リチウムイオン蓄電池の経済性推定モデルの検討電所(virtual pow er plant...

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Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 39, No. 3 リチウムイオン蓄電池の経済性推定モデルの検討 An Examination about Economic Efficiency Estimation Model of Lithium-ion Batteries 有馬理仁 * ** ・林磊 ** ・福井正博 ** ・島田幸司 *** Masahito Arima Lei Lin Masahiro Fukui Koji Shimada (原稿受付日 2018 1 15 日,受理日 2018 4 24 日) 1.はじめに 近年, 低炭素社会に向けた省エネルギー化や再生可能エ ネルギー導入が進んでいる. 日本国内ではエネルギーの安 定供給(Energy Security, 経済効率性(Economic Efficiency, 環境適合(Environment, 安全性(Safety, いわゆる 3E+S の観点から, 2030 年に再生可能エネルギーを全体の 2224%とする目標を立てている 1) . ここでの再生可能エネル ギーとは主に水力, 太陽光, バイオマス由来の電力が想定 されている. 電力需要は季節や時間帯で変化し, 夏の昼間 に最大需要となる傾向があり, 通常この最大需要に合わせ て発電所が建設される. 一方で電力需要が少ない時間帯の 存在が発電所の設備利用率を低下させるので, 需要のピー クを平準化するためのピークシフト 2) 等の取組が進められ てきた. ところが太陽光発電電力の大量導入によって, 質電力需要が昼間に減少し, 夕方に急増するダックカーブ と呼ばれる現象が顕在化した 3) . ここで実質電力需要とは, 全体の電力消費量から分散型の再生可能エネルギーの発電 量を差し引いたものの事である. このダックカーブ現象が 更に進むと, 昼間の実質電力需要の低下に対して応答速度 の速い水力・火力発電所等の停止で対応しようとしても追 いつかず, 電力需給の同時・同量が達成できなくなって電 力の送配電系統にトラブルを生じる恐れがある. 既に海外 では, 対価を払ってでも需要家に電力を消費して欲しいこ とを意味する, 卸電力価格がマイナスの時間帯が出現して いる. 従って, これからはポジワット・ネガワット等のデマ ンドレスポンスだけでなく, 需要創出や発電抑制も重要と なる. 実質電力需要がマイナスとなった場合には, ダイナ ミックレジスターなどで需要創出する, または需要創出が できない場合には再生可能エネルギーを発電抑制する必要 が出てくる. しかしこれらは本来不要な熱・仕事を発生さ せる, または再生可能エネルギーの設備利用率低下につな がるため, 経済効率性の観点から好ましくない. このようなマイナスの実質電力需要に対して経済効率的 に需要創出する手段として, 蓄電池が注目されている. に近年では, 分散型エネルギーリソースとしての蓄電池を 統合して活用するバッテリーアグリゲーションの実証が進 められており, その際の分散協調型システムとして仮想発 電所(Virtual Power Plant)が提案されている. 蓄電池は, ックアップ用, ピークカット・ピークシフト, 太陽光発電余 剰対策など様々な用途で運用されているが, それぞれの運 用の中で活用されない充放電余力が存在している. 仮想発 電所でこの余力を集めて活用すれば, 夜間の需要創出や夕 方の実質電力需要急増対策として利用できる. 蓄電池には 鉛蓄電池, NAS 電池, レドックス・フロー電池, リチウムイ オン蓄電池など様々なものがあるが, このようなサイクル ユースの分散型蓄電リソースとしては特に定置用のリチウ ムイオン蓄電池が有望である. 現在は費用対効果の問題で 定置用リチウムイオン蓄電池の利用拡大が進んでいないが, 2019 年から段階的に始まる家庭用太陽光発電の固定価格 買取制度終了, 売電価格および買電価格の変化, リチウム イオン蓄電池価格の低下などにより, 将来的にはストレー ジパリティに到達して蓄電池導入の経済的メリットが出る ことが想定される 4) . このような状況において定置用リチ The penetration of renewable energy is advanced to implement low-carbon society. Especially the increase of the photovoltaic generation energy is remarkable. But as a result, the trend that net electricity demand is decreased in the daytime and is increased suddenly in the evening, which is called ‘Duck-Curve phenomenon’ become apparent, and the destabilization of the utility grid caused by the fluctuation of photovoltaic generation power output. To solve this problem, the virtual power plant is planned as one of the solutions, and the battery aggregation using the distributed and cooperated rechargeable batteries is considered as one of the technical elements. One of the strong candidate of rechargeable battery is lithium ion batteries. To maximize the profit of the battery aggregation, it is necessary to diagnose the degradation in real time and estimate the cost effectiveness of lithium ion batteries. We found the convenient technique of diagnosis which can be done under operation of lithium ion batteries and battery management systems. To contribute to optimum system operation of the distributed and cooperated rechargeable batteries, we propose a new cost effectiveness index of lithium ion batteries based on this technique. * 大和製罐株式会社 252-5183 神奈川県相模原市緑区西橋本 5-5-1 E-mail : [email protected] ** 立命館大学大学院理工学研究科電子システム専攻 525-0058 滋賀県草津市野路東 1-1-1 *** 立命館大学経済学部 525-0058 滋賀県草津市野路東 1-1-1 35 回研究発表会の内容をもとに作成されたもの 11

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Page 1: リチウムイオン蓄電池の経済性推定モデルの検討電所(Virtual Pow er Plant )が提案されている. 蓄電池は, バ ックアップ用, ピークカット・ピークシフト,

Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 39, No. 3

リチウムイオン蓄電池の経済性推定モデルの検討An Examination about Economic Efficiency Estimation Model of Lithium-ion Batteries

有 馬 理 仁 * **・ 林 磊 **・ 福 井 正 博 **・島 田 幸 司 *** Masahito Arima Lei Lin Masahiro Fukui Koji Shimada

(原稿受付日 2018 年 1 月 15 日,受理日 2018 年 4 月 24 日)

