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17JEITA-標技第3103号

ツイストペア情報配線システム

トラブルシューティングガイド

平成17年12月

社団法人 電子情報技術産業協会

情報配線システム標準化委員会

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- - 1

―― 目 次 ――

目 次 1

はじめに 2

1章 情報配線システム規格概要 3

1.1 規格体系 3

1.2 規格標準化動向 4

1.3 ネットワーク規格と情報配線規格 5

1.4 規格の基礎 6

1.5 カテゴリ 6規格の留意点 10

1.6 配線設計のポイント 14

2章 フィールドテストの留意点 19

2.1 フィールドテスタの測定確度 19

2.2 合否判定基準 21

2.3 マージナルパス 22

2.4 フィールドテスト規格 22

2.5 テストアダプタの選定 24

2.6 dBルール 25

2.7 外来ノイズ 26

2.8 テストレポートの読み方 27

3章 不適切な施工とトラブル要因 31

3.1 ケーブル敷設時のトラブル 32

3.2 コネクタ成端時のトラブル 37

3.3 環境要件のトラブル 39

4章 トラブルシューティング技法 40

4.1 トラブルシューティングフロー 40

4.2 不合格(Fail)パラメタ解説 42

4.3 障害と要因の対応表 70

終わりに 71

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はじめに

1990年に米国で制定された「商用ビル情報配線規格:TIA/EIA-568」発行以降、ネットワークシステム

の高速化と共に、情報配線システムも急速な広帯域化と技術革新が進みました。

従来、電話用通信線として主に利用されていた平衡ケーブル(UTP: Unshielded Twisted Pair Cable, 以

下UTP)の取扱いの容易さと、他の通信メディア(同軸・光ファイバケーブル)に比べ安価であるという

特徴に加え、高速・大容量通信への対応を可能とした改善・改良により、ネットワークアプリケーショ

ンを中心とした、様々なアプリケーションをサポート可能な通信メディアへと成長してきました。現在

では、商用ビル内という枠を超え、あらゆる建築物の情報通信インフラとして、無くてはならない物と

して定着しています。

高速・広帯域通信を実現する技術(Technology)は大きく進歩してきましたが、情報配線システムを

構築する技術(Technique)については、あまり注目されることはありませんでした。

しかし、この構築する技術こそ広帯域化する情報配線システムの生命線であり、いかに優れたコンポ

ーネントを使用しても、不十分な構築技術では、システムとしての性能を発揮することは出来ません。

一見、単純に見える UTPですが、単純であるが故のデリケートさを併せ持っていますので、構築に際し

ては、その通信原理と施工のポイントを理解しておくことが重要となります。

ネットワークシステムの急速な普及によって、専門技術を習得することなく、情報配線システムを構

築しなければならなくなった施工者(会社)も数多く存在すると思われます。また、施工者に加え、構

築を依頼する発注者及び、施工管理技術者も同様に、十分な専門知識を習得する機会を逃し、施工者任

せになっているケースもあります。こういった状況で構築された情報配線システムは、長期的に使用す

る設備として十分な機能を維持することは出来ません。

情報配線システムは、一度構築してしまうと再構築が難しく、その再構築費用も初期構築費を大きく

上回ってしまう為、初期構築段階から長期的な利用を前提とした設計・施工・コンポーネント選定が重

要となります。

本書では、情報配線システムの設計・施工・施工管理及び、発注時に予想されるトラブルを、事例を

交え解説すると共に、最新情報配線システムの標準規格、不具合の要因、フィールドテスタを利用した

トラブルシューティング技法をまとめ、情報配線システムの構築に関わる施工者および発注者・施工管

理者等の方全般に活用して頂ける内容となっています。

情報配線システム標準化委員会

ツイストペア情報配線システムグループ

アプリケーション技術調査WG

リーダ 新田 貴代志

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1章 情報配線システム規格概要

本章はトラブルシューティングガイドを理解する上での基礎的な知識について説明します。情報配線

の規格の体系、使用する規格標準化の動向、応用システムと情報配線規格の関係を説明するとともに、

規格の基礎として情報配線システムの構成及びカテゴリ6(以下、Cat.6)の規格の留意点を説明します。

1.1 規格体系

現在国内で使用される情報配線の規格には次の3つがあります。

ISO/IEC11801 : Information Technology-Generic Cabling for Customer Premises

JIS X 5150 : 構内情報配線システム

ANSI/TIA/EIA-568 : Commercial Building Telecommunications Cabling Standard

日本標準のJIS X 5150はJEITA:電子情報技術産業協会が国際標準のISO11801を完全翻訳し

て使用しているので同じ規格と言えます。次の図は情報配線の標準を制定している機関と情報配

線の規格の関係を示しています。

<備 考>

各国標準としては「EN50173」の他にカナダ、オーストラリア/ニュージランドでもそれぞれ配

線規格を発行しています。また、情報通信(ネットワーク)に関する規格は「IEEE802.**」があ

り10BASE-T、100BASE-TX、1000BASE-**等の応用システムの規格が制定しています。

図1-1 情報配線規格体系図

ISO 「国際標準化機構」

International Organization for Standardization

IEC 「国際電気標準会議」

International Electrotechnical Commission

JIS 「日本工業規格」

Japan Industrial Standard

CENELEC 「欧州電気標準化委員会」

ANSI 「(米国)国際標準化組織」

American National Standard Institute

TIA 「(米国)通信工業会」

Telecommunication Industries Alliance

EIA 「(米国)電子工業会」

Electric Industries Alliance

IEEE 「(米国)電気電子学会」

Institute of Electrical and Electronic Engineers

ISO/IEC 11801

JIS X 5150

EN50173

ANSI/TIA/EIA-568

IEEE802.3**

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1.2 規格標準化動向

下図は規格標準化の遷移を示しています。

1.2.1 米国標準の商用ビル通信配線規格の遷移

ANSI/TIA/EIA-568B-2は新規に敷設するカテゴリ5(以下、Cat.5)の配線規格です。この規格を

満足する配線がカテゴリ5e(以下、Cat.5e)と呼ばれ1000BASE-Tに必要な規格を定めています。

2002年のANSI/TIA/EIA-568B-2-1には1000BASE-TX の応用システムに必要なCat6の規格が制

定されました。

1.2.2 国際標準の構内情報配線システムの遷移

2000年のISO/IEC11801 Amendment1,2はチャネルとパーマネントリンクを定義し、クラス Dの

規格が修正され1000BASE-Tに必要な規格を定めています。

2002年のISO/IEC11801:2002はクラス E (Cat.6)及びクラス Fの規格が含まれ1000BASE-TXの

応用システムに必要な規格を定められています。

日本の構内情報配線システムの遷移は多少の遅れは有りますが国際規格の ISO/IEC11801

2ndEditionの発行を受け、2004年6月にJIS X 5150:2004版が発行されました。

図1-2 情報配線規格の変遷

ANSI/TIA/EIA-568A

米国における商用ビル

通信配線規格

ISO/IEC-11801

構内情報配線システム

JIS X 5150

構内情報配線システム

568A-A5

Cat.5E

Amd.1 Amd.2

追補1

568B1/2/3

B2-1(Cat.6)

2nd Edition

2004 年版

95 年 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05

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1.3 ネットワーク規格と情報配線規格

表1-1はネットワーク規格に関係する情報配線規格を示しています。1000BASE-TXの応用システ

ムを使用するネットワークの情報配線システムではTIA/EIA-568B2-1 Cat6又はJIS X 5150:2004 ク

ラス Eの規格が適用されることを示しています。

敷設済みのCat.5配線で、1000BASE-Tの応用システムが使用可能かを試験するためにはTSB-95

Cat5又はJIS X 5150:2000 クラス Dの規格が適用されます。

表1-1 ネットワーク規格と配線規格

ネットワーク

規格 データレート

ケーブル

規定帯域 必要対数 情報配線規格

1000BASE-Tx 1000Mbps 250MHz 4対 TIA/EIA-568B2.1 CAT-6

JIS X 5150/2004 クラス E

1000BASE-T 1000Mbps 100MHz 4対 TIA/EIA-568B CAT-5E,TSB-95

JIS X 5150/2004 クラス D

ATM 155Mbps 100MHz 2対 TIA/EIA-568A CAT-5

JIS X 5150/2004 クラス D

100BASE-Tx 100Mbps 100MHz 2対 TIA/EIA-568A CAT-5

JIS X 5150/2004 クラス D

Token Ring 16Mbps 20MHz 2対 TIA/EIA-568A CAT-4

10BASE-T 10Mbps 16MHz 2対 TIA/EIA-568A CAT-3

JIS X 5150/1996 クラス C

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1.4 規格の基礎

1.4.1 構造化配線

情報配線システムは構内幹線、ビル内幹線及び水平配線の3種類の配線サブシステムからな

り、それぞれのサブシステムは配線盤で相互に接続されます。

構内幹線配線サブシステムは、構内配線盤(CD)から通常別のビルに設置されているビル内

配線盤(BD)までの接続を言います。このサブシステムに含まれる物は以下の接続です。

(ア) 構内幹線ケーブル

(イ) ビル内引込み設備内の配線要素

(ウ) 構内配線盤内のジャンパ及びパッチコード

(エ) 構内幹線ケーブルが終端される接続器具(構内及びビル内配線盤の両方)

ビル内幹線配線サブシステムは、ビル内配線盤(BD)からフロア配線盤(FD)までの接続

をいいます。このサブシステムに含まれるコンポーネントは

(ア) ビル内幹線ケーブル

(イ) ビル内配線盤内のジャンパ及びパッチコード

(ウ) ビル内幹線ケーブルが終端される接続器具(ビル内及びフロア配線盤の両方)

水平配線サブシステムは、フロア配線盤(FD)から通信アウトレット(TO)までの接続を言

います。このサブシステムに含まれるコンポーネントは

(ア) 水平ケーブル

(イ) フロア配線盤内のジャンパ及びパッチコード

(ウ) 通信アウトレットにおける水平ケーブルの機械的な終端、例えばインタコネクト又はク

ロスコネクト

(エ) 分岐点(任意追加)

(オ) 通信アウトレット

図1-3 構造化配線システム接続例

CD:構内配線盤 FD:フロア配線盤 BD:ビル内配線盤TO:通信アウトレット CP:分岐点(任意)

CDBD

FD

FD

FD

BD/FD

FD

FD

FD

1F

2F

3F

4F

TO

TO

TO

CP

ビル1 ビル2

構内幹線ケーブル

ビル内幹線ケーブル

水平ケーブル

CD:構内配線盤 FD:フロア配線盤 BD:ビル内配線盤TO:通信アウトレット CP:分岐点(任意)

CDBD

FD

FD

FD

BD/FD

FD

FD

FD

1F

2F

3F

4F

TO

TO

TO

CP

ビル1 ビル2

構内幹線ケーブル

ビル内幹線ケーブル

水平ケーブル

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1.4.2 リンク構成

水平配線におけるリンク構成は、配線区間によりパーマネントリンクとチャネルに分けられま

す。配線盤と通信アウトレット間又はマルチユーザ通信アウトレットの永久的に配線変更が無い

伝送路をパーマネントリンクと呼び、パーマネントリンクにパッチコードやワークエリアコード

を接続し、機器へ接続されるまでの伝送路をチャネルと呼びます。

<構成要素>

(ア) フロア配線盤(FD)

(イ) 分岐点(CP)

(ウ) 通信アウトレット(TO)

(エ) マルチユーザ通信アウトレット(MUTO)

(オ) 配線ケーブル

(カ) 機器コード

(キ) ワークエリアコード

(ク) CPケーブル

(ケ) パッチコード/ジャンパ

図1-4 水平配線システム例

CP

ネットワーク機器等

パッチパネル

パッチパネル

TO

TO

TOHorizontal Cable

1次

2次Telecommunications Outlet

(通信アウトレット)

Consolidation Point(分岐点)

MUTO: Multi User Telecommunications Outlet Assembly

Cross Connect

Channel

Permanent Link

Inter Connect

MUTO

ワークエリアコード

ワークエリアコード

CP Link

CP Cables

(マルチユーザ通信アウトレット)

CP

ネットワーク機器等

パッチパネル

パッチパネル

TO

TO

TOHorizontal Cable

1次

2次Telecommunications Outlet

(通信アウトレット)

Consolidation Point(分岐点)

MUTO: Multi User Telecommunications Outlet Assembly

Cross Connect

Channel

Permanent Link

Inter Connect

MUTO

ワークエリアコード

ワークエリアコード

CP Link

CP Cables

(マルチユーザ通信アウトレット)

FD

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(1) パーマネントリンク

パーマネントリンクは、配線盤と通信アウトレット間又はマルチユーザ通信アウトレットの

永久的に配線変更が無い伝送路でパッチパネル及び通信アウトレットの接続部分を含みます。

叉パーマネントリンクは分岐点(CP)を含むことが出来、パーマネントリンク内での接続箇所

は最大3カ所、配線ケーブル長は最長90mです。また配線盤からCP迄のケーブル長は15m以

上にする必要があります。

図1-5 パーマネント リンク

CP

ネットワーク機器等

パッチパネル

パッチパネル

TO

1次

2次

Permanent Link (max 90m)

MUTO

Horizontal CableEquipment

CordPatchCord

Work AreaCord

接続個所:最大3個所

EquipmentCord

CP Link

CP

ネットワーク機器等

パッチパネル

パッチパネル

TO

1次

2次

Permanent Link (max 90m)

MUTO

Horizontal CableEquipment

CordPatchCord

Work AreaCord

接続個所:最大3個所

EquipmentCord

CP LinkFD

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接続個所:最大4個所

(2) チャネル

チャネルは、パーマネント リンクに機器コード、パッチコード及びワークエリアコードを含

んだ伝送路で、機器の接続器具は含みません。またチャネルの最大接続箇所は4カ所でチャネ

ルの最大長は100mです。

パーマネントリンクの最大長は90mですが、両端に接続される機器コード、パッチコード及

びワークエリアコードの長さによりパーマネント リンク長も変わります。この考え方について

は「17 JEITA-標技第3018号 構内情報配線システム JIS X5150:2004 用語解説集」の「11.

