ホログラフィー基盤技術の...

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次世代メディアの高臨場感放送であるスーパーハイビジョン(SHV:Super Hi-Vision) では,映像を長期間にわたって記録保存するためのデジタルアーカイブが必要である。 更に,スーパーハイビジョンより先のメディアとして,自然で見やすい立体像を表示す ることのできる空間像再生型の立体テレビの研究には,超高密度の表示デバイスの開発 が強く望まれている。当所では,これらの次世代メディアを実現するために,ホログラ フィー技術を基盤とした2つの研究テーマに取り組んでいる。スーパーハイビジョン用 のアーカイブに利用するための大容量・高速のホログラム・メモリーの研究とホログラ フィー立体表示用デバイスである超高密度構造の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)の研究である。本稿では,まず,ホログラフィー技術の特徴を述べ,次に, ホログラム・メモリーと空間光変調器の研究状況を概説する。 1.はじめに 2013年は,テレビジョン放送が開始されてちょうど60周年である。この間,テレビ ジョン放送は白黒放送,カラー放送,衛星放送,ハイビジョン放送,デジタル放送へと 進展し着実に実用化され,広く普及してきた。当所では,次世代メディアとして,更な る高臨場感を放送することのできるスーパーハイビジョン(SHV:Super Hi-Vision)の 研究と自然な立体像を表示することのできる立体テレビの研究を推進している。 SHVの研究においては,符号化,伝送方式,カメラ,ディスプレーなどの実用化を目 指す技術開発を多岐にわたって進めている。SHVの映像信号のデータは膨大で高速に処 理する必要があるので,それを記録・再生するための,特に,アーカイブ用の超大容 量・高速のシステムを開発することが求められている。2012年3月末現在,放送番組を 保存し利用することのできるNHKアーカイブスには,放送番組77万件以上,ニュース項 目545万件以上の膨大なコンテンツがフィルムやテープで保存されている。そのため,こ の膨大な文化的遺産ともいえる貴重な映像資料や,今後制作されるSHV番組を長期間に わたってコンパクトに保存でき,番組制作等にも容易に利用することのできる超大容 量・高速な記録システムの実現が望まれている。この要望を満たすことのできる1つの 方法がホログラム・メモリーである。 一方,SHVの先にあるもう1つの主要なテーマは,自然で見やすい立体像を表示するこ とのできる空間像再生型の立体テレビの研究である。空間像再生型の立体テレビ方式と しては,インテグラルフォトグラフィー(IP:Integral Photography)方式とホログラ フィー方式の2種類がある。当所では,IP立体映像の高品質化を目指した撮影・表示技術 ホログラフィー基盤技術の 研究概要 菊池 解説 NHK技研 R&D/No.138/2013.3 8

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  • 次世代メディアの高臨場感放送であるスーパーハイビジョン(SHV:Super Hi-Vision)では,映像を長期間にわたって記録保存するためのデジタルアーカイブが必要である。更に,スーパーハイビジョンより先のメディアとして,自然で見やすい立体像を表示することのできる空間像再生型の立体テレビの研究には,超高密度の表示デバイスの開発が強く望まれている。当所では,これらの次世代メディアを実現するために,ホログラフィー技術を基盤とした2つの研究テーマに取り組んでいる。スーパーハイビジョン用のアーカイブに利用するための大容量・高速のホログラム・メモリーの研究とホログラフィー立体表示用デバイスである超高密度構造の空間光変調器(SLM:Spatial LightModulator)の研究である。本稿では,まず,ホログラフィー技術の特徴を述べ,次に,ホログラム・メモリーと空間光変調器の研究状況を概説する。

    1.はじめに2013年は,テレビジョン放送が開始されてちょうど60周年である。この間,テレビジョン放送は白黒放送,カラー放送,衛星放送,ハイビジョン放送,デジタル放送へと進展し着実に実用化され,広く普及してきた。当所では,次世代メディアとして,更なる高臨場感を放送することのできるスーパーハイビジョン(SHV:Super Hi-Vision)の研究と自然な立体像を表示することのできる立体テレビの研究を推進している。SHVの研究においては,符号化,伝送方式,カメラ,ディスプレーなどの実用化を目指す技術開発を多岐にわたって進めている。SHVの映像信号のデータは膨大で高速に処理する必要があるので,それを記録・再生するための,特に,アーカイブ用の超大容量・高速のシステムを開発することが求められている。2012年3月末現在,放送番組を保存し利用することのできるNHKアーカイブスには,放送番組77万件以上,ニュース項目545万件以上の膨大なコンテンツがフィルムやテープで保存されている。そのため,この膨大な文化的遺産ともいえる貴重な映像資料や,今後制作されるSHV番組を長期間にわたってコンパクトに保存でき,番組制作等にも容易に利用することのできる超大容量・高速な記録システムの実現が望まれている。この要望を満たすことのできる1つの方法がホログラム・メモリーである。一方,SHVの先にあるもう1つの主要なテーマは,自然で見やすい立体像を表示することのできる空間像再生型の立体テレビの研究である。空間像再生型の立体テレビ方式としては,インテグラルフォトグラフィー(IP:Integral Photography)方式とホログラフィー方式の2種類がある。当所では,IP立体映像の高品質化を目指した撮影・表示技術

