液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... ·...

20
関税中央分析所報 第 54 29 液体クロマトグラフィー/質量分析法による青汁粉末原料の分析 田中 聡司*,西村 康彦*,吉村仁太郎* , **,岩﨑 智子* , ***,山﨑 幸彦* Identification of leaf powders by liquid chromatography/mass spectrometry Satoshi TANAKA*, Yasuhiko NISHIMURA*, Shintaro YOSHIMURA* , **, Tomoko IWASAKI* , *** and Yukihiko YAMAZAKI* *Yokohama Customs Laboratory 2-1-10, Shin-urashima-cho, Kanagawa-ku, Yokohama, Kanagawa 221-0031 Japan **Present address: Yokohama Customs Onahama Customs Branch 19,Aza-funabikiba,Onahama,Iwaki,Fukushima 971-8101 Japan ***Present address: Yokohama Customs 1-1, Kaigandori, Naka-ku, Yokohama, Kanagawa 231-8401 Japan Various leaf powders are imported as raw materials for leaf extracts. In the Customs Tariff Schedule, leaf powders are classified by the species of leaves, and by whether mixed or not. The DNA-based method is commonly used for identifying the species of plants, but the analysis takes a long time. In this study, we examined the identification of leaf powders and mixtures of leaf powders using qualitative analysis of functional food ingredients in the leaves of young barley, mulberry and alfalfa by liquid chromatography/mass spectrometry (LC/MS). Among the three kinds of leaf powders, saponarin, which is known as a functional food ingredient in young barley leaves, was only identified in the young barley leaves; 1-deoxynojirimycin, which is known as a functional food ingredient in mulberry leaves, was only identified in the mulberry leaves; and coumestrol, which is known as a functional food ingredient in alfalfa leaves, was only identified in the alfalfa leaves. In addition, saponarin, 1-deoxynojirimycin and coumestrol were identified in the mixture of three kinds of leaf powders within half a day. Thus, qualitative analysis of functional food ingredients in leaves by LC/MS is useful for rapid identification of leaf powders and mixtures. 1. 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ いては、植物の種や、複数の植物から成る混合物か否かによって 税番及び税率が異なっており、大麦若葉の粉末は関税率表第 1212.99-990(協定税率 3%)、桑葉の粉末は第 1211.90-999(協定 税率 2.5%)、アルファルファの粉末は第 1214.90-090(基本税率 無税)に分類される。さらにこれらを混合した物は第 2106.90-299 (協定税率 15%)に分類され、税率格差が生じることから、植物 粉末の種判別及び混合物か否かを判断する必要がある。 植物粉末の場合、形態学的な方法による判別が困難であること から、 DNA 分析を実施し、植物の種を特定してきたところである。 一方、前述のとおり、混合物であった場合に、税率格差が大きい ことから、分析の依頼に際し、輸入許可を保留した状態で分析依 頼されることが多く、速やかな回答を求められているが、 DNA 析等に時間を要しており、特に高額非違となりうる植物粉末混合 物の場合、さらに長時間を要する状況となっている。 現在、食用の植物については平成 3 年に特定保健用食品制度が 導入されたことを受け、生体機能の調節や成人病予防の機能を持 つ食品に関係する非栄養素成分である機能性成分について、食品 メーカー、大学及び自治体において研究されている 1) 。当該成分 は、特定の種に多く含有するとされており、青汁粉末原料に使用 される植物についても機能性成分が研究されている。大麦若葉に ついてはサポナリン、桑葉については 1-デオキシノジリマイシン、 そしてアルファルファについてはクメストロールが、それぞれの 機能性成分として報告されている 2)~8) 。なお当該成分の含有量に ついては、0.1%程度であると言われている。 * 横浜税関業務部 221-0031 横浜市神奈川区新浦島町 2-1-10 ** 現在所属 横浜税関小名浜税関支署 971-8101 福島県いわき市小名浜字船引場 19 ***現在所属 横浜税関調査部 231-8041 横浜市中区海岸通 1-1

Upload: others

Post on 30-Sep-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

関税中央分析所報 第 54 号 29

液体クロマトグラフィー/質量分析法による青汁粉末原料の分析

田中 聡司*,西村 康彦*,吉村仁太郎*,**,岩﨑 智子*,***,山﨑 幸彦*

Identification of leaf powders by liquid chromatography/mass spectrometry

Satoshi TANAKA*, Yasuhiko NISHIMURA*, Shintaro YOSHIMURA*,**, Tomoko IWASAKI*,*** and Yukihiko YAMAZAKI*

*Yokohama Customs Laboratory 2-1-10, Shin-urashima-cho, Kanagawa-ku, Yokohama, Kanagawa 221-0031 Japan

**Present address: Yokohama Customs Onahama Customs Branch 19,Aza-funabikiba,Onahama,Iwaki,Fukushima 971-8101 Japan

***Present address: Yokohama Customs 1-1, Kaigandori, Naka-ku, Yokohama, Kanagawa 231-8401 Japan

Various leaf powders are imported as raw materials for leaf extracts. In the Customs Tariff Schedule, leaf powders are

classified by the species of leaves, and by whether mixed or not. The DNA-based method is commonly used for identifying the species of plants, but the analysis takes a long time. In this study, we examined the identification of leaf powders and mixtures of leaf powders using qualitative analysis of functional food ingredients in the leaves of young barley, mulberry and alfalfa by liquid chromatography/mass spectrometry (LC/MS). Among the three kinds of leaf powders, saponarin, which is known as a functional food ingredient in young barley leaves, was only identified in the young barley leaves; 1-deoxynojirimycin, which is known as a functional food ingredient in mulberry leaves, was only identified in the mulberry leaves; and coumestrol, which is known as a functional food ingredient in alfalfa leaves, was only identified in the alfalfa leaves. In addition, saponarin, 1-deoxynojirimycin and coumestrol were identified in the mixture of three kinds of leaf powders within half a day. Thus, qualitative analysis of functional food ingredients in leaves by LC/MS is useful for rapid identification of leaf powders and mixtures.

