クリエイティブ分野における専門人材養成産学コンソーシアム 事...

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平成 24 年度 文部科学省委託事業 成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進事業 クリエイティブ分野における専門人材養成産学コンソーシアム 平成 25 3 学校法人文化学園 国際ファッション産学推進機構

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平成 24 年度 文部科学省委託事業

成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進事業

クリエイティブ分野における専門人材養成産学コンソーシアム

事 業 報 告 書

平成 25 年 3 月

学校法人文化学園

国際ファッション産学推進機構

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はじめに

ファッション分野における日本の産業は、グローバルな視点ということがキ

ーワードとなっている。アジア諸国、特に急成長を遂げている中国や韓国の台

頭により、市場の変化への対応が迫られている。 内向きの傾向にあった日本のファッション産業が、グローバルな視点を持ち

始めたことを受け、今後教育界に求められる人材養成への要望は変化してくる

といえる。かつてヨーロッパを中心としていたファッション界をはじめ、今は

アジア諸国の急激な成長でその構図は変わり、従来のカリキュラムでは時代に

対応する人材の輩出は困難といわざるを得ない。かといって、教育の現場のみ

でそれらの人材を育て上げるには限界があり、それには文部科学省、企業、関

係団体の連携が不可欠であり、継続的に検討しなくてはならない課題であると

いえる。こういった時代の変化に即応し、国際的に活躍できる次世代の人材育

成の構築をめざし、評価システムの検討を行い、且つ職域プロジェクトのマネ

ジメントを担う産学コンソーシアムを組織化し、中核的専門人材養成のための

検討を行う。 この事業が果たす中核的人材の育成は、まさに教育に発展性をもたらす起爆

剤となることは明白であり、永続性を持って取り組むことで、業界全体の底上

げと成長に連繋するといえる。従って、今後さらなる工夫をしながら、継続的

に検証を行うことが必要となろう。実証をもとに評価、方向性を示唆しつつ修

正を繰り返しながら、人材育成事業のさらなる発展に寄与していき、最終的に

は教育のスタンダードとして定着させることができればと考える。そのために

は、産官学の垣根を越えた情報共有と連携を密に行っていくことを徹底し、各

方面に協力をしていくことが重要である。さらに今後は、現地関係機関とのコ

ンソーシアム体制などの強化にも努め、より発展性のある基盤を整えていくこ

とも必要と考える。 平成25年3月

学校法人文化学園 国際ファッション産学推進機構 クリエイティブ分野における専門人材養成産学コンソーシアム委員会

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クリエイティブ分野における専門人材養成産学コンソーシアム委員会構成

委 員 会

氏 名 所属・役職 役 割

野中 慶子 文化服装学院 教授 統 括

鈴木 洋子 文化服装学院 教授 委 員

松田 祐之 文化学園大学 教授 委 員

馬場園 晶司 文化ファッション大学院大学 教員 委 員

谷内 真佐子 北海道文化服装専門学校 校長 委 員

森 慈郎 大阪文化服装学院 理事長 委 員

深田 勝久 香蘭ファッションデザイン専門学校 副校長 委 員

飯塚 賢一 ㈱オンワードホールディングス 常務取締役 委 員

中本 文太 ㈱TSI ホールディングス 人事部長 委 員

堀畑 裕之 ㈱LEWS 纏 代表 委 員

渡辺 博史 ㈱繊研新聞社 執行役員 委 員

萩平 勉 (一財)ファッション産業人材育成機構 専務理事 委 員

西田 光治 (一財)日本ファッション教育振興協会 事務局長 委 員

川口 輝裕 (一社)日本アパレル・ファッション産業協会 参事 委 員

山崎 賢二 (一社)日本ファッション・ウィーク推進機構 事務局長 委 員

糸井 弘一 協同組合 関西ファッション連合 理事 委 員

安藤 文子 名古屋学芸大学 教授 職域プロジェクト報告

関 義徳 大阪文化服装学院 校長 職域プロジェクト報告

澤谷 目童 文化服装学院 専任講師 職域プロジェクト報告

井手口 和子 文化服装学院 生涯学習部 部長 職域プロジェクト報告

平田 眞一 中国デザイン専門学校 理事長 職域プロジェクト報告

早川 辰悟 ハンドメイド・カンパニー㈱ 代表取締役 報告書作成管理

事 務 局

氏 名 所属・役職 役 割

川合 直 文化学園国際ファッション産学推進機構 機構長 事業責任者

中川 淳郎 文化学園国際ファッション産学推進機構 ディレクター 事務担当者

小池 えりか 文化学園国際ファッション産学推進機構 職員 事務担当者

飯島 康志 文化学園国際ファッション産学推進機構 職員 事務担当者

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平成 24 年度会議スケジュール

委 員 会

第 1回 10月 30日(火)13:00~15:00 於:文化学園 B044会議室

① 今年度の文部科学省事業受託の経緯について

② 各職域プロジェクト進捗状況報告

③ その他

④ 事務連絡

第 2回 11月 27日(火)13:00~15:00 於:文化学園 B044会議室

① これからのファッション界に求められる人材像について

第 3回 1月 11日(金)12:00~14:00 於:文化学園 B044会議室

① 各職域プロジェクト進捗状況報告

第 4回 2月 1日(金)11:30~13:30 於:文化学園 B044会議室

① これからのファッション界に求められる人材教育とは

第 5回 3月 6日(水)15:00~17:00 於:文化学園 B044会議室

① 平成 24年度 職域プロジェクト事業報告

② 今年度のまとめ及び来年度に向けて

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目 次

はじめに 1

・クリエイティブ分野における専門人材養成産学コンソーシアム委員会構成 ・平成 24 年度委員会スケジュール

目 次 4

1.産学コンソーシアムの取組と実施報告 5

・産学官連携コンソーシアムにおける具体的な取組内容

・ファッション界における人材需要等の状況と、それを踏まえた事業の実施意義 ・アパレル業界の現状 ・企業側が求める人材のニーズは、人間力である ・日本のファッションスクールの責務、様々な人材育成の方法 ・クリエーターにファッションビジネスを教育すること ・プロセスを重視する教育と評価の重要性

・地方性の問題と学校同士が連携するシステムの構築 ・グローバル社会に向けた人材教育

・学生同士が高めあう教育と国際競争力 ・日本のファッションスクールにおける語学教育の必要性 ・今後、さらに産学協同・産学連携を強化すべきである

2.クリエイティブ(ファッション)分野の各職域プロジェクト実施報告 29

・クリエーション (グローバルファッションクリエーター人材養成産学コンソーシアム) ・ファッションビジネス (企業ニーズに呼応した実践型中核的専門人材養成産学コンソーシアム) ・グローバルビジネス (グローバルファッション人材育成プロジェクト) ・社会人教育 (文化の根源の業(なり)・FASHION 分野の社会人教育) ・デニム・ジーンズ (デニム・ジーンズクリエイター養成プロジェクト)

3.総 括 59

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1.産学コンソーシアムの 取組と実施報告

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産学官連携コンソーシアムにおける具体的な取組内容 本事業は、ファッション分野における時代に即応したグローバルな人材の養

成を目的として、その具体的な教育プログラムを調査・研究・協議しながら構

築していくものとする。 急速に変化する時代にも対応し、国際的に活躍ができる人材の育成を目的と

した研究協議の実施や、評価指標の検討、さらに評価体制の在り方も合わせて

具体的に検討をすすめていく。このため、ファッション分野においては、産業

界をはじめ、その関係団体、関係省庁の他、学校種などとの連携により、ファ

ッション分野における中核的専門人材養成のための横断的な検討を実施し、職

業実践的な教育の質の向上・保証に資する取り組み、社会人等の実践的な職業

能力を育成する効果的な学習体系を構築する。 昨年度クリエイティブ分野のファッションコンテンツにおいて、クリエーシ

ョン、ファッションビジネス、グローバルビジネス、社会人教育の4つを柱に

モデルカリキュラムの構築を進めてきたが、本年度はデニム・ジーンズも加わ

り、これらがそれぞれ、職域プロジェクトとして名称も新たに事業を実証する

こととなった。本コンソーシアムでは、それらのプロジェクトの実証における

マネジメント、産業界などとの連携によってこれからのファッション業界に必

要な人材育成方法の検討をする。各職域プロジェクトでの実証における内容を

とりまとめ、またその過程おいて、それぞれが有している問題点などを協議・

解決への方向性を示すとともに、共通的に抱える課題なども洗い出し、成長が

見込める日本のファッション分野における教育の底上げを図る。 コンソーシアムには、各職域プロジェクトに関連する産業界、教育界、関連

諸団体などからの有識者を評価員として参加してもらうこととした。連携にお

いては、各職域プロジェクトの担当との情報を密に共有し、コンソーシアム委

員会の中で職域の代表者からの報告を通して協議する体制を基本とし、中間報

告などを挟みながら、次世代の日本を担う人材を育成するための強固な教育プ

ログラム構築を図っていく体制を整える。(本コンソーシアム連携体制及び各職

域プロジェクトの事業体制は、次頁以後を参照のこと)

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平成

24年度

「成

長分

野等

における中

核的専

門人材

養成の

戦略的

推進

」取

組成

果概

【クリエイティブ分野(ファッション)コンソーシアム】

クリエイティブ分

野の

中核

的専

門人

材養成

のための

新学習

システム構

築推

進プロジェクト

化学

園 国

際ファッション産

学推

進機

日本の

ファッション界を取り巻く環境

〇国

内での空洞化

○国

際市

場の競争激化等の変化

新興

国、とりわけ中国・韓国などの追い上げ

海外

展開ノウハウの欠乏

近年

75%

前後を推移している専修学校生の就職

率において、服飾・家政系の専修学校生

17000人の就職率をさらに上

昇をさせ、最終的に就

職希望

者の就職を

100%

にすることが求められている。

様化

する時代

に対応

するための

材育

成が

求められ

ている

成果

目標

産業界と教育界、国とが一体となった

度な教育プログラムの確立、

本のクリエーション教育のモデルとして定着

☆人材育

成事

業の

さらなる発

展に寄

与、教

育の

スタンダード化

☆モデル

カリキュラムの

確立

☆評価

基準

の構

☆専門

資格

上級

レベル

に到

達する能

力習

得の

ための

学習

基盤

構築

取組の概要

クリエイティブ(ファッション

)分

野で実

施され

ている各

職域

プロジェクト事

業の

マネジメント・評

価・助

言を、委

員会の

報告をもとに実施

これ

からの

ファッション

界に求

められ

る人

材像

の検

討を委

員会内

で実

施。

ファッション

教育

における横

断的

な課

などの

抽出

を、委

員会内

で実

施。

参加

・協力機関

育機

・文化服装学院

・文化学園大学

・文化ファッション大学院大学

・北海道文化服装専門学校

・大阪文化服装学院

・香蘭ファッションデザイン専門

学校

・名古屋学芸大学

・中国デザイン専門学校

業団

体・企

業 など

㈱オンワードホールディングス

TSIホ

ールディングス

LEW

S纏

㈱繊研新聞社

ンドメイド・カンパニー㈱

界団

(一財)フ

ァッション産業人材育成機構

(一財)日本ファッション教育振興協会

(一社)日本アパレル・ファッション産業協会

(一社)日本ファッション・ウ

ィーク推進機構

協同組合関西ファッション連合

①クリエイティブ分野において求

められ

る知

識・技

術・技

能に関

する

モデル・カリキュラム基準

の実

証に対

するマネジメント・評

②これからのファッション界

に求

められ

る人

材像

の検討

産業界と教育界の

人材

育成における意

見の抽

③ファッション教育における横

断的

な課

題などの

抽出

(産業界、学校種を超えての

教育

制度

、単

位制

度の検

討)

産学

コンソーシアム委

員会

クリエイティブ分野における専

門人

材養成

産学コンソーシアム

グローバル

ファッション

クリエーター

材養成

コンソーシアム

企業ニーズに

呼応した

実践型中核的

専門人材養成

産学

コンソーシアム

グローバ

ルファッション

材育

プロジェクト

文化

の根

源の

業(なり)・

FA

SHIO

N分野

の社

会人

教育

デニム・ジーンズ

クリエーター

成プロジェクト

・プロジェクト進行・経過報告

・問題点や課題の報告

・プロジェクト評

・プロジェクトマネジメント

・方

向性

の示

唆、助

職域

プロジェクト

コンソーシアム

※事

業実施

イメージと体制

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平成

24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ分野(ファッション)コンソーシアム】

クリエイティブ分野の中核的専門人材養成のための新学習システム構築推進プロジェクト

文化学園国際ファッション産学推進機構

取組内容

①企画・検討

産業界と教育界、関係団体、それを支援する行政が

一体となってこれからのファッション教育に寄与する

コンソーシアムを結成。

②各職域プロジェクトの評価

ファッション分野において実証中の職域プロジェクト

の進捗状況報告を受けてのマネジメントや評価、助

言を行う。

課題として、プロジェクトの実施には地域差の問題な

どが存在するため、カリキュラムの内容によっては

実施が困難な場合がある。そのため、課題を取り払

うための教育の仕組みづくりが必要となってくる。

③これからのファッション界に求められる人材像の

検討

ファッション界に求められる人材の検討を委員会内

で実施。

人間力やコミュニケーション能力はもちろんであるが、

クリエーションをしている人で、ビジネスを理解して

いる人材、はたまたその逆も必要。一方で、その道

のスペシャリストを育てる教育も必要であり、対極的

な意見がファッション教育には存在している。

④ファッション教育における横断的な課題の抽出

多様化するファッション界において求められる人材

像と教育の課題について抽出を行う。

これからのファッション教育は、学生にとって情熱を

持たせるカリキュラムが必要。また、ある程度学生

同士で競争をさせる内容が必要である。

⑤普及活動

ファッション系の企業、日本のファッション系教育機関・業界

団体、各都道府県教育委員会等、計

400~

500部程

を配布予定。

成果(アウトプット)

○検討したこれから求められる人材像や横断的なファッション教育の課題など、

共通的意見と特化的な意見をまとめ、発信する。

○各職域プロジェクトの事業実施における、共通的な課題などをまとめ、発信を

する。

成果の活用・次年度への課題

活用

○産業界と教育界、関係団体、それを支援する行政が持つそれぞれの意見として発信し、これから双方が

連携してファッション教育を行う上での足掛かりとして活用をする

○将来的に、各校がカリキュラム開発などを行う上でのガイドブックとして普及を行う。

課題

○地域性、地方性などがあり、内容によっては実施が困難な場合が多い。遠隔授業などの導入や仕組みづ

くりなどの検討が求められる

○産業界でもその企業が打ち出す理念や特徴など、各々でその意見がわかれるため、その意見の中から共

通的にファッション教育に遠用することのできる内容の抽出を図る

○人間力形成はもちろんのこと、次世代におけるファッションに特化しての教育においては何が必要なのか

をさらに深めることが課題

スケジュール(予定)