水平リンク長に関する注意事項」を参照願います。

図1-6 チャネル

CP

ネットワーク機器等

パッチパネル

パッチパネル

TO

Horizontal Cables

1次

2次

Channel Link

MUTOAs

EquipmentCord

PatchCord

Work AreaCord

MAX 90m

CP

ネットワーク機器等

パッチパネル

パッチパネル

TO

Horizontal Cables

1次

2次

Channel Link

MUTOAs

EquipmentCord

PatchCord

Work AreaCord

MAX 90m

FD

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1.5 クラスE(カテゴリ6)規格の留意点

コンポーネントの規格として、カテゴリ 6 の規格が規定されたことにより、カテゴリ 5(カテゴリ 5e)に比べ、コンポーネント及びシステムの伝送帯域が、100MHz→250MHzへと、2.5倍に広帯域化しました。

広帯域化に伴い、情報配線システムの設計・施工に関する、新たな技術要件が追加されています。

これらの留意点は、チャネルにおいてクラスEの性能を保証すると共に、将来のネットワークアプリケーションの安定した動作を保証するために必要な要件となります。

1.5.1 下位互換性(Backward Compatibility)

下位互換性とは、「異なったカテゴリのコンポーネントを接続した場合、その接続部の特性は、

低いほうのコンポーネントのカテゴリを満足する。」ことを意味しており、メーカに対して、下

位互換性の確保を要求しております。

例えば、カテゴリ5のプラグとカテゴリ6のジャックをかん合させた場合、かん合部の特性として、カテゴリ5の特性が保障されていることを意味しております。 一般的に、下位カテゴリのコンポーネント性能を、上位カテゴリのコンポーネントが、満足

する事は当然であり、また容易な事と思われますが、複数の部材を組合せて使用する情報配線

システムにおいては、その接続性能を確保することは、実際には容易な事ではありません。

配線設計者あるいは施工者の立場から下位互換性を考えると、情報配線システムのどこか 1か所にでも下位カテゴリのコンポーネントが使用されている場合には、その配線全体の特性と

しては、最低のカテゴリのコンポーネントの性能に依存してしまうことを、十分に認識してお

く必要があります。

以下のような場合には、下位互換性を意識したコンポーネントの選定が重要となります。

・ 既存の配線システムに対して、追加的に増設する場合

・ 将来的に配線システムの拡張又はカテゴリのアップが想定される場合(例えば、幹線

配線又は水平配線のみに、カテゴリ6のコンポーネントを先行的に施工するようなこがあります。)

表1-4 かん合されたモジュラコネクタの下位互換性能

モジュラコネクタの性能

カテゴリ 3 カテゴリ 5 カテゴリ 5e カテゴリ 6

カテゴリ 3 カテゴリ 3 カテゴリ 3 カテゴリ 3 カテゴリ 3

カテゴリ 5 カテゴリ 3 カテゴリ 5 カテゴリ 5 カテゴリ 5

カテゴリ 5e カテゴリ 3 カテゴリ 5 カテゴリ 5e カテゴリ 5e

モジュラジャック

及び コード性能

カテゴリ 6 カテゴリ 3 カテゴリ 5 カテゴリ 5e カテゴリ 6

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モジュラコネクタモジュラプラグ及びコード

カテゴリ5+カテゴリ6 →カテゴリ5カテゴリ6+カテゴリ5e→カテゴリ5e

図1-7 下位互換性 概念図

1.5.2 相互接続性(Inter Operability)

相互接続性とは、異メーカのコンポーネントを相互に接続したときの接続部の性能が、単一

メーカのコンポーネントを接続したときと同様に、コンポーネントの性能を維持することを意

味しており、メーカに対して、下位互換性の確保を要求しております。

(例えば、A社のカテゴリ 6のプラグとB社のカテゴリ 6のジャックをかん合させたとき、その接続特性が、カテゴリ6の性能を満足する事が、カテゴリ6コンポーネントに要求されております。)

各メーカのコンポーネントは、規格に基づき設計・製造されているため、コンポーネント単体

の特性は、規格性能を満足しています。しかし、インピーダンスのミスマッチによって起きる

反射(RL)や、NEXT特性などは、各メーカのデザインコンセプトの違いから、異メーカコンポネントを接続した場合には、規格特性を保証出来なくなる可能性が生じます。

これでは、規格の意味が無くなってしまうことから、各特性規格を規定している他に、メー

カ間の接続性能に関する規格を確保することを求めています。

図1-8 相互接続性概念図

1.5.3 ショートリンク

ショートリンクについて、JIS X 5150 では次のように規定しております。 ・ 水平配線においては、CPはフロア配線盤から少なくとも15m以上離れた位置に置かなければならない。

・ 幹線配線においては、チャネル内で4つの接続点がある場合、幹線ケーブルの物理長は、少なくとも15mにすべきである。

NEXTやRLのような不要信号(ノイズ)は、配線の全ての場所において発生しております

Signal in Signal out

ZS

A社 B社 C社 A社B社

パッチコード パッチパネル 水平ケーブル アウトレット 機器コード

Z4Z3Z1 Z2 Z5

標準インピーダンス規格 100Ω:信号反射

Signal in Signal out

ZS

A社 B社 C社 A社B社

パッチコード パッチパネル 水平ケーブル アウトレット 機器コード

Z4Z3Z1 Z2 Z5

標準インピーダンス規格 100Ω標準インピーダンス規格 100Ω:信号反射:信号反射

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が、接続か所においては、そのレベルが特に大きくなっております。

ショートリンクでは、これらの不要信号が減衰することなく戻って来てしまう為、規定され

た特性を満たすことが困難となります。この問題は、回避が難しいため、ショートリンクの規

定が設けられました。配線設計時には、このことを十分に考慮することを推奨します。

図1-9 ショートリンク概念図

1.5.4 環境温度と挿入損失

ケーブル敷設環境温度により、挿入損失が増加します。挿入損失の増加により、伝送帯域が

減少してしまうため、高温度環境へケーブルを敷設する場合は、あらかじめリンク長を短く設

定し、配線設計しなくてはなりません。また、フィールドテスト時とシステム利用時の温度差

が大きい場合には、挿入損失の測定結果を利用時の温度条件に換算し評価する必要があります。

規格では、UTP ケーブルの場合で、20℃~40℃の温度環境下では、1℃あたり 0.4%の損失増加、40℃~60℃では0.6%損失が増加すると規定されています。(STPケーブルにも同様な規定がありますので、規格を参照してください。)

表1-5 環境温度によるリンク長の格下げ幅

環境温度 リンク長 格下げ長

20℃ 90.0 m 0 m 25℃ 89.0 m 1.0 m 30℃ 87.0 m 3.0 m 35℃ 85.5 m 4.5 m 40℃ 84.0 m 6.0 m 45℃ 81.7 m 8.3 m 50℃ 79.5 m 10.5 m 55℃ 77.2 m 12.8 m 60℃ 75.0 m 15.0 m

図1-10 温度上昇による帯域の減少

Signal in Signal out

パッチコード パッチパネル 水平ケーブル アウトレット 機器コード

:信号反射

通常Link

Short Link

:RL

Signal in Signal out

パッチコード パッチパネル 水平ケーブル アウトレット 機器コード

:信号反射

通常Link

Short Link

:RL

帯域減少

@40℃

PSNEXT @20℃

Insertion Loss

dB

MHz周波数帯域

帯域減少帯域減少

@40℃@40℃@40℃

PSNEXTPSNEXT @20℃

Insertion Loss

@20℃

Insertion Loss

@20℃

Insertion Loss

dB

MHz周波数帯域周波数帯域

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<参考>

情報配線標準化委員会による実験の結果、90mのパーマネントリンクでは、40℃で挿入損失が規格範囲外となっています。このことからも、設計段階よりケーブル敷設環境の温度に配慮

し、高温度環境や温度変動が大きい場所にケーブルが敷設される場合は、規格値(90m)より短く設計する必要があります。また、フィールドテスト結果において、挿入損失マージンが極端に

少ない(1~2dB)場合は、環境温度変化により規格値外となる可能性があることを意識しておく必要があります。

1.5.5 パッチコードの影響

パッチコードは、情報配線システム全体に及ぼす影響が大きいコンポーンネントであり、特

にクラスEの情報配線システムでは、その影響が顕著であるため、選定・使用方法には、注意が必要となります。

・ パーマネントリンク特性との整合性のあるものを選定する。

どこのメーカのものか分からないものでは、クラスEのチャネル特性を満足できなくなる可能性があります。

・ 曲げや捕縛方法等の処理に配慮し、パッチコードにストレスを加えない。

・ モジュラプラグの現地加工には、要注意。

(パッチコード単体でのフィールドテストが現状困難であるため、その性能を確認できる

環境や手段が無い状況下では、現地加工によるパッチコード作成は推奨できません。)

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1.6 配線設計のポイント

情報配線システムの技術的な進歩により、高速・広帯域通信を実現する条件は整いました。しか

し、これらの技術は「Technology」であり、正しく使う技術「Technique」が伴わなければ、性能を発揮することは出来ません。

ネットワークシステムの普及と共に、情報配線システムも広く普及してきましたが、ネットワー

ク構築技術に比べ、情報配線システム構築技術の重要性は、あまり認知されていません。

しかし、企業内 ITシステム(ネットワークシステム・有線電話(IP電話)・セキュリティシステム等)は、全て情報配線システムの上で動作し、その用途は今後も拡大して行きます。

情報配線システムは、電気・空調設備と同様に建築物及び、企業経営に無くてはならない設備とし

て位置付け、長期的な活用を前提とした設計を行わなければなりません。

規格を正しく理解し、有効に活用することで、使いやすく効果的で信頼性の高い情報配線システ

ムを設計することが出来ます。

1.6.1 インタコネクト方式

インタコネクト方式とは、パッチパネルとネットワーク機器等を直接パッチコードで接続す

る方式(図1-11)です。1台のラックに機器及び、パッチパネル等の構成部品を全て収容する場合に有効な方式です。

図1-11 インタコネクト接続概念図

【 長 所 】

・ 導入コストの低減

・ 省スペース

・ 少ポート構成時に有効

【 短 所 】

・ 機器ポートへのアクセスによるセキュリティ・信頼性の低下

・ 多ポート(高密度実装)機器の場合、接続変更が困難。

 機 器

ワークエリアへ

Horizontal Cables

equipmentコード

 機 器

ワークエリアへ

Horizontal Cables

ワークエリアへ

Horizontal Cables

equipmentコードequipmentコード

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1.6.2 クロスコネクト方式

クロスコネクト方式とは、パッチパネルを2枚(1次側、2次側)使用し、接続変更はパッチパネル間で行う方式(図 1-12)です。高密度ポート実装機器や、複数のラックに機器が分散し

て設置される場合(データセンター等)に有効な方式です。

図1-12 クロスコネクト概念図

【 長 所 】

・ 作業性、運用管理性の向上

・ 機器と分離した設置が可能(セキュリティ向上)

