パイロットプロジェクト -...

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第11章 パイロットプロジェクト

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  • 第11章

    パイロットプロジェクト

  • 11-1

    第11章 パイロットプロジェクト 11.1. パイロットプロジェクトの目的

    パイロットプロジェクト実施の主要目的は、以下のとおりである。 ①ガイドラインで提案された組織、維持管理等に関する新しい方法論を検証するこ

    と。 ②組織作り、企画、計画、調査、設計、設置、運用、維持管理、モニタリング、評

    価といった事業化に係わる一連の作業に関し、既存の手法を検証し改善を加える

    ことにより、より適切な方法をマニュアルとして提案する。 ③パイロットプロジェクトの実施を通して技術移転を行い、将来の指導者を育成す

    る。

  • 11-2

    11.2. パイロットプロジェクト地点選定基本方針 11.2.1. パイロットプロジェクトの地点数 本調査の対象州は、東ヌサトゥンガラ州、西ヌサトゥンガラ州および南スラウェ

    シ州の3州で、対象とする再生可能エネルギー種は、小水力、太陽光、風力、バイ

    オマスおよび地熱の5種であるが、下記理由により、パイロットプロジェクトは1

    地点のみとする。 ・パイロットプロジェクト実施の主目的 技術的実証に重点を置くパイロットプロジェクトと異なり、カウンターパート機

    関及び多くの関係者の全段階における参加が極めて重要である。1地点のプロジェ

    クトでも、その実施に当たっては調査団およびインドネシア側共に多くの労力を費

    やす必要がある。パイロットプロジェクトから良好な結果を得るためには、限られ

    た人材を多くのプロジェクトに分割して投入することは望ましくなく、1地点に集

    中することが効果的である。 ・パイロットプロジェクトが実施されない州への技術移転方策 パイロットプロジェクトが1地点のみであると対象3州のうち2州においてはプ

    ロジェクトを通じての直接的な技術移転ができないが、これらの州の関係者を適切

    な時期にプロジェクト地点に召集しプロジェクトに参加するなどして補完するこ

    とが可能である。

    ・パイロットプロジェクトとして適切なエネルギー種の選定 5種の再生可能エネルギーを利用した地方電化開発においては、多くの共通した

    手順が存在する。プロジェクトの開発、運転維持管理における多くの共通した手順

    を包含する適切なエネルギー種を選定すれば、1地点のプロジェクトでも再生可能

    エネルギーの地方電化開発に寄与する多くの効果的な結果を得ることができる。

    11.2.2. パイロットプロジェクトのエネルギー種の選定 前節の方針にも基づいて5種の再生可能エネルギー種からパイロットプロジェク

    トに適用する最適なエネルギー種として「小水力」を選定した。パイロットプロジ

    ェクトは特異なものであってはならないし、またパイロットプロジェクトから得ら

    れる知見が他の地方電化プロジェクトに活用できることが条件となる。この点で小

    水力は、これらの条件に合ったエネルギー種である。 選定に関して個々のエネルギー種に対する評価を以下に示す。 (1) 小水力 小水力は以下のとおりパイロットプロジェクトのエネルギー種に適した特性を

    有する。 ・経済性 需要地の近くに良好な小水力ポテンシャルが存在すれば、小水力が再生可能エ

    ネルギー種の中で最も経済的なエネルギーとなる可能性が高い。

  • 11-3

    ・インドネシアでの開発 インドネシアでは豊富な水力ポテンシャルに加えて、小水力開発に必要な技

    能・技術がある程度、成長しており、全体で 100 地点以上の小水力開発実績が既にある。 ・多くの技術・技能の必要性 一方、水力は、水文、地形条件等の自然条件に多くを依存し、その運転・維持

