイブリッドの 3 種類があり、これに加えてレガシー・メインフレームや分散コンピューティング、仮想コンピューティング環境が活用されます。(アクセンチュアが最近主催したイベントでは、社内でパーソナル・クラウドを約 2,000 インスタンス管理しているという企業がありました。)

それにもかかわらず、自社がクラウドにどれだけの投資を、どのような目的で行っているか把握している IT 部門は少ないというのが現実です。これはビジネス・チームが独断で IT 投資するケースが増加し、投資の大部分を IT 部門が管理できないためです。ある CIO も「もはやクレジットカードをか

ざすだけで、シャドー IT(社内で許可されていないデバイスやクラウド・サービスなどを無断で利用すること)が簡単にまかり通ってしまう時代だ」と指摘しています 5。

さらに言えば、大量のクラウド・インスタンスにアプリケーション・ワークロードを容易に移行できる自動化プロセスも存在しません。また、無数に存在するセキュリティおよびプライバシー関連の課題に、IT 部門とビジネス部門が協力して解決に当たるのが困難であることも、クラウドの複雑性を高める要因となっています。

今日の IT リーダーが直面している状況は、「ベスト・オブ・ブリード」時代のそれとは異なります。「ベスト・オブ・ブリード」時代の IT リーダーは、本来の目的に対しては高い効果を発揮するものの、組み合わせて活用することを意図していない多種多様なツールを前に、困難な選択を迫られるのが一般的でした。

ハイブリッド・クラウドへの取り組み

クラウド・イノベーションへの期待

このように、クラウドはデジタル・ビジネスを展開する上で極めて大きな役割を果たします。 では、現時点でのクラウド導入状況はどうなっているのかというと、この 1 ~ 2 年間でハイブリッド・クラウド・アプローチの検討にとりかかったという企業が一般的なようです 3。

もともとクラウドは、課題を部分的に解決する複数のソリューションの 1 つにすぎません。

これがどのような状況か、宅配便に置き換えてみるとよく分かるでしょう。 トラックと航空便を利用して、荷物を倉庫から配送先まで 届けるとします。 トラックと航空便はそれぞれ自動化されていても、空港の配送センターでトラックと航空便の間の引き継ぎプロセスが手動になっている場合がそれにあたります。

必要なのは、荷物をトラックから航空便に乗せるのも、トラックから降ろして 運ぶのも、すべてがシームレスに自動化された一貫性の あるプロセスです。

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ハイブリッド・クラウドの基本を見直す

クラウド・テクノロジーから具体的にどのようにしてビジネス・バリューを生み出せるのか、その方法を見極めるための新たな視点が求められています。

ある CIO は 指 摘 する。 「クラウドは今以上に進化しなければならない」6

まずは「ハイブリッド」の捉え方を改めることが重要です。ハイブリッドは、今すぐ必要な機能を得るために何かと何かを統合したものでも、パブリック・クラウドやプライベート・クラウドのインスタンスをとりまとめるものでもありません。ハイブリッド・クラウドには、複数のクラウドを活用する以上の力が備わっているのです(本文右のコラム「インテリジェント・ビジネス・クラウドは、ハイブリッド・クラウドの単なる進化系ではない」を参照)。

ア ク セ ン チ ュ ア は 2013 年 の Accenture Technology Vision レポートの中で、ハイブリッド・クラウドに対する包括的で一貫性のあるアプローチが必要とされていることを指摘しました。複数のクラウドとベンダーにまたがった、継続的なアプローチと言ってもよいでしょう。ハイブリッド・クラウドについて先進的な取り組みを行っていると自認する企業であっても、サービスとしてのテクノロジーへの高まるニーズを満たすために、複数のベンダーに依存しなければならない現実を認識する必要があったのです。

