ユニバーサルデザインの概念 「できるだけ多くの...

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ユニバーサルデザインとは ユニバーサルデザインの概念 ユニバーサルデザインとは ■ユニバーサルデザインとは ユニバーサルデザインは障害を持つ米国人建築家、ロナルド・メイスにより 1980 年代に 提唱されたもので、高齢者や身体障害者という特定の人に限定せず、また、あらゆる体格、 年齢、障害の度合いに関係なく、 と定義されている。更に低コストかつ美しいデザインであることが重要であるとされている。 「できるだけ多くの人々が利用可能であるように製品、建物、空間等を デザインすること」 ■ユニバーサルデザインの7つの原則 ノースカロライナ州立大学のユニバーサルデザインセンター(ロナルド・メイスを含むユニバー サルデザインのリーダー達)では、ユニバーサルデザインの「7つの原則」を提唱している。 公平性 誰もが平等に利用できる 安全性 危険がなく、安心し て利用できる 柔軟性 あらゆる人に応じた使い方が選択できる 省体力 無理な姿勢をとるこ となく、楽に利用でき ↑大きな事故を防ぐ二重扉 ←エレベーター、エスカレーター、階段の 併設で全ての人が公平に利 用可能 ←使う人の様々な用途に対 応できるトイレ ↑タッチパネル式の情報案内 単純性 使い方が直感的に理解でき、簡単 スペース確保 利用するのに適切 な広さと幅がある ←使い方がすぐ分かる動く 歩道 ↑アクセスし易い幅広の改札 わかりやすさ 必要な情報が容易に理解できる はっきりとしたサインにより 位置が分かりやくなったトイレ

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Page 1: ユニバーサルデザインの概念 「できるだけ多くの …段差があるため、車いす の人や足が不自由な人は、 乗降が不便である。 【リフト付きバス】

ユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザインの概念

ユユニニババーーササルルデデザザイインンのの概概念念

ユニバーサルデザインとは

■ユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザインは障害を持つ米国人建築家、ロナルド・メイスにより 1980 年代に

提唱されたもので、高齢者や身体障害者という特定の人に限定せず、また、あらゆる体格、

年齢、障害の度合いに関係なく、

と定義されている。更に低コストかつ美しいデザインであることが重要であるとされている。

「できるだけ多くの人々が利用可能であるように製品、建物、空間等を

デザインすること」

■ユニバーサルデザインの7つの原則

ノースカロライナ州立大学のユニバーサルデザインセンター(ロナルド・メイスを含むユニバー

サルデザインのリーダー達)では、ユニバーサルデザインの「7つの原則」を提唱している。

公平性

誰もが平等に利用できる

安全性

危険がなく、安心し

て利用できる

柔軟性

あらゆる人に応じた使い方が選択できる

省体力

無理な姿勢をとるこ

となく、楽に利用でき

↑大きな事故を防ぐ二重扉

←エレベーター、エスカレーター、階段の

併設で全ての人が公平に利

用可能

←使う人の様々な用途に対

応できるトイレ

↑タッチパネル式の情報案内

単純性

使い方が直感的に理解でき、簡単

スペース確保

利用するのに適切

な広さと幅がある

←使い方がすぐ分かる動く

歩道 ↑アクセスし易い幅広の改札

わかりやすさ

必要な情報が容易に理解できる

はっきりとしたサインにより →

位置が分かりやくなったトイレ

Page 2: ユニバーサルデザインの概念 「できるだけ多くの …段差があるため、車いす の人や足が不自由な人は、 乗降が不便である。 【リフト付きバス】

ユニバーサルデザインとは

■その他のユニバーサルデザインの原則・考え方

先述した7原則が、ユニバーサルデザインの全てを言い表しているのではなく、以下のよう

に異なる視点からも説明されている。

「よいデザインが満たすべき要件とは、安全性、アクセシビリティ、使い勝手、価格妥当性、持続可

能性、そして審美性、この6つである。(中略)先に挙げた6つの要件のうち最初の4つが重要となる。価

格妥当性とは欲しいときに誰でも手が届くということ。」 (古瀬敏)

「ユニバーサルデザインの考え方は人間工学的ものであり、7つの原則は美しさを言ってはいない。」 (ジ

ェイク・パウルス)

「7つの原則を満足していても、環境に負担をかけるものは意味がない。」 (リカルド・ゴメス)

