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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. ロサンゼルス近郊における外食産業基礎調査 2012 4 日本貿易振興機構(ジェトロ) ロサンゼルス事務所

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ロサンゼルス近郊における外食産業基礎調査

2012 年 4 月

日本貿易振興機構(ジェトロ)

ロサンゼルス事務所

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目 次

第1章 ロサンゼルス近郊市場の基礎調査 ....................................................................................... 1

1 概要・構造 ................................................................................................................................. 1

2 市場規模 ..................................................................................................................................... 3

3 地域の特徴 ................................................................................................................................. 6

4 市場の動向と将来性................................................................................................................ 13

5 カリフォルニア州およびロサンゼルス地域での規制および許認可 ................................... 17

6 関係公的機関の支援状況 ........................................................................................................ 26

第2章 進出に当たって................................................................................................................ 28

1 進出に当たってのガイドライン ............................................................................................ 28

2 進出のためのフローチャート(基本的なステップ)および各項目の内容 ....................... 31

3 進出企業ケーススタディ ........................................................................................................ 47

4 進出に当たってのチェックポイント/成功にむけて .......................................................... 60

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第1章 ロサンゼルス近郊市場の基礎調査

1 概要・構造

米国の外食産業

米国労働統計局(United States Bureau of Labor)の 2008年度の統計によると、米国内には 54

万 6,300 件の個人経営の飲食店がある。そのうち約半分(46.7 %)がいわゆる「ファストフード」

と呼ばれるレストランや、限られたメニューのみを提供する限定サービス型のレストランである。

詳しい内訳は以下の表を参照されたい。

業態 割合

フルサービスのレストラン (Full-service) 39.4%

ファストフードなどの限定的なサービス(limited-service)を提供するレストラン

やカフェテリア 46.7%

ケータリングおよびトラックやカートなどの屋台形式によるサービス

(Special food services) 5.3%

酒類を提供するバーやパブなど(Drinking places) 8.6%

フルサービスのレストランは、前菜に始まり、メインディッシュ、サラダ、デザートなどといっ

た豊富なメニューを提供し、ウェイトレスやウェイターによるテーブルサービスを行う。調理も熟

練したシェフによるものである。

限定サービス事業者の最も一般的な形態は、ファストフードを提供するチェーン店で、メニュー

が限定されており、ウェイターやウェイトレスなどを置かないセルフサービスが特徴となっている。

提供するメニューは調理が簡単で作り置きできるものがほとんどである。ドライブスルーを実施す

るファストフード店も多い。

限定サービスのもうひとつの形態としてはカフェテリアがあげられる。カフェテリアはサンドイ

ッチやハンバーガーといった定番のメニューのほかに、日替わりの限定的なメニューを提供するこ

とがその特徴として挙げられる。客のオーダーに合わせて調理することもファストフードとの違い

である。

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ケータリングおよびトラックやカートなどの屋台形式によるサービスは5.3%であるが、昨今トラ

ックによる移動式サービスの発展が目覚しい。移動式サービスは以前から建築現場での昼食の提供

などで広く利用されていたが、最近ではグルメフードを提供するトラックが多くみられるようにな

ってきた。

このように、外食産業の中にも様々な業態が存在する。近年はファミリー・レストランなどの全

国展開によるチェーン店が増えてきているものの、未だ多くの店舗が独立経営およびローカル経営

の事業体として存在している。

米国の外食産業の特徴

外食産業は、米国内いずれの州においても不景気の中で安定した成長を見せている産業として位

置づけられている。外食産業の2011年売上高は、約6,040億ドルになると予測されている。また、

GDPでは、同産業は米国総GDPの約2%に当たる2,821億ドルという規模である。カリフォルニア州では、

2009年には580億ドルの売上を記録し、外食産業の州別売上額において全米でも第1位となっている。

しかしながら、外食の際の一人当たりの支払額は15ドルから20ドルと比較的低い。

米国の外食産業の最近の傾向 ~ テクノロジーの導入とウェブサイトの活用

近年の外食産業の傾向としては、最新技術を取り入れた効率性や生産性の追求が挙げられる。例

えば、コンピューターを使って注文や在庫、座席の管理などを行うレストランが増えているほか、

POS(販売時点管理)システムを売上管理に活用しているところも多い。その他、自社のホームペー

ジを設立し、所在地やメニューなどの情報提供に加え、席の予約を受け付けるところも多く見られ

る。さらに一部では、インターネットで注文を受け付け、テイクアウトのサービスやデリバリーの

サービスまで行っているレストランもある。

インターネットの口コミサイトもレストランの売り上げに大きく影響を与えている。口コミサイ

トは実際に店を訪れた人が、その店についての感想を投稿するため、宣伝や広告などよりもその信

憑性の高さが評価されている。これらの口コミサイトの中でも特に大きな影響力を持つのが Yelp

(www.yelp.com)である。全米を網羅し、イタリアン、日本食など、分野別に検索することができる。

ここでの評価を確かめてから店を訪れる人は多く、良いコメントが多いと宣伝を出すよりも売り上

げ増加に効果があるという。Yelp の他にも、urbanspoon(www.urbanspoon.com)、

CHOW(chowhound.chow.com)、trip(www.tripadvisor.com)などのサイトがある。

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近年、トラックによる移動式サービスが伸びていることは前述したが、この背景には昨今の景気

低迷がある。景気が低迷したために建築現場の数が減り、飲食サービス用の余剰トラックが増えた。

そのトラックを高級レストランで職を失ったシェフが利用して誕生したのが 「グルメ・フード・ト

ラック」である。最近では 「グルメ・フード・トラック」はちょっとした社会現象を巻き起こしてお

り、いくつかのテレビ番組も作られている。これらのフード・トラックは Facebook や Twitterで

顧客とのコミュニケーションを図っている点も特筆すべき点である。ZAGATの2011年版でもグルメ・

トラックの成長振り、特にロサンゼルスでの発展は目覚しいと伝えている。

2 市場規模

2007 年度の国勢調査によると全米には約 57万 2,000 人の外食関連の事業者がいるが、この外食

産業全体での年間収入は 4,000 億ドル以上になる。

地域別分布 – 外食産業: 2007

件数 売上

($1,000)

売り上げの割合

%

全米 571,621 433,404,527 100.00

カリフォルニア 69,350 57,640,928 13.30

http://www.census.gov/econ/industry/geo/g722.htm

カリフォルニア・レストラン組合(California Restaurant Association)によると、カリフォル

ニア州には 9万以上の飲食店がある。2009 年度の売り上げ総額は、580億ドルで、外食産業の州別

売上額において全米でも第 1位となっている。また、2008 年には、3,600 万人に上る州人口のうち

140 万人以上が外食産業に雇用されていた。同州の外食産業では今後もレストラン数の順調な増加

が見込まれており、2020 年には約 13万 5,000人増加(増加率 9.6%)し、153万 5,000 人分の雇用

が見込まれている。

カリフォルニア州の中でも外食産業が盛んなのがロサンゼルスで、州のレストランの三分の一は

ロサンゼルスにあるといわれている。ロサンゼルスの人口は、周辺 5 郡で 1,787万人と全米の中で

人口の多い地域であり(カリフォルニア州の人口は全米人口の約 12%を占め(全米 1位)、ロサン

ゼルス周辺 5郡の人口はそのカリフォルニア州人口の約 48%を占める。)、そのためファストフー

ドの需要も多い。

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日本食レストランだけを見た場合、カリフォルニア州は 2010年度のジェトロ調査によると、日本

食レストランが 3,963 軒あり、全米で一番日本食レストランの多い州である(第 2位はニューヨー

ク州の 1,439 軒)が、中でもロサンゼルスには多くの日本食レストランが存在する。ロサンゼルス

はエンターテイメント・ビジネスの中心地であるが、エンターテイメント関連、あるいはクリエイ

ティブな職種にかかわる人々の間では健康志向が高いため、日本食の人気が高まっている。さらに、

ロサンゼルスには一流大学が何校もあり、アジア系の留学生が多くいることが日本食レストランの

人気にもつながっていると考えられる。

ロサンゼルス周辺では、例えばサンタモニカを中心とした半径 25 マイル圏内(地図上の青円)に

は約 1,100件、アーバインを中心とした半径 10マイル圏内(地図上の赤円)には約 400件の日本食

レストランがある。(http://local.yahoo.comでの検索による)ただし、これらの日本食レストラ

ンの経営者の大半は日本人以外のアジア人である。

米国一のレストラン・ガイドであるザガット・サーベイ(Zagat Survey)の 2011年度版

「Zagat/Los Angeles」によると、料理の美味しいレストラン上位 50位のうち 18店が日本食レス

トランで、そのほとんどが「寿司店」である。ただし、「寿司」といっても日本の寿司屋とは違い、

握りずし主体ではなく、趣向を凝らした巻きずしで店の特徴を出したり、さらには刺身を使ったサ

ラダや焼き物、揚げ物など店独自の一品料理を提供する店がほとんどである。

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1位 Matsuhisa 寿司

3位 Asanebo 寿司

5位 Urasawa 寿司

6位 Sushi Zo 寿司

10 位 Takao 寿司

12 位 Mori Sushi 寿司

13 位 Nobu Malibu 日本料理

14 位 Sushi Nozawa 寿司

17 位 Hamasaku 寿司

26 位 Katsu-ya(Studio City) 寿司

27 位 Katsu-ya(Encino) 寿司

31 位 Orris フレンチ・ジャパニーズ

32 位 Shiro フレンチ・ジャパニーズ

33 位 Nanbankan 日本料理

35 位 Sushi Masu 寿司

38 位 Sushi Sasabune 寿司

39 位 Sushi-Don Sasabune Express 寿司

48 位 Lazy Ox Canteen 和洋折衷

上位 10店のうち半分を日本食が占めていることからも分かるように、ロサンゼルスでの日本食レ

ストランの人気は高い。また、大衆層の客層が厚いので、居酒屋スタイルが定着しつつあり、成功

店も多くみられる。しかしながら、ニューヨークに比べるとハイエンドの客層が薄いことから、ニ

ューヨークで流行しているような高級寿司店や高級日本食店が比較的伸び難い傾向が指摘されてい

る。

2010年3月にロサンゼルス市が発行した “CITY OF LOS ANGELES FORMATION STATEMENT”によると、

ロサンゼルス市内にある飲食店の売り上げは、以下のように年々増加している。

CITY OF LOS ANGELES TAXABLE SALES (単位:1000ドル)

外食産業

2005 2006 2007 2007

第3四半期

2008

第3四半期

44,943,745 55,282,931 55,632,290 11,422,111 11,451,972

(出典) Appendix A, City of Los Angeles Information Statement

http://cao.lacity.org/Appendix_A.pdf

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3 地域の特徴

複合都市圏ロサンゼルス

ロサンゼルス市は、全米第 2位の大都市であるが、一般に「ロサンゼルス」という場合、ロサン

ゼルス市を中心とする複合都市圏を指す。地元では、グレーター・ロサンゼルス・エリア、あるい

は、サウスランドなどとも呼ばれる。都市圏の中にはロサンゼルス郡とオレンジ郡が含まれる。

2010 年国勢調査時点におけるロサンゼルス都市圏(ロサンゼルス郡・オレンジ郡)の人口の公式

統計は 1,280 万人以上となっている。(ロサンゼルス郡 980万人、オレンジ郡 300 万人)

1.ダウンタウン 2.ロサンゼルス西部

5.オレンジ郡

3.サンフェルナンドバレー

4.サウスベイ

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また、ロサンゼルスは全米最大の商業地であり、企業数 41万 8,000、2010 年度の総生産(GDP)

は、5,437 億ドルで、経済規模は世界 19位である。

ロサンゼルスは、映画をはじめとしたエンターテイメント・ビジネスの中心地であり、その影響

を受け、デザイン、ファッション、ビジュアル・アートなどのクリエイティブな産業が発達し、世

界への情報発信力も強い。ロサンゼルスはまた、米国の国際貿易の中心地でもある。これらの背景

から、ロサンゼルスには若くて有能な人材が全米はもとより世界中から集まり、多様化した経済基

盤を築いている。それが企業にとって大きな魅力となっている。

外務省の海外在留邦人調査によると、ロサンゼルスに滞在(永住者と 3ヶ月以上の長期滞在者)

する日本人は、6 万 7,018 人(2009年 10月 1日時点)で、これは米国のみならず全世界の都市別に

見た場合でもトップである。以前はニューヨークが一位であったが、最近ではロサンゼルスの方が

日本人の数が多くなっている。

以下は 2010年の国勢調査①によるロサンゼルス周辺 5 郡(ロサンゼルス郡、オレンジ郡、ベンチ

ュラ郡、サンベルナディーノ郡、リバーサイド郡)の人口統計データである。

基礎データ

人口 1,787万 7,006人

①米国では国勢調査は 10 年ごとに行われている。2010年度の調査統計は 2011年 3月に公表された。

白人: 55.1%

アジア人:10.4% アフリカン・

アメリカン: 7.6%

混血: 4.7%

ネイティブ・

アメリカン: 0.9%

太平洋諸

島: 0.3%

その他: 21.0%

人種別人口構成

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ヒスパニック・ラテン系:40.3%

(ヒスパニック・ラテン系はアメリカにおける独特の概念で、自分あるいは先祖がスペイン

語圏のラテンアメリカ出身であるかどうかという出自の意識であり、人種概念ではない。そ

のため人種的には白人、アフリカン・アメリカン、ネイティブ・アメリカンが様々な割合で

混じり合った人たちからなる。)

