モバイルセンシングによる ストレス検知技術 - fujitsu...fujitsu. 64, 5( 09,...

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FUJITSU. 64, 5, p. 547-556 09, 2013547 あらまし 現代はストレス社会と言われ,多くの人が日々様々なストレスにさらされながら生活して いる。健康な生活を送るためには,このストレスを適切にマネジメントすることが必要であり, ITによってこれを支援することが期待されている。2013年,スマートフォンやタブレットの 全世界のインストールベースはデスクトップやラップトップを超え,次のコンピューティング 革命(ヒューマンセントリックコンピューティング)が既に普及し始めている。このコンピュー ティングにおける変化は,身の回りに置いたり,体に装着したり体内に埋め込んだりできる センサーの出現によって可能になっている。これにより,ストレスマネジメントのための生体 情報の連続的なモニタリングも実現できる。このような,ネットワークに接続されたセンサー を利用したインテリジェントなヒューマンセントリックサービスを実現するには,基礎を成す ITインフラそのものの高度化が必要である。 本稿では,米国富士通研究所が開発した連続的なモバイルモニタリングを可能にするため の汎用モバイルプラットフォームの概要を説明し,更にそのプラットフォーム上に構築され た様々な新しいサービスについて説明する。このプラットフォームは次世代ヘルスケアサー ビスを念頭に開発したものであるが,任意のセンサーから得られたデータを取り入れるリア ルタイムサービスを実現するためのプラットフォームとして幅広い適用可能性を備えている。 更に,ユーザーとITインフラの間の新しい接点となるサービスをいくつか取り上げる。この ようなサービスを一日の生活の中で利用する様子を紹介し,サービスが我々の生活の質のレ ベルをどのように向上させるか解説する。 Abstract Advances in ICT are expected to help people lead a healthy life amidst the many stressors present in todays fast-paced society. As smartphones and tablets surpass desktops and laptops globally in 2013, the next computing revolutionhuman-centric computinghas already taken root. This shift in computing is made possible by the increasing ubiquity of sensors that are around us, on us, and even in us. Deploying intelligent, human-centric services using these connected sensors requires advancements in the underlying IT infrastructure itself. In this paper, we describe various novel services built atop a general-purpose mobile platform developed by Fujitsu Laboratories of America, Inc. for continuous mobile monitoring. Our platform was developed with next-generation healthcare services in mind, but has applicability more broadly as an extensible platform for deploying real-time services that incorporate data from arbitrary sensors. We provide an overview of our platform, and highlight a few services that act as new points of contact between a user and the IT infrastructure. In the domain of health and wellness, we show how continuous bio-monitoring allows us to measure stress and enable stress management services. We describe how such services may be used in a typical day, contributing to a new and improved quality of life. Ajay Chander Albert Braun Rajalakshmi Balakrishnan Alex Gilman Stergios Stergiou Dave Marvit モバイルセンシングによる ストレス検知技術 Applications of a Mobile Platform for Real-Time Continuous Monitoring

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Page 1: モバイルセンシングによる ストレス検知技術 - Fujitsu...FUJITSU. 64, 5( 09, 2013) 549 モバイルセンシングによるストレス検知技術 ンサーにも対応する。アナログポートは呼吸セン

FUJITSU. 64, 5, p. 547-556 (09, 2013) 547

あ ら ま し

現代はストレス社会と言われ,多くの人が日々様々なストレスにさらされながら生活している。健康な生活を送るためには,このストレスを適切にマネジメントすることが必要であり,ITによってこれを支援することが期待されている。2013年,スマートフォンやタブレットの全世界のインストールベースはデスクトップやラップトップを超え,次のコンピューティング革命(ヒューマンセントリックコンピューティング)が既に普及し始めている。このコンピューティングにおける変化は,身の回りに置いたり,体に装着したり体内に埋め込んだりできるセンサーの出現によって可能になっている。これにより,ストレスマネジメントのための生体情報の連続的なモニタリングも実現できる。このような,ネットワークに接続されたセンサーを利用したインテリジェントなヒューマンセントリックサービスを実現するには,基礎を成すITインフラそのものの高度化が必要である。本稿では,米国富士通研究所が開発した連続的なモバイルモニタリングを可能にするため

