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マンション設備改修工事チェックポイントマニュアル

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はじめに

 当協会では、平成 21 年度に国土交通省のマンション等安心居住推進事業(相談体制の整備等に係る

事業)の採択を受けた「マンション大規模修繕施工管理チェックポイントマニュアル」を作成し、管

理組合を初めとする関係者の方々に高い評価をいただきましたが、その中で設備関係の改修工事につ

いても同様のマニュアルを望む声が多く聞かれました。

 そこで協会では、技術委員会において、設備系会員を中心にワーキンググループを編成し、昨年度

に引き続き国土交通省マンション等安心居住推進事業の採択を受け、「マンション設備改修工事チェッ

クポイントマニュアル」を作成いたしました。

 設備改修工事においては、給排水など直接生活に影響を及ぼす工事などもあり、どのように工事が

行われるのか居住者にとっては不安な要素が多々あると思います。本書は、こうした設備改修工事の

流れや工事部位、専有部分への影響等を含めて工事のチェックポイントを写真や図などを盛り込み、

分かりやすくまとめ、建築系技術者や管理組合等にも理解しやすいマニュアルとしております。

 昨年発行の「マンション大規模修繕施工管理チェックポイントマニュアル」と本書をシリーズとし

て管理組合、施工社等関係者の方々に広くご活用頂きますことを心より願うものであります。

 最後に、本マニュアルの取り纏めにあたり、技術委員会委員及び関係各位に多大なご協力をいただ

きましたことに深く感謝を申し上げます。

平成 22 年 12 月

一般社団法人 マンション計画修繕施工協会

会長 坂倉  徹

技術委員会委員長 高橋 秀行

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目次

Ⅰ . 着工前準備・共通仮設

 1. 着工前準備・共通仮設の基本事項

 2. 管理組合、設計者の要求ニーズの把握

 3. 見積と事前調査

 4. 有資格者の保有と教育

 5. 共用部分と専有部分

 6. 着工前準備のチェックポイント

 7. 共通仮設のチェックポイント

Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

 1. 給水・給湯設備の基本事項

 2. 給水・給湯設備の不具合

 3. 給水・給湯配管更新工事

 4. 給水・給湯設備改修工事(専有部)のチェックポイント

 5. 水槽・ポンプ・給湯システム・埋設管の改修

 6. 給水・給湯設備改修工事(共用部)のチェックポイント

Ⅲ . 排水設備改修工事

 1. 排水設備の基本事項

 2. 排水管の更新工事

 3. 排水設備改修工事(専有部)のチェックポイント

 4. 排水通気の改修

 5. 土中埋設管、排水桝の改修

 6. 排水設備改修工事(共用部)のチェックポイント

Ⅳ . 給排水管更生工事

 1. ライニング更生工事

 2. 給水管更生工法の検討

 3. 給水管更生工事のチェックポイント

 4. 排水管更生工法の検討

 5. 排水管更生工事のチェックポイント

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目次

Ⅴ . 電気設備改修工事

 1. 幹線・照明設備改修工事

 2. 幹線・照明設備改修工事のチェックポイント

 3. 電話・インターネット設備改修工事

 4. 電話・インターネット設備改修工事のチェックポイント

 5. テレビ共同受信設備改修工事

 6. テレビ共同受信設備改修工事のチェックポイント

 7. インターホン設備改修工事

 8. インターホン設備改修工事のチェックポイント

Ⅵ . 消火・防災設備改修工事

 1. 消火・防災設備改修工事の基本事項

 2. 自動火災報知設備改修工事

 3. 消火設備改修工事

 4. 消火・防災設備改修工事のチェックポイント

Ⅶ . 排気設備改修工事

 1. 排気設備改修工事の基本事項

 2. 排気設備改修工事のチェックポイント

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Ⅰ . 着工前準備・共通仮設

1. 着工前準備・共通仮設の基本事項

 マンションの設備改修工事は、何らかの不具合が顕在化した場合に管理組合が改修工事を検討し、

設計者、組合員との協議の中で基本方針を策定し、施工業者への見積依頼がなされます。施工業者は、

この基本方針に則り事前調査を行い、見積書を提出し、施工に臨むことになります。しかし設備工事

の場合は、隠蔽されている部位が多く、竣工図や予想された配管ルートと違う場合や、各専有部の状

況毎に臨機応変な対応を迫られることが多々あります。

 そのような現場対応も、もちろん必要なことですが、事前の調査等により回避、協議ができればそ

れに越したことはありません。各章のチェックポイントについて、着工前に確認できるものは確認する、

こうした準備体制を整備する必要があります。

2. 管理組合、設計者の要求ニーズの把握

 新築工事であれば、設計図書通りの施工がなされれば問題はないのですが、マンション改修の場合

は、既存建物・設備と融合させ、その上で管理組合、設計者の要求ニーズを満足させる必要があります。

そのためには、確実にその要求ニーズを理解する必要があるため、事前協議は欠かせず、双方の理解

を深めます。

 このマンション設備改修工事のニーズは、大きく次の二つに分けられます。

◆求められる要求ニーズ1. 機能的劣化への対応

 機能的劣化とは、設備機器 ・ 配管が長期間の使用により老朽化し、設備機能が損なわれたり、損傷

により使用不能になることで、腐食や磨耗などの物理的な劣化によるもの。

2. 社会的劣化への対応

 社会的劣化とは、社会環境の変化によるものであり、生活レベルの向上、設備システムの機能向上、

省資源・省エネルギー指向、LCC の低減指向、インテリジェント化、アメニティの向上、耐震性の向上、

メンテナンス性の向上などの使用者・所有者ニーズに対して、従来設備の機能が不満足な状態となる

こと。

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Ⅰ . 着工前準備・共通仮設

 こうした有資格者でも、居住者が生活する中でのマンション設備改修工事については、やはり経験

が必要といえますので、本マニュアル等を活用した指導・教育体制が必要です。

3. 見積と事前調査

 設備改修、特に給排水配管設備などの工事は、断水、使用制限等、居住者に与える影響、負担が非

常に大きいものとなります。生活の不便を最小限に抑えようとすると工事費用の増加につながるケー

スもあります。

 どのような施工方法を採用するかは、配管するスペース、系統等の制約もあり限られたものとなら

ざるを得ません。その際に施工優先とするか工事費用優先とするかを協議の中心とすべきであり、そ

のためのあらゆる可能性は事前調査で把握しておき、メニューとして提示することが肝要といえます。

4. 有資格者の保有と教育

 設備改修に関連する資格としては次のようなものがあります。マンション設備改修に関連する資格

区分 対象設備 適用法令 取扱い有資格者 職務内容

建物関係

建築物

建築設備

建築基準法・建築士法建設業法建築士法

建築士 (1 級 ・2 級 )建築施工管理技士 (1 級 ・2 級 )設備設計一級建築士 ・ 建築設備士

建築物の設計または工事監理施工管理大規模建築物の建築設備の設計または工事監理に係わる意見具申

搬送関係 エレベーター 建築基準法・施行規則 昇降機検査資格者 昇降機の定期点検 ・ 整備

給排水関係

給水設備

水質

し尿浄化槽排水設備

水道法建設業法水道法

浄化槽法下水道法

給水装置工事主任技術者管工事施工管理技士 (1 級 ・2 級 )地方公共団体の機関または厚生労働大臣の登録を受けた機関浄化槽整備士排水設備責任技術者

給水装置工事の技術上の管理 ・ 指導施工管理水道施設の検査等

浄化槽の整備及び工事下水道に関する一般の管理申請義務

電気関係

受変電設備

電話・通信設備

電気事業法・規則

電気工事士法

電気通信事業法

電気主任技術者(第 1 種 ・2 種・3 種 ・ 許可主任技術者)電気工事士(第1種・2種)

認定電気工事従事者

工事担任者

電気工作物の管理・維持運用、電圧により資格制限一般電気工作物及び自家用電気工作物の電気工事(資格により制限あり)一般電気工作物及び自家用電気工作物の簡易電気工事電話、情報・通信設備の工事

防災関係

消防用設備等

危険物

消防法

消防法

消防設備士(甲種・乙種)

危険物取扱者(甲種・乙種・丙種)

消防設備の設置・維持工事および消防設備の定期点検整備(資格により範囲に制限あり)火災など危険性の高い物品の取扱い者

(資格により範囲に制限あり)

ガス関係

ガス湯沸器等 特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律

ガス消費機器設置工事監督者 特定ガス消費機器設置工事の監督

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Ⅰ . 着工前準備・共通仮設

5. 共用部分と専有部分

 マンションは、共用部分と専有部分に分かれますが、各マンションで定める管理規約によってその

境界が決められています。一般的には国土交通省発行の「マンション標準管理規約」に準じたものが

多いと思います。また、同省では「マンション管理標準指針」を発行し、設備配管・配線類の境界を

具体的に図示していますので、以下に掲載します。

マンション標準管理規約別表第 2(共用部分の範囲)1. 玄関ホール、廊下、階段、エレベーターホール、エレベーター室、電気室、機械室、パイプスペース、

メーターボックス(給湯器ボイラー等の設備を除く)、内外壁、界壁、床スラブ、基礎部分、バルコニー、

ベランダ、屋上テラス、車庫等専有部分に属さない「建物の部分」

2. エレベーター設備、電気設備、給排水衛生設備、ガス配管設備、火災警報設備、インターネット通信設備、

ケーブルテレビ設備、オートロック設備、宅配ボックス、避雷設備、塔屋、集合郵便受箱、配線配管(給

水管については、本管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配管継手及

び立て管)等専有部分に属さない「建物の附属物」

3. 管理事務室、管理用倉庫、集会室及びそれらの附属物

マンション管理標準指針(設備配管・配線の専有・共用区分図の例)

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Ⅰ . 着工前準備・共通仮設 基本的には、この境界で専有部と共用部を分けていますが、設備改修工事の際には、専有部と共用

部を一体化して管理組合が工事を行えることとしています。

第 21 条(敷地及び共用部分等の管理)

1 省略

2 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として

行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。

また、同標準管理規約のコメントには、計画修繕工事に関し、給排水管更生・更新工事、照明設備、

共聴設備、消防用設備、エレベーター設備の更新工事は、総会の普通決議で実施可能としています。

 こうした契約前の準備では、営業担当、現場担当が管理組合を含めてお互いの工事に対する共通の

認識を持つことが重要となりますので、これらが契約書に反映され、契約に臨むことになります。

【マンション標準管理規約】

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Ⅰ . 着工前準備・共通仮設

6. 着工前準備のチェックポイント【1】契約内容の確認

【2】施工計画

【3】仮設計画

・収入印紙、押印を確認する。・設計監理者の表記有無を確認する。・仕様書、見積書、質疑回答書、設計図書を確認する。・契約工期を確認する。・特記事項(管理組合との取決め事項等)を確認する。・支払時期、請求時期を確認する。・保証年数を確認する。

・仕様書の内容を確認する。・使用材料を確認する。・使用材料の化学物質安全性データシート(MSDS)を

確認する。・施工計画書(要領書)を作成する。・施工図(施工元図)を作成し、検討する。・施工体制台帳を作成する。

・現場事務所・倉庫の敷地を確認する。・仮設トイレの設置場所・汚水桝を確認する。・仮設電話設置(番号)を手配する。・工事用電気、給排水設備を確認する。・資材搬入時の運行経路を確認する。・工事用掲示板、ポストの設置場所を確認する。・工事用車両置き場を確認する。・足場等仮設時における車両・自転車移動を確認する。・居住者用私物置き場の有無を確認する。・廃材置き場の場所を確認する。

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Ⅰ . 着工前準備・共通仮設

【4】 関係官庁への届出

【5】 住民説明会の開催

【6】 近隣あいさつの実施

・電力会社に防護管・引込電源などを申請する。・特定元方事業開始報告を確認する。・機械等(足場)設置届を確認する。・道路占有の申請を確認する。・道路使用の申請を確認する。・適用事業報告を確認する。・時間外労働(三六協定)の届け出を確認する。・少量危険物保管に伴う消防署への届け出の有無を確認

する。

・発注者との資料内容を事前確認する。・住民説明会資料を作成する。・日時・場所・駐車場の有無等を確認する。・外部区分所有者への通知を確認する。・準備物(スリッパ、イス、マイク等)を確認する。・議事録作成、出席者記録を確認する。

・管理組合との挨拶文を確認する。 基本的に管理組合連名とする。・発注者立会いの有無を確認する。・近隣あいさつ範囲を確認する。

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Ⅰ . 着工前準備・共通仮設

【7】 諸官庁への各種申請手続き

・吹きつけアスベストやアスベスト含有の保温材、断熱材および耐火被覆材等の除去作業を行う場合の届出が必要となる。

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Ⅰ . 着工前準備・共通仮設

【1】仮設事務所(外部敷地)

