スプラインナット総合カタログ

A　製品解説 B　サポートブック（別冊）

特長 ....................................................... A14-2スプラインナットの特長 .................... A14-2 · 構造と特長 ........................................ A14-2 · 専用転造軸の特長 .............................. A14-3 · 高強度亜鉛合金 ................................. A14-3 · 回転方向すきま ................................. A14-4

選定のポイント.................................... A14-5スプラインナットの選定 .................... A14-5

寸法図・寸法表DPM形 ................................................. A14-8DP形 ..................................................... A14-10

設計のポイント.................................... A14-12はめあい ............................................... A14-12取付け ................................................... A14-12潤滑 ....................................................... A14-13

呼び形番 ............................................... A14-14 · 呼び形番の構成例 .............................. A14-14 · ご発注時の注意点 .............................. A14-14

取扱い上の注意事項 ............................ A14-15

特長 ....................................................... B14-2スプラインナットの特長 .................... B14-2 · 構造と特長 ........................................ B14-2 · 専用転造軸の特長 .............................. B14-3 · 高強度亜鉛合金 ................................. B14-3 · 回転方向すきま ................................. B14-4

選定のポイント.................................... B14-5スプラインナットの選定 .................... B14-5 · すべり速度Vの算出 ........................... B14-7 · 計算例 ............................................... B14-7

メンテナンス ....................................... B14-8潤滑 ....................................................... B14-8

呼び形番 ............................................... B14-9 · 呼び形番の構成例 .............................. B14-9 · ご発注時の注意点 .............................. B14-9

取扱い上の注意事項 ............................ B14-10

A14-1

512J

A14-2

スプラインナットの特長

DPM形

DP形

構造と特長 スプラインナットDPM形/DP形は、精度の高いスプライン軸を中子として特殊合金（ A14-3 参照）をダイカスト成形した低価格な軸受です。従来の機械加工品と異なり、すべり面には鋳造時に形成されるチル層がそのまま残留しているので耐摩耗性に優れています。 組合わせるスプライン軸は転造成形によって表面が加工硬化し、しかも表面は鏡面仕上げされているので、なめらかな摺動が得られます。 特殊設計のスプライン歯形は接触面積が大きく、しかもトルクが負荷すると自動的に芯が決まる同芯性があるため、トルク伝達に安定した性能を発揮します。

スプラインナット 特長

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A14-3

スプラインナット

専用転造軸の特長 スプラインナットには、長さが規格化された専用の転造軸が用意されています。

【耐摩耗性の向上】 冷間転造により軸の歯形を成形しているため、歯面の表面は250HV以上に加工硬化し、しかもなめらかな鏡面仕上げとなっているので耐摩耗性に優れています。ナットの組合わせによる動きも極めてスムーズです。

【機械的特性の向上】 転造された軸の歯面の内部組織は、ファイバーフローが歯形の輪郭に沿って生じ、歯元部の組織が極めて密となり疲れ強さが増加しています。

【軸端支持部の追加工】 転造された軸のため、軸端の支持軸受部などの追加工は、旋削・フライス加工で容易に行うことができます。

高強度亜鉛合金 スプラインナットに用いられる高強度亜鉛合金は、耐焼付性、耐摩耗性および耐荷重性に優れた材料です。その機械的性質、物理的性質、耐摩耗性は、下記の通りです。 ※ 下記値は目安値であり、保証値ではありません。

【機械的性質】

表1

項　　目 内　　容

引張強さ 275～314 N/mm 2

引張耐力（0.2％） 216～245 N/mm 2

圧縮強さ 539～686 N/mm 2

圧縮耐力（0.2％） 294～343 N/mm 2

疲れ強さ 132 N/mm 2 ×10 7 （シェンク式曲げ試験）

シャルピー衝撃値 0.098～0.49 N･m/mm 2

伸び 1～5 ％

硬さ 120～145 HV

特長スプラインナットの特長

512J

A14-4

【物理的性質】

表2

項　　目 内　　容

比重 6.8

比熱 460 J/（kg･K）

溶融点 390 ℃

熱膨張係数 24×10 -6

【耐摩耗性】 表3 　 〈試験条件：アムスラー式摩耗試験機〉

項　　目 内　　容

試験片回転数 185 min -1

荷重 392 N

潤滑剤 ダイナモ油

距離（km）

リン青銅2種

青銅3種

THK高強度亜鉛合金

黄銅3種 摩耗量（mg）

80

60

40

20

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

図1　 高強度亜鉛合金の耐摩耗性

回転方向すきま 回転方向すきま：≦20'　MAX

512J

A14-5

スプラインナット

スプラインナットの選定 【動的許容トルクT】 動的許容トルク（T）とは軸受の歯面に作用する接触面圧が9.8N/mm 2 となるときのトルクを示します。この値はスプラインナットの強度の目安として使用します。

