グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4%...

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2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液 0.4% 第 2 部(モジュール 2) CTD の概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表 2.6.1 緒言 興和株式会社

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Page 1: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.1 緒言

1

グラナテック点眼液 0.4%

第 2 部(モジュール 2)

CTD の概要(サマリー)

2.6

非臨床試験の概要文及び概要表

2.6.1

緒言

興和株式会社

Page 2: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.1 緒言

2

目次-

2.6.1 緒言 ................................................................................................................................ 3

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2.6.1 緒言

3

2.6.1 緒言 本項で使用した薬物名及び略号を以下に示す。 薬物名 薬物名 化学名 構造式 リパスジル塩酸塩水和物 4-Fluoro-5-{[(2S)-2-methyl-

1,4-diazepan-1-yl]sulfonyl}- isoquinoline monohydro- chloride dihydrate

略号 略号 内容 ROCK Rho-associated coiled-coil containing protein kinase PG プロスタグランジン

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2.6.1 緒言

4

リパスジル塩酸塩水和物は,Rho キナーゼ選択的な阻害作用を有する薬物である。

リパスジル塩酸塩水和物の構造式を図 2.6.1-1に示す。

図 2.6.1-1 リパスジル塩酸塩水和物の化学構造式

分子式: C15H18FN3O2S · HCl · 2H2O 分子量: 395.88

Rho キナーゼは,低分子量 G タンパク質である Rho と結合するセリン · スレオニ

ン蛋白質リン酸化酵素であり,平滑筋細胞の収縮,各種細胞の形態制御など様々な生

理機能における情報伝達系として機能する1)。ヒトでは ROCK-1 と ROCK-2 の 2 つの

アイソフォームが存在し,多くの組織に遍在している2)。眼組織では毛様体筋,線維

柱帯,虹彩,網膜及び角膜上皮で ROCK-1 と ROCK-2 の発現が確認されている3)。 Rho キナーゼ阻害薬は眼局所で線維柱帯-シュレム管を介する「主流出路」からの房

水流出量を増加させ,眼圧を下降させる作用を示すことが報告されている4),5),6)。 緑内障治療の第一選択薬として用いられている PG 関連薬は,主流出路ではない「ぶ

どう膜強膜経路」からの房水流出を促進する。また,β 遮断薬及び炭酸脱水酵素阻害

薬は,房水自体の産生を抑制することから,PG 関連薬,β 遮断薬及び炭酸脱水酵素阻

害薬による眼圧下降作用はいずれも Rho キナーゼ阻害薬による作用とは異なる作用機

序である。一方,既存の緑内障治療薬であるジピベフリン塩酸塩は,Rho キナーゼ阻

害薬と同様に「主流出路」からの房水流出を促進するが,その作用機序は交感神経刺

激に基づくものであり,β 遮断薬などの交感神経遮断薬との併用が患者によっては相

応しくない組み合わせになる場合があることが,緑内障診療ガイドラインで示されて

いる7)。 以上から,リパスジル塩酸塩水和物は単独での使用のみならず,眼圧下降機序の異

なる PG 関連薬や β 遮断薬などの既存の緑内障治療薬との併用使用も可能であり,緑

内障治療の現場に新たな選択肢を提供する臨床的に意義の高い薬物と考える。

リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%の予定される効能 · 効果及び用法 · 用量を表

2.6.1-1に示す。 表 2.6.1-1予定される効能 · 効果及び用法 · 用量

効能・効果 次の疾患で,緑内障治療薬が効果不十分又は使用できな

い場合: 緑内障,高眼圧症 用法・用量 通常,1 回 1 滴,1 日 2 回点眼する。

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2.6.1 緒言

5

【参考文献】 1) Shimokawa H, Takeshita A. Rho-Kinase Is an Important Therapeutic Target in

Cardiovascular Medicine. Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology. 2005; 25(9): 1767-75.

2) Nakagawa O, Fujisawa K, Ishizaki T, Saito Y, Nakao K, Narumiya S. ROCK-I and ROCK-II, two isoforms of Rho-associated coiled-coil forming protein serine/threonine kinase in mice. FEBS Letters. 1996; 392(2): 189-93.

3) Fukiage C, Mizutani K, Kawamoto Y, Azuma M, Shearer TR. Involvement of Phosphorylation of Myosin Phosphatase by ROCK in Trabecular Meshwork and Ciliary Muscle Contraction. Biochemical and Biophysical Research Communications. 2001; 288(2): 296-300.

4) Waki M, Yoshida Y, Oka T, Azuma M. Reduction of intraocular pressure by topical administration of an inhibitor of the Rho-associated protein kinase. Current Eye Research. 2001; 22(6): 470-4.

5) Honjo M, Tanihara H, Inatani M, Kido N, Sawamura T, Yue BY, Narumiya S, Honda Y. Effects of Rho-Associated Protein Kinase Inhibitor Y-27632 on Intraocular Pressure and Outflow Facility. Investigative Ophthalmology & Visual Science. 2001; 42(1): 137-44.

6) Koga T, Koga T, Awai M, Tsutsui J, Yue BY, Tanihara H. Rho-associated protein kinase inhibitor, Y-27632, induces alterations in adhesion, contraction and motility in cultured human trabecular meshwork cells. Experimental Eye Research. 2006; 82(3): 362-70.

7) 日本緑内障学会. 緑内障診療ガイドライン(第 3 版). 日眼会誌 2012; 116(1): 5-46.

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2.6.2 薬理試験の概要文

1

グラナテック点眼液 0.4%

第 2 部(モジュール 2)

CTD の概要(サマリー)

2.6

非臨床試験の概要及び概要表

2.6.2

薬理試験の概要文

興和株式会社

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2.6.2 薬理試験の概要文

2

目次 2.6.2 薬理試験の概要文 ..................................................................................................... 3

2.6.2.1 まとめ ................................................................................................................. 4 2.6.2.2 効力を裏付ける試験 .......................................................................................... 6

2.6.2.2.1 酵素阻害作用及び受容体親和性 ................................................................. 6 2.6.2.2.2 眼圧下降作用 ............................................................................................... 7

2.6.2.3 副次的薬理試験 ................................................................................................ 17 2.6.2.3.1 房水動態に対する作用 .............................................................................. 17 2.6.2.3.2 血液房水柵に対する影響 .......................................................................... 19 2.6.2.3.3 代謝物の薬理作用 ..................................................................................... 20

2.6.2.4 安全性薬理試験 ................................................................................................ 22 2.6.2.5 薬力学的薬物相互作用試験 ............................................................................. 24 2.6.2.6 考察及び結論 .................................................................................................... 25 2.6.2.7 図表 ................................................................................................................... 27 2.6.2.8 引用文献 ........................................................................................................... 27

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2.6.2 薬理試験の概要文

3

2.6.2 薬理試験の概要文 本項で使用した略号及び用語を示した。なお,本項では,リパスジルとしての投与

量及び投与濃度を記載する。 略号及び薬物名 化学名(一般名) 構造式 リパスジル塩酸塩水和物 4-Fluoro-5-{[(2S)-2-methyl-1,4

-diazepan-1-yl]sulfonyl} isoquinoline monohydrochloride dihydrate

Y-27632 (1R,4r)-4-[(1R)-1-Aminoethyl]- N-(4-pyridin-4-yl)cyclohexane- 1-carboxamide

HA-1077 Hexahydro-1-(5-isoquinoline

sulfonyl)-1H-1,4-diazepine (Fasudil)

ラタノプロスト (+)-Isopropyl(Z)-7-[(1R,2R,3R,

5S)-3,5-dihydroxy-2-[(3R)-3-hy droxy-5-phenylpentyl] cyclopeanntyl]-5-heptenoate

ニプラジロール 3, 4-Dihydro-8-(2-hydroxy-3- isopropylamino)propoxy-3- nitroxy-2H -1-benzopyran

ブリンゾラミド (4R)-4-(Ethylamino)-3,4-dihydro-2-(3-methoxypropyl)-2H-thieno-[3,2,e]-1,2-thiazine-6- sulfonamide-1,1-dioxide

略号及び用語 内容 APD50 50%活動電位持続時間 APD70 70%活動電位持続時間 APD90 90%活動電位持続時間 Cmax 最高濃度 FITC fluorescein isothiocyanate hERG human Ether-a-go-go Related Gene IC50 値 50%阻害濃度 Ki 値 阻害定数 ROCK Rho-associated coiled-coil containing protein kinase

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2.6.2 薬理試験の概要文

4

2.6.2.1 まとめ 酵素阻害作用及び受容体親和性 リパスジル塩酸塩水和物は Rho キナーゼのアイソフォームであるヒト ROCK-1 及び

ROCK-2 に対する阻害強度は IC50 値でそれぞれ 0.051 及び 0.019µmol/L であり,他の

ROCK 阻害薬として知られている Y-27632 や HA-1077 と比較して強力であった。また,

リパスジル塩酸塩水和物のヒト ROCK-1 及び ROCK-2 に対する Ki 値はそれぞれ 0.023及び 0.037µmol/L であった。さらにその他セリン・スレオニン蛋白リン酸化酵素に対す