    管理は河川流量など常に変化する状況に対応する必要があるため、他のエネルギ

    ー種と比較して相対的に高い技術・技能が要求される。全ての水力プロジェクト

    はいわゆる「カスタムメイド」であり、その維持管理は決して「メンテナンスフ

    リー」ではない。 ・住民の協力と理解の必要性 地方電化のための小水力開発は技術・技能的な高さのみでなく、住民に対する

    周到なソーシャル・プレパレーションも要求される。他のエネルギー種とは異な

    り、小水力の開発、維持管理の多くの段階において、住民の協力と理解が必要に

    なる。例えば、小水力は、建設および維持管理のため、住民の生活に密接した多

    くの土地や住民の労働力が、限られた電力を適切に利用するために住民の協力と

    理解が必要になる。 ・適切な開発・運営システムの必要性 インドネシアでは多くの小水力が開発されている一方、それらの多くは困難な

    状況に問題に陥っている。この原因の一つとして、小水力開発のための統一的な

    システムが設定されてなく、個々のプロジェクトで維持管理や料金設定に当たっ

    ては独自のシステムを採用していることがあげられる。これは本調査で検討すべ

    き主要な課題である。

    (2) 太陽光 現在、インドネシアでは太陽光を利用した地方電化は他のエネルギーに比較し

    て容易に開発が可能でインドネシア全土において適用が可能である。特にソーラ

    ーホームシステム(SHS)の場合は、技術基準が策定され規格化された製品が供給可能であることから、SHSを利用した電化は「既製品」の装置を設置すること

    で容易に実施可能である。さらには、統一された料金システムを含む事業運用方

    法が多くの SHS プロジェクトに適用されている。低い料金徴収率等の大きな課題が存在するが、多くの課題は太陽光に限定したものではなく再生可能エネルギ

    ーによる地方電化共通の課題である。従って他のエネルギー種でパイロットプロ

    ジェクトが実施されても、その結果の多くは太陽プロジェクトの課題解決に対し

    て十分に参考になりうる。

  • 11-4

    (3) 風力 インドネシアには既存の風力発電プロジェクトが存在するが、風力発電プロジ

    ェクトを構成する多くの装置の多くは未だに輸入品に頼っているのが現状であ

    る。これは風力プロジェクトの持続可能な運用において大きな問題である。風力

    に必要な技術・技能がある程度、成長し、スペアパーツの取得が容易にならない

    限り、風力発電の普及を期待すべきではない。

    (4) バイオマス インドネシアには産出される工場残余物をバイオマス燃料として発電を行う工

    場が存在するが、多く場合、その電力は工場内での使用に留まり、一般世帯に供

    給されることはない。インドネシアではバイオマス発電を利用した地方電化は実

    用化されてなく、未だ実験的な段階であると判断される。

    (5) 地熱 いくつかの地熱発電所が開発されているが、これらは大規模で発電された電気

    は商業の電力系統へのみ供給されている。上述したバイオマスと同様に地熱発電

    を利用した地方電化は実用化されてなく、未だ実験的な段階であると判断される。

    11.2.3. 小水力発電パイロットプロジェクト地点の特定 次の地点を小水力発電によるパイロットプロジェクト地点として選定した。 ・地点名称: マサンダ(Masanda) ・対象村落: ベラウ村(Belau) ・対象郡: ビトゥアン(Bittuang) ・対象県: タナトラジャ(Tana Toraja) ・対象州: 南スラウェシ(South Sulawesi) 選定理由を以下に示す。 (1) パイロットプロジェクト地点特定のための基本条件 パイロットプロジェクト地点特定のための基本条件を以下に示す。 ・プロジェクト対象県は小水力ポテンシャルに富む ・プロジェクト地点周辺にはPLN等による電化計画が存在しない ・KUD 等の地方組織が存在する ・プロジェクト地点は自動車によるアクセスが可能 ・地元関係者が開発の意向を有し、住民がプロジェクトに参加で可能 ・調査の実施にあたり大きな問題が想定されない ・安全上、問題がない ・パイロットプロジェクト地点周辺へ同様なプロジェクトの普及が期待できる ・地方政府がパイロットプロジェクト地点の電化に重点を置く

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    (2) パイロットプロジェクト対象県の特定 下記事項からタナトラジャ県をパイロットプロジェクト対象県として特定した。

    ① 降雨量分布 水力ポテンシャルの評価指標として用いる対象3州における年間降雨量分布を

    図 11.2.11(a),(b),(c)に示す。南スラウェシ州の北部では、年間 3,000mm を越える高い雨量分府が弘範囲で存在する。これより、南スラウェシ州北部のマムジュ

    (Mamuju)、マジェネ(Majene)、ポルマス(Polmas)、タナトラジャ(Tana Toraja)およびルウ(Luwu)の5つの県を対象の候補として選定した。

    ② PLNの電化計画 PLNの電化計画による南スラウェシ州の 2003 年度末の電化地域は図 11.2.2に示すとおりである。1997 年に始まった経済危機のため、本図のとおりPLNによる新規電化の進展は期待できず、現在未電化の地域が当分の間、未電化のま

    ま残存するものと判断されるが、図 11.2.2 が示すPLNの電化を優先する地点の傾向については将来においても同様と判断される。従って、タナトラジャ県の西

    部地域は長期に亘り未電化のまま取り残される可能性が高い。

    ③ 地方組織の存在 以下に示す地方組織がランテパオ(Rante Pao:タナトラジャ県の商業の中心地)に存在しパイロットプロジェクト開発への協力が期待できる。 ・KUD Sane:サダンウルサル(Sa'dan Ulusalu)村での小水力開発・運営の経験を有

    する。 ・ Yayasan Turbin Desa:ドイツより移転された小水力発電の技術・技能を補保有し小水力プロジェクトの建設と維持管理の経験がある。(約 20 地点)

    ④ 地方政府の認識 タナトラジャ県は小水力ポテンシャルに富んだ未電化村落が多いため、県政府

    は小水力を利用した電化プロジェクトに大変強い期待を寄せていることが確認

    された。

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    図 11.2-1(a) 年間降雨量分布(南スラウェシ州)

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    図 11.2-1(b) 年間降雨量分布(西ヌサトゥンガラ州)

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    図 11.3-1.(c) 年間降雨量分布(東ヌサトゥンガラ)

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    図 11.2-2 PLNによる南スラウェシ州の 2003 年度末における電化計画

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    (3) タナトラジャ県におけるパイロットプロジェクト候補地点 タナトラジャ県政府は、PLN及び灌漑局タナトラジャ支部の同意を得て、下記

    の6つの小水力ポテンシャル地点を推薦した。各地点の位置を図 11.2.3 に示す。

    a. Parado; Kecamatan Rindingalo, Desa Parado b. Ballo Pasange; Kecamatan Sa’dan Balusu Desa Ballo Pasange c. Batukianak; Kecamatan Simbuang Desa Batukianak d. Masanda; Kecamatan Bitttuang Desa Belau e. Makkado; Kecamatan Simbuang Desa Makkado f. Leon; Kecamatan Bonggakaradeng Desa Leon

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    図 11.2-3 タナトラジャ県におけるパイロットプロジェクト候補地点

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    (4) パイロットプロジェクト地点の特定 ① 1次選考 タナトラジャ県事務所から得た地点へのアクセスに関する情報や村民の生活レ

    ベルなどの基本情報に基づき候補地点の一次選考を行った。この結果、3地点が

    除外された。各地点の情報は以下のとおり。

    a. Parado (パイロットプロジェクト候補より除外) ・ 自動車でのアクセスが不可。(県都マカレから2~3日を要する) ・ 地点の周辺には約40世帯の家屋があるが、そのうち約 30 世帯は稲作期間のみ当地滞在している。

    b. Ballo-Pasange ・ 地点は主要道路に近くアクセスしやすい。 ・ その他、否定的な情報は得られていない。

    c. Batukianak (パイロットプロジェクト候補より除外); ・ 県都から地点までは、他の県を経由して自動車1日、徒歩1日の行程が必

    要。 ・ 村民の収入レベルは極めて低く、十分な電気料金を支払うことが期待でき

    ない。 d. Masanda ・ マカレから相対的に遠く道路の整備状態も悪いが、県による道路改良工事計

    画が存在する。タナトラジャ県政府は当地点をパイロットプロジェクト地点

    として強く推薦している。

    ・ その他、当地点を候補地点から除外すべき理由は見あたらない。

    e. Makkade (パイロットプロジェクト候補より除外) ・ 県都から地点までは他の県を経由して自動車1日、徒歩1日の行程が必要。 ・ 家屋は広い地域に点在している。 ・ 村民の収入レベルは極めて低く、十分な電気料金を支払うことが期待でき