【pV値】 すべり軸受では接触面圧（p）とすべり速度（V）の積であるpV値を使用できるかどうかの目安とします。スプラインナットの選定の目安として 図1 のpV値をご参照ください。なおこのpV値は潤滑条件によっても変わります。

● f S ：安全係数 スプラインナットに作用する荷重を計算する場合には物体の重量、運動速度によって変化する慣性力の影響などを正確に求める必要があります。一般的に往復または回転運動する機械では、常時繰返される起動停止時の衝撃などのすべてを正確に求めることは容易ではありません。従って実際の荷重が得られない場合は、経験的に得られた 表1 の安全係数（f S ）を考慮して軸受を選定する必要があります。

すべり速度 V （m/min）

面圧 p（N/mm2 ）

10 7 5

3

2

1 0.7 0.5

0.3

0.2

1 2 3 5 7 10 20 30 50 70 100

図1　 pV値

表1 　 安全係数（f S ）

荷　重　の　種　類 f S の下限

使用頻度の少ない静荷重のとき 1～2

一般的な一方向荷重のとき 2～3

振動・衝撃を伴う荷重のとき 4以上

スプラインナット 選定のポイント

512J

A14-6

● f T ：温度係数 スプラインナットの温度が常温の範囲をこえると、耐焼付性および素材の強度が減少してくるので、 図2 の温度係数を動的許容トルク（T）に乗ずる必要があります。 以上より、スプラインナットを選定する場合に、強度上からつぎの式を満足させる必要があります。 動的許容トルク（T）

fT•T PT

fS

f S ： 安全係数 （ A14-5 表1 参照） f T ： 温度係数 （ 図2 参照） T ： 動的許容トルク （N･m） P T ： 負荷トルク （N･m）

使用温度（℃）

温度係数 fT

‒20 0

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

20 40 60 80 100 120

図2 　 温度係数

● 表面硬さと耐摩耗性 軸の硬さはスプラインナットの耐摩耗性に大きく影響します。 図3 のように硬さが250HV以下になると摩耗が多くなります。また表面粗さはRa0.8以下が望まれます。 専用転造軸は、転造の加工硬化により表面硬さは250HV以上、表面粗さはRa0.2以下に仕上げられているので耐摩耗性に優れています。

相手硬度（HV）

摩耗量（mm）

1.1

1.0

0.9

0.8

100 200 300 400 500 600 700

0.7

0.6

0.5

図3 　 表面硬さと耐摩耗性

【接触面圧pの算出】

p = 9.8PT

T p ：負荷トルク（P T ）が加わったときの歯面の接触面圧　（N/mm 2 ） T ：動的許容トルク （N･m） P T ：負荷トルク （N･m）

512J

A14-7

スプラインナット

【すべり速度Vの算出】 スプラインの場合、歯面のすべり速度は送り速度と同じです。 V ：歯面滑り速度 （m/min）

選定のポイントスプラインナットの選定

512J

A14-8 各種ダウンロードはテクニカルサイトで呼び形番を検索してください https://tech.thk.com

DPM形

スプラインナット 外形寸法 スプラインナット寸法

呼び形番 外径

D 許容差 長さ フランジ径 H B PCD r F d h9 L D 1

DPM 1220 22

0 ‒0.052

20 44 6 5.4 31 1.5 7 1.5 DPM 1230 30 DPM 1520 22 20 44 6 5.4 31 1.5 7 1.5 DPM 1530 30 DPM 1723 28 23 51 7 6.6 38 1.5 8 1.5 DPM 1735 35 DPM 2028 32