問題は、ハイブリッド・クラウドが依然として「エンタープライズ・グレード」に達していないことです。もともとクラウドは、課題を部分的に解決する複数のソリューションの 1 つにすぎません。つまり CIO は、ベスト・オブ・ブリード時代にさかのぼって最善のソリューションを選択するしかないのです。しかし、CIO が理想とするのは既存のアーキテクチャと統合する柔軟性を備えつつ、アプリケーションとインフラ・サービスをクラウドに移行できるソリューションです。アプリケーションのポータビリティを可能な限り維持しながら、ベンダー・ロックインを回避できる環境です。確かに多くのプロバイダーはエンタープライズ・ワークロードを段階的に移行できますが、このプロセスはシームレスでもなければ自動化されてもいないため、遂行するには多大な労力と時間を要します。しかも、多くの人手が必要なだけではなく、プロセスが不安定で、人為的なエラーが起こりやすいという欠点もあります。

インテリジェント・ ビジネス・クラウドは、 ハイブリッド・ クラウドの単なる 進化系ではないインテリジェント・ビジネス・クラウドは、米国国立標準技術研究所が次のように定義するハイブリッド・クラウドを、ただ再パッケージングしたものではありません――「2 つ以上の異なるクラウド・インフラ(プライベートまたはパブリック)の組み合わせであり、各クラウドは独立して存在するが、データとアプリケーションのポータビリティを実現する技術によって結合されている」。

インテリジェント・ビジネス・クラウドは、いわばマネージド・クラウド環境を提供するものであり、クラウド上のすべてのワークロードとサービスを単一のダッシュボードで管理することを可能にします。これにより、ワークロード・ポータビリティの容易な自動化、適切な管理、マルチ・プラットフォーム、アナリティクス・ベース、ポリシー・ドリブン、エンドツーエンドのデータ・セキュリティ、多対多の接続といったさまざまな機能がもたらされ、クラウドへの長年の期待が現実のものとなるのです。

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クラウドの新たなビジョン

果たしてハイブリッド・クラウドの進化の速度は十分なのでしょうか。CIO はかねてから、柔軟性に富んだ価値創造プラットフォームとしての役割をクラウドに期待していましたが、実現の見込みはあるのでしょうか。

結論を先に言うならば、その見込みは大いにあります。アクセンチュアでは、クラウドの新たなビジョンの実現は、すでに目前の段階まで来ていると考えています。むしろそれは、新たなビジョンではなく、新たなバージョンと呼んだほうが適切かもしれません。進化を遂げた現在のハイブリッド・クラウドは、テクノロジーのさまざまな可能性を具現化させ、クラウドが約束し続けてきたすべての機動性や経済性を提供しつつあります。しかも、進化したハイブリッド・クラウドは伝統的なエンタープライズ IT 環境がもたらす安心感とエンタープライズ・グレードの信頼性を備えています。このことは、難易度の高いクラウド導入試験においてもすでに実証されています。

他に勝る成果とイノベーションを生み出すために、スピードや相互運用性、新たな消費モデルを追求する企業はますます増えています。たとえば、デュポンは IT を消費可能なサービスとして利用できるソリューションを積極的に試験導入しています。この新たなソリューションを通じて、デュポンではパブリック環境とクラウド環境を横断してアプリケーションを移行/運用/管理できるため、安全かつ予測可能な方法で認証を得た上で、いつでもどこからでもアプリケーションにアクセスすることが可能になりました。

クラウドの進化形のバージョン、すなわち「インテリジェント・ビジネス・クラウド」がビジネスの成果に焦点を当てているのは明白でしょう。インテリジェント・ビジネス・クラウドは、インテリジェントなデジタル企業になるために組織が必要とする、あらゆる能力をつなぎます。インテリジェント・インフラとインテリジェント・アプリケーション、インテリジェント・データ、イン

テリジェント・ビジネス・プロセスを結び付ける、結合組織と呼んでもいいかもしれません。これにより、アプリケーションが状況やコンテキストを予測して適応し、承認の有無やビジネスプロセス・ルールに応じてデータを保護/公開し、インフラをオンデマンドでサービスとして消費することが可能になるのです。

