ネットワーク事業者が直面 するトラヒック急増課題 - ntt-at · 2016. 1. 25. ·...

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28 ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.6 インターネットトラヒック急 増に伴い、ネットワーク高度化 製品が注目を集めている。その 背景について、IP ネットワーク プロダクツビジネスユニット長 の市川弘幸氏は、「今までネット ワーク事業者はトラヒックの急 増に対してトランジット回線の 帯域を増やすことでお客様の QoE(体感品質)を確保してきましたが、さらなる設 備増強が求められる一方で、収益確保との両立とい う経営課題に直面しています。モバイルキャリアや アクセス網事業者(CATV/ISP アクセス)の皆様から 多数お問合せいただいています」と語る。このよう な課題を解決するソリューションとして、同社は Allot 社の DPI Deep Packet Inspection )製品 NetEnforcer/Service Gateway」とF5 社の「VIPRIONを軸に顧客の用途に合わせた最適な提案活動を展開 している。 L7(アプリケーション)レベルでトラヒックを可 視化・制御する独自の DPI 技術を核にヨーロッパを はじめ世界的に急成長を遂げているのが Allot 社だ。 図1に Allot 社のネットワーク高度化ソリューショ ンを示す。図 1 左は、DPI 技術により、動画配信や P2P などのトラヒックを L7 レベルで識別し可視化/ QoS 制御/課金を行う。これにより、加入者単位・ アプリケーション単位でのリアルタイムな利用量把 握と契約ポリシーに基づく帯域制御を行うと共に、 柔軟な課金制御も可能となる。 また図1右は、DPI によるインテリジェントなトラ ヒック・ステアリング(転送)ソリューションの例 だ。トランジット回線の効率化の為にネットワーク エッジにビデオキャッシュ等付加価値サービス機能 を設置する場合、キャッシュ効率の高いトラヒック を識別して転送することで、効果的なキャッシング が可能になる。 Allot ビジネスを担当する長翁政良主任は、「Allot 社の DPI 製品の最大の特長は、高機能(優れた DPI エンジンを搭載し、様々な QoS ポリシーを設定可能)、 使い易さ(GUI で設定ができ、種類豊富なレポート とグラフを提供)、高可用性(シグネチャのアップデ ートはダウンタイムなし、電力供給断時にも通信を 継続するバイパス機能付)です。2003 年から取扱を 開始しましたが、2011 年は対前年比約3倍増、国内 ブロードバンド環境の進展に伴いインターネットトラヒック、特に映像系や P2P トラヒックが急増している。通信事業者にとっ ては、設備増強と収益確保の両立が大きな経営課題となっている。以下では、この課題を解決するネットワークの高度化プロダク ツとして、Allot Communications(以下、Allot 社)の DPI 製品と、F5 ネットワークス社(以下、F5 社)のアプリケーション・デ リバリ・コントローラを中心に紹介する。 グローバルプロダクツ事業本部 IP ネットワークプロダクツビジネスユニット 4 ネットワーク事業者が直面 するトラヒック急増課題 L7 レベルでトラヒックを可視化・制御する Allot 社の DPI 製品 【左】ビジネスユニット長  市川 弘幸【中】技術グループマネージャー  尾形 徹【右】主任  長翁 政良

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  • 28 ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.6

    インターネットトラヒック急

    増に伴い、ネットワーク高度化

    製品が注目を集めている。その

    背景について、IPネットワーク

    プロダクツビジネスユニット長

    の市川弘幸氏は、「今までネット

    ワーク事業者はトラヒックの急

    増に対してトランジット回線の

    帯域を増やすことでお客様の

    QoE(体感品質)を確保してきましたが、さらなる設

    備増強が求められる一方で、収益確保との両立とい

    う経営課題に直面しています。モバイルキャリアや

    アクセス網事業者(CATV/ISPアクセス)の皆様から

    多数お問合せいただいています」と語る。このよう

    な課題を解決するソリューションとして、同社は

    Allot社のDPI(Deep Packet Inspection)製品

    「NetEnforcer/Service Gateway」とF5社の「VIPRION」

    を軸に顧客の用途に合わせた最適な提案活動を展開

    している。

    L7(アプリケーション)レベルでトラヒックを可

    視化・制御する独自のDPI技術を核にヨーロッパを

    はじめ世界的に急成長を遂げているのがAllot社だ。

    図1にAllot社のネットワーク高度化ソリューショ

    ンを示す。図 1左は、DPI技術により、動画配信や

    P2PなどのトラヒックをL7レベルで識別し可視化/

    QoS制御/課金を行う。これにより、加入者単位・

    アプリケーション単位でのリアルタイムな利用量把

    握と契約ポリシーに基づく帯域制御を行うと共に、

    柔軟な課金制御も可能となる。

    また図1右は、DPIによるインテリジェントなトラ

    ヒック・ステアリング(転送)ソリューションの例

    だ。トランジット回線の効率化の為にネットワーク

    エッジにビデオキャッシュ等付加価値サービス機能

    を設置する場合、キャッシュ効率の高いトラヒック

    を識別して転送することで、効果的なキャッシング

    が可能になる。

    Allotビジネスを担当する長翁政良主任は、「Allot

    社のDPI製品の最大の特長は、高機能(優れたDPI

    エンジンを搭載し、様々なQoSポリシーを設定可能)、

    使い易さ(GUIで設定ができ、種類豊富なレポート

    とグラフを提供)、高可用性(シグネチャのアップデ

    ートはダウンタイムなし、電力供給断時にも通信を

    継続するバイパス機能付)です。2003年から取扱を

    開始しましたが、2011年は対前年比約3倍増、国内

    ブロードバンド環境の進展に伴いインターネットトラヒック、特に映像系やP2Pトラヒックが急増している。通信事業者にとっては、設備増強と収益確保の両立が大きな経営課題となっている。以下では、この課題を解決するネットワークの高度化プロダクツとして、Allot Communications(以下、Allot社)のDPI製品と、F5ネットワークス社(以下、F5社)のアプリケーション・デリバリ・コントローラを中心に紹介する。