「完璧なユニバーサルはない。しかし他のものより、よりユニバーサルなものはある。7つの原則のうち

5つしか満足しなくても充分な価値はあるし、完璧でなくてもより多くの人が使えることには変

わりはない。」 (モリー・ストーリー)

■社会資本整備おけるユニバーサルデザインの原則

先述した“ユニバーサルデザインの7原則”及び“その他のユニバーサルデザインの原則・

考え方”を基に、社会資本整備におけるユニバーサルデザインの原則は以下のとおり整理でき

る。

【“(一般的な)ユニバーサルデザインの原則・考え方”の要約】

ユニバーサルデザインの7原則:公平性・柔軟性・単純性・わかりやすさ・安全性・省

体力・スペース確保

→公平・安全・使いやすいデザイン

【社会資本に求められる要件】

・ 誰もが公平に機会を与えられるという意味で、アクセス性(近づきやすさ)とモビリ

ティ(移動しやすさ)

・ 過剰な投資を避ける観点から経済性

・ 使いたくなる魅力や地域の顔を考慮して美しさ

・ 社会資本整備において特に関わりの深い環境への配慮

【社会資本整備におけるユニバーサルデザインの原則】

◇ 公平・安全で使いやすいデザイン

◇ 移動しやすく近づきやすいデザイン

◇ 経済的なデザイン

◇ 持続可能なデザイン

◇ 美しくさりげないデザイン

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ユニバーサルデザインとは

■社会資本整備におけるユニバーサルデザインの実践方法

社会資本整備におけるユニバーサルデザインの実践方法について、“過程”“実現”“継

続・普及”の3段階に分けて整理する。

過 程

(3.1)

住民の満足度をより高めるためには、事業の推進過程に以下の考え方を

取り込む必要がある。

◇住民等のニーズを把握し事業へ反映

◇住民が参画し関係者が一層連携して事業を推進

当事者を交えて地域の現状を把握し →

(左図)、よりよいものを住民と一緒

に検討する(右図)。

実 現

(3.2)

全ての人が利用しやすい施設、空間、サービス

等とは、以下の原則が実現されるような社会資本

整備を行うことである。

◇公平・安全で使いやすいデザイン

◇移動しやすく近づきやすいデザイン

◇経済的なデザイン

◇持続可能なデザイン

◇美しくさりげないデザイン

(右上図)エレベーター、エスカレーター、階段を併設することで、 →

全ての人が自由に選択し平等に移動できる。(右下図) 2段手すり

にすることで身長の高さに関わらず全ての人が利用できる。

継続・普及

(3.3)

よりよいものは一事業の完了で完成するものではなく、よりよいものを追求

する取り組みを継続し、同時に広く普及させることで完成する。

◇事後評価・フィードバック

◇ユニバーサルデザインの普及・啓発活動

企 画 実 施

評 価 企 画 実 施

評 価 企 画 実 施

評 価

蓄 積

使いやすさ

関連事業へ

←各事業のノウハウは当

該事業の改善や他事業、関

連事業へ活かされること

で、ユニバーサルデザイン

の実現へと繋がる。

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ユニバーサルデザインとは バリアフリーとユニバーサルデザインの違い

バリアフリーとユニバーサルデザインの違い

■バリアフリーとユニバーサルデザインの違い

現 況 バリアフリー ユニバーサルデザイン

考え方 健常な人に合わせた整備 特定の方の障害(バリア)を

なくす(フリー)

