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ミドリムシ由来多糖高分子を原料とした有機材料の開発
-廃水から高付加価値物質創製の可能性-
産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門
上級主任研究員 芝上 基成
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・約10×50μmの微細藻類
・動物でも植物でもある動物学上の分類→原生動物門
鞭毛虫綱 ミドリムシ目植物学上の分類:→ミドリムシ植物門
ミドリムシ藻類綱 ミドリムシ目
ミドリムシの概要
撮影:宮崎大学 林雅弘教授(共同研究者)
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・食品添加物としての利用
・燃料としての利用
乾燥粉末
航空機用燃料油脂
素材としてのミドリムシバイオマスに開発の余地あり
ミドリムシバイオマスの活用例
種々の食品
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・光独立栄養・光従属栄養・従属栄養培養が可能→光合成だけでなくエサを食べて効率よく増殖→廃水・廃液の利用も可能
・~100g/L程度の高密度化も可能→大量消費材の素材として利用可能
・細胞壁を持たないため細胞内分子の抽出が容易→バイオマス生産の低コスト化が可能
ミドリムシ培養と素材としての特徴
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植物・食品系廃液
食品系工場農産物集積場
想定される高付加価値製品
乾燥細胞
多糖類
油脂
ミドリムシ由来バイオマス
樹脂
繊維
医薬品
有償で処理する無価値の炭素源を有価物に変換可能
素材生産工場としてのミドリムシ
ミドリムシ培養
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ミドリムシ細胞の構成成分
粗蛋白質粗脂質灰分β-1,3-グルカン残渣
31.754.881.18
17.603.02
北岡ら、日本農芸化学会誌、51(8), 477-482(1977)
58.7115.506.80
55.067.44
~~~~~
構成比(%)成分
単一分子であるβ-1,3-グルカンの大量産生に特徴
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パラミロン粒子
・役割はエネルギー貯蔵・乾燥細胞重量の~55%を蓄積・セルロース類似の直鎖状多糖
β-1,3-グルカン(パラミロン)
Carbohydr. Polym. 87 (2012) 452– 456
撮影:宮崎大学 林雅弘教授
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抽出/精製プロセス
パラミロン
細胞膜破壊→自然沈降(常温常圧下の温和な反応)
集合様式三重らせん
構造/結合様式
β-1,3-結合
OHO
HOOH
O
OH
OHO
OHO
OH
n
H
3
1
鎖長 ほぼ均一鎖長(単分散に近い)
β-1,4-結合
n
O
HO HOOH
OH
O
HOOH
OH
O O H1 4
シート
植物→パルプ化→脱リグニン(機械粉砕/高温下の過激な反応)
不均一(多分散)
セルロース
天然での存在状態
マイクロ粒子、純度100% 多くはリグノセルロース
生産速度 1~2日程度 多くは年単位
パラミロンとセルロースの比較
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原料としてのパラミロンの特徴
単分散性→成形性が良好な熱可塑性樹脂
三重らせん形成能→調製プロセスが簡素で高アスペクト比のナノファイバー
100%純度→精製容易なバイオマス原料
上記3つの特徴でセルロース等他の多糖との差別化
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パラミロン由来の製品イメージ
・熱可塑性樹脂
・ナノファイバー
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パラミロン粉末
熱成形樹脂ペレット(熱可塑性樹脂)
フィルム等高付加価値製品
炭化
加熱
化学変性
熱可塑化により高付加価値製品へ
熱可塑性樹脂 -熱可塑性の意義-
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OHO
HOOH
O
OH
OHO
OHO
OH
OHO
OH
OH
n
OH
ORO
ROOR
O
OR
ORO
ORO
OR
ORO
OR
OR
n
OR
R =
O
m
O
or or H
パラミロン
長鎖アシル基/短鎖アシル基の導入による混合エステル化
パラミロン混合エステル
熱可塑性樹脂 -熱可塑性誘導体-
アシル基鎖長により広範囲の熱・機械特性が得られる
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パラミロン混合エステルC14-C2C14-C2C16-C2C16-C2C18-C2C18-C2
リファレンス高分子ポリ乳酸ナイロン11
ABS
置換度(長鎖アルキル基/アセチル基)
0.28/2.490.61/2.230.29/2.410.50/2.020.31/2.330.46/2.07
−−−
重量平均分子量(×104)
15.313.8629.395.0226.317.53
−−−
メルトフローレート(g/10 min)
1080135473417219481289
132013401040
ガラス転移温度(℃)
13394131110127113
6045102
・メルトフローレート:リファレンス高分子と同程度・ガラス転移温度:リファレンス高分子以上→熱可塑性と耐熱性に特徴あり
熱可塑性樹脂 -構造および熱物性-
Carbohydr. Polym. 105 (2014) 90–96