    ない。 f. Leon ・ マカレから相対的に遠く道路の整備状態も悪いが、当地点を候補から外す積

    極的な理由がない。

    ② 現地調査による 2 次選考 一次選考に残った b. Ballo-Pasange、d. Masanda、f. Leon の3地点について現地調査を実施した結果、「マサンダ(Masanda)」地点がパイロットプロジェクト地点として選定された。 3つの候補地点の比較を表 11.2.1 に、以下に現地調査の結果の概要を示す。

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    1) Ballo Pasange ・位 置 : 北緯 2°50′26″

    東経 119°55′22″ ・発電計画概要 出力 : 21 kW 最大使用水量: :0.25 m3/s 有効落差 :15.0 m 需要家数 :約 150 世帯 ・アクセス条件: Rantepao より約 20km、自動車で約 2 時間を要する。Rantepao より約 12km 地点までは良好なアスファルト道路である。以降 Ballo Pasange までは未舗装であるが四輪駆動車でアクセスが可能。

    ・周辺の電化状況: Ballo Pasange村は基幹配電線末端から約 8km離れており、約 4km手前の Sa’dan Ulusal 村が草の根無償援助により電化されている。

    ・社会状況 : 村民は電気に対する関心が低く、電化に必要な統一した組織の結成は期待でき

    ない。 ・周辺地域への普及の可能性: 次の理由により周辺地域への普及の可能性は低いと判断される。 a.当地はタナトラジャ県の北東端、ルウ県との県境近くに位置するが、高い山

    地によりルウ県へのアクセスが困難。 b.タナトラジャ県の電化地域は南部より拡大され、当地周辺には未電化地域は

    存在しない。

    2) Masanda ・位 置 :北緯 2°56′48″ 東経 119°35′52″ ・発電計画概要

    出力 : 38 kW 最大使用水量 :0.52 m3/s 有効落差 :13.0 m 需要家数 :約 150 世帯

    ・アクセス条件: ランテパオから約 60km、自動車で3時間半を要する。舗装道路はランテパオから約 30km までであり、これ以外はすべて未舗装路であるが、四輪駆動車でアクセスが可能である。同ルートはマカレからポルマス県ママサに至る道路として

    整備されつつあり、2~3 年後には全線舗装される計画がある。

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    ・周辺の電化状況: PLN の配電線はマサンダの手前約 15km のビトゥアンまで延長されている。 ・社会状況 : 村民は調査団による現地調査に協力的であり、パイロットプロジェクトへの高

    い関心を示した。 ・周辺地域への普及の可能性: 当地の周辺には多くの未電化村落がポルマス県までまたがって存在する。タナ

    トラジャ県からも当地域には多くの小水力ポテンシャルが確認されているのと

    の報告を受けている。 3) Leon ・位 置 : 北緯 3°11′59″

    東経 119°43′29″ ・発電計画概要:

    出力 : 23 kW 最大使用水量 :0.50 m3/s 有効落差 :8.0 m 需要家数 :約 300 世帯(広い地域に分散している)

    ・アクセス条件: ランテパオから約 50km、自動車で 2 時間半を要する。舗装道路はランテパオから約 35km までであり、これ以外はすべて未舗装路であるが、四輪駆動車でアクセスが可能である。 ・周辺の電化状況: Leon 村はPLNの配電線末端より 18km の位置にある。また当地点より 16km離れた地域は E7 プロジェクトにより小水力発電による電化が行われている。 ・社会状況 : 当地点の近隣で大規模水力開発の計画が存在することから村民はパイロットプ

    ロジェクトに対する関心が低い。 ・周辺地域への普及の可能性: 上記、大規模水力開発の計画により、周辺地域への普及に可能性は期待できな

    い。

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    表 11.2-1 パイロットプロジェクト候補地点の比較

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    11.3. パイロットプロジェクト地点の社会経済状況 11.3.1. タナトラジャ県の財政 タナトラジャ県の財政状況を表 11.3.1 に示す。

    表 11.3-1 タナトラジャ県の財政状況

    (Million Rp.)

    1993/94 1994/95 1995/96 1996/97 1997/98 1998/99

    REVENUE 28,808 30,908 33,296 39,449 44,626 47,666 10.60%Balance at the beginning of the year 184 42 293 99 10 0Internal revenue 1,413 1,731 2,413 2,911 3,991 2,724 14.02%

    Local tax 700 808 1,118 1,121 1,518 932 5.91%Local retribution 616 777 944 1,157 1,551 1,200 14.25%Income from establishment 31 10 15 25 42 0Income from services 4 2 1 1 40 0Other income 62 133 335 607 840 592 56.90%

    Quotient Tax/Non Tax Revenue 1,342 2,195 2,136 2,748 2,754 4,212 25.71%Quotient tax revenue 1,285 2,085 1,940 2,528 2,466 4,167 26.53%Quotient non tax revenue 57 110 196 220 288 45 -4.71%

    Contribution and Subsidies 25,869 26,940 28,453 33,621 37,591 40,730 9.50%Contribution 16,848 17,701 20,177 22,777 26,012 31,010 12.98%Subsidies 9,021 9,239 8,276 10,844 11,579 9,720 1.50%

    Development Receipts 0 0 0 70 280 0Local loans 0 0 0 70 280 0Local Establishment loans 0 0 0 0 0 0

    EXPENDITURE 28,701 30,850 33,558 39,344 44,626 43,511 8.68%Routine Expenditure 18,920 20,607 23,448 25,871 30,298 35,202 13.22%

    Personal expenditures 17,069 18,187 20,349 22,895 26,179 30,165 12.06%Orderstand - other current expenditure 130 176 257 271 318 195 8.56%Material expenditures 626 819 1,062 1,204 1,839 1,900 24.87%Care cost - repair & maintenance 160 197 212 228 344 356 17.39%Official transportation cost - inspection 240 186 244 238 294 299 4.49%Debt repayment and interest 0 0 0 0 0 0Current transfer for lower regions 0 0 84 0 35 584Other unpredictable current expenditure 0 293 0 11 20 24Others 696 748 1,241 1,025 1,268 1,678 19.25%