・ 独立した管理により、追加・変更を単独に行える

【 短 所 】

・ 設置面積がインタコネクト方式の2倍と広い ・ 導入コストが高い

 機 器

equipmentコード

ワークエリアへ

Horizontal Cables

パッチコード

 機 器

equipmentコード

ワークエリアへ

Horizontal Cables

パッチコード

 機 器

equipmentコードequipmentコード

ワークエリアへ

Horizontal Cables

ワークエリアへ

Horizontal Cables

パッチコードパッチコード

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- - 16

1.6.3 接続段数

同一配線経路(区間)内における、パッチパネルやアウトレット等のコンポーネント接続数

を接続段数と言います。コンポーネントの接続数は、配線トポロジの設計及びチャネル特性

に影響を与えることになります。規格(TIA/EIA-568B.1 11.2.4.4)では、チャネル内の最大接続段数は、4か所となっています。4か所とは、① 2次側パッチパネル、② 通信アウトレット、③ 1次側パッチパネル、④ CPを指します。(図1-13) 情報配線システムを構成する部材(パッチパネル、ケーブル、通信アウトレット等)は、この

4か所接続を前提とした挿入損失特性を確保しています。よって、5か所以上の接続においては、100mチャネル特性を満足できなくなる可能性が生じます。 また、配線管理(接続情報)を正確に行う上で、接続ポイント数が多いのは、望ましいこと

ではありません。

図1-13 接続段数

1.6.4 CP(Consolidation Point)の設置

CP(分岐点)は、配線経路や管理区分が変わるポイントに設置します。規格にもオプション扱いとなっている事からも分かるように、一般的な配線構成では使用しません。

CPを用いることによって、先行配線的な使い方を考慮した設計を行うことが可能となり、これにより情報配線システムの柔軟性が増加するため、通信アウトレットの位置を頻繁に変

更するようなオフィスでは、維持・管理コストを低減することが可能な場合があります。

パッチパネル

パッチパネル

TO②

TP/CP

④パッチパネル

パッチパネル

パッチパネル

パッチパネル

TO②

TO②

TP/CP

TP/CP

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1.6.5 マルチユーザアウトレット(MUTO :Multi-User Telecommunication Outlet Assembles)

MUTOとは、多ポート(6~12ポートが一般的)の通信アウトレットであり、オープンオフィスに対するゾーン配線(先行配線)を行う場合に有効です。特に日本のオフィスは、オープ

ンオフィスに島机タイプのレイアウト構成が多く、またレイアウト変更の頻度も高いため、

レイアウトに依存しないゾーン配線方式は効果的な配線方式となります。

オフィス環境や使い方により、CPと組合せて設計することで、機能的で使いやすい情報配線システムを構築することが出来ます。

図1-14 MUTO配線例

: MUTO

通信機械室

:

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1.6.6 多対ケーブルの適用

MUTOやCPを利用する場合に、多対ケーブルを適用することで、効率的な配線を行うことが出来ます。多対ケーブルには、ペア線を集合した「マルチペア型」、と 4対ケーブルを集合した構造で、「インナシース無し」と「インナシース有り」の3タイプがあります。

多対ケーブルは敷設効率を向上させる反面、最小曲げ半径が大きく、取扱いが困難になると

ともに、断面積拡大による実装効率の低下が考えられることから、適用に際しては、ケーブル

敷設環境(床高・ラック等のケーブル集中部)を十分確認しておく必要があります。

表1-6 多対ケーブル構造表

タイプ 構造図 概 略

マルチペア

ペア線を集合したケーブル

4 対毎にビニルリボンテープ等で押え巻きを行い、ケーブル全体を

一括被覆したケーブル

インナシース

4 対ケーブル(4 対毎に被覆)を複数本束ね、ケーブル全体を一括被

したケーブル

4対

4対

4対

4対

4対

4対

介在

4対

4対

4対

4対

4対

4対

介在

4対

4対

4対

4対

4対

4対

介在

4対

4対

4対

4対

4対

4対

介在

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- - 19

2章 フィールドテストの留意点

設計・構築と同様にフィールドテストの重要性も増しています。長期的に安心して利用出来る情報配

線を構築するには工事完了時に確実にフィールドテストを実施する必要があります。本章ではフィール

ドテスタで測定系を正しく測定するための基本的条件や、基準となる規格選定及び測定結果の見方につ

いて説明します。

2.1 フィールドテスタの測定確度

情報配線システムの測定には、一般的にケーブルテスタと呼ばれる専用のテスタを使用します。

正確な測定を行う上で、テスタには測定の正確性を表す測定確度が定義されています。

2.1.1 測定確度とは

機器の測定確度(測定誤差)により実測値が規格リミット値に近い場合、誤った合否判定を

してしまう場合があります。ネットワークアナライザとフィールドテスタとの測定では、コネ

クタ部分の勘合特性の定義から誤差が発生しますが、誤差は取り除くか小さい良い品質のもの

が推奨され、測定誤差の量により測定確度レベルとして規格に定義されています。

図2-1 測定確度定義

テスタの品質

フィールドテスタ

パッチパネル

ベースライン確度 アダプタ付確度

チャネルアダプタ

リンクアダプタ

測定器本体の確度ベースライン確度

測定の品質測定結果の確度アダプタ付確度

アダプタ付確度が重要!!

テスタの品質

フィールドテスタ

パッチパネル

ベースライン確度 アダプタ付確度

チャネルアダプタチャネルアダプタチャネルアダプタ

リンクアダプタリンクアダプタリンクアダプタ

測定器本体の確度ベースライン確度

測定の品質測定結果の確度アダプタ付確度

アダプタ付確度が重要!!

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2.1.2 測定確度レベル

測定確度は、ネットワークアナライザとの測定誤差の量により測定確度レベルとして規格に

定義されています。今後新規にテスタを購入する予定がある場合は、Cat-6 に対応した測定確度レベルⅢに適合したテスタの購入を推奨します。

(1) 関連規格

・クラスⅠ、Ⅱ : TSB-67 ・クラスⅡE : TSB-95 ・クラスⅢ : TIA/EIA-568B2.1

(2) 測定確度表

表2-1 フィールドテスタの測定確度

Base Line確度 パーマネント リンク確度 チャネル確度 確度レベル

Ⅰ Ⅱ ⅡE Ⅲ Ⅰ Ⅱ ⅡE Ⅲ Ⅰ Ⅱ ⅡE Ⅲ

測定周波数 ~100MHz *1 ~100MHz *1 ~100MHz *1

挿入損失 - 1.17 1.3 1.91 1.3 - 1.7 2.3 1.4 - 1.9 2.5 PP NEXT - 1.82 1.8 2.81 2.0 - 2.4 3.3 2.9 - 3.6 4.2 PS NEXT - 1.97 1.8 2.93 2.1 - 2.5 3.4 3.2 - 3.9 4.5

PP ELFEXT - 1.84 2.4 3.15 2.1 - 3.1 3.7 3.3 - 4.4 4.6 PS ELFEXT - 1.87 2.5 3.24 2.1 - 3.2 3.8 3.6 - 4.8 4.9 Return Loss - 2.76 1.7 2.42 3.4 - 2.6 4.3 2.9 - 2.4 3.8

Length - 1m+4% 同右 - 1m+4% 同右 - 1m+4% P.D - 5ns+4% 同右 - 5ns+4% 同右 - 5ns+4%

Delay Skew - 10ns 同右 - 10ns 同右 - 10ns

*1) ~250MHz *2) 数値は±です。

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2.2 合否判定基準

測定確度レベルに適合したフィールドテスタは、測定値mの時、真値 tは、2σ範囲内に存在し、その基準に従って合否判定します。

図2-1 測定確度概念図

全ての測定結果は、この誤差も含め合否判定しているため、測定結果が次のようになること

があります。

図2-3 測定結果の判定

測定結果A : 完全不合格

測定結果B : 完全合格

測定結果C : 測定結果は合格であるが、不合格の可能性が残っている

測定結果D : 測定結果は不合格であるが、合格の可能性が残っている

測定値m、測定確度2σの場合、真値 tは95%の確立で m-2σ < t < m+2σ

の範囲に存在します。

+2σ-2σ

測定値m

真値t

測定確度=2σ

+2σ-2σ

測定値m

真値t

測定確度=2σ

合格域

不合格域

規格限界値

周波数

伝送パラメータ(d

B

結果A

結果B

結果C

結果D

合格域

不合格域

規格限界値

周波数

伝送パラメータ(d

B

合格域

不合格域

規格限界値

周波数

伝送パラメータ(d

B

結果A

結果B

結果C

結果D

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2.3 マージナルパス

測定結果C及びDのように、機器の測定確度(測定誤差)により実測値が規格値に近い場合、合否判定を間違えてしまう場合があります。下図のように実測値が、その不確定範囲内に入っ

た場合は、測定結果に“*”(アスタリスク)を表示し、測定者に対し注意を促します。 “*”付の測定結果に対する判定は、基本的にその結果に準じますが、“*”付Passの場合には、不合格要素を持ったリンクであることから、再検討(施工確認)する必要があります。

表示例

Pass* 又は Fail*

2.4 フィールドテスト規格

フィールドテスタには、TIA/ISO等の情報配線規格や性能・測定区間に加え、100BASE等のネ

ットワークアプリケーション規格等相当数の規格がインストールされています。規格毎にテス

ト項目や規格値が異なるため、測定時には要求されている規格を正しく選択する必要がありま

す。

表2-2 測定規格一覧(例)

規格名 測定規格名

TIA パーマネントリンク (CAT.3, CAT.5, CAT.5E, CAT.6)、

チャネル (CAT.3, CAT.5, CAT.5E, CAT.6)・・・・・

ISO(JIS) パーマネントリンク (クラスC、クラスD, クラスE)、

チャネル (クラスC, クラスD, クラスE)・・・

IEEE 100BASE-Tx, 1000BASE-T・・・・

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2.4.1 規格別測定パラメタ

下記にANSI/TIA/EIA/568とISO/IEC11801の規格毎に測定項目を示します。

表2-3 測定項目一覧表

TIA/EIA/568 ISO/IEC11801

パラメタ CAT.5

100MHz

CAT.5E

100MHz

CAT.6

250MHz

クラスD

100MHz

クラスE

250MHz

ワイヤーマップ ○ ○ ○ ○ ○

ケーブル長 ○ ○ ○ ○ ○

挿入損失 ○ ○ ○ ○ ○

近端漏話減衰(NEXT) ○ ○ ○ ○ ○

ACR ○ ○

PS-NEXT ○ ○ ○ ○

PS-ACR ○ ○

Return Loss ○ ○ ○ ○

ELFEXT ○ ○ ○ ○

PS-ELFEXT ○ ○ ○ ○

Propagation Delay ○ ○ ○ ○ ○

Delay Skew ○ ○ ○ ○ ○

DC Loop Resistance ○ ○

2.4.2 テスト規格の選定指針

テスト規格選定方法の一例として、まず顧客仕様書に明示されている場合は、そちらに従っ

てテスト規格を選択し、明示されていない場合は、性能保証区間や使用する材料によりテスト

規格を選定していく方法などが一般的です。

図2-4 テスト規格選定指針

使用材料

性能保証区間

顧客仕様書

最低位カテゴリ

工事請負区間

適用規格

使用材料

性能保証区間

顧客仕様書

最低位カテゴリ最低位カテゴリ

工事請負区間工事請負区間

適用規格適用規格

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2.5 テストアダプタの選定

CAT.6ケーブリングを測定する場合、線路構築時と同様にテストアダプタと被測定線路の正し

い選択が重要です。構築した情報配線システムを測定するために必要となるテストアダプタは、

テスタメーカに確認し正しいテストアダプタを使用するようにしてください。パーマネントリン

クアダプタ・チャネルリンクアダプタとも、テストコードの特性を含め測定されていることから

も測定線路とテストアダプタのマッチングが重要なことが分かります。

図2-5 テストアダプタの測定範囲

フィールドテスタ(本体)

パッチパネル

TOフィールド

テスタ(リモート)

フィールドテスタ(本体)

フィールドテスタ(リモート)

TO

Permanent Link測定区間

Channel Link測定区間

5cm

Permanent Link Channel Link

フィールドテスタ(本体)

パッチパネル

TOフィールド

テスタ(リモート)

フィールドテスタ(本体)

フィールドテスタ(リモート)