H23年度

H24年度

H25年度

○カリキュラムの検討・立案・体

制構築

○各分野におけるカリキュラムの

評価

○各職域プロジェクトのマネジメント・

評価・助言

○これからのファッション界に求め

られる人材像の検討

○ファッション教育における横断

的な課題の抽出

○各職域プロジェクトのマネジメント・

評価・助言

○ファッション教育における課題の

継続審議及び成果の普及

○地域性なども含めた、様々

な課題の解決の検討

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ファッション界における人材需要等の状況と、それを踏まえた事業の実施意義 グローバル化が急速に進む日本のファッション業界では、国内の素材調達・

生産も新興国にシフトするなど、国内では空洞化が目立つ。また一方で、国内

ブランドが海外企業に買収をされるなど、国際市場の競争激化等の変化に対し

日本企業はグローバル化に対応した経営が求められており、近年、新卒採用で

も留学生を積極的に採用する傾向がみられる。 これまで、日本のファッション産業は国内市場を中心に展開していたため、

海外展開のノウハウが蓄積されてこなかったのが現状であった。海外において

も十分通用し、人気、質ともに申し分ない日本ブランドが、海外経営に行き詰

る傾向にある。こういった現状の打破には、世界に発信するためのグローバル

人材を育てる必要があり、時代・環境に対応する国際的な視点を兼ね備え、高

度な技術、経営スキルを有した人材の輩出が、今後の教育には不可欠である。

またそれとともに、現在ファッション業界に従事する社会人への教育を充実さ

せ、それを実際の現場で実証、さらには教えることにより、ファッション界全

体の底上げをも狙うことで、今後さらに成長を見込めるファッション産業の充

実化にも繋がるといえる。 さらに新興国、とりわけ韓国・中国などの追い上げも厳しく、今や世界が注

目する市場となっている。こういった変革時、教育界と産業界は連携体制をと

り、グローバル化を意識した人材養成を推進する必要がある。我が国のファッ

ション産業のポテンシャルは依然高く、新たな時代に向け人材の育成に取組む

ことは、発展性の高いこの業界において最重要事項と言える。この課題に取り

組むべく、下記項目を産学コンソーシアムの目標として掲げることとする。 ① クリエイティブ(ファッション)分野において求められる知識・技術・技

能に関するモデルカリキュラムの実証に対するマネジメント・評価 ② これからのファッション界に求められる人材像の検討。産業界と教育界の

人材育成における意見の抽出。 ③ ファッション教育における横断的な課題などの抽出。産業界、学校種を越

えての教育制度の検討。 これらの目的を達成すべく、関係団体、さらには業界全体を巻き込んだ体制

を確立し、職域プロジェクトの評価及び方向性の示唆を行う。そして、事業に

参加した学生が、実績として専門資格上級レベルにまで達する能力を身に付け、

社会的評価の確立を目指すことができればと考えている。

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アパレル業界の現状 日本の衣料消費市場規模は、2000 年に小売売上高が 12 兆円だったが 2011 年

には 3 兆円マイナスの 9 兆円になった。売上高の内訳は、百貨店と量販店が減

り、専門店と無店舗販売の比率が上がっている。11 年間で市場規模は金額ベー

スで 75%に激減したが、供給量は輸入品の増加で増え、単価は下がっている。

百貨店と量販店の売上も減り、専門店と無店舗販売が増えた。ファッションビ

ジネスを学んだ学生が就職する先も変化している。無店舗販売については、今

後インターネットや更なるスマートフォンの普及で更に加速し雇用も増えると

考えられる。 ファストファッションなどの低価格業態が増えたため、数量ベースでは 10 年

前よりも多く買われている。ファッションへの好奇心は落ちているわけではな

く、アパレル製品や流通が変わっていることを教育業界も認識し、更なる先を

予測しながら教育カリキュラムの策定をしなくてはいけない。 今、ファッション業界は大変な曲がり角に立っている。可処分所得の減少と

デフレが続き、少子化が進行、消費税が増税することが決まり、家庭内におけ

る衣料品への支出金額の減少が考えられる。日本のアパレル企業が海外に活路

を見出し、市場を海外、特に成長を遂げている中国へとシフトする動きが急速

に進んでおり、ますますファッション業界は変化していくことが予想される。 こういった激動の時代に、国内はもとより、国際的に活躍する人材の輩出が

ファッション教育界に与えられた命題である。この産学コンソーシアムにおい

ては、アパレル業界が直面する問題に対し、どのような学生を育て、社会に羽

ばたかせていくか、業界の過渡期である今、社会に通用する人材にするために

教育業界で何が必要かを見出す討論が進められた。

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企業側が求める人材のニーズは、人間力である 産業の高度化やグローバル化への対応として、教育界に求められている課題

は山積している。これは、ファッション業界に関わらず、日本全体の教育界で

共通的に言えることであり、今回の「中核的専門人材」の育成に連繋する事柄

である。 文部科学省の資料によれば、「中核的専門人材」とは「実践的な専門的な知識・

技術・技能を身に付け、職業に必要な卓越した、または熟達した実務能力に基

づく業務を遂行し、または、グループや中小規模の組織の中で中核的な役割・

機能を果たす厚みのある中間層」のことである。そして、上記人材像に求めら

れる知識・能力とは、以下のような要素として挙げている。 ① 基礎能力

○ 組織人としての常識(マネジメント・財務・法律基礎知識) ② 対人関係能力 ○ コミュニケーション能力(意思疎通、強調力、自己表現力、人的ネ

ットワーク構築力 ○ 主体性・積極性 ③ 自己開発能力 ○ 自己マネジメント力

○ 職業人意識(責任感、職業意識・勤労観) ④ 問題解決能力 ○ 課題設定力(創造力、戦略・戦術立案力) ○ 新しい技術に対する探究心、開発力 ○ 情報収集・分析力 これらは、全ての職業、職種に共通的に用いることができる内容となってお

り、重要な要素であることは言うまでもない。これはファッション業界にも当

てはまる内容となっている。 しかし、まずここで注意しなくてはならない事項は、「能力」と「スキル」の

境界線である。上記①の内容において、基礎能力の習得事例として挙げられて

いる「財務・法律基礎知識」などに関しては、明らかにスキルのカテゴリーに

入ってくる要素である。逆にコミュニケーション能力などは能力(アビリティ)

であり、その人物の特性である。 そういったカテゴリーで分けたうえで、能力、所謂人間力は企業側にとって

11

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重要な要素として位置づけられている。昨年度グローバルビジネス分科会が企

業に実施した人材ニーズアンケートを見ても、パーソナルに関わる要素を有し

ている人材こそが、企業が求める人物像となっていたのである。 さらに本年度、関西地区のファッション企業を対象とし、産学コンソ―シア

ム委員が実施した「どのような人材を必要としているか」のヒアリング調査結

果を見ても、それは明白である。どの企業においても、必要とする要素はその

人物の人間力であるとしている。 ○ 主体性を持ち、仕事を進める人材 ○ 様々なタイプの人材が欲しい ○ 近年2~3年は肉食系の人材 ○ 負けず嫌い ○ 人間性を重視し、夢を持って頑張れる ○ 人の心が出来た人材 ○ 有言実行な人材 ○ 挨拶ができる ○ わかり易く説明する力のある人 ○ 人を惹きつける魅力がある ○ マネージャーの役割が重要

○ 自らビジネスを組み立てることができる ○ 自らを変革し挑戦する ○ 熱意と豊かな発想で未来を切り開く人材 ○ フットワーク力のある人 ○ 市場のグローバル化に対応できる人 ○ 経営者の片腕となるような人材 ○ 顧客や組織、社会の信頼に誠実に応える人 ○ 人に好かれ、コミュニケーション力のある人 ○ 精神的タフさを持つ人 ○ 目配り、気配りのできる人 ○ チームで活動できる人 ○ 自分の会社の商品を愛する人

これは、企業側の率直な意見として、大変貴重な意見と言える。注目される

【拠出】関西ファッション連合 糸井弘一氏による「どのような人材を必要としているか」の

ファッション企業に対するヒアリング調査

12

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のは、人間力という面が優れている人物へのニーズが高いことに対し、専門的

な知識などを求める意見がなかったことである。これは、企業側としてまずは

知識よりもアクティブに、企業内をパーソナルな面で活性化できるかを重要視

していることが見て取れる。 これらの要素に着目した職域プロジェクトは多く、特に「グローバルファッ

ション人材育成プロジェクト」(代表校:文化服装学院)においては、ワークシ

ョップなどを取り入れた学生主導型のモデルカリキュラムを組成した。これは、

グローバルビジネスに対する理解を深めつつも、プレゼンテーション能力、表

現力、日本のアイデンティティの理解などから、国際的に活躍する主体性や積

極性について磨く内容となっており、産学コンソーシアム委員からも高い評価

を得た。 委員の指摘に拠れば、特にグローバルビジネスはこういったプレゼンテーシ

ョン能力や表現力が必要とのことだ。また、国際的に活躍する人物はハングリ

ー精神を持っており、そういった人物が成功を収めている。現代の若者はハン

グリー精神に欠けており、高度経済成長期に身を置いた当時の若者とは明らか

に時代が違う。そんな中、ハングリー精神を持って現在もビジネスに取り組ん

でいる人物に感化され、「興味をもった」「こんなビジネスがしたい」という姿

勢を養うことができたと言え、こういったカリキュラムを継続することで、世

界で活躍するグローバルな人材が生まれるという意見であった。 実際に、学生の授業に対する感想を見ても、グローバルビジネスに対する理

解を深めることはもちろんのこと、積極性・主体性においても養われているこ

とが顕著にうかがえるのである。 こういった人間力を養うことは、どの分野に関わらず共通的に重要視される

べき要素と言えよう。

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日本のファッションスクールの責務、様々な人材育成の方法

2003 年、内閣府が人間力について発表した内容によると、その備える要素と

して知的能力的要素、社会・対人関係的要素、自己制御的要素を挙げている。

2006 年には経済産業省が社会人基礎力に関する中間まとめとして、社会人とし

て働く必要な基礎能力を、前へ踏み出す力(アクション)、考え抜く力(シンキ

ング)、チームで働く力(チームワーク)の 3 つの力を発表している(下記参考

資料)。 人間力とは、所謂人が潜在的に持っている能力として定位されることである。

ファッションに関わらず、これらは日々の日常生活の上でも養うことができる

ものである。将来業界に従事するうえで必要となる能力であることは間違いな

い。しかしそこから、10 年後、20 年後、それ以上のファッション界の出来事を

予測して考えると、ファッションスクールではどのような人材を育てるべきな

のか、どのような新しいカリキュラムが求められるのかを、今一度考えなくて

はならない。それは、人間力は当然念頭に置きつつも、やはりスキルの面でも

教育をしなければ、ファッションスクールとしての責務を果たしているとは言

えないであろう。 そこでまず念頭に置きたいことは、ファッション界が求める人材像は統一的

ではなく、その企業、職種によって多種多様なニーズがあるということである。

文部科学省が提示する「中核的専門人材」については、あくまで企業を想定し

た人材教育のフレームである。しかし、クリエーションの世界で言えば、独立

をし、自分でブランドを立ち上げる学生もいれば、企業のデザイナーやパタン

ナーといった専門職として就職する例も大いにある。その多種多様な事例に対

応する人材育成もまたそれぞれなのである。従って、対極的な人材像という部

分が存在することを留意しておかなくてはならない。

【拠出】経済産業省 HP:http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/kisoryoku_image.pdf より

14

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クリエーターにファッションビジネスを教育すること 上記のような対極的な立場にある教育は、一つの例で言えば、クリエーター

とファッションビジネスの関係性である。 JFW=一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構は、日本の繊維・

ファッション産業のさらなる国際競争力の強化、発展を図ることを目的として

いる組織である。海外に我が国の優れた繊維・ファッションの製品、サービス

等の情報を発信し、「東京」を「世界の繊維・ファッション基地」の一つとして

確立すると共に、さらには、アジアの中心的なファッション発信拠点とするこ

とを目指している。 JFW は世界で活躍するデザイナーを生み出そうと活動しているが、実際には

なかなか優れたデザイナーが出てこないという現状があるという意見がでた。

海外のプレスに評価をしてもらうと、「オリジナリティがある」「素材の使い方

が上手い」など、一定の評価が出る。しかし、クリエーションが優れていると

評価される一方で、ビジネスに結びつかない。 やはり、学生時代にビジネスについて少しでも触れることが重要という意見

が出た。プロのシーンで活躍していても、バランスシートを見る事が出来ない

デザイナーが多く、他社に任せているために自分の経営状態も分かってない場

合が多い。在庫がどのくらいあるか、その在庫は不良在庫でどのくらいの期間

が経っているかを知り、把握することが重要となる。教育業界で、ビジネスス

キルをどこまで教えるかは、授業時間も限られているので難しいが、教育界で

もそういった機会を設ける必要性がある。 もちろん、教育機関がスキルをいかに効率よく埋め込むか、デザイナーとし

ての感性やクリエーションを高め、身につけるための教育とは何かが重要にな

ってくる。デザイナーが特徴ある商品を作るには、自分のオリジナリティが必

要で、自分とは何かと考え抜く力が必要となる。教育業界においても大事なポ

イントなる。しかし、実際にビジネスとしてそれらを売り出さなければ、その

クリエーションは埋没したままになってしまう懸念がある。 学校でクリエーションを学び、実社会の経験を踏まえてさらに感度は高めら

れる。しかし、クリエーションをビジネスにするための手段を学ぶ場所が足り

ていない。過去、日本は高度成長時代で全ての分野で伸びていた。しかし、マ

ーケットが縮小しているとなれば、よりビジネス=金にする力が必要となるた

め、そういったビジネス感覚を養うトレーニングが、ファッションスクールに

求められるということであった。 しかし一方で、クリエーションとファッションビジネスそれぞれに特化的に

15

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教育をし、両者がビジネスパートナーとして組むことが良いという意見もあっ