・近隣状況を確認する。・仮囲いの有無を確認する。・床面の養生を確認する。・資材トラック搬入場所を確認する。・作業場所への作業員の動線を確認する。・1F 建て・2F 建て・隣接住戸への日照を確認する。・強風および大雨時の対策を確認する。・敷地面積・寸法の計測および近隣状況を確認する。

【2】仮設事務所(集会室等借用の場合)

・床、壁面の養生を確認する。・借用中の使用範囲を確認する。(発注者使用スペースなど)

・使用時間帯を確認する。・既存設備の状況を確認する。(エアコン・照明・電気・水道・ガス)

・鍵借用を確認する。・防犯・防火対策を確認する。・整理整頓、指定喫煙場所を確認する。

・設置場所および敷地を確認する。・近隣状況を確認する。・仮囲いの有無を確認する。・シート養生対策を確認する。・整理整頓、指定喫煙場所を確認する。・防犯・防火対策を確認する。・強風および大雨時の対策を確認する。・生活動線に支障がないことを確認する。

【3】作業員休憩所

7. 共通仮設のチェックポイント

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Ⅰ . 着工前準備・共通仮設

【4】仮設資材置き場

【5】仮設トイレ・手洗い場

【6】仮設電気設備

・設置場所および敷地を確認する。・近隣状況を確認する。・仮囲いの有無を確認する。・立入禁止措置・必要看板を確認する。・法令に沿った資材管理をする。 (有機溶剤取扱者、少量危険物等)・第三者との動線計画を確認する。・資材置場付近、安全通路を確保する。・防犯・防火対策を確認する。・強風時の対策を確認する。・床面の養生を確認する。

・設置場所および敷地を確認する。・汚水桝への排水経路の確認をおこなう。・仮囲いの有無を確認する。・強風時の対策を確認する。・定期的な清掃計画を確認する。・仮設配管の凍結防止対策をする。・周辺安全通路を確認する。・床面の養生を確認する。・転倒防止対策をする。

・外部電源(電柱)からの引き込み申請を確認する。・電気使用容量を確認する。・発電機の使用有無を確認する。・仮設配線の施工計画を確認する。(床配線のつまずき注意)

・分電盤漏電対策の確認および取扱い責任者を掲示する。

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Ⅰ . 着工前準備・共通仮設

【7】仮設給排水設備

【8】廃材置き場

【9】工事用車両置き場(場内敷地借用の場合)

・汚水桝の位置を確認する。・引き込み経路を確認する。(他水源があれば確認)・汚水・排水処理(沈殿槽設置等)を計画する。・同上に伴う養生を確認する。・配管の凍結防止対策を確認する。

・設置場所および敷地を確認する。・廃材コンテナを設置する。・産廃処理委託業者との基本契約を確認する。・車両搬出入経路を確認する。・近隣への臭い対策を確認する。・周囲安全通路を確認する。・床面の養生を確認する。・仮囲いの有無を確認する。・強風・大雨・防火対策を確認する。・マニフェストの管理方法を確認する。・はい作業主任者の有無を確認する。(2m 以上の積み上げの場合は必要になる)

・廃液処理方法を確認する。

・発注者の許可、承認を確認する。・敷地内車両駐車配置計画を確認する。・第三者安全通路を確認する。・緊急車両搬入時の移動対策を確認する。・敷地内徐行運転の計画を確認する。・「駐車許可証」を発行する。 (運転者の連絡先表示)

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Ⅰ . 着工前準備・共通仮設

【10】工事用掲示板の設置

【11】電線防護管の設置

【12】外部掲示物

・設置場所を確認する。・工事用ポスト併設を確認する。・掲示物の風雨対策を確認する。(外部設置の場合)・掲示板付近の照度を確認する。・各種工事着手のお知らせは概ね一週間前に配布又は掲

示するものとし、施工期間、施工時間、各工種毎の工事内容注意点及び連絡先等が明記されていること。

・配布チラシ・本日の作業内容・工程表・工区割図等を掲示する。

・電力会社への申請を確認する。・防護管部材の手配を確認する。・現地での電柱および高圧線位置を事前確認する。

・労災関係成立票の掲示を確認する。・建設業の許可票の掲示を確認する。・各種作業主任者の表示を確認する。(有機溶剤作業主

任者の表示、足場組立等作業主任者の表示を確認する)

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

1. 給水・給湯設備の基本事項 給水設備は、大きく分けて水道事業体管轄の公共部、敷地内埋設部、建物内配管部、また、建物内

配管部は専有部と共用部に分かれます。

①給水方式 マンションに採用されている主な給水方式は、以下のようになります。

直結直圧給水方式公共水道の圧力で直接給水する方式。水道事業体の水道本管自体の圧力により、階数、適用範囲に制限がある。

直結増圧給水方式公共水道から引き込んだ水を増圧ポンプユニットで各戸へ給水する方式。受水槽、高置水槽が不要。

高置水槽給水方式公共水道から一旦受水槽へ入れ、揚水ポンプで高置水槽に上げ、重力で各階に給水する方式。

加圧給水方式公共水道から一旦受水槽へ入れ、受水槽から加圧ポンプを介して直接各戸へ給水する方式。

直結増圧給水方式

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

高置水槽給水方式

加圧給水方式

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

②給水配管の変遷 給水配管材料も次表のように年代により使われた材料の変遷があります。

主な給水配管材料の変遷

③給湯配管の変遷 給湯配管の材質は、近年では耐熱性のある樹脂管の採用が多くなり、架橋ポリエチレン管やポリブ

テン管が使用されていますが、それまでは発泡ポリエチレン等で被覆された被覆鋼管や昭和 50 年頃

までは亜鉛めっき鋼管も使われています。

給湯配管の変遷

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■水道用亜鉛めっき鋼管(SGP-W)配管用炭素鋼管の黒管に溶融亜鉛メッキを施した管で、1970 年頃以前には水道用の管として主に使われました。白ガス管よりも亜鉛付着量が多く、良質なメッキがされた管で多く使用されました。現在は錆等の問題で使用されていません。継手はネジ込みで白継手が使用されました。

■水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管(SGP-V)亜鉛めっき鋼管の内面に硬質塩化ビニールをライニングした配管です。(写真は VLP-VA)外面からの衝撃に強く、内面の耐食性にも優れています。一般的に多く使われている配管です。継手はねじ込み式継手を用いて、管端部を防食できるコア付継手で使用します。この他に(VLP-VB)(VLP-VD)があります。

■水道用ステンレス鋼管(SUP)(給湯使用可)ステンレス鋼管は、耐食及び耐熱性に優れ耐久性及び高温、低温に強い管であり、近年は一般配管用ステンレス管(JIS G 3448)が住宅用の給水、給湯に利用され、薄肉で軽量のため改修工事によく使用されます。継手もメカニカル継手溶接等、多々あります。

■銅管(CUP)(給湯使用可)銅は酸、アルカリ等に対してかなりの耐食性を有し、電気伝導度、熱伝導度が大きく、施工性にも優れているので給水給湯に使用されます。肉厚により、K.L.M →薄いとあり一般的に L タイプが使用されます。継手はろう付とフレヤー継手が用いられます。

■水道用硬質ポリ塩化ビニル管(VP)耐薬品性に富み、摩擦抵抗が小さく配管加工が容易で施工性が非常によく、仮設給水管によく使用されますが、熱に弱く衝撃性、耐光性に乏しくなっています。継手は給水用の TS 継手(差し込み接着工法)が用いられます。

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

④給水・給湯管材の種類

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■高性能ポリエチレン管(PE 管)可とう性が大きく、地震や地盤沈下にも強い配管です。内外面からの耐食性に優れているので、主に埋設管として使用します。軽量で作業性・加工性に優れています。最近では給水立管・枝管でも使用されています。

■耐衝撃性硬質塩化ビニル管 (HIVP)給水管に使用される塩ビ管です。通常の塩ビ管より、耐衝撃性に優れています。専用接着剤で接続するので、作業性に優れています。埋設配管や土間配管、又室内給水管として使用されます。継手は管材と同一素材の給水用 TS 継手が用いられます。

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

■水道用ポリブテン管(PBP)(給湯使用可)クリープ性に富み、耐寒、耐熱、耐塩素性に優れ、軽量、長尺で施工性がよく、近年は住戸用の給水給湯管に使用されています。継手はメカニカル型先分岐式やヘーダー方式等でメカニカル型が採用されています。

■水道用架橋ポリエチレン管(PEX)(給湯使用可)接続は大口径は熱融着、小口径はメカニカル式があり、錆びない性質と耐ストレスクラップ性、クリープ性に優れるので埋設管によく使用されます。

■耐熱塩化ビニルライニング鋼管 (HTLP)(給湯用)配管用炭素鋼管の黒管の中に耐熱ビニールをライニングした管で、外面からの衝撃に強く、内面の耐食性も優れています。継手はねじ込み式継手を用いて管端部を耐食できる IP 継手が用いられています。

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

■被覆付銅管(CUP)(給湯用)一般的な給湯配管材料で広く使用されていました。銅管(L、M)に高発砲ポリエチレンフォームを被覆した管で耐熱性、耐寒性に優れています。継手はロウ付等で銅管と同じです。近年は架橋ポリエチレン管が多くなってきています。

■耐熱硬質塩化ビニル管(HTVP)(給湯用)耐熱性に優れ、給湯配管に使用します。軽量で、専用接着剤で接続配管するため作業性に優れています。

■被覆付架橋ポリエチレン管(PE)(給湯用)近年では、採用されることが多くなっています。加工性、耐久性、耐薬品性に優れ、継手類も各種開発されています。

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

2. 給水・給湯設備の不具合

 給水設備の劣化・不具合は、主にこれらの給水方式、使われている配管材料に起因するもの、機器

類の経年劣化、不具合に起因するもの、使用者の維持管理不足や使い勝手によるものなどがあります。

 主な不具合には、つぎのようなものがあげられます。

赤水

 原因:配管内部のさび(亜鉛めっき鋼管・硬質塩化ビニルライニング鋼管接続部防食継手未施工など)

水量・水圧不足

 原因:配管内部のさびによる閉塞(赤水原因及び樹脂コーティング継手のふくれなど)

    ポンプの劣化(機器の能力低下)

漏水

 原因:配管のさび、腐食による欠損(異種金属接合部、埋設部マクロセル腐食)

    外力による破壊(地震、リフォーム時の釘等の打ち込みなど)

    水槽・ポンプからの漏水(パッキン、シール等の劣化など)

水質劣化

 原因:水槽容量と使用実態が合っていない(水槽の水が回らない、藻、苔が発生しているなど)

異音・振動・警報

 原因:ウォーターハンマー、ポンプの異常振動、水位制御異常

    (配管の未固定、ポンプ軸ズレ、水槽制御棒・ボールタップ故障など)

 こうした不具合に対処又は予防保全的に改修を計画することになりますが、計画の発意としてのキー

ワードは次のようになります。

◆配管からの漏水が数件おきている

◆あちらこちらで水の出が悪い

◆水の味が悪い、鉄の味がする

◆騒音・振動がある

◆耐用年数が近い

◆保守・維持管理に費用が掛かるようになってきた 等々

 これらの原因と管理組合の要求ニーズを踏まえ、それぞれの改修工法を選択します。各工法ともそ

のマンション毎に条件が異なるため、専門家を交えて意思疎通を図ることが重要です。

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ー 19 ー

Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

3. 給水・給湯配管更新工事

①給水配管更新工事の改修フロー 給水管の改修工事では、大きく分けて配管の更新工事、更生工事、両方の併用工事があります。

配管を更新する場合は、以下のフローチャートにより方針を決定していきます。

配管更新(または再生)

共用部 専有部

露出配管 隠蔽配管

配管経路・貫通部の意匠性について検討

既存配管を残したまま新設配管が  できるスペースがあるか

壁・床・キッチン等機器まで一時撤去、復旧して行うか

◆確認事項 組合としての合意形成 既リフォーム住戸 復旧方法・費用負担方法

専有部

共用

露出配管時の検討事項・配管貫通部は非構造部か・廊下の有効幅員は確保できるか・メンテナンスは容易か・配管材料は適切か・配管支持法・支持間隔は適切か

隠蔽配管時の検討事項・配管貫通部は非構造部か・メンテナンスは容易か・配管材料は適切か(自治体によって樹脂管が認められていない場合もある)・配管支持法・支持間隔は適切か