    グローバルプロダクツ事業本部IPネットワークプロダクツビジネスユニット

    4

    ネットワーク事業者が直面するトラヒック急増課題

    L7レベルでトラヒックを可視化・制御するAllot社のDPI製品

    【左】ビジネスユニット長 

    市川弘幸氏【中】技術グループマネージャー 

    尾形徹氏【右】主任 

    長翁政良氏

  • の売上No.1を獲得しました。

    特に2006年~2007年に流行

    したWinnyの対策として導

    入された機器が更改の時期

    を迎えており、他社製品と

    比較して、機能面、性能面、

    運用面、費用面、サポート

    面で高い評価をいただき、

    採用いただいたことが最大

    のポイントです。こうした

    問合せは非常に増えており、

    今後も乗せ換え需要が伸び

    ていくと考えています」と

    述べている。

    F5社のアプリケーション・デリバリ・コントロー

    ラのうち、特に最近注目を集めている製品が、最上

    位機種「VIPRION」だ。IPネットワークプロダクツ

    ビジネスユニットの尾形徹技術グループマネージャ

    ーはVIPRIONについて、「一言でいいますと、非常

    にコストパフォーマンスに優れ、拡張性の高い製品

    です。L4-L7レベルでのトラヒックの識別・制御のパ

    フォーマンスに優れ、しかもネットワークやアプリ

    ケーションの再設定なしにブレードを追加すること

    で容易にアップグレードが可能なためビジネスの成

    長に合わせた投資が可能です」と語る。

    図2にスマートフォン急増によるアクセスネット

    ワーク圧迫対策としてNTT-ATが提案する2種の付

    加価値サービス機能連動ソリューションを示す。

    ネットワーク高度化に不可欠な試験装置として注

    目を集めているのが、高い I P負荷がかけられる

    「Spirent TestCenter」とアプリケーションを意識し、

    キャプチャした実トラヒックを高負荷発生可能な

    「BreakingPiont FireStorm CTM」だ。「単純なパケ

    ットの量ではなく、アプリケーションの中味によっ

    てネットワークの品質が左右されることから、アプ

    リケーションを意識し、かつ非常に高負荷がかけら

    れる試験装置は、今や不可欠です。」(市川BU長)

    29ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.6

    《DPI 可視化/QoS制御/課金ソリューション》 《トラヒック・ステアリング・ソリューション》

    Gx/Gy

    DPI (アプリケーション識別)

    PCEF (QoS制御/利用量モニター)

    Allot Service Gateway / SMP

    トラヒック可視化 Allot NetXplorer

    (リアルタイムモニタリング)

    リアルタイム課金/ポリシー管理 PCRF(ポリシー/課金ルール機能)

    OCS(オンライン課金システム)

    Service

    IMS

    Internet

    Allot Service Gateway

    DPIなどで識別した トラヒックの転送 (ステアリング)

    ビデオキャッシュ・最適化の提供

    Internet

    Streaming Caching

    Video Optimization

    DPI/PCEF

    PCRF

    StreamingCaching

    MediaOptimization

    付加価値サービス機能

    Allot SigmaE

    ParentalControl

    顧客の要望に応じた柔軟 なサービス・課金を提供

    F5 VIPRION

    顧客の用途に応じて 帯域制御装置Allot Sigma-Eか、 負荷分散装置F5 VIPRIONを提案

    Allotの特徴 ・アプリケーションレベルでのトラヒックの 可視化/帯域制御 ・ビデオやP2Pストリーミングなどの効果が 出るトラヒックのみをステアリング可能 ・非対称トラヒックの収容が可能 ・Service Chainにより、複数の付加価値 サービスが利用可能 ・PCRFとの連携が可能であるため、加入 者単位でのステアリングや、利用量に 応じた料金プランの設定が可能

    ・L4レベルで識別して、ビデオキャッシ ングやメディア最適化装置への負荷 分散が可能。(i-Ruleの作成により、

     

    L7レベルでの識別、負荷分散も可能)

    F5の特徴

    トラヒック急増

    Internetアクセス網/ モバイルアクセス

    ※PCRF: Policy and Charging Rules Function ※PCEF: Policy and Charging Enforcement Function

    ・TCP Proxy やHTTP 圧縮など によりパフォーマンスを向上

    図2 スマートフォン急増によるアクセスネットワーク圧迫対策ソリューション-モバイルキャリア、アクセス網事業者(CATV/ISPアクセス)向け-

    図1 DPI技術によるAllot社のネットワーク高度化ソリューション

    アプリケーション・デリバリ・コントローラ市場で多くの導入実績を持つF5社のVIPRION

    ネットワークの性能・QoS測定や脆弱性を評価する測定機器も提供