た。これは、所謂理系と文系の違いであると委員は指摘する。人間が興味を持

つ部分はそれぞれであり、デザイナーはアーティストに近い世界であるがため

に、良きビジネスパートナーを探しあうことが必要ではないかということであ

った。 こういった対極的意見が存在し、多様な人材育成の方針がある。正解を求め

るのでなく、時代や環境など、そのケースに見合ったファッション教育を常に

模索し、伸ばしていかなくてはならない。 また、学生のニーズや趣向、目標などもさまざまである。クリエーションの

立場で言えば、一昔前まではパリコレクションなどに出品するようなデザイナ

ーを目指す学生が大勢いたが、現在では一つの分野に特化したデザイナーには

なりたくないという学生も出てきていることが報告としてあった。教育してい

く立場として、最終的なゴールをどこに設定するかを、さらに突き詰めて考え

る必要に迫られている。

16

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プロセスを重視する教育と評価の重要性 クリエーションで重要な点は、プロセスを追って作品を制作することにある

と委員は指摘する。造形的な美しさ、色彩的美しさといった表面的な部分にス

ポットをあてた作品と、論理づけをし、プロセスを踏んで制作されている作品

とでは、出来上がりに雲泥の差が出るという。コンテストの入賞作品を見ても、

その大部分は後者である傾向が圧倒的だ。 モノを作るこだわりやプロセスを重視している作品は、魅力と力強さが感覚

的にも伝わり、その背景にあるテーマや思いというものを見た人が感じること

ができる。しっかりと物事を論理づけて考え、説明できるトレーニングが今後

必要になることを委員は指摘する。そしてそれをまとめ、次に発展させること

ができる人材の輩出が、これから求められるとのことだ。 日本に限らず、世界のコレクションを見ても、各ブランドはシーズンでテー

マを設け、新しい提案をし続けている。そのバックボーンとして、デザイナー

はそのテーマを追求するために日々クリエーションに努めているのだ。 企業にもこういったプロセスを重視し、評価する動きが出始めている。今ま

では、業績・結果で評価していた企業が多かったが、現在は本人が持っている

固有能力も高めていかなくてはならない。そして、それを高めた人に評価をし

ていかなくてはならないと委員は指摘する。 プロセスを評価する基準を定め、そしてその評価をする人物の評価能力を高

めることを企業は実施している。アパレル業界に入ってきた人物(通称レベル

1)に要求する能力要件は 3 件あり、①ファッション感覚の醸成(ファッショ

ンに興味を持つこと)、②コミュニケーションと協働(理念を共有して、目標に

向かって自分たちのできることを実践する)、③企業倫理とコンプライアンスの

理解・実行である。この 3 つを要件に定めて整理し、実行に移すことを企業で

は行っている。 一方、欧米では完全なる成果主義の社会である。失敗したときのリスクは大

変大きいが、成功すればそれだけのリターンがある。中国でも、ファッション

業界はこの欧米型の評価制度を導入している。 現在、日本のファッション界はプロセスを大事にするという動きになってき

ているが、それは時代によって今後また変化するだろう。その時代に即した評

価制度を常に模索し、検定などの要素も取り込みながら、産業界と教育界、関

係団体が協力して進めていくべき事項であると考える。そのためには、旧来の

例を参考にしつつも、新しいこと、世界の市場や傾向にも目配りをすることが

求められる。

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地方性の問題と学校同士が連携するシステムの構築 ファッション教育で重要な懸念事項とされているのが、地方性の問題である。

現在、グローバル化が急速に進み、学校教育でもこういった時代に対応する人

材の育成が求められてくる。 しかし、実際にグローバル教育をすることに対しては、そのノウハウの蓄積

はもちろんのこと、外部講師を招聘する際、その地方周辺に講師を請け負える

人材がいないことも、またネックとなっている。 さらに、グローバル教育を抜きにしても、ファッション業界における地方格

差はある。ある地域では、アパレル、ファッション企業で構成される組織や協

会、連合なども存在しない。ファッションビジネスを学ぶ人材を育てる活動を

していても、そういった現状下では学生の輩出が非常に困難な状態にある実情

が横たわる。 また、企業側の採用に関する面でも、地方によっては差が生じているケース

が存在している。ファッション専門学校で教育を受けた学生が就職活動をした

際、その地域の特性から大学と短期大学の採用しかなく、ほんの一部しかアパ

レル企業に就職が果たせないといったことが現状にある。インターンシップの

受入自体も断られるケースがあり、学生が就職をする前の職業体験をする場す

ら確保できないという問題がある。 こういった現状を打破するには、企業側がもっと専門学校への理解を深める

とともに、検定などへの評価を働きかける必要があると委員は指摘する。学生

が産業界に就職する時の客観的なスキルと数値化での検定試験の重要性を再確

認する必要がある。 一般財団法人日本ファッション教育振興協会は、 1 「ファッション販売能力検定試験」 2 「ファッションビジネス能力検定試験」 3 「パターンメーキング技術検定試験」 4 「洋裁技術検定試験」 5 「ファッション色彩能力検定試験」

を運営している。ファッションスクールに在学中に検定を受け、学生がどれだ

けの知識があるか、どの程度のレベルなのかを見る指標として、大いに有効活

用できるものである。 同協会も、より産業界のニーズを取り入れた検定に近づける努力をすること

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が必要であると認識している。企業がプロセスを重要視している中で、検定を

活用しての力量を数量的・定量的な違い、情緒的なことではなく、点数で測る

ことにより、そういった地方での就職における格差の是正にもつながっていく

ことが期待される。 また、教育の面で言えば、現在インターネットや skype などの通信手段が日々

整ってきており、さまざまな情報が共有できる環境が構築されてきている。こ

のような通信環境を活用し、そういった地方性について、ファッション専門学

校同士が連携をとり、情報を共有し、全国の専門学校の学生に学ぶ機会を与え

る教育が必要であると委員は指摘する。そうすれば、学生のチャンスも広げる

ことができ、成長させることができるという。 地方の専門学校では、東京などの都市圏におけるコンテストに参加させるた

めには、交通費がかかってしまう。学校からの支援は限られてしまっており、

遠方の学生はそういったチャンスをあきらめざるを得ない現状となってしまっ

ている。 しかし、コンテストなどに参加できる IT システムを構築することで、そうい

ったチャンスを逸することなく、学生がチャレンジできる環境が整えられる。

例示的に言えば、コンテストに作品を郵送し、オンライン上で審査をするシス

テムなどを考えていく必要がある。 普段からそのようなデジタルに精通していると、情報を取りに行くことが難

儀ではなくなる。そういった「学生にチャンスを与える教育」を、教育界は考

えていかなくてはならない。 こういったデジタルシステムの導入は、学生にチャンスを与えることももち

ろんであるが、様々な教育を受ける上でも有効であると委員は指摘する。例え

ば、遠隔授業や e-ラーニングといった、その地区でしかできなかった教育を全

国に広げることができる。 しかし、この遠隔授業のシステムには問題もある。クリエーションにおいて

は、素材などを実際に手に取って感触を確かめる、また技術の習得は実際に体

験をさせることが一番効果があると言われている。ただ、その地域でしか伝達

されない技術を知ることで、学生の興味や知識、理解の幅が広がるという意味

では、大いに期待されるところである。 現在のファッション教育では、他の業界と比べて IT システムの導入とその教

育に後れをとっていることが指摘されている。時代に即した教育の方法を考え

ることも、教育界に与えられた命題であろう。 そういった意味では「企業ニーズに呼応した実践型中核的専門人材養成産学

コンソーシアム」(代表校:大阪文化服装学院)では、実際に企業の協力を得て、

学生がショップを運営するカリキュラムを立ち上げたが、このカリキュラムで

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画期的な教育が導入された。この教育プログラムでは、企画・開発から商品の

仕入れ交渉、売場づくり、販促促進までの店舗運営を柱に、オリジナル商品の

企画制作と WEB サイトの運営を連動させて、学生が主体的に実践する内容とな

っている。注目すべきは、WEB ショップを導入した点である。WEB が得意な

学生をピックアップし、教員が指導を実施したが、売り上げ面で非常に好調で

あったという。店舗と同時並行で運営し、その商品を売るという形式をとった

が、実際に WEB を担当した学生も店頭に出て販売も経験した。現在のファッシ

ョン教育において、こういった WEB ショップへの指導が実践されたことは非常

に有効であったであろう。 日本のショッピングモール運営会社が、2012 年度のファッション EC におけ

る流通額を 3、567 億円と発表した。ファッションのネット販売において最大規

模のシェアを誇っており、欧米の有名 EC サイトとの競争激化が注目される中、

伸び代のあるファッション EC を拡大させ、更なる成長を目指している。 某アパレル企業は、リアル店舗の店頭で顧客にオンラインストアの利用を啓

蒙している。 スタッフの勧めによりオンラインストアを使い始めた顧客は、ま

すますそのブランドのファンになり、オンラインストアのみならず、リアル店

舗での年間購買額も増える、客単価もそうでない顧客の倍になるという例もあ

る。 こういった時代に即した販売形態、販売促進の方法を、教育側は常に意識し

なくてはならない。今後ますます WEB を駆使したファッションの形というもの

が確立されていくことが予想されることからも、そういった現状に目配せをし、

学生に伝えることが求められてくる。

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グローバル社会に向けた人材教育 この産学コンソーシアムの重要なテーマとなっている「ファッション界のグ

ローバル化」は、各職域プロジェクトが共通的に意識し、取り組んでいる命題

である。現在では自国だけでは大きな展望がなかなか開けず、国内生産は海外

生産へ、市場も海外市場へと展開をシフトしている。現に、日本製品の 9 割は

海外製と言われ、近年、日本アパレル系企業が海外の企業に買収をされるなど、

着実にグローバル化の波は日本に訪れてきている。 「デニム・ジーンズクリエーター養成プロジェクト」(代表校:中国デザイン

専門学校)では、世界の市場でも評価を得ている日本のデニム・ジーンズのブ

ランド構築やビジネスの展開について、これからのクリエーターに必要な知識

や技術を育成するための教育プログラムの開発に取り組む。その底流に流れる

意識として国際競争力があり、「作る」ことはもちろん、ファッション業界の求

めるマーケティングやマネジメントの知識を習得することを掲げている。ファ

ッション業界が確実にグローバル化していることを念頭に置いた取組みとして、

まさに時代に即した内容となっている。中国・四国地方には多く企業があり、

東北地方にもジーンズメーカーは多々ある。今後、そういったところも調査し

て、ジャパンデニム、ジャパンジーンズとはどういうものかを固めていき、そ

のうえでグローバル戦略を固めることに繋げる方針となっており、大いに期待

される。 リカレント教育の中でもグローバル化に対応した指導が必要という考えがあ

り、それを実施したのが「文化の根源の業(なり)、FASHION 分野の社会人教

育」(文化服装学院 生涯学習部)である。世界市場を視野にいれた展開のでき

る人材育成を目的の一つに設定し、カリキュラムに「アジアを中心としたグロ

ーバルなビジネス環境」や「グローバルビジネスの現状(異業種に見るグロー

バルビジネスのケーススタディ)」、特別講義として「“ファッション”における

グローバル化の視点」などを盛り込み、現在の国際化するファッション業界で

活躍するための人材育成を視野に入れたプログラムが構築されている。 日本貿易振興機構(JETRO)が 2012 年に発表したデータ(「中小企業の海外

展開とグローバル人材の確保・育成」に関する調査)に拠れば、グローバル人

材の確保、育成は、特に中小企業にとって大きな課題であるとしている。海外

ビジネスを行う上で、人材の問題は大きな足かせとなっている。さらに、JETROの独自ヒアリングアンケートによると、中小企業が直面している課題は大きく

3つに大別され、中でも多くの企業が課題として挙げたのが、「社内での人材育

成が困難」という意見であった。こういった現状がある中、「文化の根源の業(な

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り)、FASHION 分野の社会人教育」が果たした役割は非常に大きいと言えるで

あろう。 しかし、実際にグローバル化に向けたファッション教育は、専門学校におい

てはまだ進んでいないのが現状である。 「グローバルファッション人材育成プロジェクト」が今年度実施したファッ

ション系専門学校に対するアンケート調査報告によると、「グローバル人材教育

は行っているか」という質問に対し、行っていると回答した学校は全体の 13%、

予定しているという回答も 19%であることがわかった。 さらに、「グローバル人材育成を進める上で、問題点として挙げられるのは何

ですか」の問いに対し、「教員の確保」が最も高く、78%に及ぶことが報告され

た。また、「教育ノウハウが足りない」が 54.9%など、グローバル人材育成にお

いてファッション教育の課題が浮き彫りになる結果となった。

(n)

行っ

ている

行っ

ていないが、

今後予定をしている

現在、

予定はない

その他

無回答

91 13.2 19.8 60.4 5.5 1.1

都内 14 7.1 28.6 57.1 7.1 -

都市圏 29 17.2 24.1 55.2 3.4 -

地方 62 11.3 17.7 62.9 6.5 1.6

~50名 54 11.1 16.7 68.5 3.7 -

51名~ 36 16.7 25.0 50.0 8.3 -

:全体+5pt以上:全体-5pt以下

 全 体

地域

規模

13.2

19.8

60.4

5.51.1

0%

20%

40%

60%

80%

設問 2-1 グローバル人材教育を行っていますか

(n)

グロー

バル教育が

できる教員の確保

学生の資質

教育ノウハウが

足りない

日本独自の価値観・

社会観における

海外への認識

カリキュ

ラムを

組むことが難しい

成功例などの

経験則が足りない

国内で雇用が

充実してる

その他

無回答

91 78.0 61.5 54.9 33.0 26.4 24.2 11.0 6.6 2.2

都内 14 100.0 64.3 50.0 28.6 21.4 21.4 - 14.3 -

都市圏 29 89.7 62.1 55.2 34.5 24.1 27.6 6.9 6.9 -

地方 62 72.6 61.3 54.8 32.3 27.4 22.6 12.9 6.5 3.2

~50名 54 75.9 61.1 51.9 35.2 29.6 18.5 13.0 7.4 1.9

51名~ 36 83.3 63.9 61.1 30.6 22.2 33.3 8.3 5.6 -

:全体+5pt以上:全体-5pt以下

 全 体

地域

規模

78.0

61.554.9

33.026.4 24.2

11.06.6

2.2

0%

20%

40%

60%

80%

100%

その他自由記述

件数

グローバル人材としての就職先確保 1

世界視野を持って捉え、関心を引き出す環境 1

各国の文化や考え方が異なるため、学生の求めているものを理解するのが難しい。 1

地方なのでまだまだ差し迫った感じがない。 1

テキスト 不足 1

求められる人材像の情報が足りない 1

項目

設問 3-1 グローバル人材育成を進める上で、

問題点として挙げられるのは何ですか

(選択式・複数回答によるポイントで算出)