1. 緒 言

近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた

め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

いては、植物の種や、複数の植物から成る混合物か否かによって

税番及び税率が異なっており、大麦若葉の粉末は関税率表第

1212.99-990(協定税率 3%)、桑葉の粉末は第 1211.90-999(協定

税率 2.5%)、アルファルファの粉末は第 1214.90-090(基本税率

無税)に分類される。さらにこれらを混合した物は第 2106.90-299(協定税率 15%)に分類され、税率格差が生じることから、植物

粉末の種判別及び混合物か否かを判断する必要がある。 植物粉末の場合、形態学的な方法による判別が困難であること

から、DNA 分析を実施し、植物の種を特定してきたところである。

一方、前述のとおり、混合物であった場合に、税率格差が大きい

ことから、分析の依頼に際し、輸入許可を保留した状態で分析依

頼されることが多く、速やかな回答を求められているが、DNA 分

析等に時間を要しており、特に高額非違となりうる植物粉末混合

物の場合、さらに長時間を要する状況となっている。 現在、食用の植物については平成 3 年に特定保健用食品制度が

導入されたことを受け、生体機能の調節や成人病予防の機能を持

つ食品に関係する非栄養素成分である機能性成分について、食品

メーカー、大学及び自治体において研究されている 1)。当該成分

は、特定の種に多く含有するとされており、青汁粉末原料に使用

される植物についても機能性成分が研究されている。大麦若葉に

ついてはサポナリン、桑葉については 1-デオキシノジリマイシン、

そしてアルファルファについてはクメストロールが、それぞれの

機能性成分として報告されている 2)~8)。なお当該成分の含有量に

ついては、0.1%程度であると言われている。 * 横浜税関業務部 〒221-0031 横浜市神奈川区新浦島町 2-1-10 ** 現在所属 横浜税関小名浜税関支署 〒971-8101 福島県いわき市小名浜字船引場 19 ***現在所属 横浜税関調査部 〒231-8041 横浜市中区海岸通 1-1

Page 2: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

30 液体クロマトグラフィー/質量分析法による青汁粉末原料の分析

機能性成分については、微量成分であり、また水溶性物質や難

揮発性物質も多いことから、液体クロマトグラフィー/質量分析

装置(以下、「LC/MS」と略記する。)での分析例が多い。LC/MSは、分離能力に優れた LC と定性能力に優れた MS を結合した装

置であり、製薬・環境・食品・工業材料など、幅広い分野で広く

普及しつつある分析機器である。今回の研究に用いる四重極飛行

時間型検出器の LC/MS は、一般的な GC/MS と比べて高感度であ

り、精密質量及び MS/MS スペクトルを測定できることから、多

数の夾雑成分を含む検体の微量成分分析に適している。 そこで本研究では、簡便な種判別方法として、LC/MS を用いて、

植物の機能性成分が植物粉末の種判別の指標に使用できるかにつ

いて検討した。さらに複数の植物からなる混合粉末の場合につい

ても検討した。

2. 実 験

2.1 試料及び試薬 2.1.1 試料(6種) 市販品5種:大麦若葉粉末、桑葉若葉粉末、桑葉茶、アルファ

ルファ粉末、アルファルファキューブ(アルファルファをキュー

ブ状に押し固めたもの) 輸入品1種:大麦若葉粉砕物

2.1.2 試薬 珪藻土カラム Chem Elut(Agilent)、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフ

ェノール(以下、「BHT」と略記する。)(和光)、濃塩酸(和光、

特級)、エタノール(和光、特級)、メタノール(和光、LC/MS 用)、

サポナリン(フナコシ)、クメストロール(和光)、1-デオキシノ

ジリマイシン(和光)

2.2 分析装置及び条件 分析装置:Agilent 社製 6530Accurate-Mass Q-TOF LC/MS カラム:Agilent 社製 Eclipse Plus C18(2.1 x 100 mm, 1.8 μm) カラム温度:40℃ 流速:0.2 mL/分 注入量:3 μl 移動相:A 液 ギ酸/水/アセトニトリル=0.1:95:5

B 液 アセトニトリル グラジエント:

条件1 B 液 0 %(0-3 分) → 90%(15-30 分) 条件2 B液 20%(0分) → 30%(15分) → 90%(25-40分)

イオン化法:エレクトロスプレーイオン化法、ポジティブモード 乾燥ガス温度:280℃ キャピラリー電圧:3500V フラグメンター電圧:150V 検出器:四重極飛行時間型タンデム質量分析計 コリジョンガス:窒素 コリジョン電圧:10V、20V 及び 40V

2.3 実験 2.3.1 調製 2.3.1(1) 標準原液 サポナリン、クメストロール及び 1-デオキシノジリマイシンを

それぞれ約 0.5 mg 採取し、サポナリン及びクメストロールについ

てはメタノール 1 ml、1-デオキシノジリマイシンについては 20%メタノール水溶液 1 ml に溶解したものを標準原液とした。 2.3.1(2) 標準溶液 当該標準原液を 100 倍希釈し、0.45 μm メンブレンフィルター

を用いてろ過したものを標準溶液とした(濃度:約 5 μg/ml)。 2.3.1(3) 抽出用試料 (A) 単一試料 試料(6種)について、粉末のものはそのまま使用し、粉末以