0 ‒0.062

28 56 7 6.6 42 1.5 10.5 1.5 DPM 2040 40 DPM 2536 36 36 61 8 6.6 47 2 14 2 DPM 2550 50 DPM 3040 44 40 76 10 9 58 2 15 2 DPM 3056 56 DPM 3544 52

0 ‒0.074

44 84 10 9 66 2.5 17 2.5 DPM 3560 60 DPM 4050 58 50 98 12 11 76 2.5 19 3 DPM 4068 68 DPM 4555 64 55 104 12 11 80 2.5 21.5 3 DPM 4575 75 DPM 5060 68 60 109 12 11 85 2.5 24 3.5 DPM 5080 80 注） 動的許容トルク（T）は、スプラインの歯面の接触面圧が9.8N/mm 2 となるときのトルクを示します。 回転方向すきま：≦20′ MAX 1軸に複数個のスプラインナットを取り付ける際に、それぞれのスプラインナットのフランジの取付穴位置やキー溝位置が若干ずれる場合がございます。 1つのハウジングに複数個のスプラインナットを取り付ける仕様は避けてください。

スプライン軸全長（mm表示）

スプラインナットの呼び形番

1本の軸に組合わされるスプラインナットの個数

スプラインナットと スプライン軸の組合わせの場合

2 DPM2040 +360L 呼び形番の構成例

512J

A14-9

スプラインナット

FHL

PCDφ D1 φ Dr φ Do φ Dkφ D

3-φ dr

4-φ B

単位：mm スプライン軸 スプライン部詳細 標準軸長 最大軸長 動的許容 質　量

呼び形番 トルク スプライン スプライン

ピッチ径 大径 小径 歯数 T 注） ナット 軸 D 0 D k D r Z N･m g kg/m

SS 12 12 12.8 10.9 16 1500 1500 17.6 80 0.9 26.5 90

SS 15 15 16.1 13.5 16 1500 2000 30.4 70 1.4 46.1 80

SS 17 17 18.2 15.4 16 1500 2000 43.1 120 1.7 65.7 150

SS 20 20 21.5 18.3 16 1500 3200 70.6 160 2.5 100 200

SS 25 25 26.9 22.6 16 1500 3200 152 220 3.8 211 270

SS 30 30 31.8 28.2 20 1500 3200 212 400 5.5 297 480

SS 35 35 37.1 32.8 20 1500 3200 325 560 7.5 443 670

SS 40 40 42.4 37.5 20 1500 3200 480 830 9.8 673 970

SS 45 45 47.7 42.1 20 1500 3200 680 980 12.4 927 1110

SS 50 50 53 46.8 20 1500 3200 910 1080 15.4 1220 1290

スプライン軸全長（mm表示）

スプライン軸の呼び形番

スプライン軸 SS20 +1500L

呼び形番の構成例

512J

A14-10 各種ダウンロードはテクニカルサイトで呼び形番を検索してください https://tech.thk.com

DP形

スプラインナット 外形寸法 スプラインナット寸法

呼び形番 外径 L キー溝寸法

D 許容差 0 b 許容差 t ℓ d r h9 ‒0.3 N9

DP 12 22 0 ‒0.052

22 4 0 ‒0.030

2 16 1.5 1 DP 15 22 22 4 2 16 1.5 1 DP 17 28 26 5 2.5 18 1.5 1 DP 20 32

0 ‒0.062

31 7 0 ‒0.036

2.5 22 1.5 1 DP 25 36 40 7 2.5 26 2 1 DP 30 44 45 10 4 32 2 1.5 DP 35 52

0 ‒0.074

49 12 0 ‒0.043

4.5 40 2.5 1.5 DP 40 58 57 15 5 42 3 1.5 DP 45 64 62 15 5 48 3 1.5 DP 50 68 67 15 5 52 3.5 1.5 注） 動的許容トルク（T）は、スプラインの歯面の接触面圧が9.8N/mm 2 となるときのトルクを示します。 回転方向すきま：≦20′ MAX 1軸に複数個のスプラインナットを取り付ける際に、それぞれのスプラインナットのキー溝位置が若干ずれる場合がございます。 1つのハウジングに複数個のスプラインナットを取り付ける仕様は避けてください。