専有部隠蔽配管時の検討事項・排水管等他配管の同時施工の検討・住戸内作業日数と仮設使用方法・内装復旧範囲と費用負担・結露防止措置がとられているか・適切な下地が施されているか・配管材料は適切か(自治体によって樹脂管が認められていない場合もある)・配管支持法・支持間隔は適切か

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 給湯設備の改修の場合、既存設備をそのままのシステムで改修するか、若しくはシステム全体を変

更する場合があります。基本的に考慮するのは維持管理面、コスト面となりますが、その比較の上で

下図のフロー図で検討を行います。

ー 20 ー

Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

②給湯設備の改修フロー 給湯方式は、おおむね局所給湯方式、戸別給湯方式及び住棟セントラル給湯方式の 3 タイプに大

別されます。

 住棟セントラル給湯方式は、マンションの屋上等に熱源機や貯湯槽を設けて給湯箇所へ配管で給湯

する方式や、地域暖房等から蒸気や温水の供給を受けて熱交換器を介して供給される方法があります

が、維持管理に費用が掛かることが難点といえます。

 局所給湯方式は給湯の必要箇所にそれぞれ給湯器を設ける方式で、台所に湯沸器、浴室にガス焚バ

ランス釜などが設置されているものです。

 戸別給湯給湯方式は、各戸に電気温水器又は廊下やベランダにガス給湯器を設置し、台所、浴室な

どに給湯する方式で、マンションではこの方式が多く採用されています。

 住棟セントラル方式以外は、専有部分となるため管理組合の計画修繕工事の範囲ではありませんが、

給排水管の専有部工事を行う時に、既設給湯設備の状況によっては同時に行った方がよい場合もあり

ますので、検討の対象とすることが望まれます。

住棟セントラル方式 戸別給湯方式 局所給湯方式

既存改修 既存改修

ガス 電気

給湯設備改修検討フロー

◆全体計画の留意点・ランニングコスト面での検討・維持管理面での検討・安全面での検討・専有部への影響面の検討

◆ガス式へ変更の場合の留意点・ガス配管経路、口径の検討・給排気方法の検討

◆電気式へ変更の場合の留意点・電気幹線容量の検討・機器設置場所の検討・深夜電力利用の検討

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1 日目 2 日目 3 日目 4 日目 5 日目 6 日目 7 日目

作業項目 養生・解体・はつり

配管工事 配管工事 浴室設置内装工事 内装工事 内装工事 内装工事

器具復旧

作業場所浴室・洗面所・トイレ・廊下・

流し台

浴室・洗面所・トイレ・廊下・

流し台

浴室・洗面所・トイレ・廊下・

流し台

浴室・洗面所・廊下・流し台

洗面所・トイレ・廊下・流し台

洗面所・トイレ・廊下・流し台

洗面所・トイレ・廊下・流し台

作業内容浴室・床・壁・

天井解体・はつり

排水管更新排水管更新

給水給湯管更新浴室組立

内装下地復旧内装下地復旧内装仕上げ

内装下地復旧内装仕上げ

内装仕上げ器具復旧

排水禁止 禁止(解体作業の為)

禁止(排水配管の為)

禁止(給排水配管の為)

禁止(浴室組立の為)

作業状況により一時排水可

(内装復旧に伴う器具取外し)

作業状況により一時排水可

(内装復旧に伴う器具取外し)

作業状況により一時排水可

(内装復旧に伴う器具取外し)

設備機器使用状況

トイレ 入室作業中はトイレの使用はできませんが、作業終了後~翌日作業開始までは使用可能です。給水配管、内装復旧作業時は便器を取り外します。

洗濯機1 日目に別の場所に仮置きさせていただきます。7 日目に復旧します。

(原則として工事期間中は洗濯機の使用はできません)工事期間中排水管更新後、当日作業終了時から翌日作業前まで仮に使用できるようにいたします。

洗面台 1 日目に別の場所に仮置きさせていただきます。7 日目に復旧します。(工事期間中は洗面台の使用はできません)

浴室 入室作業中は浴室の使用はできません。4 日目の作業終了後から翌日の作業前まで使用できます。(1 日目から 3 日目の夜間まで使用できません)

流し台 入室作業中は台所の使用はできませんが、作業終了後~翌日作業開始までは使用可能です。

在宅の要否 在宅必要 在宅必要 在宅必要 在宅必要 在宅必要 在宅必要 在宅必要

ー 21 ー

Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

給排水改修工事の専有部工程表の一例

アイソメ図

次項から給排水改修工事(専有部)のチェックポイントについて解説します。

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

【1】住戸内工事(1 日目)内装解体工事

■廊下解体 既存・材質・仕様・色を確認する。・幅木が解体できるか確認する。・復旧方法と解体範囲を確認する。

■床仕上材撤去(発砲コンクリート仕上げの場合)・養生の範囲・方法が適切か確認する。・埋設管はつり位置の墨出し確認をする。・既存との取り合い部分は、見切りをよく検討する。

■新設配管ルート部分コンクリートはつり・粉塵の養生対策をする。・居住者が通行できるよう計画する。・コンクリートはつりの際には、騒音が発生するため周

囲の住戸を含めた連絡をしておく。

4. 給水・給湯設備改修工事(専有部)のチェックポイント

【2】住戸内工事(1 日目)内装解体工事

【3】住戸内工事(1 日目)内装解体工事

※給排水改修工事(専有部)の一例を解説します。

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

【4】住戸内工事(1 日目)内装解体工事

■ユニットバスルーム解体・接続されている給水、給湯配管、ガス管が切り離され

ているか確認する。(排水トラップ内の水を抜く)・新規のユニットバスの寸法を確認しておく。・解体材の仮置きスペースを確保する。

■解体後、配管工事・新規ユニットバスの支持台の墨出しを行い、配管が当

たらないようにする。・隠れてしまう貫通部等が適切か確認する。・ガタつかないか支持を確認する。・さびない材料を使っているか確認する。

■バランス釜撤去後 給排気トップ部・上下階がある共用ダクトの場合は、位置を揃え水平垂

直を確認する。・穴埋用の仮固定をし、モルタルを充填する。(一度で

できない場合は、時間をあけ、数度に分けて行う)・防水止水方法が適切か確認する。

【5】住戸内工事(1 日目)内装解体工事

【6】住戸内工事(1 日目)内装解体工事

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

■洗面所 天井解体・養生が施されているか確認する。・天井面についている照明や火災報知器、換気口等に注

意して撤去する。(なるべく照明が確保できるよう計画する)

・火災報知器等は必要に応じて機能停止する。・撤去した天井躯体内に劣化やしみ等があるか調査記録

しておく。・換気設備が適切か確認する。

■既存床 床解体後・養生が施されているか確認する。・計画通りの解体範囲で施工可能か確認する。他の仕上

げ工事に影響しないか確認する。・撤去した床内に爆裂やしみ等があるか記録しておく。・床下地根太の復旧計画をしておく。

【7】住戸内工事(1 日目)内装解体工事

【8】住戸内工事(1 日目)内装解体工事

【9】住戸内工事(1 日目)内装解体工事

■トイレ 床部分開口、既存床、部分開口後・養生が施されているか確認する。・夜間の仮設復旧時に住民にケガをさせないように注意

する。

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

■物入れ内配管スペース解体 既存・解体範囲だけで復旧できるか確認する。・養生が施されているか確認する。・解体した管の汚水が滴下しないよう養生して搬出す

る。

■物入れ配管スペース他解体後・養生が施されているか確認する。・解体した管の汚水が滴下し汚さないよう養生して搬出

可能か確認する。・切断した管口は常に管栓をしておく。(臭い・上階か

らの便用の対策)

【11】住戸内工事(1 日目)内装解体工事

【12】住戸内工事(1 日目)内装解体工事

■壁 部分開口・養生が施されているか確認する。・解体範囲内で施工が可能か確認する。・下地を切った場合、壁が平滑に仕上がるか確認する。

【10】住戸内工事(1 日目)内装解体工事

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

【13】住戸内工事(2、3 日目)配管工事

■廊下 新規配管・配管の支持・位置・数量等が適切か確認する。・床下のスペースに配管が納まっているか確認する。・ポリエチレン管の防火区画貫通の際は区画貫通工法が

適切か確認する。

■浴室 解体後 配管施工・排水管を先行して施工し、適正勾配を確認する。・配管は、継手が少なくなるよう計画する。・支持金物の材質、取付位置が適切か確認する。 (ウォーターハンマー防止)・ガタつきがないか確認する。・配管の隠れてしまう貫通部は適切に処置されているか

確認し、清掃をおこなう。

■洗面所 新規配管・水栓取付近くの支持金物は、特に強固に取り付ける。 (ウォーターハンマー防止)・既存壁内に納まるか確認する。

【14】住戸内工事(2、3 日目)配管工事

【15】住戸内工事(2、3 日目)配管工事

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

■キッチン 配管工事・支持金物の位置間隔は適切か確認する。・水栓の取付において、ガタつき等の確認をする。・隠蔽される部分の寸法内に納まっているか確認する。

■便所 床面配管工事・配管の取り付け金物固定は適切か確認する。・配管工事完了後、水圧テストにより漏水の無いことを

確認する。

【16】住戸内工事(2、3 日目)配管工事

【17】住戸内工事(2、3 日目)配管工事

【18】住戸内工事(4 ~ 7 日目)内装復旧工事

■浴室設置工事 ユニットバスルーム組み立て・換気扇とダクトの接続が適正であることを確認する。・接続される水・湯・排水管が適正な位置にあるか確認

する。

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

■浴室設置工事、浴槽、給湯器復旧・床面が在来防水の場合は防水層に傷がつかないよう注

意する。・浴槽の水平が取れているか確認する。・風呂釜と浴槽の離隔は適正か確認する。・ガス栓が浴室にある場合、錆びて劣化していないか確

認する。・浴槽はガタつかないか確認する。

■廊下、モルタル打設、床復旧(フローリング) ・既存床とのレベル合わせを確認する。・床鳴り、不陸がないか下地を確認する。・フローリング施工の際、釘が配管等を打ち抜かないよ

う注意する。

【19】住戸内工事(4 ~ 7 日目)内装復旧工事

【20】住戸内工事(4 ~ 7 日目)内装復旧工事

【21】住戸内工事(4 ~ 7 日目)内装復旧工事

■洗面所 仕上げ復旧・色、仕様を確認する。・仕上げ材に傷や汚れがないか確認する。・合わせ目・切口端部等状態を確認する。

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

5. 水槽・ポンプ ・ 給水システム ・ 埋設管の改修

①基本事項 飲料用水槽は、上下面及び 4 方向面の 6 面点検ができなければなりません。現在、躯体を利用し

た地下式受水槽は衛生上の支障が出る恐れがあるので、タンク式のものに改修することが必要です。

また、阪神大震災以降、水槽等の設備の耐震基準も強化されており、安全性といった見地からの改修

立案があります。

 もう一方、ポンプなどの機能向上、省エネ(インバーター制御)、水質保全(タンク内貯留水の衛生面)

といった面から設備システム全体で改修を検討することもあります。

一般的なこれら設備機器の改修計画の考え方の事例を以下にあげます。

(a)受水槽

(ア)直結増圧方式へ変更する場合の受水槽の撤去とスペースの有効利用

(イ)使用水量の実績に見合った受水槽容量への変更

核家族化の進行、節水器具の普及などにより使用水量は減る傾向にあり、実績使用量から受水槽

容量を見直す。

(ウ)躯体利用受水槽の床上式(地上式)への変更

大規模修繕では、所轄官庁から既存不適格の改善が要求され、最初に指導される項目である。 ス

ペースがない場合は、地下への設置、駐車場上部に架台を設ける等の方法がある。

(b)高置水槽(直送ポンプ方式または直結増圧方式へ変更する場合)

(ア)高置水槽の撤去

(イ)ポンプ及び給水主管の防振・防音対策

(ウ)ポンプの長時間運転に対するポンプ容量の分割による動力エネルギーの低減化

深夜等の小流量運転時以外は、連続運転となるので、容量を分割してできるだけ動力の小さいポ

ンプとする。

②給水システムの変更 給水システムの変更改修工事としては、次のような例があります。

(a)高置水槽方式 → 加圧給水方式又は直結増圧方式

(b)加圧給水方式 → 直結増圧方式

 近年の動向としては、給水設備の改修時に直結増圧給水方式へのシステム変更を選択するケースが

多くなっています。ただ、この場合、受水槽以降の既設の給水方式によって異なりますが、管・継手

類や給水器具類の耐圧限界、給水端末への給水分配方向の転換などにより、引き込み管接続部から住

居内水栓までの全体更新となることが多くあります。

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事 直結増圧方式の場合、基本的には配水本管か

ら末端水栓まで配管を直結することになるの

で、配水本管水圧による供給可能高さや使用水

量、管理責任区分、配管施工業者、使用機器・

管材などに対し、水道事業体による基準や指導

があります。それらは各地域の水道事業体によ

り異なるため、計画時には所轄の水道事業体と

の打合せ、確認が必須事項です。

また、改修時の例として、直結範囲を引込み管

から高置水槽までとし、高置水槽以降末端水栓

までは既設の給水配管を継続使用するケースも

あります。(右図)