の汎用モバイルプラットフォームの概要を説明し,更にそのプラットフォーム上に構築された様々な新しいサービスについて説明する。このプラットフォームは次世代ヘルスケアサービスを念頭に開発したものであるが,任意のセンサーから得られたデータを取り入れるリアルタイムサービスを実現するためのプラットフォームとして幅広い適用可能性を備えている。更に,ユーザーとITインフラの間の新しい接点となるサービスをいくつか取り上げる。このようなサービスを一日の生活の中で利用する様子を紹介し,サービスが我々の生活の質のレベルをどのように向上させるか解説する。

AbstractAdvances in ICT are expected to help people lead a healthy life amidst the many stressors

present in today’s fast-paced society. As smartphones and tablets surpass desktops and laptops globally in 2013, the next computing revolution̶human-centric computing̶has already taken root. This shift in computing is made possible by the increasing ubiquity of sensors that are around us, on us, and even in us. Deploying intelligent, human-centric services using these connected sensors requires advancements in the underlying IT infrastructure itself. In this paper, we describe various novel services built atop a general-purpose mobile platform developed by Fujitsu Laboratories of America, Inc. for continuous mobile monitoring. Our platform was developed with next-generation healthcare services in mind, but has applicability more broadly as an extensible platform for deploying real-time services that incorporate data from arbitrary sensors. We provide an overview of our platform, and highlight a few services that act as new points of contact between a user and the IT infrastructure. In the domain of health and wellness, we show how continuous bio-monitoring allows us to measure stress and enable stress management services. We describe how such services may be used in a typical day, contributing to a new and improved quality of life.

● Ajay Chander   ● Albert Braun   ● Rajalakshmi Balakrishnan   ● Alex Gilman   ● Stergios Stergiou   ● Dave Marvit

モバイルセンシングによるストレス検知技術

Applications of a Mobile Platform for Real-Time Continuous Monitoring

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モバイルセンシングによるストレス検知技術

日中は,デスクトップのアプリケーションにより,関心のあるバイオマーカーが連続的に表示される。表示はカスタマイズ可能である。そのアプリケーションは胸のパッチによって計算された姿勢を継続的に監視し,アドバイスを行う。このアプリケーションにより,体の状態とタスクリストを比較しながら,当日のスケジュールを決めてこなしていくことができる。スマートフォンの服薬厳守アプリケーションは,胸のパッチのデータを利用し,薬の飲み忘れによる異常を検出し,服薬計画に従うよう促す。生産的な一日が終わって家路に就く際,スマートフォンと胸のパッチが連動して機能し,最もストレスの少ない帰宅方法を指示する。夜は,睡眠管理アプリケーションが,十分な睡眠時間を確保するよう促す。アプリケーションは,睡眠が翌日のストレスに対して及ぼす影響を追跡記録しており,翌日の予測仕事量に基づいて提案を行う。健康的な生活のために一日中受けたガイダンスに心の中で感謝して床に就く。上記のシナリオは,ユビキタスコンピューティングの研究者がずいぶん前から仮定しているものである。(2)-(8)装着可能なユビキタスセンシングは,まずスマートフォン内蔵センサーによって手ごろに利用できるようになり,その傾向は,ムーアの法則のようにどんどん小型化,低価格化が進むという意見もある。(9)この低価格化傾向を活用した様々なモバイルセンサーと,各センサーに対応して構築されたサービスが様々な領域で導入され始めている。(10)-(13)このようなサービスは,市場がセンサー中心サービスを受け入れる態勢ができていることを立証したが,相互にデータを共有してより豊富で革新的なサービスを構築することはできていない。例えば糖尿病患者の場合,インシュリンレベルを最適に維持するべく活動を調節するためには,歩数計と血糖値計を定期的に使用し,各センサーによって収集されたデータを手動で相互に関連付ける必要がある。センサー間データ共有の問題を解決するプラットフォームがいくつか登場しているが,リアルタイムデータ収集と連続データストリーム同期に対応しておらず,複数センサーのデータにリアルタイムでアクセスすることができない。(14),(15)