る阻害作用は ROCK 阻害作用と比べ弱く,リパスジル塩酸塩水和物は ROCK に対して

選択的な阻害作用を示した。また,α1 受容体,β 受容体,プロスタノイド受容体や炭

酸脱水酵素など既知の眼圧下降作用に関連した受容体や酵素,その他の受容体,チャ

ネル及び酵素に対する親和性及び抑制作用を示さず,リパスジル塩酸塩水和物は

ROCK に対して選択的な阻害作用を示すことが明らかとなった。 眼圧下降作用 リパスジル塩酸塩水和物点眼液を点眼した際の眼圧下降作用をウサギ,サルを用い

て検討した。 正常眼圧白色ウサギに対するリパスジル塩酸塩水和物点眼液の単回点眼試験では,

0.0625%以上の濃度で点眼後速やかに有意かつ濃度依存的な眼圧下降作用を示した。

反復点眼では初回点眼と同様の眼圧下降推移を示した。正常眼圧サルを用いた単回点

眼試験では,リパスジル塩酸塩水和物点眼液は点眼後速やかに濃度に依存した眼圧下

降作用を示し,リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%の最大眼圧下降作用はプロスタグ

ランジン関連薬であるラタノプロスト点眼液 0.005%と比べ有意に強力であった。高眼

圧白色ウサギにおいても,リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%は基剤に対して有意な

眼圧下降作用を示した。さらに,リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%は正常眼圧サル

においてラタノプロスト点眼液 0.005%と,正常眼圧白色ウサギにおいて α 受容体及び

β 受容体遮断薬であるニプラジロール点眼液 0.25%又は炭酸脱水酵素阻害薬であるブ

リンゾラミド点眼液 1%との併用点眼により,いずれも相加的な眼圧下降作用を示し

た。 房水動態に対する作用 リパスジル塩酸塩水和物の眼圧下降作用機序を解明するために,正常眼圧白色ウサ

ギを用い房水動態に対する作用を検討した。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%の点眼により房水流出率の増加を示した一方

で,ぶどう膜強膜流量及び房水産生量に対して影響を示さなかったことから,眼圧下

降作用機序として線維柱帯-シュレム管を介する主流出路からの房水流出増加作用を

推定した。また,正常眼圧有色ウサギを用いた検討でリパスジル塩酸塩水和物点眼液

は 1.0%の濃度の頻回点眼においても前房中蛋白濃度及び前房中細胞数に変化を示さ

ず,血液房水柵に影響を与えなかった。

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2.6.2 薬理試験の概要文

5

代謝物の薬理作用 リパスジル塩酸塩水和物の代謝物として同定された(!2.6.4.5.3)イソキノリン環 1 位

の水酸化体(M1),ホモピペラジン環 5 位の酸化体(M2)及びイソキノリン環 1 位の水酸

化及びホモピペラジン環 5 位の酸化体(M6)の作用について検討した。 M1,M2 及び M6 の ROCK-1 に対する阻害作用(IC50 値)はリパスジル塩酸塩水和物と

比較してそれぞれ約 1/6,約 1/27 及び約 1/390 であり,ROCK-2 に対する阻害作用(IC50

値)はリパスジル塩酸塩水和物と比較してそれぞれ約 1/9,約 1/25 及び約 1/370 であっ

た。さらにリパスジル塩酸塩水和物の代謝物である M1 点眼液 0.4%の眼圧下降作用は

点眼後 2 時間にピークとなり,最大の眼圧下降作用はリパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4%と比較して約 1/3 であった。以上の結果から,リパスジル塩酸塩水和物及び M1の眼圧下降作用強度は ROCK-1 及び ROCK-2 に対する酵素阻害作用に基づくものであ

ると考えられた。 安全性薬理試験 リパスジル塩酸塩水和物の安全性薬理試験として,一般症状及び中枢神経系,呼吸

器系及び心血管系に及ぼす影響について,ICH ガイドラインで定められている試験を

GLP を遵守して実施した。 リパスジル塩酸塩水和物をラット又はイヌに経口投与した際に 3mg/kg まで中枢神

経系,呼吸器系及び心血管系に変化は認められず,安全域はリパスジル塩酸塩水和物

点眼液 0.4%の臨床 1 日投与量に比べ約 230 倍高かった。In vitro 試験ではリパスジル

塩酸塩水和物は 0.82µmol/Lからウサギプルキンエ線維における活動電位持続時間の延

長作用を示し,10µmol/L から hERG 電流の抑制作用を示した。健康成人日本人男性を

対象とした第Ⅰ相臨床試験でリパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%を 1 日 2 回 7 日間反

復点眼した際の Cmax(!2.5.3.1)と比較して,ウサギプルキンエ線維において活動電位持

続時間の延長作用を示した 0.82µmol/L は約 410 倍,hERG 電流の抑制作用を示した

10µmol/L は約 5000 倍の乖離があった。これらより,リパスジル塩酸塩水和物の点眼

により中枢神経系,呼吸器系及び心血管系への影響は低いと考えられた。

Page 11: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

6

2.6.2.2 効力を裏付ける試験 2.6.2.2.1 酵素阻害作用及び受容体親和性 (1) 酵素阻害作用

[資料 !4.2.1.1-1,!4.2.1.1-2] Rho キナーゼのアイソフォームである ROCK-1,ROCK-2 及びその他代表的なセリ

ン・スレオニン蛋白リン酸化酵素であるプロテインキナーゼ C(PKC),プロテインキナ

ーゼ ACα(PKACα)及びカルモジュリンキナーゼ(CaMK2α)に対するリパスジル塩酸塩

水和物及び Y-27632,HA-1077 の阻害作用(IC50 値)を評価した。リパスジル塩酸塩水和

物については ROCK-1 及び ROCK-2 に対する阻害定数(Ki 値)も算出した。 リパスジル塩酸塩水和物のヒト ROCK-1 及び ROCK-2 に対する阻害作用は IC50 値で

それぞれ 0.051 及び 0.019µmol/L であり,Y-27632 や HA-1077 と比較して強力な阻害作

用を示した。また,リパスジル塩酸塩水和物のヒト ROCK-1 及び ROCK-2 に対する

Ki 値はそれぞれ 0.023 及び 0.037µmol/L であった。リパスジル塩酸塩水和物のセリン・

スレオニン蛋白リン酸化酵素に対する阻害作用は,Rho キナーゼ阻害作用と比べて

CaMK2α で 7 倍,PKACα 及び PKC で 40 倍以上弱く,リパスジル塩酸塩水和物は Rhoキナーゼに対して選択的な酵素阻害作用を示した(表 2.6.2.2-1,表 2.6.2.2-2)。

表 2.6.2.2-1 リパスジル塩酸塩水和物及びその他 Rho キナーゼ阻害薬のセリン・

スレオニン蛋白リン酸化酵素に対する阻害作用(IC50 値) ROCK-1 ROCK-2 PKACα PKC CaMK2α

リパスジル 塩酸塩水和物

0.051 (0.041-0.064)

0.019 (0.017-0.021)

2.1 (1.9-2.4)

27 (23-33)

0.37 (0.30-0.47)

Y-27632 0.11

(0.088-0.15) 0.17

(0.10-0.28) 50

(38-70) 32

(25-43) 8.1

(3.9-19)

HA-1077 0.29

(0.24-0.34) 0.35

(0.21-0.62) 1.1

(0.99-1.3)17

(14-22) 2.9

(1.3-6.4) IC50 値(95%信頼区間) [µmol/L]

表 2.6.2.2-2 リパスジル塩酸塩水和物の ROCK-1 及び ROCK-2 に対する 阻害作用(Ki 値)

ROCK-1 ROCK-2 リパスジル

塩酸塩水和物 0.023 0.037

Ki 値[µmol/L] (2) 各種受容体,チャネル,酵素に対する親和性

[資料 !4.2.1.1-3] 受容体としてアドレナリン受容体(α1,α2,β1,β2,β3),アンジオテンシン II 受容体

(AT1,AT2),エンドセリン受容体(ETA,ETB),グルタミン酸受容体(AMPA,kainate,NMDA),ヒスタミン受容体(H1,H2),ムスカリン受容体(M),プロスタノイド受容体

Page 12: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

7

(EP1,EP2,EP4,FP,TP,IP),セロトニン受容体(5-HT),チャネルとして Ca2+チャネ

ル(L 及び N),K+チャネル(KATP,KV,SKCa)に対するリパスジル塩酸塩水和物(1µmol/L)の親和性を検討した。受容体に対する親和性は,受容体発現組織あるいは強制発現細

胞膜標品を用いた特異的放射性同位体標識リガンドの結合阻害実験により評価した。

さらに酵素として炭酸脱水酵素及び HMG-CoA 還元酵素に対するリパスジル塩酸塩水

和物(1µmol/L)の作用を検討した。炭酸脱水酵素及び HMG-CoA 還元酵素に対する作用

は,それぞれ基質(4-nitrophenyl acetate 及び HMG-CoA)との反応によって生成される反

応生成物(4-nitrophenol 及び mevalonate)量を分光光度計で測定することにより評価し

た。 リパスジル塩酸塩水和物は評価を行った全ての受容体,チャネルに対する親和性,

並びに酵素に対する作用を示さなかった。 2.6.2.2.2 眼圧下降作用 (1) 正常眼圧白色ウサギにおける単回点眼による眼圧下降作用の検討

[資料 !4.2.1.1-4] 雄性白色ウサギの片眼に,リパスジル塩酸塩水和物点眼液基剤,0.0625%,0.125%,

0.25%及び 0.5%を 50µL 単回点眼投与し,点眼 5 時間後までの眼圧を測定した。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液は 0.0625%から有意な眼圧下降作用を示し,リパス