    ホログラフィー基盤技術の研究概要菊池 宏■

    解 説

    NHK技研 R&D/No.138/2013.38

  • 参照光参照光

    d

    記録媒体

    物体光

    点物体O3次元物体

    干渉縞の間隔

    干渉縞 干渉縞

    (a) 記録 (b) ホログラム

    再生光(回折光)

    点物体O

    (c) 再生

    再生像

    の研究と,ホログラフィーで立体表示をするための新しい表示デバイスの研究開発を進めている。ホログラフィー表示用デバイスにおいては,広視域で立体像を表示するために,これまでにない超微細な画素で構成される超高密度表示素子の開発が望まれている。本稿では,将来の次世代メディアを実現するためのホログラフィー技術を基盤とした研究について解説する。最初に,ホログラフィーの特徴を述べた後,現在,この技術をベースに進めているSHV用のアーカイブに利用するためのホログラム・メモリーの研究とホログラフィー立体表示用デバイスである空間光変調器(SLM:Spatial LightModulator)の研究を紹介する。

    2.ホログラフィーの特徴電子顕微鏡の分解能を改善する目的で考案されたホログラフィー技術1)は,レーザーが発明されて間もない1962年にリースとウパトニークスが2光束法を開発2)して大きく進展した。1図に2光束法によるホログラフィーの基本原理を示す。干渉 *1

    2つの光が重なって,互いに影響を及ぼす現象。位相が一致する場所では明るくなり,逆位相の場所では暗くなる。

    *2可干渉性。振幅と位相が空間的・時間的に十分に長く一定である光は干渉する。

    *3干渉によって生じる周期的な明暗の分布。

    *1性の高いコヒ―レント*2光源であるレーザー光を2分割し,一方をそのまま参照光として記録媒体へ入射する。また,他方を物体に照射し,その散乱光を記録媒体へ入射する。この散乱光は物体光(または,信号光)と呼ばれる。物体は点物体Oの3次元分布の集合と見なせるので,簡単のため,点物体Oからの物体光だけを検討する。1図(a)では,参照光を平面波とし,点物体Oからの光を球面波としている。点物体Oからの光と参照光の2つの光が交わ

    かんしょうじま

    る空間では,光が干渉し干渉縞*3が生じる。この干渉縞が生じた空間に記録媒体を置き,干渉縞を記録する。この干渉縞を記録した記録媒体がホログラムである(1図(b))。ホログラムに記録された干渉縞の間隔 dは(1)式で与えられる。

    (1)

    ここで,λ はレーザー光の波長,ϕは2つの光の交わる角度である。(1)式から分かるように,dは ϕが180°の場合に波長の1/2の長さになり,ϕが0°に近づくほど大きくなる。1図(a)に示す物体光と参照光の配置では,ホログラムの上部にいくほど角度 ϕが大きくなるので干渉縞の間隔は狭くなる。なお,実際には,物体表面の無数の点物体からの球面波を合成した物体光と参照光とで干渉縞が形成されるので,干渉縞の形は複雑な模様となる。

    1図 2光束法によるホログラフィーの基本原理

    NHK技研 R&D/No.138/2013.3 9

  • 再生時には,ホログラムを記録したときの参照光と同じ波面のレーザー光をホログラムに照射する(1図(c))。ホログラムは周期構造を持っているので一種の回折格子として働き,参照光をある特定の方向へ大きく回折させる。ホログラムの上部では干渉縞の間隔 dが狭いので回折角は大きく,下部では間隔 dが広いので回折角は小さい。ホログラム面上の各点からの回折光は,1図(c)に示すように,点物体Oから光が出ているときと同じ方向へ進むので,点物体Oから広がる球面波となる。その結果,ホログラムの方向に顔を向けて再生光を見れば,ホログラムから離れた点Oに点物体があるように見える。点物体の集合と見なせる3次元物体の場合においても,全ての点で波面が忠実に再生され,実物の3次元物体からの波面と完全に一致するので,実際にそこに物体があるように見える。光の干渉と回折を利用したホログラフィーには以下のような特徴がある。(ⅰ)理想的な立体像の再生が可能

    ホログラフィーでは,3次元物体からの光の波面を忠実に記録・再生することができるので,原理的に,実物の被写体をそのまま見るのと同じ自然な立体像を表示することができる。すなわち,目の水晶体の焦点調節や両眼視差*4