スプライン軸全長（mm表示）

スプラインナットの呼び形番

1本の軸に組合わされるスプラインナットの個数

スプラインナットと スプライン軸の組合わせの場合

2 DP20 +360L

呼び形番の構成例

512J

A14-11

スプラインナット

L

r

r

3-φ d

φ D φ Dr φ Do φ Dk

b

t

ℓ

単位：mm

スプライン軸 スプライン軸詳細 標準軸長 最大軸長 動的許容 質　量

呼び形番 トルク スプライン スプライン

ピッチ径 大径 小径 歯数 T 注） ナット 軸 D 0 D k D r Z N･m g kg/m

SS 12 12 12.8 10.9 16 1500 1500 19.6 40 0.9 SS 15 15 16.1 13.5 16 1500 2000 33.3 30 1.4 SS 17 17 18.2 15.4 16 1500 2000 48 65 1.7 SS 20 20 21.5 18.3 16 1500 3200 77.5 100 2.5 SS 25 25 26.9 22.6 16 1500 3200 169 135 3.8 SS 30 30 31.8 28.2 20 1500 3200 238 230 5.5 SS 35 35 37.1 32.8 20 1500 3200 362 360 7.5 SS 40 40 42.4 37.5 20 1500 3200 547 510 9.8 SS 45 45 47.7 42.1 20 1500 3200 767 640 12.4 SS 50 50 53 46.8 20 1500 3200 1020 710 15.4

スプライン軸全長（mm表示）

スプライン軸の呼び形番

スプライン軸 SS20 +1500L

呼び形番の構成例

512J

A14-12

はめあい スプラインナットの外径とハウジングとのはめあいは、すきまばめを推奨します。 ハウジング内径公差：G7

取付け 【ハウジング口元面取りについて】 スプラインナットのフランジ付け根部分は強度を増すため、すみがR形状となっています。このためハウジング内径の口元部に面取りを設けてください。

C面取り

図1

表1　 ハウジング口元面取り 単位：mm

呼び形番 口元の面取り C

（最小） DPM 12

2 15 17 20 25 2.5 30 35

3 40 45 50

スプラインナット 設計のポイント

512J

A14-13

スプラインナット

潤滑 スプラインナットの使用条件により潤滑方法を選定してください。

【油潤滑】 スプラインナットの潤滑には油潤滑を推奨します。その方法は、油浴潤滑または滴下潤滑が有効です。油浴潤滑は、高速、重荷重あるいは外部より熱の伝達を受ける厳しい条件に適し、スプラインナットの冷却も行われるので最適な方法です。滴下潤滑は、中速または低速で、中軽荷重に適しています。潤滑油は使用条件により 表2 のように選択してください。

表2 　 潤滑油の選定

使用条件 潤滑油の種類

低速･高負荷･高温 粘度の高い摺動面用油またはタービン油

高速･低負荷･低温 粘度の低い摺動面用油またはタービン油

【グリース潤滑】 使用頻度の少ない低速送りの場合、軸にグリースを定期的に手塗りするかスプラインナットの給脂穴を使用して潤滑することができます。使用グリースはリチウム石けん基グリース2号を推奨します。

設計のポイント潤滑

512J

A14-14

呼び形番の構成例 呼び形番は各形番の特長により構成が異なりますので、対応の呼び形番の構成例をご参照ください。

【スプラインナット】 ● DP形, DPM形, SS形

スプラインナットの呼び形番

スプラインナットのみ

スプライン軸全長（mm表示）

スプライン軸の呼び形番

スプライン軸のみ

DPM2040 SS20 +1500L

● ●

スプライン軸全長（mm表示）

スプラインナットの呼び形番

1本の軸に組合わされるスプラインナットの個数

スプラインナットと スプライン軸の組合わせ

2 DPM2040 +360L ●

ご発注時の注意点 1軸に複数個のスプラインナットを取り付ける際に、それぞれのスプラインナットのフランジの取付穴位置やキー溝位置が若干ずれる場合がございます。1つのハウジングに複数個のスプラインナットを取り付ける仕様は避けてください。

スプラインナット 呼び形番

512J

A14-15

スプラインナット

【取扱い】 （1） スプラインナットおよびスプライン軸を傾けますと、自重で落下する場合がありますのでご注

意ください。 （2） スプラインナットを落下させたり、叩いたりしないでください。けがや破損の原因となります。

また、衝撃を与えた場合、外観に破損が見られなくとも機能を損失する可能性があります。 （3） 製品を扱う場合は、必要に応じて保護手袋、安全靴等を着用して安全を確保してください。