はじめから全ての人が

使いやすくデザインする

対 象 健常者 高齢者、障害者 全ての人

事 例

【普通のバス】

段差があるため、車いす

の人や足が不自由な人は、

乗降が不便である。

【リフト付きバス】

車いすや足の不自由な人の

ためにリフトを設置した。しか

し、特別な機械なので使う人が

限定される。

【超低床ノンステップバス】

特別な機械を使わずに段差

をなくした。車いすや足の不自

由な人だけでなく、全ての乗降

が楽になる。

■どのように“バリアフリーからユニバーサルデザイン”になるか

 整備が単独かつ個別で行われやすいため出発地から目的地まで連続性が確保されにくい。

 利用者の意見を反映し、関係者間の更なる連携を図るプロセスを重視するため、整備の不連続等の問題を未然に防ぐことができる。

 特別な対策であるため汎用性が低くなり、結果として過剰な投資とされることがある。

 全ての人が使いやすいため 結果として市場性も高まり、経済的になる。

汎用性が高くなり、

 特別な対策を行うことで、利用者に対する特別な意識が生まれる可能性があり、結果として利用頻度が低くなることがある。

 あらゆるニーズに対応可能な選択肢のある整備を行うことで、高齢者、障害者等に対する特別な対策も存在せず利用者に対する特別な意識も生まれない。

バリアフリー

バリアフリー

バリアフリー

バリアフリー

バリアフリー

バリアフリー

バリアフリー

バリアフリー

個別にバリアフリー整備 バリアフリーのネットワーク整備

車椅子が利用可能なエレベーター車椅子利用者専用リフト

←垂直移動は特別な装置を利用した介助で行われている

←エレベーター、階段、エスカレーターの併設により利用者が自由に選択できる。

→ユニバーサルデザインはバリアフリーの様々な問題を解決することが可能となる。

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ユニバーサルデザインとは ユニバーサルデザインの必要性

ユニバーサルデザインの必要性

■今後の社会資本整備の視点

今後の社会情勢に適応した社会資本整備の視点で次のとおり整理される。

【本格的な高齢化社会の到来】

これから本格的な高齢化社会が到来する。そのため、高齢化社会に対応し

た社会資本整備を行う必要がある。

2025年

1975年2000年

高齢化率

30.0%以上

25.0%~30.0%未満

20.0%~25.0%未満

15.0%~20.0%未満

10.0%~15.0%未満

10.0%未満

7.9% 高齢化率→ 17.4%

28.7%

【バリアフリーの問題】

近年、活発に取り組まれているバリアフリー整備にも以下のような問題点

が指摘されている。

・ 特別な対策であるため汎用性が低くなり、結果として過剰な投資となるこ

とがある。

・ 特別な対策を行うことで、利用者に対する特別な意識が生まれる可能性が

あり、結果として利用頻度が低くなることがある。

(写真:神戸新聞(03.12.6)より)

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ユニバーサルデザインとは ユニバーサルデザインの必要性

(資料:「年齢と体の変化」(積水ハウス株式会社))

【多用なニーズの存在】

人間には年齢差、個人差が必ず存在する。そのため、高齢者・身障者だけ

でなくあらゆるニーズへの対応が必要である。

(資料:「観光白書(H14)」(国土交通省))

【国際化の進展】

訪日外国人旅行者が増加している。そのため、外国人旅行者が安全に安心

して過ごせる環境の整備が必要となる。

訪日外国人旅行者数の推移

2,1102,327

2,062 2,1552,355

2,835

3,236

3,533 3,5823,410 3,468

3,345

3,837

4,2184,106

4,438

4,757 4,772

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

昭和5960 61 62 63 平成元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

千人

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ユニバーサルデザインとは ユニバーサルデザインの必要性

(資料:「障害者に関する世論調査(H13)」(内閣府))

ノーマライゼーションの考え方(障害のある人が身近で普通に生活しているのが当たり前であるという考え方)

51.7

60.6

26.6

21.1

5.7

5

5.4

2.4

5.4

5.5

5.2

5.4

0% 25% 50% 75% 100%

平成9年7月調査

平成13年9月調査

そう思う どちらかといえばそう思う どちらかといえばそう思わない

そう思わない 一概に言えない わからない

【ノーマライゼーションの進展】

ノーマライゼーションの考え方が浸透し、障害者にもやさしい環境を整

備する必要がある。

ノーマライゼーションの周知度

15.6

21.7

84.4

78.3

0% 25% 50% 75% 100%

平成9年7月調査

平成13年9月調査

聞いたことがある 聞いたことがない

※「ノーマライゼーション」:年齢、性別、体の自由・不自由、知覚・行動能力の違い

に関わりなく、平等に生活することが当たり前であるという考え方

【今後の社会資本整備の視点①】

高齢者・障害者と限定するのではなく、全ての人(高

齢者、障害者、外国人、妊産婦、けが人、子供、健常

者等)を対象とした整備を行う必要がある。

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ユニバーサルデザインとは ユニバーサルデザインの必要性

「平成5年から 11 年までの間の高年世代(60 歳代以上)の海外旅行者数の推移を見

ると,旅行者数全体では約 37%伸びているが,このうち,高年世代では約 68%と平

均を上回る高い伸びを示している。」(「観光白書(H12)」(国土交通省))