    左目で見ている映像と右目で見ている映像が少し異なって見えること。

    *5両眼の視線を見る点(注視点)で交差させること。輻輳させる際の眼球運動が奥行きを知覚する1つの手がかりとなる。

    *4,それにふくそう

    伴って生じる輻輳*5のいずれの間にも矛盾のない立体像を表示することができる。ホログラフィーを用いた立体テレビは視覚の機能と完全に整合した方式であり,立体視用の特別な眼鏡は不要で,目の疲労もない。

    (ⅱ)高い冗長性物体の各点の情報はホログラムの全面に分散して記録されるので,ホログラムの一部を傷つけたり破損したりしても,情報が完全に失われることがない。すなわち,通常のディスプレーでは画素欠陥は画質劣化の大きな要因となるが,ホログラフィーを用いた立体表示の場合には多少の画素欠陥があっても大きな問題とはならない。また,ビット単位で記録する光メモリーにおいては,あるビットが読み出せないとその情報は完全に失われるが,ホログラム・メモリーでは,ホログラムにゴミやキズなどが付いた場合においても,情報全体の信号対雑音比が低下するだけで,その情報を完全に失うことはない。このように,ホログラフィーには非常に高い冗長性がある。

    (ⅲ)多重記録が可能記録媒体の厚さをレーザー光の波長の10倍以上にすれば,媒体の膜厚方向にも干渉縞を記録することができる。すなわち,記録媒体の同じ場所の膜厚方向に異なる干渉縞を多重記録することが可能である。この多重化技術はホログラム・メモリーで記録密度を向上させるために有効である。

    3.ホログラム・メモリーの研究概要3.1 光ディスクとホログラム・メモリーCD(Compact Disk)からスタートした光ディスクは,標準テレビの映像を記録・再生するDVD(Digital Versatile Disk),ハイビジョン映像を記録・再生するブルーレイディスク(BD:Blu-ray Disk)へと進化し,一般的に広く普及している。デジタルデータの記録メディアである光ディスクは,小さくて記録密度が高く持ち運びが容易であり,保管場所を取らない。また,テープとは異なり,ランダムアクセス性などディスク特有の特徴が大きな魅力となっている。更に,記録情報を長期間保存できることも特徴の1つである。これらの優れた特性から,アーカイブ用の記録媒体として再認識される動き

    NHK技研 R&D/No.138/2013.310

  • ホログラム・メモリー

    光ディスク

    データ転送速度

    記録容量(ディスク1枚当たり)

    1GB 10GB 100GB 1TB

    10Mbps

    1Mbps

    100Mbps

    1Gbps

    BDXL

    Blu-rayディスク

    DVDディスク

    0101110 0101110入力データ

    ページデータ

    2次元に並び替え

    参照光 記録媒体

    信号光

    空間光変調器干渉縞

    再生光

    イメージセンサー

    再生ページデータ

    出力データ

    1次元に並び替え

    が出てきている3)。最近,BDの記録層を3層あるいは4層に拡張して大容量化したディスクフォーマットがBDXLとして規格化されたが,アーカイブ用に光ディスクを使用するためには,記録容量とデータ転送速度を飛躍的に向上させる必要がある(2図)。これらの要求を満たすことのできる1つの方法がホログラム・メモリーであり,現在の光ディスクの特徴をそのまま引き継いで,大容量化・高速度化が可能な次世代の光ディスクとして期待されている。3.2 当所の取り組み(1)ホログラム・メモリーの基本構成SHV用のアーカイブに応用することを目指して,テラバイト(TB)級の記録容量と毎秒ギガビット(Gbps)級の高速のデータ転送速度を実現するホログラム・メモリーの研究を進めている。3図にホログラム・メモリーの基本構成を示す。ホログラム・メモリーでは,デジタル情報を2次元配列状に並べた画像(ページデータ)を記録媒体に記録する。デジタル情報の記録時には,空間光変調器(SLM:Spatial LightModulator)にページデータを2次元画像として表示し,レーザー光を2次元空間上で強度変調して信号光とする。この信号光をレンズを用いて記録媒体中の微小領域に集光し,参照光と交差させて光の干渉縞を形成し,ホログラムに記録する。再生時には,参照光を記録媒体中の微小ホログラムに照射する。参照光の一部がホログラムで回折され,ページデータである再生画像が得られる。再生画像をCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補

    2図 光メモリーの記録容量とデータ転送速度

    3図 ホログラム・メモリーの基本構成

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  • 参照光を異なる入射角度で照射

    記録媒体

    多重されたホログラム

    (a) 角度多重方式

    ページデータ

    記録媒体(膨張または収縮)