1.はじめに

近年, 低炭素社会に向けた省エネルギー化や再生可能エ

ネルギー導入が進んでいる. 日本国内ではエネルギーの安

定供給(Energy Security), 経済効率性(Economic Efficiency),

環境適合(Environment), 安全性(Safety), いわゆる 3E+S

の観点から, 2030 年に再生可能エネルギーを全体の 22~

24%とする目標を立てている 1). ここでの再生可能エネル

ギーとは主に水力, 太陽光, バイオマス由来の電力が想定

されている. 電力需要は季節や時間帯で変化し, 夏の昼間

に最大需要となる傾向があり, 通常この最大需要に合わせ

て発電所が建設される. 一方で電力需要が少ない時間帯の

存在が発電所の設備利用率を低下させるので, 需要のピー

クを平準化するためのピークシフト 2)等の取組が進められ

てきた. ところが太陽光発電電力の大量導入によって, 実

質電力需要が昼間に減少し, 夕方に急増するダックカーブ

と呼ばれる現象が顕在化した 3). ここで実質電力需要とは,

全体の電力消費量から分散型の再生可能エネルギーの発電

量を差し引いたものの事である. このダックカーブ現象が

更に進むと, 昼間の実質電力需要の低下に対して応答速度

の速い水力・火力発電所等の停止で対応しようとしても追

いつかず, 電力需給の同時・同量が達成できなくなって電

力の送配電系統にトラブルを生じる恐れがある. 既に海外

では, 対価を払ってでも需要家に電力を消費して欲しいこ

とを意味する, 卸電力価格がマイナスの時間帯が出現して

いる. 従って, これからはポジワット・ネガワット等のデマ

ンドレスポンスだけでなく, 需要創出や発電抑制も重要と

なる. 実質電力需要がマイナスとなった場合には, ダイナ

ミックレジスターなどで需要創出する, または需要創出が

できない場合には再生可能エネルギーを発電抑制する必要

が出てくる. しかしこれらは本来不要な熱・仕事を発生さ

せる, または再生可能エネルギーの設備利用率低下につな

がるため, 経済効率性の観点から好ましくない.

このようなマイナスの実質電力需要に対して経済効率的

に需要創出する手段として, 蓄電池が注目されている. 特

に近年では, 分散型エネルギーリソースとしての蓄電池を

統合して活用するバッテリーアグリゲーションの実証が進

められており, その際の分散協調型システムとして仮想発

電所(Virtual Power Plant)が提案されている. 蓄電池は, バ

ックアップ用, ピークカット・ピークシフト, 太陽光発電余

剰対策など様々な用途で運用されているが, それぞれの運

用の中で活用されない充放電余力が存在している. 仮想発

電所でこの余力を集めて活用すれば, 夜間の需要創出や夕

方の実質電力需要急増対策として利用できる. 蓄電池には

鉛蓄電池, NAS 電池, レドックス・フロー電池, リチウムイ

オン蓄電池など様々なものがあるが, このようなサイクル

ユースの分散型蓄電リソースとしては特に定置用のリチウ

ムイオン蓄電池が有望である. 現在は費用対効果の問題で

定置用リチウムイオン蓄電池の利用拡大が進んでいないが,

2019 年から段階的に始まる家庭用太陽光発電の固定価格

買取制度終了, 売電価格および買電価格の変化, リチウム

イオン蓄電池価格の低下などにより, 将来的にはストレー

ジパリティに到達して蓄電池導入の経済的メリットが出る

ことが想定される 4). このような状況において定置用リチ

The penetration of renewable energy is advanced to implement low-carbon society. Especially the increase of the photovoltaic generation energy is remarkable. But as a result, the trend that net electricity demand is decreased in the daytime and is increased suddenly in the evening, which is called ‘Duck-Curve phenomenon’ become apparent, and the destabilization of the utility grid caused by the fluctuation of photovoltaic generation power output. To solve this problem, the virtual power plant is planned as one of the solutions, and the battery aggregation using the distributed and cooperated rechargeable batteries is considered as one of the technical elements. One of the strong candidate of rechargeable battery is lithium ion batteries. To maximize the profit of the battery aggregation, it is necessary to diagnose the degradation in real time and estimate the cost effectiveness of lithium ion batteries. We found the convenient technique of diagnosis which can be done under operation of lithium ion batteries and battery management systems. To contribute to optimum system operation of the distributed and cooperated rechargeable batteries, we propose a new cost effectiveness index of lithium ion batteries based on this technique.

*大和製罐株式会社 〒252-5183 神奈川県相模原市緑区西橋本 5-5-1 E-mail : [email protected] **立命館大学大学院理工学研究科電子システム専攻 〒525-0058 滋賀県草津市野路東 1-1-1 ***立命館大学経済学部 〒525-0058 滋賀県草津市野路東 1-1-1 第 35 回研究発表会の内容をもとに作成されたもの

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Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 39, No. 3

ウムイオン蓄電池の運用経済性は, 分散協調型の蓄電池を

束ねて仮想発電所を運営するアグリゲーターにとって重要

な指標となる.

2.リチウムイオン蓄電池 8直モジュールと充放電条件

本論文における検討では , 定格容量 50Ah, 定格電圧

29.6V のリチウムイオン蓄電池 8 直モジュールを用い,

1085W の定電力方式で充放電試験を実施した. このモジュ

ールを構成する単電池は, LiNi1-x-yMnxCoyO2 正極と, 黒鉛負

極が用いられた角型ハードケースのリチウムイオン蓄電池

である. なお, 充電と放電の間には 1.5時間のインターバル

を設けた. 充放電データは, 各単電池の電圧(分解能 0.001

V), 2 単電池毎の単電池間温度(分解能 0.1 ℃), モジュー

ル全体を流れる電流(分解能 0.001 A)を, 時間分解能 1 sec

で計測した.

3.リチウムイオン蓄電池の劣化と経済性

リチウムイオン蓄電池には劣化と呼ばれる現象がある.

劣化の要素はリチウムイオン蓄電池の内部インピーダンス

の増加と, 蓄電池材料の充放電容量減少が挙げられる. こ

れらが複合的に作用することでリチウムイオン蓄電池の充

放電曲線が変形し, その結果としてリチウムイオン蓄電池

の満充電容量 FCC [Ah]と, 充電電力量に対する放電電力量

の割合を表す充放電効率 [Wh/Wh]が低下する. リチウム

イオン蓄電池 8 直モジュールに対し, 45℃雰囲気, 充電と

放電の間のインターバルなし, 充電率 SOC 0~1 の範囲で

1085W の定電力充放電で加速劣化させ, その間 450 サイク

ル毎に実施した 25℃雰囲気, 充電と放電の間に 1.5 時間の

インターバルを設けた 1085W 定電力充放電で得られた充

放電特性を図 1 に示す. 図 1 のグラフの横軸方向の長さは

図 1 劣化に伴う充放電電圧の変化と電流レート(45℃定

電力充放電で加速劣化し, 450 サイクル毎の 25℃定電力充

放電で得られた充放電特性)

満充電容量 FCC [Ah]を示す. つまり, 劣化とともに充放電

電圧の曲線が横軸方向に短くなって満充電容量 FCC [Ah]

が減少している. これは, 主に蓄電池材料の充放電容量減

少によるものである. また, 劣化とともに充電電圧と放電

電圧の各曲線に囲まれた領域が縦軸方向に幅広くなってい

く. これは, 主に蓄電池の内部インピーダンスの増加によ

るものである. これらの現象が相乗的に作用することで,

リチウムイオン蓄電池 8 直モジュールの充放電電圧の曲線

が劣化とともに変形する.