TO

Permanent Link測定区間Permanent Link測定区間

Channel Link測定区間

5cm

Permanent Link

5cm

Permanent Link

5cm

Permanent Link Channel LinkChannel Link

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2.6 dBルール

dBルールとは測定結果の判断に使用される規格内容で、具体的には「挿入損失が3dB以下(ISO

規格の場合は3dB又は4dB)となる周波数範囲では、漏話や反射等の特性値が規格値外であっても、

十分なS/N比が確保出来るため、そのテスト結果は合格とする。」というルールです。

挿入損失値は配線長に応じて変動しますが、一般的には3dB/4dBルールは配線長がより短い条

件の場合に適用されます。次頁の測定グラフにて、配線長の違いにより3dBルールの適用範囲が異

なる事についての一例を示します。

配線長が15mの場合の挿入損失と反射減衰量の測定グラフを図-1*)に示します。挿入損失が3dB

以下となる周波数範囲、すなわち3dBルールが適用される範囲は、およそ0~60MHzとなります。

反射減衰量の測定値は0~30MHzの範囲で規定値をオーバーしていますが、3dBルールが適用され

るため試験結果は合格(パス)と判断されます。

【図1 反射減衰量に関する3dBルールの適用事例:15m 参照 】

次に配線長を100mとした場合のグラフを図-2*)に示します。挿入損失の値は配線長15mの場合

に比べて増加するため、3dBルールが適用される周波数範囲は非常に狭くなります。この結果、反

射減衰量の規定値をオーバーする範囲が3dBルール適用範囲外となるため、試験結果は不合格(フ

ェイル)となります。

【図2 反射減衰量に関する3dBルールの適用事例:100m 参照 】

挿入損失(Insertion Loss)の測定結果が、

3dB以下となる周波数範囲の漏話関連特性及びRLのテスト結果は

全て合格と判断する。※ ISO規格の場合3又は4dB

3dB以下3dB以下

4dB以下

参考値とする参考値とするReturn Loss規格値通りACRで判断NEXT

TIA/EIA-568BISO/IEC11801パラメータ

dBルールの規格

挿入損失(Insertion Loss)の測定結果が、

3dB以下となる周波数範囲の漏話関連特性及びRLのテスト結果は

全て合格と判断する。※ ISO規格の場合3又は4dB

3dB以下3dB以下

4dB以下

参考値とする参考値とするReturn Loss規格値通りACRで判断NEXT

TIA/EIA-568BISO/IEC11801パラメータ

dBルールの規格

3dB以下3dB以下

4dB以下

参考値とする参考値とするReturn Loss規格値通りACRで判断NEXT

TIA/EIA-568BISO/IEC11801パラメータ

dBルールの規格

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*)ここに示す測定グラフはあくまで解説用のイメージ図であり、実測データに基づくものではありません。

また、実際の測定では配線長に応じて挿入損失値と共に反射減衰量も変動します。

図1 反射減衰量に関する3dBルールの適用事例:15m

図2 反射減衰量に関する3dBルールの適用事例:100m

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2.7 外来ノイズ

(1) ノイズとは

ノイズは、ネットワークの稼動周波数帯域内において通信上好ましくない電気エネルギーで、

データ伝送の信頼性を損なう場合があります。

ノイズ源としては一般オフィスのAC電源ライン、蛍光灯器具、産業機器、コピー機などがあ

ります。また、ノイズの問題は、ネットワークアプリケーションではない(例、音声)用途の

ワイヤが同じシースに収容されることによっても発生します。

ノイズの試験では、すべてのネットワーク機器の電源をOFFにして、ケーブリング内の周辺

ノイズ(バックグラウンド・ノイズ)の測定をおこなう必要があります。ノイズ問題は、大抵

はノイズ源からの離隔、ノイズ源を取り去ることで解決することができます。また、ノイズ源

の周波数を知ることによってもノイズの原因を特定することができます。

(2) 発生源

その発生源には、多種多様なものがあります。

① TV局やFMラジオの送信所が近くにある場合(通常は2~3Km以内)では、問題が継続的に

発生するのでスペクトラム・アナライザーで放送周波数帯を調べると解決の糸口が見つかる

可能性があります。

② 外部からのインパルス性ノイズの場合は、テスタノイズ・モニタ機能があれば、その機能を

つかって検出できます。

③ エイリアンクロストークは測定中の配線に隣接したケーブルに、実際に流れているデータが

結合した場合に発生します。これはリンクの一部がすでに使われている場合によく見られ、

全く使われていない状況では絶対におきません。エイリアンクロストークについては規格の

なかで規定されていますが、今のところ現場において実際に測定されることはありません。

(3) 対処方法

外部ノイズの発生源を見つけることは、ノイズの問題を扱うための指針となりますが、残念な

がらこれを解決することは困難さを伴います。しかしながら、配線中における接続部材の不平衡

の問題は検討してみる価値がありますし、それが配線における不平衡を起こしている可能性は十

分あります。この場合、同じ型番の別の部材と交換してみるということは、あまり意味がありま

せん。他のメーカの接続部材を試してみるか、メーカにLCLやLCTLといった平衡度に関するパラ

メタを問い合わせ調査してみるといった方法も有効と思われます。

TV局やFM局に起因する誘導については、あまり打つ手がありません。配線経路を変えること

で解決することもありますが、シールドされた接続部材を使うこともまた費用はかかりますが非

常に有効な方法となります。このような配線システムの場合に問題となる高周波域におけるシー

ルド効果は、配線システムの両端でアースをしっかりとることで十分な結果を上げることができ

ますが、これはもしも電力系のアースにあるレベルの電流が流れている場合は、グランドループ

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の原因となります。これらによるアース電位の差は1Vを越えないようにすることがひとつの指針

となります。

インパルス性のノイズの場合はその発生源を特定し、それと配線システムの距離を離すことが

有効な方法です。

2.8 テストレポートの読み方

施工・工事完了時や不具合発生時は通常、フィールドテスタでAUTO-TESTを実施する場合が多

く、その結果は、多少テスタメーカによって異なりますが、おおよそレポート形式でテスト項目

毎のデータを出力することが出来るようになっています。線路特性及び測定条件等の必要な情報

はこのレポートにまとめられて記載されており、多くの施工管理担当者やエンドユーザはこのレ

ポートにより、施工品質を確認し、その作業を完了することになるためレポートの読み方を正し

く理解する必要があります。

図2-6 Auto Test結果表示イメージ

総合テスト結果表示 (PASS or FAIL)ヘッドルーム表示 (品質指標)

測定長 (m or ft)

総合テスト結果表示 (PASS or FAIL)総合テスト結果表示 (PASS or FAIL)ヘッドルーム表示 (品質指標)ヘッドルーム表示 (品質指標)

測定長 (m or ft)測定長 (m or ft)

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2.8.1 テストレポート

下記にテストレポートの一例を示します。測定条件を表す「ヘッダ部」と、特性毎の測定結果を

表す「テスト結果部」に分かれておりヘッダ部には、その測定に関わる付帯情報が記載されます。

「テスト結果部」には測定項目に対する測定結果が記載されます。

図2-7 Auto Test レポート

2.8.2 ヘッダ部

ヘッダ゙部には、その測定に関わる付帯情報が記載されます。

図2-8 ヘッダ部

LOGO : 測定を担当した会社や顧客のLOGO等をビットマップで挿入・表示。

総合判定結果 : 全測定結果の総合判定を PASS/FAIL/*PASS/*FAILで表示。

テスト規格 : テストに使用した規格を表示。(仕様・測定区間)

ケーブルの種類 : 手動選択した、被測定ケーブル種類

ヘッダ

テスト結果

ヘッダヘッダ

テスト結果テスト結果

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2.8.3 テスト結果の読み方①

テストレポート上部には、ケーブル長等の周波数依存が少ない特性について記載されています。

基本的な構成は、テスト項目→規格値→測定値と横通しで読みます。また、規格値に迫る測定結

果を観測した場合、ワーニングとして「W」の文字を測定値横に表示します。

図2-9 テストレポートの読み方①

ケーブル長 : 最も長いペア(遅延時間の大きい)ペアを測定・判定

減衰量(挿入損失) : 最も減衰が大きかったペアの実測値と測定周波数及び規格値を表示。

テスト項目 規格値 測定値

Warning (注意)

テスト項目テスト項目 規格値規格値 測定値測定値

Warning (注意)Warning (注意)

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2.8.4 テスト結果の読み方②

周波数特性である、NEXTやELFEXT等のテスト結果は、測定周波数中最も規格に対するマージン

が少なかった測定周波数ポイントにおける、「測定値」「規格値」「マージン」を表示します。

図2-10 テストレポートの読み方①

A 最悪マージン、最悪値の結果

B 最悪マージン、最悪値の周波数

C その周波数における規格値

A 最悪マージン、最悪値の結果A 最悪マージン、最悪値の結果

B 最悪マージン、最悪値の周波数B 最悪マージン、最悪値の周波数

C その周波数における規格値C その周波数における規格値

30

40

50

60

70

80

90

100

110

0 50 100 150 200 250 300 350Frequency in MHz

NE

XT

Loss

in d

B

BC

A

30

40

50

60

70

80

90

100

110

0 50 100 150 200 250 300 350Frequency in MHz

NE

XT

Loss

in d

B

BBCC

AA

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- - 32

3章 不適切な施工とトラブル要因

ある大手SI会社の統計によると、ネットワーク障害要因の全体の約7割程度が装置の交換によ

り解決しており、ケーブル敷設関係によるトラブルは、全体の6%程度に留まっています。(図 3.1

参照)また、そのケーブル敷設関係によるトラブルの主な要因を見ると、ケーブルの切断・コネク

タ破損及びケーブルの接触不良等、機械的な損傷が殆どです。

本章では、ケーブル敷設時に起こりうる「不適切な施工例」及びその「トラブルと特性」に関し

て説明します。

図3-1 トラブル要因分析

74%

10%

2%

5%

2%3% 1%3%

装置交換

電源off/on

FAN交換

モジュール交換

再設定

ケーブル交換

ケーブル再接続

etc

障害発生件数500件程度

H13年4月~H14年3月H13年4月~H14年3月

ネットワーク関連製品ネットワーク関連製品 障害要因別分析障害要因別分析

約6%

ケーブルの接触不良等ケーブルの接触不良等

コネクタ破損コネクタ破損

ケーブルの切断ケーブルの切断

主な要因主な要因

74%

10%

2%

5%

2%3% 1%3%

装置交換

電源off/on

FAN交換

モジュール交換

再設定

ケーブル交換

ケーブル再接続

etc

障害発生件数500件程度

H13年4月~H14年3月H13年4月~H14年3月

ネットワーク関連製品ネットワーク関連製品 障害要因別分析障害要因別分析

約6%

ケーブルの接触不良等ケーブルの接触不良等

コネクタ破損コネクタ破損

ケーブルの切断ケーブルの切断

主な要因主な要因

障害発生件数500件程度

H13年4月~H14年3月H13年4月~H14年3月

ネットワーク関連製品ネットワーク関連製品 障害要因別分析障害要因別分析

約6%

ケーブルの接触不良等ケーブルの接触不良等

コネクタ破損コネクタ破損

ケーブルの切断ケーブルの切断

主な要因主な要因

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- - 33

3.1 ケーブル敷設時のトラブル

3.1.1 側 圧

<側圧によるトラブルで最も代表的な原因>

① ワイヤプロテクタ等のケーブル保護材にケーブルを詰め込み過ぎる。

シースに裂け目 形状変形

写3-1 ケーブル側圧例

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- - 34

② 結束バンド等による過剰な締め付け

写3-2 結束バンドによるケーブル側圧

このような事例による影響は、ケーブルの正常な構造(適切な導体径・絶縁外径,4ペアの

位置関係等)が、側圧により、部分的に「絶縁心線の潰れ」や4ペアの位置関係が「正常な正

方形から菱形やその他の異常な状態」になることで、「反射減衰量」及び「漏話」特性が劣化

します。

・ 反射減衰量 : 側圧部分における、特性インピーダンス不整合

・ 漏 話 : 側圧部分のペア間における誘起電圧が上昇

正常状態 側圧状態

図3-2 側圧による心線の潰れ状態

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3.1.2 曲げ

情報コンセントの立ち上がり部分やケーブル引き出し時の極端なねじれ(一般的にキンクと

言う)における極端な曲げでトラブルが発生する可能性があります。(写3-3, 3-4)

写3-4 極端なねじれ

写3-3 極端な曲げ

規格では、ケーブル外径の4倍以上の曲げ半径が要求されています。(例えば、ケーブル外径

φ5mm とするとφ5mm×4倍=20mm以上の曲げ半径が要求される)

写3-5は、ケーブル外径の2倍と4倍の曲げ半径を比較したものです。シ-スを剥いでいる

のは、曲げ半径が小さいことによる現象が見やすいようにしています。見てのとおり、曲げ半

径の小さい方は、対が伸びたり、浮いたりしています。このような現象により反射減衰量が劣

化します。

写3-5 ケーブル曲げ半径

規定の曲げ半径(ケーブル外径の4倍以上)