【使用上の注意】 （1） 切り粉やクーラントなどの異物の流入のないようご注意ください。破損の原因となります。 （2） 切り粉、クーラント、腐食性のある溶剤、水などが製品内部に流入するような環境下で使用され

る場合は、ジャバラまたはカバー等により製品への流入を避けてください。 （3） 切り粉などの異物が付着した場合は、洗浄した後、潤滑剤を再封入してください。 （4） 製品に位置決め部品（ピン、キー等）を無理に打ち込まないでください。摺動面に圧痕が生じ機能

を損失する原因となります。 （5） スプライン軸の支持部とスプラインナットの芯違いや倒れがあると極端に寿命が短くなる場合

がありますので、取付部品、組付精度には十分ご注意ください。 （6） 取付部材の剛性および精度が不足すると、軸受の荷重が局部的に集中し、軸受性能が著しく低下

します。したがって、ハウジングやベースの剛性・精度、固定用ボルトの強度について十分検討ください。

【潤滑】 （1） 防錆油はよく拭き取り、潤滑剤を封入してからお使いください。 （2） 異なる潤滑剤を混合しての使用は避けてください。増ちょう剤が同種類のグリースでも、添加剤

などが異なることにより、お互いに悪影響を及ぼす恐れがあります。 （3） 常に振動が作用する箇所、クリーンルーム、真空、低温・高温などの特殊環境下で使用される場合

は、仕様・環境に適したグリースをご使用ください。 （4） 製品を潤滑する場合には、内部にグリースが入るよう慣らしストロークを数度おこなってくだ

さい。 （5） 温度によりグリースのちょう度は変化します。ちょう度の変化によってスプラインナットの摺

動抵抗も変化しますのでご注意ください。 （6） 給脂後はグリースの攪拌抵抗によりスプラインナットの摺動抵抗が増大する可能性があります。

必ず慣らし運転をおこない、グリースを十分なじませてから、機械の運転をおこなってください。 （7） 給脂直後は余分なグリースが周囲に飛び散る可能性がありますので、必要に応じて拭き取って

ご使用ください。 （8） グリースは使用時間とともに性状は劣化し潤滑性能は低下しますので、使用頻度に応じたグ

リース点検と補給が必要です。 （9） 使用条件や使用環境により給脂間隔が異なります。最終的な給脂間隔・量は実機にて設定願います。 （10） 油潤滑にて使用される場合、スプラインナットの取付姿勢によっては潤滑油が行き渡らないこ

とがありますので、設計時に十分ご検討ください。

スプラインナット 取扱い上の注意事項

512J

A14-16

【保管】 スプラインナットは、弊社の梱包および荷姿で、高温、低温、多湿を避け、水平な状態で室内に保管してください。

【廃棄】 製品は産業廃棄物として適切な廃棄処置をおこなってください。

512J

スプラインナット総合カタログ

特長 ....................................................... B14-2スプラインナットの特長 .................... B14-2 · 構造と特長 ........................................ B14-2 · 専用転造軸の特長 .............................. B14-3 · 高強度亜鉛合金 ................................. B14-3 · 回転方向すきま ................................. B14-4

選定のポイント.................................... B14-5スプラインナットの選定 .................... B14-5 · すべり速度Vの算出 ........................... B14-7 · 計算例 ............................................... B14-7

メンテナンス ....................................... B14-8潤滑 ....................................................... B14-8

呼び形番 ............................................... B14-9 · 呼び形番の構成例 .............................. B14-9 · ご発注時の注意点 .............................. B14-9

取扱い上の注意事項 ............................ B14-10

特長 ....................................................... A14-2スプラインナットの特長 .................... A14-2 · 構造と特長 ........................................ A14-2 · 専用転造軸の特長 .............................. A14-3 · 高強度亜鉛合金 ................................. A14-3 · 回転方向すきま ................................. A14-4

選定のポイント.................................... A14-5スプラインナットの選定 .................... A14-5

寸法図・寸法表DPM形 ................................................. A14-8DP形 ..................................................... A14-10

設計のポイント.................................... A14-12はめあい ............................................... A14-12取付け ................................................... A14-12潤滑 ....................................................... A14-13