インテリジェント・ビジネス・クラウドの最大の特徴は、アナリティクス・ベースでポリシー・ドリブンなアプローチを用いて、かつてないレベルの機動性を実現できることです。これにより適切なワークロードが適切な場所に移行され、組織はパフォーマンスとコストとビジネスの継続性に応じて、IT 資産を最適化できるようになります。この特徴はまた、(現在は主として手動で行われている)ワークロード移行コストを激減させ、クラウド・インスタンスにありがちなベンダー・ロックインを回避するというメリットももたらします。

また、インテリジェント・ビジネス・クラウドは複数のクラウドとプラットフォームを横断できるため、企業はどのクラウド環境でも、すべてのアプリケーションを運用することができます。これは今日の典型的なベスト・オブ・ブリード・アプローチからの嬉しい転換と言えるでしょう。

新たに生まれたインテリジェント・ビジネス・クラウドは、プライベートおよびパブリック・クラウド間におけるシームレスに自動化されたポータビリティをオンデマンドで迅速に実現しながら、クラウドベースの IT 資産全体を単一のダッシュボードで管理することを可能にします。さらにレガシー環境からの移行を簡略化するために、移行ツールを用いてレガシー・ワークロードの

特定と順序付けを行い、パブリック/プライベート・クラウド環境に移行します。ポリシー・ドリブンなアプローチで、適切なワークロードを適切な場所に置くこともできます。

インテリジェント・ビジネス・クラウドのもう 1 つの大きな特徴としては、エンタープライズ・グレードのハイブリッド・クラウドの管理能力が備わっている点も挙げられます。具体的には、適切なセキュリティ・プロセスやセキュリティ・スタンダードをあらゆるクラウド・リソースに常に適用し、クラウド・ソリューションを 100%監査された状態に置くことが可能です。オートディスカバリ機能は、組織内のすべてのクラウド・ワークロードをトラッキングし、管理を容易にしてくれます。セントラル・ダッシュボードの管理機能を使えば、プライベート/パブリック・クラウド・ワークロード全体を一望することもできます。これにより IT リーダーは、1 カ所からクラウドの仲介やパフォーマンスをモニタリングおよび管理できるので、IT インフラに不可欠な信頼性やセキュリティ、運用状態の監視を行えるのです。

以上のような「管理」機能は極めて重要です。アバナードの調査でも、セキュリティおよびプライバシーへの懸念(顕在も潜在も含む)が、クラウド・ソリューションを導入/実装する上で依然として最大の障壁となっていることが明らかになりました。セキュリティとプライバシーの問題は、コストよりもはるかに大きな懸念となっているのです。調査参加者の約 60%は、すべてのサービスとアプリケーションをパブリック・クラウドに移行するのは、業務用コンピュータからすべてのパスワードを消去するよりもずっと危険であると答えています。

インテリジェント・ビジネス・クラウドの最大の特徴は、アナリティクス・ベースでポリシー・ドリブンなアプローチを用いて、かつてない レベルの機動性を実現できることである。

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アクセンチュアが考えるインテリジェント・ビジネス・クラウドは、オープンで拡張性に富んだ統合的なプラットフォームであり、デジタル化の進んだ世界で他に勝るために必要なあらゆる能力をスマートに結び付ける結合組織として機能します。