退職金の使い道

58

6 1022

44.7

2.7

22.77.3

0

20

40

60

80

旅行 住宅の購入

住宅以外の高額商品の

購入

有価証券の購入

貯蓄 事業資金 ローンの返済

その他

(%)

余暇活動の潜在需要

6.2

6.5

7.1

8.0

8.2

8.7

9.4

10.3

19.1

35.7

8.6

17.8

22.0

1.4

23.6

31.4

2.6

7.3

55.2

13.1

0 10 20 30 40 50 60

登山

スポーツ観戦(テレビは除く)

水泳(プールでの)

スキンダイビング、スキューバダイビング

音楽会、コンサートなど

パソコン(ゲーム、趣味、通信など)

陶芸

オートキャンプ

国内観光旅行(避暑、避寒、温泉など)

海外旅行

参加率

潜在需要

【余暇活動の活発化】今後、旅行などの余暇活動に力点がおかれてくるに伴い

高齢者の旅行者も年々増加してくる。そのため、高齢者にとっても移動しやすい

環境の整備が望まれてくることが予想される。

今後の生活の力点

3.7

9.8

2.1

3.4

4.6

18.3

24.1

22.3

26.5

25.6

33.9

3.5

9.9

1.9

4.0

5.9

18.8

22.1

22.7

22.8

27.9

34.8

3.2

10.1

1.7

3.4

7.5

19.4

19.7

23.1

18.3

30.6

35.8

0 10 20 30 40

わからない

ない

その他

衣生活

自動車、電気製品、家具などの耐久消費財の面

住生活

資産・貯蓄

自己啓発・能力向上

食生活

所得・収入

レジャー・余暇生活

男性

総数

女性

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ユニバーサルデザインとは ユニバーサルデザインの必要性

【高齢者、障害者等のニーズ把握】 高齢者、障害者等のニーズを的確に把

握し、整備へ活かすことがより質の高い社会資本整備へ繋がる。

外出時の障害

0 2 4 6 8 10 12 14 1

道路に階段、段差、傾斜があったり、歩道が狭い

交通事故が多く不安

バスや電車等公共の交通機関が利用しにくい

道路に違法駐車、放置自転車、荷物の放置などがある

トイレが少ない、使いにくい

街路灯が少ない、照明が暗い

ベンチや椅子等休める場所が少ない

公共施設等に階段、段差が多く不安

標識や案内表示が少ない、わかりにくい

その他 

(%)

6

日常生活情報について不満な点

0 2 4 6 8 10 12 14 1

字が小さくて読めない

どの情報が信頼できるかわからない

情報量が多すぎる

必要な情報が乏しい

情報の内容がわかりにくい

どこから情報を得たらよいか

情報が遅い

その他 

(%)

6

(資料:「高齢者の日常生活に関する意識調査(H10)」(内閣府)

工夫すれば障害のある人にも利用しやすくなると思うこと

0.5

1.9

14.9

17.1

19.0

30.4

30.9

42.0

69.6

79.9

0.3

2.0

15.3

18.1

19.2

28.4

29.1

40.4

68.5

76.4

0 20 40 60 80

わからない

その他

テレビや映画での場面の状況説明や字幕

日用雑貨の使い勝手

電気製品の使い勝手

駅や郵便局などの公共的な施設での点字表示や音声・文字案内

図書館やデパートなどの公共的な建物の構造

住宅の構造

電車やバスなどの構造や乗り降り

道路の段差や信号

平成9年7月調査

平成13年9月調査

(資料:「障害者に関する世論調査(H13)」(内閣府)

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ユニバーサルデザインとは ユニバーサルデザインの必要性

【心の豊かさ】近年は、物の豊かさより心の豊かさやゆとりのある生活が望

まれている。

(資料:「国民生活に関する世論調査(H14)」(内閣府))