呼び形番 ............................................... A14-14 · 呼び形番の構成例 .............................. A14-14 · ご発注時の注意点 .............................. A14-14

取扱い上の注意事項 ............................ A14-15

B　サポートブック A　製品解説（別冊）

B14-1

512J

B14-2

スプラインナットの特長

DPM形

DP形

構造と特長 スプラインナットDPM形/DP形は、精度の高いスプライン軸を中子として特殊合金（ B14-3 参照）をダイカスト成形した低価格な軸受です。従来の機械加工品と異なり、すべり面には鋳造時に形成されるチル層がそのまま残留しているので耐摩耗性に優れています。 組合わせるスプライン軸は転造成形によって表面が加工硬化し、しかも表面は鏡面仕上げされているので、なめらかな摺動が得られます。 特殊設計のスプライン歯形は接触面積が大きく、しかもトルクが負荷すると自動的に芯が決まる同芯性があるため、トルク伝達に安定した性能を発揮します。

スプラインナット 特長

512J

B14-3

スプラインナット

専用転造軸の特長 スプラインナットには、長さが規格化された専用の転造軸が用意されています。

【耐摩耗性の向上】 冷間転造により軸の歯形を成形しているため、歯面の表面は250HV以上に加工硬化し、しかもなめらかな鏡面仕上げとなっているので耐摩耗性に優れています。ナットの組合わせによる動きも極めてスムーズです。

【機械的特性の向上】 転造された軸の歯面の内部組織は、ファイバーフローが歯形の輪郭に沿って生じ、歯元部の組織が極めて密となり疲れ強さが増加しています。

【軸端支持部の追加工】 転造された軸のため、軸端の支持軸受部などの追加工は、旋削・フライス加工で容易に行うことができます。

高強度亜鉛合金 スプラインナットに用いられる高強度亜鉛合金は、耐焼付性、耐摩耗性および耐荷重性に優れた材料です。その機械的性質、物理的性質、耐摩耗性は、下記の通りです。 ※ 下記値は目安値であり、保証値ではありません。

【機械的性質】

表1

項　　目 内　　容

引張強さ 275～314 N/mm 2

引張耐力（0.2％） 216～245 N/mm 2

圧縮強さ 539～686 N/mm 2

圧縮耐力（0.2％） 294～343 N/mm 2

疲れ強さ 132 N/mm 2 ×10 7 （シェンク式曲げ試験）

シャルピー衝撃値 0.098～0.49 N･m/mm 2

伸び 1～5 ％

硬さ 120～145 HV

特長スプラインナットの特長

512J

B14-4

【物理的性質】

表2

項　　目 内　　容

比重 6.8

比熱 460 J/（kg･K）

溶融点 390 ℃

熱膨張係数 24×10 -6

【耐摩耗性】 表3 　 〈試験条件：アムスラー式摩耗試験機〉

項　　目 内　　容

試験片回転数 185 min -1

荷重 392 N

潤滑剤 ダイナモ油

距離（km）

リン青銅2種

青銅3種

THK高強度亜鉛合金

黄銅3種 摩耗量（mg）

80

60

40

20

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

図1　 高強度亜鉛合金の耐摩耗性

回転方向すきま 回転方向すきま：≦20'　MAX

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B14-5

スプラインナット

スプラインナットの選定 【動的許容トルクT】 動的許容トルク（T）とは軸受の歯面に作用する接触面圧が9.8N/mm 2 となるときのトルクを示します。この値はスプラインナットの強度の目安として使用します。

【pV値】 すべり軸受では接触面圧（p）とすべり速度（V）の積であるpV値を使用できるかどうかの目安とします。スプラインナットの選定の目安として 図1 のpV値をご参照ください。なおこのpV値は潤滑条件によっても変わります。

● f S ：安全係数 スプラインナットに作用する荷重を計算する場合には物体の重量、運動速度によって変化する慣性力の影響などを正確に求める必要があります。一般的に往復または回転運動する機械では、常時繰返される起動停止時の衝撃などのすべてを正確に求めることは容易ではありません。従って実際の荷重が得られない場合は、経験的に得られた 表1 の安全係数（f S ）を考慮して軸受を選定する必要があります。

