エネルギーデバイス～きほんの、き!!～

高松赤十字病院 研修医

原田 賢

エネルギーデバイスって

バイポーラー？

モノポーラー？

電気メス？LigaSure？

切開？凝固？

CUT

COAG

本日の内容

・エネルギーデバイスの種類

・電気メスの基本と原理

・有害事象の発生メカニズム

エネルギーデバイスの種類

・モノポーラシステム

・バイポーラシステム

・ベッセルシーリングシステム

・超音波凝固切開装置

・レーザー機器

等々

ベッセルシーリングシステム

・バイポーラの止血機能を利用して熱による組織融合を

行って血管をシールするシステム。

・外見上では確認できない範囲にまで熱による損傷が及

んでいるので5mm以上の十分なマージンを確認しながら

使用。

・COVIDIEN社のLigaSureやETHICON社のENSEALな

ど。

超音波凝固切開装置

・ジョンソン・エンド・ジョンソン社のハーモニックスカルペル

やオリンパス社のソノサージなど。

・原理はアクティブブレードを1秒間に50,000回振動させ、

摩擦熱による蛋白質変性を引き起こし、凝固を行うと同時

に摩擦の力で組織の切開を行う。

・先端は200℃近くまで上昇。組織障害に注意。

レーザー機器

・美容形成外科、皮膚科や眼科でよく見るあれです。

本日の内容

・エネルギーデバイスの種類

・電気メスの基本と原理

・有害事象の発生メカニズム

電気メスとは

・JIS規格では“高周波電流よって生体組織を切開または

凝固を行うために外科手術に使用する医用電気機器。そ

の関連する附属品も含む。電気手術器は、電気メスともい

う。”と規定されている。

・脳外科医H.Cushingが1926年に電気工学者

W.T.Bovieが開発した“電気メス”を初めて臨床応用し、脳

腫瘍の手術に使用。

利点

・生体組織の出血を抑えつつ切開可能

・切開と凝固がスイッチ一つで切り替え可能

・生体組織の壊死層が比較的薄く、治癒性が高い

・比較的熟練を要さず取り扱い可能

・特別な設備も不必要

・装置の構造は単純で廉価

・・・・

原理と構成

・電気メスはモノポーラー

・対極板を使用するため、広義ではバイポーラーとも

・大腿部、腰部、腹部、上腕部などなどが一般的

・交流電流による持続的極性変化

・細胞内イオン変動

・摩擦エネルギーによる細胞内温度の上昇

・蒸散、凝固・乾燥、フルグレーションなどの組織効果

・周波数を上げすぎると、表皮効果は薄まり、深部組

織への到達ができなくなる

細胞内温度と組織変化

・50~60℃ 緩徐な細胞死

・60~90℃ 瞬時の細胞死、乾燥&白色凝固

・100℃～ 細胞の気化

・200℃～ 細胞の炭化、黒色凝固

いかに黒色凝固を防ぎつつ、

理想的な白色凝固を

生じさせられるかが鍵

電気密度の話

・重要なのは電気密度

・実際の臨床では電気メスの先端を使用するか、

腹を押し当てるかで組織効果に大きな差が出てくる

I：電流、A：面積、R：組織抵抗、T：通電時間

I/A：電流密度

切開モードと凝固モード

・エレクトロサージカルユニットにより商用電源の周波数か

ら高周波数へ変換

・違いはデューティーサｲクルと電圧

切開 凝固 ブレンド

組織を切る

・組織の切開は電気メス先端を直線的に動かしながら

切開モードで通電することで起こる。

・連続的な細胞レベルの気化を起こし、組織が切れたよう

に見える。

理想的な凝固

切開凝固

周辺組織への影響

・電圧が高いほど電気メス先端から離れた場所に組織反

応が及ぶ。

・周囲組織の熱変性は

切開モード < 凝固モード

・電流密度と通電時間を意識して最適な組織効果を。

本日の内容

・エネルギーデバイスの種類

・電気メスの基本と原理

・有害事象の発生メカニズム

エネルギーデバイス関連有害事象

・対極板に関連するもの

・直接結合によるもの

・絶縁不良によるもの

・容量性結合によるもの

・その他

・対極板に関連するもの

☞貼付部位の間違い、不完全な貼付

・直接結合によるもの

☞止血のために鉗子に通電している時に鉗子が皮膚に

接することや、開創器などを通して目的外組織への通電、

外科医への熱傷

・絶縁不良によるもの

☞絶縁部の損傷は小さいほど重症化

点検には目視以外に専用検知器の使用を推奨

・容量性結合によるもの

☞2つの導電体の間に絶縁体が挟まれた状態で交流電

流が流れると電磁場が発生し、意図しない場所にとこ

ろに電気が流れる。

・その他

☞電気メスと対極板の間に電流密度の高くなる部分を作

らない（癒着、結紮部など）、

デバイスの先の熱による組織の損傷

FUSEって

Fundamental Use of Surgical Energy

米国消化器内視鏡外科学会(SAGES)によって開発

されたエネルギーデバイスの基礎から医療事故の起こるメカニズムまでを学ぶことがでる公式プログラム

FUSEのプログラム内容

１、エネルギーデバイスの基本原理

２、有害事象の発生メカニズムとそ

の予防方法

３、モノポーラデバイス

４、バイポーラデバイス

５、アブレーション

６、軟性内視鏡デバイス

７、超音波エネルギーデバイス

８、マイクロウェーブ

９小児におけるエネルギーデバイス

使用における留意点

１０、他の医療機器との併用

（埋込型デバイスとの電磁干渉など）

FUSEは手術用、内視鏡用エネルギーデバイスの概要を網羅しています。

TAKE HOME MESSAGE

・電気メスはとても便利。

だけど使い方を間違えると危ない。

・切開も止血も基本はCUT（切開）で。

参考・電気メスQ＆A「より安全にお使い頂くために」 日本メディカルネクスト株式会社

・臨床外科 第72巻第5号 渡邊祐介 他、高周波手術装置（電気メス）の原理と有害事象

・Clinival Engineering vol.25 No.1 2014 小野哲章、電気メス入門-原理から学ぶ電気メスの問題点-

・臨床泌尿器科 61巻9号 近藤幸尋 他、モノポーラ型電気メスおよびバイポーラ型電気メス

・外科 Vol.79 No.12 小山勇、電気メスの特性と正しい安全な使用法

・外科 Vol.79 No.12 中島亮 他、超音波凝固切開装置の特性と正しい使用方法

・産婦人科手術スタンダンード 日本産婦人科手術学会 編

・ELECTROSURGERY 渡邊祐介 他

・The SAGES Manual on the Fundamental Use of Surgical Energy (FUSE)、Liane Feldman et al