ジル塩酸塩水和物の濃度に依存した眼圧下降作用の増強及び持続時間の延長を示した

(図 2.6.2.2-1)。さらに各濃度における眼圧下降度の総和を用いてリパスジル塩酸塩水

和物の濃度と眼圧下降作用の関係を最大対比法によって検討した結果,リパスジル塩

酸塩水和物の眼圧下降作用に有意(p=0.0002)な濃度依存性が認められた(図 2.6.2.2-2)。

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2.6.2 薬理試験の概要文

8

図 2.6.2.2-1 正常眼圧白色ウサギにおけるリパスジル塩酸塩水和物点眼液の 眼圧下降作用

A: 基剤,B: 0.0625%,C: 0.125%,D: 0.25%,E: 0.5% ●: 点眼側,○: 非点眼側 * p<0.05,** p<0.01,*** p<0.001 点眼側における 0 時間との比較 (Dunnett の検定) $ p<0.05 非点眼側における 0 時間との比較(Dunnett の検定) 各値は 10 例の平均値±標準誤差を示す

A B

C D

E

基剤

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5時間 (hr)

眼圧

(mm

Hg)

*$

0.0625%

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5

眼圧

(mm

Hg)

*

$

0.25%

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5

眼圧

(mm

Hg)

**

***

**

$

0.5%

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5

眼圧

(mm

Hg)

**

***

***

0.125%

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5

眼圧

(mm

Hg)

*

$

時間 (hr)

時間 (hr)時間 (hr)

時間 (hr)

A B

C D

E

基剤

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5時間 (hr)

眼圧

(mm

Hg)

*$

0.0625%

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5

眼圧

(mm

Hg)

*

$

0.25%

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5

眼圧

(mm

Hg)

**

***

**

$

0.5%

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5

眼圧

(mm

Hg)

**

***

***

0.125%

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5

眼圧

(mm

Hg)

*

$

時間 (hr)

時間 (hr)時間 (hr)

時間 (hr)

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2.6.2 薬理試験の概要文

9

p = 0.0002

-30

-15

0

15

0.0625% 0.125% 0.25% 0.5%

基剤

眼圧

下降

度の

総和

(mm

Hg)

図 2.6.2.2-2 リパスジル塩酸塩水和物点眼液の眼圧下降作用における用量反応性 p=0.0002(最大対比法) 各値は 10 例の平均値±標準誤差を示す

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2.6.2 薬理試験の概要文

10

(2) 正常眼圧白色ウサギにおける反復点眼による眼圧下降作用の検討 [資料 !4.2.1.1-5]

雄性白色ウサギに,リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.5%及び 1.0%を 1 日 2 回,1回 50µL,7 日間反復点眼投与し,初回点眼及び最終点眼の点眼 5 時間後までの眼圧を

測定した。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.5%及び 1.0%は初回点眼投与後並びに 7 日間点眼

投与後に点眼 1 時間後をピークとする眼圧下降作用を示し,同様の眼圧推移を示した。

以上の結果から,リパスジル塩酸塩水和物は反復点眼による作用の増強又は減弱を示

さず,安定した眼圧下降作用を示すことが明らかとなった(図 2.6.2.2-3)。

図 2.6.2.2-3 正常眼圧白色ウサギにおけるリパスジル塩酸塩水和物点眼液反復点眼 による眼圧下降作用

リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.5%及び 1.0%を 1 日 2 回 7 日間反復点眼した際の

眼圧推移を示す。 ●: 初回点眼, ○: 最終点眼(7 日目) * p<0.05 初回点眼と最終点眼後の眼圧の比較(対応のある t 検定) 各値は 8 例の平均値±標準誤差を示す

0.5%

5

10

15

20

25

30

0 1 2 3 4 5時間 (hr)

眼圧

(mm

Hg)

1.0%

5

10

15

20

25

30

0 1 2 3 4 5時間 (hr)

眼圧

(mm

Hg)

*

*

0.5%

5

10

15

20

25

30

0 1 2 3 4 5時間 (hr)

眼圧

(mm

Hg)

1.0%

5

10

15

20

25

30

0 1 2 3 4 5時間 (hr)

眼圧

(mm

Hg)

*

*

Page 16: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

11

(3) 高眼圧白色ウサギにおける単回点眼による眼圧下降作用の検討 [資料 !4.2.1.1-6]

高眼圧モデルに対するリパスジル塩酸塩水和物の効果を検討した。 白色ウサギの片眼に 0.4%カルボキシビニルポリマーを 50µL 前房内投与し,4~6 日

後に眼圧が 30mmHg~45mmHg に上昇した個体を高眼圧モデルとして使用した。本モ

デルに対しリパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%及び基剤を 50µL 単回点眼投与し,点

眼 5 時間後までの眼圧を測定した。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%投与群は基剤投与群と比較して点眼 1時間後か

ら 4 時間後まで有意な眼圧下降作用を示し,高眼圧モデルにおいて眼圧下降作用を有

することが明らかとなった(図 2.6.2.2-4)。

図 2.6.2.2-4 ウサギ高眼圧モデルにおけるリパスジル塩酸塩水和物点眼液の 眼圧下降作用

●: リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%,○: 基剤 各値は 11-12 例の平均値±標準誤差を示す

* p<0.05 基剤との比較(対応のない t 検定)

時間 (hr)

点眼

前に

対す

る眼

圧変

化量

(mm

Hg)

* ***

0 1 2 3 4 5

0

-10

-5

5

10

時間 (hr)

点眼

前に

対す

る眼

圧変

化量

(mm

Hg)

* ***

0 1 2 3 4 5

0

-10

-5

5

10

Page 17: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

12

(4) 正常眼圧サルにおける単回点眼による眼圧下降作用の検討 [資料 !4.2.1.1-7]

雄性カニクイザルの片眼にリパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.1%,0.2%,0.4%及びラ

タノプロスト点眼液 0.005%を 20µL 単回点眼投与し,点眼 8 時間後までの眼圧を測定

した。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液は全ての濃度で点眼 2 時間後,ラタノプロスト点眼

液 0.005%投与群は点眼 4 時間後をピークとする眼圧下降作用を示した。さらにリパス

ジル塩酸塩水和物点眼液投与群は全ての濃度で点眼 1 時間及び 2 時間後にラタノプロ

スト点眼液投与群と比較して強力な眼圧下降作用を示した(図 2.6.2.2-5A)。リパスジ

ル塩酸塩水和物点眼液及びラタノプロスト点眼液による最大眼圧下降度(点眼前眼圧

からの最大眼圧変化)の比較では,リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.1%投与群はラタ

ノプロスト点眼液 0.005%投与群と同程度,リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%投与

群はラタノプロスト点眼液 0.005%投与群と比べ有意に強い眼圧下降作用を示した(図 2.6.2.2-5B)。

図 2.6.2.2-5 正常眼圧サルにおけるリパスジル塩酸塩水和物点眼液の眼圧下降作用 A: 点眼前に対する眼圧変化値の経時変化 ◆:リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.1%,▲:リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.2%,

●:リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%,○: ラタノプロスト点眼液 0.005% ** p<0.01 ラタノプロスト点眼液 0.005%との比較(Dunnett の検定) 各値は 8 例の平均値±標準誤差を示す

B: 最大眼圧下降作用 ** p<0.01 ラタノプロスト点眼液 0.005%との比較(Dunnett の検定) 各値は 8 例の平均値±標準誤差を示す

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

0 2 4 6 8

時間 (hr)

点眼

前に

対す

る眼

圧変

化量

(mm

Hg)

**

**

**

**

**

**

****

0

1

2

3

4

5

0.1% 0.2% 0.4% 0.005%

最大

眼圧

下降

作用

(mmHg)

**

リパスジル塩酸塩水和物点眼液ラタノプロスト

A B

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

0 2 4 6 8

時間 (hr)

点眼

前に

対す

る眼

圧変

化量

(mm

Hg)

**

**

**

**

**

**

****

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

0 2 4 6 8

時間 (hr)

点眼

前に

対す

る眼

圧変

化量

(mm

Hg)

**

**

**

**

**

**

****

0

1

2

3

4

5

0.1% 0.2% 0.4% 0.005%

最大

眼圧

下降

作用

(mmHg)

**

リパスジル塩酸塩水和物点眼液ラタノプロスト

0

1

2

3

4

5

0.1% 0.2% 0.4% 0.005%

最大

眼圧

下降

作用

(mmHg)

**

リパスジル塩酸塩水和物点眼液ラタノプロスト

A B

Page 18: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

13

(5) 正常眼圧サルにおけるラタノプロストとの併用投与による眼圧下降作用の検討 [資料 !4.2.1.1-8]

代表的なプロスタグランジン関連薬としてラタノプロストを選択し,リパスジル塩

酸塩水和物とラタノプロストの併用点眼による効果を検討した。 雄性カニクイザルの片眼にリパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%の 20µL 単独点眼投

与,ラタノプロスト点眼液 0.005%の 20µL 単独点眼投与,又はリパスジル塩酸塩水和

物点眼液 0.4%とラタノプロスト点眼液 0.005%を 5 分間隔で 20µL ずつ併用点眼投与し,

点眼 6 時間後までの眼圧を測定した。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%投与群では点眼 2 時間後,ラタノプロスト点眼

液 0.005%投与群では点眼 4 時間後をピークとする眼圧下降作用を認めた。リパスジル

塩酸塩水和物点眼液 0.4%とラタノプロスト点眼液 0.005%の併用投与群では,各単独

投与群の眼圧下降が相加的に見られ,全ての時点においてラタノプロスト点眼液

0.005%投与群と比べ有意に強い眼圧下降作用を示した(図 2.6.2.2-6)。以上の結果から,

リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%とラタノプロスト点眼液 0.005%の併用投与群は

ラタノプロスト点眼液 0.005%単独投与群より眼圧下降作用が増加し,リパスジル塩酸

塩水和物点眼液 0.4%点眼液単独投与群より持続時間が増加することが明らかとなり,

両薬剤間の併用効果が確認できた。

図 2.6.2.2-6 正常眼圧サルにおけるリパスジル塩酸塩水和物と ラタノプロストとの併用効果

○:リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%,△:ラタノプロスト点眼液 0.005%, ●:リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%とラタノプロスト点眼液 0.005%の併用 **p<0.01 ラタノプロスト点眼液 0.005%との比較(Dunnett の検定) 各値は 5 例の平均値±標準誤差を示す