ここで, 図 1 のグラフの横軸の単位が電気量 [Ah], 縦軸

の単位が電圧 [V]となっていることから, 充放電電圧の曲

線とグラフの横軸(y = 0 の直線)とに囲まれた面積は充放

電電力量 [Wh]を示す. 従って, 図 1で示した充放電電圧の

曲線の変形は, 充放電電力量 [Wh]の変化を示している.

このとき, グラフの横軸方向が短くなるだけであれば充放

電エネルギー効率 [Wh/Wh], すなわち同じタイミングで

の充電電力量 [Wh]と放電電力量 [Wh]の割合は変化しな

いが, グラフの縦軸方向の変化では充電電圧 [V]と放電電

圧 [V]の曲線に囲まれた領域が幅広くなるため, 充放電エ

ネルギー効率 [Wh/Wh]が変化する. 図 1で示した各充放電

計測データにおける充電電力量 [Wh], 放電電力量 [Wh],

充放電エネルギーロス [Wh], 充放電エネルギー効率

[Wh/Wh]は図 2の通りである. 図 2から, リチウムイオン蓄

電池は劣化が進むことで充放電エネルギーロス [Wh]が増

加するとともに, 充電電力量 [Wh], 放電電力量 [Wh]が減

少し, 充放電エネルギー効率 [Wh/Wh]が低下していくこ

とがわかる.

リチウムイオン蓄電池は様々な正負極活物質を組み合わ

せ て 構 築 さ れ て い る . 正 極 活 物 質 の 例 と し て は

LiNi1-x-yCoxAlyO2, LiNi1-x-yMnxCoyO2, LiFePO4 が, 負極活物

質の例としては黒鉛や Li4Ti5O12 が挙げられる. 正負極活物

質の組合せによってリチウムイオン蓄電池の劣化挙動は異

なるが, 劣化の進展に伴って内部インピーダンスが増加し

図 2 充放電電力量と充放電エネルギー効率の変化

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分極が増加すること, および正負極電極容量が減少するこ

とは共通する 5,6). それぞれのリチウムイオン蓄電池の劣化

挙動の違いは内部インピーダンス増加および正負極電極容

量減少の進行速度のバランスによる.

近い将来, 定置用リチウムイオン蓄電池を活用して再生

可能エネルギーの余剰電力を蓄電し自家消費する, または

時間帯別料金適用時の電力使用を最適化するなどし, 結果

として蓄電池導入による経済メリットが得られる状態であ

るストレージパリティに達すると考えられる. このときの

経済メリットは主に取引単位である電力量 [kWh]によっ

て決まるので , リチウムイオン蓄電池の満充電電力量

[Wh]と, 充放電エネルギー効率 [Wh/Wh]が, 蓄電池の運用

経済性に直接影響する. 当然, 定置用リチウムイオン蓄電

池を多数統合し活用して経済メリットを得ようとするアグ

リゲーターの経済性にも影響する. 具体的には, リチウム

イオン蓄電池の劣化が進むことによって, 満充電電力量

[Wh]が減少して電気料金の高い時間帯に蓄電池からの放

電で取り出せる放電電力量 [Wh]が減少すること, および

充放電エネルギー効率 [Wh/Wh]が低下して充放電エネル

ギーロス [Wh]の割合が大きくなることが相乗作用し, バ

ッテリーアグリゲーションの収益が減る. なお, 本来バッ

テリーアグリゲーションの経済性は蓄電池運用の時期と期

間を定めて, 営業・合資・財務の各キャッシュフローを考慮

し計算すべきである 7)が, 本論文では議論を簡単にするた

め, 営業キャッシュフローの収入と支出のみを考慮し, そ

の他の要素は省略している. また, キャッシュフロー全体

に対して考慮すべきインフレ率や割引率についても同じ理

由で省略している.

過去に定置用リチウムイオン蓄電池の経済性について報

告された事例では, リチウムイオン蓄電池のサイクル寿命

を年数で定義するモデル 8)や, 蓄電池の満充電容量 FCC

[Ah]に対してどこまで放電されたかの割合を示す放電深度

[Ah/Ah]によってサイクル毎の劣化量が決まり, その累積

で寿命を決めるモデル 9)が提案されている. いずれの手法

も充放電エネルギー効率 [Wh/Wh]は寿命到達までの期間

を通して一定値となっている. これらのモデルを用いた手

法では, リチウムイオン蓄電池の導入前または導入直後に

一定の経済性見通しを立てることができるが, 実際にリチ

ウムイオン蓄電池を運用しながら劣化状態を定量し, リア

ルタイムに経済性を把握することはできない. 運用中の劣

化状態の定量とリアルタイムな経済性把握はバッテリーア

グリゲーションを行うアグリゲーターにとって重要である.

そのためには, リチウムイオン蓄電池の劣化の進行度が各

個体でそれぞれ異なり, また劣化の進行速度も設置場所の

気象条件や運用条件によって異なることを踏まえて, 運用

中のリチウムイオン蓄電池の劣化状態を個別かつリアルタ

イムに調べる必要があり, またそれを実現するための劣化

診断技術が必要となる.

4.劣化診断と必要なパラメータ

リチウムイオン蓄電池の劣化状態を診断する方法は大き

く分けて 2 通りある. 1 つは充放電試験装置等により直接計

測する方法である. この方法は計測方法に柔軟性があり,

様々な形態の計測データを得ることができるが, 運用フィ

ールドに設置された定置用蓄電池からリチウムイオン蓄電

池を取り出して計測装置のあるラボまで持ち込まなければ

ならない. もう 1 つはリチウムイオン蓄電池に搭載された

バッテリーマネジメントシステム(BMS)の計測データを

解析する方法である. この方法は電圧, 温度, 電流など限

定されたパラメータ・時間分解能の充放電履歴データしか

得られないのでデータの解析方法を工夫する必要があるが,

フィールド運用中のリチウムイオン蓄電池からリアルタイ

ムに計測データを得ることができる. 分散設置された多数

の定置用蓄電池から劣化情報を得る必要があるアグリゲー

ターにとっては, バッテリーマネジメントシステムの充放

電履歴データを利用する方が当然有利である. 充放電履歴

データを解析して蓄電池内部の正極, 負極それぞれの材料

の電位を個別に推定することでリチウムイオン蓄電池の劣

化状態を分析する手法 10, 11)が提案されているが, リチウム

イオン蓄電池を製造するセルメーカーにとってリチウムイ

オン蓄電池の内部材料の知見は競争力の源泉であり, アグ

リゲーターに開示されるとは限らない 12). 従って, 充放電

履歴データの解析プロセスにおいては, 多くのプレイヤー

にとっての汎用性の観点から蓄電池の内部材料パラメータ

を直接利用しない手法であることが望ましい.