複合都市であるロサンゼルスの中でレストランをオープンするのに適した地域を紹介する。

1)ダウンタウン

ロサンゼルスのダウンタウンは大きく分けて二つの地区に分けられる。ひとつは高層ビルの立ち

並ぶビジネス街、もうひとつはシビックセンターと呼ばれる官庁街である。ダウンタウンのはずれ

には日本人町リトル東京がある。昼間は 20 万人以上の人々がこのダウンタウンで働き、ニューヨー

クに次ぐアメリカ第 2の都市として活気に溢れているが、夜になると雰囲気が一変し、飲食店も一

部の地域を除き多くは閉まってしまう。

しかしながら、最近では 1999年に多くのスポーツ・イベントが開催されるステイプルズ・センタ

ー(Staples Center)が完成したのを皮切りに、ウォルト・ディズニー・コンサートホールなどが

建設され、ダウンタウンの活性化に役立っている。

2)ロサンゼルス西部

この地域には、ロサンゼルス市、ビバリーヒルズ、サンタモニカ、ウェスト・ハリウッド、ウェ

スト・ロサンゼルスなどが含まれる。

基礎データ(2000 年国勢調査をもとに Los Angele Times 紙が独自にまとめたデータより②)

② ロサンゼルス西部はロサンゼルスの中心ということで、今回のリサーチではこの地域を取り上げたが、国が国勢調

査をするに当り、ロサンゼルス西部という区分け、あるいは項目はない。そのため、この地域における人口情勢の新

しい情報は入手できなかった。2000 年の情報については、Los Angeles Times が独自に行った統計のデータを採用した。

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人口 52万 9,427 人

ヒスパニック・ラテン系: 15.7%

ビバリーヒルズ(Beverly Hills)

ビバリーヒルズは、ハリウッドの映画スターなど多くの有名人の邸宅が立ち並ぶ全米有数の高級

住宅街として世界的に知られている。市の財政は豊かで瀟洒な街並みを保ち、高水準で治安の良さ

を保っている。特に高級ブティックの建ち並ぶロデオドライブは有名で、観光名所にもなっている。

ウェスト・ハリウッド(West Hollywood)

ハリウッドとビバリーヒルズの間に位置するウエスト・ハリウッドには、ハイセンスなブティッ

クが多く並ぶ。中心となるサンセット大通り(Sunset Strip)はロサンゼルス一の繁華街で、クラ

ブやライブハウスが数多く集まりナイトライフを彩っている。ウエスト・ハリウッドの南側には、

洒落たブティックやレストランが集まるショッピングゾーンが数多くある。

サンタモニカ(Santa Monica )

カリフォルニアのビーチといえばサンタモニカというほど世界的に有名なリゾート都市である。

観覧車のあるサンタモニカ・ピアや、ショッピング・モールのサンタモニカ・プレース(Santa

Monica Place)、サンタモニカ・プレースの北側出入り口から北にのびる遊歩道スタイル(車は入

れない)のショッピング通りのサードストリート・プロムナード(Third Street Promenade)が有

名である。また、ベニスビーチまで延びるメインストリート(Main Street)には、レストランやお

しゃれなブティックなど個性豊かな店が並ぶ。

白人: 55.1%

アジア人: 11.5%

アフリカン・

アメリカン: 5.1%

ネイティブ・

アメリカン: 0.9%

その他: 27.4%

人種別人口構成

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ウェスト・ロサンゼルス(West Los Angeles)

ウェスト・ロサンゼルスは西のサンタモニカ、東のビバリーヒルズに挟まれた高級地域である。

サンタモニカ・ブルバードにあるセンチュリー・シティ(Century City)には超高級マンション、

オフィスビル、ホテル、銀行、劇場、病院、デパートおよびスーパーマーケットを含むショッピン

グセンターなどが集まっている。ウエストウッドは UCLA があることから、若者が遊ぶ町として知ら

れている。

3)サンフェルナンド・バレー(San Fernando Valley)

サンフェルナンド・バレーは、バレーとも呼ばれ、ロサンゼルス市の北部に位置する。バレーに

は、ハリウッドの映画関係者や芸能関係者あるいは芸能人が多く住むことでも知られている。ベン

チュラ・ブルバードに沿って点在する、ウッドランドヒルズ(Woodland Hills)、タルザナ

(Tarzana)、エンシノ(Encino)、シャーマンオークス(Sherman Oaks)、スタジオシティ

(Studio City)、トルーカレイク(Toluca Lake)は、比較的高所得者が住む住宅地である。また、

バレーの西端のカラバサス(Calabasas)は白人が多い高級住宅地で、ハリウッドスターなどいわゆ

る「セレブ」も多く住む。

基礎データ(2008 年度サンフェルナンド・バレー人口調査)

人口約 176万人

ヒスパニック・ラテン系: 40%

白人: 45%

アジア人: 10%

アフリカン・ア

メリカン: 5%

その他: 40%

人種別人口構成

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ウッドランドヒルズ(Woodland Hills)に始まりスタジオシティ(Studio City)まで、バレーを

東西に貫くベンチュラ・ブルバード(Ventura Boulevard)はバレーのメインストリートであり、こ

の道沿いには個人経営のブティックやレストラン、スーパーマーケットなどが林立する。

バレーには、ハリウッドの映画関係者が多く住むことは前述したが、彼らは流行に敏感であり、

また日本びいきの映画俳優などの影響や、ヘルシーであるということから「寿司」を食べることは

おしゃれであるというイメージを持っている。そのため、バレーには寿司屋(Sushi Bar)が多く、

特にスタジオシティ(Studio City)のベンチュラ・ブルバードには寿司屋が集中していることから、

映画関係者の間では「寿司銀座」と呼ばれている。

ウッドランドヒルズには、一般的にはトパンガ・モールあるいはトパンガ・プラザと呼ばれてい

るショッピングセンター(Westfield Shoppingtown Topanga)がある。2008 年に 3億 3,000 万ドル

をかけた大規模改築があり、ターゲットやシアーズのような大衆的なデパートから、ノードストロ

ム(Nordstrom)やニーマンマーカス(Neiman Marcus)といった高級デパート、さらにはルイビト

ンやティファニーのような高級ブティックまで揃っている。Gyu-kaku(牛角)もこのモールのテナ

ントのひとつである。

4)サウスベイ・エリア(South Bay)

サウスベイ・エリアにはトーランス(Torrance)、ガーデナ(Gardena)、ロングビーチなどがあるが、

中心地はトーランスである。ロサンゼルス国際空港の南約 7kmに位置し、人口は 14万 5,438 人

(2010 年国勢調査)で、ロサンゼルス郡で 7番目の規模である。産業が盛んで、ロサンゼルス郡南

部の商業の中心地でもある。トヨタやホンダなど日本企業が多く、日系人が集中している地域とし

ても知られている。

2010 年の国勢調査では、市の人口の三分の一以上(34.5%)をアジア系が占めているが、市人口

における日系人の割合は 10%にも達する。そのためロサンゼルス市民には、トーランスはアジア系

アメリカ人が非常に多い地域として知られている。

トーランス市内にはあらゆるジャンルの日本食レストランをはじめ、日系スーパー、書店等、日

系人向けビジネスが多く存在し、全日制の日本人向け幼稚園や小、中学校もあり、「ミニ日本人街」

と呼べるようなエリアを形成している。治安も比較的良いことから、アメリカ合衆国在住の日本人

や日系人にとって大変住環境の良い都市として知られている。

トーランスには 23万 2,000m²の敷地を有する全米最大級のショッピングモール、「デル・アモ・

ファッションセンター」(Del Amo Fashion Center)がある。

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5)Orange County (Costa Mesa, Newport Beach & Irvine)

オレンジ郡(Orange County)はカリフォルニア州で3番目に人口が多い郡で、中心はサンタアナ

市である。ディズニーランドがあることで有名な観光地である。さらに南カリフォルニア海岸部に

広がる世界的なハイテク研究地域「テックコースト」の中心地でもある。

基礎データ(2010 年国勢調査)

人口 301万 232 人

ヒスパニック・ラテン系: 33.7%

オレンジ郡にアジア人が比較的多いのは中国系に非常に人気がある街だからである。2009年の金

融危機以降、貯蓄志向の強い中国系は積極的に価格の下がった不動産を購入し、オレンジ郡に移り

住んでいる。

オレンジ郡の中でも特にアジア系が多い街は、アーバイン市、ガーデングローブ市、アナハイム

市であるが、アーバイン市、ガーデングローブ市、コスタメサ市には日本人が多く住む。

ニューポートビーチはオレンジ郡の高級住宅地として知られているが、アジア系の住民はあまり

いない。

白人: 60.8% アジア人:

17.9%

アフリカン・

アメリカン: 2.2% その他: 19.1%

人種別人口構成

13 Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved.

コスタメサ市にはカリフォルニア州最大規模(総合売り場面積 260,000 m2)を誇り、売上高で全米

一といわれるショッピングセンターであるサウスコーストプラザ(South Coast Plaza)がある。

主な日本のフランチャイズ展開

地域

店名

ダウンタウン ロサンゼルス西部 バレー サウスベイ オレンジ郡

牛角 2 2 2 2

吉野家 10 10 10 10 10

Sushi Boy 7 3

House カレー

ハウス 2 2 2 2

新撰組 1 5 2

陣や 3 1

4 市場の動向と将来性

米国では、外食産業は回復基調にあると期待されており、この背景には、不況からの回復傾向で、

消費者による支出が回復してきていることが挙げられる。

アメリカ人は、高校を卒業すると親から独立する場合が多い。また、ほとんどの夫婦が共働きで

ある。さらに学齢期の子供のいる夫婦は、放課後の課外活動などへの付き添いで忙しい。

こういった生活背景から、アメリカ人は外食を好む傾向がある。しかしながら日常の外食はフル

サービスのレストランではなく、いわゆるファストフードのような便利で簡単なものが多い。

そのため、外食産業の中では、ファストフードのレストランやドライブスルーでのサービスを提

供したり、持ち帰り用の食事の提供、あるいはデリバリー・サービスのあるレストラン、あるいは

カジュアルなレストラン、フランチャイズ化されている大手企業傘下のレストランにおける伸びが

期待されている。

日本企業の参入の場合には、この波に乗ることも一案であるが、その他日本人、日系人の多い地

域におけるレストラン展開にも期待がもたれる。

最近の米国では、カジュアルな食事やサービスを好む傾向にある。

14 Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved.

世界最大のフランチャイズ・ビジネス協会である International Franchise Association

Educational Foundation(IFA)によると、フランチャイズ系レストランは、3年間の景気低迷を経

て復活の兆しを見せている。

ファストフードなどの限定サービス・レストランは 4.4%、フルサービスのレストランは 4.2%の

売り上げ拡大が期待されると IFAは報告している。

アジア系フードの人気

外食産業のコンサルタント会社であるTechnomic によると、近年アジア系フードの人気が高まっ

ている。近年の景気低迷期においてもアジア系の食事を提供するレストランが成長している。この

成長は売り上げ、レストラン数の増加の両方に見られ、フルサービスのレストランでも限定サービ

スレストランでも同様の傾向にある。

それを端的にあらわしているのが、チャイニーズ・レストランの急増である。いまやマクドナル

ドよりチャイニーズ・レストランのほうが数が多いとまでいわれている。これらチャイニーズ・レ

ストランのほとんどが個人経営の店であるが、ファストフードの”Panda Express”やチェーン店

の”P.F. Chang’s”の成長も目覚しい。

アメリカ人の間で、チャイニーズの味付けに対する興味が高まっており、それがタイ料理、日本

料理、ベトナム料理など他のアジア系料理に対する興味へと広がっている。

そのためチャイニーズ以外のレストラン、たとえばマクドナルドなどでもチャイニーズ・サラダ

などといったアジア系の料理を提供するところが多くなった。しかしながら、アジア系の料理に対

する興味は地域により異なる。太平洋沿岸地域および中部大西洋沿岸地域ではアジア系料理に対す

る興味は高いが、中西部ではそれほどでもない。

日本食の人気

ソニーやトヨタのアメリカでの認識度は非常に高いが、日本食については「日本食=寿司」とい

うのが今までの一般的な認識であった。しかしながらこの状況が急速に変わりつつある。日本食は

米、野菜、魚が主であることから、ヘルシーであるとの認識が高まり、また他のヘルスフードと違

って「うまみ」があり美味しいということで、寿司のみならず日本食全般が健康志向のアメリカ人

に好まれるようになってきた。

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今後の日本食の展開

日本食と一口に言っても、様々な料理が存在するが、今後米国で注目を集める日本食は何であろ

うか。寿司は、地元のスーパーマーケットでも当たり前のように売られ、すでに米国人の日常生活

に浸透しているが、最近ブームが起きて注目されているのがラーメンである。ロサンゼルスでもラ

ーメンは注目度の高い食べ物である。不況の中でも手軽に食べられる日本食として、米国に根付い

ていく可能性を秘めている。

そのほかに注目されているのが居酒屋である。日本でもカジュアルで低価格のレストランとして

人気があり、不況下でも強い居酒屋が西海岸や東海岸で人気を集めている。品数の多さ、一品当り

の価格が抑えられていること、小皿料理であるため一度に様々な味が楽しめることから、今後米国

に「ジャパニーズ・タパス」として根付いていく可能性がある。

また、健康ブームに押され、「マクロビオテック」のような日本発の食生活法を取り入れた分野も

注目されている。動物性食品を一切使わない料理は、ベジタリアンの客層にも広く人気がある。

今後、米国で成功する可能性のある外食のコンセプトをいくつか紹介する。

寿司テイクアウト(実証済み)

クレープ(一部で実証済み)

ベーカリー、デザート(焼き立てシュークリームなど)

牛丼(実証済み)

おにぎり、惣菜屋(一部で実証済み)

居酒屋、しゃぶしゃぶ専門店

うどん、ラーメン

漫画喫茶(漫画カフェ)