-8

-6

-4

-2

0

2

0 1 2 3 4 5 6

時間 (hr)

点眼

前に

対す

る眼

圧変

化量

(mm

Hg)

**

**

**

****

**

-8

-6

-4

-2

0

2

0 1 2 3 4 5 6

時間 (hr)

点眼

前に

対す

る眼

圧変

化量

(mm

Hg)

**

**

**

****

**

Page 19: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

14

(6) 正常眼圧白色ウサギにおけるニプラジロールとの併用投与による眼圧下降作用の

検討 [資料 !4.2.1.1-9]

リパスジル塩酸塩水和物と α 受容体及び β 受容体遮断薬であるニプラジロールの併

用点眼による効果を検討した。 雄性白色ウサギの片眼に基剤の 50µL 単独点眼投与,リパスジル塩酸塩水和物点眼

液 0.4%の 50µL 単独点眼投与,ニプラジロール点眼液 0.25%の 50µL 単独点眼投与,又

はリパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%とニプラジロール点眼液 0.25%を 5 分間隔で

50µL ずつ併用点眼投与し,点眼 5 時間後までの眼圧を測定した。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%投与群は点眼 0.5,1 及び 2 時間後,ニプラジ

ロール点眼液 0.25%投与群は点眼 0.5 及び 1 時間後に基剤投与群と比較して有意な眼

圧下降効果を示した。リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%とニプラジロール点眼液

0.25%の併用投与群は各単独投与群の相加的な眼圧下降を示し,点眼 0.5,1,2,3 及

び 4 時間後に基剤投与群と比較して有意な眼圧下降作用を示した(図 2.6.2.2-7)。以上

の結果から,リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%はニプラジロール点眼液 0.25%と併

用する事により相加的な最大眼圧下降作用の増大と眼圧下降作用の持続を示すことが

明らかとなり,両薬剤間の併用効果が確認できた。

図 2.6.2.2-7 正常眼圧ウサギにおけるリパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%と ニプラジロール点眼液 0.25%の併用効果

○: 基剤,●: リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%, △: ニプラジロール点眼液 0.25%, □: リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%とニプラジロール点眼液 0.25%の併用 * p<0.05,** p<0.01,*** p<0.001 基剤との比較(Tukey の検定) 各値は 9 例の平均値±標準誤差を示す

-15

-10

-5

0

5

0 1 2 3 4 5

時間 (hr)

点眼

前に

対す

る眼

圧変

化量

(m

mH

g)

**

***

****

***

***

**

***

**

***

-15

-10

-5

0

5

0 1 2 3 4 5

時間 (hr)

点眼

前に

対す

る眼

圧変

化量

(m

mH

g)

**

***

****

***

***

**

***

**

***

Page 20: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

15

(7) 正常眼圧白色ウサギにおける炭酸脱水酵素阻害薬との併用投与による眼圧下降作

用の検討 [資料 !4.2.1.1-10]

代表的な炭酸脱水酵素阻害薬としてブリンゾラミドを選択し,リパスジル塩酸塩水

和物とブリンゾラミドの併用点眼による効果を検討した。 雄性白色ウサギの片眼に基剤の 50µL 単独点眼投与,リパスジル塩酸塩水和物点眼

液 0.4%の 50µL 単独点眼投与,ブリンゾラミド点眼液 1%の 50µL 単独点眼投与,又は

リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%とブリンゾラミド点眼液 1%を 5 分間隔で 50µLずつ併用点眼投与し,点眼 5 時間後までの眼圧を測定した。

リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%投与群では点眼 0.5,1,2 及び 3 時間後,ブリ

ンゾラミド点眼液 1%投与群では点眼 1,2,3 及び 4 時間後に基剤と比較して有意な

眼圧下降作用を示した。リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%とブリンゾラミド点眼液

1%の併用投与群では各単独投与群の眼圧下降が相加的に見られ,点眼 0.5,1,2,3,4 及び 5 時間後に基剤投与群と比較して有意な眼圧下降効果を示した。さらに,リパ

スジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%とブリンゾラミド点眼液 1%の併用投与群は点眼 0.5,1,2,3 及び 5 時間後にブリンゾラミド点眼液 1%投与群と比較して,点眼 2,3,4 及

び 5時間後にリパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%投与群と比較して有意な眼圧下降作

用を示した(図 2.6.2.2-8)。以上の結果から,リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%はブ

リンゾラミド点眼液 1%と併用する事によりブリンゾラミド点眼液 1%単独投与より眼

圧下降作用及び持続時間が増加し,リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%点眼液単独投

与より持続時間が増加することが明らかとなり,両薬剤間の併用効果が確認できた。

Page 21: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

16

図 2.6.2.2-8 正常眼圧ウサギにおけるリパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%と ブリンゾラミド点眼液 1%の併用効果

○: 基剤,●: リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%,△: ブリンゾラミド点眼液 1%, □: リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%とブリンゾラミド点眼液 1%の併用 各値は 10 例の平均値±標準誤差を示す * p<0.05,** p<0.01, *** p<0.001 基剤との比較(Tukey の検定), a p<0.05,aa p<0.01, aaa p<0.001 ブリンゾラミド点眼液 1%との比較(Tukey の検定), b p<0.05,bb p<0.01, bbb p<0.001 リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%との比較 (Tukey の検定)

-15

-10

-5

0

5

0 1 2 3 4 5

時間(hr)

点眼

前に

対す

る眼

圧変

化量

(m

mH

g)

***aaabbb

***

*

***aaa

***aaa

***aaa

***aa

******

**

***b

***abb

**abb

-15

-10

-5

0

5

0 1 2 3 4 5

時間(hr)

点眼

前に

対す

る眼

圧変

化量

(m

mH

g)

***aaabbb

***

*

***aaa

***aaa

***aaa

***aa

******

**

***b

***abb

**abb

Page 22: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

17

2.6.2.3 副次的薬理試験 2.6.2.3.1 房水動態に対する作用 (1) 房水流出率

[資料 !4.2.1.2-1] 正常眼圧白色ウサギを用い,Bárány の Two-level constant pressure 法 1)によりリパス

ジル塩酸塩水和物点眼液の房水流出率に対する作用を検討した。 ウサギの初期眼圧を測定後,片眼にリパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%又は基剤

を 50µL 単回点眼投与した。点眼 30 分後に眼圧を測定し,直ちに全身麻酔を施して前

房にカニューレを挿入した。このカニューレを介して点眼前眼圧より 12.5mmHg 及び

2.5mmHg 高い灌流圧で灌流し,各加圧時に消費した灌流液量より房水流出率を算出し

た。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%投与群の眼圧は点眼前と比べ有意に下降した

(図 2.6.2.3-1A)。Two-level constant pressure 法により測定したリパスジル塩酸塩水和物

点眼液 0.4%投与群の房水流出率は 0.193±0.038µL/min/mmHg であり,基剤投与群の房

水流出率(0.086±0.021µL/min/mmHg)と比べ有意に増加した(図 2.6.2.3-1B)。以上の結果

から,リパスジル塩酸塩水和物は房水流出率を増加させることが明らかとなった。 図 2.6.2.3-1 正常眼圧白色ウサギにおけるリパスジル塩酸塩水和物の房水流出率

に対する作用 A: 眼圧変化 ○: 基剤,●: リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4% ### p<0.001 点眼前との比較(対応のある t 検定) 各値は 7-8 例の平均値±標準誤差を示す B: 房水流出率 * p<0.05 基剤との比較(対応のない t 検定) 各値は 7-8 例の平均値±標準誤差を示す

10

15

20

25

点眼前 点眼後

眼圧

(mm

Hg)

###

A

房水

流出

率(μ

L/m

in/m

mH

g)

0

0.1

0.2

0.3

基剤 リパスジル塩酸塩水和物点眼液0.4%

*

B

10

15

20

25

点眼前 点眼後

眼圧

(mm

Hg)

###

10

15

20

25

点眼前 点眼後

眼圧

(mm

Hg)

###

A

房水

流出

率(μ

L/m

in/m

mH

g)

0

0.1

0.2

0.3

基剤 リパスジル塩酸塩水和物点眼液0.4%

*

B

房水

流出

率(μ

L/m

in/m

mH

g)

0

0.1

0.2

0.3

基剤 リパスジル塩酸塩水和物点眼液0.4%

*

B

Page 23: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

18

(2) ぶどう膜強膜流量 [資料 !4.2.1.2-2]

正常眼圧白色ウサギを用い,FITC-Dextran 灌流法 2,3)によりリパスジル塩酸塩水和

物点眼液のぶどう膜強膜流量に対する作用を検討した。 あらかじめウサギの初期眼圧を測定後,片眼にリパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%

又は基剤を 50µL 単回点眼投与した。点眼 30 分後に眼圧を測定し,直ちに全身麻酔を

施して前房に平均分子量 70000 の FITC-Dextran 灌流液で満たしたカニューレを挿入し

た。このカニューレを介して点眼前眼圧より 5mmHg 高い灌流圧で 30 分間灌流し,灌

流終了後の眼球を摘出して組織中の FITC 量を測定し,ぶどう膜強膜流量を算出した。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%投与群の眼圧は点眼前と比べ有意に下降した