ま え が き

近年,各種の生体信号計測用センサーが小型化し,安価になっている。また,近い将来には,センサーを身に着けたり,更には体内に埋め込んだりすることも一般になると予想される。そこで,米国富士通研究所では,異種センサーデータストリームの収集や調整を容易にするプラットフォームを開発した。このプラットフォームは,センサーストリームの連続的な保存,分析,視覚化を実現するものである。本稿ではこのプラットフォームの概要を説明し,ユーザーとITインフラの間の新しい接点となるサービスをいくつか取り上げる。このようなサービスを一日の生活の中で利用する様子を紹介し,サービスが我々の生活の質のレベルをどのように向上させるか解説する。

研究開発の目的

未来のある日を想像してみてほしい。シャワーを浴びてすっきりした後,いつものように,ネットワークに接続された体組成計に乗る。これで自動的に様々な体のデータが記録され,直ちにクラウドベースの電子カルテに送信される。出掛けるために服を着るとき,絆

ばん

創そう

膏こう

サイズの小さなパッチを胸に貼る。これで日中の心臓活動そのほかの生体データが連続して記録される。(1)このようなセンサーの装着は,既に靴下を履くのと同じように習慣になっている。スマートフォンを手に取り,通勤のために駅に向かう。スマートフォンは胸のパッチに接続され,連続心電図(ECG)信号をパッチから受信する。スマートフォンのリアルタイムアプリケーションがECG信号を処理してリアルタイムの精神生理学的ストレスを計算する。同じスマートフォンが,通常行っている電話やテキスト,電子メールそのほかの通信に対応するだけでなく,場所を常時把握する。電話の着信があると,電話アプリケーションによって現在のストレスを認識でき,電話を受ける心構えをするか,電話に出ない判断を下せる。また,スマートフォンのラジオアプリは,現在の体の状態に最適なコンテンツをダイナミックに選択するように設定してある。気分も爽やかな,その日の仕事に対する備えができた状態で職場に到着する。

ま え が き

研究開発の目的

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モバイルセンシングによるストレス検知技術

ンサーにも対応する。アナログポートは呼吸センサー接続用に設計したものであるが,これをほかの装着可能センサーと組み合わせると,睡眠時無呼吸などの病状の遠隔診断も可能になる。(20)現行のSproutはサイズが70×55 mmで,10 Whの円筒型バッテリーを格納する。ハードウェアプラットフォームを独自に構築した理由は,一つはモバイルプラットフォームに制約があるからである。複数のセンサーデータストリームのリアルタイム保存に対応するには専用のカスタムバックエンドを構築する必要があるが,モバイルデバイスで使用可能なアプリケーションプラットフォームの一部では,その構築が制約されている。次に,プラットフォームからデータをSprout外のデータ視覚化クライアントに配信するためにサポートする必要のあった特定のネットワークモードに対してサポートがないことも理由である。更に,汎用モバイルデバイスのバッテリー駆動時間も制約となる。専用ハードウェアを作成することで,Sproutによるセンサーからのデータ収集やクライアントへのデータ配信のためにバッテリー駆動時間を延ばすことができた。センサーの進化は,BLE(Bluetooth Low Energy)などのプロトコルによる収集データ無線送信の対応の幅を広げた。(21)したがって,Sproutハードウェアの次のバージョンでは,USBポートを完全になくし,BLE対応とすることにした。● ソフトウェア