前述したとおり, リチウムイオン蓄電池の経済性は充電

と放電の各電力量 [Wh]で決まり, これら電力量を定量的

に決定する要素は充放電電圧の曲線である. 充放電電圧は

充電電圧 Vc [V], および放電電圧 Vd [V]の関数であり, 充電

電流量 [Ah]をその時点での満充電容量 FCC [Ah]で除した

値である充電率 SOC の関数として, それぞれ Vc(SOC) [V]

および Vd(SOC) [V]と表すことができる. このことから充電

電力量 Ec [Wh]および放電電力量 Ed [Wh]をそれぞれ次の式

(1)および(2)として表すことができる.

𝐸𝐸𝑐𝑐 = 𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹 ∫ 𝑉𝑉𝑐𝑐(𝑆𝑆𝑆𝑆𝐹𝐹)10 𝑑𝑑𝑆𝑆𝑆𝑆𝐹𝐹 (1)

𝐸𝐸𝑑𝑑 = 𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹 ∫ 𝑉𝑉𝑑𝑑(𝑆𝑆𝑆𝑆𝐹𝐹) 𝑑𝑑𝑆𝑆𝑆𝑆𝐹𝐹10 (2)

式(1)(2)から, 充電および放電の各電力量 [Wh]を求めるた

めには, 満充電容量 FCC [Ah]と充電率 SOC の関数として

充電電圧 Vc(SOC) [V]および放電電圧 Vd(SOC) [V]をリアル

タイムに得る必要があることがわかる. 満充電容量 FCC

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[Ah], 充電電圧 Vc(SOC) [V], 放電電圧 Vd(SOC) [V]は蓄電池

の内部材料パラメータを考慮せず計測できる値であり, セ

ルメーカーから必要十分な情報を得られない場合でもアグ

リゲーターにとって扱いやすいデータの形式である.

5.満充電容量 FCCの推定

リチウムイオン蓄電池の満充電容量 FCC [Ah]を得る最

も簡単な方法は, 充放電試験装置によって SOC 0~1 の範

囲で充放電を行うことである. しかし前述したとおり, こ

の方法はフィールド運用中の定置用蓄電池からリチウムイ

オン蓄電池を取り外して計測装置のあるラボまで移動しな

ければならないため, 現実的ではない. 従って, 運用中の

バッテリーマネジメントシステム(BMS)計測データを利

用する事が有効である. しかし, 運用フィールドにおいて

定置用蓄電池は種々の条件で稼動するので, 毎回条件を揃

えて充放電履歴データを得るためには蓄電池の共通運用パ

ターンを抽出し利用する必要がある. 満充電容量 FCC [Ah]

の推定はこの共通運用パターンにおける充放電履歴データ

に基づいて実施しなければならない. 定置用蓄電池の主な

用途は前述したとおり, バックアップ用, ピークカット・ピ

ークシフト, 太陽光発電余剰対策である. 純粋に停電時の

バックアップを目的とした用途の蓄電池では運用経済性の

議論が不要になるため本論文では検討の対象としないが,

その他の用途での運用パターンに共通するのは, 一定の周

期で満充電状態から放電が開始される事である. 例えば,

ピークカット・ピークシフトでは深夜の安価な電気を蓄電

池に満充電し, 需要が多く電気料金が高い昼間の時間帯に

放電する. また, 太陽光発電余剰対策では快晴日の昼間に

満充電し, 太陽光発電が行われなくなる夕方から放電する.

この共通運用パターンを利用した満充電容量 FCC [Ah]の

推定方法として, 図 3 に示すパラメータを用いる手法を見

出した.

図 3 満充電容量 FCC 推定に用いるパラメータ

この手法について説明する. まず, リチウムイオン蓄電

池の満充電状態の検知に用いる蓄電池の端子電圧の上限値

を充電上限電圧 Vcmax [V]とする. この充電上限電圧 Vcmax

[V]は定置用蓄電池の製造者によってシステム上で設定さ

れる値である. 次に, 一定時間 trest [sec]の後に放電し, 放電

時間 td [sec]後の蓄電池端子電圧を Vdsam [V]とする. ここで

trest [sec]は充電完了後の過渡応答が収束する程度の時間(一

般的には数十分以上)より大きい値とし, td [sec]は電荷移動

インピーダンスが発現する時定数よりは大きいが, 放電に

よりリチウムイオン蓄電池の充電率 SOC が大きく変化し

ない程度の値(一般的には数十秒)とする. 放電条件は定電

力や定電流などで常に同じ条件とし, 電流レートはリチウ

ムイオン蓄電池の温度が時間 td [sec]の間に大きく上昇しな

い程度の値(一般的には 1 時間率程度の電流)とする. こ

のようにして得られたVcmax [V]とVdsam [V]の差を差電圧Vdiff

[V]と定義し, この差電圧 Vdiff [V]から満充電容量 FCC [Ah]

を推定する.

td = 20 とした場合の差電圧 Vdiff [V]とリチウムイオン蓄電

池 8 直モジュールの満充電容量 FCC [Ah]の関係を図 4に示

す. 本論文で満充電容量 FCC [Ah]を計測した際のモジュー

ルの最高到達温度および最低到達温度は図 5の通りであり,

概ね 15~30℃程度の温度領域にて計測を行った. 図 4 に示

したとおり, 差電圧 Vdiff [V]と満充電容量 FCC [Ah]の間に

は強い相関性があり, 1 次式の関係がある. この一次式をあ

らかじめ求めておくことにより, 定置用リチウムイオン蓄

電池の運用中に満充電容量 FCC [Ah]を推定することがで

きる. この満充電容量 FCC [Ah]推定プロセスでは内部材料

パラメータを直接利用しておらず, 定置用蓄電池のアグリ

ゲーターにとって有利となる.