    Development Expenditure 9,781 10,243 10,110 13,473 14,328 8,309 -3.21%Agriculture and forestry 284 176 84 193 278 429 8.59%Industry 12 10 12 12 23 86 49.34%Mining & energy 148 0 112 28 110 50 -19.46%Transportation, communication & tourism 5,666 6,245 5,726 7,907 6,925 2,577 -14.58%Trade, business & cooperatives 823 498 780 144 155 147 -29.18%Man power & resettlement 0 5 10 8 175 560Water resources and irrigation 0 0 12 10 0 5Regional development 415 159 716 376 867 433 0.87%Religeous affairs 11 15 28 57 37 35 27.23%Environmental & space order 1,294 656 1,210 514 705 906 -6.87%Educational, youth, culture, etc. 2 1,093 17 2,238 2,503 1,534 299.87%Health, social welfare & family planning 433 343 343 587 700 386 -2.27%People dwelling 2 16 17 15 13 14 56.32%Security & order 0 0 0 0 25 25Political information and communication 0 0 0 0 4 18Government apparature & controlling 494 813 891 1,229 1,616 789 9.84%Science, technology and research 200 215 153 155 183 293 7.96%Law 0 0 0 0 10 24Development subsidies to lower region 0 0 0 0 0 0

    Surplus/Deficit 107 58 -263 105 0 4,155Sources: Financial Statistics of the Second Level Government of Tana Toraja 1998/1999, Central of Board of Statis-

    tics of Kabupaten Tana Toraja.

    Averageannual

    increasingratio (%)

    I t e m

  • 11-17

    表 11.3.1 によれば、第 2 級地方自治体としてのタナトラジャ県の収入は 1993/94年度の 288 億ルピアから 1998/99 年度の 477 億ルピアへと年率 10.6%の割合で伸びてきている。しかしながら、その収入の中身を見てみるに、州レベルもしくは中央

    政府からの「助成金」からなる経常移転(current transfer)が、1993/94 年度で 90%、1994/95 年度で 87%、1995/96 年度で 85%、1996/97 年度で同じく 85%、1997/98 年度で 84%、1998/99 年度で 85%となっている。つまりタナトラジャ県においては健全財政を保つ上で助成金は欠かせないものとなっているのである。 しかしながら、わずかづつではあるが、この助成金の全歳入に占める割合は減少

    傾向にあるように見える。一方、主として所得税からなる「内部歳入」及び「商取引

    税/非商取引税」なる項目からなる商業活動に課している各種税金ならびに手数料収入についてみれば、ルピア危機の影響をまったく受けておらず、1993/94 年度以降の同期間それぞれ年率 14%、26%の割合で伸びてきているのである。これは次項で述べる通り、主としてコーヒー産業にかかわる商業活動による税収ないしは各

    種手数料収入に負うところ大であるということができるだろう。これはタナトラジ

    ャ県の有する特性のひとつである。コーヒービジネスは国際ビジネスであり、通常

    ドル建てで取引されるからである。ルピア危機の影響の影響を受けなかったのはこ

    の理由によるのである。 歳出増は 1993/94 年度以降年平均で 8.7%となっており、収入の伸びに比して若干低い。歳出は大きく「経常支出」と「開発支出」の 2 項目からなる。さらにこの経常支出は賃金給与からなる「人件費」、施設設備にかかわる「器具機材費」及び「維持管理

    に関わる費用」からなる。これらの支出の増加率は 1993/94 年度以降それぞれ年率で 12.1%、24.9%、17.4%となっている。金額的にもっとも大きいのは表 7.4-1 に見るとおり人件費である。1993/94 年度、1994/95 年度、1995/96 年度、1996/97 年度、1997/98 年度、1998/99 年度の各年度における全支出に対する人件費支出の割合はそれぞれ 60%、59%、61%、58%、59%、及び 69%となっている。1998/99 年度における開発支出は若干抑制気味となっている。この年度の人件費の占める割合が前年

    までのそれに比べて若干高いのはそのためであろう。 開発支出は 1997/98 年度まではおおむねコンスタントに支出されてきているが、1998/99 年度においてはむしろ低下している。これは上表に見るとおり「交通・通信・観光」費目の支出が抑えられたからである。この 1998/99 年度の統計資料はいまだ暫定的なものであり、したがって期末残高が前年までのそれに比べてきわめて

    大きい。つまり、これらの資料中の数字が確定値となった場合にはおおむね前年ま

    でと同じ水準に達するのはないかと考えられる所以である。 11.3.2. パイロットプロジェクト地点における村落世帯の所得水準と家計支出状況 調査団は本件調査開始時点から両数度にわたって現地踏査を行っている。これら

    の現地踏査を通じて、調査団はパイロットプラント建設のために明らかにしなけれ

    ばならないいくつかのテーマについて聞き込み調査を行ってきた。

  • 11-18

    下記は、このうち 2001 年時点における村落世帯の所得と家計支出に関する聞き込み調査の結果を取りまとめたものである。 (1) 平均的な家計支出状況 食糧 コメ: 3kg/世帯.日 × 2,000 Rp./kg × 30 日 = 180,000 Rp./世帯.月 その他の食糧(調理用油を含む): 100,000 Rp./世帯.月

    非食糧 ケロシン(灯油): 0.75 l/day × 2,000 Rp./l × 30 日 = 45,000 Rp./世帯.月 (平均ケロシン消費量は 0.5~1.0 リッター) ケロシンランプ(灯火用ランプ): 200,000 Rp./pc ÷ 18 月 = 11,000 Rp./世帯.月 不動産税(家屋にかかる資産税)(PBB: Pajak Bumi Bangunan): 15,000 Rp./世帯.月 教育費: 24,250 Rp./世帯.月 教科書: 30,000 Rp./年.子供一人 × 3 人 ÷ 12 月 = 7,500 Rp./世帯.月 制服: (27,000+20,000+20,000)(年間通じて 3 種類)×3 人÷12 月= 16,750 Rp./世帯.月 交通費: 249,000 Rp./世帯.月 マカレまで: 夫 45,000 Rp./回 × 1 回 = 45,000 Rp. 妻 45,000 Rp./回× 1 回 = 45,000 Rp. 子供 45,000 Rp./回× 1 回 × 3 人 = 135,000 Rp. ビトゥアンまで: 夫 12,000 Rp./回 × 1 回 = 12,000 Rp. 妻 12,000 Rp./回 × 1 回 = 12,000 Rp. 医療費: 15,000 Rp./世帯.月 注射等 4,000 Rp./回.月 × 3 人(子供のみ) = 12,000 Rp. 薬剤 3,000 Rp./世帯.月 農機具等: 920 Rp./世帯.月 鎌 25,000 Rp./本 110,000 Rp./10 年(耐用年数) ÷ 10 年 鍬 20,000 Rp./本 ÷ 12 月 = 920 Rp./世帯.月 スコップ 25,000 Rp./pc (耐用年数を 10 年に想定) 台付き梃 40,000 Rp./pc 計 595,170 Rp./ 世帯.月 (2) 平均家計収入 農家の場合: (主な農産物はコーヒーとカカオ、それに家畜の売上げが加わる)) コーヒー売上げ 500 kg/year in average × 5,000 Rp./kg as of 2001 = 2,500,000 Rp/年 カカオ売上げ 2,000 kg/year in average × 700 Rp./kg as of 2001= 1,400,000 Rp./年