SproutソフトウェアスタックはLinuxベースで構築した。現行バージョンはLinux 3.0による。カスタムバックエンドにより,連続センサーデータ

センサーが小型化し,安価になるに従って,個人に関するデータの計測が簡単になり,普及する。センサーを身の回りに置いたり,体に装着したり,また体内に埋め込んだりすることも一般的になる。(16)-(19)本稿では,異種センサーデータストリームの収集や調整を容易にするプラットフォームの概要を示し,そのプラットフォームをベースに構築された,冒頭の「ある一日の生活」に出てきたアプリケーションの一部について説明する。今回開発したプラットフォームは,センサーストリームの連続的なリアルタイムの保存,分析,視覚化を実現する。センサーストリームの一般抽象化が可能で,互換性のある無線プロトコルで通信する任意のセンサーを接続でき,全ての接続センサーからのデータを時間的に同期させる。このプラットフォームはモバイルでポケットサイズになるよう設計し,小さくて良いものから優れたものが育つという格言からSprout(新芽)と名付けた。以下,本稿の構成として,次章でこのプラットフォームの機能を詳述する。その後の各章では,プラットフォームに基づいて構築した各アプリケーションと,それに対応するユーザーの経験について説明する。最後に,このプラットフォームによって可能になったパラダイムシフトを取り上げる。更に,今後の研究についても概説する。

Sproutプラットフォーム

Sproutプラットフォームは,異種データストリームのモバイルでリアルタイムな収集,分析,保存を支援するハードウェアとソフトウェアの組合せである。ハードウェアプロトタイプの現行バージョンを図-1に示す。● ハードウェア

Sproutハードウェアの現行バージョンは,600 MHzのARM CortexTM-A8 CPUと512 MバイトのRAMによるものである。ソフトウェアスタック全体がSDカードから実行され,センサーデータも全てこのSDカードに保存される。SproutはBluetooth 2.1,802.11g Wi-Fi,テキサス・インスツルメンツのローパワー SimpliciTI RFをサポートする。無線プロトコルに対応するため,互換性のある無線センサーが接続可能である。またSproutはUSB 2.0ポート三つとアナログポート一つを備えており,有線セ

Sproutプラットフォーム

図-1 Sproutプラットフォーム

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モバイルセンシングによるストレス検知技術

ストリーム保存と,Sproutクロックを使用したセンサー間同期に対応する。アプリケーションプラットフォームとしては,Sproutはセンサーストリームの一般抽象化をサポートし,これで新しいハードウェアまたはソフトウェアのセンサーのデータを簡単に取り入れられる。また,アプリケーション作成者にAPIを提供するため,保存された複数センサーのデータストリームにリアルタイムでアクセスできる。保存データストリームを入力として使用し,出力となるデータストリームを新たに作成するアプリケーションは,システムからは「メタセンサー」とみなされる。すなわち,アプリケーションの出力データストリームは,ほかのアプリケーションからはまた別のセンサーストリームと認識される。このモジュール式のアーキテクチャーにより,複数センサーデータに基づくサービスを容易に開発できる。一般的なAPIを越えて,Sproutデータにリアルタイムでアクセスし,視覚化しようとするWebベースのアプリケーションに対しては,特別なサポートを提供する。SproutではApache Webサーバが稼働しており,このような要求にリアルタイムに応えられるようになっている。SproutデータへのWebインターフェースを使用した様々なWebベースのカスタム視覚化手法を構築した。その一つについては「連続日中モニタリングとガイダンス」の章で説明する。最後になるが,Sproutは,バイオデータとクラウドベースの電子カルテ(EMR:Electronic Medical Record)の同期など,リアルタイムクラウド同期に対応している。

リアルタイム遠隔モニタリング

Sproutは様々なセンサーと通信可能であり,リアルタイムクラウド機能を備えているため,リモートモニタリングアプリケーションに使用することは容易である。Sproutをデータ収集,保存,転送のためのデバイスとしてクラウドベースの個人健康記録(PHR:Personal Health Record)システムに組み込んだ。このPHRは,米国イリノイ州の病院Springfi eld Clinicの子会社であるJardogs Inc.が開発し,保守しているものである。PHRは様々なEMRと接続されており,これで病院のケア