【参考資料】平成 24 年度調査実施 グローバルビジネスにおける人材育成のための専門学校教育実態調査

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グローバルビジネスにおいて現在市場の中心となっているのは中国である。

しかし、実際には中国をはじめとしたアジアのビジネスについて語ることので

きる人材は、日本でも数少ない現状があるといってよい。逆に、クリエーショ

ンの面で言っても、特に中国の技術、品質は着実に向上しているという現状も

あるわけだが、こういったファッション界の変動について対応できる教育が現

在求められている。 急速に市場が変化していった 2000 年代、こういったグローバル教育において

その対応が遅れをとった理由は、ファッションがヨーロッパを中心として発展

し、現在の教員はそれを学校教育として受けてきた。その蓄えた知識を授業と

して学生に伝えてきた反面、時代の潮流にうまく乗ることが出来ず、変化に対

応することができない結果となり、今となってようやく危機感を募らせていっ

ている現状にある。 これにより、ノウハウの蓄積が乏しく、教員の確保にも繋がらないといった

悪循環となっていることが実情となっている。 こういった現状を打破するためには、産業界と教育界の連携は必要不可欠で

ある。産業界が持っている知識を伝え、市場の変化に対応した人材の育成がで

きれば、学生の就職後のミスマッチのリスクも少なくなると言えよう。 さらに、教育すべきはまず教員であるという意見も数多く出された。上記の

ように、ヨーロッパを対象とした教育から未だに脱却できていない日本のファ

ッション教育が、さらに視野を広げるためにはまず教員の育成からはじめなく

てはならない。 現在、グローバル教育を取り入れている大学は急速に増え始めている。教員

も学生と同じで、常に学ぶ姿勢を取り入れて教壇に立たなければ、ファッショ

ン教育は他の業界の後塵を拝すことになることは避けられないだろう。そうい

った意味では、早急にグローバル教育を教員が学ぶことができるプログラムの

構築が求められるだろう。 さらに、前述の IT システムの導入、学校間の連携強化も欠かせない。地方に

はグローバル展開をしている企業が少ないエリアもあるため、産業界との連携

でも賄うことができない問題がある。こういった場合に、都市圏とインターネ

ット回線で同時に教育ができるようになれば、グローバルな視点は日本全国へ

と普及することになるだろう。こういった基盤整備のためにも、今後そういっ

たシステムの導入を検討していかなくてはいけない。

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学生同士が高めあう教育と国際競争力 教育界から参加する委員の学校では、留学生が多数在籍している。留学生のモ

チベーションは非常に高く、特に韓国からの学生は、兵役を終えて日本へ来る

ため、もう後がないという感情から、日本の学生の2倍の課題を仕上げてくる

という。また技術の練習でも、授業が終わった放課後に実習室を利用し、夜遅

くまで制作に励んでいる姿をよく目にするという報告があった。異国の地から

学びに来ているモチベーションの高い留学生がいると、周囲の日本人の学生も

触発される。良い刺激を受けて、自分も負けてられないと前向きになり、クラ

スの空気が良い方向に向かう。 また、北海道の学校の報告によれば、ブラジルの日系学生を受け入れている

という。彼らは現地の大学に通い、1 年間日本でファッションデザインを学んで

帰国するのだが、その意欲は非常に高く、やはり周囲の学生に良い刺激を与え

ているという。 海外から日本へ来る学生は、目的意識を持って来日をするため、そういった

意識の面で非常に明確である。故に、そのモチベーションは日本の学生と比べ

てはるかに高くなっていることは言うまでもない。 実際に、日本のコンテストに入賞する留学生も増えている。世界最大級のフ

ァッションアワードである Tokyo 新人デザイナーファッション大賞では、2012年度、中国の留学生がグランプリを受賞した。さらに、約 7500 点の中から最終

審査会への出場を決めた 25 作品のうち、9 人が海外出身の学生、その中で日本

に留学している学生が 4 名であった。 こういった学生たちが、日本で蓄えた知識を世界へと発信することは、非常

に喜ばしい反面、日本の学生は相乗効果としてもっと切磋琢磨して成長する必

要があろう。それをサポートすることが、教育としての責務である。 日本人が夢を持ってファッションを学ぶ環境を整え、モチベーションを高め

るプログラムを構築していかなくてはならない。 そのためには、学生同士を競争させる仕掛けが必要となる。特に専門学校で

は、一度社会を経験してからファッションを学びたいと思って再教育を受ける、

色彩や美術といったジャンルを学んで入学をする、全くの異業種からファッシ

ョンへの好奇心を胸に入学するなど、様々なバックグラウンドを持つ学生が混

在する。そういった学生のスキルアップ、レベルアップを図るためには、ある

テーマや課題、目標などを平等に投げかけ、その中でセレクションを実施する

といった競争する方法が今後求められるという意見があった。現在、コラボレ

ーションなどがどの学校でも盛んに行われているが、これを全員で取り組むの

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ではなく、学生自身がチャンスをモノにするように努力する環境を作ることが、

質の向上にも繋がってくる。 日本最大級のファッションの展示会を主催する委員の意見でも、若者の意欲

を向上させることは環境に密接に関連するという。その展示会における国内出

展者数は、成熟した企業においては減少をしているものの、創業して間もない

発展途上のブランドなどは多く出展しており、その意欲は決して衰えていない

という。マーケットそのものはシュリンクしており、業界全体としても好調と

は言えない現状ではあるが、その産業で自己実現していこうとする若者は、過

去に比べて多くなっているという。それは、展示会といった取引のチャンスを

モノにしようとする若い出展者の意欲が衰えていないことを意味するだろう。

そういった現状があるうちは、この国の国際競争力という点で、悲観すべき状

況ではないという意見があった。こういったチャンスの場を提供する、あるい

は掴みにいく環境次第で、ファッション界は今後大きく左右されることだろう。 日本人の学生の傾向として、どうしても一歩引いた姿勢で物事に取り組む傾

向にある。ドメスティックな環境であると、その中で淡々と与えられた学習を

こなし、それで満足してしまい、成長を止めることとなる。しかし、日本人が

海外の学校に留学し、日本の学校に入学しなおすと、積極性やコミュニケーシ

ョン力などが身に付き、チャンスをものにする貪欲さが生まれる。欧米は完全

なる競争社会であり、自分でチャンスをものにすることが生き残る最大の術で

ある。先ほどの「ハングリー精神」の指摘にも関連するこの貪欲さを、日本の

教育側として育んでいくことが今後必要となってくるだろう。

25

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日本のファッションスクールにおける語学教育の必要性 「グローバルビジネス=語学」が国際的な人材を育てると一概に言うことは

できない。しかし、実際に国際的に活躍をする上で、語学は避けて通れない難

題と言える。昨年度、企業を対象としたアンケートでも、グローバル人材に必

要な要件として語学は上位となっており、さらに本年度実施した専門学校への

アンケートでも同様の結果が得られた(次頁参考資料)。 日本のファッションスクールがグローバル化に対応するためには、語学教育

について今一度考える必要性に迫られている。長期インターンシップや学校間

同士の提携による交換留学システムなど、その基盤をいくら整備したとしても、

現地で教えられる言語に対応できなくては、技術の向上が図れないという面が

ある。 現在、その問題に対処すべく教育プログラムに語学を組み込むといった対応

を取る学校が少しずつ増えてきてはいるものの、やはりそういった面で日本の

教育は弱いと言わざるを得ない。韓国や中国では学習レベルも高く、小学校 6年生の段階で日本の高校受験レベルの英語力を要求している。日本の公立中学

での英語の年間授業時間数はアジアの中国、台湾、韓国、ベトナム、タイから

みるとまだまだ低い。グローバル社会に羽ばたく人材を育てる観点から言えば、

世界水準より劣っている状況となっている。 産学コンソーシアム委員が指摘するのは、インターネットで一般の人でも世

界を身近に感じることができるようになった昨今、言語力さえ身につけば、チ

ャンスを掴む可能性を高くすることができる点だ。同委員が過去に受け持った

留学生が発言したのは、「言語力が大事」ということで、これを聞いて大変印象

深かったとのことだ。 これからのグローバル社会で生き残るために企業も積極的な動きを見せてお

り、ドメスティックでは生き残れないという意識を持っている。ファーストリ

テイリングが公用語を英語とする方針を発表したことは記憶に新しいが、この

動きは加速するだろう。その動きが活発化すると、今度は外国人枠、国籍が取

り上げられる動きは減少していくことになる。 このように、ファッション企業がグローバル化する中、専門学校でも検討を

進めていかなくてはならない。すでに、大学の中には英語を公用語としている

学校も出始めた現状がある。限られた時間の中で、どのようにして語学力を学

生が身に付けることができるのか、今後のグローバル社会への対応に向けた検

討は進められるべき段階まで来ている。

26

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総得点数

コミュニケーション能力

語学力

交渉能力

好奇心・チャレンジ精神

決断力

問題発見能力・分析力・解決能力

異なる価値観への順応力

マネジメント能力

リーダーシップ

計画性・タイムマネジメント

日本に関する知識・アイデンティティ

貿易実務

計数管理能力

ICTスキル

海外生活・留学経験

その他

2363 482 297 285 224 220 193 141 134 108 75 55 43 36 36 16 18アパレルメーカーのみ 1012 191 126 139 104 105 66 52 64 60 42 12 11 25 8 7 -小売業 150 38 14 11 10 22 16 10 17 4 3 - 2 - 3 - -繊維産業 216 44 22 32 20 14 22 16 8 15 3 5 10 2 - 3 -その他のみ 510 114 61 56 38 44 42 31 31 18 7 21 14 6 13 6 8SPA 175 39 31 21 12 10 17 12 6 8 7 5 1 1 5 - -その他複合 300 56 43 26 40 25 30 20 8 3 13 12 5 2 7 - 10~1億円 120 17 14 21 10 20 10 4 3 - 1 6 8 5 - 1 -1億円~10億円 672 128 92 79 78 65 45 26 41 22 36 20 7 11 12 5 511億円~100億円 1001 202 122 129 96 79 95 56 54 57 34 8 21 14 21 5 8101億円~500億円 285 59 45 23 26 26 23 22 13 15 3 16 7 1 - 1 5501億円~ 225 60 24 20 10 29 12 27 21 5 1 5 - 4 3 4 -1名~10名 388 55 44 64 48 52 24 22 18 8 21 16 2 10 4 - -11名~50名 568 124 75 59 52 50 56 30 34 18 26 8 14 5 11 6 -51名~100名 439 77 61 59 29 24 44 18 24 28 17 5 17 10 11 - 15101名~500名 533 108 75 66 67 54 29 28 25 32 7 15 10 4 7 3 3501名~ 405 109 42 34 24 39 35 43 32 17 4 9 - 7 3 7 -

:Top1 :Top2 :Top3

社員数

 全 体

業態・業種

売上高

297 285

224 220193

141 134108

75

43 36 3616 18

482

55

0Pts

100Pts

200Pts

300Pts

400Pts

500Pts

総得点数)

コミュ

ニケー

ショ

ン能力

語学力

決断力

異なる価値観への順応力

好奇心・チャ

レンジ精神

問題発見能力,分析力、

解決能力

交渉能力

マネジメント能力

日本人としてのアイデンティィ

リー

ダー

シッ

ICT スキル

海外生活経験、

海外留学経験

計画性、

タイムマネジメント

貿易実務

計数管理能力

その他

1309 269 242 212 130 123 83 56 52 42 36 23 21 13 5 1 1

都内 193 35 35 24 15 18 18 9 12 5 13 1 7 - - - 1

都市圏 418 96 88 69 37 29 25 16 17 7 16 5 9 1 2 - 1

地方 891 173 154 143 93 94 58 40 35 35 20 18 12 12 3 1 -

~50名 792 162 140 127 89 61 45 30 36 27 27 20 13 12 3 - -

51名~ 517 107 102 85 41 62 38 26 16 15 9 3 8 1 2 1 1

:Top1 :Top2 :Top3

 全 体

地域

規模

269

242

212

130 123

83

56 5242 36

21 13 5 1 123

0pts

50pts

100pts

150pts

200pts

250pts

300pts

【参考資料】平成 24 年度調査実施 グローバルビジネスにおける人材育成のための専門学校教育実態調査

設問 3-1 グローバル人材育成を進める上で、問題点として挙げられるのは何ですか

(選択式・複数回答によるポイントで算出)

【 企 業 】

【専門学校】

【参考資料】平成 23 年度調査実施 グローバルビジネスについてのアンケート

設問 3-5 グローバル人材に求められる用件について(選択式・複数回答によるポイントで算出)

27

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今後、さらに産学協同・産学連携を強化すべきである 学生が実際に職業を体験する、また現場で働く人の声を生で聞くことは大変

重要である。直接的な技術伝達は、教材による知識の習得、講義によって学生

が受け身となる形式よりもはるかに効果的であり、職業意識を高めるという面

でも有効であると考えられる。 そのような意味では、「グローバルファッションクリエーター人材養成産学コ

ンソーシアム」(代表校:名古屋学芸大学)のカリキュラムでは、実際に工場・

施設の見学による技術伝達があり、さらに匠と言われる講師による特別講義か

ら、その情熱を汲み取るといった部分まで、実際に肌で感じることのできる手

法がとられており、大変注目されるべきものである。委員の報告によれば、専

門の講師にじかにレクチャーをもらい、学生自身が素材の加工をするなどして、

自分のイメージに近づけるという過程のプロセスが有効であったとする学生の

意見が出た。 こういった取組みには、産業界と教育界の連携が必要不可欠であり、今後さ

らに強化、推進すべきである。産業界の協力により実施されるインターンシッ

プなどの職業体験制度は、学生の仕事に対する考え方を深め、将来自らの職業

選択にも大いに意味性の高いものとなっている。 しかし、委員の指摘としてあったのは、産学協同、産学連携はまだ道半ばで

あるという。一時代前に比べれば、産業界と教育界が連携する事業は増えたが、

目的、共通目標というものの設定がまだできておらず、前進が見られないとの

ことだ。 十数年間、産業界は伸び悩みの傾向があり、送り込む教育側も元気がないと

いう構図が出来上がっている。企業に体力があった時代には、社会に出てから

の教育は、全て会社で請け負うというスタイルが存在した。現在、それが崩れ

ていっている。企業は疲弊し、中には教育自体アウトソーシングする状況とな

っている しかし、実際にファッション業界を活性化するためには、産業界と教育界、

関係団体が本当に必要なことは何なのかを協議することが求められる。ファッ

ション企業はもちろん、日本のファッションスクールは全国に点在しており、

これを一堂に集めて実施することは、物理的にも経済的にも難しいが、ある程

度の方針に関しては中心となる組織がまとめ、これを各地域、エリアに落とし

込み、推進する必要性があるという意見が出された。そのような体制を確立さ

せ、目に見える形で目的を定めることで、新しい産業振興が生まれ、業界の活

性化にも寄与できると考えられる。

28

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2.クリエイティブ(ファッション)分野の 各職域プロジェクト実施報告