2012 年度の食、10 のトレンド

米国のレストラン・コンサルタントおよびトップ・シェフたちが 2012 年に流行ると予想する「食」

を紹介する。

1. インターナショナル

世界各地の食材を組み合わせた料理

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2. 韓国風

フードトラックで始まった韓国風のタコスの人気に影響され、韓国焼肉風の味付けやコチュ

ジャンが人気を集めている。

3. ペルー

1に関連するが、ペルー料理は、日本、スペイン料理、中国料理、イタリア、アンデス地方

の料理の融合であり、人気を集めている。

4. キムチ

2に関連するが、多くのシェフがキムチを食材として使い始めている。

5. 饅頭、もち、フラットブレッド

普通のパンの代わりに世界各国の「パン」、中華饅頭、もち、中近東のフラットブレッドな

どを使ったサンドイッチ。

6. ヘルシーフード

マクロビやベジタリアン志向の料理

7. ホッとする家庭料理(Comfort food)

ミートローフ、ローストチキン、マカロニ・アンド・チーズといった昔ながらのアメリカ家

庭料理を現代風にアレンジしたもの

8. カジュアルコンセプト

9. ローカル

土地の食材を使ったもの。地産地消が高まっている。

10. 内臓およびあらゆる部位を使った料理

タン、豚の耳、砂肝、レバーなど、今までアメリカ人にはなじみのなかった部位を使った料

また、2012年に流行ると予測される食材・料理を以下に列挙する。

いわし、うに、ゆず、タマリンド、カルビ、中華饅頭、アレパ(南米の薄焼きパン)、ブルコギ、

オックステール、鴨、山羊肉、紫蘇、グリーンパパイヤ、海草、手作りのリコッタチーズとブラー

タチーズ、ハイビスカス、食用花、羊のばら肉

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5 カリフォルニア州およびロサンゼルス地域での規制および許認可

カリフォルニア州およびロサンゼルス地域でレストランを開業するには、当地における様々な規

制を遵守し、それに伴う許認可を取得する必要がある。食品安全基準に関するものから、建築・設

備、税金や雇用に関するものなど様々な項目がある。それぞれについてここで簡単に説明するが、

この情報は 2012 年 3月時点のものであり、随時変更する可能性があることに留意されたい。昨今の

環境問題、エネルギー問題の影響から、規制が年々厳しくなってきているのが実情である。またビ

ジネス形態や地域により、下記以外の規制があり、追加の許認可を取得する必要が生じる場合があ

る。さらに各種許認可の取得にかかる時間や金額なども異なるため、市役所や不動産業者、建築業

者、弁護士などに詳細を確認されたい。

1)地域の規制・法的制約

1.FDA(Food and Drug Administration)による食品基準(Food Code)

http://www.fda.gov/downloads/Food/FoodSafety/RetailFoodProtection/FoodCode/FoodCode2

009/UCM189448.pdf

食品産業に対する規制は、主に州レベルにおいて行われている。しかし、連邦省庁の一つである

米国厚生省(DHHS:Department of Health and Human Services)傘下の食品医薬品局(FDA:Food

and Drug Administration)では「食品基準(Food Code)」を定めており、州政府や地方政府など

は、この基準を元に、独自に食の安全に関する規則を作成することが求められている。食品基準で

は、外食企業で提供される食品の安全性を確保するために、調理に利用する食品や器具などに対す

る細かな条件が定められているほか、各州政府下の機関が外食企業を訪問して行う検査についてど

のような点を注目、評価すべきかといった基準についても幅広く触れられている。

2.カリフォルニア州の食品基準(California Retail Food Code)

http://www.cdph.ca.gov/services/Documents/fdbRFC.pdf

カリフォルニア州では、上述のFDAによる食品基準に遵守する内容のカリフォルニア州食品基準

(California Retail Food Code)が定められている。この中で州内企業の食品衛生や食品を扱う外

食産業が遵守すべき基準等が設定されており、例えば、以下のような細かな項目が含まれている。

o 調理人や従業員の管理について(就業中の手洗いや健康チェック、使い捨て手袋の着用義務

など)

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o 食品の安全について(料理を提供する際の温度や食品の保存など )

o 設備や調理器具の清掃について

o 水周り、配管、廃棄について

o 建物、施設について(トイレ、照明、害虫駆除など)

3.食品安全管理プログラム(Food Safety Program)

http://www.cdph.ca.gov/programs/Pages/FDB%20Food%20Safety%20Program.aspx

カリフォルニア州公衆衛生局(California Department of Public Health)では、食の安全性に

関する「Food Safety Program」を設けている。

4.ロサンゼルス郡独自のレストランの評価システム

ロサンゼルス郡では、レストラン、スーパーマーケット、ベーカリー、バーなどの小売食品施設

(retail food facility)に対する評価システムを設けている。これは、各事業者が郡の定める食

品衛生規準を遵守しているかどうかを検査するもので、A(100点から 90点)、B(89点から 80

点)、C(79点から 70 点)で評価される。各事業主はこの評価の付いたカードを店の入り口に掲げ

る義務がある。評価基準などの詳細は以下のウェブサイトを参照されたい。

o County of Los Angeles Public Health

http://www.lapublichealth.org/EH/AreasofInterest/food.htm

o 評価システムを導入している市のリスト

CITIES THAT HAVE ADOPTED THE RESTAURANT/MARKET GRADING SYSTEM

http://www.lapublichealth.org/EH/misc/cityord.htm?func=1&Food=food

2)レストラン開業に必要な許認可

1. 連邦納税者番号(FEDERAL TAX I.D. number:EIN number)

http://www.irs.gov/businesses/small/article/0,,id=97860,00.html

連邦税を払うために必要な番号。

https://sa2.www4.irs.gov/modiein/individual/index.jsp で無料申請できる。

2. カリフォルニア州法人税ライセンス(STATE FRANCHISE TAX LICENSE )

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State Franchise Tax Board

https://www.ftb.ca.gov/businesses/index.shtml?WT.mc_id=Global_Businesses_Tab

カリフォルニア州法人所得税(FRANCHISE TAX)を払うために必要なライセンス。法人の形態によ

り取得するライセンスが異なるので上記サイトを参照されたい。

3. ビジネス用名称の申請(Fictitious Business Name Statement)

http://egov.ocgov.com/ocgov/Clerk-Recorder%20-

%20Tom%20Daly/Services/Fictitious%20Business%20Name%20Filing

アメリカでビジネスを行うには、Fictitious Business Name(ビジネス用の名称)を申請しなけ

ればならない。County Clerk’s Office(ロサンゼルス郡の書記官事務所)で申請し、その後、新聞

に 5 週間の広告を出す。ビジネス用の銀行口座を開く場合などにも、Fictitious Business Name が

必要となる。

4. カリフォルニア州再販業者ライセンス( SELLERS PERMIT)

http://www.taxes.ca.gov/Sales_and_Use_Tax/SellersPermit.shtml

レストランは仕入れた材料を加工して客に供するため再販業者とみなされる。そのため、SELLERS

PERMIT が必要となる。レストランでは料理に消費税を課し、この徴収した額を州に報告して支払う

義務がある。このライセンスがあると仕入れの際に消費税を支払う必要がない。ライセンス取得は

無料。California State Board of Equalization(http://www.boe.ca.gov/info/reg.htm)が管轄

しており、直接オフィスで申請することもできる。

5. Health Department(レストラン開業許可)

http://www.lapublichealth.org/EH/AreasofInterest/food.htm

County of Los Angeles Public Health(保険局)へレストラン開業の申請をする。申請手続きの

詳細は、以下の PDFを参照されたい。

http://www.lapublichealth.org/eh/docs/Plan_Check/GuidelinesRetailConstructionRequire

ments.pdf

6. 建築許可(Zoning & Building Permits)

http://ladbs.org/LADBSWeb/public-home.jsf

店舗の改装をする場合は、市役所(City Hall)の Building and Safety Department に申請し、

建築許可を取得しなければならない。

7. ビジネス・ライセンス(CITY/COUNTY BUSINESS LICENSE )

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http://lacounty.gov/wps/portal/!ut/p/c4/04_SB8K8xLLM9MSSzPy8xBz9CP0os3hTLxcPE3MfAwMD

cycXAyMfA49QY8cQQwNnI_2CbEdFADf4SHI!/

各市役所(City Hall)で申請する。ライセンスは毎年更新しなければならず、その度に更新料を

払う。ビジネス・ライセンス料は、市によって異なる。

8. EDD ナンバー(源泉徴収、失業保険および労災保険などに必要なライセンス番号)

http://www.edd.ca.gov/Payroll_Taxes/

雇用する場合に必要なナンバー:雇用開発局(Employment Development Dept:EDD)ではオンラ

インでビジネスオーナーに E-サービス(https://eddservices.edd.ca.gov/index.html)を提供し

ている。

9. アルコール・ライセンス(リカーライセンス)-ABC ライセンス

California Department of Alcoholic Beverage Control

http://www.abc.ca.gov/permits/permits.html

レストランでアルコール飲料を提供する場合、アルコール・ライセンス(リカーライセンス)が

必要となる。アルコール・ライセンス(通称 ABC ライセンス)には Beer Wine License と Hard

Liquor License の 2 種類がある。ライセンスは毎年更新しなければならず、その度に更新料を払う。

参考までに、カラバサスの 1,000スクウェアフィートのレストランの場合は、年間約 350ドルであ

る。

Beer Wine Licenseは、ビール、ワイン、アルコール度数 23度までの酒類を提供できるライセン

スで、それを超える酒類、たとえばスコッチ、バーボン、ジン、カクテルなども扱いたいという場

合は Hard Liquor License が必要となる。一般の日本食レストランの場合は、Beer Wineライセン

スで良い。ABC ライセンスは州が発行し、取得料は Beer Wine License の場合は 3,000~5,000 ドル、

Hard Liquor License の場合は地域によって異なるが、平均 2万 5,000ドル程度である。ただし申

請しても必ずしもライセンスを取得できるとは限らない。たとえば、過去 10年間に何らかの犯罪歴

があったり、刑事事件に巻き込まれたことがある場合は、個人で取得するのは困難である。特に

Hard Liquor License 取得は条件が厳しく面接がある。

レストランの近辺に教会や病院がある場合は取得できない。さらには、レストラン周辺の半径

600 feet(約 180m)以内に学校、公園、青尐年センター(nonprofit youth facilities)などが

ある場合は取得できない。なお、各地域で発行できるライセンスの数は州で決まっているため、ア

ルコールを提供するレストランが集中しているような場所ではライセンスの枠がいっぱいで、取得

できない可能性もある。地域の ABCライセンスの状況については、担当の役所に確認されたい。

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居抜きでレストランを購入したり、以前レストランだったところを借りる場合、ABC ライセンス

が付いていることがある。ただし、一年間以上営業していないと ABC ライセンスは取り消されるの

で、効力の有無を確認すること。期限切れの場合は再申請が必要である。

ABC ライセンスの申請を行った後、レストランに 30日間その旨を公示しなければならない。場合

によっては、新聞広告を出したり、レストランの周辺、半径 500feet(約 150m)以内の住民全員へ

ABC ライセンス申請を行っていることを通知する書面を郵送しなければならないこともある。

なお、ABCライセンスは店舗(場所)ごとに申請するものであり、店舗を別の場所に移した場合

は、再取得する必要がある。また、店舗展開する場合も、各店舗ごとに申請、取得する必要がある。

ABC ライセンスの取得手続きについては、以下のチャートを参照されたい。

http://www.abc.ca.gov/Legal/Application_Process/Application_Process_Chart.pdf

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10. 食品衛生管理者証明書(Food Protection Manager Certification)および Food Handlers

Card

① Food Protection Manager Certification

各レストランで最低1人は、Food Manager Certification(食品衛生管理者証明書)を取得

しなくてはならない。取得するためには、規定の教習を受けた後 にテストを受ける。教習およ

びテストについては以下のサイトを参照されたい。取得料は 150 ドル程度で 4 年毎に更新する。

ServSafe

http://www.servsafe.com/index.aspx

カリフォルニア・レストラン協会

http://www.calrest.org/go/cra/training/servsafec2ae-food-protection-manager-

certification/

② Food Handlers Card

Food Handlers Cardは、レストランで食品に触れる従業員全員が取得しなければならない。従

業員は雇用された日から 30日以内に取得すること。ServSafe

(http://www.foodhandlerusa.com/)で取得することが可能。取得料は 15ドル程度。

11. 商業用廃棄物処理許可(Industrial Waste Disposal Permit)

http://dpw.lacounty.gov/epd/industrial_waste/

レストランでは、油脂を含んだ水を廃棄しなければならないため、ロサンゼルス水道電気局

(Water & Power District:WPD)による規制がある。Dept. of Public Works, City of Los

Angeles で申請を行う。取得料は 1,200 ドル程度で、ライセンスは毎年更新しなければならず、そ

の度に更新料を払う。参考までに、カラバサスの 1,000 スクウェアフィートのレストランの場合は、

年間約 300ドルである。許可を得るためには、Grease Interceptor(油脂分離機)を下水用の配管

に設置しなければならない。油脂分離機は、取り付け工事費込みで 5,000 ドル程度から。レストラ

ンの規模により油脂分離機のサイズが異なるため、価格も様々である。

12. 建物使用許可証(Occupancy permit)

地域の消防署(The Fire Dept.)あるいは市役所で申請する。建物のスペースによって収容人数

が決まっているほか、レストランの場合、スペースによって置ける椅子の数なども規制されている。

13. 音楽の著作権使用料(Music License)

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http://www.restaurant.org/pdfs/legal/musiclicensing.pdf

レストランではバックグラウンド・ミュージックがかけられているが、ミュージックに使用料が

課せられることはあまり知られていない。著作権の侵害による罰金を取られる場合があるので注意

されたい。CD使用、ラジオのみなど条件によってライセンスの料金が異なる。

参考サイト: http://www.ascap.com/licensing/

http://www.bmi.com/

http://www.sesac.com/

(出典) Permit Place:

http://www.permitplace.com/news/permit-blog/permit-tips/item/172-top-ten-los-

angeles-permit-tips.html

City of Los Angeles Public Health:

http://www.lapublichealth.org/eh/docs/HowToOpenRestaurant.pdf

City of Santa Rosa:

http://ci.santa-

rosa.ca.us/departments/economicdev/downtown/Pages/RestGuide11.aspx

3)日本からの輸入食品に関する規制強化

最近、日本から輸入される食品に対する規制がさらに厳しくなってきている。

宇和島屋のセントラル・バイヤーである渡部氏によると、これは米国農務省(United State

Department of Agriculture:USDA)が、食品安全検査局(Food Safety and Inspection Service:

FSIS)を 2008 年に組織し、食肉や卵製品の安全性を確保するため、商品ラベルやパッケージを検査

する制度を 2009 年になって導入したのが理由だという。

この制度により、食肉エキスが含まれる遠くの日本食品を米国に輸入することができなくなり、

スープにチキン・エキスを使用している日本のインスタント・ラーメンもこの輸入規制の対象とな

った。

また、アメリカに生鮮食品(魚類のみ)を日本から輸出する場合、その製造工場は食品医薬品局

(Food and Drug Administration:FDA)が定めたハサップ(Hazard Analysis and Critical

Control Point:HACCP)という管理方式を導入し、その認可を受けるよう義務付けられている。認

可のない工場で製造加工された商品は、米国には輸出できないのである。このように、米国は輸入

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規制を毎年厳格化しているため、今後米国で入手できる日本食品はますます減尐していくことが予

想できる。

なお、従来の規制により、日本から米国に輸入できないままとなっている商品も多い。例えば、

日本でスポーツ飲料やダイエット食品に使用されている糖度の高いステビアは、米国への輸入は禁

止されている。また、食品色素でも天然の紅麹からできるシトリニンやクチナシ色素のカロテノイ

ド(これは黄色の色素で、サツマイモや栗の和菓子、たくあん、中華麺などに使用)を含む商品は

米国に輸入することはできない。しかし、これらの天然の添加物に関しては双方の国の厚生省で理

解が異なり、最近でも科学者による新たな見解や研究が発表されているため、米国でステビアの規

制がそろそろ解ける可能性もある。

食品輸入に関しての詳細は、下記のサイトを参照されたい。

・米国農務省(United State Department of Agriculture:USDA)

www.usda.gov

・食品安全検査局(Food Safety and Inspection Service:FSIS)

origin-www.fsis.usda.gov/Regulations_&_Policies/index.asp

・食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)

www.fda.gov

・ハサップ(Hazard Analysis and Critical Control Point:HACCP)

www.fda.gov/Food/FoodSafety/

・ステビアに関する FDAの見解(FDA Status for the Sweetener Stevia)

http://www.3fatchicks.com/fda-status-for-the-sweetener-stevia/

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6 関係公的機関の支援状況

米国で飲食業を開業するに当たって、以下のような公共機関から支援を受けることができる。

1)National Restaurant Association(全国レストラン協会)

http://www.restaurant.org/index.cfm

2)California Restaurant Association(カリフォルニア・レストラン協会)

http://www.calrest.org/go/CRA/

全国レストラン協会は、全米に 38万件以上の会員を持つ飲食業界の組合である。会員には、レス

トランをはじめ、食材などの供給業者、調理学校なども含まれる。全国レストラン協会では以下の

ような支援を行っている。

カリフォルニア・レストラン協会は、そのパートナーで、全米最古の飲食業界の組合であり、100

年以上の歴史がある。

レストラン協会は、以下のようなサービスを提供している。

雇用およびキャリアアップ(職業訓練)の支援

経営ノウハウの提供

ネットワーキングの構築

健康や栄養に関する教育

情報提供

保険(健康保険や労災補償など)

3) ロサンゼルス郡経済開発公社(LA County Economic Development Corporation)

http://www.laedc.org/

1981 年に創立。ロサンゼルスのビジネス発展のための支援を行う団体で、以下のようなサービス

を提供している。

政府と民間部門の橋渡し

事業設置の支援

財政と税金のインセンティブ

米国市場参入の支援

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経済情報リサーチ

4)CalGOLD

http://www.calgold.ca.gov/

レストラン開業に当たって必要な許認可についてのデータベースを提供しているサイト。

5)Small Business Administration(米国中小企業庁)

http://www.sba.gov/content/follow-these-steps-starting-business/

ビジネスを始める際の情報を提供するサイト。

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第2章 進出に当たって

1 進出に当たってのガイドライン

日本企業による米国外食産業への進出について検討する際には、今日の全国的な消費傾向から、

安価でサービスの早いカジュアル・レストランに人気が集まっている点に注目されたい。日本人が

考える「米国で人気のある日本食」といえば「寿司」というイメージが高いが、大都市圏の食への

好奇心が強い消費者層を除いては、まだまだ生魚への抵抗は強い。その点「てりやき」のような火

を通す料理に対する抵抗の方が低い。また、純粋な日本料理店は別としても、通常、日本料理を提

供するレストランは、日本料理だけでなく、韓国・タイ・中国などの他のアジア地域の料理も揃え

ていることが多い。日本食の人気が高い地域は、ニューヨーク州近郊およびカリフォルニア州であ

るが、その他の地域でも、アジア料理の一つとして、「寿司」「てりやき」「ラーメン」などが人

気の日本料理となっている。また、日本の酒・ビールも人気であり、日本食と日本酒・ビールのペ

アリングもよく見られる。

一方、日本食という点を前面に出さないのであれば、チェーン店への参入も一案と考えられる。

米国で最大のイタリア料理レストラン・チェーンであるオリーブ・ガーデンのように、ファミリ

ー・レストランの場合、イタリア料理・フランス料理などであっても、本場の味に近い料理を提供

するのではなく、米国人の好みに合わせた商品展開が望まれる。

進出の形態

日本企業が米国外食産業へ進出するに当たり、以下のような形態が考えられる。

1) 直営・個人店舗展開

2) フランチャイズ

3) 合弁

1) 直営・個人店舗展開

レストランを開業するのに一番良い方法と思われるのが、オーナーシェフ形式であることをイン

タビューの中から伺える。オーナーがシェフでない場合は、シェフを雇わねばならない。

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サービスの質や味の徹底を考えた場合、やはり直営店が最適であるが、自己資金が十分あるかど

うかが問題になる。

2) フランチャイズ

米国に進出するに当たり、日本の事業コンセプトが受け入れられるのか、米国の厳しい規制をク

リアできるのか、米国で実績がないハンディをどう克服するのか、米国に進出するための手順はど

うすればよいのかなど、疑問が多々あるであろう。その場合フランチャイズがひとつの選択肢にな

る。

米国のフランチャイズ市場は膨大で、すでに成功するビジネスとしてのコンセプトが確立してい

る。

フランチャイズとは、事業主の商標の使用権、あるいは事業主が開発したサービス、商品などを

販売する権利および営業上のノウハウなどをフランチャイズ・パッケージとして提供し、その商標

を使ってビジネスをする加盟店が事業主にロイヤルティを払うビジネスの形態である。

米国小売店で、12店舗のうち 1店舗はフランチャイズであり、8分間に 1店舗のフランチャイズ

がオープンしているといわれている。業界筋によれば、2012年はフランチャイズの成長がかなり見

込まれている。過去 3年間はフランチャイズの件数は減尐したが、今後 1.9%増加する見込みで、

売り上げは 5%増加の見込みである。フランチャイズを検討している場合は、専門のアドバイザー

への相談を推奨する。

以下にフランチャイズの利点をあげる。

米国フランチャイズ業界は変わらぬ安定成長を堅持

米国のメガ・フランチャイジーや投資家は、マルチ・ブランド化の方向に進みつつあり、

よいコンセプトを導入する

グローバルな見識と能力をもつ人材の確保が可能

オンラインによる海外加盟店のサポートが可能

企業のブランド力を強め、イメージの浸透を実現

従業員の国際意識とスキルが養成される

ファイナンスのインフラ確立

o 各種フランチャイズ・ファンドの活用

o 地元銀行によるフランチャイズ・ローンの活用

o 政府機関によるフランチャイズ・ローンの活用

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一方で、フランチャイズの本質を理解していないとトラブルや失敗を招く結果にもなるため、進

出の際は下記にあるようなデメリットをよく分析し、リスクも理解したうえで進める必要がある。

ノウハウや技術、機密情報が他に漏洩する恐れがある。

フランチャイズの契約は法に基づいて行われており、法の範囲を超えた契約内容の変更

を交渉する余地はない。

調達先や仕入先が限定されるため、品揃えや原材料が制限されやすい。

理念の共有が難しい加盟店や、質の良くない加盟店が加わる可能性があり、加盟店が不

祥事を起こすと、本部やその他の加盟店のイメージダウンにつながる。

現在、ロサンゼルス地域でフランチャイズを展開している日本食レストランとしては、米国牛角

(http://www.gyu-kaku.com)、米国吉野家(http://www.yoshinoyaamerica.com/index.php)があり、

その他に現在フランチャイズ化を計画中の日本食レストランも存在する。

3) 合弁(パートナーシップ)

米国では、合同会社(Limited Liability Company: LLC.)を設立することが多いが、株式会社

(Incorporation : Inc.)の場合もある。

現在、ロサンゼルスで成功しているレストランを展開しているのが Innovative Dining Group

(IDG)(http://www.innovativedining.com/)である。創立者は、Michael Hide Gardenas 氏。

IDG は、Sushi Roku(5店舗)、Katana(1 店舗)、Robata Bar(1店舗)などの日本食レストラン

をはじめ、7種の異なったコンセプトのレストランを展開している。

IDG は、Gardenas 氏が長年のレストラン業界での経験で培った人脈から、弁護士やスポーツ選手

などの投資家を募って設立した株式会社である。投資家のバックグラウンドにより、すでに様々な

客層が付いており、それが成功の一因であろう。

Gardenas 氏は IDG以外にもパートナーシップによる別会社を設立し、居酒屋スタイルの Aburiya

Toranoko(http://www.toranokola.com/about/)や Lazy Ox Canteen

(http://lazyoxcanteen.com/index.html)を展開している。

どのような形態で会社を設立にするにしても、レストラン業界に詳しい会計士および弁護士に相

談することが必要である。

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2 進出のためのフローチャート(基本的なステップ)および各項目の内容

(レストランを例として)

米国でレストランを開業するために

米国で飲食業を開業しようと考える事業者は、すでに日本でも飲食業にかかわっている場合が多

い。開業までのステップは日本とほぼ同じであるが、米国ならではの特殊な点もいくつかあるので

留意されたい。

許認可関係に必要以上に時間がかかること、地域や条件によってアルコールが出せない場合があ

ること、人材の質が一定していないことなどは米国で開業する場合の特徴ともいえる。また、厨房

機器はアメリカで業務用厨房機器として認可されているものを使用しなければならない。さらに、

メニューの設定においては、料理の量はもちろんのこと、味付けもアメリカ人向けに若干変えた方

がよい場合が多い。レストランの成功は、一にも二にも立地といわれるが、これは米国でも同じこ

とがいえる。

開業にかかる資金の目安(参考):

1 スクウェアフィート当り 250 ドル程度かかるが、許認可の取得や店の改装工事の遅れなどに備

え、余裕のある資金繰りを計画されたい。渡米してから開業までの生活費などの諸経費も考え、当

初の資金としては 30 万~50 万ドル程度必要ではないだろうか。

開業までにかかる期間の目安:

インスペクションだけでも 6 ヶ月から 1 年以上もかかることもあるため、開業には余裕のある計

画を立てることが必要である。

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1) 米国でレストランを開業するまでのステップ

ステップ1

出店計画

ステップ 2

ビザの取得

ステップ4

候補地域の選定

ステップ 5

不動産業者の選定

物件探し開始

ステップ 6

最終ビジネスプランの作成

ステップ 7

現地法人設立

ステップ 9

レストラン(ビジネス)購入

およびリース契約

ステップ 11

スタッフ募集

ステップ 10

改装

ステップ 12

開店

ステップ 8

許認可取得および

保険加入

ステップ 3

市場調査

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ステップ 1 出店計画

レストランを開業するに当たり、コンセプトを設定することは非常に重要である。ロサンゼルス

でレストランを展開し、成功している Chaya グループ(http://www.thechaya.com/)によると、コ

ンセプト作りがレストラン経営のすべての根幹であるとのこと。コンセプトによって候補地や店舗

の大きさ、あるいは経営戦略が変わってくるからである。

まず、ファミリー・レストランなのか、居酒屋なのか。またランチ主体なのか、ディナー主体な

のか、といったレストランの形態を決める。それにより客席数、メニュー、内装、対象とする客層

(地域によって対象人種も違ってくるため、それも考慮する必要あり)などが変わってくる。次の

ステップ 3 にある市場調査をする際にも、このビジネス計画があることにより確実な市場調査をす

ることが可能になる。

ステップ 2 ビザの取得

米国で起業するには、適切なビザ(Visa)の取得が前提となる。ビザにはいくつもの種類があり、

種類によっては専門知識が必要になるため、どのビザが最適であるか十分検討されたい。

B-1 (Business Visitor) Visa

米国での起業を視野にいれた場合、事業主が日本から米国のビジネスを管理する場合は、B1-ビ

ザを取得する。例えば、日本で外食ビジネスを展開している事業主が米国に支店を開設し、ビジネ

スの国際化を狙ったケースである。この場合:

① 事業主または社員が B1 ビザを取得し渡米。

② 現地で会社を設立。支店となるレストランの開業準備。

③ 現地でそのレストランを運営するマネジャーならびにスタッフを確保。(現地で就労ビザ

をすでに所有している人を採用)

④ 支店の開業。

⑤ その後、B-1ビザで定期的(例えば 1年のうちに 1~2度、1回の渡米に付き 1~2週間程

度)米国に来て支店の経営内容をチェック。

ただし、この場合、B-1ビザで渡航した者はアメリカに設立した会社から給与を受取ることはで

きない。

L-1 (Intercompany Transferees )Visa

L-1ビザは日本の会社が米国の関連会社に社員を派遣する場合に使われるビザで、「駐在員」ビ

ザとも呼ばれている。L-1ビザには(1)管理者・マネージャーに発行されるビザと、(2)専門知

識を持っている者に発行されるビザの 2 種類がある。日本ですでにビジネスをしている人(例えば、

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日本に株式会社を持っていて自分が経営に参加している場合)が自ら米国に来て新しいビジネスを