リアルタイム遠隔モニタリング

チームは患者データにアクセスできる。これは,Sproutで使用できるPHRのほんの一例である。柔軟性の高いSproutプラッフォームにより,ほかのクラウドベースのPHRやEMRにデータを送信することも可能になる。このシステムを9人のユーザーにより3週間にわたってテストした。ユーザーは全員PHRアカウントを持っており,体重(朝と夜に1回ずつ),血圧(一日3回),パルス酸素濃度計の3分間の指示値を毎日測定するように指示を受けた。(22)ユーザー全員にそれぞれのセンサーのセット(血圧測定用カフ,体重計,パルス酸素濃度計)を事前に設定したSprout一式を渡した。

図-2に示すように,体重計に乗るだけで指示値が自動的にSproutに送られ,そこからクラウドベースのPHRに転送されるようになっている。クラウドベースのPHRには,Webベースのインターフェースを通じてユーザー自身またはユーザーのケアチームがアクセスできる。ユーザーは,この技術によって得られた,自分の健康の新しい視点に関しておおむね肯定的であった。予想どおり,生体信号記録が非常に簡単にできるため,ユーザーの健康状態への意識が高まった。行動の変化を促した例もあった。以下はユーザーのコメントである。・ 「担当医師への健康状態のセルフレポートに是非

Sproutを使いたいと思う。」・ 「収集データによって,カフェインが心拍数に及ぼす影響が分かりやすくなった。」

・ 「Sproutで日々測定することにより,血圧が高く,このままでは健康が低下し続けるとはっきり認識せざるを得なかった。Sproutによるモニタリングが始まってから,血圧を抑制するため,より健康的な食べ物を選ぶようになり,毎日エクササイズをするようになった。」また,このテスト配備のユーザーフィードバックにより新しい機能や改善点が示され,それを最新のSproutハードウェアとソフトウェアに盛り込んでいるところである。(23)

リアルタイムストレス分析

前章で述べたとおり,Sproutは保存と転送のためのプラットフォームとして使用できるが,根

リアルタイムストレス分析

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モバイルセンシングによるストレス検知技術

時間差のシーケンスである。(25)したがってこのデータストリームにより,ストレスの様々なアルゴリズムモデルに入力として使用できる心拍間隔ストリームが得られる。今回はまず,様々な既存の時間領域や周波数領域のアルゴリズムをSproutプラットフォームに実装した。現行のハードウェアでは,これらはSproutのバックエンドデータアクセスとストレージAPIを利用するCプログラムとして実行される。しかし,既存のHRV測定方法では,移動環境で発生するノイズの影響を受けやすく,また糖尿病,高血圧,心疾患など,異なる病態を持つ人の場合はうまく機能しないことが分かっている。今回の研究では,既存HRV測定方法の制約を踏まえ,独自にHRV測定方法を設計した。このHRV測定方法については本稿では詳述しないが,ノイズに強く,病態全般にわたって一様に機能する。この方法は,体に対するストレスの直接的影響を測定する高度な医学画像装置を使用した定性的研究に加え,異なる病態を持つ250人以上の被検者による研究で定量的にも有効性が確認されている。今後の生物医学,生物工学の場で詳細を説明する予定である。

通勤中のストレスマップ

Sproutプラットフォームにはリアルタイムのストレス測定技術が実装されているため,プラットフォームで取り込まれるほかの変数と関連付けて

通勤中のストレスマップ

本的には計算プラットフォームであり,高頻度の時系列入力のリアルタイム分析に対応することを意図したものである。このようなリアルタイム計算の例としては次のようなものがある。プラットフォームにストレスアルゴリズムを実装し,高頻度のバイオマーカーデータストリームを入力として瞬時ストレス値の連続データストリームが出力されるようにする。ここでは,モバイルリアルタイムストレス分析の実装にプラットフォームを使用する場合について説明する。ストレスは精神生理学的な現象である。すなわち,ストレスの原因と関係なく,ストレスに対する体の反応は,主に中枢神経系と内分泌系によって調節される生理機構によって構成される。この機構の影響は,心臓の活動の変化に直接表れる。特に,心拍数の変化―心拍間隔の変化の度合いを測定する―はストレスに直接影響を受ける。最新の各種ストレス測定方法では心拍変動