外のものは、乳鉢又はグラインダーで粉末状としたもの。 (B) 3種類等量混合試料 大麦若葉粉末、桑葉若葉粉末及びアルファルファ粉末の3種類

を等量混合したもの。 (C) 10%含有試料

(a) 大麦若葉 10%含有試料 大麦若葉粉末とアルファルファ粉末又は桑葉粉末とをそれ

ぞれ 1:9 で混合したもの。 (b) 桑葉 10%含有試料 桑葉若葉粉末と大麦若葉粉末又はアルファルファ粉末とをそ

れぞれ 1:9 で混合したもの。 (c) アルファルファ 10%含有試料 アルファルファ粉末と大麦若葉粉末又は桑葉若葉粉末とをそ

れぞれ 1:9 で混合したもの。 2.3.1.(4) 試料溶液 (A) 単一試料溶液 試料(6 種)をそれぞれ 50 mg ずつ3検体採取し、それぞれに

20%メタノール水溶液、40%メタノール水溶液及び 80%メタノー

ル水溶液を加えて 30 分超音波処理を行い抽出した後、6200 rpmで 10 分間遠心分離し、その上清を 0.45 μm メンブレンフィルタ

ーを用いてろ過したものを単一試料溶液とした。 (B) 加水分解試料溶液 試料(6 種)をそれぞれ 500 mg 採取し、濃塩酸 2 ml 及び

0.06 %BHT 含有メタノール 8 ml を加えて 30 分間超音波処理を行

った後、3時間加熱還流して加水分解を行った。室温まで放冷後、

6200 rpm で 10 分間遠心分離した。その上清を1ml 採取し、水を

加えて全量を 9 ml としてよく混和した後、その全量を Chem Elutに負荷した。5 分間放置後、酢酸エチル 12 ml で溶出し、さらに

12 ml で溶出した。酢酸エチル溶出液を減圧濃縮後、メタノール 2 mlに溶解して 0.45 μmメンブレンフィルターを用いてろ過したも

のを試料溶液とした。 (C) 3 種類等量混合試料溶液

3 種類等量混合試料を50 mgずつ2検体採取し、それぞれに20%メタノール水溶液及び 80%メタノール水溶液を加えて 30 分超音

波処理を行い抽出した後、6200 rpm で 10 分間遠心分離し、その

上清を 0.45 μm メンブレンフィルターを用いてろ過したものを3

Page 3: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

関税中央分析所報 第 54 号 31

種類等量混合試料溶液とした。 (D) 10%含有試料溶液

(a) 大麦若葉 10%含有試料溶液 大麦若葉 10%含有試料それぞれに 20%メタノール水溶液を

加えて 30 分超音波処理を行い抽出した後、6200 rpm で 10 分間

遠心分離し、その上清を 0.45 μm メンブレンフィルターを用い

てろ過したものを大麦若葉 10%含有試料溶液とした。 (b) 桑葉 10%含有試料溶液 桑葉 10%含有試料それぞれに 20%メタノール水溶液を加え

て 30 分超音波処理を行い抽出した後、6200 rpm で 10 分間遠心

分離し、その上清を 0.45 μm メンブレンフィルターを用いてろ

過したものを桑葉 10%含有試料溶液とした。 (c) アルファルファ 10%含有試料溶液 アルファルファ 10%含有試料それぞれに 80%メタノール水

溶液を加えて 30 分超音波処理を行い抽出した後、6200 rpm で

10 分間遠心分離し、その上清を 0.45 μm メンブレンフィルターを

用いてろ過したものをアルファルファ10%含有試料溶液とした。 2.3.2 LC/MS 分析 標準溶液、単一試料溶液及び加水分解試料溶液を 2.2 の条件で

LC/MS 分析を行い、MS スペクトル及び MS/MS スペクトルを測

定し、機能性成分であるサポナリン、1-デオキシノジリマイシン

又はクメストロールが検出されるか否かを確認した。また、3 種類等量混合試料溶液及び 10%含有試料溶液については、2.2 の条

件で LC/MS 分析を行い、機能性成分の[M+H]+イオンの m/z での

Extract Ion Chromatogram(以下、「EIC」と略記する。)により、サ

ポナリン、1-デオキシノジリマイシン又はクメストロールが検出

されるか否かを確認した。溶離液については、1-デオキシノジリ

マイシン及びサポナリンを分離する条件1及びクメストロールを

分離する条件2をグラジエント条件とした。

注)サポナリンは、通常ルトナリン及びその誘導体と共に抽出さ

れることから、フラボノイド類の分離のため移動相をギ酸添加の

10%のアセトニトリル水溶液から開始し、グラジエント溶出させ

る方法が報告されている(9)~(12)。1-デオキシノジリマイシンは、

一般的なC18カラムでは保持されないことから、イオン交換カラ

ムクロマトグラフィーや親水性相互作用クロマトグラフィーで

の分離・溶出の方法が報告されている(4),(13)が、この方法では、

専用の分析機器が必要であることやカラム交換等のために時間

が必要となる。しかしC18カラムを使用した精密質量での EIC に

よる検出の報告もあるため(5)、今回はC18 カラムにて検証した。

クメストロールについては、イソフラボン類とともに抽出される

ため、イソフラボン類を分離する条件が報告されている(7),(8)。

3. 結果及び考察

3.1 標準溶液の LC/MS 分析結果 各標準品の構造式を Fig.1 に示し、標準溶液で得られた結果を、

Fig.2-4 に示す。どの成分もポジティブモードで感度よく測定可能

であった。サポナリンは、分子量 594 であり、[M+H]+イオン

(m/z:595.166)が検出された。1-デオキシノジリマイシンは、分

子量:163 であり、[M+H]+イオン(m/z:164.092)が検出された。ク

メストロールは、分子量:268 であり、[M+H]+イオン(m/z:269.045)が検出された。 各成分における[M+H]+イオンのm/zをプリカーサーイオンとし

て選択した MS/MS スペクトルを取得したところ、各成分とも異

なるスペクトルパターンを示した。以上の結果より、標準品につ

いては、MS スペクトル及び MS/MS スペクトルの両方にて識別可

能であった。また MS/MS スペクトル取得条件のコリジョン電圧

は、プリカーサーイオン及びプロダクトイオンの両方が確認でき

る条件が望ましいが、サポナリンについては 10V、1-デオキシノ

ジリマイシン及びクメストロールは20Vが良好な結果が得られた。 Saponarin (MW: 594) 1-Deoxynojirimycin (MW: 163)

Coumestrol (MW: 268)

Fig.1 Chemical structure of saponarin, 1-deoxynojirimycin and coumestrol

Page 4: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

32 液体クロマトグラフィー/質量分析法による青汁粉末原料の分析

Fig.2 LC/MS analysis of saponarin (a) MS spectra, (b) MS/MS spectra: collision energy is 10 eV, (c) MS/MS spectra: collision energy is 20 eV, (d) MS/MS spectra: collision energy is 40 eV

0

.2

.4

.6

.8

1

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)100 125 150 175 200 225 250 275 300 325 350 375 400 425 450 475 500 525 550 575 600 625 650 675 700

595.

1663

0

415.

1027

3

433.

1133

9

313.

0710

0

577.

1556

7

367.

0811

1

337.

0708

7

397.

0919

1

283.

0601

9

475.

1240

3

529.

1341

2

499.

1238

2

559.

1440

1

165.

0178

3

445.

1125

6

121.

0281

8

(b) Precursor ion

0

1

2

3

4

5

6

7

8

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)100 125 150 175 200 225 250 275 300 325 350 375 400 425 450 475 500 525 550 575 600 625 650 675 700

313.

0708

4

415.

1026

4

367.

0814

0

337.

0710

3

283.

0603

9

397.

0923

5

433.

1131

5

578.

1594

6

596.

1694

3

475.

1238

4

349.

0709

3

323.

0913

1

295.

0604

0

271.

0602

3

499.

1235

0

529.

1346

1

559.

1446

6

165.

0178

8

145.

0488

4

127.

0387

7

(c)

Precursor ion

0

25

5

75

1

25

5

75

2

25

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)100 125 150 175 200 225 250 275 300 325 350 375 400 425 450 475 500 525 550 575 600 625 650 675 700

595.

1659

4

317.

0607

3

158.

9612

3

125.

9860

7

614.

1404

4

186.

9561

1

141.

9582

4

345.

5600

7

433.

1134

3

239.

2368

6

257.

2478

7

633.

1155

3

679.

1195

8

217.

9872

0

285.

2791

2

694.

0826

9

391.

2856

5

366.

0504

4

648.

0759

5

(a) [M+H]+

0

.2

.4

.6

.8

1

.2

.4

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)100 125 150 175 200 225 250 275 300 325 350 375 400 425 450 475 500 525 550 575 600 625 650 675 700

283.

0602

3

313.

0709

1

337.

0709

1

379.

0814

9

361.

0707

6

397.

0915

1

295.

0616

8

271.

0601

0

165.

0184

3

121.

0282

7

415.

1024

6

149.

0232

5

243.

0293

8

187.

0386

0

215.

0336

9

(d)

Precursor ion

Page 5: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

関税中央分析所報 第 54 号 33

Fig.3 LC/MS analysis of 1-deoxynojirimycin (a) MS spectra, (b) MS/MS spectra: collision energy is 10 eV, (c) MS/MS spectra: collision energy is 20 eV, (d) MS/MS spectra: collision energy is 40 eV

0

5

1

.5

2

5

3

5

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200

164.

0924

4

146.

0818

5

110.

0609

0

128.

0713

8

80.0

5072

69.0

3467

60.0

4580

102.

0560

6

86.0

6130

42.0

3536

55.0

5558

30.0

3525

116.

0719

8

167.