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パラミロン混合エステルC14-C2C14-C2C16-C2C16-C2C18-C2C18-C2
リファレンス高分子ポリ乳酸ナイロン11
ABS
置換度(長鎖アルキル基/アセチル基)
0.28/2.490.61/2.230.29/2.410.50/2.020.31/2.330.46/2.07
−−−
曲げ強度(MPa)
75.7−
65.539.258.332.7
976278
曲げ弾性率(GPa)
2.11−
1.741.151.600.92
4.91.22.7
衝撃強度(kJ/m2)
3.9−2.72.02.34.0
4.83.921.9
・曲げ強度:リファレンス高分子と同程度・曲げ弾性率:リファレンス高分子と同程度・衝撃強度:ポリ乳酸やナイロン11と同程度→耐久材として利用可能
熱可塑性樹脂 -機械物性-
Carbohydr. Polym. 105 (2014) 90–96
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熱可塑性
耐熱性
曲げ強度
耐衝撃性
ポリ乳酸
ABS
ミドリムシプラスチック
熱可塑性樹脂 -物性比較-
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特徴
・良好な熱可塑性、成形性(←分散度~1)・高耐熱性
出口イメージ・製造時に溶融温度均一性が要求される熱可塑性樹脂製品
熱可塑性樹脂 -特徴と製品イメージ-
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パラミロン由来の製品イメージ
・熱可塑性樹脂
・ナノファイバー
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Carbohydr. Res., 75, 231 (1979)
三重らせん構造のナノファイバーはパラミロン粒子に埋まっている
ナノファイバー
パラミロン粒子
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自己組織化解繊
自己組織化
ナノファイバー
パラミロン粒子 アルカリ水溶液に溶解
希釈 希釈
自己組織化能に基づくナノファイバー形成
ナノファイバー -調製方法-
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セルロースナノファイバーに類似のミドリムシナノファイバー
ナノファイバー -形状-
https://shingi.jst.go.jp/past_abst/abst/p/09/921/kyoto10.pdf
ミドリムシナノファイバー セルロースナノファイバー
Carbohydr. Polym. 93 (2013) 499–505
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トップダウン法
15nm~/短小~中
精製により高高価
ボトムアップ法
20nm~/長大高
安価の可能性あり
調製法
形状
幅/長さアスペクト比サイズ均一性コスト
ミドリムシナノファイバー セルロースナノファイバー
自己組織化
パラミロン
機械的解繊(グラインダー、ボールミル等)
リグノセルロース
ナノファイバー -セルロースナノファイバーとの比較-
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天然パラミロン
化学修飾
天然型ナノファイバー
化学修飾ナノファイバー化学修飾パラミロン
自己組織化
自己組織化
ボトムアップ法により調製容易な化学修飾ナノファイバー
ナノファイバー -ボトムアップ法の長所-
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R2 = OCH2COO-Na+ or OH
カルボキシメチルパラミロン
ナノファイバー -化学修飾ナノファイバーの例-
Carbohydr. Polym. 152 (2016) 468–478
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特徴・低コスト化可能・高アスペクト比・サイズ均一性・化学修飾可能
出口イメージ・樹脂用添加剤・化粧品素材・食品素材
ナノファイバー -特徴と製品イメージ-
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ミドリムシを使った廃水処理により
・種々の高付加価値物質の生産が可能・廃水を用いる培養により、多大なカーボンオフセットが可能
まとめ
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廃水の活用(醗酵企業、食品企業)
→糖を含む食品系廃水の培養液としての活用
熱可塑性樹脂(化成品企業)
→成形法の工夫による種々の製品化
ナノファイバー(化成品企業)
→セルロースナノファイバーが不得手とする用途開発
企業への期待
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :β-1,3-グルカン誘導体、及び
β-1,3-グルカン誘導体の製造方法
• 登録番号 :6029155
• 出願人 :産総研、宮崎大学
• 発明者 :芝上基成、坪内源、林雅弘
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :β-1,3-グルカンナノファイバーの製造方法
• 出願番号 :特願2012-246033 (登録査定H29/3/21)
• 出願人 :産総研、宮崎大学
• 発明者 :芝上基成、林雅弘
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お問い合わせ先
産業技術総合研究所
イノベーションコーディネータ 新間 陽一
TEL 029-862 - 6032
FAX 029-862 - 6048
e-mail [email protected]