ビジネスの成果にフォーカス

インテリジェント・ビジネス・クラウド

メリット

特徴

複数のクラウドとベンダーをシームレスに自動化された一元的アプローチで横断的に管理

オープンで拡張性に富んだ統合的なハイブリッド・クラウド・プラットフォーム

プライベート・クラウドとパブリック・クラウド間でポータビリティを自動化

エンタープライズ・グレードの管理機能

単一ダッシュボードで全 IT資産を一元管理

エンタープライズ・グレードのセキュリティ・プロセスおよびセキュリティ・スタンダード

アナリティクス・ベースでポリシー・ドリブンなアプローチ

かつてない機動性とインテリジェントなコスト管理を実現し、クラウドが約束する柔軟性と経済性を提供

エンタープライズ・グレードの管理 &ガバナンスによるリスクの最小化

パブリック・クラウドとプライベート・クラウド間で、アプリケーションとワークロードをシームレスに移行/運用/管理

インテリジェン

ト・デジタル・ビジネス

インフラ、アプリケーション、データ、プロセスをスマートに結び付けて、「すべてをサービスとして」提供

結合組織としてのインテリジェント・ビジネス・クラウド

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今すぐ始める

インテリジェント・ビジネス・クラウドはクラウド・コンピューティングにおける次なる進化であり、CIO と経営幹部に新たな展望をもたらします。では、これらの新たな能力を獲得するために、CIO と経営幹部は今日から何を始めればよいのでしょうか。

やるべきことは多くありますが、中でも以下の 4 つはすぐにでも取り組まなければならない重要なポイントです。

クラウド主義になるクラウド・コンピューティングをレガシーシステムにとって代わる「新しいトレンド」、あるいは次なるテクノロジーと見なすだけでは、クラウド主義とは言えません。クラウド主義とは、クラウド・コンピューティングをまさに今日からインテリジェント・デジタル・ビジネスの基

盤とすることを意味します。クラウド主義の組織(「すべてをサービスとして提供する」ことを目指す組織)は、すでに他社に勝る変化を遂げており、投資対象にふさわしいクラウド・サービスを展開するために正しい意思決定を下す準備が整っているのです。

「クラウド・ファースト」なアプローチでアプリケーションを 再設計するアプリケーションを新たな視点で捉え、サービスを自ら創造するのではなく消費することにより、開発スピードを加速させ、保守業務を最小限に抑える企業が増えつつあります。このような「クラウド・ファースト」なアプローチには、クラウド環境のための新たなアプリケーションが不可欠です。具体的には、クラウドならではの弾力性や回復力を生かし、オートスケール機能と耐障害性を備え、クラウドの「従量課金制」をベースとしたアプリケーションです。この新たなアプローチは、

当初の展開がオンプレミスに限定される場合でも適用可能です。ハイブリッド・クラウド・ソリューションがポリシー・ベースのアーキテクチャを提供し、それにより企業はダイナミックに、アプリケーションのどの部分をパブリック環境またはプライベート環境で運用するか決定できるからです。クラウド・コンポーネントと SaaS ベースの機能を備えた共通のコンポーネント・リポジトリを設けることも大切です 7。

ビジネスの成果を念頭に置いた投資を行うクラウドへのあらゆる投資において最も重要なポイントは、投資によってどれだけの価値が顧客にもたらされ、競争優位性を確立できるかです。つまり、クラウドへのすべての投資は測定可能なビジネスの成果に直接結び付かなければならないのです。このような投資原則に基づくことで、最大のリターンをもたらす領域への投資が可能になり

ます。また、この投資原則に従えば、現在のクラウド展開における見えないコストも明らかにできるでしょう。たとえば、偶発的なベンダー・ロックインやクラウド・ワークロードの「過剰在庫」、放置されたままの不要なワークロードといった見えないコストをなくすことができます。

インテリジェント・ビジネス・クラウドのためのスキル開発私たちは 2013 年の Accenture Technology Visionレポートの中で、ハイブリッド・クラウド・ワールドにおいては、スキルの面でもハイブリッドな能力が不可欠であることを指摘しました。中でも最も求められる人材は、すべてのピースの働きと役割を理解し、それらが組み合わさったときにどのように機能するかを知っている「設計者」です。クラウド・インスタンスの多様化に伴い、組織にはますます、最高レベルの多彩な機能を設計し、活用することが求められるようになっています。

現在のところ、これらの原則に対応するためのスキルはまだ成熟段階に至っていません。アバナードの調査でも、ハイブリッド・クラウド戦略を展開している企業で、熟練のクラウド・チームがい