(HRV:Heart Rate Variability)の様々な数学的モデルを導入しているが,それらは全て連続心拍間隔ストリームの入力を必要とする。今回の研究ではZephyr BioHarness胸部ストラップセンサーをSproutプラットフォームに接続し,これで様々な測定値がBluetoothによりリアルタイムでSproutに送られるようにした。(24)ZephyrセンサーはR2Rのデータストリームに加えて周期250 Hzでサンプリングした心電図(ECG)を計算する。R2Rデータストリームは,ECG中の連続したR波ピーク間の

図-2 リアルタイムクラウド同期

EMRデータ

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モバイルセンシングによるストレス検知技術

使用して,往路と復路の運転のマップを生成した。データエクスポートプロセスにより二つのデータストリームをある決められた時間間隔でサンプリングし,時刻ごとにGPSとストレス値のペア一つを得られるようにする。これらの実験では,時間間隔を1秒に設定した。マップ上の点一つが,運転中のGPSデータ点一つを表す。点のサイズは,対応する時点のユーザーのストレス値を表す。小さな点はストレス値が高いことを示し,大きな点はストレス値が低いことを示す。

図-3はこのようなある運転のマップである。この場合,ユーザーは夜,サニーベールの職場からサンフランシスコの自宅に戻るところである。(サンフランシスコは図の左上にあり,サニーベールは右下にある。)視覚化により,運転の最初の半分ではストレスレベルが依然として高めであり,だんだん下がっていることが明らかになっている。運転の後半はリラックスしていることが顕著である。

図-4は,同じ経路を逆向きに,翌朝職場に向かう際の運転である。この場合のストレスレベルは上記と全く異なり,ストレスが高い状態が経路全体に広がっている。いずれの運転も,経路上で交通渋滞による減速がないときに行った。いずれの場合も,データにより,同じユーザー

ストレスを測定して視覚化できる。一般的にこのような変数には場所やカレンダーイベント,デスクトップやモバイルデバイスのアクティビティなどの環境変数に加え,体重や活動,血糖値などのバイオ変数全般が含まれる。このようなデータストリームは,Sproutプラットフォーム保存時に全て時間同期されているため,リアルタイムストレスとほかの変数の正確な相関関係を計算できる。これで,相関関係を更に掘り下げてストレスパターンを状況ごとに解釈したり,ストレス発生を予測したり,ストレス管理の個別プランを生成したりすることが可能になる。ここではこのような相関関係の例を取り上げる。ストレスと場所の相関関係である。今回の実験では,著者の一人(サンフランシスコ在住でシリコンバレーのサニーベールに職場がある)が,自動車通勤中Zephyr胸部ストラップを装着した。Sproutデバイスは車内にあり,Zephyrのデータを入力として使用してリアルタイムストレスを計算し,保存した。また,車内にあるiPhone4Sのソフトウェアセンサーにより,往復運転中1 Hz周期で収集した連続GPSデータストリームがSproutに送られた。運転後,ストレスとGPSデータをSproutからエクスポートし,WebサービスGPS Visualizer(26)を

図-3 ストレスマップ―サニーベールからサンフランシスコへ

図-4 ストレスマップ―サンフランシスコからサニーベールへ

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モバイルセンシングによるストレス検知技術

によるほかの日の幾度かの運転でも見られた個人的なストレスのパターンが明らかになる。ユーザーによるこのパターンの主観的な解釈では,職場への運転開始直後から仕事のことを考え始め,その間も何度か仕事の電話があった。帰りは,一日を終えてリセットする精神的な「クールダウン」時間があった。ユーザーは,潜在的ストレッサーのことを考えるだけでも,そのストレッサーがないのに体のストレス反応を引き起こす原因になるということを認識しており,これが運転ストレスパターンに大きく影響すると考えた。(27)出勤時の運転のパターンは,実験前にはそれを意識していなかったユーザーにとって新たな気づきであった。このデータにより,ユーザーは,一日の初めにストレス管理対策を試すと一日中大きなメリットが得られるのではないかというヒントを得た。また,このようなリアルタイムの精神生理学的データストリームを自動車のナビゲーションシステムやメディアシステムで共有すれば,ユーザーの体の状態を感知させることが可能になると考えられる。