切り開く場合は L-1ビザが最適である。

E-2(Treaty Investors)Visa

米国で起業を目指す際に人気の高いのが Eビザであるが、取得が難しい。Eビザ申請にはサポ-

ティング・ドキュメントと呼ばれる書類の提出が義務づけられているが、効果的な書類を作成する

ためには、会計や財務といった高度なビジネス知識が要求される。このため、Eビザの申請は、ビ

ジネス移民弁護士に依頼しないと失敗するケースが多い。

レストランをオープンする場合に申請するのが E-2ビザであるが、このビザを取得するためには

「相当額」の投資をしなくてはならない。この「相当額」とはビジネスの内容により異なる。目安

としては、カリフォルニア州にレストランをオープンするために E-2 ビザを申請する場合は、最低

でも 20 万から 30 万ドルの投資が必要となる。

O-1(Persons with Extraordinal Ability)Visa

米国でレストラン経営を希望する日本人シェフはあとを絶たないが、問題になるのがビザである。

一般的なのが E-2 ビザであるが、オーナーシェフの場合、過去に「有名料理人」としてテレビや雑

誌に取り上げられたことがある場合なら、O-1ビザの申請ができる場合がある。この場合は 30 万ド

ルもの投資は必要ない。

ステップ 3 市場調査

計画を元にして市場調査を実施する。計画したコンセプトに沿った適切な地域を選定するために

は、いくつかの候補地を挙げ、その地域の商工会議所(Chamber of Commerce)で、レストラン業界

の状況、競合店の有無、対象とする客層についてなどの情報を入手するとよい。また、その地域の

レストランの客層を調べるには、駐車場に止めてある車の車種なども参考になる。さらには店舗面

積の妥当性、物件価格およびリース価格、市の許認可取得、その他を総合的に調査し、店舗のコン

セプトからメニュー、価格構成などを再検討する。

ステップ 4 候補地域の選定

アメリカは許認可取得に費用と時間がかかる。特にアルコール・ライセンスは、新規の取得が困

難なために、アルコール・ライセンス付きの居抜きのレストランを購入あるいはリースすることは

非常に有益である。居ぬきの場合、他の許認可が付いていたり、厨房機器あるいは配管および電気

関係が揃っている場合が多く、時間と費用の節約にもなる。しかしながら、よい物件は市場に出る

とすぐに買い手がついてしまうため、情報ネットワークの有無が勝負になる。さらに、地域によっ

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て許可の状況が違ってくることも念頭に入れるべきである。ビバリーヒルズやサンタモニカは客層

がよく、レストラン開業には魅力的であるが、これらの市で許可を得るのは大変困難である。

地域別のリース料の例

レストランを出すにあたり、考えられるのはショッピング・モールと、路面店/ストリップ・モ

ールの 2種類である。1ヶ月のリース料は月の売り上げの 6%未満に抑えるのが望ましい。路面店の

場合、道が一本違っただけでもかなり料金が違うことがあるため、実際に自分で歩き市場調査をす

ることが必要である。

①ショッピング・モール

長所:ロサンゼルスは車社会のため、駐車場はレストランには不可欠であるが、ショッピ

ング・モールの場合、その点を心配する必要がない。

短所:内装などに規制があるため個性が出しにくい。Common Area Fee(共益費)が高い。

下記は、LoopNet.com(http://www.loopnet.com/California/Los-Angeles_Restaurants-For-

Lease/)からのリース料の参考例である。

リース料金は 1 スクウェアフィート(約 0.1㎡)当りの年間リース料

ロサンゼルスの大型ショッピング・モール(Regional Mall)

ロサンゼルス西部: Beverly Center、 Westfield Century City Mall、The Grove

サンフェルナンドバレー: Westfield Topanga Plaza、Westfield Fashion Square

サウスベイ: Del Amo Fashion Center

オレンジ郡: South Coast Plaza、Spectrum など

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ショッピング・モールへの出店は、交渉ベースであるためリース料の情報は未公開である。出店

を希望する際は、モールを経営する会社へ、レストランのコンセプト、事業内容、ビジネスプラン

などを提出し打診する。モール側が、モールのニーズに合っていると判断すれば、初めて交渉の土

俵に乗ることができる。

リース形態にはパーマネント・リース(3年、5年、10 年というように)とテンポラリー・リー

スがある。テンポラリー・リースは仮のテナントを意味するが、空いていてテナントが決まらない

場所をモール側が安いリース料で貸し出すことである。この場合、内装工事などもあまり細かく指

示されないが、パーマネント・テナントが決まると、30~60日以内で立ち退くように通告される。

利点としては、テンポラリー・リースで力だめしができる。

大きなショッピング・モールなどは、交渉次第で改装工事の費用をかなり負担してくれる。たと

えば大手チェーンレストランがテナントになる場合、改装工事費用の半分ほどをショッピング・モ

ールが負担している場合もある。

元レストランだった場所をリースする場合は、改装工事費などはかからないが、サイズや場所な

ど 100%希望どおり行かない場合が多い。

ショッピング・モールで出店する場合も、レストラン開業の認可を取得するための検査

(Inspection)に時間がかかることを考慮したい。8~10 ヶ月かかる場合もある。

最近、大手のショッピング・モールを経営する Westfield は、“One Time Shopping”というコン

セプトでスーパーマーケットなどもテナントとして導入し、「買い物+映画+食料および日用品の

買い物 +食事」がすべてできるモールを検討している。

参考までであるが、South Coast Plaza や Century City など、平均年間売り上げが1スクウェア

フィート当り 1,000 ドル規模の「レベル A」のショッピング・モールにおけるフード・コートでは、

1店舗当りの年間リース料(NNN経費込み③)は約 2万ドル、平均年間売り上げが1スクウェアフ

ィートあたり 350 ドル程度の通常モールの場合は、8,000 ドルから 1 万 2,000 ドルである。

バレー地区にある Northridge Fashion Mall では、1,700 スクウェアフィートの店舗の年間リー

ス料(NNN経費込み)が、1スクウェアフィート当り 65ドル程度である。6ヶ月の工事期間はリ

ース料免除という交渉もできる。24時間のセキュリティが付いており、映画館が隣接、しかも膨大

なパーキングスペースがあるため、良い案件といえるのではないか。

③NNNとは、Triple Net Lease(トリプルネット・リース)のことで、店の固定資産税、建物保険、共益費が、リー

ス料に加算されるリース契約のこと。

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② 路面店/ストリップ・モール

長所:店の個性を出しやすい。

短所:駐車場を用意しなければならない。

ロサンゼルス市では、レストランの床面積 1,000 スクウェアフィート当り最低 4台の駐車スペー

スがなければ開業許可が下りない。しかしながらこの規制は各市によって異なるので、確認された

い。店舗をリースする際には、駐車スペースの有無を必ず確認すること。

参考として、ロサンゼルスのリース料の相場を紹介する。この相場はあくまでも参考資料である

ことを留意されたい。

ロサンゼルス西部(ビバリーヒルズ、サンタモニカ、ウェスト・ハリウッドなど)では、1スク

ウェアフィートは月額 3~5ドル程度だが、ビバリーヒルズの Golden Triangle と呼ばれる地域は

10ドル以上になる。

ロデオ・ドライブ(Rodeo Drive)は、1 スクウェアフィート当りの月額が 20~50ドルと、店舗

のコンディションやロケーションにより異なる。不景気とはいえ、ロデオ・ドライブでの家賃交渉

はなかなか厳しい。

サンタモニカのサードストリート・プロムナード(3rd St. Promenade)も1スクウェアフィート

あたり月額 10ドル以上になる。

下記は、LoopNet.com(http://www.loopnet.com/California/Los-Angeles_Restaurants-For-

Lease/)からのリース料の参考例である。

リース料金は 1 スクウェアフィート(約 0.1㎡)当たりの年間リース料

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現在ロサンゼルスで成功している日系レストランの立地状況について参考までに紹介する。

陣やラーメン(http://www.jinya-la.com/ramen/)

陣やラーメンはアメリカ人狙いの戦略である。既存レストラン立地を 10万ドル以内で入

手し、初期投資額を 20 万ドル以内に抑えている。

Gyu-Kaku(http://www.gyu-kaku.com/)

米国牛角は、一等地から 1ブロック外れたロケーションを意図的に選択し、レントの割合

を総売上の 9%以下に抑えている。ここも日本人マーケットをあまり意識していない。

新撰組(http://www.shinsengumigroup.com/)

新撰組は日本人市場に立地を求めながら成功もしている稀なケースである。ただし、ラー

メン、焼き鳥、惣菜や、ショッピング・モール内のフード・コート内のラーメンなど、多様

な業態で顧客数を確保しようとしている。

ステップ 5 不動産業者の選定

候補地域または飲食物件に強い不動産ブローカーを選定することが必要である。また良い物件は

市場に出る前に、借り手/買い手が決まるケースが多くあるので、その地域に強い不動産業者を見

つけるほか、飲食業者関係者(食材卸業者、その他)とのネットワーク作りは重要である。日本と

同様、飲食業で成功するためには、立地が大きな要因になるため非常に大切なステップである。

ステップ 6 最終ビジネスプランの作成

最終ビジネスプランを作成し、初期投資から回収までの計画を立てることが大切である。失敗す

るレストランのほとんどが、ビジネスプランのない事業者によるものであることからも、その重要

性がわかる。特に銀行融資を得る場合、ビジネスプランなしでは相手にされない。米国では許認可

の取得に時間がかかったり、改装工事に遅れが出たりすることは頻繁にあるため、余裕のある予算

確保が必要である。ステップ 6は大変重要である。

ステップ 7 現地法人設立

レストランを経営するための現地法人の登記を進める。日本に比べ、米国での現地法人の登記は

非常に簡単である。特にカリフォルニア法人の場合は資本金の指定もない。まず、レストランある

いは法人の名前(Fictitious Business Name)を決め、新聞広告を出し、郡の登録機関(County

Registrar-Recorder)に登録する。日本から駐在するスタッフがいる場合は、駐在員ビザを取得す

る必要もあるため、アメリカ進出を決定した時点から、登記の手続きを始めるとよい。

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ステップ 8 許認可取得および保険加入

レストラン開業に必要な許認可の取得に関する手続きを始める。

既存のレストランを購入した場合は、エスクロー(第三者委託)が終了した時点、つまり契約が

締結した時点から許認可の名義変更がされる。市によって法律が異なるが、営業を継続しなければ

許認可を取得し直す必要が出てくる場合もあるため、レストラン(ビジネス)を購入する前に再確

認しながら手続きを進める必要がある。

レストラン開業の許認可取得については以下のとおり。各許認可の内容については第一章の

「(5)カリフォルニア州およびロサンゼルス地域での規制および許認可、2)レストラン開業に

必要な許認可」のセクションを参照されたい。

1. ビジネス用名称の申請(Fictitious Business Name Statement)

County Clerk 's Office(ロサンゼルス郡の書記官事務所)

http://egov.ocgov.com/ocgov/Clerk-Recorder%20-

%20Tom%20Daly/Services/Fictitious%20Business%20Name%20Filing

2. 連邦納税者番号(Federal Tax I.D. Number:EIN Number)

http://www.irs.gov/businesses/small/article/0,,id=97860,00.html

3. カリフォルニア州法人税ライセンス(State Franchise Tax License)

State Franchise Tax Board

https://www.ftb.ca.gov/businesses/index.shtml?WT.mc_id=Global_Businesses_Tab

4. カリフォルニア州再販業者ライセンス(Sellers Permit)

http://www.boe.ca.gov/info/reg.htm

5. レストラン開業許可

Health Department

http://www.lapublichealth.org/EH/AreasofInterest/food.htm

County of Los Angeles Public Health

6. 建築許可(Zoning and Building Permit)

7. ビジネス・ライセンス(City/County Business License)

各市役所(City Hall)

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8. EDD ナンバー(失業保険および労災保険)

www.edd.ca.gov/taxrep/taxreg.htm

雇用開発局(Employment Development Dept. [EDD])

9. アルコール・ライセンス(リカー・ライセンス)-ABCライセンス

www.abc.ca.gov

California Department of Alcoholic Beverage Control

10. 食品衛生管理者証明書(Food Manager Certification)および食品取扱者カード(Food

Handlers Card)

11. 商業用廃棄物処理許可(Industrial Waste Disposal Permit)

http://dpw.lacounty.gov/epd/industrial_waste

12. 建物使用許可証(Occupancy Permit)

地域の消防署(The Fire Dept.)