    イメージセンサー

    再生ページデータ

    参照光デフォーマブルミラー

    実験結果の例

    ビット誤り率1.1×10-2

    ビット誤り率4.4 ×10-4

    波面補償無し 波面補償有り

    (b) 波面補償技術

    型金属酸化膜半導体)などの2次元イメージセンサーで撮像し,信号処理を行って元のデジタル情報を得る。ホログラム・メモリーでは,参照光の状態を変えて複数のページデータを記録媒体中の同じ場所に多重記録することができる。例えば,ページデータごとに参照光の入射角度を変える角度多重方式4),参照光の波長を変える波長多重方式5),参照光の2次元平面内の空間分布を変えて多重する位相コード多重方式6)などがある。複数のページデータが多重記録された微小領域のホログラムはブックと呼ばれ,ブックがいっぱいになると,次の記録データは記録媒体の別の微小領域(ブック)へ多重記録される。このように,ホログラム・メモリーには多重記録による大容量化と2次元ページデータを一括で記録・再生できるという,これまでの光ディスクにはない特徴がある。(2)ホログラムの記録媒体ホログラムの記録媒体に求められる特性として,高い光記録感度,高分解能,高回折効率,長期間の保存安定性,低コストなどがある。この要求を満たすことのできる記録媒体として,当所では,光重合*6

    光の照射によって低分子(モノマー)が多数結合して高分子(ポリマー)になる現象。

    *7感光性樹脂。

    *6性材料であるフォトポリマー*7を用いた研究を行っている。フォトポリマーは,低分子量の光重合性モノマー,光重合開始剤,高分子量の形状維持用マトリックスポリマーなどの有機材料の混合物から成る。フォトポリマーでは,信号光と参照光で形成される干渉縞の明暗分布に対応してモノマーの光重合反応が起こり,高分子になる。屈折率の異なるモノマーとマトリックスポリマーを使用することで,干渉縞の明暗分布に対応した屈折率分布を持つホログラムを形成することができる。(3)角度多重方式

    角度多重方式は他の多重記録方式と比較して,光学装置の構成がシンプルで安定性に優れている。また,参照光の入射角度を高速動作するガルバノミラーを使って高精度に制御できるので,転送速度の高速化に有利である。角度多重方式では,記録時には,1つのページデータごとに角度の異なる参照光を用いる。再生時には,記録時に用いた参照光と同じ角度を持つ参照光を照射し,元のページデータを再生する(4図(a))。角度多重方式の詳細は本特集号の報告「ホログラム・メモリーの記録密度の向上技術」

    4図 ホログラム・メモリーにおける要素技術

    NHK技研 R&D/No.138/2013.312

  • で述べる7)。(4)波面補償技術フォトポリマー中のモノマーが重合して高分子になるとき,フォトポリマーの体積が収縮(重合収縮)する。フォトポリマーを使ったホログラム記録材料において,光重合

    ひず

    時の収縮はホログラムの歪みとなる。また,記録時と再生時の環境温度の違いによってフォトポリマーが膨張または収縮し,ホログラムに歪みを生じる。このような歪みのあるホログラムからは正確なデータを読み出すことができず,ビット誤りが生じる。ホログラムの歪みを補償する技術として,再生時の参照光の波面を空間的に補償する手法を開発した(4図(b))8)9)。波面補償用のデバイスとしてデフォーマブルミラー *8

    鏡面を微小アクチュエーターで部分的に凹凸させて,反射光の波面の形を制御する装置。

    *8

    を用い,ビット誤り率を大幅に改善できることを示した。その詳細を本特集号の報告「ホログラム・メモリーにおける波面補償技術」で述べる。(5)信号処理技術ホログラム・メモリーでは,再生したページデータを画像として取り込む。従って,画像から2値のデータに復元するための信号処理アルゴリズムを開発する必要がある。信号処理の高速化を図るために,GPU(Graphics Processing Unit)等を用いて並列動作するデータ位置検出や補間,デインターリーブ,誤り訂正等の信号処理アルゴリズムを開発した。技研公開2012では,それらをパイプライン化して動作させ,100Mbps以上のデータ転送速度を実証し,ハイビジョン映像のリアルタイム再生に成功した(5図)10)。

    4.ホログラフィー用表示デバイスの研究概要4.1 電子ホログラフィーホログラムは,通常,写真や印刷など静止画を扱っているものが多い。動画の立体像を表示するためには,時間とともに変化する物体光の情報を記録・表示できる書き換え可能なホログラムが必要である。ホログラムの生成,記録,伝送,表示を全て電子的な手法で行う技術を電子ホログラフィーと呼んでいる。6図に電子ホログラフィーを用いた放送の基本概念を示す。(1)生成・表示技術ホログラムを生成する方法として,干渉縞をCCDなどのイメージセンサーを用いて直接撮像する方法11),計算機で算出する方法12),インテグラルフォトグラフィー(IP:Integral Photography)方式で撮影した映像をベースにホログラムを計算する方法13)などがある。

    5図 ホログラム・メモリーを用いたハイビジョン映像のリアルタイム再生(技研公開2012)

    NHK技研 R&D/No.138/2013.3 13

  • ホログラムの生成

    立体映像表示

    計算機合成ホログラム(CGH)