  • 11-19

    (平均 4 頭と仮定) その他(自作のコメや野菜を売ったりしている): 500,000 Rp./年 計 4,400,000 Rp./世帯.年 したがって月当たりでは, 366,600 Rp./世帯.月 コーヒーやカカオ、その他自作のコメや野菜、家畜等の売上げによる農家の現金

    収入は上述の通り年間で 440 万ルピア(月当たりにすると 36 万 6,600 ルピア)に過ぎないが、彼らは畜産も併せ行っており平均して 2 頭のブタの他何頭かの水牛を所有している。そして、必要な場合にはこれらを売却して収入を得ることができる。つ

    まり、これらの可処分資産を利用して他の必要支出に充てるだけの支払能力を有し

    ているということである。

  • 11-20

    11.4. パイロットプロジェクト地点の概要 選定されたパイロットプロジェクト地点の概要を以下に示す。 11.4.1. パイロットプロジェクト地点 選定されたプロジェクト地点は以下のとおり ・地点名称: マサンダ(Masanda) ・対象村落: ベラウ(Belau) ・対象郡: ビトゥアン(Bittuang) ・対象県: タナトラジャ(Tana Toraja) ・対象州: 南スラウェシ(South Sulawesi) ・対象河川: マサンダ川(サダン川水系)

    マサンダ地点はタナトラジャ県の県都であるマカレから約 50km、南スラウェシ州の北部に位置する。マカレ・マサンダ間の道は未舗装の道路もあり、四輪駆動車

    でないとアクセスが難しいところもある。しかし、マカレとママサを結ぶ唯一の道

    路であるため、近年中にに舗装される計画がある。 マサンダ地点までの道路概況を表 11.4.1 に示す。

    表 11.4-1 マサンダ地点までの道路状況 区間 距離 所要時間(分) 舗装・路面状況

    Rantepao – Makale 12 km 20 舗装・良好

    舗装末端 18 km 40 舗装・良好

    – Bittuang 17 km 60 未舗装・比較的良好

    – 10 km 10 km 40 未舗装・比較的良好

    – Masanda 5 km 30 未舗装・悪い

    合計 62 km 3 時間 10 分

    11.4.2. マサンダ地点の電化状況 PLN による配電網がタナトラジャ県の中心からビトゥアン郡の中心地ビトゥアンまで延長されている。従って、ビトゥアンより先の 15 km 離れた対象村落ベラウ村までは現在未電化のままである。

    11.4.3. 電力供給地点の状況 ベラウ村とその周辺地域は山岳地域で、稲作や商品作物であるコーヒーやカカオ、

    キャッサバなどが広く栽培されている。また、村民の大半は農家であり、水牛や豚、

    地鶏などの家畜を飼育している。 ベラウ村にはレモ、バタン、サルプアン、バラナ、アラの5つの小集落がある。

    村民の家屋の多くは各集落の中心に集合して設置されている。

  • 11-21

    上記の5つの集落には、学校や教会などを含め、161 戸の家屋が電化対象として確認された。小集落毎の家屋数を表 11.4.2 に示す。

    表 11.4-2 供給計画地点の家屋数 小集落 村 家屋数

    1 Lemo Belau 48

    2 Batang Belau 23

    3 Salupuang Belau 32

    4 Barana Belau 39

    5 Alla Belau 19

    合計 161

    マサンダ地点および上記集落の位置を図 11.4.1, 図 11.4.2 にそれぞれ示す。

  • 11-22

    11.5.

    図 11.4-1 マサンダプロジェクト地点 (S=1 / 50,000)

  • 11-23

    図 11.4-2 プロジェクトサイト概要図

  • 11-24

    11.5. パイロットプロジェクトの計画・設計 11.5.1. 技術の現状及び留意事項 (1) 全体計画 パイロットプロジェクトの対象県である Tana-Toraja は、山岳地形を利用した棚田が発達しており、これに導水するための灌漑水路は伝統的技術として定着し

    ている。本プロジェクト地点においても小規模な灌漑用水路が設置されており、

    取水地点及び水路ルートは下記の理由から既設灌漑用設備位置を尊重するもの

    とした。 灌漑用水路の取水地点は、長年に亘る経験から、安定的に取水可能であると

    ともに洪水による影響の少ない地点が選ばれている。 既設灌漑水路(本プロジェクト導水路上流区間)を利用することにより、樹

    木の伐採を最小限度に留めることが可能である。 (2) 土木関係 既設灌漑用水路は素堀開渠であるが経過地には真砂化した土砂が分布しており、

    水流による洗掘・崩壊が懸念されることから、導水路は全面玉石コンクリートで

    ライニングすることとした。 また、同様な理由から、発電所停止時の余水による地山の崩壊を防止するため、

    水槽余水路を設置し、安全に余水処理が行えるよう配慮した。 (3) 電気・機械関係

    タナトラジャ地区では既に一部でこの種のマイクロ水力発電所は開発されてお

    り正常に運転されている例もあり、又さまざまの理由であまりうまくい運転され

    ていない例もある。 この地区で建設後細かいトラブルはあっても一応正常に運転されていると判断

    されるこの地区の発電設備は Taba、Tendan Dua、Bokin 等の発電所でクロスフロー型水車と同期発電機の組み合わせとダミーロードによる ELC 型コントロールパネルで制御されていて良質の電気が供給されている。管理組合がしっかりして