3017

2

(b) Precursor ion

0

25

5

75

1

25

.5

75

2

25

5

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200

80.0

5065

41.0

4009

68.0

5076

53.0

4004

60.0

4579

96.0

4546

30.0

3490

110.

0600

1

102.

0565

1

128.

0728

5

(d)

Precursor ion

0

1

2

3

4

5

6

7

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200

69.0

3487

80.0

5075

110.

0609

3

60.0

4574

164.

0924

6

146.

0820

5

128.

0713

6

102.

0559

9

86.0

6143

41.0

4000

92.0

5075

55.0

5581

30.0

3434

116.

0716

0

(c) Precursor ion

0

2

4

6

8

1

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)100 125 150 175 200 225 250 275 300 325 350 375 400 425 450 475 500 525 550 575 600 625 650 675 700

164.

0921

0

186.

0745

2

349.

1595

3

146.

0818

5

118.

0870

3

380.

0889

2

217.

9891

7

401.

1006

6

263.

0104

7

416.

0679

8

310.

1463

4

544.

9400

3

100.

9324

3

365.

1076

1

248.

0466

2

285.

2808

7

479.

0707

5

(a) [M+H]+

Page 6: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

34 液体クロマトグラフィー/質量分析法による青汁粉末原料の分析

Fig.4 LC/MS analysis of coumestrol (a) MS spectra, (b) MS/MS spectra: collision energy is 10 eV, (c) MS/MS spectra: collision energy is 20 eV, (d) MS/MS spectra: collision energy is 40 eV

0

25

5

75

1

25

.5

75

Counts (%) vs. Mass-to-Charge (m/z)

50 75 100 125 150 175 200 225 250 275 300 325 350 375 400 425 450 475 500 525 550 575 600

269.

0456

1

241.

0504

6

197.

0605

4

213.

0552

8

157.

0652

9

141.

0705

6

115.

0548

2

342.

9693

0

91.0

5417

65.0

4075

(b) Precursor ion

0

.2

.4

.6

.8

1

.2

.4

Counts (%) vs. Mass-to-Charge (m/z)

50 75 100 125 150 175 200 225 250 275 300 325 350 375 400 425 450 475 500 525 550 575 600

269.

0454

9

241.

0505

0

197.

0604

8

213.

0554

9

157.

0655

5

141.

0707

5

115.

0552

8

185.

0598

3

68.9

9847

91.0

5529

252.

0405

3

(c) Precursor ion

0

1

2

3

4

5

6

7

8

Counts (%) vs. Mass-to-Charge (m/z)

50 75 100 125 150 175 200 225 250 275 300 325 350 375 400 425 450 475 500 525 550 575 600

157.

0654

4

213.

0555

3

197.

0604

6

115.

0550

3

141.

0705

7

168.

0575

4

241.

0501

0

185.

0595

1

68.9

9827

93.0

3416

225.

0557

3

269.

0443

4

55.0

1932

(d)

Precursor ion

0

1

2

3

4

5

Counts (%) vs. Mass-to-Charge (m/z)

100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300 320 340 360 380 400 420 440 460 480 500 520 540 560 580 600

269.

0454

4

158.

9619

4

195.

0268

8

308.

5327

9

174.

5134

7

141.

9591

6

564.

0429

9

125.

9866

7

422.

0382

1

442.

5520

0

329.

0461

2

409.

9962

5

288.

0189

5

210.

5422

3

368.

9718

1

385.

9757

6

548.

0675

4

(a) [M+H]+

Page 7: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

関税中央分析所報 第 54 号 35

3.2 試料溶液の LC/MS 分析結果 3.2.1 単一試料溶液 3.2.1(1) 大麦若葉粉末及び大麦若葉粉砕物からのサポナリンの

検出方法の検討 サポナリン等フラボノイド類は、30~50%メタノール水溶液で

抽出が行われていることから(3),(9),(10) 大麦若葉粉末及び大麦若葉

粉砕物の 40%メタノール水溶液抽出物について、得られた結果を

Fig.5 に示す。Total Ion Current Chromatogram(以下、「TIC」と略

記する。)では、複数の成分が検出され、夾雑成分が多く判別不能

であったが、サポナリンの[M+H]+イオンの m/z での EIC(595.17

±0.01)では、単一のピークとして 12.5 分に検出された。 当該ピークの MS スペクトルを見ると、サポナリン標準品の

MS スペクトルとは異なり、[M+H]+:595.166 以外のイオンも検出

される( Fig.5(c))。そこで確認のために [M+H]+ イオンの

m/z:595.176 をプリカーサーイオンとして選択した MS/MS スペク

トルを取得したところ、コリジョン電圧:10V、20V 及び 40V で

得られた標準のサポナリンと MS/MS スペクトルが一致した。 以上のことから、LC/MS 分析にて大麦若葉からサポナリンを検

出することができた。

0

.2

.4

.6

.8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

(a)

0

2

4

6

8

1

.2

.4

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1(b)

0

1

2

3

4

5

6

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)100 125 150 175 200 225 250 275 300 325 350 375 400 425 450 475 500 525 550 575 600 625 650 675 700

595.

1675

2

611.

1623

4

276.

1591

9

291.

1647

8

565.

1577

4

307.

1774

8

177.

0553

0

209.

1541

1

433.

1148

8

449.

1101

1

667.

2999

8

699.

2918

5

369.

1205

9

581.

1531

1

413.

1829

2

479.

1208

3

194.

0827

7

683.

2975

6

261.

1713

1

334.

1421

2

132.

1025

8

526.

2219

2

225.

1487

8

500.

2878

2

396.

2021

3

[M+H]+ (c)

Page 8: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

36 液体クロマトグラフィー/質量分析法による青汁粉末原料の分析

Fig.5 LC/MS analysis from 40% methanol extract of barley leaf powder. (The result for barley crushed leaf is the same; data not shown.) (a) TIC, (b) EIC (595.166±0.01), (c) MS spectra of peak of EIC (595.166±0.01), (d) MS/MS spectra: collision energy is 10 eV, (e) MS/MS spectra: collision energy is

20 eV, (f) MS/MS spectra: collision energy is 40 eV. なお今回検証した方法では、小数点以下二桁の範囲で EIC を行

ったが、整数質量及び小数点以下一桁での EIC では、複数のピー

クが検出されている。これは、構造的に類似した植物からの抽出

成分が多数存在し、整数レベルでは同一の分子量のものが存在す

ると思料される。 3.2.1(2) 桑葉若葉粉末及び桑葉茶からの 1-デオキシノジリマイ

シンの検出方法の検討 1-デオキシノジリマイシンは、水抽出が行われている 4),5) が、

20%メタノール水溶液での抽出が良いとされることから、桑葉若

葉粉末及び桑葉茶の 20%メタノール水溶液抽出物について、得ら

れた結果を Fig.6 に示す。TIC では、大麦若葉と同様に複数の成分

が検出され、夾雑成分が多く判別不能であったが、1-デオキシノ

ジリマイシンの[M+H]+イオンの m/z での EIC(164.09±0.01)で

は、単一のピークとして 1.5 分に検出された。 当該ピークの MS スペクトルを見ると、1-デオキシノジリマイ

シン標準品の MS スペクトルとは異なり、[M+H]+イオンが最大ピ

ークとなっておらず、他のイオンが検出される(Fig.6(c))。そこ

で確認のために[M+H]+イオンの m/z:164.092 をプリカーサーイオ

ンとして選択した MS/MS スペクトルを取得したところ、コリジ

ョン電圧:10V、20V 及び 40V で得られた標準の 1-デオキシノジ

リマイシンと MS/MS スペクトルが一致した。 以上のことから、LC/MS 分析にて桑葉からは 1-デオキシノジリ

マイシンを検出することができた。

0

1

2

3

4

5

6

7

8

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700

415.