13. 火災および損害賠償保険への加入

米国は訴訟社会であることは何度も記述しているが、自己防衛の意味も含め損害賠償保

険への加入は必要不可欠といえよう。保険専門エージェントや弁護士と相談し、適切な額

の保険へ加入すること。

ステップ 9 レストラン(ビジネス)購入およびリース契約

気に入ったレストラン物件が見つかったら、売り手にオファー(買申込み)をする。その際には、

猶予条件(Contingency)をつけて、調査(Due Diligence)を行う。調査により売り手との売買条

件のすべてに納得できたなら、エスクロー(第三者預託)を行う。米国では、ビジネスの購入に関

してはエスクローを介するのが普通である。エスクローの期間は通常 30日~60日である。

この期間中に、家主とのリース契約も別途行う。契約内容を確認し、リース料などの条件につい

て交渉する。リース契約を締結する前に、弁護士に契約書の約款に問題がないかどうかを確認して

もらうことは非常に重要である。また、飲食店を購入し、残りのリース契約を引継ぐ場合でも、リ

ース契約書の内容を確認することは重要である。

ステップ 10 改装

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物件探しに入ると同時に工事業者を選定する必要がある。米国は許認可が複雑なため、レストラ

ンやその地域に精通した業者を選定する必要がある。改装工事は、許認可の関係で予定より大幅に

遅れることが普通である。アメリカ人の工事事業者は期日に間に合わなくとも、日本人のように残

業してまで間に合わせるということをしないため(残業した場合は追加料金を要求される)、改装

には費用も時間も余裕のある計画が必要である。

改装の際の注意点

建築士と改装業者

改装を行う前に、市から建築許可を申請する必要があるが、その際には図面を提出しなけ

ればならないため、建築士に依頼する。米国は許認可問題が複雑なことは前述したが、レス

トラン関連に精通した建築士は規制や法律に詳しく、さらに質の良い改装業者へのツテもあ

るため、その後の工程がスムーズに進む。尐々費用が高くても、質の良い建築士と改装業者

を選択することが、工事の遅れなどの問題を回避し早期開店につながる。

営業許可

改装中には、Building Safety Department(建築局)、Fire Department(消防署) 、

Health Department(保険局)、Department of Water & Power(水道局)から何回か検査

(Inspection)がある。すべての検査に合格すると営業許可が下りるが、検査(Inspection)

には 6ヶ月から1年以上かかる場合があることを念頭に入れておかれたい。

上下水道

レストランでは、油脂を含んだ水を廃棄しなければならないため、Oil Trap あるいは

Grease Interceptorと呼ばれる油脂分離機を設置しなければならない。

トイレの問題

レストランにはトイレが 2つ(男性用、女性用各1つずつ)必要であるが、小売店だった

ような場所を借りる場合はトイレが 1つしかないため増設する必要がある。またハンディキ

ャップ用の規制(ADA regulation)に合わせ車椅子が 360度回転しても壁にぶつからないだ

けのスペースを確保しなければならない。

厨房機器

厨房機器に関しては、アメリカで業務用として認められているもののみ使用可能である。

保険所からの指示に従うことが絶対条件であるため、改装と機材設置には十分な配慮が必要

である。厨房機器は中古を購入したり、リースすることもできるため、開店費用削減のため

にも十分な市場調査が必要である。

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改装費用

設計デザインと工事に必要な費用の目安は、1スクウェアフィート(約 0.1 ㎡)につき、小

売店舗で 100 ドル、レストランの場合は厨房設備(機械は別)を入れて、150~180 ド ル、高

級店になると 250ドル程度必要になる。

費用の支払い

改装業者への支払いはスケジュールをつくり、段階に分けて支払うこと。改装業者が契約

時に多額の手付金を要求することは違法である。手付金のリミットは、工事費用総額の 10%

あるいは 1,000 ドルのどちらか低い方と決められている。契約後、改装業者は工事の進行状

況に合わせ、段階的に適切な額の支払い請求を行える。

ステップ 11 スタッフ募集

開店日時がある程度決まった時点で、スタッフの募集を開始する。米国は雇用規制が非常に厳し

い国であり、雇用体系も日本とは異なるので人材雇用の際は、十分な注意が必要である。

レストランには作る人(Chef)、サービスを提供する人、経営を見る人(Manager)、販売促進を

する人(Marketing)、経理担当のチームワークが大切である。オーナーの掲げた目標に一緒に向か

うことのできる信頼の置けるスタッフを持つことが非常に重要である。また、ウェイトレスやウェ

イターなど直接サービスに当たるスタッフも経験豊かで質の良い人材を雇用することは、レストラ

ン成功の大きな鍵となる。

雇用の際の注意点

雇用差別

米国では、年齢、性別、人種を採用基準にしてはいけない。米国ではマイノリティ(尐数

民族のことで、特にアフリカ系アメリカ人、アジア系、中南米系などがマイノリティと呼ば

れる)の不採用については慎重に扱う必要がある。

時間給 VS.月給および年給

レストランでは、サービス・スタッフは時間給で雇用する。この場合、1 日 8時間を越え

る残業には、1時間当り規定時間給の 1.5 倍、12 時間を越えると 2倍を支払わなくてはなら

ない。シェフやマネージャーを雇用する場合は、月給あるいは年給契約が多い。通常このよ

うな契約では就業時間の制限がないため残業代は発生しないが、その点はきちんと契約書に

明記する必要がある。契約書での明記を怠ったために、訴訟を起こされ、多額の賠償金を支

払ったレストランは実際に数多くある。

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チップ

米国では、ウェイトレスやウェイターなどのサービス・スタッフは、Minimum Wage(最低

賃金)で雇用されるため、彼らにとってチップは非常に大きな収入源である。日本人経営の

レストランでは、チップをまとめ、サービス・スタッフに均等に配布するところが多いが、

これがサービス・スタッフの不満となり、店でのサービス低下につながる可能性がある。さ

らには、オーナーがチップの分け前を取るという話を耳にすることがあるが、これは違法で

ある。

違法移民の雇用

レストランには、バスボーイ(テーブルを片付けたり、皿洗いなどをする下働きの従

業員)が必要である。バスボーイは低賃金であるため、合法的に働くことのできない移民

を雇用しているレストランは非常に多い。また、日本食レストランなどで、留学生を安易

にしかも現金払いで雇用する場合が多く見られるが、これは違法行為であり、発覚した場

合、雇用側も営業停止などの罰則があるので注意したい。

人材不足

レストランの経営にかかわるマネージャーなどを現地で採用するのは年々困難になってい

る。その理由としては、年々ビザの取得が難しくなっているため、合法的に働ける人材が尐

なくなっていること、日本語ができるアメリカ人の数が減っていることなどが上げられる。

ロサンゼルスには日系の人材派遣会社が何社かあるので、そういった専門サービスを利用す

ることもひとつの手段である。

給与以外にかかるコスト

必須コスト

o 雇用主負担ソーシャルセキュリティ税

(Employer portion-matching-of Social Security Tax)

o 雇用主負担メディケア税(Employer portion-matching-of Medicare Tax)

o 州失業税(State Unemployment Tax)

o 連邦失業税(Federal Unemployment Tax)

o 従業員対象労災(Workers Compensation Insurance)

必須コストの雇用主負担割合は、各年の税法で変わるため専門知識が必要となる。

福利厚生充実のための任意コスト

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o 従業員対象保険の雇用主負担額

米国には国民健康保険制度がないため、福利厚生の一環として任意での提供になる。

米国の健康保険は、民間保険会社と契約をするが、Health(医療)、Dental(歯科

治療用)、Vision(眼科治療用)と分かれており、内容も掛け金も様々なので、専

門家(保険エージェント)に相談することを推奨する。米国の医療費は高く、また

個人で健康保険に加入することも掛け金が高いことから非常に困難であるため、良

質な保険を低価格で提供(企業負担)できる企業は、良い人材を集めやすい。

o 有給休暇(Paid Vacation, Paid Sick Days)

o 従業員ペンションプランあるいは 401Kプラン(個人年金プラン)

ステップ 12 開店

店の運営の基本は、日本で行っているものとあまり違いはない 。1章の「概要・構造」の項目で

も触れたが、口コミサイトなどを利用した新たなマーケティング方法があることも念頭に置かれた

い。

2)必要な専門サービスについて

米国でレストランを開業するには様々な専門知識とサービスが必要となる。以下を参考に、適切

なパートナーを選択されたい。

弁護士

法人設立やビザ関連、雇用関係、および保険など様々な面で弁護士が必要となる。それぞ

れ専門分野があるため、弁護士は用途により使い分けると良い。英語でのコミュニケーショ

ンに不慣れな場合には、言葉の行き違いを避けるためにも、日本語のわかる弁護士を雇うこ

とを推奨する。

会計士

日本の税法や会計法にも精通している公認会計士を雇うことを推奨する。

不動産

レストラン業界や地域に詳しい不動産業者を選択すること。

スタッフ(人材)

ロサンゼルスには日系の人材派遣会社もあるため、日本人スタッフが必要な場合は、利用

されたい。

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建築設計士・改装業者

米国は規制など非常に厳しく、また市によっても独自の規定がある場合がある。特にサン

タモニカやビバリーヒルズなどは外装などにも特別な規定があるため、その地域の事情に精

通している業者を選択することが重要である。

機材

レストラン用の機材専門店がロサンゼルスにはいくつかあるので、個別に調査されたい。

食材仕入れ先

ロサンゼルスには日本食材スーパーや輸入卸し業者がある。輸入卸し業者の場合、それぞ

れ得意分野があるため、適切な業者を選択することが望ましい。

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3 進出企業ケーススタディ

米国でビジネスを成功させている方々の例を紹介する。ロサンゼルスでレストランを何店舗も展

開している Chaya Group、裸一貫で渡米し成功した吉田ソース、牛丼の吉野家など、失敗談、成功

談も含めそれぞれの経験からは学ぶべきことが多々ある。是非参考にされたい。

1)ケーススタディ1

直営店としての店舗展開・・・・・・CHAYA Brasserie http://www.thechaya.com/

現在 Chaya Group(http://www.thechaya.com/)は、カリフォルニアに 6店舗のレストランを

有する。今回、CHAYA の角田雄大社長と泉アドバイザーにインタビューする機会を得た。

CHAYA の足跡

1981 年 La Petite CHAYA を Los Feliz にオープン・・・・1985 年に閉鎖

1984 年 CHAYA Brasserie を West Hollywood にオープン

1990 年 CHAYA Venice を Venice Beach にオープン

1990 年 CHAYA Dinerを West Hollywood にオープン・・・・1992 年に閉鎖

2000 年 CHAYA Brasserie を San Francisco にオープン

2005 年 M Café(マクロビオテック)を Melrose にオープン

2008 年 M Cafe を Culver City にオープン・・・・2010 年に閉鎖

2009 年 CHAYA Downtown を ロサンゼルスのダウンタウンにオープン

M Café を Beverly Hills にオープン

これまでの 30 年間で 6店舗を確立し、すべて順調に来たように見えるが、この間に CHAYA を 2店

舗と M Café を 1 店舗閉めている。理由は売り上げが十分ではなかったことである。なお、閉めた一

店舗である M Cafe(Culver City)では、レストランのみならず Whole Foods 12店舗にも卸してい

た。アメリカでは Whole Foods などへ卸売りをする場合には、衛生局から特殊ライセンスを取得す

る必要があり、さらにキッチンも衛生局の定めた規制に準じて改装しなければならない。そのため

当時工事費に 20 万ドルという費用をかけなければならなかった。それでは採算がとれないことと判

断し閉店にいたった。

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米国進出のきっかけ

CHAYA 創設者である角田雄二会長は葉山の日影茶屋の社長であったが、新天地を求め渡米を決意

した。角田会長の右腕であるアドバイザーの泉氏を下調べのためにアメリカへ送り、その 1年後に

角田会長夫妻が渡米したが、当時角田会長も泉氏も英語はまったく話せず、泉氏の場合は、アメリ

カが初めてという状態であった。泉氏は下調べのために一人で渡米したものの、ロサンゼルスでの

レストラン開店に関しては日本での知識、経験は役に立たなかった。各許認可の取得の大変さ、内

装などの工事にあまりにも時間がかかる現状にも驚いた。

1980 年に Los Felizに角田会長の弟でサザビーリーグの会長である鈴木陸三氏と共に Eugene &

Associates, Inc. を設立し、1981年に CHAYA1号店をオープンし、現在に至る

コンセプトの設定

レストランを開業する際に一番大切なのがコンセプトを決めることである。そしてそのコンセプ

トがローカルのお客様に受け入れられるのか、競合の有無および状況などについて、きちんとマー

ケティングを行うことが必要である。コンセプトが定まらなければ、場所選びは難しい。

場所の選択

自分たちで歩き回り勉強しているうちに、人の流れが見えてきた。場所によって客層が違うため

リサーチを十分に行い、コンセプトに沿った場所や店の広さを選択することが必要である。場所の

選択には不動産業者を使うが、情報を豊富に持っている業者の選択が重要である。角田会長には、

30年以上も付き合いのある不動産エージェントがおり、CHAYAの客層も理解しているため、良い物

件が出ると紹介してくれる。

改装工事

現地の設計士および施工業者を雇った方がいい。現地の法律や規制に精通し、市の要人ともネッ

トワークがあるため、工事やインスペクションが円滑に進む。計画から工事終了までの期間は、地

域、店舗の大きさによりまちまちで一概には言えないが、計画よりは大幅に遅れる可能性が大きい

ので、資金繰りも含め考慮すべきである。また、既存のレストランの購入も大いに考慮すべきであ

る。

大手日本企業は自分たちの施工業者を日本から連れてくることが多い。一方、中小企業は現地ア

メリカ人の施工業者は高いという理由で現地の安い日本人の施工業者を使う。(上記に挙げたよう

な)現地の事情に精通していないため、結局余計な経費がどんどん割り増しになり資金繰りがうま

くいかなくなる。

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店舗をオープンする時には、必ず現地の規定や法律をよくわかっている設計士やスペシャリスト

を雇用すること。特にビバリーヒルズ、サンタモニカには建築や外装などの特別規定があるため店

舗を開く際には注意をするべきである。

メニュー

コンセプトにあったメニュー作りが大切である。レストランで重要なことは味だけではなく、雰

囲気やサービスがいかに料理を盛り上げるかということである。

CHAYA では、創設時からいる立部重文総料理長が全店舗のメニューを監督している。立部総料理

長は葉山の日影茶屋経営の「ラ・マーレ・ド・チャヤ」で経験を積み、CHAYA 創設に携わった。

料理の量は日本より増やすほうが望ましい。

ロサンゼルスでの顧客の要望は多岐にわたるので、レストランのアイデンティティを失わないよ

うに対応することが難しい。例えばソース、つけ合せの変更などがリクエストされる。また、要望

に対して柔軟に対応してくれるシェフが「良いシェフ」と思われる傾向にある。

今後米国進出する企業へのアドバイス

米国では、計画が予定どおりに進まず、こんなはずではなかったということが日常茶飯事で

ある。

米国の従業員は多様性があるので、人事は非常に大切であり、各人の長所を引き出すように

することが重要である。

レストランはチームである。マネージャー、シェフ、マーケティング、経理が、がっちりチ

ームワークを組み、オーナーの掲げた目標に向かわなければレストランは成功しない。よい

人材を得ることが大切である。

1日の売り上げがどのくらいか予想すること。そこからレント料の目安が立ってくる。レン

ト料は売り上げの 5%位がベストであるが、高くても 2日分の売り上げ(月の総売り上げの

6.7%)以上にならないよう設定することが望ましい。

コスト(材料費+飲料費)+直接人件費(給料+税金+保険などの福利厚生費:Benefit)

を総売り上げの 60%以下に抑えること。

明確なコンセプト、徹底的な現地調査、適切なスタッフの獲得が CHAYAの成功の鍵ではないだろう

か。

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2)ケーススタディ 2

① 直営店からフランチャイズへ・・・・・・米国吉野家

http://www.yoshinoyaamerica.com/index.php

米国吉野家の足跡

1977 年 Yoshinoya West, Inc.を米国に設立

1979 年 Yoshinoya 第1号店がロサンゼルスにオープン

2001 年 Yoshinoya New York Inc.を設立

2002 年 Yoshinoya ニューヨーク店がオープン

2006 年 フランチャイズをアメリカで展開開始

2008 年 Yoshinoya America, Inc.、Yoshinoya Franchise of North America, Inc.