 なお、直結直圧方式は、適用物件として通常

で地上2階程度までの建築物が対象となってい

ますが、水道本管の圧力を高めて 3 ~ 5 階程

度まで供給する高圧給水も水道事業体で実施さ

れているので、低層のマンションでは検討可能

な場合もあります。

③土中埋設管の改修 公共の上水管からマンション建物に入るまでは、一般的に敷地内を埋設配管としています。給水配

管は、親メーターを介して建物内まで直結されます。

 金属管が使われていればもちろん腐食しますし、硬質塩化ビニル管などの錆びない配管でも、この

埋設管に関しては地盤沈下や地震等の外力で破損することがあります。

高置水槽を生かした直結増圧方式

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

【1】M.B内の施工(高性能ポリエチレン管)

【2】M.B内の施工(塩ビライニング鋼管 VB)

【3】M.B内の施工(一般配管用ステンレス鋼管)

■高性能ポリエチレン管・配管接着が適切か確認する。・防火区画貫通処理が適切か確認する。・ガタつきがないか確認する。・既設管との接続部分が適切か確認する。・メーターが水平についているか確認する。

■塩化ビニルライニング鋼管 VB(メーター設置器不使用の場合)・ネジ部の錆止めが行われているか確認する。・メーターがガタつかないか確認する。・メーターが水平についているか確認する。・伸縮管の長さは適切か確認する。・支持金物取り付け部は防食テープか絶縁付金物とす

る。

■一般配管用ステンレス鋼管・既設管との接続に防食処理が必要か確認する。・絶縁付支持金物の使用を確認する。・ガタつきが全体にないか確認する。・メーターが水平についているか確認する。

※ M.B:メーターボックス

6. 給水・給湯設備改修工事(共用部)のチェックポイント

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

【5】床下ピット内配管の施工(高性能ポリエチレン管)

【4】床下ピット内配管の施工(塩ビライニング鋼管)

■高性能ポリエチレン管・支持金物の間隔と材質を確認する。・振れ止めと固定方法を確認をする。

■塩化ビニルライニング鋼管 VD・支持金物の間隔と材質を確認する。・振れ止めと固定確認をする。

■一般配管用ステンレス鋼管・支持金物の間隔と材質を確認する。・異種金属の支持金物の場合は、絶縁付金物を使用する。

【6】床下ピット内配管の施工(一般配管用ステンレス鋼管)

給水管

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

【7】給水本管からの取出し工事

■不断水継手による取出し工事・埋設障害物の確認のため、必ず試掘する。・良質土砂による埋め戻しをする。・水道本管サイズの位置・深さを確認する。・水道局との打ち合わせを行う。・有資格者による作業であることを確認する。・不断水穿孔機により穴あけ施工する。・公道上は転圧が規定通りか確認する。

【8】土中埋設配管施工(耐震給水用鋳鉄管)

【9】土中埋設配管の施工(給水用鋳鉄管)

■鋳鉄管の施工・有資格者による作業をする。・管の埋設深さ(土被り)が適正か確認する。・耐圧試験による漏水がないことを確認する。・各水道事業者の仕様通りか確認する。 (コンクリート補強等)

■ポリスリーブの施工・指定材料(水道事業者名入り)のポリスリーブを巻く。・テープの取り付け間隔を確認する。・水が入らないようにきちんと口を締めてテープ止めす

る。・良質土または砂で埋め戻す。・転圧は規定通りか確認する。

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

【10】土中埋設配管の施工(高性能ポリエチレン管)

【11】土中埋設配管の施工(高性能ポリエチレン管)

【12】土中埋設配管の施工(高性能ポリエチレン管)

■融着接合・メーカーの講習を受けた、修了者による施工をする。・専用冶具の分まで余堀する。・全体施工完了後、水圧等の耐圧検査を行い漏水の有無

を確認する。

■高性能ポリエチレン管・掘削時の床付け状態を確認する。(砂基礎)・埋設深さ(土被り)の確認をする。・管まわりの埋め戻しは良質土にて行う。・転圧は規定どおりに行う。

■埋設シート明示・管まわりの埋め戻しは良質土にて行う。・明示シートの敷き込みを行う。・表層終了後に表示ピンや杭表示をする。

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

【13】増圧給水ポンプ設置工事

【14】増圧給水ポンプ設置工事

【15】増圧給水ポンプ設置工事

■コンクリート基礎工事・鉄筋の本数・口径・間隔等を確認する。・アンカーボルト施工方法(J アンカー、後打ち、ケミ

カル等)を検討しておく。

■機器本体設置工事・ポンプの転倒防止措置の要否を確認する。・機器との接続には、防振継手を使用する。・アンカーボルトを確実に締めたことを確認する。・機器、弁等の保護が必要かを確認して、柵、施錠対策

する。

■試運転調整・メーカーによる試運転を実施し記録を取る。・ポンプの騒音値を測定し、規定値内か確認する。・所定の流量・圧力・電流値・異音を確認する。

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

【16】高置水槽撤去工事

【17】水槽改修工事

【18】水槽改修工事

■既存高置水槽撤去・クレーン等の配置計画を行い、旋回範囲に問題がない

か確認する。・断水時間を検討し、タイムスケジュールを住民へ連絡

しておく。・作業エリアを区画し、立ち入り禁止措置をする。・既存の水槽架台にアンテナや避雷針がないか事前調査

を行う。・クレーンの工事は、荒天、突風、落雷等天候状況を常

に確認し、対応する。

■高置水槽搬出・作業エリアを区画し、立ち入り禁止措置をする。・荷降ろしスペースを確保しておく。・ガードマン等、第三者災害の危険を防止する。

■高置水槽ステージ撤去・撤去後の防水層との取り合いを確認する。

(直結増圧方式に伴う高置水槽の撤去工事例)

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Ⅱ . 給水・給湯設備改修工事

【19】水槽改修工事

【20】水槽改修工事

【21】水槽改修工事

■高置水槽交換・断水時間を確認し、タイムスケジュールを住民へ連絡

しておく。・吊り下げ重量や搬入場所の高さ等からクレーンの大き

さを確認する。

■高置水槽交換・吊り下げの際は、誘導員を配備し安全を確保する。・水槽は地上で組立て、クレーンで荷揚げする。

■高置水槽交換・水槽と配管は、可とう継手による絶縁処理を確認する。・アンカーボルトの径など耐震対策を確認する。

(高置水槽の交換工事例)

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合流式の下水道

分流式の下水道

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Ⅲ . 排水設備改修工事

1. 排水設備の基本事項

①排水配管の配管経路

 排水配管は、一般には汚水系統・雑排水系統・雨水系統に分けられますが、汚水系統と雑排水系統

を一緒に排水する合流式と別系統とする分流式があります。

 また、排水配管は躯体床上配管の場合と下階天井内配管の場合や専有部内の共用パイプスペース内

に配管されるケースなど、建築年代や室内レイアウトにより様々なケースがあります。排水管は給水

管より管経が太く、さらに排水勾配をとらなければならないため、あまり横引き配管を長くできない、

などの理由からです。

②排水配管と劣化 住戸内排水管に使われている管材は、配管用炭素鋼鋼管(SGP)、塩化ビニル管(VP)などが使

われてきました。配管用炭素鋼鋼管が使われているマンションでは、経年により、やはり配管の錆、

腐食による漏水事故が発生するケースが出ています。

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 塩化ビニル管が使われているマンションで

も、区画貫通部(コンクリート躯体貫通部)に

ついては、管径や階数により前後 1m を不燃材

料(配管用炭素鋼鋼管等)を使用しなければな

らない場合があり、その部分で錆、腐食が発生

し漏水に至るケースも見られます。マンション

に過去に使用されてきた排水管材料の目安とし

て年代別変遷を図に示します。

④排水管材の種類

■亜鉛めっき鋼管(SGP)一般的には白ガス管と呼ばれ、実際は黒鋼管(SGPB)と白鋼管(SGPW)があり、白鋼管は黒鋼管に亜鉛めっきを施したもので、古くから様々な流体に使用され、排水に関しては、雑排水に使用されました。継手はネジ込み式や溶接で接続しました。

■排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管(DV-LP)黒ガス管内部に塩化ビニルライニングした管で、外面は一次錆び止めを施した管です。耐食性、耐火性、外部からの衝撃に強く、鋼管に比べ 30%以上も軽く施工性にも富んでいます。継手はメカニカル継手(MD)を使用します。

ー 39 ー

Ⅲ . 排水設備改修工事

区画貫通部亜鉛めっき鋼管の腐食劣化例

③排水配管の変遷

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■排水用タールエポキシライニング鋼管(SGP-TA)黒ガス管の内部にエポキシ塗料を塗装したもので、一般的な排水管に使用されています。継手はネジが切れますのでコーディングドレネジやメカニカル継手が使用可能となります。

■排水用鋳鉄管(CIP)排水に使われる鋳鉄管で古くより住宅の汚水管に使用されています。耐用年数も他の管に比べて長く、錆びづらく、防音性に富み、区画の貫通も問題ありません。継手は現在はメカニカル式となり、ゴムパッキン使用で可とう性も高くなっています。

■硬質ポリ塩化ビニル管(VP)耐薬品性に優れ、摩擦抵抗も少なく配管加工も容易、かつ軽量で施工性も良くなっています。しかし、熱に弱い点や防火区画の貫通部の処理の短所もあります。継手は差し込み接着工法で、近年最も利用されている管です。

■排水用耐火被覆二層管(FDP)上記 VP 管にセメントモルタルを被覆した管で、防火区画の貫通や防露不要や遮音性に優れています。継手は同様のセメントモルタル被覆継手です。

■排水用消音二層管管自体の内側と外側の材質を替え、流水音を低減させる構造の管です。特徴としては、騒音の吸収及び遮断、耐寒性、施工性に優れ継手としては管と同様な素材で作られ、差し込み接着工法で接続します。

ー 40 ー

Ⅲ . 排水設備改修工事

■耐火被覆消音二層管上記の管にセメントモルタルを被覆した管で更に消音性能に優れ、防火区画の貫通に対応しています。継手は専用の差し込み接着工法で接続します。

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2. 排水管の更新工事

 排水管の場合も給水配管と同様に更新工事、更生工

事、両者の複合工事の選択肢があります。排水管の改

修では、鋼管(白ガス管)が使われている場合の改修

が最も多く、次いで塩化ビニル管の破損(昔の排水管

洗浄方法で、ワイヤーによる付着物の除去をした際に、

曲がり部分など一定の箇所が削れて穴があいてしまう

ものなど)によるものなどがあります。

 更新工事では、最近は耐火二層管など耐用年数の長

いものが出ているので、そうしたものへ更新することになりますが、排水管の更新工事での一番の問

題点は専有部内の工事が必要となるケースがほとんどであるということです。また、在来工法の浴室

の場合などは下階の天井裏に配管を通していることもあるため、上階の浴室排水管を補修、改修する

際には、下階に影響を及ぼすことになります。

ー 41 ー

Ⅲ . 排水設備改修工事

工事のイメージ図

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1 日目 2 日目 3 日目 4 日目 5 日目

解体工事 配管工事 配管工事 内装工事 内装工事

養生及びはつり箇所内装解体を行います

排水立管を更新します

横枝排水管を更新します

内装解体部分の下地復旧を行います

内装材の仕上げ及び器具付けを行います

※ 1排水禁止

9:00 ~ 17:00排水禁止

9:00 ~ 17:00※ 1 ※ 1

※ 1 洗面台・洗濯機は工事期間中の 9:00 ~ 17:00 は使用不可となります。※ 2 2、3 日目は 9:00 ~ 17:00 が排水禁止となります。工事期間中作業後から翌朝作業開始までは器具を仮復旧しますので通常使用が可能です。