29

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クリエーション 事業名称:テキスタイルおよびクリエイティブ分野におけるグローバルな人材

育成プロジェクト 事業通称:グローバルファッションクリエーター人材養成産学コンソーシアム 代 表 校:名古屋学芸大学 参加協力:文化ファッション大学院大学、杉野服飾大学、名古屋学芸大学、

名古屋学芸大学大学院、名古屋ファッション専門学校 ㈲テ・アシュ・デ ラ メゾン、中伝毛織㈱、森技術士事務所、 毛織物工業組合(尾州)、名古屋ファッション協会、 ㈶一宮地場ファッションデザインセンター 取組概要:繊維・ファッション分野は、かつて日本経済の牽引力であったが、

他国の追い上げにより、今大きな曲がり角に立っている。 その状況下にあっても、日本製のデザイン性、品質性などは今なお、

世界のトップクラスであり、「made in Japan」の強みを維持してき

た。我が国における同分野の再構築には、企画力を生かした新製品

の開発が必要不可欠であり、これを実践することにより、再度日本

が世界を牽引することへと繋げることが期待できる。 そのためには、今まで以上にグローバルな視点に立ち、ファッショ

ン分野で活躍できる総合力を有した人材の育成が急務といえる。 今回、本職域プロジェクトの前身であるクリエーション分科会にお

いて昨年度実施した調査結果などを基に、教育機関と産業界が連携

した共同事業(素材開発技術の伝承、開発協力など)、企業との連携

事業、多様な教育機関による共同事業などを素材開発、製品制作な

どで具体化し、中核となる実践的な人材養成システムの基盤構築に

取り組んだ。

30

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・次世代を担う若者に技術を伝承する魅力と経験をさせ、今後クり

エーターとして地場産業の技術を後々まで伝えるためのプログラム

を完結させる。

・世界に誇れる製品を作り出し、注目されることにより、関連企業の

働きが一段と活発となることを目指す。

・大規模な素材展などで発表し、専門家の評価を得る。最終目標は、

デザイナーとして国内・海外で活躍する学生の育成を目指す。

・昨年度に実施した調査結果を基に、教育機関と産業界が連携した

共同事業(素材開発技術の伝承、開発協力など)

・ファッション業界における先進的な教育機関との連携等の事業を

通じて、グローバルな視点を有した高度な専門職業人を養成

・企業との連携事業、多様な教育機関による共同事業等を素材

開発・製品製作等で具体化

・成長分野において中核となる実践的な人材養成システムの基盤を

構築

日本経済の牽引力であったファッション業界は、世界経済の中心と

なりつつある中国、急成長する東南アジア等の追い上げにより、

大きな曲がり角に立っている。

その状況下にあっても、日本製品のデザイン力、品質性等は今なお

世界でもトップレベルである。

我が国における同分野の再構築を促すには、その特性を生かして

時代が求める新製品の開発を促進することにより、改めて成長分野

として期待出来るものと考えられる。

そのためには、これまで以上にグローバルな視点に立ちファッション

分野で活躍できる総合力を持った人材を養成することが急務である。

平成

24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ(ファッション)分野職域プロジェクト(クリエイション)】

「テキスタイルおよびクリエイティブ分野におけるグローバルな人材育成プロジェクト」

(学校法人中西学園名古屋学芸大学)

課題・ニーズ・背景等

取組の概要

成果目標(アウトカム)

体制イメージ図

参加・協力機関等

○教育機関

文化ファッション大学院大学

杉野服飾大学

名古屋ファッション専門学校

名古屋学芸大学大学院

名古屋学芸大学

○産業団体・企業等

有限会社テ・アシュ・デラメゾン

中伝毛織株式会社

森技術士事務所

毛織物工業組合(尾州)

○関係団体

ナゴヤファッション協会

財団法人一宮地場ファッション

デザインセンター

職域プロジェクト

技術研究

技術習得

技術伝達

ニーズ調査

人材育成プロジェクト

産地企業・専門家との素材開発新テキスタイル製作

・ウール素材を使用した新しいテキスタイルからのクリエーション

・学生クリエーターによる新テキスタイルを用いた作品制作

新素材利用のデザイン提案

技術提案・技術指導

デザイン提案・技術習得

ファッションショー

展示・評価会

テキスタイル・ファッションデザインクリエーターとして

グルーバルに活躍できる人材の育成

(素材開発を目的とした素材展・コンテスト等に出品し評価を得る)

第三者評価

31

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今回築いた各教育機関の強い連携をもとに、ウール以外の素材開発

技術の習得や素材を活かしたデザイン作品制作を実施・発表を行う。

素材展や学会・セミナー等で産地の現状や素材開発技術を提供し、

日本の素材の良さをを国内外に発信していく。

若い世代の学生に日本の技術の高さを再認識させ、技術の伝承と

ともに、新しいテキスタイル制作を行えるクリエイターを育成する。

国内素材展

『10

th J

APA

N Y

AR

N F

AIR

&総合展「TH

E尾州」』

にて専門家の評価を得る。

●業界と教育機関・学生とのパイプをつくる

●若い感性をもとに海外に視点を向けたものつくりを強化

●学会やセミナー、研究会などでこの取り組みを広く紹介し、

指導者達に技術伝承の必要性をアピール

成果(アウトプット)

①企画・検討

・クリエイティブ分野の職域プログラム(クリエーション)にて

ウールの素材開発方法について検討

・開発した素材のデザインや使用素材等の検討

・展示、ファッションショーの演出、日程等の検討

②企業研修

対象者:文化ファッション大学大学院

杉野服飾大学

名古屋ファッション専門学校

名古屋学芸大学大学院

名古屋学芸大学

参加人数:

32名

研修先:中伝毛織株式会社

藤井整絨株式会社

一宮地場産業ファッションデザインセンター

③技術講座

≪第

1回≫

対象者:文化ファッション大学院大学/杉野服飾大学

学生・教員

受講者数:

55名

実施日:12月

10日(月)

≪第

2回≫

対象者:名古屋学芸大学学生・教員

名古屋ファッション専門学校教員

受講者数:

87名

実施日:1月

8日(火)

④普及活動

・今回習得した技術・知識を伝達し、作品制作へ還元

・繊維関係・アパレル企業に対して成果の配布(予定)

・国内外の素材展や学会・セミナー等で取組の紹介

取組内容

成果の活用・

次年度への課題等

平成

24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ(ファッション)分野職域プロジェクト(クリエイション)】

「テキスタイルおよびクリエイティブ分野におけるグローバルな人材育成プロジェクト」

(学校法人中西学園名古屋学芸大学)

【H

23】

クリエイティブ分野

の中核的人材養

成のための新学習

システムの構築推

進プロジェクト参加

【H

24】

尾州のウール

素材開発の技

術習得と普及・

技術伝承を目

的とした職域プ

ログラム実施

【H

25】

他素材(化繊・

綿素材)産地の

技術習得と普

及・技術伝承を

継続

32

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平成

24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ(ファッション)分野職域プロジェクト(クリエイション)】

「テキスタイルおよびクリエイティブ分野におけるグローバルな人材育成プロジェクト」

(学校法人中西学園名古屋学芸大学)

モデル・カリキュラムのイメージ

≪レベル1≫

繊維知識の修得

繊維の基礎知識を学ぶ

≪レベル2≫

素材知識の修得

素材の持つ特性を

物性試験等から修得する

≪レベル3≫

繊維素材の制作

繊維素材制作の

基礎知識・技術を修得する

≪レベル4≫

産地研修

ウール産地尾州にて素材開発を積

極的に行っている企業への研修

≪レベル5≫

専門知識研修

ウール開発の専門家・研究者から

知識・技術を修得

≪レベル6≫

素材開発

企業・専門家協力のもと素材開発

基礎知識・技術の修得

基礎知識・技術の修得

オ リ ジ ナ ル

素 材 の 開 発

オ リ ジ ナ ル 素 材

を 活 か し た

デ ザ イ ン の 検 討

作 品 制 作

素 材 展 で の 作 品

発 表 を も と に

グ ロ ー バ ル に

活 躍 で き る

人 材 を

海 外 へ も 発 信

国内最大のウール

素材展にて作品発表

(展示・ファッションショー)

第3者評価

33

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平成

24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ(ファッション)分野職域プロジェクト(クリエイション)】

「テキスタイルおよびクリエイティブ分野におけるグローバルな人材育成プロジェクト」

(学校法人中西学園名古屋学芸大学)

達成度評価基準・手法等のあり方のイメージ

項目

修得・実践内容

到達指標

繊維・素材の基礎知識

①基本的な繊維知識(天然繊維・化学繊維)の修得

基礎

知識・技術

の修得

(単位修得)

②繊維の特性・物性試験などの基礎実験知識の修得

③繊維の基礎的な仕上げ加工技術の修得

ウール素材の

基礎知識・応用

①ウールの特徴・特性について

(弾力性、吸湿・放湿性、保温性、染色性、縮絨性、難燃性、撥水性、抗菌・消臭、生分解性、虫害)

ウール素材

の知識の

修得 ・

作品制作

に必要とな

る加工技術

の修得

②ウールの優れた染色性について

③感性溢れる毛織物の風合いについて(KE

S基本特性項目と単位)

④ウールの仕上方法について

梳毛・・・クリヤー、メルド(メルトン)、サキソニー、フラノ・紡毛・・・クリヤー(ツイード等)、縮絨(メルトン)

⑤ウールの後加工について

物理・・・縮絨、煮絨、釜蒸、カレンダー、起毛・剪毛、エンボス、プラズマ、タンブラー、絞り

化学・・・酸化・還元、樹脂加工・コーティング、酵素加工、アルカリセット

⑥毛織物の高付加価値付与加工

物理・・・ツイード、サキソニー、フラノ、メルトン、ベロアー、ビーバー、モッサー、ウェーブ、

シャブローネデザイン剪毛、ハイラック高光沢、プラズマ

化学・・・酵素、酸化一還元、ストレッチ、プリーツ、撥水・撥油、抗菌・消臭、防虫・防カビ、

賦香、

Mac

hine

was

habl

e、風合い改善

デザイン・作品制作

①ウール素材の加工・制作

作品の

完成度

(第3者評価)

②加工した素材を活かしたデザイン力

③ウール素材の縫製技術力(作品制作)

34

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ファッションビジネス 事業名称:ファッション業界の新ニーズ対応力とマネジメント能力開発に向け

た実務・実践型人材育成プログラム構築プロジェクト 事業通称:企業ニーズに呼応した実践型中核的専門人材養成産学コンソーシア

ム 代 表 校:大阪文化服装学院 参加協力:文化学園国際ファッション産学推進機構、

大阪文化服装学院、香蘭ファッションデザイン専門学校、 協同組合関西ファッション連合、㈱玉屋、㈲エムズ、 ㈲デンバク ファノ デザイン、㈱コスモポリス、 繊研新聞社大阪支社 取組概要:産業構造・社会構造の変化が進む中、ファストファッションの台頭

や、生産背景の国内離れ、ファッション意識の多様化などにより変

革を強いられている。また、若者の離職率の増加など産業側の雇用

に対するニーズも変化してきている。一方、国勢調査統計によると

就業者数や増加数の多い職業に販売員が上げられるが、その離職率

が増加し、とりわけ若い世代に集中する。 そんな中、次世代にむけ業界の活性化および販売員の地位向上並びに

キャリアアップを視点として多様化する企業のニーズに呼応し、時

代・環境の変化に即応できる人材育成を目的とし、企業ヒアリング調

査より販売人材スキル標準とキャリアアップ策定、中核的専門人材を

養成するカリキュラムを策定・構築していく。 本年度は、学生企画による実践ショップ「amp」の企画・開発から

仕入れ交渉、売場づくり、販売促進までの店舗運営を柱に、オリジ

ナル商品の企画・制作と WEB サイトの運営を連動させ、実務・実践

型人材育成カリキュラムの構築に取り組んだ。

35

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平成24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進

職域プロジェクト【クリエイティブ(ファッション)分野】

ファッション業界の新ニーズ対応力とマネジメント能力開発に向けた実務・実践型人材育成プログラム構築プロジェクト(大阪文化服装学院)

課題・ニーズ・背景等

事業内容

参加・協力機関等

成果目標

・産業構造・社会構造の変化が進む中、ファスト

ファッションの台頭や生産背景の国内離れ、ファッ

ション意識の変化などによりファッションビジネス業

界は変革を迫られている。

・若者の離職率の増加など、産業界の雇用に対す

るニーズも大きく変化してきた。

・国勢調査の統計によると就業者数や増加数の多

い職業として「販売員」が挙げられるが、その半面

では離職率も増勢基調にある。

・ファッションビジネス業界でも企業は即戦力となる

人材の採用・確保を優先している。とくに基本であ

る販売実務に加えて、売場のマネージメントやマー

チャンダイジング、プロモーション、バイイングなど

を総合的な知識、技術を習得し、実践できるゼネラ

リストの育成が急務と判断する企業が多くなってい

る。中長期的な視点からビジネス戦略を構築でき

る人材、新しいビジネスモデルを開発できる実践

力に裏打ちされた人材を求めている。

①企業が求める人材の職業教育およびキャリア

アップに関する調査・ヒアリングを実施。ファッ

ション業界が求める人材需要に対して、教育機

関に求められる課題を抽出・整理し、その対応

策、求められる人材を検証する。

②実務・実践型人材を育成するために効果的な

教育プログラム構築に向けた調査・研究を行う。

③教育プログラムの開発を他のファッション系専

門学校に普及させるとともに、教育現場で導入・

活用できる実践事例コンテンツの開発。

④ファッションビジネス分野における専門人材の

能力標準の策定

・産業人としての基礎的スキル

・ファッションに特化した専門的スキルの習得

・ファッション業界の新しいニーズへの対応やマ

ネージメント能力の養成

・多様化するファッションビジネス業界にお

いて、顧客ニーズに対応する現場感覚、

実務能力、実践力を養い、プロデューサー

的立場

(商品の企画から生産管理、販売

促進、店頭や商品管理まで

)を担える中核

的専門人材の養成を目的とする。

・企業ヒアリング調査等により販売人材の

標準スキルとキャリアアップ策定

・中核的専門人材を養成するカリキュラム

の策定・構築

◎教育機関

学校法人文化学園国際ファッション産学推

進機構

香蘭ファッションデザイン専門学校

学校法人ミクニ学園大阪文化服装学院

◎団体・企業など

協同組合関西ファッション連合

株式会社玉屋

有限会社エムズ

有限会社デンバクファノデザイン

株式会社コスモポリス

◎報道機関

繊研新聞社大阪支社

体制イメージ図

36

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成果

取組内容

成果の活用・

次年度への課題等

学生企画による実践ショップ「am

p」(売場面積

16平方

㍍)の企画・開発から商品仕入れ交渉、売場づくり、販

売促進までの店舗運営を柱に、オリジナル商品の企

画・制作と

WEBサイトの運営を連動させ、実務・実践型

人材育成カリキュラムの構築に取り組む。

①店舗運営の実施(平成

24年

9月28日~

12月

25日)於:玉屋・

Mus

e’s心斎橋本店内

売上高

1,80

3,03

6円(予算比

61%

) 買上げ客数

493人

商品構成比アパレル

72.7

% アパレル雑貨

14.7

% 雑貨

12.6

%

②W

EBショップの開設・運営(

〃)

