アミノレブリン酸の生理作用 アミノレブリン …...図2.1 図2.2...

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図2 .1 図2 . 2 アミノレブリン酸(ALA)が拓く医療 Development of Aminolevulinic Acid (ALA) for the Medical Field アミノレブリン酸の生理作用 Biological Effects of ALA がん治療・診断におけるアミノレブリン酸 Tumor Diagnosis and Therapy using ALA Aminolevulinic acid (ALA) is a precursor of porphyrins, and porphyrins are important cofactors for human physiological processes. Porphyrins are known to accumulate in tumors after administration of ALA to cancer patients. Tumor diagnosis (fluorescence diagnosis) and tumor therapy (photodynamic therapy) make use of this phenomenon, though the molecular mechanism of porphyrin accumulation in tumors is not yet known. To establish new methods for tumor diagnosis and treatment, our laboratory studies the molecular mechanism of porphyrin accumulation in tumors. We also study various other effects of ALA on human health. Ogura Lab. アミノレブリン酸(ALA)は生体内に含まれるアミノ酸の一種です。ALAは生体内でポルフィリンに変換 され、金属が挿入された後、機能性タンパク質にかわります。この様にして作られる機能性タンパク質 はヘモグロビン・ミオグロビン・クロロフィル・チトクローム類など多種多様にわたり、生命活動にと って必須なものです。 当研究室の研究によりALAを生体に投与することによって細胞のミトコンドリア機能が約1.5倍も高まる ことが明らかとなっており、様々な生理作用が期待できます。 がん患者に ALA を投与すると、金属ポルフィリンまで代謝されることなく、ポルフィリンのままの状態 でがん細胞に蓄積することが知られています。 当研究室では、ポルフィリンが蛍光を発する現象を用いたがんの診断や、ポルフィリンが光照射によって 活性酸素を作り(光増感作用)がん細胞を死滅させることを応用した治療が行えることに着目し、研究を 行っています。さらにこの研究が発展すれば、がんの診断・治療のみならず、一般の検診にも応用できる と期待されます。 膀胱がん患者にALA を投与した後の膀胱がん所見 膀胱がんに赤色蛍光が認められます。この様な診断が 膀胱がん・脳腫瘍を中心に広く用いられています。 →がん切除の際には、この蛍光が目印となります。 (写真は高知大医学部泌尿器科井上啓史先生ご提供) ・赤色蛍光を発する→がん診断 ・高い光増感作用→光照射による治療 ALA を投与した後の尿中ポルフィリンを用いたがん 検診が考案され、様々な試験が行われています。 近年、生体内に含まれるアミノ酸の一種であるアミノレブリン酸( ALA )が関与する 様々な生理現象が明らかとなってきています。一例として植物の光合成促進作用、家畜 の抗感染症作用、動物の代謝促進作用などに対する効果が示されています。また ALA 人体内代謝産物を利用したがんの診断やがん治療への利用などにも応用されようとして います。当研究室では、このような医療・健康・農業などの様々な分野での ALA の利用 についての技術開発を推進しています。 < ALA 投与後の蛍光を用いた がん診断 > アミノレブリン酸 ( ALA ) ポルフィリン ポルフィリン 鉄-ポルフィリン(ヘム) ポルフィリンが蓄積 金属ポルフィリン 様々な生理作用 < ALA 投与後の尿を用いた がん検診 > 担がんマウス 健常マウス 10 20 0 1 2 3 ALA 投与後の経過時間 / h 尿中ポルフィリン値 /10 -6 M N H N N H N C H C H 2 C O O H H O O C H 2 C H C N N N N C H C H 2 C O O H H O O C H 2 C H C M 機能性 タンパク質 細胞 正常 がん ALA H 2 N C O O H O 小倉 俊一郎 研究室

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Page 1: アミノレブリン酸の生理作用 アミノレブリン …...図2.1 図2.2 アミノレブリン酸(ALA)が拓く医療 Development of Aminolevulinic Acid (ALA) for the Medical