(図 2.6.2.3-2A)。FITC-Dextran 灌流法により測定したリパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4%投与群のぶどう膜強膜流量は 0.155±0.023µL/min であり,基剤投与群のぶどう膜

強膜流量 (0.134±0.026µL/min)と比べ統計学的な有意差が認められなかった (図 2.6.2.3-2B)。以上の結果から,リパスジル塩酸塩水和物はぶどう膜強膜流量に作用し

ないことが明らかとなった。

図 2.6.2.3-2 正常眼圧白色ウサギにおけるリパスジル塩酸塩水和物の ぶどう膜強膜流量に対する影響

A: 眼圧変化 ○: 基剤,●: リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4% 各値は 6 例の平均値±標準誤差を示す

## p<0.01 点眼前との比較(対応のある t 検定) B: ぶどう膜強膜流量 各値は 6 例の平均値±標準誤差を示す

10

15

20

25

点眼前 点眼後

眼圧

(mm

Hg)

##

0

0.1

0.2

0.3

ぶど

う膜

強膜

流量

( μL/m

in)

基剤 リパスジル塩酸塩水和物点眼液0.4%

A B

10

15

20

25

点眼前 点眼後

眼圧

(mm

Hg)

##

0

0.1

0.2

0.3

ぶど

う膜

強膜

流量

( μL/m

in)

基剤 リパスジル塩酸塩水和物点眼液0.4%

A B

Page 24: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

19

(3) 房水流量 [資料 !4.2.1.2-3]

正常眼圧白色ウサギを用い, Kanno らの方法 4)に従いリパスジル塩酸塩水和物点眼

液の房水流量に対する作用を検討した。 ウサギの片眼に 10%フルオレセインを 3 分間隔で 5 回,1 回 10µL 点眼投与した。フ

ルオレセインの点眼終了 17 時間後にリパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%又は基剤を

50µL 単回点眼投与した。フルオロフォトメーターを用いてリパスジル塩酸塩水和物点

眼液 0.4%又は基剤点眼投与前後の角膜及び前房内 FITC 濃度を測定し,房水流量を算

出した。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%投与群の房水流量は基剤投与群と比較して統

計学的な有意差が認められなかった(図 2.6.2.3-3)。したがって,リパスジル塩酸塩水

和物は房水流量に作用しなかったことから,房水産生量に影響がないことが明らかと

なった。

図 2.6.2.3-3 正常眼圧白色ウサギにおけるリパスジル塩酸塩水和物の 房水流量に対する影響

各値は 6 例の平均値±標準誤差を示す

2.6.2.3.2 血液房水柵に対する影響 [資料 !4.2.1.2-4]

リパスジル塩酸塩水和物の血液房水柵に対する影響を検討した。実験には正常眼圧

有色ウサギを用い,片眼にリパスジル塩酸塩水和物点眼液 1.0%を 30 分間隔で 4 回,1回 50µL 点眼投与した。最終点眼 30 分後より 3 時間後まで 30 分間隔で,前房中蛋白

濃度及び前房中細胞数をレーザーフレアーセルメーターで測定した。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液 1.0%を頻回投与した結果,前房中蛋白濃度及び前房

中細胞数に対して点眼側と非点眼側との間で統計学的な差は認められなかった。以上

0

1

2

3

基剤リパスジル塩酸塩水和物

点眼液0.4%

房水

流量

(μL/m

in)

0

1

2

3

基剤リパスジル塩酸塩水和物

点眼液0.4%

房水

流量

(μL/m

in)

Page 25: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

20

の結果から,リパスジル塩酸塩水和物は血液房水柵に影響を与えないことが明らかと

なった(図 2.6.2.3-4)。

図 2.6.2.3-4 リパスジル塩酸塩水和物の血液房水柵機能に対する作用 A:前房中蛋白濃度,B:前房中細胞数 ○:非点眼側,●:リパスジル塩酸塩水和物点眼液 1.0%点眼側 図中↓はリパスジル塩酸塩水和物点眼液 1.0%の点眼を示す 各値は 5 例の平均値±標準誤差を示す

2.6.2.3.3 代謝物の薬理作用 (1) 代謝物の酵素阻害作用

[資料 !4.2.1.1-1] 健康成人日本人男性を対象とした第 I 相頻回・反復投与試験から,血漿及び尿よりリ

パスジル塩酸塩水和物の主代謝物としてイソキノリン環 1 位の水酸化体(M1),ホモピ

ペラジン環 5 位の酸化体(M2)及びイソキノリン環 1 位の水酸化及びホモピペラジン環

5 位の酸化体(M6)の存在が確認された。(!2.6.4.5.3)。これらの代謝物の ROCK-1 に対す

る阻害強度(IC50 値)はリパスジル塩酸塩水和物と比較して M1 は約 1/6,M2 は約 1/27,M6 は約 1/390 であり,ROCK-2 に対する阻害強度(IC50 値)はリパスジル塩酸塩水和物

と比較して M1 は約 1/9,M2 は約 1/25,M6 は約 1/370 であった。(表 2.6.2.3-1)

0

10

20

30

40

50

-2 -1 0 1 2 3

時間 (hr)

前房

中蛋

白濃

度(m

g/100m

L)

0

2

4

6

8

10

-2 -1 0 1 2 3

時間 (hr)

前房

中細

胞数

A

B

0

10

20

30

40

50

-2 -1 0 1 2 3

時間 (hr)

前房

中蛋

白濃

度(m

g/100m

L)

0

2

4

6

8

10

-2 -1 0 1 2 3

時間 (hr)

前房

中細

胞数

A

B

Page 26: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

21

表 2.6.2.3-1 リパスジル塩酸塩水和物代謝物の Rho キナーゼ阻害作用

ROCK-1 ROCK-2

リパスジル塩酸塩水和物 0.051 (0.041-0.064)

0.019 (0.017-0.021)

M1 0.32 (0.28-0.36)

0.17 (0.14-0.19)

M2 1.4 (1.2-1.7)

0.47 (0.34-0.66)

M6 20 (17-23)

7.1 (5.1-10)

IC50 値(95%信頼区間) [µmol/L]

(2) 代謝物の眼圧下降作用 [資料 !4.2.1.2-5]

リパスジル塩酸塩水和物の主代謝物である M1 の眼圧下降作用を正常眼圧白色ウサ

ギを用いて検討した。 雄性白色ウサギの片眼にリパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%又は M1 点眼液 0.4%

を 50µL 単回点眼投与し,点眼 5 時間後までの眼圧を測定した。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%は点眼 1時間後に最大眼圧下降作用(-8.4mmHg)

を示した。M1 点眼液 0.4%は点眼 2 時間後に最大眼圧下降作用(-2.8mmHg)を示し,リ

パスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%と比較して約 1/3 の眼圧下降強度であった (図 2.6.2.3-5)。

図 2.6.2.3-5 リパスジルの代謝物の眼圧下降作用 ●: リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4% ▲: M1 点眼液 0.4% 各値は 6 例の平均値±標準誤差を示す

-10

-5

0

5

0 1 2 3 4 5

点眼

前に

対す

る眼

圧変

化量

(mm

Hg)

時間 (hr)

-10

-5

0

5

0 1 2 3 4 5

点眼

前に

対す

る眼

圧変

化量

(mm

Hg)

時間 (hr)

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2.6.2 薬理試験の概要文

22

2.6.2.4 安全性薬理試験 [資料 !4.2.1.3-1,!4.2.1.3-2,!4.2.1.3-3,!4.2.1.3-4,!4.2.1.3-5,!4.2.1.3-6]

リパスジル塩酸塩水和物の安全性薬理試験として,一般症状・中枢神経系,呼吸器系,

心・血管系に及ぼす影響について検討した(表 2.6.2.4-1)。安全性薬理試験は GLP を遵

守して実施した。

表 2.6.2.4-1 リパスジル塩酸塩水和物の安全性薬理試験成績(まとめ)

試験名 動物種 投与量 又は濃度

成績 記載箇所

一般症状 ・

中枢神経系 ラット

0.3, 3, 30mg/kg 経口投与

一般症状,行動及び自発運動に

作用無し 30mg/kg で耳介及び足の赤色化

と一過性の体温低下 [n=4]

!4.2.1.3-1

呼吸器系 ラット 0.3, 3,

30mg/kg 経口投与

30mg/kg において投与 30 分後

に呼吸数と分時換気量の有意な

減少,及び投与 150 分後に分時

換気量の有意な増加 [n=8]

!4.2.1.3-2

心・血管系

イヌ 0.03, 0.3, 3mg/kg 経口投与

血圧,心拍数,心電図への影響

なし QT 延長作用なし [n=4]

!4.2.1.3-3

ウサギ プルキンエ

線維 (in vitro)

0.82~100µmol/L

自発運動,活動電位の早期及び

遅延性後期再分極に作用無し 0.82µmol/L以上で APD50の延長,

8.2µmol/L 以上で APD70 及び

APD90 の有意な延長 82µmol/L において最大立ち上が

り速度の有意な減少 [n=6]

!4.2.1.3-4

HEK-293 (in vitro)

1~1000 µmol/L

用量依存的な hERG 阻害 (IC50=39.5µmol/L) [n=3]

!4.2.1.3-5

(1) 一般症状・中枢神経系

リパスジル塩酸塩水和物を雄性ラットに 0.3,3 及び 30mg/kg の用量で経口投与し,

Irwin 変法を用いて一般症状,行動,体温及び自発運動に対する影響を評価した。 0.3 及び 3mg/kg 投与群は一般行動,体温及び自発運動に影響を及ぼさなかった。