心の豊かさ・物の豊かさ

37.335.3

36.7 36.1

38.836.8

40.7 39.941.1

39.540.3 40.9

42.244.3 44.8

46.4 46.5

49.6 49.1 49.6 50.349.3

53.052.0

57.4 57.2 56.858.8

56.3 57.0

60.7

40.0 40.341.6 41.3 40.9 41.3 41.3

40.1 40.4 40.3 39.838.8

37.6 36.8 36.8

32.9 32.734.0

32.0 32.730.8 30.5

27.329.0

30.028.1 27.9

30.1 29.327.4

16.4

20.018.9

19.7

17.418.7

15.5 15.8 15.017.2

16.0 15.313.3 14.0 13.4 13.8 14.2 14.9

13.615.0 15.0

13.514.5

12.611.2 10.9

13.211.3 12.0

10.7 10.1

41.4

0

10

20

30

40

50

60

70

S47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 H元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

(%)

心の豊かさ 物の豊かさ どちらともいえない

【今後の社会資本整備の視点②】

今後は、物の豊かさにより満足度を高める整備ではなく、

住民の多様なニーズに見合う質の高い整備を行う必要があ

る。

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ユニバーサルデザインとは ユニバーサルデザインの必要性

■ユニバーサルデザインの必要性

【ユニバーサルデザインの実践が基本となる今後の社会資本整備】

今後の社会資本整備では、“物的な豊かさ”から“全ての人(より多くの人)の多様なニーズ

に対応できる質の高さ”が要求されてくる。そのような中で、ユニバーサルデザインの実践は、

今後の社会資本整備の基本となる。

【全国に先駆け早急なユニバーサルデザインの実践が必要な中国地方】

平成 12 年(2000 年)時点で、中国地方の高齢化率

は全国より3%以上高くなっている(右図参照)。また平

成 27 年(2015 年)には山口県、島根県で高齢化率

30%以上となり(下図参照)、全国の中で最も早く高齢化

を向かえることが予想されている。このような特徴を持

つ中国地方では、全国の高齢化の流れに合わせユニバ

ーサルデザインを実践していては、将来の需要に充分

に対応できなくなることが予想される。そのため全国

に先駆け早急にユニバーサルデザインを実践していく

全国及び中国地方の高齢化率(2000 年)

資料:国勢調査(H12)

必要がある。

都道府県別老年人口の割合

資料:都道府県の将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所)

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ユニバーサルデザインとは ユニバーサルデザインのメリット

ユニバーサルデザインのメリット

ユニバーサルデザインを社会資本整備に導入することは、『全ての人にとって快適な環境

(移動しやすい、利用しやすい、過ごしやすい等)を整備する』ことに繋がる。その取り

組みは以下のメリットをもたらす。

■地域特性を反映した豊かな暮らしを実現できる

ユニバーサルデザインの実践で求められる市民参画・協働というプロセスにより、住

民のニーズを的確に把握し、事業に反映させることが可能となるため、地域の個性を失

うことなく地域にあった質の高い整備を行うことができる。

■トータルコストの縮減につながる

はじめから全ての人が使いやすく、暮らしやすい環境をつくることにより、整備後の

特別なニーズによる追加的な整備や補修を減らし、トータルコストの縮減に繋がる。

■スムーズな合意形成につながる

市民との対話により事業を進めることにより、意見対立が発生した場合、納得のいく

まで話し合うことが可能となり、またそれぞれの立場の違いをお互いに理解しあうこと

が可能となるため、結果的にスムーズな合意形成に繋がる。

■高齢者、身体障害者の社会参加が促進され、元気な地域を形成できる

全ての人が移動しやすく利用しやすい環境となることで、高齢者、身体障害者の外出

頻度を向上させ、社会参加の促進に繋がり、元気のある地域を形成することができる。

■地域間交流を促進し、地域の活性化に繋がる

全ての人が移動しやすく利用しやすい環境は、そこに住む人々の生活環境のみならず、

訪問者にとっての快適な環境も向上させるため、地域間交流の促進に繋がり地域の活性

化へと発展する。

■環境負荷の少ないまちをつくることができる

ユニバーサルデザインが目指す持続可能な整備により、継続的な補修等による環境負

荷が軽減できる。

上記メリットに示すように、ユニバーサルデザインは今後の社会資本整備への要

求に適切に対応できる取り組みであり、これからの常識となっていく。特に、“高

齢社会の早期到来”、“活力低下の著しい中山間地域等への対応”、“山陽、山陰間の

地域格差”等の課題を持つ中国地方では、いち早くユニバーサルデザインを実践し、

そのメリットを実現することが、早期の課題解決へと繋がる。