1049

4

433.

1141

5

595.

1683

6

577.

1586

3

367.

0805

6

313.

0724

5

397.

0932

7

337.

0713

6

475.

1234

8

283.

0598

2

529.

1380

3

559.

1518

3

646.

0248

7

620.

9717

2

691.

7925

0

264.

0860

7

499.

1281

2

405.

4290

6

445.

9362

2

156.

3405

4

207.

2902

3

Precursor ion

(d)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700

313.

0721

0

367.

0828

4

337.

0722

8

283.

0611

1

415.

1041

5

397.

0923

4

349.

0719

2

433.

1103

8

323.

0943

7

594.

2786

3

545.

5514

8

621.

6700

1

482.

2645

5

646.

0265

9

295.

0582

7

665.

1469

8

685.

9879

4

117.

2995

3

569.

0475

7

236.

1020

9

187.

4804

0

509.

9858

6

164.

7473

3

263.

6296

7

Precursor ion

(e)

0

2

4

6

8

1

.2

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700

283.

0617

5

313.

0714

8

337.

0731

8

295.

0603

7

361.

0731

1

379.

0852

1

271.

0625

2

397.

0956

1

165.

0189

1

679.

4903

5

485.

9080

9

658.

7478

0

610.

6859

1

591.

0222

4

696.

1641

1

639.

7288

8

556.

5877

8

432.

6029

2

464.

8233

9

202.

1462

9

525.

7128

0

(f)

Precursor ion

Page 9: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

関税中央分析所報 第 54 号 37

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

(a)

0

.5

1

.5

2

.5

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

(b)

0

.2

.4

.6

.8

1

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)100 125 150 175 200 225 250 275 300 325 350 375 400 425 450 475 500 525 550 575 600 625 650 675 700

381.

0806

2

146.

0822

6

219.

0272

9

125.

9867

9

164.

0922

9

362.

0989

3

280.

1402

1

533.

1577

2

326.

1457

4

296.

1323

1

198.

9408

5

557.

1241

5

573.

1011

5

239.

9677

0

515.

0949

6

499.

1171

7

258.

0517

4

475.

1790

1

395.

0692

6

460.

2038

4

696.

2270

2

(c)

[M+H]+

0

.2

.4

.6

.8

1

.2

.4

.6

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200

164.

0921

5

146.

0816

6

110.

0608

8

128.

0713

0

80.0

5080

69.0

3451

60.0

4569

102.

0562

4

86.0

6037

42.0

3557

167.

5977

5

117.

2976

2

186.

3546

8

153.

9235

2

53.0

3976

174.

4668

3

194.

7445

7

160.

4245

9

179.

9904

1

(d) Precursor ion

Page 10: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

38 液体クロマトグラフィー/質量分析法による青汁粉末原料の分析

Fig.6 LC/MS analysis from 20% methanol extract of mulberry leaf powder. (The result for mulberry leaf tea is the same; data not shown.) (a) TIC, (b) EIC (164.92±0.01), (c) MS spectra of peak of EIC (164.92±0.01), (d) MS/MS spectra: collision energy is 10 eV, (e) MS/MS spectra: collision energy is 20

eV, (f) MS/MS spectra: collision energy is 40 eV なおEICの1.5分のピークについては形状の乱れが見られるが、

当該成分は、C18 カラムで保持されず、又、他の多くの極性成分

と同様に溶出直後に検出されることからピーク形状の改善ができ

なかったものと思料される。 3.2.1(3) アルファルファ粉末及びアルファルファキューブから

のクメストロールの検出方法の検討 クメストロール等イソフラボン類は、含水メタノール、特に

80%メタノール水溶液で抽出が行われていることから(7),(8)、アルフ

ァルファ粉末及びアルファルファキューブの 80%メタノール水溶液

抽出物について得られた結果を、Fig.7 に示す。TIC では、大麦若葉

及び桑葉と同様に複数の成分が検出され、夾雑成分が多く判別不

能であったが、クメストロールの[M+H]+イオンの m/z での EIC

(269.05±0.01)では、単一のピークとして 13.5 分に検出された。 当該ピークの MS スペクトルを見ると、クメストロール標準品

の MS スペクトルとは異なり、[M+H]+イオンが最大ピークとなっ

ておらず、他のイオンも検出された(Fig.7(c))。そこで確認のた

めに[M+H]+イオンの m/z:269.045 をプリカーサーイオンとして選

択した MS/MS スペクトルを取得したところ、コリジョン電圧:

10V、20V 及び 40V で得られた標準のクメストロールと MS/MSスペクトルは完全には一致せず、標準品では見られないスペクト

ルも検出されたが、コリジョン電圧を変化させると、クメストロ

ール標準品の MS/MS スペクトルと同様に特定の MS スペクトル

のみが増減していることから、当該成分はクメストロールである

と思料される。

0

5

1

.5

2

5

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200

69.0

3464

80.0

5051

110.

0607

2

60.0

4519

164.

0928

5

146.

0814

1

128.

0714

1

102.

0555

4

86.0

5976

56.0

5063

41.0

3908

92.0

5160

171.

9207

7

141.

1694

3

188.

2456

7

116.

9930

6

180.

7315

4

195.

1268

1

122.

7485

6

62.8

3732

(e) Precursor ion

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38

1 1(a)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200

80.0

5034

68.0

5019

41.0

3938

53.0

3913

30.0

3357

96.0

4491

110.

0591

5

74.0

6093

173.

0121

2

157.

0315

6

141.

4930

7

184.

8449

5

162.

2722

5

167.

5997

2

149.

4984

9

197.

4609

0

121.

5303

1

131.

4811

8

101.

1292

9

115.

2162

3

136.

6004

0

Precursor ion

(f)

Page 11: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

関税中央分析所報 第 54 号 39

0

.5

1

.5

2

.5

3

.5

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38

1 1

(b)

0

.5

1

.5

2

.5

3

.5

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300 320 340 360 380 400

269.

0466

1

241.

0527

4

213.

0561

3

386.

0525

8

225.

0556

0

330.

7326

2

349.

6071

5

376.

4592

4

395.

4793

5

361.

6051

5

319.

2678

7

197.

0576

5

119.

9438

7

295.

5164

5

276.

8083

5

185.

1395

2

256.

2807

1

136.

1955

0

306.

0651

9

160.