系統 階高 1 日目 2 日目 3 日目 4 日目 5 日目 6 日目

1 系統目

5 階 解体工事 配管工事 配管工事 内装工事 内装工事

4 階 解体工事 配管工事 配管工事 内装工事 内装工事

3 階 解体工事 配管工事 配管工事 内装工事 内装工事

2 階 解体工事 配管工事 配管工事 内装工事 内装工事

1 階 解体工事 配管工事 配管工事 内装工事 内装工事

2 系統目

5 階 解体工事 配管工事 配管工事 内装工事 内装工事

4 階 解体工事 配管工事 配管工事 内装工事 内装工事

3 階 解体工事 配管工事 配管工事 内装工事 内装工事

2 階 解体工事 配管工事 配管工事 内装工事 内装工事

1 階 解体工事 配管工事 配管工事 内装工事 内装工事

ー 42 ー

Ⅲ . 排水設備改修工事

1 階~ 5 階同時施工例

排水改修工事の専有部工程例

排水設備工事の概要

改修前 改修後

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Ⅲ . 排水設備改修工事

【1】事前入室調査

・事前室内全戸調査表作成・部屋別(タイプ別)に作成・緊急連絡先を記入する・特殊事情の有無を確認する

部屋別の内装仕様(リフォームの有無を含めて)を把握する。

【2】住戸内調査表

3. 排水設備改修工事(専有部)のチェックポイント

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Ⅲ . 排水設備改修工事

【3】流し立管工事 1 日目(解体工事)

■既存・立ち入り調査を行い設計図と照合し、問題点を抽出し

ておく。・解体しない部分の現状を把握しておく。

■新規配管・搬入方法、動線を確認する。・支持金物の固定方法、間隔を確認する。・保温材の仕様を確認する。

■壁解体・養生が完全であるか確認する。・内部に漏水がないか確認する。・下地の状態に問題がないか確認する。

【5】流し立管工事 2 日目(配管工事)

【4】流し立管工事 1 日目(解体工事)

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Ⅲ . 排水設備改修工事

【6】流し立管工事 2、3 日目(配管工事)

■保温・下地補強・保温材施工状況を確認する。・下地補強方法を確認する。

■ボード復旧・仕上げ下地として平滑になっているか、施工状況を確

認する。

■クロス完了・クロス端部、合わせ目がよいか確認する。・仕上げ完了後、傷、汚れがないか確認する。

【7】流し立管工事 4、5 日目(内装工事)

【8】流し立管工事 4、5 日目(内装工事)

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Ⅲ . 排水設備改修工事

■既存・立ち入り調査時に材質・色を確認し、解体の範囲等、

工事内容を住民へ説明しておく。・解体しない部分の状況を把握しておく。

■床解体・既存配管・撤去配管内の汚水の汚れが滴下しないよう養生し、撤

去する。・排水管の勾配が適切か確認し、床下内部に配管が納ま

るかを確認する。

■新規配管・防火区画の貫通処理が適切か確認する。・配管の接続処理は適切か確認する。・支持金物の位置・間隔が適切か確認する。

【9】住戸内工事 1 日目(解体工事)

【10】住戸内工事 1 日目(解体工事)

【11】住戸内工事 2、3 日目(配管工事)

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Ⅲ . 排水設備改修工事

【12】住戸内工事 4、5 日目(内装工事)

■下地補強・根太の間隔・大きさ・支持が適切か確認する。・平滑に仕上がるか確認する。

■下地復旧・床鳴りの有無を確認する。

■床仕上 床クッションフロアシート完了・取り合い部や端部が問題ないか確認する。

【13】住戸内工事 4、5 日目(内装工事)

【14】住戸内工事 4、5 日目(内装工事)

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Ⅲ . 排水設備改修工事

■物入れ内 配管工事・水平区画のスラブ貫通する際の防火区画貫通処理は適

切か確認する。・排水管に塩化ビニルを使用する際には伸縮対策がなさ

れているか確認する。・耐火二層管の継ぎ手との被覆間隔が規定を越えていな

いか確認する。

【16】住戸内工事 4、5 日目(内装工事)

■トイレ床 復旧・仕上げ材に傷がないか確認する。・ガタつきがないか確認する。・便器の通水試験を行い、施工前の状況と比較確認する。

■物入内配管スペース 復旧・仕上げ材に傷がないか確認する。・上下階からの流水音の程度を確認する。

【15】住戸内工事 4、5 日目(内装工事)

【17】住戸内工事 4、5 日目(内装工事)

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Ⅲ . 排水設備改修工事

既存 配管まわりはつり

■新規配管・防火区画の貫通処理が適切か確認する。・支持金物の位置・取付方法は適切か確認する。・配管継手の指し込み管理標線が適切に施工されている

か確認する。

■保温完了・重ね目の状態や貫通箇所の状況、つぶれ等がないかを

確認する。

【18】M.B 排水立管工事 1 日目(解体工事)

【19】M.B 排水立管工事 2 日目(配管工事)

【20】M.B 排水立管工事 2 日目(配管工事)

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Ⅲ . 排水設備改修工事

4. 排水通気の改修   

 排水管は、排水の流れをスムーズに行うために通気が必要です。この通気性能が不足すればトラッ

プ(封水により臭気、虫などの侵入を防ぐ役割を持つ)の破封につながることになります。通気管自体は、

水が流れるわけではないので通気管自体を改修するケースは少ないですが、排水システムとして排水

管と通気管を一体化した特殊排水継手システムなどへ改修し、通気性能を向上させる例もあります。

 特殊排水継手システムは、継手内で排水と通気が上手に分離交換できるように工夫されており、通

気管が要らなくなるため、新設配管のスペースとして活用することもできますが、横引き管の経路を

変更するためには内装床の改修も必要となります。

マンションで一般的に使われる排水トラップ

5. 土中埋設管、排水桝の改修

 公共の上水・下水管からマンション建物に入るまでは、一般的に敷地内を埋設配管としています。

給水配管は、親メーターを介して建物内まで直結されますが、排水管は桝を介し、下水道の整備状況

により浄化槽も介す場合があります。

 金属管が使われていればもちろん腐食しますし、硬質塩化ビニル管などの錆びない配管でも、この

埋設管に関しては地盤沈下や地震等の外力で破損することがあります。

 土中埋設配管などの劣化は、この他にも電車の線路からの迷走電流により腐食した事例などもあり

ますので、根本的な原因を究明した改修立案が必要です。

排水桝の損傷による沈下例排水配管の破損による沈下例

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Ⅲ . 排水設備改修工事

【1】屋外排水桝等の破損

【2】桝の破損

・桝の破損原因と補修方法を確認する。・桝構造体及び底板の排水溝(インバート)の、破損程

度・周辺桝との排水管勾配状況を確認する。・屋外配管全体の再点検も必要。

・地盤沈下による桝底板の破損状況を確認する。 (桝の破損状況の正確な把握が重要)

【3】桝および配管部分の掘削

・舗装部分の開口範囲をカッター入れする。・工事方法は周辺状況・破損状況により選択する。他配

管類(ガス配管・給水配管・電気配管)が周囲に埋設されていないか確認する。

6. 排水設備改修工事(共用部)のチェックポイント

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Ⅲ . 排水設備改修工事

【4】改修する桝周辺の掘削

【5】桝・接続配管修理

・舗装アスファルト開口完了。・廃材は直ちに待機車両等に搭載する。・発生残土等は適時に搬出を実施して通行障害・作業障

害にならないよう配慮する。

・接続配管の新規配管状況を確認する。・掘削箇所の埋め戻し、排水の流れ状況を確認する。

【6】桝修理

・桝内部の修理完了状況を確認する。 通水試験後、舗装等復旧となる。・マンホール設置状況及び舗装復旧状況を確認する。

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Ⅳ . 給排水管更生工事

1. ライニング更生工事

 更生工事とは、劣化程度が写真のような状況にまで至らない状況で鋼管及びライニング鋼管の内面

のさびを除去して、樹脂等によりライニング処理することによって既設管の継続使用、延命を図るも

のです。

 専有部で配管を更新する場合は、キッチン、浴室、洗面台、便所、ベランダへの散水栓などへ配管

されるため、壁、床、設備機器の撤去、復旧が必要となります。この更新工事では既存の配管の内面

に樹脂コーティングを行うため、こうした撤去、復旧工事が不要(一部劣化部補修のため撤去、復旧

が必要な場合もあります。)となります。しかし、さび、腐食等の劣化が進みすぎていると、さびを落

とした段階であちこちに穴が空くことになるおそれがある場合には、適用できないこともあります。

(塩化ビニルライニング鋼管の劣化:このような状況だと更生工事が適用できない。)

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Ⅳ . 給排水管更生工事

2. 給水管更生工法の検討

 給排水管更生では、( 財 ) 建築保全センター、( 財 ) 日本建築センターで行っている「保全技術審査証明」

を取得しているかどうかを一つの目安とすることができます。

 基本的には、いずれの工法も管内の錆びをサンドブラストで研磨し、清掃、乾燥させ、エポキシ樹

脂を塗布する工法ですが、工法により管径の限度などもありますので、適用可否を確認しておく必要

があります。作業は、通常 1 住戸 1 ~ 3 日で完了します。

 また、各工法にはそれぞれマニュアルがあり、検査方法等が定められていますので、合否判定基準

数値等の詳細については、そちらを確認して下さい。

審査証明番号 技術の名称 審査証明取得者

第 1002 号 NPL Ⅲ工法 京浜管鉄工業(株)

第 0006-B 号 P・C・G VacL 工法 (株)P・C・G テクニカ

第 0103-A-1 号 New Tube 工法 日本設備工業(株)

第 0702-2 号 モバイル リボン工法(M・R 工法)いずみテクノス(株)

第 1001 号 NPB Ⅱ工法 京浜管鉄工業(株)

第 0801 号 New-Tube- Ⅱ(NT- Ⅱ)工法 日本設備工業(株)

第 0902 号 New-Tube- Ⅲ(NT- Ⅲ)工法 日本設備工業(株)

協会会員社における給水管更生技術の保全技術審査証明工法

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Ⅳ . 給排水管更生工事

①給水管更生工事システム図

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Ⅳ . 給排水管更生工事

【1】屋外使用機材

【2】屋内使用機材 ・ ホース

【3】仮設給水管工事

・機器類を置くスペースがあるかを確認する。・機器類はフェンス等で囲っているか確認する。

(1) コンプレッサー  (長さ 3,650㎜×幅 1,685㎜×高さ 2,070㎜)(2) 集塵機(3) その他機器

・下記機材類の置くスペース(安全通路の確保 ) を確認する。

(1) 研磨機

(2) エアホース  

(3) エアヘッダー

■仮設給水管作業・配管の口径は給水量に見合う口径か確認する。・配管固定は十分か確認する。・戸別の量水器を通して給水されているか確認する。・量水器の方向は正しいか確認する。・接続箇所より漏水があるか確認する。

仮設給水管

3. 給水管更生工事のチェックポイント

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Ⅳ . 給排水管更生工事

【4】共用管更生工事

【5】共用管更生工事

【6】共用管更生工事

■既存の水を抜き、配管内を乾燥する作業・コンプレッサーの台数が適切か確認する。・配管内が充分乾燥されているか確認する。・残留水は適切に処理しているか確認する。

■共用給水管内 研磨工事(1) 研磨機に研磨剤を投入して、配管内に挿入し、給

水管内の錆を除去する作業 ・各配管とホースが正しく接続されているか確認する。(2) 研磨後、配管内に穴が開いていないかを確認する

空気圧(リーク)テスト作業・空気圧 0.3MPa で 10 分間テストを行い、圧力計が降

下しないか確認する。

■共用給水管内 塗装工事・塗料の有効期限を確認する。・塗料の混合比率が正しいかを確認する。・対象配管の距離に対して塗料量が正しいか確認する。・塗料が回収口に到達しているか確認する。

※塗料色は、各工法により異なる。

管内の残留水方向

研磨前状況

研磨後状況

ライニング後状況

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Ⅳ . 給排水管更生工事

【7】専有部給水管更生工事

【8】専有部給水管更生工事

【9】専有部給水管更生工事

■専有部給水管内 準備工事・既存配管材質の確認をする。・竣工当初から給水管のルート等が変更していないか確

認する。・室内養生がきちんと引かれているか確認する。・室内の居住者通路が確保されているか確認する。

■専有部給水管内 水抜き・研磨工事(1) 既存の水を抜き、配管内を乾燥する作業・コンプレッサーの台数が適切か確認する。・配管内が充分乾燥されているか確認する。 ・残留水は適切に処理しているか確認する。(2) 研磨機に研磨剤を投入して、給水管内の錆を除去

する作業・各配管とホースの接続がされているか確認する。(3) 研磨後、配管内に穴が開いていないかを確認する

空気圧(リーク)テスト作業・空気圧 0.3MPa で 10 分間テストを行い、圧力計が降

下しないか確認する。

■専有部給水管内 塗装工事・塗料の有効期限を確認する。・塗料の混合比率が正しいかを確認する。・対象配管の長さに対して塗料量が正しいか確認する。・塗料が回収口に到達しているか確認する。