6.充放電曲線の関数化と推定

リチウムイオン蓄電池の充放電電圧の曲線は, 定電力や

図 4 差電圧 Vdiff と満充電容量 FCC の関係

y = -6.2543x + 51.234

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図 5 満充電容量 FCC 計測時のモジュール温度

定電流など, 電流が短時間で大きく変動するパルス型でな

い方式においては図 1 のような滑らかな曲線となる. この

充放電電圧の曲線と同様に滑らかで, リチウムイオン蓄電

池の充放電特性を表す曲線に開放端電圧 OCV の曲線があ

る. これはリチウムイオン蓄電池を回路から取り外して静

置し定常状態となった時の端子電圧であるが, この開放端

電圧 OCV [V]も充電率 SOC の関数として OCV(SOC) [V]と

表すことができる. 過去には OCV(SOC) [V]を 12 次の多項

式で近似した報告 13)があり , これと同様に充電電圧

Vc(SOC) [V]および放電電圧 Vd(SOC) [V]も 12 次多項式とし

て, 式(3)および(4)で表すことができる.

𝑉𝑉𝑐𝑐(𝑆𝑆𝑆𝑆𝐹𝐹) = ∑ 𝑎𝑎𝑖𝑖𝑆𝑆𝑆𝑆𝐹𝐹𝑖𝑖12𝑖𝑖=0 (3)

𝑉𝑉𝑑𝑑(𝑆𝑆𝑆𝑆𝐹𝐹) = ∑ 𝑏𝑏𝑖𝑖𝑆𝑆𝑆𝑆𝐹𝐹𝑖𝑖12𝑖𝑖=0 (4)

本論文で実際に定電力充放電を実施した際の充電電圧

Vc(SOC) [V]および放電電圧 Vd(SOC) [V]を, 12 次多項式で近

似した結果の係数 ai および bi は表 1, 表 2 であり, その際

の多項式回帰結果は図 6 のようになった . 充電電圧

Vc(SOC) [V]の近似誤差は最大 0.197V(0.71%), 平均 0.019V

(0.06%)であり, また放電電圧 Vd(SOC) [V]の近似誤差は

最大 0.545V(2.06%), 平均 0.041V(0.14%)であった. 高

SOC 領域の放電電圧 Vd(SOC) [V]の近似誤差がやや大きく

なる傾向があったが, 全体として良く回帰されているとい

える。

充電電圧 Vc(SOC) [V], 放電電圧 Vd(SOC) [V]の推定のた

めには, 広範囲な充電率 SOC における離散データ, すなわ

ち充電電圧離散データ Vcdig(SOC) [V]および放電電圧離散デ

ータ Vddig(SOC) [V]を一定の要素数得る必要がある. ここで

筆者らは前述した差電圧 Vdiff [V]を利用し, 充電電圧離散デ

ータ Vcdig(SOC) [V], 放電電圧離散データ Vddig(SOC) [V]を得

ることができることを見出した.

表 1 多項式の係数 ai

表 2 多項式の係数 bi

図 6 充放電曲線の 12 次多項式回帰結果

以下, この手法について説明する. まず, 充電電流量 Qc

[Ah], 放電電流量 Qd [Ah]の離散データベクトルをそれぞれ

Qcdig [Ah]と Qddig [Ah]とし, またこれらに対応する充電電圧

Vc(SOC) [V]と放電電圧 Vd(SOC) [V]の離散データベクトル

を充電電圧離散データベクトル Vcdig [V]および放電電圧離

散データベクトル Vddig [V]として, 式(5)~(8)を定義する.

𝑄𝑄𝑐𝑐𝑑𝑑𝑖𝑖𝑐𝑐 = [𝑄𝑄𝑐𝑐1,𝑄𝑄𝑐𝑐2,⋯ ,𝑄𝑄𝑐𝑐𝑐𝑐] (5)

𝑄𝑄𝑑𝑑𝑑𝑑𝑖𝑖𝑐𝑐 = [𝑄𝑄𝑑𝑑1,𝑄𝑄𝑑𝑑2,⋯ ,𝑄𝑄𝑑𝑑𝑐𝑐] (6)

𝑉𝑉𝑐𝑐𝑑𝑑𝑖𝑖𝑐𝑐 = [𝑉𝑉𝑐𝑐1,𝑉𝑉𝑐𝑐2,⋯ ,𝑉𝑉𝑐𝑐𝑐𝑐] (7)

𝑉𝑉𝑑𝑑𝑑𝑑𝑖𝑖𝑐𝑐 = [𝑉𝑉𝑑𝑑1,𝑉𝑉𝑑𝑑2,⋯ ,𝑉𝑉𝑑𝑑𝑐𝑐] (8)

次にこの手法を用いて, 充電電圧離散データベクトル Vcdig

15

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[V]および放電電圧離散データベクトル Vddig [V]を, それぞ

れ前述した差電圧 Vdiff [V]の一次式として式(9)(10)で表す.

𝑉𝑉𝑐𝑐𝑑𝑑𝑖𝑖𝑐𝑐 = �𝐴𝐴1𝑉𝑉𝑑𝑑𝑖𝑖𝑑𝑑𝑑𝑑 + 𝐵𝐵1,𝐴𝐴2𝑉𝑉𝑑𝑑𝑖𝑖𝑑𝑑𝑑𝑑 + 𝐵𝐵2,⋯ ,𝐴𝐴𝑐𝑐𝑉𝑉𝑑𝑑𝑖𝑖𝑑𝑑𝑑𝑑 + 𝐵𝐵𝑐𝑐� (9)

𝑉𝑉𝑑𝑑𝑑𝑑𝑖𝑖𝑐𝑐 = �𝐹𝐹1𝑉𝑉𝑑𝑑𝑖𝑖𝑑𝑑𝑑𝑑 + 𝐷𝐷1,𝐹𝐹2𝑉𝑉𝑑𝑑𝑖𝑖𝑑𝑑𝑑𝑑 + 𝐷𝐷2,⋯ ,𝐹𝐹𝑐𝑐𝑉𝑉𝑑𝑑𝑖𝑖𝑑𝑑𝑑𝑑 + 𝐷𝐷𝑐𝑐� (10)

たとえば, リチウムイオン蓄電池 8 直モジュールの各充電

電流量離散データ Qci [Ah]および各放電電流量離散データ

Qdi [Ah]の離散幅を 2.3Ah(初期容量基準の SOC に換算して

0.05 程度)とした場合の, 各充電電流量離散データ Qci [Ah]

における係数 Ai, Bi, および各放電電流量離散データ Qdi

[Ah]における係数 Ci, Diは, それぞれ表 3および表 4のよう

になる.