8741

6

(d)

Precursor ion

0

1

2

3

4

5

6

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)100 125 150 175 200 225 250 275 300 325 350 375 400 425 450 475 500 525 550 575 600 625 650 675 700

271.

0616

0

473.

1468

5

287.

0567

1

158.

9618

6

118.

0869

0

186.

9571

6

141.

9587

2

309.

2066

3

391.

2870

8

249.

0992

7

457.

3353

8

211.

1355

2

425.

2531

6

351.

2141

5

603.

1386

7

547.

1140

0

579.

1545

4

529.

3347

5

233.

0965

9

675.

2142

1

367.

2087

9(c)

[M+H]+

0

25

.5

75

1

25

.5

75

2

25

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300 320 340 360 380 400

268.

0387

7

241.

0512

3

213.

0552

1

197.

0617

6

395.

3444

2

381.

1785

3

363.

1681

3

157.

0717

2

248.

5883

8

295.

0433

7

340.

8655

5

325.

2201

2

279.

5691

3

147.

8124

9

224.

3546

7

168.

8590

2

122.

8324

3

Precursor ion

* Product ion of coumestrol *

* * (e)

Page 12: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

40 液体クロマトグラフィー/質量分析法による青汁粉末原料の分析

Fig.7 LC/MS analysis from 80% extract of alfalfa leaf powder. (The result for alfalfa leaf cube is the same; data not shown.) (a) TIC, (b) EIC (269.05±0.01), (c) MS spectra of peak of EIC (269.05±0.01), (d) MS/MS spectra: collision energy is 10 eV, (e) MS/MS spectra: collision energy is 20

eV, (f) MS/MS spectra: collision energy is 40 eV 次に加水分解試料溶液について、得られた結果を Fig.8 に示す。

通常、クメストロールを含むイソフラボン類はそのほとんどが、

配糖体として存在していることが知られているため、酸加水分解

を行うことにより遊離体にする必要があるが、アルファルファの

酸加水分解物から検出されるクメストロールについては、80%メ

タノール水溶液抽出物と比較して、ピーク高さにおいて有意な差

は見られなかった(Fig.9)。 以上のことから、LC/MS 分析にてアルファルファからはクメス

トロールを検出可能であり、またアルファルファからは、加水分

解の操作がなくても検出できることがわかった。

0

.2

.4

.6

.8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38

1 1

(a)

0

2

4

6

8

1

.2

.4

.6

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38

1 1

(b)

0

1

2

3

4

5

6

7

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300 320 340 360 380 400

128.

0640

5

197.

0629

6

240.

0423

4

213.

0534

6

157.

0614

9

115.

0534

3

335.

7801

1

322.

2378

9

184.

0529

0

386.

1899

1

268.

4933

3

68.6

6579

168.

0604

4

349.

6051

2

296.

9414

1

311.

9034

3

367.

8934

6

226.

7368

5

256.

4877

0

397.

1371

4

207.

2906

4

96.9

4014

285.

1568

5

148.

4929

5

Precursor ion (f) * * *

* *

* Product ion of coumestrol

Page 13: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

関税中央分析所報 第 54 号 41

Fig.8 LC/MS analysis from extract of alfalfa leaf powder with hydrolysis. (The result for alfalfa leaf cube is the same; data not shown.) (a) TIC, (b) EIC (269.05±0.01), (c) MS spectra of peak of EIC (269.05±0.01), (d) MS/MS spectra: collision energy is 10 eV, (e) MS/MS spectra: collision energy is 20

eV, (f) MS/MS spectra: collision energy is 40 eV

0

5

1

5

2

5

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)100 125 150 175 200 225 250 275 300 325 350 375 400 425 450 475 500 525 550 575 600 625 650 675 700

277.

1291

4

203.

0919

9

157.

0499

3

223.

0609

2

575.

2329

1

691.

1543

6

299.

1110

3

185.

0448

3

332.

1712

4

251.

0925

4

505.

1357

6

535.

1463

5

355.

1186

3

475.

1252

9

434.

1643

7

167.

0343

8

139.

0029

7

391.

2851

9

607.

1698

3

115.

0395

6

(c)

0

1

2

3

4

5

6

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300 320 340 360 380 400

269.

0451

6

223.

0600

1

148.

0395

8

133.

0293

4

251.

0926

9

194.

0804

1

123.

0431

4

241.

0515

5

179.

0699

3

213.

0538

1

86.1

0406

97.1

0122

167.

0322

9

69.0

6920

57.0

6743

107.

0458

8

43.0

5759

285.

7835

2

305.

2719

5

335.

9453

4

(d)

Precursor ion

0

25

5

75

1

25

5

75

2

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300 320 340 360 380 400

269.

0450

8

241.

0493

0

197.

0605

4

148.

0393

8

133.

0278

1

213.

0545

9

105.

0339

5

225.

0542

0

123.

0441

2

157.

0643

1

80.0

4875

177.

0172

8

251.

0912

4

93.0

7027

57.0

6874

43.0

5590

67.0

5665

20.6

8837

(e)

Precursor ion * Product ion of coumestrol

*

*

*

0

.1

.2

.3

.4

.5

.6

.7

.8

.9

1

Counts vs. Mass-to-Charge (m/z)20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300 320 340 360 380 400

115.

0544

3

77.0

3949

213.

0546

4

157.

0636

3

105.

0347

4

197.

0577

1

128.

0611

5

141.

0700

4

65.0

4082

168.

0561

6

51.0

2351

92.0

4960

366.

1626

3

41.0

3776

224.

0442

1

184.

0511

7

268.

6327

2

395.

7743

0

241.

0398

1

349.

6836

3

(f)

Precursor ion

* Product ion of coumestrol

*

*

* * *

*

Page 14: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

42 液体クロマトグラフィー/質量分析法による青汁粉末原料の分析

Fig.9 Comparison between extract of alfalfa leaf powder without hydrolysis and that of alfalfa leaf powder with hydrolysis. Each chromatogram is shown on the same

scale. (a) EIC (269.056±0.01) from extract without hydrolysis, (b) EIC (269.05±0.01) from extract with hydrolysis なおアルファルファ粉末及びアルファルファキューブについ

て、[M+H]+イオンの m/z をプリカーサーイオンとして選択した

MS/MSスペクトルとクメストロール標準品の MS/MSスペクトル

と完全に一致していないが、その理由については、当該機器の

m/z によるプリカーサーイオンの選択範囲の問題があげられる。

当該機器の検出器は、四重極型と飛行時間型のタンデムであり、

MS/MS スペクトル測定時は、四重極で特定の m/z のイオンだけを

選択的に通過させ、コリジョンセルで破壊の上、飛行時間型検出

器で質量を検出する。m/z での選択範囲は、四重極での質量分解

能によるが、当該機器の設定の下限値は±1.4m/z であり、この範

囲内のイオンをすべて通過させることとなる。Fig.7(c)を見ると、

[M+H]+イオンの m/z の±1.4 の範囲に他の質量数のイオンが確認

されることから、この範囲にある他の質量数のイオンも選択され、

コリジョンセルで破壊及び検出されたことが原因と思料される。

より正確な MS/MS スペクトルの取得には、試料の精製や LC での

分離を改善し、[M+H]+イオン(m/z:269.045)のスペクトル強度を

上げる必要があると思料される。 3.2.1(4) 他の植物種からのサポナリンの検出 大麦若葉以外の各試料の 40%メタノール水溶液抽出物におい

て、3.2.1(1)と同様の手法で、サポナリンからの検出を試みたが、

大麦若葉以外は EIC(595.17±0.01)にてピークが検出されなかっ

た(Fig.10)。なお桑葉抽出物の EIC でサポナリンの保持時間に近

いピークが検出されるが、MS/MS スペクトルを取得した結果、サ

ポナリンと異なる成分であった。 以上のことから、サポナリンは大麦若葉からのみ検出されるこ

とがわかった。

0

2

4

6

8

1

.2

.4

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

Saponarin (a)