※塗料色は、各工法により異なる。

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Ⅳ . 給排水管更生工事

【10】給水管復旧工事

【11】給水管復旧工事

【12】通水後の試験

■塗装状況の確認作業・各給水管内の塗料硬化 (H 硬度以上 ) に到達している

ことを確認する。・予め決めた場所でファイバースコープを入れ、塗りム

ラ、ダレ等が無いことを確認する。・ピンホールテスターを使用して塗膜にピンホールが無

いか確認する。・膜厚計を使用し、塗膜厚さ 0.3㎜以上あるか、テスト

ピースで確認する。 

■工事箇所の復旧・通水作業(1) 配管内に漏水が無い事の確認のため、水圧テストを

行う。(2) 取外し箇所及び量水器まわり給水管復旧・更新工

事作業・水圧 0.5MPa で 10 分間テストを行い、圧力計が降下

しないか確認する。・量水器まわり更新箇所、取外し箇所の復旧部より漏水

が無いことを確認する。・量水器が逆付でないか確認する。・量水器まわりの配管更新時、異種管部絶縁材料を使用

しているか確認する。

■通水後の試験作業・簡易検査(残留塩素、色度、濁度、味、臭気)を行い、

水質に問題無いか確認する。・残留塩素は、0.1㎎ /ℓ以上か確認する。・水質検査(11 項目)を専門機関に提出して、水質に

問題が無いか確認する。

ファイバー写真H 強度写真

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Ⅳ . 給排水管更生工事

4. 排水管更生工法の検討

 排水管更生についても、「保全技術審査証明」を取得しているかどうかが目安となります。排水管の

更生工法で協会会員社が保全技術審査証明を取得している工法は下記のようになっています。

審査証明番号 技術の名称 審査証明取得者

第 0147-2 号 Re-FLOW 工法 日本設備工業(株)

BCJ- 審査証明 -58 号 DREAM 工法 東京ガス(株)他

第 0402-A 号P・C・G マルチライナー工法

(FRP ライニング)(株)P・C・G テクニカ

第 0403-A 号P・C・G マルチライナー工法

(パラシュートライニング)(株)P・C・G テクニカ

協会会員社における排水管更生技術の保全技術審査証明工法

 排水管の更生工事も作業の内容は給水管と同様となりますが、排水の場合、バルブ等で区画ごとに

分けることができないため、縦系統の排水はすべて断水して作業を行います。

 作業手順は、工法により異なる場合がありますが、ここでは 2 つの工法例を紹介しておきます。

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Ⅳ . 給排水管更生工事

①排水管更生工事システム図工法例(Re-FLOW 工法)

・工事は 1 日で終了

・主管は噴射式にて塗膜圧 1.0㎜以上

・保険会社による 10 年瑕疵保証

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Ⅳ . 給排水管更生工事

工法例(DREAM 工法)

・工事は 1 日で終了

・更新工事に比べ低コスト

・優れた塗膜耐久性を発揮

・最新技術で安全・簡単施工

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Ⅳ . 給排水管更生工事

【1】施工可否判断の実施

【2】住民説明会の開催

【3】工事用機器、資材置場

・抜管によるサンプル管で、更生工事の施工可否を判定する。

・排水管はさび、付着物により、漏水に至らないケースがある。

・さびを落とした段階であちこちに穴が空く様では、更生工事は適用できず更新工事となりえる。よって更生工事業者による施工可否診断は必要である。

・全体工程と各室の入室日を確認する。・排水制限の日時を確認する。・入居者の安全を目的とした安全管理体制と防犯体制を

確認する。・工事の掲示方法、各戸との連絡、返信方法を確認する。・排水更生工事の場合、対象の共用立管のうち 1 軒で

も入室出来ない場合、工事が出来ない。管理組合員全員の協力が必要である。  

・工事用機器、機材置場を確認する。・防護柵など住民に対する安全体制を確認する。・騒音対策を確認する。・粉塵対策を確認する。・共用部分に設置する機器、機材、工事用車両等のスペー

ス、置場を打合せの上決定し確認する事が必要である。

例:工事用機材配置図

5. 排水管更生工事のチェックポイント

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Ⅳ . 給排水管更生工事

【4】排水管高圧洗浄

【5】仮設養生

【6】機材ホース配置

■排水管洗浄方法の決定・排水系統を確認する。・配管内部状況を確認して洗浄方法を決定する。(洗浄

圧力、洗浄自具等 )・洗浄後を確認する。

・機器機材置場の養生を確認する。・エントランス、エレベーター、共用廊下の養生を確認

する。・専有部室内の養生を確認する。・機器機材置場は防護柵等、住民に対する安全設備を確

認する。

■高圧空気用ホースの配置・安全通路の確保を確認する。・防犯対策を確認する。

排水管更生工事は玄関扉開放での作業が主体となる。チョッキ、腕章の着用等、入居者がひと目で工事関係者と判別出来る工事体制が必要である。

配管内の油脂分、付着物は研磨材、機械的な研磨だけでは除去しづらく、直前に高圧洗浄が必要である。

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Ⅳ . 給排水管更生工事

【7】配管の切断、冶具接続

【8】管内の研磨、検査

【9】研磨後の漏洩検査

■最上階、最下階の本管切断及び高圧ホースの接続・同一継系統の排水使用禁止を再確認する。・最上階、最下階の壁の解体は、復旧方法を居住者に説

明しておく。・エアーホース内には最大 0.7MPa の圧力がかかるた

め、トランシーバー等で連絡を密にし、最善の注意を払い作業する。

・研磨方法と研磨基準値のチェック方法、記録方法を確認する。

・研磨後、配管内を内視鏡、CCD カメラ等により検査し、錆びこぶ、付着物がない事を確認する。

・研磨が不十分な場合、どんなに高性能な塗料でも剥離の可能性がある。

・研磨後の漏洩をデジタル圧力計等により確認する。 気密試験 0.3MPa(0.3㎏ /㎠× 1 分間)・更生工事では、どの工法の塗料でも配管の穴あきは埋

まらない。排水管は通水後の漏水発見が 1 週間、1 ヵ月後のケースもありえる。研磨後の漏洩防止試験が必要である。

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Ⅳ . 給排水管更生工事

【10】ライニング工事

【11】ライニング工事(例:気流式塗布)

【12】ライニング後の塗膜検査

・塗布方法のチェック体制と記録方法を確認する。・塗料の品質 ( 有効期限)を確認する。・塗料の混合比率が正しいかを確認する。・ライニング用塗料は 2 液性である。配合比のムラ、混

合不足は塗膜品質に重大な影響が出る。

・2 液性の混合塗料を排水管内に投入し、高圧空気で圧延して塗布する方法である。

・塗布方法のチェック体制と記録方法を確認する。

・ライニング後、内視鏡・CCD カメラによる塗膜検査をする。

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Ⅳ . 給排水管更生工事

【13】通水時の検査

【14】テストピースによる塗膜品質検査

【15】引渡し書類 (竣工書類)

・排水更生工事は毎日通水して、工事完了を繰り返す。・通水前の塗料硬化度(H 硬度以上)を確認する。・通水後の漏水確認と工事完了確認をする。・隠蔽部分は研磨後に気密試験を実施する。流し台等、

接続部分の漏水確認はチェックシート等で各居住者立会いのもと、完了確認が必要である。

・塗膜厚を測定する。・ピンホール試験をする。・硬化度試験をする。・塗布面の外観を確認する。

・工事保証書・塗膜品質試験表 ( 膜厚、ピンホール・硬度 )・施工図 ( 工事範囲図、アイソメ図、塗料計算書)・実施工程表・施工工事写真・自主検査表・テストピース ( 研磨前、研磨後、更生後の SET を契約数)

通常、塗膜厚測定とピンホール試験は外部での検査となり、竣工図書での確認となる。

テストピース(研磨前、研磨後、更生後)

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Ⅴ . 電気設備改修工事

1. 幹線・照明設備改修工事

 幹線設備とは、電力会社から電力(高圧・低圧)の供給を受けた配電盤から住宅内の各分電盤まで

の設備となります。

①幹線・照明設備の基本事項 マンションの受電方式には

a. 自家用受変電設備(キュービクル)方式

b. 低圧引込(電力柱上の変圧器より受電)方式

c. 借室(電力会社がマンションの電気室を借りて変圧器等を設置して受電)方式

の 3 通りがあり、大半を占める借室方式の概略系統図を下記に示します。

a. 自家用受変電設備例 b. 低圧架空引き込み例 c. 借室変電室例

基幹系統概略図(借室方式の場合)

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Ⅴ . 電気設備改修工事マンションの電気容量は、その時代により次表のような変遷があります。

幹線設備の部位ごとの劣化・不具合

おおよその年代 標準電気容量

昭和 30 年代半ば~ 50 年頃まで 15 ~ 20A

昭和 50 年~ 60 年頃 60A

昭和 60 年頃~近年 40 ~ 60A

各戸で電気容量をアップしたい場合、電力会社に申し込めばアップすることは可能ですが、全体の

幹線容量に限界があり、一部の住戸しかアップできないなどというトラブルも発生しています。各

戸の契約電気容量は、幹線の容量を把握しておき、公平さを保つための一定のルール作りが必要と

いえます。

 最近では、管理組合全体で電気容量をアップする幹線引替え工事も行われるようになってきました。

ただ、既存の電気配管に新しい配線を通すことが難しい場合が多く、共用部分に露出配管をせざるを

得ない場合や、最初に述べた変圧器室の設置や集合住宅用変圧器などの設置スペースを新たに確保す

る必要(電力会社との打合せによる。)が出てくることも検討課題の一つとして考慮しておく必要が

あります。

②幹線・照明設備の基本事項 この他経年劣化による改修の発意として、次のような劣化・不具合の顕在化によるものがあります。

部  位 劣化・不具合 内容

配電盤

・異常音,異臭がある。・絶縁ケースが異常に高温になっている。・主回路端子部が過熱変色している。・端子締め付け部の絶縁物が変色している。・端子ネジ、電線締付ネジ等に緩みがある。・ヒューズ式を使用している。・遮断器が作動し、停電になった。

幹線ケーブル

・過電圧・過電流・内部への浸水にがある。・衝撃・圧縮・屈曲・捻回・引張等、機械的負担がある。・紫外線・塩分付着により、ケーブル外装の被覆が劣化している。・鼠・白蟻による食害がある。・かび等が発生している。・ケーブル接続部の施工不良がある。・絶縁が不良である。

分電盤

・ケースが異常に高温になっている。・異常音、異臭がある。・主回路端子部が過熱変色している。・端子締め付け部の絶縁物が変色している。・端子ネジ、電線締付ネジ等に緩みがある。・漏電遮断器が設置されていない。・遮断器が頻繁に作動し、停電になる。

チェックポイント

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Ⅴ . 電気設備改修工事照明器具の劣化・不具合

部  位 劣化・不具合 内容

屋内共用照明器具

・焦げたような臭いがする。・器具に発煙・油漏れなどの形跡がある。・本体に変色・ひび割れ・さびが出ている。・ランプの寿命が他の器具より極端に早い。・点灯時に漏電遮断器が動作することがある。・ここ2・3年、故障による交換台数が増えている。・チラツキが止まらない。・照度が低く全体的に暗い。

屋外共用照明器具

・取付部に変形・ガタツキ・ゆるみ等がある。・照明器具内部に浸水の形跡がある。・ソケットが変色・破損している。・点灯時に漏電遮断器が動作することがある。・ランプを交換しても他の器具より極端に暗いものがある。・短時間で点灯不能になる。・安定器に変色・変形・破損がみられる。・ポール地際部にさびがみられる。

 幹線改修工事・照明設備改修工事の管理のチェックポイントを以下に解説します。

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Ⅴ . 電気設備改修工事

【1】低圧配電盤取替

【2】共用分電盤取替

【3】低圧引込

・電力会社との協議(工事工程等)を事前に行う。・新設配電盤、ケーブル等は事前に搬入、配線等を済ま

せ停電時には結線作業のみとする。・機器、材料搬入の際には、安全対策を十分行い特に住

民には気を配る。  

・改修前には絶縁抵抗測定を実施する。・負荷容量に見合ったブレーカの選定になっているか確

認する。・接地工事(ED、ED(ELB))はとられているか確認する。・ケーブルサイズ、色別は正しいか確認する。・増し締めを確認する。

・引き込み口キャップ部より雨水等の侵入が無いか確認する。

・配管サイズ(占積率)はよいか確認する。・ボンディングは施されているか確認する。・管のネジ切り部には錆止め塗装が施されているか確認

する。

2. 幹線・照明設備改修工事のチェックポイント

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Ⅴ . 電気設備改修工事

【4】引込開閉器盤設置

【5】幹線ケーブル入線

【6】床下配線

・設置場所(屋内、屋外)の確認をする(防雨、防湿、耐塩、結露等の対策)。

・基礎工事は耐震強度を考慮しているか確認する。・据付時に水平・垂直レベルを確認する。・ケーブルサイズ、色別は正しいか確認する。・接地工事 (ED)はとられているか確認する。・増し締めを確認する。・絶縁測定、電圧測定を実施する。