Yoshinoya West, Inc.の3社が合併し、Yoshinoya America, Inc.に統合される

吉野家は 1979 年にロサンゼルスにおいて米国での第1号店をオープンした。当初は直営店として

展開していたが、2006 年にフランチャイズ制を導入し、カリフォルニア州はもとより、ニューヨー

ク、アリゾナ州、ラスベガスへと店舗が拡大している。

メニュー構成は、牛丼(Beef Bowl)が主体ではあるが、鶏肉を使用した鶏丼(Chicken Bowl)、

牛肉と鶏肉の両方を乗せたコンボ(Combo Bowl)、野菜にたれをかけた野菜丼(Vegetables Bowl)

などのほか、スープやサラダ、デザートまで豊富に揃え、アメリカ人を意識したメニュー構成とな

っている。

② 直営店からフランチャイズへ・・・・・・米国牛角

http://www.gyu-kaku.com/main.htm

牛角は株式会社 レインズインターナショナル(REINS INTERNATIONAL INC.)が展開するチェーン

店である。牛角は 2001 年7月に米国進出し、1号店をロサンゼルスにオープン、そして 2001 年 8

月 、レインズインターナショナル USA(Reins International USA)を設立した。

米国進出に際し、当初は直営で店舗展開を行っていたが、フランチャイズ制の導入に切り替えた。

レインズインターナショナル USAは、現在カリフォルニア州に 10 店舗、ニューヨークに3店舗、

ハワイに3店舗、シカゴに1店舗の牛角レストランを展開している。折からの日本食ブームに加え、

テーブルで肉を焼くスタイルが好評を博し、全店が黒字である。

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2007 年には、全米ネットワークのレストラン業界誌である「Nation’s Restaurant News」から

「Hot Concept Award」を受賞した。この賞は、明確なコンセプトを持つ成長株のレストランのビジ

ネス戦略および起業家精神を称える賞で、毎年、全米から 6つのレストランが Nations Restaurant

News の編集者によって選ばれる。

3)ケーススタディ 3

食品会社設立成功例・・・・・・ヨシダソース(http://www.mryoshidas.com/)

ヨシダグループの創設者/CEO である吉田潤喜氏は 19 歳の時に、たった 50 0 ドルを手に

して一人で渡米した。波乱万丈のアメリカ生活を経験の末、1982 年に最初の会社、吉田食品を

設立し、自家製秘伝のタレをベースにしたヨシダソース(正式名称:ヨシダグルメのたれ®)の生産

販売を開始した。吉田食品は現在では、18 社からなる強力な複合企業、ヨシダグループに

成長した。2000 年、吉田氏はアメリカの大手食品会社のハインツ社(Heinz USA)と提携

した。

吉田潤喜氏の経営ポリシー

見栄を張らない

部下の嫌がることをしない

会社に嘘をつかない

数回の破産の危機に陥った理由

最初の破産の危機を迎えた理由は、売り上げは伸びても当時は小企業であったため、ソース

の原料であるしょうゆや砂糖を小売値でしか買い入れることができなかったため、原価が嵩

んでしまった。

2回目の破産の危機は、生産設備拡張に伴う設備投資が予想以上だったことと、公私共に見

栄を張り、ラジオでコマーシャルを流し始めたり、ベンツなど高級車を乗り回したりと生活

の程度を上げたりしたことで、出費が収入を超えてしまった。

成功の秘訣

昔教えていた空手教室の生徒に、弁護士や警察関係者、ビジネスマンたちがいたことでいろ

いろなコネクションができたことが、ビジネスに大いに役立った。

ヨシダソースは照り焼き味のソースであるが、あえて商品名に「テリヤキ」を入れなかった。

その理由は、「テリヤキ」と名づけると「日本食」というイメージが付いてしまい、一時的

には売れても、将来的に限界があると考えたからである。吉田氏は、あくまでもアメリカの

バーベキューソース市場で勝負することを選んだ。

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自分を良く知り、自分の弱点をカバーしてくれる人材を周りに配置すること。

アメリカは訴訟社会であるため、契約をしっかりすること。契約の段階でしっかりしていれ

ば、訴訟に巻き込まれる心配はない。そのためには信頼できる弁護士は不可欠である。

「なぜ、自分はビジネスをするのか」をよく考える。単に自分の欲を満たすためにビジネスを

しようという人間は、窮地を乗り越える強さがない。起業すればピンチは必ず訪れる。それ

を乗り越えられるのはエゴをコントロールでき、またそれを超えた使命感を持っている人物

だけである。

(出典)吉田潤喜著「無一文から億万長者となりアメリカンドリームをかなえたヨシダソース

創業者ビジネス 7つの法則」「人生も商売も、出る杭打たれてなんぼやで。」

ヨシダグループウェブサイト http://www.yoshidagroup.com/index

ヨシダソースウェブサイト

http://www.yoshidasauce.jp/yoshidasauce/story.html#12

4)ケーススタディ4

日本から米国へ進出し、失敗したレストランの例

大きな期待を抱いて、米国へ進出するレストランは後を絶たない。しかし、成功するのは一握り

で、失敗して撤退していくレストランのほうが多いのは事実である。ここにインタビューにより伺

った失敗例を挙げる。

豆腐料理店

日本で有名な豆腐会席の店が米国へ進出した。資金は潤沢にあり、ビバリーヒルズの一等地に広

い店舗を借りたが、半年で撤退した。

これは、日本で成功しているから米国でもどうにかなるだろうと進出して失敗した例である。こ

のような例が一番多い。米国市場でのリサーチを十分にしていなかったこと、店舗が広すぎたこと

などが失敗の要因である。

日本で人気がある料理でもアメリカ人に受け入れられるとは限らない。リサーチを行い、アメリ

カ人の好みにあった料理を提供しないと上手くいかない。レストランをオープンする地域によって、

コンセプトを変えたり、メニュー構成を変えているレストランは他店舗展開しても成功している。

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この「アメリカ人の好みに合わせる」ということは非常に重要である。ジョージア州に「Seasons

of Japan」というレストランがある。このレストランでは、「レストランで白飯にしょうゆをかけ

て食す」という、いわば日本のタブーを逆手に取り、しょうゆベースのグレービーを白飯にかけた

料理で大成功している。「Seasons of Japan」があるジョージア州のサバンナはアフリカ系アメリ

カ人が多く、アジア人などほとんどいない町であるにもかかわらず、このレストランが大成功して

いるのは、日本食をその土地の人の好みに合わせてアレンジしているからである。

ラーメン店

ラーメンは、ロサンゼルスでブームとなっているが、日本で大人気のラーメン店が米国に進出し

て失敗する例は多々ある。

日本の味を米国で忠実に実現することは容易ではない。水の違いや材料の違いが料理の味を大き

く左右するからである。米国で成功している店はオープン前に、現地で何度も試作を重ね準備に時

間をかけている。

訴訟によって店の存続問題が起きている例

米国は訴訟の国であり、日本ではありえないような訴訟が起こる国である。成功しているにもか

かわらず、ちょっとしたミスでビジネスが危なくなることがある。

マクドナルドのドライブスルーで買ったコーヒーをこぼし、火傷をした客が起こした訴訟問題は

有名な話であるが、同様の訴訟を起こされている日本のレストランがある。この店ではウェイトレ

スがラーメンをこぼし、客に火傷をさせてしまった。この客はモデルをしていたため、今後スカー

トがはけないという理由で、多額の損害賠償金を要求されており、この訴訟問題が店の存続問題に

も発展している。

このような事件は珍しい話ではない。これ以外にも、食中毒、セクハラなど訴訟に発展する問題

は様々ある。いずれも従業員の教育を徹底することはもちろんであるが、保険に加入することと信

頼できる弁護士を持つことは米国でビジネスをする際には非常に重要である。

5)ケーススタディ5

外食産業以外の進出企業ケーススタディ

① 米国での美容院開業・・・・・・・・・・Beauty Salon Y

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サービス産業の代表としてロサンゼルスに美容院を開く Y氏にインタビューを行った。

Y 氏は、日本での美容師の資格を取得し、美容院で仕事をした経験をもつ。渡米後、美容学校へ

通い、美容師(cosmetologist)ライセンスを取得した後、美容院で働き、その後独立して美容院をオ

ープンした。

ここでは、ロサンゼルスで美容院を開業するための注意点や美容院開業に特化した要件を紹介す

る。

美容師ライセンスの取得

美容院を開業するには、カリフォルニア州の California State Board of Cosmetology で美容師

ライセンスを取得する必要がある。ライセンスを取得するには、美容学校で 1,600 時間の講義を受

けた上で、ペーパーテストおよび実技テストを受けなければならない。この美容師のライセンスに

は、エステティシャン、ネイルアーティストの資格も含まれている。

日本で資格を持っている場合は、授業時間の免除などがある場合があるので、詳細は下記に確認

されたい。

California State Board of Barbering and Cosmetology

http://www.barbercosmo.ca.gov/

P.O. Box 944226

Sacramento, CA 94244-2260

1-800-952-5210 (phone) 916-575-7281 (fax)

Sellers Permit(カリフォルニア州再販業者ライセンス)

http://www.taxes.ca.gov/Sales_and_Use_Tax/SellersPermit.shtml

美容院でシャンプーなどを販売する場合に必要なライセンス

損害賠償保険の加入

サービス業であるため、やはり客からの訴訟などに備え、損害賠償保険に加入する必要がある。

アメリカ人とパートナーを組み開業する場合は、パートナーが何らかの理由で途中でやめたり、仕

事に来ない、金銭上のトラブルなどのリスクも高いため、賠償責任保障はなるべく高くすることを

推奨する。保険の加入の際も、必ず弁護士を通して契約書を確認すること。

リースの際に注意するべきこと

開業前に顧客がすでについている場合は、それほど重要ではないが、やはりロケーションの

よいところを選ぶ。

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レストランに比べ規制は尐ないが、都市計画法(Zoning Restrictions)によって規制があ

るため、リースの際には、その場所でビジネスができるか確認する。

建築基準(Building Code)により、ビル内のテナントが使用できる電気量、水道量などに

ついて基準があるため、この点もリースの際にしっかり確認すること。

以前、ビジネスオフィスだったところをリースする場合は、水道工事および電気増量工事を

しなければならない。工事費は場所や状況によって異なるため、あくまでも目安であるが、

500スクウェアフィートほどで電気工事と水道工事で 8,000~1万ドル程度。

リースに光熱費や水代が含まれている場合もあるので、この点を確認なする。また、たとえ

ば水道管や給湯器(Water Heater)などにトラブルが起こった時などの修理についての責任

負担は家主なのかテナントなのかもきちんと確認すること。

リース契約書の内容は弁護士に確認してもらうこと。

美容院をオープンするのに必要な設備

シャンプー台とヘアカット台(椅子と鏡)を最低 1台づつ

消毒用容器

殺菌装置

ふたのあるゴミ箱

清潔なタオルを入れるキャビネット

待合室

待合室に置く椅子

ビジネスライセンスおよび美容師ライセンスを壁に掲示

開業する際に必要な資金

リース料は場所により異なるが、West Los Angeles近辺での目安は 1スクウェアフィート当り 1

ヶ月 2.5~3ドル程度。美容師一人のサロンなら、300~500スクウェアフィートのスペースで十分

ではないだろうか。1,000~2,000 スクウェアフィートとなると結構大規模のサロンになる。

改装費は状況によるが、中間層の 300スクウェフィートのサロンでも、最低 1万ドルはかかる。

高級サロンを開業するのなら、最低でも 5 万ドル位はかかるのではないだろうか。

設備の目安としては、ヘアカット用の椅子が 350~500 ドル、シャンプー台(椅子とシンク)が

600 ドル程度。

美容院での雇用

美容院を開業し拡張を計画するのなら、多角的なサービス提供のため美容師やネイルアーティス

トを雇うことになるであろう。実際、米国の美容院では、ヘアカット、ヘアカラー(ヘアカラーの

専門家による染髪)、ネイル、エステなどトータルな美容サービスを提供している。

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米国の美容院での雇用の形態は日本とは異なる。経験がある美容師、ネイルアーティスト、エス

テティシャンは、ほとんどがステーション制での契約である。ステーション制とは、美容院オーナ

ーが美容院の中の場所(ステーション)を月極のレント料で貸し出し、美容師が個人営業をする形

である。この場合、美容師が使用するシャンプー、リンス(米国ではリンスとは言わずコンディシ

ョナーと言う)、毛染め剤、パーマ液などすべて美容師の個人負担となる。ネイルアーティストの

場合もほぼ同じ条件である。

契約時には、後々、金銭問題が生じないように、きちんとした契約書を作成することが必要であ

る。

契約書には以下のような内容を盛り込む。

レント料に含まれるもの(たとえば水道、電気、タオルなど)