Page 28: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

23

30mg/kg 投与群では一般行動及び自発運動に変化はなかったが,3/4 例で耳介及び四肢

の赤色化が認められ,投与 90 分及び 150 分後に一過性かつ軽度の体温低下が認められ

た。

(2) 呼吸器系 リパスジル塩酸塩水和物を雄性ラットに 0.3,3 及び 30mg/kg の用量で経口投与し,

無麻酔無拘束で呼吸機能に対する評価を行った。 リパスジル塩酸塩水和物 0.3 及び 3mg/kg 投与群は呼吸機能に影響を及ぼさなかった。

リパスジル塩酸塩水和物 30mg/kg 投与群は投与後早期(30 分)に呼吸数及び分時換気量

の減少,投与後後期(150 分)に分時換気量の増加が認められた。

(3) 心血管系 1) イヌにおける心・血管系への影響

リパスジル塩酸塩水和物を雌雄イヌの 0.03,0.3 及び 3mg/kg の用量で経口投与し,

無麻酔無拘束で血圧,心拍数及び心電図に対する評価を行った。 リパスジル塩酸塩水和物は全ての用量で収縮期,拡張期並びに平均血圧,心拍数及

び心電図に影響を及ぼさなかった。 2) ウサギ摘出プルキンエ線維に対する影響

リパスジル塩酸塩水和物の心筋活動電位に対する影響を摘出ウサギプルキンエ線維

を用いて評価した。 リパスジル塩酸塩水和物はウサギプルキンエ線維において自発運動,活動電位の早

期及び遅延性後期再分極に影響を及ぼさなかったが,0.82µmol/L 以上の濃度で APD50

を,8.2µmol/L 以上の濃度で APD70 及び APD90 を延長させ,82µmol/L 以上の濃度で最

大立ち上がり速度の減少が認められた。 3) hERG 電流に対する影響

リパスジル塩酸塩水和物の hERG チャネルに対する影響を HEK-293 細胞を用いて評

価した。 リパスジル塩酸塩水和物は HEK-293細胞において 10µmol/Lより濃度依存的に hERG

電流を抑制し,IC50 値は 39.5µmol/L であった。

Page 29: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

24

2.6.2.5 薬力学的薬物相互作用試験 本薬では薬力学的薬物相互作用について評価していない。

Page 30: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

25

2.6.2.6 考察及び結論 リパスジル塩酸塩水和物は Rho キナーゼのアイソフォームであるヒト ROCK-1 及び

ROCK-2 に対して IC50 値でそれぞれ 0.051µmol/L 及び 0.019µmol/L を示し,他の Rhoキナーゼ阻害薬として知られている Y-27632 や HA-1077 と比較して強力であった。リ

パスジル塩酸塩水和物のその他セリン・スレオニン蛋白リン酸化酵素に対する阻害作

用は ROCK 阻害作用と比べ弱く,リパスジル塩酸塩水和物は ROCK に対して選択的な

阻害作用を示すことが明らかとなった。さらにリパスジル塩酸塩水和物は α1 受容体,

β 受容体,プロスタノイド受容体や炭酸脱水酵素など既知の眼圧下降作用機序の関連

受容体又は酵素に対して親和性を有さず,リパスジル塩酸塩水和物の眼圧下降作用は

ROCK 阻害作用によるものであると考えられた。 白色ウサギ及びサルに対する眼圧下降作用について検討した。正常眼圧白色ウサギ

に対するリパスジル塩酸塩水和物の単回点眼試験では,点眼後速やかに 0.0625%以上

の濃度で有意かつ濃度依存的な眼圧下降作用を認めた。反復点眼では初回点眼と同様

の眼圧下降推移が認められ,安定した有効性を示した。正常眼圧サルにおける単回点

眼試験において,リパスジル塩酸塩水和物点眼液は点眼後速やかに濃度に依存した眼

圧下降作用を示し,0.4%の濃度でプロスタグランジン関連薬であるラタノプロスト点

眼液 0.005%と比べ有意な眼圧下降作用を示した。高眼圧白色ウサギにおいても,リパ

スジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%は正常眼圧白色ウサギと同様単回点眼により有意な

眼圧下降作用を示し,高眼圧モデルに対しても有効性を示すことが明らかとなった。

また,リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%は正常眼圧サルにおいてラタノプロスト点

眼液 0.005%と,正常眼圧白色ウサギにおいて α 受容体及び β 受容体遮断薬であるニプ

ラジロール点眼液 0.25%又は炭酸脱水酵素阻害薬であるブリンゾラミド点眼液 1%と

の併用点眼により,いずれも相加的な眼圧下降作用及び眼圧下降作用の持続時間延長

を示し,作用機序の異なる緑内障治療薬との併用効果が確認できた。 リパスジル塩酸塩水和物の眼圧下降作用機序を解明するために,白色ウサギを用い

て房水動態に対する作用を検討した。リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%の点眼によ

り房水流出率の増加を示した一方で,ぶどう膜強膜流量及び房水産生量に対して影響

を示さなかったことから,眼圧下降作用機序として線維柱帯-シュレム管を介する主流

出路からの房水流出増加作用が推定できた。またリパスジル塩酸塩水和物点眼液 1.0%を正常眼圧有色ウサギに頻回点眼した際に前房中の蛋白濃度及び細胞数に変化は認め

られず,リパスジル塩酸塩水和物は血液房水柵に影響を与えないことが明らかとなっ

た。 リパスジル塩酸塩水和物の代謝物の薬理作用について検討した結果,リパスジル塩

酸塩水和物の主代謝物であるイソキノリン環 1 位水酸化体代謝物 M1 の ROCK-1 及び

ROCK-2 に対する阻害作用は IC50値で未変化体のそれぞれ約 1/6 及び約 1/9 であった。

正常眼圧白色ウサギに M1 点眼液 0.4%を点眼投与した際に認められた眼圧下降作用は

リパスジル塩酸塩水和物より弱く,ROCK-1 及び ROCK-2 に対する酵素阻害作用に類

似した作用であった。また,有色ウサギにリパスジル塩酸塩水和物点眼液 1.0%を 50µL単回点眼した 1 時間後における眼組織中 M1 濃度は未変化体の 1/3 以下であった(!表 2.6.4.5-1)。したがって,眼圧下降作用に対して代謝物の関与は少ないと考えられ,リ

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2.6.2 薬理試験の概要文

26

パスジル塩酸塩水和物を点眼した際に発揮する眼圧下降作用は主に未変化体によるも

のであると考えられた。 リパスジル塩酸塩水和物の安全性薬理試験として,一般症状・中枢神経系,呼吸器系

及び心血管系に及ぼす影響を評価した。リパスジル塩酸塩水和物をラットに 30mg/kg経口投与した際に体温低下(皮膚の血流量増加による直腸温度低下)及び呼吸器系の変

化を認めたが,いずれも一過性であり観察期間中に回復した。ラットに 3mg/kg を経

口投与した際に影響は認められなかった。また,イヌに 3mg/kg を経口投与した際に

血圧,心拍数,心電図への影響は認められなかった。リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4%を 1 日 2 回両眼に 1 滴(約 50µL)点眼した際の曝露量は 0.8mg となり,ヒト体重を

60kg とすると約 0.013mg/kg となる。このことから,in vivo 試験で影響が認められな

かった 3mg/kg の用量から推察される安全域は約 230 倍と考えられた。 さらに in vitro 試験ではリパスジル塩酸塩水和物は濃度に依存して 0.82µmol/L から

ウサギプルキンエ線維における活動電位持続時間の延長作用を示した。hERG 電流に

対しては 10µmol/L から抑制作用を示した。健康成人日本人男性を対象とした第Ⅰ相臨

床試験でリパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4%を 1日 2回 7日間反復点眼した際のCmaxは 0.63935ng/mL(1.977nmol/L)であった(!表 2.5.3-1)。ウサギプルキンエ線維において活

動電位持続時間の延長作用を示した 0.82µmol/L は約 410 倍,hERG 電流の抑制作用を

示した 10µmol/L は約 5000 倍の乖離があった。これらより,リパスジル塩酸塩水和物

は点眼によりヒトにおいて全身的な影響を引き起こす可能性は少ないと考えられた。 以上,リパスジル塩酸塩水和物は緑内障治療薬として初めてのROCK阻害薬であり,

線維柱帯-シュレム管を介した主流出路からの房水流出を促進することにより眼圧下

降作用を示す。したがって,リパスジル塩酸塩水和物の作用機序は β 受容体遮断薬,

炭酸脱水酵素阻害薬の持つ房水産生抑制作用や α 受容体作動薬,プロスタグランジン

関連薬の持つぶどう膜強膜流量増加作用と異なることから,既存薬との併用効果や薬

剤選択性の拡大において高い有用性が期待できる。

Page 32: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.2 薬理試験の概要文

27

2.6.2.7 図表 図表は本文中の該当箇所に記載した。

2.6.2.8 引用文献 1) Bárány EH. Simultaneous measurement of changing intraocular pressure and outflow

facility in the vervet monkey by constant pressure infusion. Invest Ophthalmol Vis Sci. 1964;3:135-43

2) Suguro K, Toris CB, Pederson JE. Uveoscleral outflow following cyclodialysis in the monkey eye using a fluorescent tracer. Invest Ophthalmol Vis Sci. 1985;26:810-3

3) Goh Y, Araie M, Nakajima M, et al. Effects of topical Prostaglandin D2 on the aqueous humor dynamics in rabbits. Graef's Arch Clin Exp Ophthalmol. 1989;227:476-81