    いる事もあるが機器もその組み合わせも良好であったと判断される。 一方 Sa’dan Ulsusalu 発電所に関しては発電機が誘導発電機でその為に使われている台湾製コンデンサーの寿命短く(品質問題?)度々焼損し電力供給支障が発生しているとの事である。 この種のマイクロ水力発電の機械設備として一番留意すべき事は専門家でない

    地方の人でも割と容易に運転・保守できる事、万一のトラブルがあっても迅速に

    対処出来る事と購入機器が安価である事である。 その為に上記の例も参照してインドネシア国内で製作される機器(一部細かい

    部品はインドネシア市場で迅速に調達可能が条件)である事を前提とし機器を選

    択する事にした。

  • 11-25

    (4) 送配電関係 インドネシア国では 20kV と 380/220V の配電方式は国営電力組織であった PLNで既に確立されており、タナトラジャ地区の既設送配電設備もその PLN 方式も踏襲しており各家庭需要家の屋内配線も含めて問題となる大きなトラブルは発

    生していない。 又将来の PLN の系統にもそのまま切替接続が可能な様にすべての材料と方式を現在の PLN の送配電用規格に適用した。 従ってインドネシア国内で製作されて、インドネシア国内市場でも簡単に調達

    できる材料及びその架線方式を採用する事になった。

    11.5.2. 発電計画 (1) 最大使用水量 対象河川であるマサンダ川の河川流量については継続した観測記録がないため

    に、Tana-Toraja 県において稼働中のマイクロ水力発電所の稼働実績から渇水期流量を推定した。

    なお、渇水期(10 月)における流量観測を行い上記の妥当性を確認した。 本プロジェクトにおいては、通年安定的な運転が可能となるよう上記渇水流量

    を最大使用水量として設定した。

    (2) 有効落差 現地測定した水槽から発電所までの落差に、損失落差を考慮して有効落差は

    12.6mとなった。 (3) 最大出力 下式により最大出力は 37kW となった。 Pmax=9.8×0.52×12.6×0.58(効率:水車=0.70、発電機=0.85、増速機=0.97)

    11.5.3. 需要計画 本プロジェクトによる電化施設数は、表 11.4.2 に示すとおり 161 施設である。 1 施設当たりの供給力に関しては、下記事項を考慮して 150Wとした。 本プロジェクト実施県である Tana-Toraja 県における既設マイクロ水力発電所における1世帯当たりの供給力は 100Wであるが、需要家の中には増量を望む

    Tendan-Dua 発電所

    集水面積 13.6km2

    最大使用水量 0.35m3/s

    運転開始後4年間、水量不足に

    よる運転停止が無い

    単位渇水量=0.025m3/s/km2

    マサンダ渇水流量 0.025m3/s/km2×20.9 km2 =0.52m3/s

  • 11-26

    声も聞こえている。 上記既設地点の主要な需要は電灯であり、ソケット数は 3 ソケットで 20~40Wの白熱灯が使用されている。 電灯以外の需要としてはテレビ(30~50W程度)があり、テレビを点灯すると容量オーバーとなる。 マサンダ地点地元住民への意見聴取結果からも上記の意見が多く聞かれた。

    以上より、必要となる電力は下記のとおり計算される。 必要供給力=161 施設×0.15kW=24.15kW ただし、本プロジェクト供給地に隣接する Dusun Minaga(89 世帯)は、地元住民出資によるマイクロ水力発電所が稼働中であるが、発電設備には土砂流入や洪水に対

    する配慮が欠けていること、電圧や周波数変動が大きいことなどから、将来、本プ

    ロジェクトからの電力供給が必要とされる可能性が高いことから、計画時点では

    Minaga を将来の追加供給地として想定し、これを考慮して、下記のように供給力を設定した。 供給力=(161+89)×0.15kW=37kW

    11.5.4. 土木設計 (1) 取水設備 取水地点として選定した場所は、村人によって以前から灌漑用の簡易取水が行

    われている場所である。取水口にはこの地方によく見られる巨石の下から取水す

    る方式がとられていたため、マニュアルでも推奨しているとおり、壊さずに取水

    口としてそのまま利用した。取水口呑口面積を制限することで、洪水等の水位上

    昇時に必要以上の河水流入を防ぐことができるからである。 堰は材料を河川から調達できる Wet Masonry タイプ(最大高さ 0.7m)とし、右岸側は中州を形成する幅約 2m の巨石に接合する。中州の左岸側は流水が右岸側を通ることによって自然と土砂が堆積すると考えられるが、運転開始初期は空石

    積みにより取水口のある右岸側に集水する必要がある。また、取水口近くは堰の

    築造によって比較的緩やかな流れを形成して土砂が貯まりやすくなるから、排砂

    門(Stoplog)を設置して定期的に堆積土砂を排出できるように配慮した。

    (2) 沈砂池 マサンダ川は流送土砂が多い。流れのゆるやかな場所には大量の砂が短時間で

    堆積する。村人はここから砂を採取しコンクリートの骨材として活用している。

    こうした背景から、沈砂池は土砂貯留能力を重視したやや大型のものとした(On the job training 時には一般的な水槽サイズの算定方法を学んだ上で、砂の多い河川に対する特別措置として現地実習を実施)。堆積した土砂は沈砂池土砂溜に設

    置した flushing gate より排出する。Gate を出た土砂は沈砂池脇に設置された通常は余水吐として使用する水路によって河川下流に向けて放流される。

  • 11-27

    (3) 導水路 既設の取水設備からは小さな用水路が設置されている。既設用水路は素掘りの

    水路で元々やや急勾配となっていることから、これを利用することは落差を捨て

    ることになる。しかしながら、導水路で若干の損失落差を出しても想定した需要

    を十分に満たす出力が確保できていることから、導水路の一部は既設灌漑用水路

    を拡幅して使用することとした。また、導水路経過地には米、コーヒー、カカオ

    等の農作物が栽培されているため、灌漑用として導水路から若干量を排水できる

    ような構造とした。なお、導水路のルートに関しては、設置に伴う耕地の減少や

    自然破壊が起きないよう、土地所有者をはじめとする住民の多くに意見を求め、

    その結果、水田や貴重な樹木(バニラ等)を回避するような導水路ルートとなっ

    た。標準断面寸法は幅 0.8m、高さ 0.9m、総延長 375.5m である。

    (4) 水 槽 水槽は発電所情報の比較的安定した斜面に設置する。水槽は余水吐と土砂吐を

    備えたものとし、水圧管路への異物混入を防止するため(水車のランナ保護)の

    スクリーンを設置する。

    (5) 水圧管路 水圧管路は水槽と発電所を平面的直線で結ぶ最短ルートとした。水槽からの呑

    口部と水車への接続部は水平となるため2箇所の屈曲部はアンカーブロックで

    固定し、その間は約 5m 程度の間隔で支台を設置した。管は規定サイズの鉄板を丸め加工して製作することを考慮して、材料に無駄の出ないφ550mm とした。総延長は 39.7m となる。