規定以下の曲げ半径

厳しい曲げにより対が伸びている

曲げにより対が伸びていない。

ケーブル外径の2倍ケーブル外径の4倍

規定の曲げ半径(ケーブル外径の4倍以上)

規定以下の曲げ半径

厳しい曲げにより対が伸びている

曲げにより対が伸びていない。

ケーブル外径の2倍ケーブル外径の4倍

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3.1.3 引張り

ケーブルに過度な張力をかけ、引っ張ると当然ケーブル全体が伸びます。写 3-6の写真は、外観上分

かりにくいが、ケーブルが伸び、特性が劣化した見本です。

写3-6 引張り

TIA/EIA/568Bでは、110N(約11.22kgf)以下での張力が要求されており、規定以上の張力を

かけることにより「反射減衰量」及び「挿入損失」が劣化します。

図3-3 ケーブル引張り概念図

引張張力 規定通り

110N以下 引張張力 規定以上

110Nを超える

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3.1.4 余長処理

余長処理は一般的にケーブル端末の多少の延長・移動を想定し施されます。写真の不適切な

例では、機器・パッチパネルが高密度で収納されるラック内又は、情報コンセントの部分で余

長処理が施されています。(写3-7. 3-8. 3-9)

余長処理において、小さな径のループ及び過剰なループ回数を施すと、ケーブル間の同色対

同士において、過剰な漏話現象が発生し、トラブルになる可能性があります。(図3-4)

写3-8 情報コンセント部の余長処理

写3-7 ラック内の余長処理

写3-9 床下の余長処理

図3-4 エイリアンクロストーク概念図

ループ中のケーブル間にて同色対間の漏話特性が劣化

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3.2 コネクタ成端時のトラブル

コネクタ成端時のトラブルとして代表的な物に、過剰な対の撚戻しやシ-スの剥取り過ぎがあり

ます。また、以外と多いのが結線の配列違いです。ただ導通していれば良いという結線では、トラ

ブルの元になりますので、パッチコード、パッチパネル、情報コンセントの結線を統一する必要が

あります。

正しい結線

T568A T568B

不具合結線例

ペア順に結線

結線の混在

図3-5 ケーブル結線

1 2 3 4 5 6 7 8白   白   白   白/ 緑 / 青 / 橙 / 茶緑   橙   青   茶

Pair 1Pair 2 Pair 4

Pair 3

1 2 3 4 5 6 7 8白   白   白   白/ 緑 / 青 / 橙 / 茶緑   橙   青   茶

Pair 1Pair 2 Pair 4

Pair 3

1 2 3 4 5 6 7 8白   白   白   白/ 橙 / 青 / 緑 / 茶橙   緑   青   茶

Pair 1Pair 3 Pair 4

Pair 2

1 2 3 4 5 6 7 8白   白   白   白/ 橙 / 青 / 緑 / 茶橙   緑   青   茶

Pair 1Pair 3 Pair 4

Pair 2

1 2 3 4 5 6 7 8白   白   白   白/ 青 / 緑 / 橙 / 茶青   緑   橙   茶

Pair 3

Pair 1

Pair 4

Pair 2

1 2 3 4 5 6 7 8白   白   白   白/ 青 / 緑 / 橙 / 茶青   緑   橙   茶

Pair 3

Pair 1

Pair 4

Pair 2

パッチパネル

パッチパネル

アウトレット

パッチコード

水平ケーブル

ワークエリアコード

機器コード

T568A T568AT568B T568B

パッチパネル

パッチパネル

アウトレット

パッチコード

水平ケーブル

ワークエリアコード

機器コード

T568A T568AT568B T568B

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3.2.1 撚り戻し

規格では、対の撚り戻長は「1/2inch(13mm)以下」と規定しています。対を長く撚り戻すこと

で、ツイストペアケーブルの基本性能である電磁誘導を打ち消しあう機能が低下し、漏話特性

の劣化や、特性インピーダンスの変化による反射減衰量が劣化します。

なお、Cat6については、「1/4inch(約6mm)」を推奨しているメーカもあります。(写3-11)

写3-10 Cat-5以降の規格 写3-11 Cat-6推奨

3.2.2 被覆剥ぎ取り

被覆を長く剥ぎ取ることにより、4ペアのバランスが崩れ、特性インピーダンスや反射

減衰量が劣化します。

写3-12 パッチパネル部における過剰な被覆剥ぎ取り

1/2inch(13mm)1/2inch(13mm)

1/4inch(約6mm)1/4inch(約6mm)

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3.3 環境要件のトラブル

ケーブル布設環境条件により伝送不具合が発生することがあります。電源線からの電磁誘導や、

蛍光灯・モータ類からの電磁誘導による外来ノイズが代表的な事例です。

写3-13 電源ケーブルとの同一配線

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4章 トラブルシューティング技法

4.1 トラブルシューティングフロー

フィールドでのトラブルシューティング時の参考ガイドラインとして手順フローを示します。

図4-1 トラブルシューティングフロー図

START

Auto Test

合否判定

接続関連 漏話関連 反射

Fail 特性

END

1 2

NVP 設定

ケーブル不Pair 間特性差

成端不良

コネクタ不

目視確認 場所特定

OK

NG

TDX/TDR 測定

再成端作業

コネクタ交

ケーブル交換

設定・再測定

START

Auto Test

合否判定

接続関連 漏話関連 反射

Fail 特性

END

1 2

NVP 設定

ケーブル不良 Pair 間特性差

成端不良

コネクタ不良

目視確認 場所特定

OK

NG

TDC/TDR 測定

再成端作業

コネクタ交換

ケーブル交換

設定・再測定

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図4-2 トラブルシューティングフロー図

1

波形解析 ケーブル全体

成端不良

パッチコード交換

目視確認

OK

NG

TDC 測定

再成端作業

パッチコード交換

ケーブル交換

接続かん合部

再測定

OK

NG

2

波形解析 ケーブル全体

成端不良

パッチコード交換

目視確認

OK NG

TDR 測定

再成端作業

パッチコード交換

ケーブル交換

接続かん合部

再測定

コネクタ交換

OK

NG

OK

コネクタ交換

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4.2 不合格(FAIL)パラメタ解説

4.2.1 ワイヤーマップ(Wire Map)

(1) パラメタ定義

ワイヤーマップとはケーブル両端の接続を示すもので、正しい対組み合せ(Correct pairing)、

対反転(Reversed pair)、対交差(Crossed pairs)、対分割(Split pairs)等があります。

ワイヤーマップ試験は、敷設時のケーブル対の配線間違いを見つけるために使われます。リン

クの8つの導体に関して、ワイヤーマップ試験は以下のことを示してくれます。

① 両端の適切な成端がなされているかどうか

② 遠端までの導通

③ 対交差(クロスペア)

対の2つの導体が端末のコネクタで異なった対の位置に接続された状態。

④ 対分割(スプリットペア)

ピン間の接続はあっているものの、物理的には分離されている状態。

(各ペアの正しい組み合せは、1-2 、3-6 、4-5 、7-8であるがペアの組み合せを間違えた場合

のことをいいます。)

⑤ 対反転(リバースペア)

リンクの片端で1対の極性は反転している状態。(チップ/リング反転とも呼ばれます。)

⑥ 対短絡(ショートペア)

⑦ その他の誤配線

図4-3 ワイヤーマップ

正しい組み合わせ 対反転(リバース)

対交差(クロス) 対分割(スプリット)

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(2) テスト結果の見方

ほとんどの場合が、ストレート配線の結果が示されます。LED表示方式テスタ様な簡単なツ

ールを使った場合には、ランプはショートやオープンを検知したときに点灯します。

これ以上のテスト、すなわち、対分割のようなテストは、簡単なツールでは、製品によって

はできないものもあります。普通は、これらのツールで充分ですが、正しく情報配線が配線さ

れていることを必ずしも保証しているわけではないということに注意しなければなりません。

例えば、対分割の検出には、近端漏話減衰量(NEXT)あるいはインピーダンスの測定が必要と

されます。このような機能は、ローエンドのテスタ機能としては一般には備わっていません。

対分割は、大きなNEXTを発生させ(一般的には22dB以上)、これは、敷設された情報配線の帯

域を大きく制限してしまいます。

スクリーン撚り対ケーブルでは、スクリーンの導通を調べる必要があります。この機能は、

ハイエンドなツールでなければ判定できない場合もあります。

ワイヤーマップ試験は、基本的な試験です。しかし、正しい配線が必ずしも帯域性能を検証

しているということではないということに留意しておくことは大事なことです。そして、この

ワイヤーマップ試験以外の試験結果、すなわち特性が周波数に依存するNEXT、挿入損失および

反射減衰量等の試験結果は、情報配線が高速なアプリケーションをサポートできているという

こと確認するには大事な試験項目です。

(3) 推奨トラブルシューティング方法

ワイヤーマップが不合格(FAIL)になった場合は、圧接接続(IDC)ブロックやコネクタの配

線を注意深く検査します。一つ以上のワイヤが入れ違いになっているのが見つかるかもしれま

せん。必要に応じて成端をやり直します。

もしも、配線がない対がある場合は、対象とするアプリケーションにとってその対が必要な

いことも考えられます。例えば、10BASE-Tやトークンリングは、2対しか必要ありません。設

計によっては、4対のうち2対ずつを2つのRJ45コネクタに接続しようとするものも中にはあ

ります。重要な点は、敷設した配線が、要求されている設計基準に合致していることをしっか

り確かめることです。

オープンおよびショートが見つかった場合には、障害箇所の特定と修復を早めるために、オ

ープンまたはショート箇所が何処にあるのかを見極めるためのTDR機能を使用します。

また、対分割が見つかった場合は、TDC機能(P54参照)を利用して障害の範囲を確認します。

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(4) トラブルシューティング事例

具体的な、障害別のワイヤーマップ試験結果画面例を示します。

正しい対組み合わせ

クロスワイヤ 対反転(リバース)

対交差(クロス) 短絡(ショート)

断線(オープン) 対分割(スプリット)