4) Kanno M, Araie M, Tomita K, Sawanobori K. Effects of topical Nipradilol, a β-blocking agent with α-blocking and nitroglycerin-like activities, on aqueous humor dynamics and fundus circulation. Invest Ophthalmol Vis Sci. 1998;39:736-43

Page 33: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

1

グラナテック点眼液 0.4%

第 2 部(モジュール 2)

CTD の概要(サマリー)

2.6

非臨床試験の概要及び概要表

2.6.3

薬理試験概要表

興和株式会社

Page 34: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

2

目次

2.6.3 薬理試験概要表 ............................................................................................................. 3 2.6.3.1 薬理試験: 一覧表 ................................................................................................... 3 2.6.3.2 効力を裏付ける試験 .............................................................................................. 6 2.6.3.3 副次的薬理試験 .................................................................................................... 12 2.6.3.4 安全性薬理試験 .................................................................................................... 14 2.6.3.5 薬力学的薬物相互作用試験 ................................................................................. 15

Page 35: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

3

2.6.3 薬理試験概要表 2.6.3.1 薬理試験: 一覧表

試験項目 試験系 投与方法 実施施設 報告書番号 記載箇所 効力を裏付ける試験 酵素阻害作用および受容体親和性

K-115 及び K-115 代謝物の酵素阻害プロフ

ァイルの検討 組換えヒト酵素 in vitro 興和株式会社 026 !4.2.1.1-1

K-115のRho-キナーゼに対する酵素阻害定

数の検討 組換えヒト酵素 in vitro 興和株式会社 111 !4.2.1.1-2

In vitro pharmacology -Study of K-115- 各種受容体,チャネル,

酵素 in vitro 4458 !4.2.1.1-3

参考資料 眼圧下降作用

H-4 点眼液点眼投与の正常眼圧白色ウサギ

における眼圧下降作用 ウサギ

(無麻酔) 点眼 興和株式会社 031 !4.2.1.1-4

K-115 点眼液の正常眼圧白色ウサギにおけ

る 1 日 2 回 7 日間反復点眼による眼圧下降

作用の比較

ウサギ (無麻酔)

点眼 興和株式会社 007 !4.2.1.1-5

K-115 点眼液単回投与の白色ウサギ高眼圧

モデルに対する眼圧下降作用の検討 ウサギ

(無麻酔) 点眼 興和株式会社 066 !4.2.1.1-6

Intraocular Pressure-Decreasing Effect of H-4 on Ocular Normotensive Monkeys

カニクイザル (無麻酔)

点眼

203 !4.2.1.1-7

K-115 点眼液のカニクイザルを用いた併用

投与による眼圧測定試験 カニクイザル

(無麻酔) 点眼

096 !4.2.1.1-8

K-115 点眼液の正常眼圧白色ウサギの眼圧

下降作用に対するニプラジロールの併用

効果

ウサギ (無麻酔)

点眼 興和株式会社 035 !4.2.1.1-9

Page 36: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

4

2.6.3.1 薬理試験: 一覧表(続き)

試験項目 試験系 投与方法 実施施設 報告書番号 記載箇所 K-115 点眼液の正常眼圧白色ウサギの眼圧

下降作用に対するブリンゾラミドの併用

効果

ウサギ (無麻酔)

点眼 興和株式会社 034 !4.2.1.1-10

副次的薬理試験 房水動態に対する作用

K-115 点眼液の正常眼圧白色ウサギにおけ

る房水流出系に対する作用 ウサギ

(麻酔下) 点眼 興和株式会社 062 !4.2.1.2-1

K-115 点眼液単回点眼の正常眼圧白色ウサ

ギにおけるぶどう膜強膜流量に対する影

ウサギ (麻酔下)

点眼 興和株式会社 010 !4.2.1.2-2

K-115 点眼液の正常白色ウサギにおける房

水産生量に対する作用 ウサギ

(麻酔下) 点眼

322 !4.2.1.2-3

血液房水柵機能に対する作用 K-115 点眼液の有色ウサギにおける血液房

水柵に対する作用 ウサギ

(無麻酔) 点眼 興和株式会社 005 !4.2.1.2-4

代謝物の薬理作用 K-115 及び K-115 代謝物の酵素阻害プロフ

ァイルの検討 組換えヒト酵素 in vitro 興和株式会社 026 !4.2.1.1-1

正常眼圧ウサギにおける K-115 主代謝物

(1-OH-K-115)単回点眼による眼圧下降作用

の検討

ウサギ (無麻酔)

点眼 興和株式会社 078 !4.2.1.2 -5

Page 37: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

5

2.6.3.1 薬理試験: 一覧表(続き)

試験項目 試験系 投与方法 実施施設 報告書番号 記載箇所 安全性薬理試験 H-4 Irwin dose range in rats including body temperature and locomotor assessment (oral administration)

ラット (無麻酔)

経口投与

057 2738

!4.2.1.3-1

H-4 Evaluation of respiratory parameters in the conscious rat using whole body bias flow plethysmography (oral administration)

ラット (無麻酔)

経口投与

059 2792

!4.2.1.3-2

H-4 Evaluation of cardiovascular effects in the conscious telemetered beagle dog (capsule administration)

イヌ (無麻酔)

経口投与

058 2921

!4.2.1.3-3

Effects of H-4 on the action potential parameters in isolated rabbit Purkinje fibres

ウサギ摘出 プルキンエ線維

in vitro

060 3234

!4.2.1.3-4

H-4 Effects on cloned hERG channel current recorded from stably transfected HEK-293 cells

組換えヒト受容体 (HEK-293 細胞)

in vitro

061 3185

!4.2.1.3-5

H-4 Validation of analytical procedures to support electrophysiology studies

測定バリデーション in vitro

062 2991

!4.2.1.3-6

Page 38: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

6

2.6.3.2 効力を裏付ける試験 試験項目 試験系 薬物,濃度 1),用量 1),投与経路 試験成績 記載箇所

酵素阻害作用および受容体親和性 酵素阻害作用 (in vitro)

ROCK-1 組換えヒト酵素

ROCK-2

組換えヒト酵素

PKACα 組換えヒト酵素

PKC

ラット脳由来酵素

CaMK2α 組換えヒト酵素

リパスジル塩酸塩水和物

Y-27632 HA-1077

リパスジル塩酸塩水和物 Y-27632 HA-1077

リパスジル塩酸塩水和物 Y-27632 HA-1077

リパスジル塩酸塩水和物 Y-27632 HA-1077

リパスジル塩酸塩水和物 Y-27632 HA-1077

IC50 (95%信頼区間) [µmol/L] [n=3] 0.051,(0.041-0.064) 0.11,(0.088-0.15) 0.29,(0.24-0.34) 0.019,(0.017-0.021) 0.17,(0.10-0.28) 0.35,(0.21-0.62) 2.1,(1.9-2.4) 50,(38-70) 1.1,(0.99-1.3) 27,(23-33) 32,(25-43) 17,(14-22) 0.37,(0.30-0.47) 8.1,(3.9-19) 2.9,(1.3-6.4)

!4.2.1.1-1

(in vitro) 組換えヒト酵素

ROCK-1 ROCK-2

リパスジル塩酸塩水和物

Ki [µmol/L] [n=3] 0.023 0.037

!4.2.1.1-2

1)リパスジルとして

Page 39: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

7

2.6.3.2 効力を裏付ける試験 (続き)

試験項目 試験系 薬物,濃度 1),用量 1),投与経路 試験成績 記載箇所 各種受容体,チャネル

に対する親和性 α1受容体 α2受容体 β1 受容体

β2 受容体

β3 受容体

AT1受容体

AT2受容体

ETA受容体

ETB受容体

AMPA 受容体 kainate 受容体 NMDA 受容体

H1 受容体

H2 受容体

(in vitro)

ラット大脳皮質膜画分

ラット大脳皮質膜画分

組換えヒト受容体 (HEK-293 細胞)

組換えヒト受容体 (CHO 細胞)

SK-N-MC 細胞 組換えヒト受容体

(HEK-293 細胞) 組換えヒト受容体

(CHO 細胞) 組換えヒト受容体

(CHO 細胞) 組換えヒト受容体

(CHO 細胞) ラット大脳皮質膜画分

ラット大脳皮質膜画分

ラット大脳皮質膜画分

組換えヒト受容体 (HEK-293 細胞)

組換えヒト受容体 (CHO 細胞)

リパスジル塩酸塩水和物 1µmol/L(放射性リガンド)

([3H]prazosin) ([3H]RX 821002)

([3H](-)CGP 12177)

([3H](-)CGP 12177)

([125I]CYP + 1µmol/L (-)propranolol)([125I][Sar1, Ile8]-AT-II)

([125I]CGP 42112A)

([125I]endothelin-1)

([125I]endothelin-1)

([3H]AMPA)

([3H]kainic acid) ([3H]CGP 39653) ([3H]pyrilamine)

([125I]Aminopotentidine)

リガンド結合阻害率 (%) [n=2]

-1 -22 12

2

-16 -9

-8

4

-16

-6 31 -4 6

-3

!4.2.1.1-3 参考資料

1)リパスジルとして

Page 40: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

8

2.6.3.2 効力を裏付ける試験 (続き) 試験項目 試験系 薬物,濃度 1),用量 1),投与経路 試験成績 記載箇所

各種受容体,チャネル

に対する親和性 M 受容体

EP1 受容体

EP2 受容体

EP4 受容体

FP 受容体

TP 受容体

IP (PGI2) 受容体

5-HT 受容体 Ca2+チャネル

(L, dihydropyridine site) Ca2+チャネル

(L, diltiazem site) Ca2+チャネル

(L, verapamil site) Ca2+チャネル

(N)