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38

1 1

(a)

0

2

4

6

8

1

.2

.4

.6

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38

1 1

(b)

Page 15: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

関税中央分析所報 第 54 号 43

Fig.10 EIC (595.17±0.01) from 40% methanol extract of (a) barley leaf powder, (b) mulberry leaf powder, and (c) alfalfa leaf powder. Each chromatogram is shown on the

same scale. The peak of chromatogram (b) is not saponarin because of the difference of MS/MS spectra (data not shown). 3.2.1(5) 他の植物種からの 1-デオキシノジリマイシンの検出 各試料の 20%メタノール水溶液抽出物において、3.2.1(2)と同様

の手法で、1-デオキシノジリマイシンの検出を試みたが、桑葉以

外は EIC(164.09±0.01)にてピークが検出されなかった(Fig.11)。 以上のことから、1-デオキシノジリマイシンは桑葉からのみ検

出されることがわかった。

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

(a)

0

.5

1

.5

2

.5

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

(b) 1-Deoxynojirimycin

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

(c)

0

.2

.4

.6

.8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

(b)

Page 16: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

44 液体クロマトグラフィー/質量分析法による青汁粉末原料の分析

Fig.11 EIC (164.09±0.01) from 20% methanol extract of (a) barley leaf powder, (b) mulberry leaf powder, and (c) alfalfa leaf powder. Each chromatogram is shown on the

same scale. 3.2.1(6) 他の植物種からのクメストロールの検出 各試料の 80%メタノール水溶液抽出物及び加水分解試料溶液

において、3.2.1(3)と同様の手法で、クメストロールの検出を試み

たが、アルファルファ以外は、酸加水分解の有無にかかわらず、

EIC(269.05±0.01)にてピークが検出されなかった(Fig.12)。 以上のことから、クメストロールはアルファルファからのみ検

出されることがわかった。

Fig.12 EIC (269.05±0.01) from 80% methanol extract and extract with hydrolysis of (a) barley leaf powder, (b) mulberry leaf powder, and (c) alfalfa leaf powder. Each

chromatogram is shown on the same scale. (The result for extract with hydrolysis is the same; data not shown.)

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

(c)

0

.2

.4

.6

.8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38

1 1

(a)

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38

1 1

(b)

0

.5

1

.5

2

.5

3

.5

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38

1 1

(c) Coumestrol

Page 17: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

関税中央分析所報 第 54 号 45

3.2.1(7) 1-デオキシノジリマイシン抽出条件でのサポナリンの

検出 サポナリンは、水の割合の多い含水メタノールにて抽出可能で

あり、LC/MS 分析の溶離液の条件も 1-デオキシノジリマイシンと

同一としていることから、分析時間の短縮のため、1-デオキシノ

ジリマイシンの検出に用いる 20%メタノール水溶液抽出物にお

いてサポナリンの検出を試みたところ、サポナリンは検出可能で

あり、ピーク高さにおいても有意な差は見られなかった(Fig.13)。

Fig.13 EIC (595.17±0.01) from 20% methanol extract of (a) barley leaf powder, (b) mulberry leaf powder, and (c) alfalfa leaf powder. Each chromatogram is shown on the

same scale as Fig. 10.

3.2.1(8) 単一試料の種判別についての考察 今回検討した3種類の植物粉末のうち、サポナリンは大麦若葉

のみから検出され、1-デオキシノジリマイシンは桑葉のみから検

出され、クメストロールはアルファルファのみから検出された。

このことから LC/MS 分析によりサポナリン、1-デオキシノジリマ

イシン及びクメストロールの検出を行うことで、大麦若葉、桑葉

及びアルファルファの種判別が可能であるといえる。 また 3.2.1(4)、3.2.1(5)、3.2.1(6)及び 3.2.1(7)の結果から、種判別

については、20%メタノール水溶液抽出物及び 80%メタノール水

溶液抽出物についての LC/MS 分析結果の各成分の精密質量での

EIC のみで判別可能であると思料されることから、混合試料を用

いた検討では、当該方法で行うこととした。 3.2.2 3種類等量混合試料溶液

LC/MS 分析においては、夾雑成分によるマトリックス効果の影

響で目的成分のイオン化効率が変化し、感度が低下したり上昇し

たりする現象が起こる。そこで混合による成分比が変わることに

よる影響の可否について確認する必要があることから、混合物試

料での機能性成分の検出を試みた。得られた結果を Fig.14 に示す。

各成分の[M+H]+イオンの m/z での EIC により、20%メタノール水

溶液からはサポナリン及び 1-デオキシノジリマイシン、80%メタ

ノール水溶液からはクメストロールが検出され、他の成分の妨害

なく3成分とも検出可能であった。

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

(c)

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1(b)

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

(a)

Page 18: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

46 液体クロマトグラフィー/質量分析法による青汁粉末原料の分析

Fig.14 EIC from methanol extract of mixture of barley leaf powder, mulberry leaf powder and alfalfa leaf powder. (a) EIC (595.17±0.01) from 20% methanol extract. The chromatogram is shown on the same scale as Fig. 10. (b) EIC (164.09±0.01) from 20% methanol extract. The chromatogram is shown on the same scale as Fig. 11. (c) EIC (269.05±0.01) from 80% methanol extract. The chromatogram is shown on the same scale as Fig. 12.