売上高

22,0

00円

(注文数

4件)

③オリジナル商品の企画制作・販売および販売促進イベントの実施

売上げ実績

10点

(消化率

33%

)

④店舗運営について、企業からの指導、評価体制の確立

・企業の協力を得て、店舗運営にかかわる問題点を抽出。改善策の

立案、実施

⑤店舗運営を通して、学校、企業による参加学生の評価システム(初

級レベル)の確立

⑥店舗運営、

WEBサイト、商品企画に必要なカリキュラム基準の検

討および策定

⑦販売促進イベントの実施

SN

Sによる

WE

Bプロモーションの一環として「スタイリングコンテスト」

顧客開拓を狙いに「ハロウィンパーティ」のイベント実施

(150人が参

加)

①店舗運営全般に関わるカリキュラム開発

②中核的専門人材(初級)スキル領域の整理と到達度指標および評価方法の確立

③商品プロデューサーに必要な知識スキルと業務範囲の概要把握

①カリキュラムへの反映

・店舗運営のためのモデルカリキュラムの検討、開発

・WE

Bサイト立ち上げ、運営のためのモデルカリキュラムの検討、開発

・オリジナル商品の企画開発のためのモデルカリキュラムの検討、開発

・他校への普及スケジュールの策定

②評価体制および評価手法の確立、到達度指標づくり

・ステップⅡ(中級)、ステップⅢ(上級)に対応した評価項目の検討

・“プロデューサー

”の業務範囲、内容、組織内に位置づけ、権限等について企業

・ヒアリングの実施とまとめ

③実践店舗のあり方について検討

・運営期間の再検討

・店舗立地に対応した品揃えモデルの企画立案

・オリジナル商品開発のあり方

(プロダクトアウトかマーケットインか

)・マーケッティング力の強化

平成24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進

職域プロジェクト【クリエイティブ(ファッション)分野】

ファッション業界の新ニーズ対応力とマネジメント能力開発に向けた実務・実践型人材育成プログラム構築プロジェクト(大阪文化服装学院)

37

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平成24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進

職域プロジェクト【クリエイティブ(ファッション)分野】

ファッション業界の新ニーズ対応力とマネジメント能力開発に向けた実務・実践型人材育成プログラム構築プロジェクト(大阪文化服装学院)

モデル・カリキュラムのイメージ

産業人としての基礎的な

スキル(知識

+能力)を習得

ファッションに特化した専門的

スキルの習得

ファッション業界の新たなニーズへの

対応やマネジメント能力の養成

ファッション業界で活用できる基礎的な

スキルを身につける段階

ファッション業界をけん引していく

専門的スキルを習得する

多様化する時代に即したファッションの形

を創造する能力を習得する

Ste

p.1

Ste

p.2

Ste

p.3

ドローイング

服飾造形

(パターンとサンプル製作)

ク リ エ ー シ ョ ン 基 礎

セールスコミュニケーション

/セールスワーク

ディスプレイ

販売知識

コーディネイト論

リテイルマーチャンダイジング

マーケットリサーチ

ショッププラン

商品プラン

アパレル経営ゼミ

(2年次

)

DTP(フォトショップ・

イラストレーター)、

WE

B

フ ァ ッ シ ョ ン ビ ジ ネ ス 基 礎

アパレル素材

共 通カラー

コンピュータ

(ワード・

エクセル・パワーポイント

)

インターンシップ

そ の 他

フ ァ ッ シ ョ ン 専 門 資 格 取 得

フ ァ ッ シ ョ ン ビ ジ ネ ス 能 力 検 定 ( 2 、 3 級 )

フ ァ ッ シ ョ ン 販 売 能 力 検 定 ( 〃 )

フ ァ ッ シ ョ ン 色 彩 能 力 検 定 ( 〃 )

販 売 士 3 級

オリジナル商品開発

クリエーション

マネジメント

ファッションビジネス

マーケティング

グローバルビジネス

グローバルマネジメント

社会人教育

マネジメント

クリエーション

グローバルクリエーション

ファッションビジネス

ファッションビジネス演習

グローバルビジネス演習

[外国とのビジネスに必要な、より

実践的交渉術の鍛錬。アジア産地研究など

]

社会人教育

プロデューサー養成演習

フ ァ ッ シ ョ ン 分 野 に お け る 中 核 的 専 門 人 材 を 育 成

これらファッションにおける

基礎的知識を習得

就業

ex.アパレル業界、小売業

百貨店など

異業種からの参入

キャリア・アップ

マネージャー・専門クリエーター

として活躍

起業プランニング

海外短期研修

財務、管理分析

企業組織論

ブランディング、メディア戦略

38

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評価項目

チェックポイント(4/3/2/1で評価)

・業界動向、マーケットサイズ分析

・業界を取り巻く環境分析

マーケティング

・ターゲット設定、店舗コンセプト、ポジショニングの企画立案

・競合分析(相手、店舗戦略の把握、MD、プロモーション)

・顧客分析(商圏特性の把握、立地特性、顧客属性の把握)

・顧客ニーズの把握

<店外プロモーション=訴求・誘導機能>

・チラシ、WEBサイトによる告知

・イベント、セールに関連する告知

<店内プロモーション=巡回・選択・購買機能>

販売促進の取り組み

・店頭訴求に工夫

・什器、備品、照明

・POP広告

・商品知識、接客技術のレベル

・優良顧客獲得のためのカード、ポイントなど

・レイアウトや陳列に工夫(売場の回遊性)

●自店分析

<定量的な分析>

・収益性(売上、粗利益、営業利益、販管費/損益分岐点等)

・安全性(キャッシュの潤沢、自己資本比率)

・生産性(商品・売場、人的効率、人時生産性、労働分配率)

<定性的な分析>

店舗立地に対応した

・組織風土、店長のスキル、従業員の量的、質的充実

品揃え、価格設定

<MD>

・商品ライン数~広い、狭い

・商品アイテム~深い、浅い

・仕入体制、方法

・主力カテゴリー(重点販売商品)は明確か

・価格帯~高い、低い

・商品の品質・安全性・機能性

・流行の取り込み度合い

オリジナル商品の

・商品の安定的供給

企画・制作・販売

・他店との差別化ポイント

・販売員が商品の良さを説明できるか

・顧客が買いたくなる価格設定

・商品ミックス(ラインとアイテム)

・仕入先の選定と開拓

・仕入方法の検討

店舗運営力

・機会損失の防止

(期中対応の進め方)

・在庫の適正化

・在庫効率の向上

・売場レイアウトなどの見直し

・各種数値分析による現状把握

店舗開設・運営および商品企画制作に関する評価項目(案)

平成24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進

職域プロジェクト【クリエイティブ(ファッション)分野】

ファッション業界の新ニーズ対応力とマネジメント能力開発に向けた実務・実践型人材育成プログラム構築プロジェクト(大阪文化服装学院)

達成度評価基準・手法等のあり方のイメージ①

39

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平成24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進

職域プロジェクト【クリエイティブ(ファッション)分野】

ファッション業界の新ニーズ対応力とマネジメント能力開発に向けた実務・実践型人材育成プログラム構築プロジェクト(大阪文化服装学院)

達成度評価基準・手法等のあり方のイメージ②

知識・技術項目

配点

自己評価

第3者評価

●学生コメント

●企業・学校コメント

1.出勤態度、勤怠

4

基2.挨拶、身だしなみ、勤務態度

4

本3.健康管理

4

4.報告義務

4

16

1.規律性と協調性

4

態2.責任感

4

3.積極性とフットワーク

4

度4.自己啓発

4

5.モラルの向上

4

20

1.理解力と判断力

4●学生コメント

●企業・学校コメント

2.表現力

4

能3.創意工夫

4

4.決断力

4

力5.仕事の正確さ、速さ

4

6.情報収集力

4

7.交渉力

4

28

1.整理整頓

8●学生コメント

●企業・学校コメント

作2.備品チェック

6

3.朝礼・終礼

6

4.売場の点検

8

5.検品、値付け

6

業6.レジ取扱い

6

7.報告業務

8

8.棚卸

6

9.パソコン初級能力

6

60

1.接客販売技術

8●学生コメント

●企業・学校コメント

2.MD方針の理解、顧客への伝達

8

販3.コーディネイト力、VP力

8

4.売れ筋、死に筋の発見と報告

8

5.顧客ニーズの吸収と伝達

8

6.商品知識

6

7.個人別販売予算の達成度

6

8.顧客管理(顔と名前を覚える)

6

売9.顧客管理の発展(名簿の活用)

6

10.商品の売り切り努力

6

11.オリジナル商品の特徴理解と顧客への説明

6

76

評 価200

達成度評価基準(案)

40

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平成24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進

職域プロジェクト【クリエイティブ(ファッション)分野】

ファッション業界の新ニーズ対応力とマネジメント能力開発に向けた実務・実践型人材育成プログラム構築プロジェクト(大阪文化服装学院)

職域プロジェクトの課題・方向性

職域プロジェクトの課題・方向性

①平成

25年度も引き続き、ブランドマネージメント学科

3年が玉屋・M

use’

s心斎橋本店で店舗運営と並行して、

WEBサイトの立ち

上げ、オリジナル商品の企画制作に当る。

・店舗運営期間の検討

→3カ月は短いとの指摘があり、期間を検討する

・店舗立地に合致した品揃え提案ができなかった

→立地条件や商圏特性、競合など事前のマーケット調査を徹底し、ターゲットを明確化に重点を置く。このためマーケッティングリサーチのカリ

キュラム刷新を進める。

・小ロット生産であるため、オリジナル商品の上代が高くなる

→マーケットインの発想に徹し、売れる上代設定から逆算して原価を検討する、売り切るための販売面の工夫

→オリジナル商品企画の精度を高めるため、リサーチ結果の分析力、ドローイング力を高めるほか、「商品プラン」のカリキュラム内容を刷新。

②ファッション分野における中核的専門人材のスキル領域・項目を整理し、その到達度指標および評価方法を構築。専門人材

の能力標準の策定

・ファッション産業人として基礎的スキルを習得した「初級」に加え、ファッションに特化した専門スキルの習得を目指す「中級」、新しいニーズ

への対応やマネージメント能力を備えた「上級」の能力標準を策定すると同時に、到達度指標、評価方法を構築する。

③企業ヒアリング調査の実施により、商品プロデューサーに必要な知識、スキルを明確化する。

・企業におけるプロデューサーの役割、位置づけ、業務範囲・内容、キャリアアップの仕方をヒアリング調査。学校として進めているカリキュラ

ムに反映させる

41

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グローバルビジネス 事業名称:ファッション分野の中核的専門人材養成のための新学習システム構

築推進プロジェクト 事業通称:グローバルファッション人材育成プロジェクト 代 表 校:文化服装学院 参加協力:文化学園大学、文化服装学院、大阪文化服装学院、

㈲シナジープランニング、㈱繊研新聞社、 (一社)日本ファッションビジネス協会、 (一財)日本ファッション教育振興協会

取組概要:2012 年度、本職域プロジェクトの前身であるファッション分野にお

けるグローバルビジネスコンソーシアムの方向性を踏襲し、時代に

即応したグローバルな人材の養成を目的として、その具体的な教育

プログラムを調査・研究・協議を行った。 ファッション界は、繊維から卸、小売まで多岐に亘って細分化さ

れているが、そういった業界にも目配りをし、産業界からの参画を

はじめ、アパレル関係団体、教育界など、多方面から構成するコン

ソーシアムを組織し、厚みのある連携体制を図った。特にグローバ

ル人材育成のためには、海外におけるマネジメントなどのスキルの

向上が必要であり、そのためには世界の文化や風土、市場への理解

が不可欠である。こういった次代に向けた人材養成に取り組むため、

グローバルな視点を養う学習システム構築に取り組んだ。 グローバル人材の育成に必要な要素を模索し、昨年度企業に対して

実施したニーズアンケートなども踏まえながら、検討が進められた

が、議論の中では、海外での職業教育にも目配りをしたグローバル

な視点にも焦点を当て、中核的専門人材養成との見地から、ファッ

ション界で急激に進む国際化の流れなども勘案し、カリキュラムを

構築、「グローバルファッションリーダー養成ゼミ」開講に至った。

同時に、汎用性のある達成度評価基準の検討なども行い、将来この

事業が全国的に普及できることも念頭に協議した。

42

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平成

24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ分野(ファッション)職域プロジェクト】

ファッション分野の中核的専門人材養成のための新学習システム構築推進プロジェクト(文化服装学院)

日本のファッション界を取り巻く環境

〇世界的マーケット変化

○中国・韓国をはじめとしたアジア諸国の台頭

○アジアに対するファッションビジネスノウハウの欠如

○国内におけるファッションビジネスの限界

○全国のファッション関連企業937社へのアンケートの結果、2000年代か

ら急激に海外進出が増え、進出企業の31%を占めている。

○本年度のファッション系専修学校308校へのアンケートでは、グローバル

人材育成の取組の予定がない学校が約60%にのぼり、社会的環境変化に

遅れをとっている現状がある

時代に即応した人材育成のためのカリキュラム構築が求められている

取組の概要

○ファッションにおけるグローバルな教育の実施

における専門学校への実態調査

○中国上海地区への企業・教育機関に対

する、求められる人材像と人材育成等に関

する調査ならびに中国ビジネスにおけるヒア

リング調査

○構築したモデル・カリキュラムの実施

○成果発表会における学生への評価なら

びに事業への評価を、第三者評価員が実施

※事業実施

イメージと

体制

成果目標

日本のファッション教育

モデル

としての定着

☆グローバル人材育成における

教育界のスタンダード化

☆将来国際的に活躍する人材を

養成をする

グローバルビジネス職域プロジェクト検討委員会

カリキュラム

検討

ニーズ・研究

調査

評価指標・

体制検討

グローバルファッション人材育成プロジェクト

・グローバルビジネスの発想

・日本のアイデンティティ

・国際化する小売ビジネス

・国際化する商社ビジネス

・国際化するアパレルビジネス

・国際化するアパレル縫製

・国際化するテキスタイルビジネス

・国際的に活躍するデザイナー

・日本とグローバルの違い

・日本のアイデンティティ

・小売ビジネスの現状と将来

・商社ビジネスの現状と将来

・アパレルの現状と将来

・縫製の現状と将来

・テキスタイルビジネスの現状と将来

・国際的に活躍できるデザイナーの条件

グローバル化に対応したリーダーとして活躍できる人材

Lv.2(ミドルレベル)