・ケーブルドラムの転がし方向はドラムの記してある矢印方向とする。

・配管内に布設する場合には通線剤を用いて通線する。・ケーブル端は防水処理してあるか確認する。・布設ルートの屈曲部ではケーブル側圧を許容側圧以下

とする。

・他設備に干渉しないか確認する。・既設配管を使用する場合には、抜き替えができるか確

認する。・ケーブルラックを使用する場合には、ボンディング、

結束、接地工事が施されているか確認する。

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Ⅴ . 電気設備改修工事

【7】ラック配線

・ラックサイズの選定は正しいか確認する。・水平レベルがとれているか確認する。・支持材の間隔は規定内か確認する。・ラック支持材の積載荷重による強度計算がなされてい

るか確認する。・伸縮自在継ぎ金具の使用は正しいか確認する。・エキスパンション部分等にはボンディングアースがと

られているか確認する。・接地工事(ED)がとられているか確認する。

【8】配管配線

【9】ピット配線

・外部配管作業を行う場合、仮設足場、脚立、梯子等を使用の際には安全対策を施してあるか確認する。・配管サイズは良いか確認する(占積率)。・ボンディングは施されているか確認する。・管のネジ切り部には錆止め塗装が施されているか確認

する。

・ピット内に配線する場合には整然と布設する。・ケーブルを曲げる場合は、被服が損傷しないように行

い、その曲げ半径は規定値以上とする。・ケーブルの要所に回路の種別、行き先等を表示した表

示札を設ける。

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Ⅴ . 電気設備改修工事

【10】住戸分電盤取替

・改修前に絶縁抵抗測定を実施する。

【11】住戸分電盤取替

・新設盤の取付スペースはあるか確認する。・負荷容量に見合ったブレーカの選定になっているか確

認する。・接地工事(ED、ED(ELB))はとられているか確認する。・ケーブルサイズ、色別は正しいか確認する。・増し締めを確認する。

・改修後に絶縁抵抗測定を実施する。

【12】住戸分電盤取替

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Ⅴ . 電気設備改修工事

【13】蛍光灯改修前

【14】蛍光灯改修中

【14】蛍光灯改修後

・既設・新設の器具サイズを確認をする。

・共用分電盤内のブレーカを切にする。・無電圧測定を確認する。・撤去後の天井面清掃をする。タッチアップ塗装が必要

な場合があるので、周囲の色と調和するように塗装する。

・絶縁測定を確認する。・共用分電盤内のブレーカを入にする。・電圧測定を確認する。・スィッチ入にする。・点灯を目視確認する。

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Ⅴ . 電気設備改修工事

・設置位置の確認をする。・通行障害にならないよう注意する。

・配線の保護配管を施設する。・接地線にて器具アースを施す。

・絶縁測定を確認する。・共用分電盤内のブレーカを入にする。・電圧測定を確認する。・点灯を目視確認する。

【16】庭園灯増設工事 施工前

【17】庭園灯増設工事 施工中

【18】庭園灯増設工事 施工後

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Ⅴ . 電気設備改修工事

・錆の進行防止のため、コンクリートで根巻きをする。

・コンクリート根巻きは、地上より +100㎜以上の仕上げとする。

・モルタルで丁寧に角が無いよう左官仕上げをする。

【19】ポール根巻き工事 施工前

【20】ポール根巻き工事 施工中

【21】ポール根巻き工事 施工後

・基礎上部まで掘削し、ポールと土部が直接触れないようにコンクリートで根巻きする。

・ボイドをポールの中心に設置する。

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Ⅴ . 電気設備改修工事

3. 電話・インターネット設備改修工事

①電話・インターネット設備の基本事項 現在、高速回線の筆頭である光ファイバーの普及は、都市部においてはほぼ全国的に整備されてき

ており、新築マンションでは各住戸まで FTTH 方式(棟内光配線方式)としているものもあります。

 しかし、既存マンションでは、各戸まで光ファイバーを引くことが大変なため、MDF(電話会社

からの引き込みを整理し各戸へ分配する主配線盤)まで光ファイバーを引き込み、棟内配線は既設の

電話回線を利用する xDSL 方式とすることが多くなっています。

FTTH 方式 xDSL 方式

②電話・インターネット設備の劣化・不具合

部  位 劣化・不具合 内容

電話・インターネット設備

・MDF盤・IDF 盤とも施錠がされていない。・MDF盤・IDF 盤が腐食し錆びている。・MDF盤~ IDF 盤までの配管が腐食している。・MDF盤・IDF 盤内の配線が整線されておらず、行き先表示がない。・光ファイバー導入にあたり装置設置スペースがない。・電話会社柱までの予備配管がない。

 

 電話・インターネット設備には、法的な点検義務は課せられていません。改修の発意の多くは、シ

ステム変更・新設になると思われます。

 この施工に関しては、有資格者が行うことになっています。

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Ⅴ . 電気設備改修工事

【1】MDF 取付

【2】IDF 取付

【3】MDF・IDF 取付

・有資格者が施工することを確認する。・予備配管には、パテ等を詰めておく。・行き先表示をする。・将来を考えスペースは余裕をみる。

・改修前には絶縁抵抗測定を実施する。・負荷容量に見合ったブレーカの選定になっているか確

認する。・接地工事(ED、ED(ELB))はとられているか確認する。・ケーブルサイズ、色別は正しいか確認する。・増し締めを確認する。

・エントランスキャップ部より雨水等の侵入が無いか確認する。

・配管サイズは良いか確認する。(占積率)・ボンディングは施されているか確認する。・管のネジ切り部には錆止め塗装が施されているか確認

する。

4. 電話・インターネット設備改修工事のチェックポイント

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Ⅴ . 電気設備改修工事

5. テレビ共同受信設備改修工事

①テレビ共同受信設備の基本事項 テレビは、現在デジタル放送化が進められており、2011 年には地上デジタル放送に移行されるこ

とになります。すでに対応が進められていて、地デジ対応用 UHF アンテナ設置や CATV(ケーブル

テレビ)、光ファイバーケーブル等による視聴対応がされていると思います。

 このテレビ共同受信設備については、これまでのアンテナ方式から CATV や光ファイバー方式と

視聴者側の選択肢が広がってきており、特に電柱とマンション各住戸内を無線 LAN 方式でつなぐ接

続方式も出てきていることで、将来を考えると現時点で何がベストかという判断が難しくなっている

といえます。

テレビ共聴システムの概略図

②テレビ共聴設備の不具合

部  位 劣化・不具合 内容

テレビ共聴設備

・破損している。・ケーブルが断線している。・接続箇所が接触不良をおこしている。・受信感度が劣化している。・ブースターへの電源供給がされていない。

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Ⅴ . 電気設備改修工事

【1】テレビアンテナ

【2】ブースター等その他機器

【3】BS アンテナ

・設置後は電界強度の測定及び受像テストを行う。・風による回転ずれ等が生じないよう堅固に取り付け

る。・風圧荷重計算書結果に基づいた施工をする。・複数のアンテナを取り付ける場合には取付高さを考慮

する。

・ブースターの取付位置は、分配器、ケーブルよりもアンテナに近い所に取り付けられているか確認する。

・ブースターの調整は、専門職で行っているか確認する。

・設置後は電界強度の測定及び受像テストを行う。・風による回転ずれ等が生じないよう堅固に取り付け

る。・風圧荷重計算書結果に基づいた施工をする。・複数のアンテナを取り付ける場合には取付高さを考慮

する。

6. テレビ共同受信設備改修工事のチェックポイント

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Ⅴ . 電気設備改修工事

7. インターホン設備改修工事

①インターホン設備の概要 マンションで使われているインターホン設備は主に次の 3 つに分類されます。

(a) 住戸単独型インターホン

 住戸玄関の子機で来客が呼出ボタンを押し、室内のインターホン親機の

受話器を取り上げて通話するタイプ。

(b) 集合玄関型インターホン

 マンション玄関扉のオートロック(電気錠、自動扉)を開錠する機能などを装備した集合住宅

インターホン設備の標準システム。テレビモニタを内蔵したタイプや、ガス漏れ検知器や非常用

押ボタンなどを付加したタイプ、住戸用自動火災報知設備に連動したタイプ、宅配ロッカーとの

インターフェイスを搭載したタイプ、管理会社や警備会社に住戸ごとの警報内容を移報できるタ

イプなど多様なシステムがあります。

(c) 共同住宅用自動火災報知設備連動システム

 集合玄関型の機能に加え、消防予 220 号通知の共同住宅特例基準に対応した、共同住宅用自動

火災報知設備と連動したシステム。非常警報設備と非常電源設備が各住戸のインターホン親機ま

で結線されて、共同住宅用自動火災報知設備と一体化されています。

 住戸単独型の場合は、親機や子

機、配線の更新など比較的容易に

各住戸の判断で、機能の付加や性

能の向上が図れるものです。

 一方、集合玄関型や共同住宅型

は共用部設備であるため全ての住

戸で一斉に統一された機能で更新

や改修を行わなくてはなりません。

②インターホン設備の劣化・不具合

部  位 劣化・不具合 内容

インターホン設備

・配線が断線し、通話が出来ない。・機器が劣化し、通話が出来ない。・カメラ付きではない。・声だけでは誰が訪問したかわからない。・不審者の区別がつかない。

住戸単独型インターホン

集合玄関型インターホンのシステム例

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Ⅴ . 電気設備改修工事

【1】玄関子機改修工事(カメラ付への改修)

【2】モニター改修工事(カメラ付)

【3】集合玄関型に更新

・カメラ付に変更する場合は既設配線が使用可能か確認する。システムの内容により、配線の追加が必要である。

・インターホン機能だけの場合より、モニターが大きくなるので取付位置、方法を確認する。

・オートロックシステムと併用する場合は、全戸への配線が必要となる機種があるので、配線経路を確保する。

8. インターホン設備改修工事のチェックポイント

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Ⅵ . 消火・防災設備改修工事

1. 消火・防災設備改修工事の基本事項

 消火・防災設備とは「消防法」と「建築基準法」において、火災・地震等の災害時おける、警報・避難・

消火・防火等に使用される設備を総称しています。

 消防法で規定されている消防用設備等の種類は、次表のように分類されます。

消防用設備等の種類

設備の名称 主な消防用設備

消防の用に供する設備

消火設備

消火器、簡易消火用具 ( 水バケツ、水槽、乾燥砂、膨張ひる石または膨張真珠岩 )、屋内消火栓設備、屋外消火栓設備、スプリンクラ設備、水噴霧消火設備、二酸化炭素消火設備、ハロゲン化物消火設備、泡消火設備、粉末消火設備、動力消防ポンプ設備

警報設備自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報器、消防機関へ通報する火災報知設備、非常警報器具 ( 警鐘,携帯用拡声器、手動式サイレンその他 )、非常警報設備 ( 非常ベル,自動式サイレン、放送設備 )

避難設備すべり台、避難はしご、救助袋、緩行機、避難橋その他避難器具、誘導灯、誘導標識

消防用水 防火水槽またはこれに代わる貯水池その他の用水

消火活動上必要な施設 排煙設備、連結散水設備、連結送水管、非常コンセント設備、無線通信補助設備

 また、建築基準法関連の防災設備は次表のようになっています。

設備の役割 主な防災・避難設備

火災予防、災害の拡大防止設備

防火戸、防火区画などの火災拡大防止のための構造設備、内装制限、避難施設、防火区画貫通措置、耐震措置、避雷設備

警報設備 ガス漏れ警報設備

避難設備 避難階段、特別避難階段、非常用の照明装置、排煙設備

消火活動上必要な施設 非常用エレベータ、非常用進入口灯、中央管理室、( 防災センター )

 特に消防法は頻繁に法律改正が行われており、旧基準で建てられた既存マンションの消防設備につ

いては、現行法規に適合していなくても既存不適格扱いとして法的に遡及(遡って適合させること)