連続日中モニタリングとガイダンス

我々の多くは,勤務日の時間の大半を座った姿勢で過ごすが,これにはいくつかの健康リスクが伴う。座った姿勢が心血管の健康に及ぼす長期的リスク(28)以外に,このような労働形態は短~長期の筋骨格の健康にも悪影響がある。背部痛や頸部痛に関連する経費は,米国の企業医療経費で最大の要因の一つである。(29)

連続日中モニタリングとガイダンス

連続個人モニタリングにより,勤務日の自身に対する認識が高まる可能性がある。今回のようなプラットフォームがあれば,モバイル健康ウェルネスアプリケーションを配備して,有益な変化の実践を本人に促すことができる。日中環境でのデータを得るため,5人の事務従事者による2週間のパイロット実験を行った。各参加者には,前半の1週間にはZeoスリープモニタ(30)を渡して,無理のない状況でセンサーを装着して連続検知ができるようにした。2週目には,有志の各参加者に対し勤務日にZephyr胸部ストラップも装着してもらった。Zephyrにより,「リアルタイムストレス分析」の章で述べた心臓関連のデータストリーム以外に,呼吸や活動などほかのデータストリームも取り込む。各参加者には,Zephyrが検知した心拍数や呼吸数,活動レベルと,Sproutプラットフォームでリアルタイムに計算したストレスレベルを示すカスタム表示を備えたタブレットを渡した。算出して表示されるストレスレベルは2種類で,一つは直近120心拍の心拍間隔差異から,もう一つは直近3600心拍の心拍間隔差異から計算したものである。これはおおよそ,直近2分間と直近1時間のストレスの表示に相当する。図-5は,参加者に対して示された表示である。実験中,値は1秒ごとに更新されるようになっていた。参加者はタブレットを自分の作業領域の見える位置に置いた。

5日間の終わりに,各参加者に「データカウンセリング」セッションを行い,その週の参加者のバイオ変数パターンを調べた。図-6は,そのセッションで使用した表示の例である。タブレットによる

図-5 リアルタイムストレス/生理学モニタ

現在のストレス

3428

83

18.7

0.09

直近1時間 心拍数 呼吸数 活動

レベル Zephyrステータス

図-6 リアルタイム時系列表示

1日の長時間ストレッサー

心臓活動(mV)

心拍数(BPM)

ストレスレベル 瞬時値

移動 1時間平均

ストレスイベント

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モバイルセンシングによるストレス検知技術

は,生活環境におけるインフラと我々の日々の相互作用を全く違ったものに変える。複数のデータストリームのリアルタイム保存と分析を意図したSproutプラットフォームにより,このような各データストリームを,別に与えられた状況と対比させて分析できる。このストリームにバイオマーカーデータが含まれれば,自分の健康や健康に影響する要因についてより意識を高め,理解を深めることができる。Sproutプラットフォームをベースとして構築されたアプリケーションと,このリアルタイムデータストリームへの連続アクセスにより,様々な全く新しい経験が可能になる。本稿ではその例のいくつかを紹介した。バイオマーカーストリームが使用できれば,アプリケーションにより,自主的な行動につながるリアルタイムの意識喚起やアドバイスだけでなく,インフラと我々との相互作用の調節も可能である。我々はますます定量化されていき,我々のコミュニティも定量化が可能になる。本稿で取り上げたアプリケーションの試行の経験が得られ,データ駆動型プラットフォームの力が我々を生活の質の向上に導くということが確認できた。著者らは,本稿で説明したプラットフォームやアプリケーションに関する研究開発の問題に様々な方法で積極的に対応している。ハードウェアプラットフォームについては,より安価で,エネルギー効率の高いワイヤレスプロトコルをサポートし,移動中でも装着しやすいSproutの新しいバージョンに取り組んでいる。分析の面では,今回のストレス測定技術を更に発展させて高度化する予定である。