Lv.3(マネジメントレベル)

グローバルビジネス演習

・実践的業務のための対応融和術(海外でのビジネスにおけるコミュニケーションスキル養成)

・アジア産地研究(中国などの産地見学)

など

レベル

アップ

第 三 者 評 価 委 員 会指 標 に 基 づ く 評 価

ク リ エ イ テ ィ ブ 分 野 に お け る

専 門 人 材 養 成 産 学 コ ン ソ ー シ ア ム

プ ロ ジ ェ ク ト マ ネ ジ メ ン ト

プ ロ ジ ェ ク ト 評 価

方 向 性 示 唆 等

連携体制

講義

実践

グローバルビジネス職域プロジェクト

実証委員会

実証授業体制の検討

スキル

マスター

参加・協力機関

○教育機関

・文化服装学院

・文化学園大学

・大阪文化服装学院

○産業団体・企業など

・㈲シナジープランニング

・㈱繊研新聞社

○業界団体

・(一社)日本ファッション・

ビジネス協会

・(一財)日本ファッション

教育振興協会

43

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平成

24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ分野(ファッション)職域プロジェクト】

ファッション分野の中核的専門人材養成のための新学習システム構築推進プロジェクト

文化服装学院

取組内容

①企画・検討

グローバルビジネス職域プロジェクト検討委員会にて

国際的に活躍する人材の育成のためのカリキュ

ラムを検討

②実証管理

立案したカリキュラムを実証するゼミを、職域プロジェクト実

証委員会が管理する。

③調査

アンケート調査

グローバルビジネスにおける専門学校の教育実態調査

を実施。日本のファッション教育においては、まだグローバ

ル教育が発展の途上にあることがわかった。

海外実態調査(中国上海地区)

中国でビジネスを展開している日系企業ならびに教育

機関へのヒアリング調査を実施。中国でのビジネス戦略

や人材育成においては、現地に特化した方法が求

められることわかった。

④実証講座

対象者:専門学校・大学・大学院大学の学生

受講生:

36名

実施:

11月

9日~

1月30日

毎週水曜日に

2コマずつ、計

16コマを実施

2月13日に学生による成果発表会開催

講師:第一線で国際的にファッションビジネスを展開して

いる企業人

⑤普及活動

ファッション系の企業、日本のファッション系教育機関・業界

団体、各都道府県教育委員会等、計

400~

500部程

を配布予定。

成果(アウトプット)

○モデル・カリキュラム基準を構築。講義と実践(ワークショップ等)をミックスさせた、学生主体型の

内容を開発

○第三者の評価による達成度評価基準の構築。学生の成果発表における習熟度や理

解などを計る指標の開発

○現在のファッション業界において求められているグローバルマインドを有し、積極的に海外でビ

ジネスをしたいという意欲の高い学生を輩出する

成果の活用・次年度への課題

活用

○本年は、ミドルレベルを想定した特別ゼミとして開講した。来年度は、マネジメントレベルを想定した具体的カリキュラム

を実践する

○モデルカリキュラム基準や達成度評価基準の普及を図るため、

Webや冊子などで広く事業を周知する

課題

○地方性などがあり、グローバルな教育を実施するには、東京などの大都市圏に限られる。

○これから市場の中心となるであろう、中国及びアジアのビジネスを教えることのできる教員の確保。また、外

部講師の招聘なども、地方だと難しい。

○学生が実際に、グローバルビジネスの現場を体験することが求められるが、その体験における学生の経済的

な問題。

スケジュール(予定)

H23年度

H24年度

H25年度

○カリキュラムの検討・立案・体

制構築

○企業のグローバルビジネス

における実態アンケート調査

○カリキュラムの検討・実証

○評価基準の開発

○専門学校への教育アンケート調

査。海外実態調査

○モデル・カリキュラムの普及

○カリキュラムの再検討・実践

○地方にも目配りした汎用性

の検討

○海外実習の検討

44

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平成

24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」

【クリエイティブ分野(ファッション)職域プロジェクト】

ファッション分野の中核的専門人材養成のための新学習システム構築推進プロジェクト

文化服装学院

モデル・カリキュラムのイメージ

スキルマスター

グローバル化に対応したリーダーとして活躍できる人材

レベルアップ

講義

実践

Lv.3(マネジメントレベル)

国際化が進むファッション業界の新

たなニーズへの対応やマネジメント能

力の養成

多様化する時代に即応したファッションの

形を創造する能力を習得。

グローバルビジネスの発想

日本のアイデンティティ

国際化する小売ビジネス

国際化する商社ビジネス

国際化するアパレルビジネス

国際化するアパレル縫製

国際化するテキスタイルビジネス

国際的に活躍するデザイナー

日本とグローバルの違い

日本のアイデンティティ

小売ビジネスの現状と将来

商社ビジネスの現状と将来

アパレルの現状と将来

縫製の現状と将来

テキスタイルビジネスの現状と将来

国際的に活躍するデザイナーの条件

グローバルビジネスに特化した知識

の習得

ファッション業界をけん引していく国際的

感覚を身に付ける。

Lv.2(ミドルレベル)

ファッションビジネスの基礎的なスキル

(知識+能力)を習得

ファッション業界で活用できる基礎的なスキ

ルを身に付ける段階。

Lv.1(エントリーレベル)

ファッションビジネス基礎

流通

MD教養

服飾史

英会話

マーケティング基礎

etc

レベルアップ

グローバルビジネス演習

・実践的交渉術(海外でのビジネスにおけるコミュニケーションスキル養成)

・アジア産地研究(中国などの産地見学)

講義と実践(ワークショップ)をバランスよく取り入れた学生主導型の授業

達 成 度 評 価 指 標 に

基 づ く 第 三 者 評 価

中 核 的 専 門 人 材 と し て 育 成

45

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平成

24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ分野(ファッション)職域プロジェクト】

ファッション分野の中核的専門人材養成のための新学習システム構築推進プロジェクト

文化服装学院

達成度評価基準・手法等のあり方のイメージ

グローバルにファッションビジネスに携わっていく上で、国際的な現状などの理解度の他、

日本のアイデンティティや他国と日本の違いの理解、プレゼテーション力等を評価している。

評価方法:成果報告会での発表により、評価をする。

A・・・非常によくてきていた

B・・・よくできた

C・・・ふつう

D・・・今後一層の努力が必要

E・・・学んだことが生かされておらず、学習しなおす必要あり

細分項目

判定のポイント

判 定備考欄

講義を受けての

理解度

①日本のアイデンティティについて、深い自分の

考えを持っている

②日本と海外との文化や商習慣において

違いがあることを認識している

③海外でビジネスをする上での理解を深めて

いる

グローバルビジネス

に対する姿勢

④グローバルビジネスに対する自らの考えを持

ち、それを活かすことが期待できる

⑤これからのグローバルビジネスの動向につい

て、積極的に情報の収集を行い、今後

に活かしていくことが期待できる

⑥将来的に国際的な視野を持ってファッション

ビジネス界に貢献しようとする姿勢がみら

れる

細分項目

判定のポイント

判 定備考欄

発表の内容

①論旨がまとまっていて、理路整然と発表

ができている。

②感想だけでなく、自分の意見などをしっか

りと発表することができている

③相手に自分の意見を理解してもらうことを

心がけ、内容を簡潔にわかりやすい発

表を心がけている

④質問があった場合には、その要点などを

よく理解し、簡潔に回答することができる

発表の姿勢

⑤人前での発表を心がける姿勢が見られる

⑥限られた発表の時間の中でまとめること

を意識した姿勢が見られる

⑦他者からの意見に対しては真摯に耳を傾

け、今後に活かそうとする姿勢が見られ

1. グローバルビジネスに対する姿勢

2. 発表の仕方

3.発表者へのアドバイスなどありましたら、ご記入ください

総合判定

46

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社会人教育 事業名称:文化の根源の業(なり)・ファッション分野の中核的人材育成―社会

人教育システムの構築 事業通称:文化の根源の業(なり)・FASHION 分野の社会人教育 代 表 校:文化服装学院 生涯学習部 参加協力:文化服装学院、ファッション産業人材育成機構、

日本アパレル・ファッション産業協会、イオンリテール㈱、 ㈱三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズ、㈱コスモスタッフ 朝日新聞社、神山デザイン事務所、㈲オープン・クローズ、 ㈱朝日ネット

取組概要:変化が大きく、早いファッション分野において、業界に従事する人々

の知識の更新、学び直しは、業界の底上げを考える上で重要である。

特に本事業では、社会人の学びにおいて難しい、自分の得意、不得

意を知る「気付き」を軸に、「キャリアや経験に応じて必要となる最

新知識、技術」の振り分けと、学びの時間、方式(しくみ)の構築

を検証・実証し、企業の大小に関わらず業界に従事する人々が目的

を定め、向上を望めば学びの機会が得られる環境を構築することを

目的に実施する。 また、特に日本のファッション業界は、生産は海外へ移行している

が、世界市場をも視野にいれた展開へはまだ大きくシフトできてい

ない。内需の一定水準以上の伸びを期待できない今日、市場を世界

に移すことのできる人材の育成が急務である。今回の本事業では、

流通、小売分野においてすでに実践で実績のある人々を対象に限定

し、講師からの講義等による働きかけに、受講生自らの経験値を加

味し、人との交流(受講生、講師、チューター)を通して、新たな

ビジネスモデル、ブランドを生み出すことへと発展させることを狙

う。 本事業は、7~8 年目の社会人、特に最終幹部候補を対象に、講義・

演習の他、クラウド型インターネットサービスを利用し、各自の経

験値を客観的に評価、共有し、気付きと、人脈の有機的繋がりでビ

ジネスへと発展、展開していく力を養う。

47

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平成

24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ分野職域プロジェクト社会人教育】

「文化の根源の業(なり)・ファッション分野の中核的人材育成―社会人教育システムの構築」

(文化服装学院)

課題・ニーズ・背景等

取組の概要

<背景>

・国内での内需の拡大が難しい一方で、海外市場に向けた展開は本

格化していない。

・日本製品の質、デザインは世界から注目されている。

・世界市場を視野にいれた展開のできる人材の育成が急務。

・変化が大きく、早いファッション分野では、知識の更新、学び直しは、

業界の底上げのために重要。

<社会人教育だからこそのニーズ>

①自分の得意、不得意を知る「気付き」

②キャリアや経験に応じて必要となる最新知識、技術の更新

③広い視野での問題提起力と、実際的な解決力、発展・推進力

④無理のない学びの時間、方式(しくみ)

⑤新たなビジネスモデル・プランを形にする仕組み

●企業の大小に関わらず、目的を定め向上を望めば学びの

機会が得られ、プランを現実化できる環境の構築。

●学んだ知識・技術を等比級数的に伝え、発展させるシステ

ムを構築し、全国約

126万人の繊維・アパレル産業従事者の

うち、

10%に対し学修の機会を提供することで、業界の底上げ

を図りたい。(約

12万

6000人)

体制イメージ図 〔 コ ン ソ ー シ ア ム 〕

ク リ エ イ テ ィ ブ 分 野 の

中 核 的 専 門 人 材 養 成

の た め の

新 学 習 シ ス テ ム 構 築

推 進 プ ロ ジ ェ ク ト

職域プロジェクト【社会人教育】

職域プロジェクト

職域プロジェクト

職域プロジェクト

職域プロジェクト

職域プロジェクト

【 企 業 ・ 団 体 】

【職域プロジェクト実行委員】

・文化服装学院

・ファッション産業人材育成機

構・日本アパレル・ファッション

産業協会

・イオンリテール株式会社

・㈱三越伊勢丹ヒューマン・ソ

リューションズ

・㈱コスモスタッフ

・朝日新聞社

・神山デザイン事務所

・(有)オープン・クローズ

・株式会社朝日ネット

【実証プログラム】

【アウトプット】

新しいビジネスプラン・企画・ブランド等

次世代への指導(マネジメント)

第 三 者 評 価 委 員 会

流 通 、 小 売 分 野 に お い て

す で に 実 践 で 実 績 の あ る

人 々 ( 7 ~ 8 年 目 ) 対 象

・各職場での現実的な

問題解決力、発展・推

進力を習得

・「学び合い」や「客観

的評価」による「気づ

き」=モチベーション

UP

・次世代への指導力

(マネジメント力)

【講義・演習・グループワーク】

3ヶ月全

11回

22コマ

【学び合い】

クラウド型「ポートフォリオシステム」を活用

【 特 徴 】

・同分野他職種間でのグループワーク

・専門分野ごとの講義講師の他に「チュ

ーター(業界に精通した世話役)」を設定。

受講生が本事業を一貫性を持って受け止

め、習得、アウトプットする手助けを行う。

・ジョブ・カード制度等も参考・活用し、キャリア

形成の一助となる客観的、正当な評価。

成果目標

(アウトカム)

参加・協力

機関等

・現実的な

問題解決力、発展・推進力

・「学び合い」や「客観的評

価」による「気づき」

「 人 間 力 」

「 専 門 力 」

「 経 営 力 」

を 鍛 え る

48

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取組内容

結果(アウトプット)

【企画・検討】

・平成

23年度からの検討を踏まえ、職域プロジェクト実行委員が中心となって、

業界有識者、企業関係者にヒアリングするとともに、講師等と協議。

企業内で中核的立場に移る時期でありながら、立場の変化に対応する能力

を身につける研修が手薄になっている年代(社歴

7~8年目)への研修内容・

方法の開発と、学びの時間を確保する仕組みの構築。

【募集・告知】

・業界団体加盟企業等約

900社にDM送付。

・文化服装学院をはじめ、企画・検討に加わった団体、企業のネットワークを通じ、

訪問説明。

【実証講座】

・対象者

:流通、小売分野においてすでに実践で実績のある人々(7~

8年目)