図2.1 図2.2

アミノレブリン酸(ALA )が拓く医療D e v e l o p m e n t o f A m i n o l e v u l i n i c A c i d ( A L A ) f o r t h e M e d i c a l F i e l d

アミノレブリン酸の生理作用Biological Effects of ALA

がん治療・診断におけるアミノレブリン酸Tumor Diagnosis and Therapy using ALA

Aminolevulinic acid (ALA) is a precursor of porphyrins, and porphyrins are important

cofactors for human physiological processes. Porphyrins are known to accumulate in

tumors after administration of ALA to cancer patients. Tumor diagnosis (fluorescence

diagnosis) and tumor therapy (photodynamic therapy) make use of this phenomenon,

though the molecular mechanism of porphyrin accumulation in tumors is not yet known.

To establish new methods for tumor diagnosis and treatment, our laboratory studies the

molecular mechanism of porphyrin accumulation in tumors. We also study various other

effects of ALA on human health.                                                           Ogura Lab.

アミノレブリン酸(ALA)は生体内に含まれるアミノ酸の一種です。ALAは生体内でポルフィリンに変換

され、金属が挿入された後、機能性タンパク質にかわります。この様にして作られる機能性タンパク質

はヘモグロビン・ミオグロビン・クロロフィル・チトクローム類など多種多様にわたり、生命活動にと

って必須なものです。

当研究室の研究によりALAを生体に投与することによって細胞のミトコンドリア機能が約1.5倍も高まる

ことが明らかとなっており、様々な生理作用が期待できます。

がん患者にALAを投与すると、金属ポルフィリンまで代謝されることなく、ポルフィリンのままの状態

でがん細胞に蓄積することが知られています。

当研究室では、ポルフィリンが蛍光を発する現象を用いたがんの診断や、ポルフィリンが光照射によって

活性酸素を作り(光増感作用)がん細胞を死滅させることを応用した治療が行えることに着目し、研究を

行っています。さらにこの研究が発展すれば、がんの診断・治療のみならず、一般の検診にも応用できる

と期待されます。

膀胱がん患者にALAを投与した後の膀胱がん所見

膀胱がんに赤色蛍光が認められます。この様な診断が

膀胱がん・脳腫瘍を中心に広く用いられています。

→がん切除の際には、この蛍光が目印となります。

(写真は高知大医学部泌尿器科井上啓史先生ご提供)

・赤色蛍光を発する→がん診断

・高い光増感作用→光照射による治療ALAを投与した後の尿中ポルフィリンを用いたがん

検診が考案され、様々な試験が行われています。

概 要

 近年、生体内に含まれるアミノ酸の一種であるアミノレブリン酸(ALA)が関与する

様々な生理現象が明らかとなってきています。一例として植物の光合成促進作用、家畜

の抗感染症作用、動物の代謝促進作用などに対する効果が示されています。またALAの

人体内代謝産物を利用したがんの診断やがん治療への利用などにも応用されようとして

います。当研究室では、このような医療・健康・農業などの様々な分野でのALAの利用

についての技術開発を推進しています。

<ALA投与後の蛍光を用いた がん診断 >

アミノレブリン酸

(A L A )ポルフィリン

ポルフィリン

鉄-ポルフィリン(ヘム)

ポルフィリンが蓄積

金属ポルフィリン

様々な生理作用

<ALA投与後の尿を用いた がん検診 >

担がんマウス

健常マウス

10 200

1

2

3

ALA投与後の経過時間 / h尿中ポルフィリン値

/10

-6 M

NH

N

N

HN

CHCH2

COOHHOOC

H2CHC

N

N

N

N

CHCH2

COOHHOOC

H2CHC

M 機能性タンパク質

細 胞

正 常

が んALA

H2NCOOH

O

小倉 俊一郎 研究室