    空間光変調器入射光

    伝送記録

    立体像

    IP-ホログラフィー変換IP立体撮影

    自然光

    被写体

    直接撮像する方法は,映像信号を直接得ることができるので理想的な方式であるが,光の波長程度までのきめ細かい干渉縞を撮像できるカメラがない。また,ホログラムを生成するためには暗室内でレーザー光を被写体に照射する必要があり,人物の撮影や屋外での撮影ができない。計算機で算出する方法は干渉縞をコンピューターを使って生成する方法で,計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)と呼ばれている。奥行き情報を持つ立体像は膨大な情報量を持っており,今後,ハードウエアやアルゴリズムなどの高速化技術を開発する必要がある。一方,IP映像からホログラムを生成する方法は,レーザー光を用いる必要がなく,通常の照明光で撮影が可能である。すなわち,実写映像のホログラムを生成することができる。ホログラフィー用表示デバイスとしては,これまでに液晶表示素子14)~16)や,微小ミラーアレイ構造のデジタルマイクロミラーデバイス(DMD:Digital Micro-mirrorDevice)17)あるいは磁気光学効果を用いたMO(Magneto-Optical)-SLM18)などの各種のSLMが報告されている。これらのSLMでは,干渉縞を映像信号で直接表示できるので,立体の動画再生が可能である。しかし,それらの画素ピッチは5μm~10μm程度であり,光の波長程度の干渉縞を表示できる性能はない。1表に,後述するスピンSLMと併せて現状の性能を示す。(2)SLMによる視域特性光の回折現象を利用するホログラフィーでは,干渉縞を表示するSLMの画素ピッチを狭くするほど立体像を観察できる視域角を広くすることができる。また,視域角はSLM

    液晶LCOS※1 DMD※2 磁気光学SLM スピンSLM

    駆動方法 電圧 静電力 磁界 スピン注入

    画素ピッチ 4.8μm 約10μm 約10μm 1μm以下

    視域角※3(°) 6.3 3 3 30

    応答時間 10ms~0.1ms 約10μs 数十ns以下 数十ns以下※1 Liquid Crystal on Silicon。※2 Digital Micromirror Device。※3 波長530nmの場合。

    6図 電子ホログラフィ―を用いた放送の基本概念

    1表 SLMの現状の性能

    NHK技研 R&D/No.138/2013.314

  • 波長:530nm

    画素ピッチ(μm)

    視域角が広い

    超高精細SLM 従来のSLM

    視域角が狭い

    入射光入射光

    60

    30°

    40

    20

    00.1 1 10

    視域角(°)

    の最大回折角で与えられる。画素ピッチ pのSLMで表示できる干渉縞の最小間隔 dは2画素で1周期となるので 2pである。このとき,視域角Ψは(2)式で与えられる。

    (2)

    ここに,φはSLMの最大回折角である。(2)式は参照光の進行方向を中心に角度が 2φ以下の物体光を再生できることを意味している。7図に(2)式で計算した視域角と画素ピッチの関係を示す。現在,液晶SLMで最小画素ピッチを実現しているLCOS(Liquid Crystal on Silicon)の画素ピッチは4.8μmであり,7図はその視域角が約6°(波長530nmの場合)であることを示している。また,7図は視域角を実用上十分な30°以上にするためには,画素ピッチを1μm以下にする必要があることを示している。これまでに視域角を拡大する方法として,複数のSLMで再生した立体像を空間的に合成する方法15)や高次回折光 *9

    回折後の光の光路差が波長の整数倍(m倍)となる方向に生じる回折光を±m次の回折光といい,2次以上の回折光を高次回折光という。回折角度は1次の回折光のm倍である。通常,電子ホログラフィーでは1次の回折光を利用する。

    *10焦点の異なる2枚のレンズを組み合わせて,被写体のサイズを縮小する光学系。

    *9を利用する方法16),縮小光学系*10を用いて見かけ上の画素ピッチを小さくする方法19)などが提案されているが,これらの方法は抜本的な解決方法ではない。電子ホログラフィーを将来の立体テレビとして使用するためには,ホログラムの生成,伝送,表示の全てにわたって技術的な課題を解決する必要がある。その中で,最も重要な課題はSLMの狭画素ピッチ化と超多画素化である。4.2 当所の取り組み(1)スピンSLM広視域で立体の動画を表示するために,画素ピッチが1μm以下の電子ホログラフィー用SLMの研究開発を進めている。そのためのSLMとして,スピン*11 *11

    磁気モーメントを生じさせる量子力学的性質。磁気が電子の自転に起因しているように見えるのでスピンと呼ばれる。

    注入型SLM(スピンSLM:Spin-SLM)を検討している20)~22)。8図(a)にスピンSLMの基本構造を示す。磁化固定層(強磁性薄膜),中間層(非磁性薄膜),光変調層(強磁性薄膜)の3層から成る多層膜に下部電極と透明電極を付けた構造である。この素子1個が1画素である。スピンSLMとして,巨大磁気抵抗効果