    (6) 余水路 水槽での余水および貯留土砂を河川に放流するために余水路を設置する。余水

    路は水槽から河川までの最短距離に設置し、合流部には蛇篭を積み河川の洗堀を

    防止する。延長は約 40m 程度である。 (7) 発電所基礎 発電所設置予定地は平場となっており大規模な掘削は必要ないものの、対岸か

    らの支川(Nonok 川)の流入が洪水時には発電所護岸を直撃する可能性があるため石積み擁壁により補強する。

    (8) 放水路 前述のとおり、発電所と Nonok 川は相対する位置をとっている。仮に洪水等の影響で河川水位が上昇した場合、発電所直下に放水口を設けていると河川水が

    そこに流入して発電機器に影響を及ぼしかねない。したがって、放水路は Nonok

  • 11-28

    川の影響および河川水位上昇の影響を受けないように下流約 20m 付近まで延長して河川に放流するものとした。断面寸法は導水路断面と同様とする。

    11.5.5. 電気・機械設計 今回のマサンダの小水力発電計画は今後の同じような設備を他の地点にも採用さ

    れる事を前提にパイロットプランとして稼動後の永い運転保守を考えて全てイン

    ドネシア国内で製作される物かインドネシア国市場で容易に調達可能な機器を採

    用した事は既に説明した。(輸入品が多いとインドネシア国内の遠隔地では保守が

    難しい)。 個々の設計について下記する。 (1) 入口弁 ペンスットクの内径(580mm)からインドネシア国内市場で調達出来る直径580mm の手動式蝶型弁を使用しペンスットクとノズルとの間に挿入した。この開閉で水車の運転・停止時に水の完全な流入・停止が容易になり水車の完全停止

    が可能になる(水車に付いているガイドベンだけでは完全な止水は難しく水車は無負荷時でも漏水で回転を続ける)。

    (2) 水車 有効落差=12.6m、鉄管経=580mm、使用水量=520l/s の条件から、クロスフロー型水車を選択した。その水車の効率(0.67)を考慮すると水車出力は 42kW となり、発電機シャフトへの伝達出力は増速機の効率(0.97)を考慮して 40.8kW となった。適応クロスフロー型水車(T-13)のランナー径 300mm(設計標準径)から幅を630mm を算出した。また、ランナー強度補強のため中間シャフトと 8 枚の補強ディスクを採用した。また、季節による大きな負荷変動も無く1年を通じての水

    量(渇水期流量を採用)の変動も無いことを考慮して T-13 型水車の一枚の手動式ガイドベンとしている。なお、回転速度は 464rpm となった。(設計方法の詳細はマニュアルの Appendix6.1 に記載してある。)

    (3) 増速機 先に説明した通りベルト掛けとし水車(464rpm)と発電機(1500 rpm)両方の回転数を合わせる為に夫々のプーリーの直径を水車側 800 mm, 発電機側 250 mm、強度からベルトの巾を 113 mm とし、プーリーの巾を 130.5mm とした。又水車と発電機本体の軸受けの強度を考慮し、両方ともプーリー専用の軸受けを取り付ける

    事にした。

    (4) 発電機 水車の調速器に下記(5)ののようにダミーロード調速器を採用しているので

  • 11-29

    全負荷遮断時でも、その速度上昇が非常に少ない。従ってディーゼルエンジン用

    発電機の使用が可能となる。発電機は市販されているディーゼルエンジン用発電

    機(スタンフォードのライセンスでインドネシア製) を使用することとし、マサンダの設備に最も適合している使用(メーカー標準仕様:380/220V, 60kVA, 力率 80%、H種絶縁、回転数 1500rpm)発電機を採用した。上記(3)から増速器と発電機の効率を入れるとマサンダの最終発電出力は 37kW となる。勿論この発電機はブラッシュレス励磁機付で自動電圧調整装置(AVR)も装備されている。

    (5) 調速機(調速装置)

    後述の第 12 章 2.3 項のインドネシア製の ELC 型のパネルに装備されているダミーロード式調速機を採用している。このダミーロード式調速機は発電機の出力

    (実負荷とダミーロード負荷の合計)を一定にしてが常にその速度を一定に保つ

    装置であり、サイリスター(マサンダではその出力から 63A 用を採用)でコントロールされている為応動も迅速である。従って、マサンダの発電機は常に 50Hz に保たれている。

    (6) ダミーロード

    上記(5)ダミーロードとして使用するが、空冷式ヒーターなので気象条件に

    よって冷却量が変わる為、発電機総出力の 1.2 倍の容量を採用し実負荷の変動に十分対応出来る様に設計した。特にマサンダの場合発電所建物中で専用の部屋を

    作りその壁に十分なルーバーを付けてそこにダミーロードを設置し冷却効果を

    上げる様にした。これによりダミーロード冷却効果は非常に良くなっている。

    (7) コントロールパネル 上記(5)にある様に ELC 型のパネルを採用しており、前面扉付の壁掛け型でスチール製(塗装)で大きさは 高さ 1140 mm 巾 600 mm 奥行き 350 mm である。この中に調速装置(サイリスター用冷却装置付)、回路の制御装置、計測及び保

    護装置が収納されている。

    調速装置: 発電機周波数を検出して実負荷とダミーロードをサイリスターで常にこまめに切り替えて、水車発電機の速度を一定に保って

    いる。そのサイリスターの制御は一枚のプリント基盤(防塵塗料で加工済み)で行っており、その基盤には過速度、低速度の保護も含まれている。

    回路制御装置: 実負荷側に負荷入切の制御と過負荷保護の為にマグネットスイッチ(盤の前面より押しボタンスイッチで操作可能)と NFB が配置されている。

    計測装置: 電圧計① 発電機回路 (各線間電圧、相電圧を一つの切替スイ

  • 11-30

    ッチで測定) 電圧計② ダミーロード回路 (各相電圧常時表示) 周波数メーター 発電機回路で計測 運転時間計 発電機回路で計測 保護装置: 上記の他に歯付円筒フーズを実負荷側とダミーロード回路側に