表 3,4 の係数 Ai, Bi, Ci, Diと式(9)(10)から得られる各充電

電圧離散データ Vci [V]および各放電電圧離散データ Vdi [V]

は, それぞれ各充電電流量離散データ Qci [Ah]および各放

電電流量離散データ Qdi [Ah]と対応する. 充電電圧 Vc(SOC)

[V]および放電電圧 Vd(SOC) [V]の 12 次多項式の推定のため

には前述のとおり, 充電率 SOC と対応した離散データベク

トルが必要なので, 各充電電流量離散データ Qci [Ah]およ

び各放電電流量離散データ Qdi [Ah]の値を変換する必要が

ある. 各充電電流量離散データ Qci [Ah]と各放電電流量離

散データ Qdi [Ah]について, 満充電容量 FCC [Ah]の範囲内

における離散データ数 n を無限大と仮定した場合 , 式

表 3 充電電圧 Vciと差電圧 Vdiff の関係式の係数

表 4 放電電圧 Vdiと差電圧 Vdiff の関係式の係数

(11)の関係が成立する.

𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹 = 𝑄𝑄𝑐𝑐𝑖𝑖 + 𝑄𝑄𝑑𝑑𝑐𝑐−𝑖𝑖 (11)

充電電圧離散データベクトルVcdig(SOC) [V]および放電電圧

離散データベクトル Vddig(SOC) [V]は式(3)(4)(7)(8)(11)より,

次の式(12)および(13)として表すことができる.

𝑉𝑉𝑐𝑐𝑑𝑑𝑖𝑖𝑐𝑐(𝑆𝑆𝑆𝑆𝐹𝐹) = 𝑉𝑉𝑐𝑐𝑑𝑑𝑖𝑖𝑐𝑐 �𝑄𝑄𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹

� = ∑ 𝑏𝑏𝑖𝑖 �𝑄𝑄𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹

�𝑖𝑖

12𝑖𝑖=0 (12)

𝑉𝑉𝑑𝑑𝑑𝑑𝑖𝑖𝑐𝑐(𝑆𝑆𝑆𝑆𝐹𝐹) = 𝑉𝑉𝑑𝑑𝑑𝑑𝑖𝑖𝑐𝑐 �𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹−𝑄𝑄𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐

𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹� = ∑ 𝑎𝑎𝑖𝑖 �

𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹−𝑄𝑄𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹

�𝑖𝑖

12𝑖𝑖=0 (13)

リチウムイオン蓄電池 8 直モジュールの満充電容量 FCC

[Ah]は, 図 4 に示した手法により差電圧 Vdiff [V]からリアル

タイムな値として推定することができるので, 式(12)(13)

によって充電電圧離散データベクトル Vcdig [V]および放電

電圧離散データベクトル Vddig [V]を充電率 SOC と対応した

離散データベクトルとすることができる. 従って, 充電電

圧離散データベクトル Vcdig [V]と放電電圧 Vddig [V]を幅広い

充電率 SOC の範囲で必要十分な要素数得ることができる

ようにあらかじめ係数 Ai, Bi, Ci, Diを係数ベクトルとして得

ておけば, 推定した充電電圧離散データベクトル Vcdig [V]

および放電電圧 Vddig [V]と, 式(14)(15)で定義した充電電流

量 Qc [Ah]および放電電流量 Qd [Ah]の離散データベクトル

から構成される入力ベクトル Xc, Xd を用いて, 式(18)(19)の

評価関数 Jc および Jd を最小にする最適化問題を解くこと

で, 充電電圧 Vc(SOC) [V]および放電電圧 Vd(SOC) [V]を表

す 12 次多項式の係数 ai, biを式(16)(17)に示す係数ベクトル

a, b としてフィッティングできる.

𝑋𝑋𝑐𝑐 =

⎜⎛�𝑄𝑄𝑐𝑐1𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹

�12

⋯ �𝑄𝑄𝑐𝑐1𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹

�0

⋮ ⋱ ⋮�𝑄𝑄𝑐𝑐𝑐𝑐𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹

�12

⋯ �𝑄𝑄𝑐𝑐𝑐𝑐𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹

�0

⎟⎞

(14)

𝑋𝑋𝑑𝑑 =

⎜⎛�𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹−𝑄𝑄𝑐𝑐1

𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹�12

⋯ �𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹−𝑄𝑄𝑐𝑐1𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹

�0

⋮ ⋱ ⋮�𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹−𝑄𝑄𝑐𝑐𝑐𝑐

𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹�12

⋯ �𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹−𝑄𝑄𝑐𝑐𝑐𝑐𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹

�0

⎟⎞

(15)

𝑎𝑎 = [𝑎𝑎1,𝑎𝑎2,⋯ ,𝑎𝑎12] (16)

𝑏𝑏 = [𝑏𝑏1,𝑏𝑏2,⋯ , 𝑏𝑏12] (17)

𝐽𝐽𝑐𝑐 = �𝑉𝑉𝑐𝑐𝑑𝑑𝑖𝑖𝑐𝑐 − 𝑎𝑎𝑋𝑋𝑐𝑐⊤� (18)

𝐽𝐽𝑑𝑑 = �𝑉𝑉𝑑𝑑𝑑𝑑𝑖𝑖𝑐𝑐 − 𝑏𝑏𝑋𝑋𝑑𝑑⊤� (19)

充放電試験開始から数えて 1 サイクル, 250 サイクル, 500

サイクル, 750 サイクルの時の充電電圧 Vc(SOC) [V]および

16

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放電電圧 Vd(SOC) [V]をこの最適化問題から推定した結果

を, 本論文で実施した定電力充放電試験で計測した充電電

圧[V]および放電電圧[V]と比較したものが図 7 および図 8

である. 実際の推定は 1~750 サイクルまでのうち, 1 サイ

クルおよび 5 の倍数のサイクルで実施したが, 図 7 及び図

8 では代表的な結果として 1, 250, 500, 750 サイクルのもの

を示した . このように , 前述した手法によって充電電圧

[V]および放電電圧 [V]の曲線が 12 次多項式として共に良

好に推定できることがわかる.

7.充放電電力量の推定と経済性推定モデルの考察

満充電容量 FCC [Ah]と, 充電電圧 Vc(SOC) [V]および放

電電圧 Vd(SOC) [V]の 12 次多項式がわかれば, 式(1)および

(2)によって SOC 0~1 全範囲の充電電力量 Ec [Wh]および放

電電力量 Ed [Wh]を推定することができる. そこで, 前述の

満充電容量 FCC [Ah], 充電電圧 Vc(SOC) [V]および放電電

圧 Vd(SOC) [V]の各推定手法と式(1)(2)を用いて, 本論文で

実施した定電力充放電試験の各サイクルにおける充放電電

力量 [Wh]を推定し, 実測値との比較を行った. その結果

を図 9に示す. 充放電サイクル 1~750 回の範囲での充電電

力量推定誤差は最大 11.45Wh (0.89%), 平均 2.67Wh (0.20%)

であり, また放電電力量推定誤差は最大 16.47Wh (1.34%),

平均 9.16Wh (0.71%)となっており, 良好に推定できること

がわかる. なお, 図 9 で特に 1~100 サイクルに見られる比

較的大きな充放電電力量の変動は, 満充電容量 FCC [Ah]の

変動によって生じている. この初期サイクルにおける満充

電容量 FCC [Ah]の変動は, 図 10 に示す放電曲線末端領域

の不規則な変動によって生じている. これは充放電サイク

ル以前の保管履歴による容量誤差が充放電サイクルととも

に解消する過程と推察される 14).