    7図 SLMの画素ピッチと視域角の関係

    NHK技研 R&D/No.138/2013.3 15

  • スピンの向き

    入射光 反射光

    透明電極

    下部電極

    磁化反転

    偏光面の向き

    磁化の向き

    (a) 基本構造 (1画素) (b) 動作中の様子

    電流光変調層

    磁化固定層

    中間層絶縁体

    (GMR:Giant Magnetoresistance)*12強磁性薄膜Ⅰ/非磁性薄膜/強磁性薄膜Ⅱから成る金属多層膜において,強磁性薄膜Ⅰと強磁性薄膜Ⅱの磁化の向きが同じときに低抵抗,逆向きのときに高抵抗を示す磁気抵抗効果。ハードディスクの高密度化に利用されている。2007年にノーベル物理学賞がこの発見者に贈られた。

    *13強磁性薄膜I/絶縁膜/強磁性薄膜IIから成る多層膜において,強磁性薄膜Ⅰと強磁性薄膜Ⅱの磁化の向きが同じときと逆向きのときで,電気抵抗が大きく変化する磁気抵抗効果。それぞれの膜厚は1nm~数nmで,電圧を加えると絶縁膜を通してトンネル電流が流れる。次世代メモリーとして期待されている磁気抵抗ランダムアクセスメモリー(MRAM)に利用されている。

    *12を持つ素子を用いたGMR型スピンSLMと,トンネル磁気抵抗効果(TMR:Tunnel Magnetoresistance)*13を持つ素子を用いたTMR型スピンSLMの2種類がある。GMR型スピンSLMの中間層は非磁性の金属薄膜で,これまでに,銅(Cu)または銀(Ag)膜を用いたデバイスを開発している。TMR型スピンSLMの中間層は極薄の絶縁膜で,これまでに,酸化マグネシウム(MgO)を用いたデバイスを開発している。磁化固定層には大きな保磁力を持つ磁性材料を用いる。磁化固定層の磁化の向きは通常の大きさの印加磁界や外部から注入される電流には影響されない。また,磁化固定層を通過できる電子は磁化固定層の磁化の向きと同じ向きを持つ電子だけで,逆向きの磁化を持つ電子は磁化固定層で反射される。一方,光変調層には,電子スピンの向きと同じ方向に磁化する性質と,磁化の向きによって入射光の偏光面が回転する磁気光学カー効果を持つ磁性材料を用いる。下部電極と上部電極の間にパルス電圧を印加すると,素子には上向きまたは下向きの電子スピンが電流として流れ,光変調層に注入される。(2)スピンSLMの基本動作スピンSLMでは,パルス電流を素子の膜面に垂直な方向に流して光変調層の磁化の向きを制御して,光を変調する。このとき,磁化固定層は電子のスピンを選別する働きをする。8図で上部の透明電極側から電流を流す場合には,電子は上向きに流れる。8図(a)では,磁化固定層が下向きに磁化しているので,磁化固定層に入ろうとする上向きスピンの電子は磁化固定層で反射され,下向きスピンの電子だけが磁化固定層に入り,中間層を通過して光変調層へ注入される。その結果,光変調層の磁化の向きは,注入される下向きスピンの電子と同じ方向になり,上向きから下向きに反転(スピン注入磁化反転)する。逆に,下部電極側から電流を流す場合には,電子は下向きに流れる。光変調層と中間層を通過した電子のうち,磁化固定層の磁化の向きと反対の上向きスピンを持つ電子だけが反射され,光変調層の磁化を上向きに反転させる。このように電子スピンの向き,すなわち,流す電流の向きで光変調層の磁化の向きを制御することができる。この光変調層に直線偏光した光を照射すると,その反射光の偏光面が光変調層の磁化の向きに対応して回転するので,2値の偏光状態を出力することができる。

    8図 スピンSLM

    NHK技研 R&D/No.138/2013.316

  • 下部電極

    下部電極

    上部電極 光変調部

    (a) 光学顕微鏡写真(全景)

    透明電極

    下部電極 1μm 下部電極(画素)ピッチ

    1μm(b) 走査イオン顕微鏡(SIM)で観察した SLMの断面

    絶縁層

    GMR多層膜構造

    100nm

    (c) 走査型透過電子顕微鏡で観察した1画素部分の断面

    透明電極

    (3)スピンSLMの特徴と課題スピンSLMには以下の特徴がある。(ⅰ)スピンのそろった電子を光変調層へ注入することで素子の磁化を個別に制御でき

    るので,隣接画素への影響がない。すなわち,隣接画素からのクロストークが無く,デバイスの超高密度化が期待できる。

    (ⅱ)磁化反転は数十nsと高速なので,高フレームレートで動画像を表示することが期待できる。

    (ⅲ)光変調層の磁化は一方向に安定した状態を保つので,磁化反転時以外には電流を流す必要がなく,電力の消費を抑えることができる。

    一方,SLMあるいはホログラフィー表示用デバイスの共通の課題としては以下のような課題がある。(ⅰ)SLMを光変調素子として機能させるためには高い変調度特性が必要であり,光変