(in vitro)

ラット大脳皮質膜画分

組換えヒト受容体 (HEK-293 細胞)

組換えヒト受容体 (HEK-293 細胞)

組換えヒト受容体 (CHO 細胞)

組換えヒト受容体 (HEK-293 細胞)

組換えヒト受容体 (HEK-293 細胞)

組換えヒト受容体 (HEK-293 細胞)

ラット大脳皮質膜画分

ラット大脳皮質膜画分

ラット大脳皮質膜画分

ラット大脳皮質膜画分

ラット大脳皮質膜画分

リパスジル塩酸塩水和物 1µmol/L(放射性リガンド)

([3H]3-Quinuclidinyl benzilate) ([3H]PGE2)

([3H]PGE2)

([3H]PGE2)

([3H]PGF2α)

([3H]SQ 29548)

([3H]iloprost)

([3H]serotonin)

([3H](+)PN 200-110)

([3H]diltiazem)

([3H](-)D 888)

([125I]ω-conotoxin GVIA)

リガンド結合阻害率 (%) [n=2]

-1 -1

-2

-4

-4

-10

-5

-6 -1

-22

0

-16

!4.2.1.1-3 参考資料

1)リパスジルとして

Page 41: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

9

2.6.3.2 効力を裏付ける試験 (続き) 試験項目 試験系 薬物,濃度 1),用量 1),投与経路 試験成績 記載箇所

各種受容体,チャネル

に対する親和性 KATPチャネル

KVチャネル SKCaチャネル

(in vitro)

ラット大脳皮質膜画分

ラット大脳皮質膜画分

ラット大脳皮質膜画分

リパスジル塩酸塩水和物 1µmol/L(放射性リガンド) ([3H]glibenclamide) ([125I]α-dendrotoxin)

([125I]apamin)

リガンド結合阻害率 (%) [n=2]

-9 4 -7

!4.2.1.1-3 参考資料

酵素に対する阻害作用

炭酸脱水酵素 CAII HMG-CoA 還元酵素

(in vitro)

ヒト赤血球 組換えハムスター酵素

リパスジル塩酸塩水和物 1µmol/L(基質)

(4-nitrophenyl acetate) (HMG-CoA)

酵素阻害率 (%) [n=2]

-2 -3

!4.2.1.1-3 参考資料

眼圧下降作用 正常眼圧白色ウサギに

おける単回点眼による

眼圧下降作用の検討

ウサギ (無麻酔)

リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.0625%,0.125%,0.25%,0.5%50µL 単回点眼

リパスジル塩酸塩水和物点眼液は

0.0625%以上の濃度で眼圧下降作

用を示し,最大対比法で有意な濃

度依存性を示した[n=10]

!4.2.1.1-4

正常眼圧白色ウサギに

おける反復点眼による

眼圧下降作用の検討

ウサギ (無麻酔)

リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.5%,1.0% 50µL1 日 2 回 7 日間反復点眼

リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.5%及び 1.0%は初回点眼後と 7日間点眼後で同様の眼圧推移を示し

た[n=8]

!4.2.1.1-5

高眼圧白色ウサギにお

ける単回点眼による眼

圧下降作用の検討

ウサギ カルボキシビニルポ

リマー高眼圧モデル (無麻酔)

リパスジル塩酸塩水和物点眼液 0.4% 50µL 単回点眼

リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4%は基剤と比較して点眼 1 時間

後から 4 時間後まで有意な眼圧下

降作用を示した[n=11-12]

!4.2.1.1-6

1)リパスジルとして

Page 42: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

10

2.6.3.2 効力を裏付ける試験 (続き) 試験項目 試験系 薬物,濃度 1),用量 1),投与経路 試験成績 記載箇所

正常眼圧サルにおける

単回点眼による眼圧下

降作用の検討

カニクイザル (無麻酔)

リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.1%,0.2%,0.4% ラタノプロスト点眼液 0.005% 20µL 単回点眼

リパスジル塩酸塩水和物点眼液は

点眼 2 時間後,ラタノプロスト点

眼液は点眼 4 時間後に最大眼圧下

降作用を認めた。リパスジル塩酸

塩水和物点眼液の最大眼圧下降作

用は 0.1 %でラタノプロスト

0.005%とほぼ同等であり,0.4%で

ラタノプロストより強かった [n=8]

!4.2.1.1-7

正常眼圧サルにおける

ラタノプロストとの併

用投与による眼圧下降

作用の検討

カニクイザル (無麻酔)

リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4% 20µL 単回点眼 ラタノプロスト点眼液 0.005%単

独 20µL 単回点眼 リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4% 20µL とラタノプロスト点眼

液 0.005% 20µL の併用点眼

リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4% とラタノプロスト点眼液

0.005%の併用投与群では,各単独

投与の眼圧下降が相加的に見ら

れ,全ての時点においてラタノプ

ロスト点眼液0.005%と比べ有意に

強い眼圧下降作用を示した [n=5]

!4.2.1.1-8

正常眼圧白色ウサギに

おけるニプラジロール

との併用投与による眼

圧下降作用の検討

ウサギ (無麻酔)

リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4% 50µL 単回点眼 ニプラジロール点眼液 0.25% 50µL 単回点眼 リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4% 50µL とニプラジロール点眼

液 0.25% 50µL の併用点眼

リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4% とニプラジロール点眼液

0.25%の併用投与により各単独投

与で認められた眼圧下降作用が相

加的に見られた [n=9]

!4.2.1.1-9

1)リパスジルとして

Page 43: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

11

2.6.3.2 効力を裏付ける試験 (続き) 試験項目 試験系 薬物,濃度 1),用量 1),投与経路 試験成績 記載箇所

正常眼圧白色ウサギに

おける炭酸脱水酵素阻

害薬との併用投与によ

る眼圧下降作用の検討

ウサギ (無麻酔)

リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4% 50µL 単回点眼 ブリンゾラミド点眼液 1% 50µL単回点眼 リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4% 50µL とブリンゾラミド点眼

液 1% 50µL の併用点眼

リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4%とブリンゾラミド点眼液 1%の併用投与群はブリンゾラミド点

眼液単独投与と比較して点眼 0.5,1,2,3 及び 5 時間後に,リパス

ジル塩酸塩水和物点眼液単独投与

と比較して点眼 2,3,4 及び 5 時

間後にそれぞれ有意な眼圧下降作

用を示した [n=10]

!4.2.1.1-10

1)リパスジルとして

Page 44: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

12

2.6.3.3 副次的薬理試験 試験項目 試験系 薬物,濃度 1),用量 1),投与経路 試験成績 記載箇所

房水流出率 ウサギ (麻酔下)

リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4%50µL 単回点眼 リパスジル塩酸塩水和物は基剤投

与群と比較して有意な眼圧下降作

用および房水流出率の増加を示し

た[n=7-8]

!4.2.1.2-1

ぶどう膜強膜流量 ウサギ (麻酔下)

リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4%50µL 単回点眼 リパスジル塩酸塩水和物は基剤投

与群と比較して有意な眼圧下降作

用を示したが,ぶどう膜強膜流量

に対して影響を及ぼさなかった

[n=6]

!4.2.1.2-2

房水流量 ウサギ (麻酔下)

リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4%50µL 単回点眼 リパスジル塩酸塩水和物は房水流

量に作用しないことが明らかとな

かった[n=6]

!4.2.1.2-3

血液房水柵機能に対す

る作用 有色ウサギ

(無麻酔) リパスジル塩酸塩水和物点眼液

1.0%50µL の 30 分毎 4 回点眼 リパスジル塩酸塩水和物は前房中

蛋白濃度および前房中細胞数に影

響を及ぼさなかった[n=5]

!4.2.1.2-4

代謝物の酵素阻害作用 (in vitro) ROCK-1

組換えヒト酵素

ROCK-2 組換えヒト酵素

リパスジル塩酸塩水和物

M1 M2 M6

リパスジル塩酸塩水和物 M1 M2 M6

IC50 (95%信頼区間) [µmol/L] [n=3] 0.051,(0.041-0.064) 0.32,(0.28-0.36) 1.4,(1.2-1.7) 20,(17-23) 0.019,(0.017-0.021) 0.17,(0.14-0.19) 0.47,(0.34-0.66) 7.1,(5.1-10)

!4.2.1.1-1

1)リパスジルとして

Page 45: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

13

2.6.3.3 副次的薬理試験(続き)

試験項目 試験系 薬物,濃度 1),用量 1),投与経路 試験成績 記載箇所 代謝物の眼圧下降作用 ウサギ

(無麻酔) リパスジル塩酸塩水和物点眼液

0.4%50µL 単回点眼 M1 点眼液 0.4%50µL 単回点眼

M1 点眼液 0.4% の眼圧下降作用

は点眼後 2 時間においてピークと

なり,最大の眼圧下降作用はリパ

スジル塩酸塩水和物点眼液0.4%の

約 1/3 であった[n=6]

!4.2.1.2-5

1)リパスジルとして

Page 46: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

14

2.6.3.4 安全性薬理試験 概要文中(!表 2.6.2.4-1)に記載した。

Page 47: グラナテック点眼液0.4%...2.6.1 緒言 1 グラナテック点眼液0.4% 第2部(モジュール2) CTDの概要(サマリー) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表2.6.1

2.6.3 薬理試験概要表

15

2.6.3.5 薬力学的薬物相互作用試験 該当無し。