図4-4 ワイヤーマップ障害例

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4.2.2 ケーブル長

(1) パラメタ定義

ケーブル長は、ケーブルの物理的な長さ、あるいは、シースの長さとして定義されています。

これは、一般に、ケーブルのジャケットの外側にマーキングしてある長さから読み取られる長

さに対応すべきものです。物理的な長さは、電気的な長さ、すなわち銅線の導体長と対照を成

すものです。物理的な長さは、銅線が撚られているために、普通は電気的な長さよりも少し短

くなります。

長さの測定を行うために、最初に遅延時間が測定され、その後、長さを計算するために、公

称伝搬速度(NVP:Nominal Velocity of Propagation)を使用します。公称伝搬速度は、真空

中の光速度(小文字のcで表す)と比較した信号伝搬の固有のスピードです。NVPは、cの百分

率(%)で表現され、例えば、72% あるいは 0.72cと記述されます。全ての、均一の特性をも

った配線ケーブルは、0.6c ~ 0.9cの範囲のNVP値を有します。同様に、もしも、物理的な長

さを知っていて、そのケーブルの遅延が分かればNVPを計算することができます。

ほとんどの事例では、長さはケーブル中の電気的な長さの最も短いものから結果表示されま

す。伝搬遅延時間差のために、4つの対の長さは、僅かに異なります。このようなばらつきは

当然あることですが、例外的な大きなバラツキ(10%以上)があるようなことは、めったにあ

りません。

(2) テスト結果の見方

ケーブル長測定時に注意することは、どんなセグメントであってもケーブルが長過ぎてはい

けないということです。例えば、水平配線では100mとなっています。これは、アプリケーショ

ン、すなわち、配線システムを使用するネットワークの種類が最大信号遅延時間をサポートす

るように設計されているということであり、仮に、このリンクが長すぎる場合には、この遅延

時間が規格値を超過することもありえるからです。時には、敷設作業者は、将来の要求を配慮

して天井や壁の中に余長をとることがあります。予長があることは、リンク全体の一部として

見なすならば問題ありませんが、その余長部分を小さくコイル状に巻いたケーブルがある場合

には、反射減衰量やNEXTを増加させることにより好ましくない性能上の劣化をきたすことがあ

ります。

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(3) 推奨トラブルシューティング方法

テストをした結果、長さ試験が不合格(FAIL)になる最も一般的な原因の一つが、NVP値が

正しく設定されていないことによるものです。仮に、このNVPのことに注意を払わないまま、

予めテスタ設定されている値を使って試験を行うと10%あるいはそれ以上のNVP値の差もあり

えますので、この結果、即、長さのエラーとして解釈されます。長さが、僅かに長すぎるよう

な場合には、NVP値とケーブルのタイプをチェックします。

なお、NVP値を校正する場合、大抵、10%の確度誤差が生じます。したがって、これにより

TDR機能を使った長さ測定は同じ量の確度誤差を生じます。一般的には、長さの規格値を超え

てしまっていたことを確認するためには、ケーブル・ジャケット上にある距離目盛を元にした長

さの検証が必要です。

NVP値が正しいと仮定した場合には、もう一つの長さ超過の原因は、天井や壁の中の余分に

巻いたケーブルです。問題になっているリンクは、将来の拡張計画を想定した形で余計に長さ

をとっていますか?例えば、飛行機の格納庫や倉庫の事例では、離れた場所にある端末は、ワ

イヤリングクローゼットから100m以上、離さざるを得ない場合があります。もしもこのような

ことが計画され、対象となるアプリケーションが規定長を超えてサポートしなければならない

場合には、リンクは配線規格に従えば不合格(FAIL)になるかもしれませんが、長さ以外につ

いてはこのアプリケーションがサポートしていると理由で、合格にする場合もあります。テス

タ中には、TIA標準やISO/CENELEC要件からの変更を許容するオートテストの内容をカスタマ

イズできるものもあります。このようなオートテスト機能は、見込まれた変更を許容する形で

敷設が要件に合っているかどうかを検証するには便利です。

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4.2.3 挿入損失

(1) パラメタ定義

リンクによって伝送される電気信号は、リンクを伝搬するに従い、その電気的なエネルギー

を失っていきます。挿入損失測定では、配線リンクの受端に到着するまでに失うエネルギーの

量を測定します。この挿入損失測定によって、伝送信号に及ぼされる電気的な抵抗効果の定量

化を行います。

図4-5 挿入損失概念図

リンクの挿入損失特性は、伝送される信号の周波数とともに変化します。例えば、周波数が

高くなれば、より、抵抗の影響を受けます。すなわち、言い方を変えると、リンクは、より高

い周波数でより多くの挿入損失を示します。したがって、挿入損失は適合周波数全体に渡って

測定されることになります。例えば、Cat-5eのチャネルの挿入損失を測定しようとする場合に

は1MHz~100MHzまでの周波数で検証をする必要があります。また、Cat-3であれば、1MHz

~16MHzということになります。挿入損失はまた、リンクの長さにほぼ直線的に比例して増加

します。つまり、リンクBの2倍長のリンクAがあり、そして、その他の特性が同じ場合には、

リンクAの挿入損失はリンクBの挿入損失の2倍に結果的になります。

挿入損失は、dB単位で表現されます。デシベルは、入力パワー(送信機によってケーブルに

送出されたパワー)と出力パワー(リンクの遠端で受信された信号のパワー)の比を対数表現

したものです。

(2) テスト結果の見方

ケーブルの減衰は、主に、各撚り対線に使用されているワイヤのゲージ(径)に依存します。

24ゲージのワイヤは、同じ長さの26ゲージ(より細い)よりも、減衰が少なくなります。し

かも、撚ったケーブルは、単芯の銅線ケーブルよりも20~50%以上、減衰が多くなります。フ

ィールドテスタは、測定減衰値と最悪マージン値をレポートします。ここで、マージンとは、

測定した減衰値と、選択した標準によって許容される最大減衰値との差です。すなわち、4dB

のマージンは、1dBのマージンよりも良いことになります。

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(3) 推奨トラブルシューティング方法

過剰な長さは、挿入損失が不合格(FAIL)になる最も一般的な原因です。不合格になったリ

ンクの修復には、通常、ケーブルのゆとりのある部分を取り除いて配線の長さを減らす作業を

伴います。

過剰な損失は、低品質なコネクタやプラグの成端作業に起因することもありえます。不確実

な接続は、損失を大きく増やすことがあります。この原因解決の糸口は、4つの対の挿入損失

を比較することにあります。もしも、1つか2つの対だけが、大きい減衰を示すようであれば、

これは敷設上の問題に起因していることを示唆しています。もしも、全ての対が、大きな減衰

を示しているようであれば、リンクの長さが長すぎないかチェックしてください。しかしなが

ら、銅線ケーブルの不純物によって引き起こされる場合もあります。この場合には、一般的に

は1対のみに起こります。

温度も、ケーブルによっては減衰に影響を及ぼすものもあります。導体の絶縁やケーブルジ

ャケットを成型する誘電材料は、ワイヤに沿って信号を遅延させていく中で、送信信号をわず

かながら吸収します。この現象は、ケーブルが PVC(ポリ塩化ビニール)を含んでいる場合に

生じます。PVC材は、塩素原子を含んでいますので、絶縁材の中で、電気的に活性化され双極

子を形成します。これらの双極子は、ワイヤを囲んでいる電磁場に応答して振動し、振動が大

きくなればなるほど、信号からエネルギーが失われます。温度は、双極子が、絶縁材の中で、

振動しやすくしてこの問題をさらに悪化させます。この結果、温度上昇は損失の増加につなが

ります。

この理由によって、標準化団体は減衰の要件を20℃で規定する傾向があります。極限温度で

稼動するケーブルでは減衰の増加は免れません。そのような場所の配線システム設計は、この

周囲温度の上昇を考慮しなければならないこともあります。多くの設計者は、安全なマージン

を確保するためにリンクを80m以下にしようと試みますが、スペースの確保が割高で、通信室

の数を最少に押さえなければならないときには、必ずしも可能ではありません。

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4.2.4 伝搬遅延時間(Propagation Delay )

(1) パラメタ定義

伝搬遅延時間は回線の一方から他方の端まで信号が伝搬していくのにかかる時間の測定値で

す。遅延時間は、ナノ秒単位で表示されます。一般的には、Cat-5eの遅延時間は、メーター当

り5 nsよりも少し小さな値です。(許容最悪値は、5.7 ns/mです。)下図は、100mのケーブル

の遅延時間例です。

図4-6 伝搬遅延時間概念図

遅延時間は、LAN配線長の許容限界値の重要なパラメタとなっているものです。多くのネッ

トワークアプリケーション、例えば、CSMA/CDを採用しているアプリケーションにおいては、

そのアプリケーションが、通信制御機能を失うことなく稼動できる最大遅延時間が存在します。

一方、公称伝搬速度(NVP)は、伝搬遅延時間と違って、真空中の高速度(c)に比較した信

号が伝送される固有速度を指します。NVPは、cの百分率(%)、例えば、73%あるいは0.72c

と形式で表現されます。一般に全ての配線ケーブルのNVP値は、0.6c ~ 0.9cの範囲内にあり

ます。

(2) テスト結果の見方

伝搬遅延時間測定は、比較的単純です。ほとんどの構造化配線標準は、水平配線の最大遅延

時間を498または555 nsとしています。もしも、設計仕様に余裕があるならば、もっと大きな

遅延時間も許容できます。

ケーブル中の各撚り対線はそれ自身の固有の撚り比を有していますので、各対によってこの

値は異なります。この値のバラツキ(伝搬遅延時間差、次のセクションで説明します。)は、100m

までのリンクでは、50nsを超えるべきではありません。標準規格では全ペアが要件を満足する

ことを要求していますが、最悪ケース対だけレポートすることも可能です。これは、遅延時間

が最も大きいペアとなります。

入力信号 減衰した信号

時間=0 ns 遅延時間=503 ns

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(3) 推奨トラブルシューティング方法

伝搬遅延時間の超過の原因は、ほとんどが次の一点に限られます。すなわち、ケーブルが長

すぎる場合です。もしも、伝搬遅延時間が不合格になったら、合格(PASS)/不合格(FAIL)の

判定基準が設計仕様に確実に適合しているのかをチェックします。もしも、適合しているよう

なら、ケーブルが長すぎるということです。

(注:NVPの設定が正しく行われなかったことにより、リンク長が規格値内であるとレポー

トされる場合もあります。)

ケーブルの製造方法によって対ごとに異なる絶縁材料を使う物もあります。この場合、非常

に稀なことですが、リンク長が、規格値の最大長に近い値であっても、伝搬遅延時間が、当該

規格を超えてしまうことがあります。多くの例では、ケーブルが25%まで長すぎる場合(Cat-5e

では125m)には、それでも、ほとんどのLANのアプリケーションは、サポートします。しかし

ながら配線長に関する試験はCENELEC, ISO/IECおよびTIA等によって発行されているほとんど

の配線システム規格に対して不合格となります。 もしも、これらのパラメタが合格になった場合には、周波数依存パラメタには適合している

が、長さ超過により全体としては標準に適合していないことを示す情報を提供することができ

ます。このことで、ユーザには、不合格になった原因が配線長のみが規格に適合していないせ

いであるとする、もっと専門的なテスト結果を提供できます。

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4.2.5 伝搬遅延時間差(Propagation Delay Skew )

(1) パラメタ定義

伝搬遅延時間差(Propagation Delay Skew)はUTPケーブルの伝搬速度が最も速い対と遅い対

の遅延時間差です。ケーブルの製造の仕方によって対ごとに異なる絶縁材料を使うものもあり

ます。このことが、対ごとの撚り比の違いや遅延時間差に影響を及ぼします。

伝搬遅延時間差は、重要なパラメタです。その理由は、いくつかの高速ネットワーク技術で

は、すなわち、よく知られたところではギガビットイーサネットがありますが、ケーブル内の

4対の全てを使用するためです。仮に、1つ以上の対の遅延時間が他の対と大きく違う場合には、

ケーブルの一端から、同時に送出された信号が、受信端でかなりの時間差を伴って到着する可

能性があります。受信機は、ある程度軽度な遅延差は、受容できるよう設計されていますが、

大きな時間差になった場合には、元の信号の合成が不可能になります。

(2) テスト結果の見方

うまく製造され、適切に敷設された構造化配線は100mのリンクで50ns以下なることが推奨

されています。時間差は小さければ小さいほど望ましいものです。

25ns以下であれば、優れた値です。45~50nsは、ぎりぎり、許容可能な値です。

図4-7 伝搬遅延時間差概念図

(3) 推奨トラブルシューティング方法

伝搬遅延時間差が大きい場合は、対象となるアプリケーションが、10BASE-Tやトークンリン

グのような2ペアアプリケーションとすると、それでも、そのアプリケーションは稼動するは

ずです。もしも、1つの対が、他の対よりも、大きくな遅延時間がある場合には、遅延時間差

のテスト結果に大きな値が出る可能性があります。各対について、遅延時間のテスト結果を調

べます。もしも、1つのペアが、特徴的に遅延時間が、大きかったり小さかったりする場合は、

再度、ケーブル敷設を調査します。

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4.2.6 近端漏話(NEXT : Near End Crosstalk)

(1) パラメタ定義

電流がワイヤに流れると、隣接するワイヤ上の信号に干渉を与える電磁界が発生します。周

波数が増加するに従い、この影響は強くなります。各撚り対線は、お互いにこの磁界を打ち消

すように撚られています。密に撚られればそれだけ、打ち消し効果が大きくなり、そのケーブ

ルによってサポートされるデータ転送レートも高速になります。この撚り線比を一定に維持す

ることが、敷設を成功させるための一つの重要なファクタとなります。もしも、ワイヤが密に

撚られていない場合には、テスト結果にはNEXTが生じます。ほとんどの方が、電話で話してい

て、他の話し声が漏れて聞こえてきたという経験をもっていると思います。これがクロストー

ク(漏話)です。実際、このクロストークと言う名前は、電話で話が、漏れてくるというとこ

ろから由来しています。LANにおいては、1対のワイヤ上の信号が、隣接するワイヤ対に誘起さ

れることから発生します。NEXTは電磁的な結合によって受端側に戻ってくる、送出された入力

信号の一部分です。

図4-8 近端漏話概念図

(2) テスト結果の見方

NEXTは干渉を与える側と受ける側間の信号強度差の測定となりますので、その差が小さな値

よりもより大きな値が好ましい値となります。NEXTは周波数とともに変化しますので、特定の

周波数帯域全体で測定することが重要です。たとえば、50mの撚り対線のNEXTを見てみますと、

特性が、上下に急峻に変化しているのが観測されます。つまり、一般に、その大きさが増加す

る一方でその特性が大きく上昇、下降を繰り返します。

フィールドテスタは、一般的に、その周波数帯域にわたる連続的な読み取り値を合格(PASS)