    調層で用いる磁性薄膜の磁気光学カー効果を向上させる必要がある。(ⅱ)視域角を拡大するために画素を超高密度化する必要がある。(ⅲ)ある程度の大きさの立体像を表示するために,画素を超多画素化し,大面積化す

    る必要がある。(ⅳ)超多画素化においては,駆動電流を低減する技術を開発する必要がある。(4)試作デバイスこれまでにGMR型スピンSLMで,サブミクロンサイズの単素子を作製し,スピン注入による光変調動作を確認している23)。また,画素ピッチが1μmで,画素数が1×10の1次元アレイのGMR型スピンSLMを設計・作製し,1次元アレイ素子でのスピン注入動作に成功している24)。作製した1次元アレイのGMR型スピンSLMの光学顕微鏡写真

    9図 作製した1次元アレイのGMR型スピンSLM

    NHK技研 R&D/No.138/2013.3 17

  • CGHパターン(画素数:3,840(H)×2,160(V))

    ホログラム

    (+方向)

    (-方向)

    視域角

    参照光

    3.5mm6mm

    左(-8°)から見た像 正面(0°)から見た像 右(+8°)から見た像

    再生像の例

    を9図(a)に示す。中央部分が透明電極と光変調部(画素数:1×10)である。9図(b)は光変調部の断面を集束イオンビーム加工を用いてエッチングし,それを走査イオン顕微鏡(SIM:Scanning Ion Microscope)*14

    直径を数nm~数百nmに集束したイオンビームで試料の表面を走査し,発生した2次電子を検出して画像にする顕微鏡。表面にごく近い部分を観察するのに適している。

    *15集束した電子線で試料を走査し,透過電子のうち高角度に散乱した電子を円環状の検出器で受けてその強度を画像にしたもの。0.1nm以下の高分解能を有する。

    *14で観察した例である。9図(b)は1μmの画素ピッチで素子が形成されていることを示している。9図(c)は1つの素子を走査型透過電子顕微鏡で観察した高分解能の高角度散乱暗視野(HAADF:High-Angle-Annular-Dark-Field)像*15である。9図(c)は素子内に光変調層,中間層,磁化固定層が形成されていることを示している。GMR型スピンSLMとTMR型スピンSLMに関する研究は,本特集号の報告「巨大磁気抵抗効果を持つ磁性多層膜を用いたスピン注入型空間光変調器の研究」と報告「トンネル磁気抵抗効果を用いたスピン注入型空間光変調器の研究」で詳細に述べる。(5)広視域立体像の表示実験磁気光学効果を使ったホログラムで立体像が広視域で表示できるかどうかを検証するために,GMR多層膜から成る2次元の固定パターンのホログラム(GMRホログラム)を作製し,立体像の再生実験を行った(10図)24)。CGHでホログラムを作製し,GMR多層膜の固定パターンを電子線リソグラフィー*16

    基板上に塗布した感光膜(レジスト)に電子線を照射して,微細なレジストパターンを形成する方法。現像処理を行って,照射されていない部分を削る。nmオーダーの極微細加工に有効な技術。

    *16で形成した。GMRホログラムの画素ピッチは1μm,画素数は3,840(H)×2,160(V)である。被写体は10図に示すように,横3.84mm,縦2.16mmのNHKという文字で,ホログラム面との距離をNとKは3.5mm,Hは6mmとした。He-Neレーザー(波長:632.8nm)を仮定し,視域角を19°に設定してCGHを計算した。10図に再生像を撮影した例を示す。立体像をホログラム面の法線方向から-8°の角度で撮影した場合(左側から見た場合)には,文字Hが文字Nに近づいている様子が分かる。逆に,+8°の方向から撮影した場合(右側から見た場合)には,文字Hが文字Kに近づいている。また,視域角は16°以上あり,広い範囲で立体像が観察できていることが分かる。更に,GMRホログラムに外部から磁界を印加して,再生像をオン・オフできることも確認しており,磁気光学効果で立体像を表示可能なことが確認できた。今後,スピ

    10図 GMRホログラムを用いた立体像の再生実験

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  • ンSLMを多画素化し,動画で広視域の立体像を表示する予定である。