る、あるいはデータ・ガバナンス & セキュリティを確立している、専用の予算を組んでいるとの回答はいずれも半数以下(それぞれ 46%、45%、43%)にとどまっています。今すぐではなくても、ごく早い段階で獲得するべきスキルの例を 1 つ挙げるなら、部門や部署だけではなく、組織を横断してデジタルに活用できるプラットフォームを設計できる IT 設計者が必要だと言えるでしょう。ある CIO も次のように指摘しています。「今日のIT 部門は、特定の技術プラットフォームの提供者というよりも、むしろ(社内外への)ホスティング・サービスの仲介者としての役割のほうが大きくなっています。それにより、IT 部門の業務そのものに変化が起こりつつあります」。8

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クラウドはその登場以来、またたく間に多くの企業の注目を集める話題の的となりました。しかも、クラウドをめぐる関心の広がりは IT 部門の内部だけにとどまりません。より迅速かつより巧みに業務を遂行するために、ビジネス・リーダーが日常のディスカッションの中でクラウドを話題にするケースがますます増えています。

しかしながら、クラウドの有効性を生かせるかどうかは、ビジネス・リーダーが実際にどのような議論を行っているかにかかっています。クラウドの導入によって設備投資を削減し、運用コストに回すことを議論している場合でも、クラウド環境でデータを保護する方法を検討している場合でも、もちろんある程度のメリットは見込めるでしょう。しかし、議論が新たなレベルへと到達したとき、つまりクラウドによって新たな競争優位性を獲得できるか、あるいはデジタル化の進んだ世界で他に勝るために必要な全能力をクラウドでどのように結び付けるかといったテーマへと移ったとき、はじめて企業は大きな一歩を踏み出すことができるのです。

インテリジェント・ビジネス・クラウドの時代は、もう目の前までやって来ています。先駆的なIT リーダーとビジネス・リーダーはビジネスの価値という観点から、自社に必要なインテリジェント・ビジネス・クラウドの特性を詳細にわたって検討しています。さらには、インテリジェント・ビジネス・クラウドをいかにして運用すれば、最大限のリターンを得られるかを見極めようとしています。

インテリジェント・ビジネス・クラウドの導入に向けて、貴社はどのようなプランをお持ちでしょうか。

まとめ

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1 http://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/airbnb/2 クライメート・コーポレーションのウェブサイト : http://www.climate.com/

3 「ハイブリッド・クラウド」は米国国立標準技術研究所により次のように定義されている。「2 つ以上の異なるクラウド・インフラ(プライベートまたはパブリック)の組み合わせであり、各クラウドは独立して存在するが、データとアプリケーションのポータビリティを実現する技術によって結合されている」4 Global Study: Hybrid Cloud – From Hype to Reality, Avanade, 2014, http://www.avanade.com/Documents/Resources/hybrid-cloud-global-study.pdf5 “CIOs Face Cloud Computing Challenges, Pitfalls,” CIO.com, Oct 14, 2014, http://www.cio.com/article/2825257/cloud-computing/cio-face-cloud-computing-challenges-pitfalls.html6 同上。

7 “The future of applications: Three Strategies for the High-velocity, Software-driven Business,” Accenture, December 2014, http://www.accenture.com/us-en/Pages/insight-enterprise-application-strategy.aspx8 “CIOs Adopt Down-to-Earth Cloud Strategy,” CIO.com, Oct 14, 2014, http://www.cio.com/article/2826675/cloud-computing/cios-adopt-down-to-earth-cloud-strategy.html

アクセンチュアについて アクセンチュアは、経営コンサルティング、テクノロジー・サービス、アウトソーシング・サービスを提供するグローバル企業です。32 万3,000 人以上の社員を擁し、世界 120カ国以上のお客様にサービスを提供しています。 豊富な経験、あらゆる業界や業務に対応できる能力、世界で最も成功を収めている企業に関する広範囲に及ぶリサーチなどの強みを活かし、民間企業や官公庁のお客様がより 高いビジネス・パフォーマンスを達成できるよう、その実現に向けてお客様とともに取り組んでいます。2014 年 8 月 31 日を期末とする 2014 年会計年度の売上高は、300 億USドルでした(2001年 7月 19日NYSE上場、略号:ACN)。

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