3.2.3 10%含有試料溶液 目的の植物の混合割合が低い場合においても、前述の成分が検

出可能か否かを確認するため、大麦若葉 10%含有試料、桑葉 10%含有試料及びアルファルファ 10%含有試料について、得られた結

果を Fig.15に示す。各成分の[M+H]+イオンのm/zでのEICにより、

それぞれ単一ピークとして検出可能であった。

以上のことから、10%程度混合された植物の混合粉末について

も LC/MS 分析にて特定の種が含有するかの判断が可能であった。

なお 10%以下の混合比の混合物試料については、検証を行ってい

ないが、目的とする機能性成分が検出されないとされる植物抽出

物の LC/MS 分析結果と比較し、ピークの有無を確認する必要が

あると思料される。

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

Saponarin (a)

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

1-Deoxynojirimycin

(b)

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38

1 1

Coumestrol (c)

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

(a)

Saponarin

Page 19: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

関税中央分析所報 第 54 号 47

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38

1 1

Coumestrol

(f)

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38

1 1

(e)

Coumestrol

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

1-Deoxynojirimycin

(d)

0

.2

.4

.6

.8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

(c)

1-Deoxynojirimycin

0

2

4

6

8

1

Counts (%) vs. Acquisition Time (min)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

1 1

(b)

Saponarin

Fig.15 EIC from methanol extract of mixture of leaf powders. (a) EIC (595.17±0.01) from 20% methanol extract of 10% mixture of barley leaf powder in alfalfa leaf powder. The chromatogram is shown on the same scale as Fig. 10. (b) EIC (595.17±0.01) from 20% methanol extract of 10% mixture of barley leaf powder in mulberry leaf powder. The chromatogram is shown on the same scale as Fig. 10. (c) EIC (164.09±0.01) from 20% methanol extract of 10% mixture of mulberry leaf powder in barley leaf powder. The chromatogram is shown on the same scale as Fig. 11. (d) EIC (164.09±0.01) from 20% methanol extract of 10% mixture of mulberry leaf powder in alfalfa leaf powder. The chromatogram is shown on the same scale as Fig. 11. (e) EIC (269.05±0.01) from 80% methanol extract of 10% mixture of alfalfa leaf powder in mulberry leaf powder. The chromatogram is shown on the same scale as Fig. 12. (f) EIC (269.05±0.01) from 80% methanol extract of 10% mixture of alfalfa leaf powder in barley leaf powder. The chromatogram is shown on the same scale as Fig. 12.

Page 20: 液体クロマトグラフィー/質量分析法による ... · 近年、健康食品として販売されている青汁粉末の原料にするた め、様々な種類の植物粉末が輸入されている。その関税分類につ

48 液体クロマトグラフィー/質量分析法による青汁粉末原料の分析

3.3 種判別及び混合物か否かの判別についての考察 以上の結果から、LC/MS 分析によりサポナリン、1-デオキシノ

ジリマイシン及びクメストロールの検出を行うことで、大麦若葉、

桑葉及びアルファルファの種判別並びに混合物か否かの判別が可

能であるといえる。また今回検証した方法では、試料採取、抽出

作業及び LC/MS 分析について、半日程度で実施可能であり、ス

クリーニングとして有効であると考えられる。

3.4 LC/MS 分析での種判別の有効性 LC/MS による機能性成分の検出は、種判別に有効であったが、

今回3種類の植物種間のみの比較であることを考慮する必要があ

る。青汁粉末原料については、今回3種類の植物の他にケール、

ゴーヤ、明日葉、モロヘイヤ、アロエ等も使用されており、それ

ぞれ各種に含まれる機能性成分について研究されているが、今回

検討した3成分の含有の有無については不明である。また、サポ

ナリンについては他の麦類植物、黒糖(9)及びアブラナ科の植物(10)

にも含有され、1-デオキシノジリマイシンについては青花やツル

クサに、クメストロールについてはクローバーや大豆等豆類植物

にも含有されるとの報告もある(7),(8)。 また、機能性成分分析は、特定保健用食品制度を受けて盛んに

研究されているが、機能性成分については、健康増進法第 26 条に

基づき特定保健用食品として許可を受けなければ、食品に表示で

きない成分であり、現状では、機能性成分は未だに定義もなく、

統一的な分析法があるものも少ないことから、分析値に対する信

頼性が課題となっている。さらに機能性成分は、いずれも天然成

分であり、季節、産地、品種等により変動する可能性があること

から、定量的に判断できないものである。

以上を踏まえると、今回の 3 種類の植物種の粉末として申告さ

れた場合にのみ、LC/MS 分析での機能性成分分析が可能であると

考え、その迅速性を生かし、スクリーニング的な定性分析法とし

て活用し、当該分析結果を踏まえて、DNA 分析を実施するのが望

ましいと考える。

4. 要 約

植物の機能性成分に着目し、LC/MS 分析で当該成分の検出を試

み、植物粉末の種判別の指標に使用できるかについて検討した。

また複数の植物からなる混合粉末の場合についても検討した。そ

の結果、LC/MS 分析から得られた TIC では夾雑成分が多く検出が

困難であったが、精密質量での EIC 及び精密質量をプリカーサー

イオンとした MS/MS スペクトルにより、植物種ごとに機能性成

分が検出可能であった。また大麦若葉からはサポナリンのみ、桑

葉からは 1-デオキシノジリマイシンのみ、アルファルファからは

クメストロールのみが検出されたことから、LC/MS 分析による機

能性成分の検出は種判別に有効であるとともに、混合物か否かの

判断の指標にも使用できるとの結果となった。植物の種判別には

一般的に DNA 分析が用いられるが、LC/MS 分析は半日程度で結

果が得られるため、その迅速性を生かし、スクリーニング的な分

析法として有効であるといえる。

(謝 辞) 本研究に当たって、試料の提供及び DNA にて種判別を実施し

た商品について情報提供していただいた関税中央分析所第 2 分析

室の皆様に厚く感謝申し上げます。

文 献

1) “とやまの特産物機能性成分データ集”,(2005),(富山県食品研究所) 2) 萩原義秀,萩原英昭,上山秀夫:日本食品科学工学会誌, 48, 10, 712(2001). 3) 上山秀夫,青塚康幸,大川雅史,小倉洋子,筌口桃江、帆足和憲、金城順英:日本食品科学工学会誌 58, 4, 170(2011) 4) T.Yoshihashi, H.T.T.Do, P.Tungtrakul, S.Boonbumrung, K.Yamaki: Journal of Food Science, 75, 3, 246 (2010) 5) 上山修,高橋仁恵,木村紀久,吉野功,増渕隆,関口昭博,和田智史,清水浩二:群馬県立産業技術センター研究報告(2011) 6) E.M.Bickoff, A.N.Booth, L.L.Lyman, A.L.Livingston, C.R.Thompson, F.Deeds: Science, 126, 3280, 969 (1957) 7) Y.Nakamura, A.Kaihara, K.Yoshii, Y.Tsumura, S.Ishimitsu, Y.Tonogai: Journal of Health Science 47, 4, 394 (2001) 8) 髙橋哲夫,斉藤明子,橋本論,佐藤千鶴子:北海道衛生研究所報 52, 29 (2002) 9) 萩貴之、前田剛希:沖縄県工業技術センター研究報告書:10, 7 (2008) 10) X.Deng,G.Gao,S.Zheng,F.Li: Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 48, 562 (2008) 11) K.R.Markham, K.A.Mitchell: Zeitxhrift fűr Natuforschung, 58, 53 (2003) 12) 伊藤裕才:ぶんせき,1, 18 (2013) 13) 株式会社東ソー ホームページ:“TSKgel TECHNICAL INFORMATION No.166 LC/MS による桑の葉抽出液中のデオキシノジリマイシ

ンの分析”(http://www.separations.asia.tosohbioscience.com/NR/rdonlyres/8DD1BD9E-0A12-4AE9-B16C-4B2E86BA6D63/0/Tl166.pdf)