    5.おわりに放送に応用することを目指したホログラフィー技術の研究を解説した。最初に,ホログラフィー技術の特徴を述べ,次に,当所で研究開発を進めている大容量で高速記録・再生が可能なホログラム・メモリーとホログラフィー表示用デバイスとして利用可能なスピンSLMに関する研究の概要を紹介した。2つの研究は共に,まだ,その基本動作が検証できた段階であり,今後,多くの研究課題を解決していく必要がある。ホログラム・メモリーの研究では,高密度化に向けた新しい記録媒体の開発,多重記録方式の開発,高速化を可能とする波面補償技術の高度化,並列信号処理系の高性能化などが重要な課題である。また,ホログラフィー表示用スピンSLMの研究では,2次元で超多画素化するための微細化プロセスの開発,超多画素デバイスで駆動が容易なTMR型スピンSLMの開発,光変調度を向上させるための磁気光学材料の探索が重要な課題である。次世代メディアを実現するために,ホログラフィー技術が大きく貢献できるように尽力する予定である。なお,ホログラム・メモリー用のフォトポリマー材料の研究は新日鉄住金化学(株)と,スピンSLMの評価技術に関する研究は長岡技術科学大学との連携で行っている。また,スピンSLMに関する研究の一部は(独)情報通信研究機構からの委託研究「革新的な三次元映像技術による超臨場感コミュニケーション技術の研究開発」の中で実施している。

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    10)N. Kinoshita, N. Ishii, T. Muroi, K. Kamijo, T. Ando, K. Masaki, T. Shimizu and H. Kikuchi:“HDTV Playback Demonstration of Holographic Data Storage System using WavefrontControl & GPU-Based Post-Processing,”The International Symposium on OpticalMemory 2012 Technical Digest, Th-N-01, pp.210-211(2012)

    11)N. Hashimoto and S. Morokawa:“Real-time Electroholographic System Using LiquidCrystal Television Spatial Light Modulators,”J. Electron. Imaging, Vol.2, No.2, pp.93-99(1993)

    12)F. Mok, J. Diep, H. Liu and D. Psaltis:“Real-tim Computer-generated Hologram byMeans of Liquid-crystal Television Spatial Light Modulator,”Opt. Lett., Vol.11, No.11,pp.748-750(1986)

    13)T. Mishina, M. Okui and F. Okano:“Calculation of Holograms from Elemental ImagesCaptured by Integral Photography,”Appl. Opt., Vol.45, No.17, pp.4026-4036(2006)

    14)大井,三科,奥井,野尻,岡野:“実写ホログラムの高速な計算方法の提案,”映情学誌,Vol.61, No.2, pp.198-203(2007)

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    16)T. Senoh, T. Mishina, K. Yamamotom, R. Oi and T. Kurita:“Viewing-zone-angle-Expanded Color Electronic Holography System Using Ultra-high-definition LiquidCrystal Displays With Undesirable Light Elimination,”J. Display Tech., Vol.7, No.7,pp.382-390(2011)

    NHK技研 R&D/No.138/2013.320

  • 17)Y. Takaki and M. Yokouchi:“Accommodation Measurements of Horizontally ScanningHolographic Display,”Opt. Express, Vol.20, Issue4, pp.3918-3931(2012)

    18)D. Psaltis, E. G. Paek and S.S. Venkatesh:“Optical Image Correlation with a BinarySpatial Light Modulator,”Opt. Eng., Vol.23, No.6, pp.698-704(1984)

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    20)K. Maeno, N. Fukaya and O. Nishikawa:“Electro-holographic Display Using 15 MegaPixels LCD,”Proc. SPIE, Vol.2652, pp.15-23(1996)

    21)青島:“スピン偏極電子を利用した超高精細光変調素子,”NHK技研R&D, No.110, pp.10-15(2008)

    22)町田:“超高精細空間光変調素子,”NHK技研R&D, No.122, pp.39-43(2010)

    23)K. Aoshima, N. Funabashi, K. Machida, Y. Miyamoto, K. Kuga, T. Ishibashi, N. Shimidzuand F. Sato:“Submicron Magneto-Optical Spatial Light Modulation Device forHolographic Displays Driven by Spin-Polarized Electrons,”J. Display Tech., Vol.6, No.9,pp.374-380(2010)

    24)N. Funabashi, K. Aoshima, K. Machida, K. Kuga, H. Kikuchi and N. Shimidzu:“MOImaging of Magnetization Switching Driven by STS,”Magnetics and Optics ResearchInternational Symposium for New Storage Technology(MORIS 2011), p.155(2011)

    25)菊池,青島,町田,加藤,金城,和田,久我,石橋,清水:“電子ホログラフィ応用に向けた超高精細スピン注入型空間光変調器の開発,”映像情報メディア学会技術報告,Vol.36, No.24,pp.25-28(2012)

    26)町田,青島,加藤,金城,久我,菊池,石橋,清水:“広視域のホログラフィ立体表示に向けた超高精細スピンSLM,”映像情報メディア学会技術報告,Vol.36, No.36, pp.5-8(2012)

    きく ち ひろし

    菊池 宏1984年入局。神戸放送局を経て,1987年から放送技術研究所において,光デバイス,ホログラム・メモリー,空間光変調器などの研究に従事。2008年 か ら2010年 ま で(独)情報通信研究機構に出向。現在,放送技術研究所表示・機能素子研究部主任研究員。博士(工学)。

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