すべり速度 V （m/min）

面圧 p（N/mm2 ）

10 7 5

3

2

1 0.7 0.5

0.3

0.2

1 2 3 5 7 10 20 30 50 70 100

図1　 pV値

表1 　 安全係数（f S ）

荷　重　の　種　類 f S の下限

使用頻度の少ない静荷重のとき 1～2

一般的な一方向荷重のとき 2～3

振動・衝撃を伴う荷重のとき 4以上

スプラインナット 選定のポイント

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B14-6

● f T ：温度係数 スプラインナットの温度が常温の範囲をこえると、耐焼付性および素材の強度が減少してくるので、 図2 の温度係数を動的許容トルク（T）に乗ずる必要があります。 以上より、スプラインナットを選定する場合に、強度上からつぎの式を満足させる必要があります。 動的許容トルク（T）

fT•T PT

fS

f S ： 安全係数 （ B14-5 表1 参照） f T ： 温度係数 （ 図2 参照） T ： 動的許容トルク （N･m） P T ： 負荷トルク （N･m）

使用温度（℃）

温度係数 fT

‒20 0

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

20 40 60 80 100 120

図2 　 温度係数

● 表面硬さと耐摩耗性 軸の硬さはスプラインナットの耐摩耗性に大きく影響します。 図3 のように硬さが250HV以下になると摩耗が多くなります。また表面粗さはRa0.8以下が望まれます。 専用転造軸は、転造の加工硬化により表面硬さは250HV以上、表面粗さはRa0.2以下に仕上げられているので耐摩耗性に優れています。

相手硬度（HV）

摩耗量（mm）

1.1

1.0

0.9

0.8

100 200 300 400 500 600 700

0.7

0.6

0.5

図3 　 表面硬さと耐摩耗性

【接触面圧pの算出】

p = 9.8PT

T p ：負荷トルク（P T ）が加わったときの歯面の接触面圧　（N/mm 2 ） T ：動的許容トルク （N･m） P T ：負荷トルク （N･m）

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B14-7

スプラインナット

すべり速度Vの算出 スプラインの場合、歯面のすべり速度は送り速度と同じです。 V ：歯面滑り速度 （m/min）

計算例 スプラインナットDPM形を使用して負荷トルク78N･mを伝達しながら軸方向速度5m/minで往復運動を行います。負荷トルクは方向性が一定でなく、振動･衝撃を伴う条件のときに使用できるスプラインナットを選定します。 まず使用可能な動的許容トルク（T）を持つナットを選定します。

4　78 1

fS•PT fT

T ≧ = = 312N•m

安全係数（f S ） =4 温度係数（f T ） =1 負荷トルク（P T ） =78 N･m

上記の動的許容トルク（T）を満足するスプラインナットとしてDPM3560形（動的許容トルクT=443N･m）を選定します。 つぎにpV値について検討します。 接触面圧（p）を求めます。

p = 　9.8 = 　9.8 ≒ 1.73 N/mm2 78

443 PT T

すべり速度（V）を求めます。

V = 5m/min

pV値グラフ（ B14-5 図1 参照）から pの値1.73N/mm 2 に対して Vは13.5m/min以下であれば異常摩耗は発生しないと判断されるので、DPM3560形を選定します。

選定のポイントスプラインナットの選定

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B14-8

潤滑 スプラインナットの使用条件により潤滑方法を選定してください。

【油潤滑】 スプラインナットの潤滑には油潤滑を推奨します。その方法は、油浴潤滑または滴下潤滑が有効です。油浴潤滑は、高速、重荷重あるいは外部より熱の伝達を受ける厳しい条件に適し、スプラインナットの冷却も行われるので最適な方法です。滴下潤滑は、中速または低速で、中軽荷重に適しています。潤滑油は使用条件により 表1 のように選択してください。

表1 　 潤滑油の選定

使用条件 潤滑油の種類

低速･高負荷･高温 粘度の高い摺動面用油またはタービン油

高速･低負荷･低温 粘度の低い摺動面用油またはタービン油

【グリース潤滑】 使用頻度の少ない低速送りの場合、軸にグリースを定期的に手塗りするかスプラインナットの給脂穴を使用して潤滑することができます。使用グリースはリチウム石けん基グリース2号を推奨します。