/不合格(FAIL)ラインと比較をするようになっています。NEXTの曲線が、いかなるポイント

においてもこのラインを割る場合には、求められる性能要件を満たさないことになります。NEXT

特性は、両端において測定値が異なるものですので、各々の側において6つのNEXTの試験結果

が得られることになります。

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(3) 推奨トラブルシューティング方法

多くの例では、過剰なNEXTは、接続部分における拙劣な撚り対線の成端作業によるものです。

ANSI/TIA/EIA 568-Bによれば、全ての接続の撚り戻しは、終端点から13mm以内にすべきとな

っています。全ての標準規格に共通する注意事項は、撚り戻し部分は最少にすべきということ

です。実験によれば、フィールドテストにおいて、経験的に13mmの撚り戻しは、パスを保証す

るものではないことが知られています。

写4-1 端末加工イメージ

NEXTの不合格(FAIL)が起きた場合に第一にすべきことは、フィールドテスタを使って、NEXT

がどちらの端で起きているのかを見極めることです。これが分かったら、その端の接続をチェ

ックして交換するか適切に成端し直します。もしも、この確認において問題がないと思われる

ときには、低いカテゴリのパッチコード(クラス Dの音声グレードのような)がどこかに使わ

れていないか調べます。もう一つのNEXTの原因として考えられるのに対分割(スプリットペア)

があります。これは、フィールドテスタのワイヤーマップ試験機能でテストできます。さらに、

J/Jコネクタ(Female coupler)も、NEXT発生のもう一つの要因です。これは情報配線の敷設で

は使用すべきではありません。もしも、ケーブルが充分な長さを有していない場合には、もう

一本、ケーブルを追加するのではなく、性能要件に合った長さのケーブルに置き換えます。

時には、NEXTは不適切に選択されたテストによって引き起こされる場合があります。たとえ

ば、Cat5(現在、規格としてはなくなりましたが)の敷設に対して、Cat5eの性能要件を満た

すことを期待することはできません。

NEXTの最も適切なトラブルシューティングの手法は、タイムドメインの機能を使用すること

です。この機能によって、フィールドテスタはNEXTの発生箇所を本体からの距離でピンポイン

トに示すことができます。この診断機能は、NEXTの障害が、パッチコードにあるのか、接続部

分にあるのか、水平ケーブルにあるのかを明確に見つけてくれます。

上記のNEXTの全要因を取り除いたあとで、それでも、NEXT障害がある場合には、もっと突

っ込んだ原因の究明のため、システム設計者に相談することも必要となってきます。

撚り戻しを最小にします。

ペア間のギャップを最小にします。

被覆のカットは最小にします。

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(4) トラブルシューティング事例

NEXTが不合格(FAIL)になった場合の診断方法の事例について示します。

テスタによっては、TDC( Time Domain Crosstalk )機能がついています。これによってケ

ーブルリンクのどこでクロストークが発生しているのかを調べることができます。

次にTDCの一連の操作手順例を以下に示します。

以下にNEXTの発生源となりえる事項を挙げます。

① コネクタの性能要件を満たさない成端

② ケーブルの不良

③ 変換点(transition point)/分岐点(consolidation point)の不良

④ ケーブルの部分不良

⑤ 不適切な部品の選択

<操作手順>

オートテストによって、どの対が不良になっているのか見定めます。これを行うには、ENTER

キーを押して、NEXT結果を見ます。

図4-9 テスト結果画面操作

今度は、ここで、Auto Testから、SINGLE TESTに切り替え、TDCアナライザー機能を稼動さ

せます。

オートテスト結果

NEXT テスト結果

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問題の診断例を以下に示します。

① コネクタの性能要件を満たさない成端

TDCを一度、稼動させたら、前のテストで明らかになっている最悪ペアを選択します。

この例では、3,6-4,5ペアです。ファンクションキーの2番を押してプロットを表示させ

ます。

図4-10 コネクタ不良例

クロストークの最も大きな発生源が、メインユニットから1.1mのところにあります。テ

ストリードが1.1mですので、問題は、最初のジャックの部分にあると思われます。また、

遠端にもクロストークの発生源があり、これは極めてノーマルな値で、およそ25~30%の値

です。通常、クロストークの最も大きなものだけに着目します。

メイン リモート

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② ケーブルの不良

図4-11 ケーブルの不良例

クロストークがポイントで発生しているのではなく、リンクに沿って起きている場合で

す。これは、ケーブルに問題があることを示しています。大量の不良ケーブルが出荷され

たことも考えられます。この障害は重大な問題ですので、すぐさま、関係者に報告すべき

です。

③ 不良変換点(transition point)/分岐点(consolidation point)の不良

図4-12 分岐点不良例

21.9mのところに、かなりの量のクロストークがあります。パッチパネルあるいは通信

アウトレットということはありえません。なぜなら、リンク長が31mだからです。 こ

メイン リモート

メイン リモート

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の場合には、分岐点の不良ということでした。これは、不良部品の選択や、成端のやり方

に問題のある可能性があります。

④ ケーブルの部分不良

図4-13 ケーブルの不良例

この例は、簡単には見極められません。大きな、シングルスパイクがないことからコネ

クタの問題でないことは分かっています。TDX結果表示は、ケーブルのある区間が不良で

あることを示しています。この場合は、分岐点(CP)からアウトレットの間です。ここで

注意しなければならないことは、不良ケーブルと同様に、CPあるいはアウトレットの成端

にも問題があるということです。

⑤ 不適切な部品の選択

図 4-14 不適切な部品

もしも、一本のスパイクが 40%以上になっているのであれば、規格に適合しない接続部

メイン リモート

メイン リモート

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分があることを示しています。この例は、めったにないことですが、起こりえる可能性も

あるものです。この例では、パッチパネルとアウトレットの両方で標準を満たしていませ

ん。ほとんどのケースでは、不適切な部品の選択が原因となります。また、両端の成端の

やり方により性能が不満足な場合もありえます。

4.2.7 減衰対漏話比(ACR : Attenuation to Crosstalk Ratio)

(1) パラメタ定義

減衰対漏話比は被試験リンク内の撚り対線のNEXTと挿入損失の差です。減衰の影響により信

号はリンクの受端で最も弱くなります。しかし、ここはNEXTが最も大きく発生する場所です。

減衰しながら到達した信号はNEXTの効果で埋没してしまってはいけません。

PSNEXTと減衰を使用することで、パワーサムACRも計算することもできます。TIA/EIA 568-B

では、PSACRの測定が求められています。このPSACRをレポートするフィールドテスタも中に

はありますが、PSACRのデータがあることが望ましい場合には、作業仕様書にこの要件を規定

する必要があります。

撚り対線上に信号が伝達される間、減衰と漏話は同時に起きます。これら2つのパラメタの

複合的な影響は、実際の伝送品質のきわめて良い指標になります。この複合効果は減衰対漏話

比(ACR :Attenuation to Crosstalk Ratio)として特性付けられています。ACRは信号対ノイ

ズ比と同等な意味合いを持っています。(ただし、一般的な意味合いでの信号伝送に影響を及ぼ

す外部からの雑音の影響は含まれてはいません。)

(2) テスト結果の見方

ACRは撚り対線リンクの重要な評価指標です。これによってどのくらいヘッドルームに余裕

があるのか、あるいは、信号がバックグラウンドノイズに対してどの程度強いのかの尺度とな

ります。

(3) 推奨トラブルシューティング方法

ACRはNEXTと挿入損失に起因しています。したがって、NEXTあるいは挿入損失のいずれを改

善する手段もACRを良くするのに役立ちます。現実的には、挿入損失を大幅に改善するにはケ

ーブルの長さを短くするのが唯一の方法であるため、通常のトラブルシューティングではNEXT

に関して対策を行うこととなります。

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4.2.8 電力和近端漏話減衰量(PSNEXT : Power Sum NEXT)

(1) パラメタ定義

PSNEXTは計算値です。測定値ではありません。PSNEXTは、各対が他の3つの対から受け

る、個々のNEXT効果の総和から導き出されます。PSNEXTは、ギガビットイーサネットの

ように、4本の撚り対線を使った伝送を行う方式をサポートしようとする配線の性能検証

を行うためには重要な測定です。ただし、IEEE 8023.abでは、PSNEXTの要件を規定してい

ません。PSNEXTのテスト結果は、リンクの端ごとに4つのテスト結果が示されます。

図4-15 電力和概念図

(2) テスト結果の見方

PSNEXTは、妨害を与えている対と受けている対間の信号強度差の測定ですので、小さな

値(クロストークがより大きい)よりも、より大きな値(クロストークがより少ない)が

望ましいものとなります。PSNEXTは、周波数に依存して変化しますので、一般的には1MHz

~100MHzにわたるレンジで測定することが重要です。もしも、撚り対線の50m長のセグメ

ントを例として見た場合、その値の変化が大きくなるほどローラーコースターのように特

性が急峻に上下していることが分かります。

(3) トラブルシューティングの推奨方法

PSNEXTは、NEXT測定を元にした計算から求められますので、PSNEXT障害は、NEXT問題

のトラブルシューティングをすることで少なくなります。すなわち、NEXTの問題を、特定

し修復すればPSNEXTは自動的に改善されます。NEXTのトラブルシューティングには、ケ

ーブルリンクに渡って、NEXTが何処で発生しているのかを見極める能力をもつフィールド

テスタが必要です。

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4.2.9 電力和減衰対漏話比(PSACR : Power Sum Attenuation to Crosstalk Ratio)

(1) パラメタ定義

電力和減衰対漏話比(PSACR)は、測定された値ではなく、実際は計算によって得られます。

個々のACR効果は数式よって計算され、電力和減衰対漏話比はACRの総和として算出されます。

このPSACRは、テストするリンクに対して、各端で4つの結果が得られます。

(2) テスト結果の見方

PSACRは、信号対ノイズ比の尺度ですので、小さな数値(信号がより少なく、ノイズがより

大きい)よりも、より大きな値が望ましいわけです。一般的には、PSACRは各端における最悪

ACR値よりもおよそ3dB以上小さな値です。

(3) 推奨トラブルシューティング方法

PSACRは、ACR測定値に基づいた計算から得られますので、PSACR不良のトラブルシューティ

ングは、実際には ACR問題のトラブルシューティングとなります。前にも述べたように、ACR

のトラブルシューティングはNEXTと挿入損失のトラブルシューティングになります。ACRの問

題を特定し改修できればPSACRは自動的に改善されます。

4.2.10 反射減衰量(リターン・ロス:Return Loss)

(1) パラメタ定義

適正な値でない特性インピーダンスの影響度は、反射減衰量の値によって、より正確に測定

され表現されます。

反射減衰量は、リンク全体に渡ってインピーダンスのミスマッチによって生じている全ての

信号反射を測定したものです。その値は、dBで表現されます。反射減衰量はギガビットイーサ

ネットを運用するに当って、特に重要な特性です。

リンクの両端のインピーダンスは、リンクの特性インピーダンスと等しくないといけません。

大抵はこのインピーダンスは、LANに接続されている機器のインタフェース部分によって決ま

っています。特性インピーダンスと機器による終端抵抗間の良好なマッチングは、リンクに対

する電力の伝達を効率よく行い、信号反射を最小限に押さえます。

反射減衰量の測定値は周波数に依存して大きく変化します。反射減衰量の発生源の一つに、

ケーブルに沿った特性インピーダンスの僅かなバラツキによるものがあります。不均等反射減

衰量(SRL:Structural Return Loss)特性は、ケーブル製造時の均質性を簡潔に顕しています。

SRLはケーブル製造時に測定され、性能が均一になるように管理されるべきものです。

もう一つの反射減衰量の発生源は、敷設されたリンク内-主に、コネクタからの反射によっ

て、生じます。リンクの特性インピーダンスは、低い周波数のおける高めの値から、高い周波

数における低めの値まで変化する傾向があります。

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<不均等反射減衰量>

理想的な伝送線路では、オープンショート法でその特性インピーダンスを測定して求めるこ

とができます。しかし、実際の線路では、構造上の不均等などによって、その特性インピーダ

ンスを全く等価な集中定数で表すことができません。従って近似解にならざるを得ません。線

路のインピーダンスZsは、特性インピーダンスの平均値Zvとそれからの偏差Wとの和として

考えられます。現実には、この偏差の大きさが意味をもち、これが不均等反射損失となります。

図4-16 反射減衰量概念図

入力信号

反射した信号

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(2) 測定結果の見方

標準規格では、周波数の関数として各々の配線リンクモデル(チャネルおよびパーマネントリ

ンク)について許容反射減衰量の計算式が定義されています。フィールドテスタは、次の2つ

のやり方で反射減衰量テスト結果の合格をレポートすることがあります。

① 最悪反射減衰量マージン

② 最悪反射減衰量値

図4-17 反射減衰量の解析

(3) 推奨トラブルシューティング方法

Cat5に比較して、Cat5eやCat6では、施工の仕方がさらに重要になっています。場合によっ

ては、成端コネクタでの不必要な撚り戻しが数dBの反射減衰量を増加させることもありえます。

以下の例は、適正に成端された例を示します。ここでは、被覆のカットは最小限にして、撚り

をできるだけ解かないようにします。

写4-2 端末加工イメージ

反射減衰量の高い性能が求められるケーブル敷設をする際には、最大限の注意を払うことが

最悪値の場合。98.2MHz において反射減衰量の最

悪値が観測されています。

最悪マージンの場合。58.2MHz においてリミットライ

ンに対して最も近いポイントが観測されています。

撚り戻しを最小にします。

ペア間のギャップを最小にします。

被覆のカットは最小にします。

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大切です。

(4)トラブルシューティング事例

反射減衰量が不合格(FAIL)になった場合の診断方法の事例について示します。

フィールドテスタによっては、TDR( Time Domain Reflect meter )機能がついています。

TDRを使うことで、ケーブル全体を見渡し、反射減衰量の主な発生箇所が何処にあるかを見る

ことができます。以下に某テスタメーカのTDRを使った、一連の操作手順を参考に示します。

最初に、反射減衰量試験結果画面を見ます。

図4-18 反射減衰量測定結果画面

ここで、ダイアルをSINGLE TESTにあわせ、TDRテストを実行させます。

図4-19 テスト実行画面

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これが終ったら、前の試験で分かっている最悪ペアを選択します。例では、3, 6ペアです。プ