されないものが多いのですが、大規模修繕工事などの機会に、安全のため、改修を検討することが望

まれます。

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Ⅵ . 消火・防災設備改修工事

2. 自動火災報知設備改修工事

 自動火災報知設備は、消防法上で消防用設備等の警報設備として規定されており、火災発生前の異

常現象(煙・炎の発生,異常な温度上昇)を捉えて警報を発し、火災の予防、早期発見に役立てるた

めに設置する設備です。集合住宅では、設置に要する費用の軽減やその他通報設備の機能と複合させ

ることなどで特例が設けられています。現在、各住戸内への住宅用防災機器(住戸用自動火災報知設備)

設置の義務化と共に、一般のマンションは「特定共同住宅等」と位置付けられ、特例基準が設けられ

ています。その要点をまとめた早見表が下表になります。

消防設備設置基準早見表

特定共同住宅等

構造類型 二方向避難型 開放型 二方向避難開放型

非二方向避難非開放型

階数5階建以下

6 階~10 階建以下

11 階建以上

5 階建以下

6 階~10 階建以下

11 階建以上

10 階建以下

11 階建以上

10 階建以下

11 階建以上

必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等

住戸用消火器及び消火器具

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

住戸用自火報設備及び共同住宅用非常警報設備 ○

注2○

注2○

注2共同住宅用自動火災報知設備

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

共同住宅用スプリンクラー設備 11階以上の部分

○ ○注3

○注4 ○

通常用いられ る 消 防用 設 備 等

(上記○印を一式設置することにより免除できる設備)

消火器具 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

自動火災報知設備 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

屋外消火栓設備 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

動力消防ポンプ設備 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

屋内消火栓 ●注1 ● ● ● ● ● ●

注1

スプリンクラー設備 ● ● ● ●

非常警報器具又は非常警報設備

● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

避難器具 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

誘導灯及び誘導標識 ● ● ● ● ●

<改正早見表の見方>1. 表中、○印(白抜き)を設置することで、●印(黒塗り潰し)設備が免除できる。(但し、「通常用いられる消防用設備等」において、空欄(無印部分)は消防法通り設置の有無を決定する)。また、都合のよい設備だけを選択することはできない。2. ●注 1 … 共同住宅用スプリンクラー設備を設置した階のみ屋内消火栓設備が免除できる。3. ○注 2 … どちらか一方の設備を選択できる。

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Ⅵ . 消火・防災設備改修工事

3. 消火設備改修工事

 消火設備としては、1. の表「消防用設備等の種類」で示すように、様々な消火設備がありますが、

ここでは、屋内消火栓設備と連結送水管について解説します。

①屋内消火栓設備 屋内消火栓は、広く用いられている消火設備で、原則 2 人で操作する屋内(1 号)消火栓と 1 人

で操作のできる 2 号消火栓及び易操作性 1 号消火栓があります。これらは、警戒区域により選択さ

れます。その主な比較を下表に示します。

屋内(1 号)消火栓 易操作性 1 号消火栓 屋内 2 号消火栓

警戒区域半径 25m 以下 25m 以下 原則 15m 以下

ノズルの必要圧力 0.17MPa 以上 0.17MPa 以上 0.25MPa 以上

放水量 130L/min 以上 130L/min 以上 60L/min 以上

ノズルの開閉装置 規定はない 必要 必要

ホースの径及び長さ 40㎜× 30 m 30㎜× 30m 25㎜× 20m

 屋内消火栓は、水源、加圧送水装置、屋内消火栓、補助水槽及び配管から構成され、消火栓は消火

栓箱にホース、ノズルなどと一緒に格納されています。

ホースなどは、10 年以上経過したものは耐圧試験を行い、合格しなければ取り替える必要があります。

また、消火栓箱なども雨掛かり部にあれば腐食することもあります。消火栓の配管自体は、配管内の

水の入れ替えがほとんどないので、水中の酸素が補給されないため、亜鉛めっき鋼管を採用していて

も、給水配管と比較して劣化の進行は格段に遅いといえます。ただ、埋設管や外部腐食などがあるの

で、定期点検などの際に状況を把握しておきます。

②連結送水管 消防隊専用の設備であり、地上部に設ける送水口と、3 階以上の各階に設ける放水口及び配管から

構成され、11 階以上に設ける放水口は、ホース、ノズルとともに格納箱に収納されます。寒冷地では、

凍害の恐れがあるため配管に水のない乾式が用いられます。

 これらの改正により、住戸用消火器及び消火器具や共同住宅用自動火災報知設備等を設置すること

で、他の消防用設備に代えることができるので、既存設備との兼ね合いで改修計画を立てる際には考

慮しておく必要があります。

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Ⅵ . 消火・防災設備改修工事

③消防設備の劣化・不具合

部  位 劣化・不具合 内容

自動火災報知設備 非常放送設備 非常警報設備

・感知器が正常に作動しない。

・感知器が作動しても受信機のベルが鳴らない。

・機器が劣化している。

・受信機のランプが火災ではないのに点灯する。

・火災ではないのにベルが鳴る。

・配線の断線ランプが点灯している。

・ベル・放送がならない。

・スピーカの音が割れている。

・押しボタンを押してもベルが鳴らない。

・バッテリーが寿命である。

・機器が腐食し変形している。

・部屋に感知器がない。

消火設備

・消火栓配管がさびている。

・消火栓配管から漏水する。

・消火栓箱が腐食している。

・補助水槽が劣化している。

・ポンプが作動しない。

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Ⅵ . 消火・防災設備改修工事

【1】自火報受信機取替

【2】感知器取替

【3】非常警報設備改修工事

・現行基準に合ったものを使用する。・見やすい場所に設置する。・警戒区域図を受信機に設置する。

・取替後に試験を行う。

・電源ランプの確認をする。・バッテリーは、確実に接続する。・押しボタンを押して鳴動テストを行う。

4. 消火・防災設備改修工事のチェックポイント

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Ⅵ . 消火・防災設備改修工事

【4】住宅用火災警報器設置工事

【5】住宅用火災警報器設置工事

【6】住宅用火災警報器設置工事

・消防法で定める取付場所に設置する。

・警報器のベースは、下地がある部分に堅固に取り付ける。

・取付後のテストを行う。

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Ⅵ . 消火・防災設備改修工事

【7】消火栓設備改修工事 施工前

・施工前に各所、劣化状況等を調査・把握し施工範囲、施工方法を検討する。

・補給水槽等、耐久性のあるものは塗装施工とし、耐久性の無いものは更新を計画する。

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Ⅵ . 消火・防災設備改修工事

【8】消火栓設備改修工事 施工前

【9】消火栓配管材料

・施工前に消防署へ提出する届出書を作成し提出する。「消防用設備等(特殊消防用設備等)設置計画届出書」(参考:東京消防庁 届出書類)※火災予防条例第 58 条の 2 第 1 項

・更新する配管においては目的にあった管種・継手を選定する。

【10】消火栓既設配管撤去

・居住者が作業エリアに入らないよう通行制限を行い、必要に応じて養生等・防護を行う。

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Ⅵ . 消火・防災設備改修工事

【11】消火栓新規配管

・配管の支持間隔に注意し、ガタつき等がないか確認する。

・ネジ部の締付け状態を確認する。

・配管継手部(ネジ部)は錆止め塗装を行う。・パイプレンチによる傷部分も錆止め塗装を行う。

【13】消火栓配管防食対策実施

・地中配管の配管材は外面被覆管を使用し、継手は水の浸透を防ぐ処理を行う。(シーリング処理の上、粘着テープ巻きを行う)

【12】消火栓配管さび止め塗装

配管支持金物と躯体部の隙間部分にはシーリングを施すこと。

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Ⅵ . 消火・防災設備改修工事

【14】消火栓配管保温・塗装工事

・保温・塗装施工前には必ず漏れがないか耐圧テストを実施し、確認後施工する。

※必要に応じて塗装・保温・ラッキング工事を区分する。

・配管の保温、ラッキング・塗装が確実に施工されているか確認を行う。(色むら等はないか)

【16】消火栓配管改修工事 完了確認(2)

・完成時に放水試験及び水圧耐圧試験を行う。・連結送水管設備においては耐圧放水試験車により試験

を行う。・試験データは設置計画届出書に添付し、所轄の消防署

に提出する。

【15】消火栓配管改修工事 完了確認(1)

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Ⅶ . 排気設備改修工事

1. 排気設備改修工事の基本事項

 マンションの排気方法は、共有シャフトを利用する「U ダクト方式」や「SE ダクト方式」と「各戸

水平排気方式」がありますが、シャフトのスペース・メンテナンス・換気性能等の問題で、現在では

各戸水平排気方式が多く採用されています。

共用シャフトを利用した排気方式 各戸水平排気方式

 各戸水平排気方式の場合は、共用部分のダクト改修は集会室や管理員室などの一部になりますが、

火災時の延焼を防ぐために各戸の排気口に設置されている防火ダンパーに機能障害があれば改修を行

います。

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Ⅶ . 排気設備改修工事

【1】施工前

・必要箇所の養生をする。・既存物で破損しそうなものは、予め移動しておく。

【2】機器取付 施工中

【3】ダクト工 施工中

・機器本体を据え付ける際は、天井へビス止めではなく吊棒にて単独吊が望ましい。

・接続部へシール材を塗布し、空気及び結露水漏れを防ぐ。

2. 排気設備改修工事のチェックポイント

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Ⅶ . 排気設備改修工事

【4】ダクト工 施工中

・接続する継手は必要差し込みシロまでしっかりと挿入する。

【5】ダクト工 施工中

【6】ダクト工 施工中

・ビス止めする際は、3 点以上打ち込む。

・ビスは結露水滴下防止のため、ダクト下部へは打たないよう注意する。

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Ⅶ . 排気設備改修工事

【7】ダクト工 施工中

・接続部にはダクト用テープ又はアルミテープにて二周以上巻く。

・巻いたテープを指あるいはヘラ等にて馴らし、しっかりと粘着させる。

【8】ダクト工 施工中

【9】完了確認

・機器とダクトとの接続は、振動防止のためフレキ管を使用する事が望ましい。

・パネル等取付後、異音、振動が無い事を確認する。・スイッチの入切が正常に作動する事を確認する。・また、強弱切替が付いている場合には、正常に強弱が

切り替わる事を確認する。

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Ⅶ . 排気設備改修工事

【10】ベントキャップ施工前

・必要箇所の養生をする。・ダクトの径を確認する。

【11】ベントキャップ確認

【12】ベントキャップ交換

・延焼線にかかる場合は、FD 付を使用する。

・ベントキャップをダクトに挿入後、水平を目視で確認する。

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マンション設備改修工事チェックポイントマニュアル技術委員会及び設備 WG 名簿(会社名五十音順)

技術委員会委 員 長   髙橋 秀行    旭技建(株)副委員長  後藤 龍彦    (株)アール・エヌ・ゴトー副委員長  岡野 和雄    (株)カシワバラ・コーポレーション副委員長  斎藤 政勝    川本工業(株)副委員長  関澤 吉秋    (株)西尾産業委  員  松宮 博司    旭技建(株)委  員  高木 正彦    (代理:大西 一廣)(株)カシワバラ・コーポレーション委  員  谷  有弘    建装工業(株)委  員  山口 善一    高分子(株)委  員  高原 雅典    (株)サカクラ委  員  及川  薫    (株)太平エンジニアリング委  員  津上 和由    津上産業(株)委  員  長崎 邦彦    (株)長崎塗装店委  員  渡辺 昌香    (株)西尾産業委  員  堀越 良雄    (株)堀越委  員  岡田 成煥    (株)富士防委  員  地主 富雄    三星産業(株)委  員  堀  竹市    (株)リフォームジャパン

設備 WG スタッフ主  査  斎藤 政勝    川本工業(株)副 主 査  長塚 辰男    (株)太平エンジニアリング   橋本 博司    旭電設(株)   門田 日出美   いずみテクノス(株)   服部 勝則    川本工業(株)   久保田 國義   京浜管鉄工業(株)   新藤 孝     建装工業(株)   大越 佳人    積水工業(株)  及川 浩司    日本設備工業(株)  佐野 浩之    山羽工業(株)

(オブザーバー)      内山 岳彦    (株)エー・エス・ディ

(事務局)      中野谷 昌司    (事務局長)

参考文献

マンション維持修繕技術ハンドブック (社)高層住宅管理業協会編 発行(株)オーム社 H22.4

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マンション設備改修工事チェックポイントマニュアル

2011 年 1 月 初版発行

発行  一般社団法人 マンション計画修繕施工協会

    〒 105-0003 東京都港区西新橋 2-13-5 吉野ビル 2F

    電話:03-5512-2798

制作  株式会社エー・エス・ディ

    〒 222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜 2-5-14 臼井ビル 5F

    電話:045-478-2482

※本書を無断で掲載、複写および出版物に掲載することはお断りいたします。