参 考 文 献

(1) D. He et al.:A wearable vital signs monitor.2010. https://www-mtl.mit.edu/wpmu/annualreport/

?p=1399(2) H. MacInnis:THE CLINICAL APPLICATION

OF RADIOELECTROCARDIOGRAPHY.Canadian Medical Association Journal,Vol.70,No.5,p.574-576(1954).

(3) T. Togawa:Home health monitoring.J Med Dent Sci.,Vol.45,No.3,p.151-160(1998).

(4) I. Korhonen et al.:Health Monitoring in the

表示と同様,Sproutで稼働するApache WebサーバによるWebページになっている。この視覚化アプリケーションは一連のパネルから構成され,その各パネルは任意のセンサーストリームに合わせて設定できる。図-6に示した3枚のパネルの1枚目はECG信号,2枚目は計算したリアルタイム心拍数,3枚目は二つのストレスレベルである。各パネルは様々にカスタマイズ可能で,例えばデータ表示方法(折れ線グラフや棒グラフなど)やパネル表示部分の時間の尺度を変更できる。パネルは全て表示の一番右側で時間同期されている。したがって,例えば図-6のパネルのいずれかをドラッグすると,3枚のパネルが全て同時に移動する。データカウンセリングセッションは,参加者に関して多くの所見が得られ,参加者にとって意義深いものになった。ストレスイベント{長期的ストレス(黒線:移動1時間平均)に対して短期的ストレス(グレー線:瞬時値)が視覚的に目立って上昇したり下降したりする現象}は,常に本人にとって一日で起こった意味のあるイベントと相関関係があった。ストレス自体は有害でないことに留意する必要がある。誰もが日々多くの刺激に反応しており,体のストレス反応メカニズムによりそのような刺激に効果的に対応できるようになっているのである。一方,慢性的ストレス(外部ストレッサーが存在せず単に想像上のものであってもストレス反応メカニズムが働き続ける状態)は,今日世界的な問題になっている多くの慢性疾患の主要要因として認識されている。図-6の下のパネルは慢性的ストレスパターンの例である。今回開発したプラットフォームで,このようなパターンを自動的に特定することができる。今回の実験中,参加者は全て,このような形で自分の体の状態を知ることができる点に強い関心を持った。全員が自分のバイオマーカーに対する自覚が高まり,バイオマーカーが社交や育児,運動など勤務中以外の状況にどのような影響を受けるかについて興味を持ち,またアプリやそのほかのツールを使用したストレス管理を試してみたいという感想であった。

む  す  び

ネットワークに接続されたセンサーと連続分析

む  す  び

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モバイルセンシングによるストレス検知技術

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(18) Smart’ Clothing Responds to Wearer’s Emotions. 8 June 2010.

http://www.technewsdaily.com/577-smart-clothing-responds-to-wearers-emotions.html

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Ajay Chander米国富士通研究所 所属現在,テクノロジーによる人間の能力の拡大方法考案に従事。

Alex Gilman米国富士通研究所 所属現在,分野横断的イノベーションに対する計算論的手法の研究に従事。

Albert Braun米国富士通研究所 所属現在,ソフトウェアを通じたライフイノベーションの研究に従事。

Stergios Stergiou米国富士通研究所 所属現在,アルゴリズム分野,特に論理合成,オンチップ検証,形式的検証に関連する技術のライフイノベーション分野への適用に関する研究に従事。

Dave Marvit米国富士通研究所 所属現在,オープンイノベーションに関するプロジェクトの推進に従事。

著 者 紹 介

Rajalakshmi Balakrishnan米国富士通研究所 所属現在,スマートフォンなどのモバイルデバイスのアプリケーション開発に従事。