ロットデータを見るために2番のソフトキーを押します。

図4-20 TDR画面

1番のソフトキーを押して、画面を拡大します。

図4-21 リターンロス解析画面

コネクタの間で、何も、事象が発生していませんので、問題を起こしているのはケーブルで

ないことが分かります。

ここでは、3つの着目すべき点があります。すなわち、2つのコネクタとリンクの端です。

常に、トレースの終端点は大きなスパイクが生じます。これは、正常なこととして無視します。

このトレースを見てみますと、スパイクはリモート端の方がより大きいことが分かります。

しかしながら、近端のこのスパイクは、特に目立ちます。これは、一般には、成端技量が優れ

ていないことを示しています。恐らく、作業者のトレーニングをもっとやらなければならない

のかも知れません。

リモート メイン

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性能の劣化または損傷したケーブル例

ここでは、ケーブルが激しく損傷した例を示します。

図4-22 ケーブル障害の例

ここで、ケーブルの遠端に向かって多くの小さな波を打つ特性が確認できます。これは、

単一のスパイクではありませんので、ケーブルの問題であることが分かります。通信アウト

レットの再成端をしても、良くはならないでしょう。

リモート メイン

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4.2.11 遠端漏話減衰量(FEXT : Far End Crosstalk )

(1) パラメタ定義

遠端漏話は、信号が近端から送信され遠端側で測定される以外は、NEXTと類似していま

す。

図4-23 遠端漏話概念図

FEXTを誘起する信号は、挿入損失が要因となって、遠端にいくにしたがってはるかに小さく

なる可能性があります。特に長さが長くなるほどその傾向が強くなります。このことは、一定

の品質のケーブリングに関しては、長いリンクよりも短いリンクの方が、FEXTがより多く発生

します。以上の理由でFEXTの試験結果は、リンクの挿入損失が一緒に示されなければ、意義を

持ちません。したがって、FXETは測定されますが、その結果は、ほとんどレポートデータには

記載されません。このFEXTは、次項の等レベル遠端漏話減衰量(ELFEXT)を算出するため使わ

れます。

(2) 結果の見方

NEXTは干渉を与える側と受ける側間の信号強度差の測定となりますので、小さな値よりもよ

り大きな値が好ましい値です。

(3) 推奨トラブルシューティング方法

FEXTはNEXTに起因しています。したがって、NEXT改善する手段もFEXTを良くするのに役立ち

ます。

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4.2.12 等レベル遠端漏話減衰量(ELFEXT : Equal Level Far End Crosstalk)

(1) パラメタ定義

ELFEXTは測定値というよりも計算結果といえます。これは、隣接する撚り対線から誘起され

た遠端漏話から干渉信号の挿入損失を差し引くことにより求められます。

<50mリンクの例>

・ FEXT = 45 dB

・ 挿入損失 = 11 dB

・ ELFEXT = 45 - 11 = 34 dB

図4-24 ELFEXT概念図

ELFEXT解釈の別の方法は、ACRと同じ様に遠端でのACRと考えることです。

(2) 結果の見方

リンクの両端で測定されたテスト結果を、適切なISOあるいはTIA許容規格値と比較します。

端毎に12のELFEXT測定値があり、合計で24となります。このことは、どの撚り対線に信号を

流すかによって僅かですが、挿入損失が変化するためです。したがって、例えば、対1に信号

を流し対2で漏話を遠端で測定します。その後、対2に信号を流し、対1で漏話を再度遠端で

測定することになります。

ELFEXTが大きすぎるということは予測したFEXTよりも過剰な挿入損失あるいはその両方が

過剰であるということを暗示しています。

(3) 推奨トラブルシューティング方法

NEXTの問題に関与する同じ要因がこのFEXTにも作用します。ELFEXTのトラブルシューティ

ングは、全くACRの問題のトラブルシューティングと同様に、NEXTと挿入損失を要因としてい

ます。

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4.2.13 電力和等レベル遠端漏話減衰量(PSELFEXT : Power Sum Equal Level Crosstalk)

(1) パラメタ定義

電力和等レベル遠端漏話減衰量(PSELFEXT)は、計算値であって、実際には直接測定した値

ではありません。当該撚り対線に対する他の3対によって誘起される各ELFEXTの数学的な総和

から求められます。各端に関して4つのPSELFEXTのテスト結果があります。

(2) テスト結果の見方

一般にPSELFEXTテスト結果は、リンクの各端の最悪ELFEXT値よりもおよそ3dB小さな値

になります。

(3) 推奨トラブルシューティング方法

NEXTの問題に関与する同じ要因がこのPSFEXTにも作用影響します。PSELFEXTに関するトラ

ブルシューティングは、ACRの問題のトラブルシューティングと同様にNEXTと挿入損失を要因

としています。

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4.2.14 直流ループ抵抗(DC Loop Resistance)

(1) パラメタ定義

直流ループ抵抗はループの一端における往復2導体の全抵抗です。これは導体直径の関数と

なり距離のみによって変化します。この測定は、リンク全体にわたって大きく抵抗を増加させ

る可能性のある誤配線がないことを確認するために時々行われます。ここで留意しないといけ

ないのは、ワイヤーマップ試験は自動的に断線を検知しますが、高抵抗の接続は見つけること

はできません。

直流抵抗は、よくインピーダンスと混同されます。インピーダンスは特定の周波数において

規定され、信号の流れに対するダイナミックな抵抗として表現される用語です。これらは電流

の流れに抗する、異なるタイプのものとしてオーム単位で測定されます。インピーダンスが長

さにかかわらずほぼ一定である一方、直流抵抗はケーブルの長さに比例します。

信号伝達の観点から、挿入損失の方が、現在ではより有用な測定となっており、直流抵抗は

それほど重要ではなくなっています。

(2) 結果の見方

撚り対線間のループ抵抗のばらつきは、ケーブリング問題の速やかな確認の指標になりえま

す。遠端でショートされたテスト環境では、当該撚り対線の値の単純な2倍になります。

(3) 推奨トラブルシューティング方法

直流抵抗が予測に反して高い抵抗値になった場合には、ケーブル内の他の撚り対線と比較し

ます。このことによってこの特定の撚り対線が悪いのか、あるいはケーブル全体に問題がある

ことによるものかの切り分けができます。もしも、1つだけが悪い場合は、接続がまずいのか

あるいは導体の酸化によって問題が発生しているのかを確認するために終端箇所を検査します。 もしも、全ての撚り対線が予期しない高い直流抵抗を示す場合には、以下のようなことを疑

ってみます。すなわち、ループバックを考慮して抵抗値を2倍にしていなかったかどうか。想

定している抵抗値が、使用されているワイヤ径に対して正しい値なのかどうか。26番ゲージ

のワイヤは24番ゲージのものよりも単位長あたりの抵抗値はより大きくなっています。さら

に、リンク内に通常の抵抗値ではないパッチコードが用いられてないか。隣接するケーブルが

正常のようであれば、他に特別なことがどこかにないかチェックしてみます。

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4.3 障害と要因の対応表/トラブルシューティング技法対応表

参考に障害とその要因および障害の種類に応じたトラブルシューティング技法対応法を示しま

す。

表4-1 トラブルと特性の関連表

IL NEXT PSNEXT ELFEXT PSELFEXT RL 不良要因

部材特性ミスマッチ ○ ○ ○ ○ ◎ インピーダンス不整合

撚り戻し ◎ ◎ ◎ ◎ ○ 漏話

引張り ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ インピーダンス変化

側圧(過重) ○ ○ ○ ○ ○ ◎

インピーダンス変化

性能劣化

漏話

多段接続 ◎ ○ ○ ○ ○ ○ 性能劣化

ショートリンク ◎ 信号反射(共振)

外来ノイズ ◎ ◎ ◎ ◎ 漏話

測定アダプタミスマッチ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ インピーダンス不整合

表4-2 トラブルシューティグ技法

Fail特性 技法 トラブルシューティング

Open/Short TDR機能 ワイヤーマップ

Split Pair TDX機能 場所の特定

ケーブル長 NVPの設定

TDR機能 正確な長さの確認

挿入損失 TDR機能 ケーブル長測定、インピーダンスミスマッチ確認

漏話系特性 TDX機能 漏話発生ポイントの確認

反射 TDR機能 反射発生ポイントの確認

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おわりに

社団法人電子情報技術産業協会 情報配線システム標準化グループでは、高度情報化社会における情

報配線システム施工技術の品質向上、規格の普及による施工技術の普遍性定着など、社会への貢献を機

会あるごとに広めたいと思います。

本書が情報配線システムに関わる、各種技術者の技術向上の一助となることを願っています。

情報配線システム標準化委員会

ツイストペア情報配線システムグループ

アプリケーション技術調査WG

リーダ 新田 貴代志

■ツイストペア情報配線システム標準化G

(敬称略・順不同)

主 査 山 下 耕 司 松下電工株式会社 副主査 石 川 浩 日立電線株式会社 副主査 新 田 貴代志 パンドウイットコーポレーション日本支社 委 員 若 山 郁 夫 NECフィールディング株式会社 委 員 上 村 郁 應 NTTコミュニケーションズ株式会社 委 員 前 田 英 一 岡野電線株式会社 委 員 根 岸 亨 沖電線株式会社 委 員 廣 瀬 直 彦 木島通信電線株式会社 委 員 大 和 範 勝 倉茂電工株式会社 委 員 石 嶺 伸 夫 三和電気工業株式会社 委 員 山 崎 泰 誠 昭和電線電纜株式会社 委 員 澤 泉 恵 二 住友電設株式会社 委 員 金 田 守 弘 タイコエレクトロニクスアンプ株式会社 委 員 村 田 健 一 通信興業株式会社 委 員 五 嶋 泰 幸 東日京三電線株式会社 委 員 及 川 孝 治 日本製線株式会社 委 員 榎 屋 直 人 ネットワンシステムズ株式会社 委 員 塩 津 良 二 日立電子サービス株式会社 委 員 海 保 浩 三 富士通ネットワークソリューションズ株式会社 委 員 河 田 正 義 冨士電線株式会社 委 員 天 本 英 樹 フルーク・ネットワークス 委 員 井 上 恵 一 株式会社渡辺製作所

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委 員 宮 崎 幸 夫 財団法人電波技術協会 オブザーバ 青 戸 政 和 日本コネクト工業株式会社 客 員 森 下 滋 宏 社団法人電線総合技術センター 事務局 河 内 浩 明 社団法人電子情報技術産業協会 事務局 細 川 照 彦 社団法人電子情報技術産業協会

■原案作成委員名簿:フィールド試験法調査ワーキンググループ

リーダ 新 田 貴代志 パンドウイットコーポレーション日本支社

委 員 上 村 郁 應 NTTコミュニケーションズ株式会社

委 員 別 府 正 寿 昭和電線電纜株式会社

委 員 澤 泉 恵 二 住友電設株式会社

委 員 海 保 浩 三 富士通ネットワークソリューションズ株式会社

委 員 天 本 英 樹 フルーク・ネットワークス

委 員 榎 屋 直 人 ネットワンシステムズ株式会社

委 員 金 田 守 弘 タイコエレクトロニクスアンプ株式会社

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―――― 禁 無 断 転 載 ――――

ツイストペア情報配線システム トラブルシューティングガイド

発 行 日 平成17年12月 編集・発行 社団法人 電子情報技術産業協会

標準・技術部 標準化センター

〒101-0062

東京都千代田区神田駿河台3丁目11番地

三井住友海上別館ビル

TEL (03)3518-6434