    各相に装備してある。又配電線からの事故に対する保護の為そ

    の引出し口に避雷器を各相に入れてある。 また、その他に配電線からの事故に対する保護装置として、パネル外の負荷側の

    引き出し口に避雷器を各相に入れてある。

    11.5.6. 送配電計画 (1) パイロットプラント村落の状況・配電ルート 対象村落の需要家数は161軒で5つの集落に分かれている。分布状況は図

    11.5.1 のとおり。配電ルートには一部、急な場所が存在するが、配電するにあたり、特に問題になるような地点はない。 配電線については、実際に測量した図面をもとに、スパンは50m、最低地上

    高4.0mを守り、最短距離になるような位置に設計した。(図 11.5.1) 配電柱は道路の脇に設置するものが多いが、最短距離を確保するため木々の間

    を通過する場合は、線下の樹木を伐採し離隔距離を確保した。パイロットプラン

    トで使用したケーブルは被覆ケーブルなので、樹木に触れたからといってすぐに

    問題(地絡など)があるわけではないが、道路脇を通過するものについても樹木

    にきわめて接近しているものについては伐採を検討した。また、水田の中に設置

    した電柱もあるが、設置することについては事前に住民からの承諾を得ている。 配電ルートについて設計した後に配電ルートの距離、需要から各ケーブルに流

    れる電流を計算し、電圧降下を計算した。その結果をもとにすべてのケーブルの

    径を決定している。 また、各需要家には 220V の単相配電を行っている。

    (2) 配電電圧 計画された発電所からもっとも遠い集落でも1.5km以内であり、またもっ

    とも多く電流が流れる発電所から分岐点 A まで流れる電流は23.5A と小さく、この区間のケーブル径を基準の中でもっとも太いものにすると電圧降下は 1.3%となり、末端の需要家の電圧降下を規定の7%以下とすることができた。よって、

    昇圧する必要がないため、すべて 380/220V の低圧配電とすることとした。なお、この計算は現地 NGO において設計が可能であり、今回も主体的に行ったものである。

    (3)配電設備

  • 11-31

    支持設備:PLN 標準である7mの鋼製ポールを使用。PLN の標準通り、ポールの全長の1/6を埋設している。 ケーブル:使用したケーブルの種類は次の通り。 70mm2×4, 35mm2×4, 16mm2×4, 16mm2×2, 10mm2×2(屋内配電用) 引留め支線:横方向に力が掛かる電柱(例えば、ケーブルに角度がついている、

    ケーブルの末端など)には引留め支線を設置し転倒を防止している。引留め支線

    のアンカーにはコンクリートを使用し、支線には鋼製のワイヤーを使用。

  • 11-32

    Br5

    House

    Br1

    Br2

    Br3

    Br4

    PS

    Br5

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    Br3Br2

    Br6

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    Br1

    Br1

    Br2

    Br3

    Masanda Riv.

    LEGEND

    Foot Pass

    Transmission Line

    Riv. River

    Br1

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    Br1Br2

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    1

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    1

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    10 43

    1

    2

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    373839

    4041

    42

    4445

    46

    4748

    1

    23

    45678

    11

    1213

    10 9

    14

    32

    3130

    25

    1

    2 3

    456

    8

    7

    36

    9

    10

    1112

    14

    151617

    18

    20

    7

    8

    9

    1011

    12

    A

    DUSUN

    BARANA

    DUSUN

    LEMO

    DUSUN

    SALUPUANG

    DUSUN

    BATANG

    DUSUN

    ALLA

    図 11.5-1 マサンダ概要図

  • 11-33

    11.6. パイロットプロジェクト仕様

    土木および機電関連の仕様については以下のとおりである。

    表 11.6-1 パイロットプラントの技術仕様 Items Subject

    Catchment area 20.9 km2 Maximum Output 37 kW Maximum Discharge 0.52 m3/s Effective Head 12.6 m

    Dam B 5.4 m * H 0.7 m Sand Trap B 0.8 m * H 0.7 m (Stoplogs) Intake Natural stone use

    Intake facilities

    Sand Basin B 1.0-2.2 m * L 15.5 m * H 0.9-2.4 m Type Wet masonry, open channel Length 375.5 m Headrace Cross Section B 0.8 m * H 0.9 m Type Ordinary forbey tank

    Forbey Tank Dimension B 0.8-1.75 m * L 7.58 m * H 0.9-2.0 m Type Steel Pipe t=4.0mm Diameter 580 mm Steel Penstock Length 39.734 m Type Open channel Length Approx. 40 m Spillway Cross Section Circular B 1.0 * H 0.9 m Type Ground Type

    Power house Dimension B 5.0 m * L 4.0 m * H 3.0-3.5 m + B 1.4 m * L 1.3 m

    Hydraulic Turbine Cross flow turbines SKAT T-13

    Generator and Exciter Synchronous generator made in Indonesia, Dummy Load Air cooling system Transformer Conformance to IEC PUB 76 / SPLN 50 / 82 / SLI 1985 Valves Butterfly valve made in Indonesia, manual operated

    Type Ones available within Indonesia Low voltage distribution lines Length 4,860 m

    第11章 パイロットプロジェクト11.1パイロットプロジェクトの目的11.2パイロットプロジェクト地点選定基本方針11.2.1パイロットプロジェクトの地点数11.2.2パイロットプロジェクトのエネルギー種の選定11.2.3小水力発電パイロットプロジェクト地点の特定

    11.3パイロットプロジェクト地点の社会経済状況11.3.1タナトラジャ県の財政11.3.2パイロットプロジェクト地点における村落世帯の所得水準と家計支出状況

    11.4パイロットプロジェクト地点の概要11.4.1パイロットプロジェクト地点11.4.2マサンダ地点の電化状況11.4.3電力供給地点の状況

    11.5パイロットプロジェクトの計画・設計11.5.1技術の現状及び留意事項11.5.2発電計画11.5.3需要計画11.5.4土木設計11.5.5電気・機械設計11.5.6送配電計画

    11.6パイロットプロジェクト仕様