レント料に含まれないもの(シャンプーなどのサプライ)

美容院の定休日、あるいは閉店時間後にも美容師が自分のスケジュールで顧客をとれるのか

どうか

飛び込み客の扱い

ステーション料は場所によって異なるが、West Los Angeles 近辺での目安は、1ヶ月 1,000 ドル

程度。

ステーション制以外にも、あまり経験のない美容師の場合、コミッション制で雇用する場合もあ

る。この場合、美容院のオーナーと美容師とのコミッションを分ける率は、オーナーが 40%、美容

師が 60%が通常。

美容業界で有名な展示会や講習会

ロサンゼルスには様々な人種が住んでいるため、客の髪質は千差万別である。そのため Y氏はカ

ットの仕方を微妙に変えているだけでなく、シャンプーや毛染め剤、パーマ液なども顧客の要望を

取り入れて髪質にあった商品を選択している。以下のような展示会や講習会での商品の研究は重要

である。

Long Beach International Salon & Spa Expo http://www.probeauty.org/isselb/

International Beauty Show

ニューヨーク http://www.ibsnewyork.com/

ラスベガス http://www.ibslasvegas.com/

International Esthetics, Cosmetics & Spa Conference http://www.iecsc.com/

Cosmoprof http://www.cosmoprofnorthamerica.com/

Maly’s (http://www.malys.com/) のクラス (毎月、20~25 ドル位)

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② 米国でのアパレル店開業・・・・・・・・・JOI by JEWEL ORIBE (www.joibyjeweloribe.com)

West Los Angeles に 2WJDというブティックを開く, JOI by JEWEL ORIBE の CEO である織部しほ

氏へのインタビュー。

織部氏は 2001 年に渡米。最初は英会話学校へ入学し、その後大学へ進学しデザインの勉強をした。

在学中にインダストリアル・デザイナーの下でアシスタントの仕事をしたことが、起業の下地にな

った。2006年に 2wjd を立ち上げ、Tシャツのデザインおよび生産を開始し、2009 年に小売店 2wjd

を開店した。

織部氏は、Jewell Oribe International, Inc.を設立し、その傘下で以下の3つが機能している。

1.2wjd:Tシャツのデザインとその生産 www.2wjd.com

2.2wjd:小売店

3.Joiドレスブランド(客の要望から生まれたブランド)

店舗の場所選択

扱いたい商品のコンセプトにあった場所を探すことが重要である。レントが多尐高くても人の流

れが多く集客できる場所が良いのか、尐しでもレントの安いところを選ぶことが優先なのかを考慮

する。

2WJD のコンセプトは、コミュニティに根付いた隠れ家的な雰囲気である。客とのコミュニケーシ

ョンを大切にしているため、洋服、バッグ、髪型、アクセサリーなどトータルコーディネーション

を客の一人一人に提案できる店を目指している。そのため、ユニークな店の多い West Los Angeles

の Sawtelle通りを選んだ。

客層

顧客の 90%がアメリカ人である。カップルでくる人も多い。年齢層は、15~70歳と幅広いが、中

心は 30~50代の人たちで、若い 40代の母達は自分の子供にも買っていく。

取り扱い商品

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織部氏オリジナルデザインの商品が 50%、他のデザイナーが 50%。ブラジルの水着、コロラド州製

のバックやアクセサリーなども扱う。

取り扱い商品価格

30~300ドルほど。

日本製の売れ筋商品

新宿伊勢丹で販売している洋服ブランドのビラコチャ

ピンプコード渋谷 (http://pimp-code.com/) のシルバーアクセサリー

アクセサリー

時計など

他店にはないものが好まれる。メルローズ通りなどの店は、他店の売れ筋商品をすぐにキャッチ

し仕入れてしまうので、ユニークな商品でなくなってしまうことがよくある。いかに早く情報を入

手し、新商品を仕入れるかが重要である。

小売店を営む上で注意すること

商品の盗難や損傷、事故などに備え、小売店用の保険(Retail Insurance)に加入することが必

要である。なお、保険料は店舗にショーウィンドウが多いと高くなる。録画機能付きのセキュリテ

ィカメラの設置も必要である。

展示会での自社商品の販売

織部氏はオリジナルデザインの商品を売り出し、新規バイヤーの発掘のために展示会に出展して

いる。展示会は、自社商品のコンセプトやイメージと合ったものを選ぶことが重要である。以下は、

アメリカで大きなアパレル関連の展示会である。

WSA (靴) http://www.wsashow.com/

Surfing America http://www.surfingamerica.org/events

Magic http://www.magiconline.com/

Magicはアパレルでは最大の展示会でその傘下でいろいろな展示会が行われるが、そ

のうちの一つである、Pooltradeshow (http://www.magiconline.com/pooltradeshow) に織

部氏は出展している。この展示会は世界中のブティックマーケットおよび大手の小売店

のために 2001 年より開催されている展示会。Pooltradeshow のバイヤーは人がもっていな

いもの、マスプロデュースされていないものを求めている。

Los Angeles Fashion Market

http://www.californiamarketcenter.com/markets/lafashionmarket.php

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Designers & Agents (D&A) http://designersandagents.com/

Select http://www.californiamarketcenter.com/select/home.php

Transit (靴)http://www.californiamarketcenter.com/markets/transit.php

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4 進出に当たってのチェックポイント/成功にむけて

これまでこのレポートでは、日本企業、特に外食産業が米国進出する際に必要と思われる注意点

および情報などをリサーチし、紹介してきたが、最後に米国進出を成功させるためのポイントをま

とめて記載する。これらのポイントは、米国進出を成功させた企業家の経験と生の声をもとにして

いるため、是非参考にされたい。

1)進出に当たってのチェックポイント

米国で成功するには広い人脈としっかりしたコンセプトを持つことが重要である。

リサーチによると、日本の本社の指示で動かなければならないところは 7割方失敗している。

「郷に入れば郷に従え」で、米国の考え方、米国のやり方でやらないと成功は難しい。

案件が米国の市場にあうかどうか(輸入食品に関する規制については別途説明)を見極める。

競合を明確に理解すること。

明らかに米国への輸入が無理な食材があることを認識する。

日本人でないとできないものにこだわると難しい。現地で養成できるものでないと難しい。

業者を選択する際には、必ず見積りを 3社ほどから取ること。見積り額だけではなく、業者

によって得手不得手があるので、必ず直接会ってどの分野に強いかを聞き、自社の目的に一番

あったところを選ぶこと。

米国は訴訟の国である。そのため、保険に加入することと信頼できる弁護士を持つことは非常

に重要である。

会社設立などの書類作成などはきちんと弁護士に依頼して正式なものを作成すること。

雇用者との契約締結をしっかりすること。

マーケティングなどは現地事情に精通した人間にやらせること。ただし人任せにするのではな

く、自らの足で確かめることが必要である。

現地の事情やアメリカ人の考え方をよく理解すること。米国では「お得感」が大事である。ど

んなに美味しくても量と価格が適切でなければ売れない。日本をそのままもってきても成功し

ない。

料理が美味しいのは当たり前である。料理の美味しさに加え何か特別なプラスアルファで客に

アピールすることが必要である。特別なサービス、店の内装など、客に店を覚えてもらう特徴

を加えること。

2)米国進出成功者からのアドバイス

現在米国でビジネスを成功させている人たちからのアドバイスを掲載する。

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Kabuki Japanese Restaurant, Corporate Chef Masa Kurihara 氏

レストラン成功の条件は、サービス/ホスピタリティ、店の雰囲気、味。

美味しいものへの需要はあります。けれど、法外の値段はダメです。日本食の職人は、1人だけ。

複数人日本から連れてきては、それだけで店の単価は上がってしまいます。

Phaze Restaurant & Bar, Chef Teruyuki Serizawa 氏

早くオープンしたいのなら、居抜き物件を。

居抜き物件を見つけ、前の店がクローズしてから3カ月以内にオープンする。3カ月以内のクロ

ーズであれば、前のレストランオープン時の法律が適用され、仕様を変更しなくて済むからで

す。

Marukai Corporation, President Hidejiro Matsu 氏

米国で成功したいなら、マーケットを知り、米国市場に合わせた商品を。

米国でビジネスをやっていく上では、弁護士と保険と会計士、この3つがとても重要です。

R23 Japanese Restaurant + Gallery, Chief Sushi Chef Toshio Odaka 氏

アメリカ人は、スシバーに行けば何か特別のものが食べられると、スシ以上のものを期待してい

ます。でも本格的な日本料理を!と意気込んできても難しいです。どんなにお洒落でも、人気のメ

ニューは限られています。今受けるメニューは「食べやすい」「ヘルシー」「シーフード」です。

食材輸入商社, Bob Watanabe 氏

アメリカ人たちは、美味しくてスシを食べているんじゃないんです。スシはヘルシーだから食べ

る。普通のスシ・レストランを開店するとしたら、(日本人・日系人が多いサウスベイ地区にくら

べ)ウェスト・ロサンゼルスの方が当たる確率が高いです。生の魚を食べる白人は、ユダヤ系の

人々です。魚だけ、貝類は食べない。アルメ二ア人、ロシア人にもユダヤ系が多いです。彼らが住

んでいるのがバレーからベンチュラあたり。ユニバーサルスタジオ付近からのベンチュラブルバー

ドは、スシ街道になっています。どこの店も客が入っています。

板前は 30%が愛想、30%が材料、30%が腕といわれています。料理はこだわらなくていいんです。

きれいな内装と良いウェイトレス・ウェイターと適当な料理。これでお金が取れます。

森乳(Morinaga Nutritional Foods, Inc.)前社長 Yasuo Kumoda 氏

3 年や 5年で、米国で物が売れるとは考えないこと。

米国に来たら米国のやり方でやらなければなりません。アメリカ人がどんなものが好きなのか、

学ばなくてはなりません。

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不動産ブローカー Takeharu Kato 氏

新規オープンには、半年から1年間。資金的な余裕を。

日本から米国に進出してお店を持つなら、まず何回か実際に来て、いろんなレストランやビジネ

スを研究することです。人任せにしないで自分で動く。

Roy's Woodland Hills Chief Sushi Chef Takayuki Matushita 氏

日本食をどうやったらアメリカ人に食べてもらえるか、いつも工夫しています。日本食も酒も教

えないとアメリカ人には分かりません。

空間デザイン設計 Rie Watanabe 氏

日本の「あたり前」が通用しない、米国。

人件費が高く工期が延びることを考慮して運営資金を用意すること。法律による規制が厳しいた

め、日本と同じことはできないことを知っておくこと。

九州ラーメン、花菱レストラン・オーナー Motoki Teranishi 氏

値段設定は大切です。価格で客を選べます。値段を変えると客層は変わります。安くしたり、食

べ放題にするとそれなりの客が集まってしまいます。客は客を呼んできます。

おもしろいのが、サーバー(ウェイター・ウェイトレス)を変えると客層が変わることです。

商業不動産エージェント Seven Star Realty Richard Oda 氏

成功は、信頼できるスタッフ選びから。

レストランを開業するのなら、最低 20万ドルは必要です。50万ドルは用意しておいた方がいい

でしょう。

成功の鍵を握るのは、米国側のスタッフです。信用できる弁護士、会計士、コンサルタント。こ

れらを慎重に選んで、米国進出を成功させてください。

(出典)JCONNECTION INC.異文化交流 http://www.mesay.info/a_successinUSA_index.htm

3)アメリカ人が求める日本食レストランとは

現在米国にある日本食レストランの多くが、「寿司」主体である。「日本食=寿司」といったイ

メージがアメリカ人の中にまだ根強く残っていることは否めないが、最近それが徐々に変わりつつ

あることは第1章で述べた。

では、アメリカ人はどんな日本食レストランを求めているのだろうか?

現地で一般アメリカ人にインタビューしたところ、「カジュアルで明るい雰囲気の店」「楽しい

店」「ラーメン屋」「てんぷら専門店」「とんかつ専門店」「お好み焼き屋」を希望する声が多く

聞かれた。

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4)人気番組“Restaurant Impossible”より成功のポイント

米国にはケーブル TV局がたくさんあるが、その中のひとつで一日中「食」に関する番組を放送し

ている局に、フードネットワーク(Food Network)がある。このフードネットワークの人気番組の

ひとつに、“Restaurant Impossible”がある、これは、潰れそうなレストランを全米から募集し、

それを立て直すという番組である。この番組の中から、レストランを成功させるためのいくつかの

ポイントを紹介する。

レストランはチームワーク

オーナーシェフでないレストランの場合は、シェフとオーナーおよびマネージャーが日々

のメニュー、運営についてコミュニケーションをとることが必要である。オーナーシェフで

あっても、店のスタッフと意思の疎通を図り、ひとつのチームとしてレストランを運営する

ことが必要である。スタッフの一人ひとりが自分の役割を認識し遂行することが大事。

メニューは多すぎないこと

メニューの種類が多すぎると、ストックしなければならない食品が多くなり余分なコスト

がかかる。また、客がメニューを読む時間が長くなるため、回転率が悪くなる。

値段は、食材費に1ドル足し、その3倍に設定する

そうすることで、運営費や人件費などすべてまかなうだけの利益が得られる。

量、味、値段のバランスが大事

料理が美味しく、量も多く、値段も適切なら、多尐不便な場所でも客は来る。

適切なサービス

ウェイターやウェイトレスなどのサービス・スタッフがフレンドリーで良いサービスを提

供することは必須。また、サービス・スタッフが店の料理に精通しており、客の質問に答え

られることも大事である。

レストランは明るく

明るい雰囲気のレストランは客が入りやすい。

(出典) Food Network Restaurant Impossible

http://www.foodnetwork.com/restaurant-impossible/index.html)

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