図 7 充電電圧 Vc(SOC)の推定結果と充電電流レート

充放電電力量 [Wh]の推定ができれば定置用蓄電池の経

済性を推定することができる. 定置用蓄電池の運用形態は

種々あるが, ここでは電気料金の高い時間帯に蓄電池を放

電し, 安い時間帯に充電する運用方法における経済性推定

を検討した. なお, 定置用蓄電池は一般的に蓄電池モジュ

ールを複数個直列に接続したものであるが, ここでは小ス

ケール条件としてリチウムイオン蓄電池 8 直列モジュール

1 個あたりの経済性を考慮し, 蓄電システムの蓄電池以外

の部分の電力消費, 効率は無視した. すなわち, 一般的に

定置用蓄電池は, 直流の蓄電池と交流の電力系統の間に直

流交流変換器が導入されている. 従って定置用リチウムイ

図 8 放電電圧 Vd(SOC)の推定結果と放電電流レート

図 9 充放電電力量の推定結果および実測 FCC の推移

17

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図 10 放電曲線末端領域の不規則変動(第 1 サイクルと以

降 5 サイクル毎のグラフ. 第 1~145 サイクルおよび第

155~750 サイクルの間でそれぞれ階調を付けている. )

オン蓄電池の現実的な経済性はこの直流交流変換器の効率

を含めて検討すべきであるが, 変換器の効率は一定である

ため, 本論文では経済性の経時変化に帰着するリチウムイ

オン蓄電池の劣化のみを考慮した.

価格が高い時間帯の電気料金を Thigh [円/kWh], 安い時間

帯の電気料金を Tlow [円/kWh]とすると, リチウムイオン蓄

電池 8 直列モジュールの充放電サイクル 1 回分の経済メリ

ット G [円/kWh]は充電電力量 Ec [Wh]および放電電力量 Ed

[W]を用いて式(20)で表される.

𝐺𝐺 = 𝑇𝑇ℎ𝑐𝑐𝑐𝑐ℎ𝐸𝐸𝑐𝑐−𝑇𝑇𝑙𝑙𝑙𝑙𝑙𝑙𝐸𝐸𝑐𝑐1000

(20)

本論文で実施したリチウムイオン蓄電池 8 直モジュールの

定電力充放電試験において, 各充放電サイクルにおける差

電圧 Vdiff [V]から充電電力量 Ec [Wh]および放電電力量 Ed

[Wh]を推定し, そこから導かれた各充放電サイクルの推定

経済メリットG [円/kWh]を現実の値と比較したものを図11

に示す. なお, ここでは東京電力エナジーパートナーのス

マートライフプラン(2017 年 12 月 15 日時点)を参考に Thigh

= 25.33, Tlow = 17.46 とした.

一般に蓄電池の経済メリット G [円]が最も高い値となる

のは, 蓄電池の満充電容量 FCC [Ah]および充放電エネルギ

ー効率 [Wh/Wh]が高い値である新品の時であり, また最

も低い値となるのは劣化が進んで満充電容量 FCC [Ah]お

よび充放電効率 [Wh/Wh]が低い値となる寿命末期の時で

ある. リチウムイオン蓄電池の場合, 満充電容量 FCC [Ah]

が新品の時の 60%または 80%に低下した時を寿命末期と定

義することが通例である 15, 16). ここで, 新品の蓄電池の経

済メリット Gnew [円]を 1, 寿命末期の蓄電池の経済メリッ

トGend [円]を0とし, 現在の蓄電池の経済メリットGcurr [円]

の状況を示す新しい蓄電池の経済性指標として, 式(21)で

定義する SOEc(State of Economy)を提案する.

図 11 各サイクルの Vdiff から推定された経済メリット G

𝑆𝑆𝑆𝑆𝐸𝐸𝑐𝑐 = 𝐺𝐺𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐−𝐺𝐺𝑒𝑒𝑐𝑐𝑐𝑐𝐺𝐺𝑐𝑐𝑒𝑒𝑙𝑙−𝐺𝐺𝑒𝑒𝑐𝑐𝑐𝑐

(21)

電気の時間帯別料金体系が変化せず, リチウムイオン蓄

電池の劣化傾向も変化しないと仮定すると, 経済メリット

G [円]を決定する要素である満充電容量 FCC [Ah], 充電電

圧 Vc(SOC) [V], 放電電圧 Vd(SOC) [V]は, 全て満充電時の過

渡特性から差電圧 Vdiff [V]を計測することで推定可能であ

る. つまり, この SOEc は, 運用中の定置用リチウムイオン

蓄電池の差電圧 Vdiff [V]をパラメータとして推定できると

言える. 新品の蓄電池の経済メリット Gnew [円]は, 蓄電池

の運用開始時の差電圧 Vdiff [V]から容易に満充電容量 FCC

[Ah], 充電電圧 Vc(SOC) [V], 放電電圧 Vd(SOC) [V]を推定で

きるので, 式(1)(2)によって充電電力量 Ec [Wh]および放電

電力量 Ed [Wh]を推定し式(20)で計算可能である. リアルタ

イムの経済メリット Gcurr [円]は, 差電圧 Vdiff [V]を図 3 の方

法でリアルタイムに計測し, 式(22)で満充電容量 FCC [Ah]

を推定し, 式(9)~(19)を用いたフィッティングにより充電

電圧 Vc(SOC) [V]および放電電圧 Vd(SOC) [V]の 12 次多項式

を求め, 式(1)(2)(20)により推定することができる. 課題と

なるのは寿命末期の経済メリット Gend [円]の推定である.

ここで, 寿命末期として定義する満充電容量 FCC [Ah]を新

品のそれの Lendrate倍とし, 図 4に示した差電圧 Vdiff [V]と満

充電容量 FCC [Ah]の関係を式(22)とすると, 寿命末期差電

圧 Vdiffend [V]は新品の時の差電圧 Vdiff0 [V]から式(23)で求め

られる.

𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹 = 𝑀𝑀𝑉𝑉𝑑𝑑𝑖𝑖𝑑𝑑𝑑𝑑 + 𝑁𝑁 (22)

𝑉𝑉𝑑𝑑𝑖𝑖𝑑𝑑𝑑𝑑𝑑𝑑𝑐𝑐𝑑𝑑 = 𝐿𝐿𝑑𝑑𝑐𝑐𝑑𝑑𝑒𝑒𝑒𝑒𝑒𝑒𝑑𝑑 �𝑉𝑉𝑑𝑑𝑖𝑖𝑑𝑑𝑑𝑑0 + 𝑁𝑁𝑀𝑀� − 𝑁𝑁

𝑀𝑀 (23)

この寿命末期差電圧 Vdiffend [V]および式(18)(19)の最適化問

題によるフィッティングにより , 寿命末期の充電電圧

Vc(SOC) [V]および放電電圧 Vd(SOC) [V]の 12 次多項式が得

18

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られる. また, 寿命末期差電圧 Vdiffend [V]と式(22)から寿命

末期の満充電容量 FCC [Ah]を求められる. 従って, 式(1)(2)

によって充電電力量 Ec [Wh]および放電電力量 Ed [Wh]を推

定し, (20)により寿命末期経済メリット Gend [円]を求めるこ

とができる. 前述と同様に Thigh = 25.33, Tlow = 17.46 とした

場合の, 寿命定義 Lendrate と寿命末期経済メリット Gend [円]

の関係を図 12に示す. このように蓄電池が寿命末期に到達

していない段階で寿命末期経済メリット Gend [円]が推定で

きることは重要である.

このようにして推定された各タイミングでの蓄電池の経

済メリット[円]と式(21)から SOEc を求めることができる.

例えば, 本研究で用いたリチウムイオン蓄電池 8 直モジュ

ールにおいて寿命定義 Lendrateを 0.6, 0.7, 0.8 とすると, リア

ルタイムの差電圧 Vdiff [V]と経済性指標 SOEcの関係が図 13

のようになる. 以上のように, あらかじめ差電圧 Vdiff [V]と,

満充電容量 FCC [Ah]および充電電圧 Vc(SOC) [V], 放電電

圧 Vd(SOC) [V]の関係を求めておけば, そこから経済性指標

SOEc の値をリアルタイムに得ることができる. 仮想発電

図 12 Lendrateと寿命末期経済メリット Gendの関係

図 13 差電圧 Vdiff と経済性指標 SOEcの関係

所などの分散協調型システムとして運用フィールドに設置

された定置用リチウムイオン蓄電池の経済性指標 SOEcを

リアルタイムに得ることができれば, 協調制御している定

置用リチウムイオン蓄電池群の中からより収益性の高いも

のを選択して運用することができ, 経済的なバッテリーア

グリゲーションの実施につながる.

定置用リチウムイオン蓄電池の価格と寿命に関する

2020 年頃の目標値は流通コストも含めて 9 万円/kWh12), 15

~20 年程度 17)となっている. 本論文のリチウムイオン蓄電

池 8 直モジュールの寿命を 20 年, 寿命定義 Lendrate = 0.8, 1

サイクル/日の頻度で充放電, 満充電容量 FCC はルート則

18)で減少するとし, 電気料金 Thigh = 25.33, Tlow = 17.46(とも

に前述の東京電力エナジーパートナーの電気料金)と仮定

した場合, 寿命期間におけるピークシフトの推定経済メリ

ットは約 4.1 万円/kWh であり, これは価格に満たない.

蓄電池の導入コスト回収のためには上述のピークシフト

に加えて固定価格買取制度が終了した太陽光発電余剰電力

対策 4)からも経済メリットを得る必要がある. その際の

SOEc 導入効果の分析としては以下に述べるとおりである.

本論文で使用したリチウムイオン蓄電池 8 直モジュールを

ベースとした 10kWh の蓄電池が 100 台, 新品から寿命末期

まで時間軸方向に一様に分散して設置・アグリゲーション

されているとする. このとき 100台の蓄電池の SOEc毎のヒ

ストグラムは, ルート則と式(1)(2)(9)~(22)より図 14 にな

る. 運用は上述のピークシフトに加え, 太陽光発電余剰電

力を容量 1kWh あたり 1 日平均 750Wh 受入れる想定とす

る. 式(20)の Tlow はピークシフトでは蓄電池充電のための

買電価格であるが, 太陽光発電余剰電力対策ではその時の

卸電力取引価格で売れる電気を売らずに充電に使う. これ

は卸電力取引価格で買電することと同等である. またこの

充電分は電力会社の電気料金が高い時間帯に放電される.

従ってこのときの電気料金は Thigh = 25.33(前述の東京電力

エナジーパートナーの電気料金), Tlow = 8.89(JEPX のシステ

ムプライス, すなわちスポット取引から得た全国大の売買

入札曲線の交点価格 19),の 2017 年の平均値)とすることがで

図 14 SOEc導入効果分析における 100 台の蓄電池の SOEc

毎のヒストグラム

劣化の進行方向

19

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きる. また直流交流変換器の効率は往復で 0.9 とする. 高

SOEc の蓄電池優先で運用すると, 寿命期間の推定経済メリ

ットは約 9.0 万円/kWh (運用平均 SOEc=0.86)となって導入

コスト目標の 9 万円/kWh に達する. 一方, SOEcを考慮せず

余剰電力をランダムに蓄電池に受入れると, 推定経済メリ

ットは約 8.8 万円/kWh(運用平均 SOEc=0.64) に低下する.

このように各蓄電池の SOEc を把握して最適運用すること

で, 経済性向上につながる.

8.おわりに

バッテリーアグリゲーションでは多数の定置用蓄電池を

統合し協調制御して運用する. 収益の機会を逃さず, かつ

収益を最大化するためには, 蓄電池の劣化状態をリアルタ

イムに把握し, 実際にどのような動作をするかを事前予測

して収益性を推定するとともに, 最適な蓄電池を選択して

運用する必要がある. 本論文ではそのためのリチウムイオ

ン蓄電池モジュールの経済性指標 SOEc を提案し, 比較的

単純な充放電条件での経済性推定手法を示した. 実際の定

置用リチウムイオン蓄電池の運用では温度, 電流(充放電

のレート, パルス条件)等の面で複雑に運用されることが

予想されるので, どのような運用条件でも一般的に対応で

きる手法が求められると考えられる. 従って, この劣化診

断・経済性推定を材料パラメータが不要な簡便手法として

維持しながら, 他方で定置用蓄電池の複雑な運用条件に追

従して対応できる一般的な手法とすべく, 今後これらの両

立を目指した改良改善を進める必要がある.

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