スプラインナット メンテナンス

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B14-9

スプラインナット

呼び形番の構成例 呼び形番は各形番の特長により構成が異なりますので、対応の呼び形番の構成例をご参照ください。

【スプラインナット】 ● DP形, DPM形, SS形

スプラインナットの呼び形番

スプラインナットのみ

スプライン軸全長（mm表示）

スプライン軸の呼び形番

スプライン軸のみ

DPM2040 SS20 +1500L

● ●

スプライン軸全長（mm表示）

スプラインナットの呼び形番

1本の軸に組合わされるスプラインナットの個数

スプラインナットと スプライン軸の組合わせ

2 DPM2040 +360L ●

ご発注時の注意点 1軸に複数個のスプラインナットを取り付ける際に、それぞれのスプラインナットのフランジの取付穴位置やキー溝位置が若干ずれる場合がございます。1つのハウジングに複数個のスプラインナットを取り付ける仕様は避けてください。

スプラインナット 呼び形番

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B14-10

【取扱い】 （1） スプラインナットおよびスプライン軸を傾けますと、自重で落下する場合がありますのでご注

意ください。 （2） スプラインナットを落下させたり、叩いたりしないでください。けがや破損の原因となります。

また、衝撃を与えた場合、外観に破損が見られなくとも機能を損失する可能性があります。 （3） 製品を扱う場合は、必要に応じて保護手袋、安全靴等を着用して安全を確保してください。

【使用上の注意】 （1） 切り粉やクーラントなどの異物の流入のないようご注意ください。破損の原因となります。 （2） 切り粉、クーラント、腐食性のある溶剤、水などが製品内部に流入するような環境下で使用され

る場合は、ジャバラまたはカバー等により製品への流入を避けてください。 （3） 切り粉などの異物が付着した場合は、洗浄した後、潤滑剤を再封入してください。 （4） 製品に位置決め部品（ピン、キー等）を無理に打ち込まないでください。摺動面に圧痕が生じ機能

を損失する原因となります。 （5） スプライン軸の支持部とスプラインナットの芯違いや倒れがあると極端に寿命が短くなる場合

がありますので、取付部品、組付精度には十分ご注意ください。 （6） 取付部材の剛性および精度が不足すると、軸受の荷重が局部的に集中し、軸受性能が著しく低下

します。したがって、ハウジングやベースの剛性・精度、固定用ボルトの強度について十分検討ください。

【潤滑】 （1） 防錆油はよく拭き取り、潤滑剤を封入してからお使いください。 （2） 異なる潤滑剤を混合しての使用は避けてください。増ちょう剤が同種類のグリースでも、添加剤

などが異なることにより、お互いに悪影響を及ぼす恐れがあります。 （3） 常に振動が作用する箇所、クリーンルーム、真空、低温・高温などの特殊環境下で使用される場合

は、仕様・環境に適したグリースをご使用ください。 （4） 製品を潤滑する場合には、内部にグリースが入るよう慣らしストロークを数度おこなってくだ

さい。 （5） 温度によりグリースのちょう度は変化します。ちょう度の変化によってスプラインナットの摺

動抵抗も変化しますのでご注意ください。 （6） 給脂後はグリースの攪拌抵抗によりスプラインナットの摺動抵抗が増大する可能性があります。

必ず慣らし運転をおこない、グリースを十分なじませてから、機械の運転をおこなってください。 （7） 給脂直後は余分なグリースが周囲に飛び散る可能性がありますので、必要に応じて拭き取って

ご使用ください。 （8） グリースは使用時間とともに性状は劣化し潤滑性能は低下しますので、使用頻度に応じたグ

リース点検と補給が必要です。 （9） 使用条件や使用環境により給脂間隔が異なります。最終的な給脂間隔・量は実機にて設定願います。 （10） 油潤滑にて使用される場合、スプラインナットの取付姿勢によっては潤滑油が行き渡らないこ

とがありますので、設計時に十分ご検討ください。

スプラインナット 取扱い上の注意事項

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B14-11

スプラインナット

【保管】 スプラインナットは、弊社の梱包および荷姿で、高温、低温、多湿を避け、水平な状態で室内に保管してください。

【廃棄】 製品は産業廃棄物として適切な廃棄処置をおこなってください。

取扱い上の注意事項

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B14-12

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