・受講者数:26社34名(東京、名古屋、京都)

・実施期間:9/27(木)~2/28(木)*講義・演習は12/13(木)まで全

11回

22コマ

【普及活動】

・募集・告知活動をした企業・団体への報告

・業界団体、業界紙等と通じた報告等を予定

■達成度評価・方法の開発

・キャリア、経験値の異なる社会人に対する研修での成

果の評価法策定に向け、今年度は、自己、講師、企業

人事等様々な立場からの評価を集め検証。

・「学び合い」や「客観的評価」による「気づき」

=モチベーション

UP

・各職場での現実的な問題解決力、発展・推進力を習得

・次世代への指導(マネジメント)=業界全体の底上げ

■成果物

・新たなビジネスプラン、企画、ブランド゙の開発

1.キャリア、経験値の異なる社会人に対する研修での

成果の評価法策定に向け、引き続き検討・試行。

2.問題提起のみはできる社歴

3~4年目に対する、

「早期人材育成プラン」も構築。

→本年度の受講生が講師や、チューター役とな

るなど、学びの循環、定着へ。

3.「成果物(新たなビジネスプラン等)を現実化する仕組

みづくり」

→企業間を横断しても実現できる仕組みを、支援

体制のあり方等も含め検証・実証

成果の活用・次年度への課題等

「人間力」「専門力」「経営力」を鍛える講義・演習・グループワーク

と「学びあい」の仕組みづくり

平成

24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ分野職域プロジェクト社会人教育】

「文化の根源の業(なり)・ファッション分野の中核的人材育成―社会人教育システムの構築」

(文化服装学院)

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対象者:在職

7~8年目の幹部候補

知識・技術の

ブラッシュアップ

気付きと学びあい

学び合いと

振り返り(気づき)

9/27(木)~

12/1

3(木)3ヶ月

全11回

22コマ(13:00~

18:00)

9/27(木)~

2/28(木)

各自のPCから

24hアクセス可能

<学習時間>

◆講義・演習

1,32

0分◆グループワーク

1,44

0分◆プレゼンテーション演習

480分

◆振返り

60分

平成

24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ分野職域プロジェクト社会人教育】

「文化の根源の業(なり)・ファッション分野の中核的人材育成―社会人教育システムの構築」

(文化服装学院)

モデルカリキュラムのイメージ

【講義・演習課題】・講師から個人へフィードバック。

・講師のフィードバック付き個人課題を受講生相互で閲覧可。

【グループワーク、プレゼンテーション演習】

・受講生同士で講評。

・講師、受講生の上司・人事担当者が出席して講評。

【受講後の行動変容】・直属の上司、人事から、研修後2ヶ月が経っての評価。

同じファッション業界。しかし

異職種、千差万別の経歴・

経験の仲間との短期協働

プロジェクト!!

気づきと

実際の現場への落とし込み

【講義・演習・グループワーク】

【クラウド゙型ポートフォリオシステム】

+α分(講義内容を講義時間外に復習)

+α分(講義時間外にグループ内で情報共有)

+α分(他グループの進捗状況、プレゼンシート閲覧)

+α分(自分カルテ*自己の変化を時系列で捉える)

【フィードバック】

50

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自己の変化

*時系列で捉える「自分カルテ」を試行。

平成

24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ分野職域プロジェクト社会人教育】

「文化の根源の業(なり)・ファッション分野の中核的人材育成―社会人教育システムの構築」

(文化服装学院)

達成度評価基準・手法等のあり方イメージ

人間力

*コミュニケーション力、チーム構築力等、人間力を測る指標を検討。

行動変容

*直属の上司、人事から、研修後2ヶ月が経っての評価を試行。

*同じファッション業界とはいえ、異職種、千差万別の経歴・経験、目標が異なる人々に当てはまり、正当・

公平な評価基準、手法のあり方の策定が、「社会人教育システム構築」における大きな課題の一つ。

アウトプット力

*各講義後に、講義内容を踏まえた演習課題実施と、講師の講評を実施

マネージメント力

*「次世代の育成=業界の底上げ」のための力を測る指標を検討。

…など、評価項目、基準、手法を次年度以降も継続して検討予定

【現在検討中の評価項目・指標・基準・手法策定検討項目】

51

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デニム・ジーンズ 事業名称:デニム・ジーンズクリエイター養成基盤整備のための教育プログラ

ム開発と実証 事業通称:デニム・ジーンズクリエイター養成プロジェクト 代 表 校:中国デザイン専門学校 参加協力:中国デザイン専門学校、㈻西野学園、専門学校山形 V.カレッジ、 倉敷ファッションカレッジ、㈱ベティスミス、カイハラ㈱、 ㈱ビッグジョン、㈲繊維流通研究会、日本ジーンズメーカー協議会、 岡山県アパレル工業組合、㈲ザ・ライスマウンド 取組概要:日本のファッション産業は、繊維・染色加工・織物・縫製・アパレ

ル・流通・小売等の工程の機能分化が進展したため、各工程の強み

が全体の強みとして活かされない構造になっている。近年、中国や

東南アジアの生産する製品の質の向上により価格競争の激化が進展

し、また、欧米の有名ブランドの日本市場への進出など高価格商品

でも激しい競争を強いられ、産業を取り巻く環境は大変厳しい状況

となっている。 さらに、これまで生産拠点であったアジア新興国がマーケットとし

ての価値を持ち始め、新たなビジネスモデルの構築の必要に迫られ

ている。国際分業を進め、日本のデニム・ジーンズ産業が付加価値

を確保できるビジネスモデルを確立することができる人材育成が急

務である。 こういった現状を踏まえ、ファッション業界の求めるマーケティン

グやマネジメントの知識・技術を有し、グローバルに展開できる人

材育成のため、技術力があり先進的な取組みにより、世界から評価

を受けているデニム・ジーンズを題材として、これからのクリエイ

ターに必要な教育プログラムを整備する。開発する教育プログラム

は、就業者や社会人のアクセスしやすい学習環境の整備を配慮し、

短期教育プログラムの学習ユニットへ対応するものとした。学習者

の達成度を評価する評価指標の検討を行い、産学が連携してその強

化の在り方を協議した。

52

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平成24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ(ファッション)分野(職域プロジェクト)】「デニム・ジーンズクリエイター養成基盤整備のための教育プログラム開発と実証」

(中国デザイン専門学校)

日本のファッション産業は、繊維・染色加工・織物・縫

製・アパレル・流通・小売等の工程の機能分化が進展し

たため、各工程の強みが全体の強みとして活かされない

構造になっている。また、アジア新興国の生産技術の向

上により、品質が向上し、生産工程による競争力が低下

している。さらに、これまで生産拠点であったアジア新興

国がマーケットとしての価値を持ち始め、新たなビジネス

モデルの構築の必要に迫られている。国際分業を進め、

日本のデニム・ジーンズ産業が付加価値を確保できるビ

ジネスモデルを確立することができる人材育成が急務で

ある。

課題

・国際市場に対応したクリエイティブな人材の不足

・教育プログラムの整備

・国際競争力の高い人材の育成

ファッション業界の求めるマーケティングやマネジメント

の知識・技術を有し、国際競争力の高い人材育成のた

めの教育プログラムを整備する。

具体的な取組みは以下のとうり

○教育実態調査

ファッションクリエイター育成の教育実態を調査する

○履修科目のモデル

/教育カリキュラム開発

デニム・ジーンズクリエイター育成の科目や履修モデ

ルを設計し、教育カリキュラムを開発する。

○マーケティング実践教材開発

実践的なデニム・ジーンズマーケティングの学習教材

を開発、整備する。

○マネジメント実践教材開発

実践的なデニム・ジーンズマーケティングの学習教材

を開発、整備する。

本事業においては、世界の市場でも評価を得ている日

本のデニム・ジーンズのブランド構築やビジネスの展開

について、これからのクリエイターに必要な知識や技術

を育成するための教育プログラムの開発に取り組み、産

業界の求める人材育成のための学習システムの基盤整

備を行うvロジェクトである。本取組みにより、産業界の

求める人材育成のための新たな学習システムの基盤整

備し、ファッション産業の中核的専門人材の養成を推進

する。

最終的に目標とする人材は「日本のものづくり産業として

のデニム・ジーンズアパレルが、新たな価値を創造し、構

築の進展する国際分業体制でのポジションと期待される

役割を担うことのできるデニム・ジーンズクリエイターで

ある。

○教育機関

学校法人第一平田学園中国デザイン専門学校

学校法人西野学園

学校法人山本学園専門学校山形

V.カレッジ

倉敷ファッションカレッジ

○産業団体・企業等

株式会社ベティスミス

カイハラ株式会社

株式会社ビッグジョン

有限会社繊維流通研究会

日本ジーンズメーカー協議会

岡山県アパレル工業組合

有限会社ザ・ライスマウンド

課題・ニーズ・背景等

取組の概要

参加・協力機関等

体制イメージ図

成果目標(アウトカム)

ク リ エ イ テ ィ ブ ( フ ァ ッ シ ョ ン )

分 野 コ ン ソ ー シ ア ム

クリエーション

ファッションビジネス

グローバルビジネス

社会人教育

デニム・ジーンズ

ファッション

デザイン

53

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平成24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ(ファッション)分野(職域プロジェクト)】「デニム・ジーンズクリエイター養成基盤整備のための教育プログラム開発と実証」

(中国デザイン専門学校)

本事業の成果は、本校教育プログラムとして活用するとともに企業との連携強化を図り、次年度以降

も教育プログラム整備の継続を図る。また、業界団体等の協力のもとデニム・ジーンズクリエイターの育

成プログラムの導入をする専門学校数の拡大を推進する。また、整備した教育プログラム等は、他の

分野のファッションクリエイターの教育に生かせるものを目指しているので、多くの服飾系専門学校で活

用させるよう普及活動を行なう。

本事業で行なった教育プログラムの整備は、履修科目モデル明確化及び不足していると思われる

マーケティング、マネジメント教材の開発である。次年度以降は、教育プログラムの実証を行うとともに

「学習ユニット積上げ方式」によるアクセスしやすい学習環境の構築やキャリア段位制度やジョブカード

制度との連携に向けた基盤整備を図りたい。

開発した教育プログラム等が社会的に認められるためには、業界団体との更なる連携が重要である

とともに第

3者評価の体制整備が重要である。

本事業では、世界の市場で評価の高いジャパンデニム・ジーンズのブランド構築やビジネス

の展開についての教育プログラムの開発に取り組み、産業界の求める人材育成のための学

習システムの基盤整備を行なった。本取組みにより、産業界の求める人材育成のための新た

な学習システムの基盤整備し、ファッション産業の中核的専門人材の養成を推進する。

成果物は以下のとおり

・履修科目モデル

/教育カリキュラム

・マーケティング実践教材

・マネジメント実践教材

成果(アウトプット)

ファッション業界の求めるマーケティングやマネジメ

ントの知識・技術を有し、グローバルに展開できる人

材育成のため、技術力があり先進的な取り組みにより、

世界から評価を受けているデニム・ジーンズを題材と

して、これからのクリエイターに必要な教育プログラム

を整備する。開発する教育プログラムは、就業者や社

会人のアクセスしやすい学習環境の整備を考慮し、短

期教育プログラムの学習ユニットへ対応するものとし

た。学習者の達成度を評価する評価指標の検討を行

い、産学が連携してその強化の在り方を協議した。

①調査

・教育実態調査

専門学校のファッションクリエイターの教育カリキュ

ラム調査を行い、産業界の求めるマーケティングやマ

ネジメントに関する教育の実態を調査

②開発

・履修科目のモデル

/教育カリキュラム

・デニム・ジーンズクリエイターのマーケティング実践教

材・デニム・ジーンズクリエイターのマネジメント実践教材

③成果の普及

・ファッション関連企業・団体200件、服飾系専門学校

200校に対して、成果報告書を配布(予定)。

・ホームページによりWeb上に成果を公開(予定)

・成果報告会を実施(予定)

取組内容

成果の活用・

次年度への課題等

H24

H25

・教育カリキュラム、開発教材の実証による

達成度評価指標の構築

・企業連携の産地コラボレーション演習の設計

・学習ユニット積上げ方式の構築

・キャリア段位制度や

ジョブカード制度との連携の検討

・グローバル人材教育プログラムの構築

・産学連携の教育評価機構の基盤整備

・人材ニーズの把握

・専門学校教育カリキュラム領域の明確化

・履修モデル

/教育カリキュラムの策定

・マーケティング、マネジメント教材の開発

54

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平成24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ(ファッション)分野(職域プロジェクト)】「デニム・ジーンズクリエイター養成基盤整備のための教育プログラム開発と実証」

(中国デザイン専門学校)

モデル・カリキュラムのイメージ

世界の市場で高い評価を得ている日本のデニム・ジーンズのブランド構築やビジネスの展開について、これからのクリエイターに必要な知識や技術を

育成するための教育プログラムの開発に取り組み、産業界の求める人材育成のための学習システムの基盤整備を行う。本取組みにより産業界の求め

る人材育成のための新たな学習システムの基盤整備し、デニム・ジーンズ産業の中核的専門人材の養成を推進する。

主な科目

・デザイン

・パターン、縫製

・流通ビジネス

・基礎教養

イメージ図

教育カリキュラムのユニット化

学習単位を1科目(30時間×4)の積上げ方式

による専門学校課程の再構築及びユニットごと

の学習機会の提供

専門課程

1年次

8科目(32ユニット)

専門課程

2年次

8科目(32ユニット)

レベル1

レベル2

レベル3

レベル4

Ste

p 1

専門課程

1年次

主な科目

・クリエーション

・パターン

・FB

・MD

① ② ③ ④

⑤ ⑥ ⑦ ⑧

⑨ ⑩ ⑪ ⑫

⑬ ⑭ ⑮ ⑯

専門課程

2年次

産業人としての基礎的なスキル(知識+能力)を

習得

ジーンズファッション産業界で活躍できる基礎的なス

キルを身に付ける段階

Ste

p 2

ファッションの個別分野に特化した専門的スキ

ルの習得

ジーンズファッション産業界を牽引してゆく専門的スキ

ルを習得する

Ste

p 3

産業人としての基礎的なスキル(知識+能力)を

習得

ジーンズファッション産業界で活躍できる基礎的なス

キルを身に付ける段階

産地コラボレーション

・工場見学

・新生地の研究、開発

・展示、販売企画

グローバルマネジメント

・海外進出企画

・海外市場調査

マネジメント

・事業運営、係数

・プレゼン

・リーダーシップ

・人材育成チームワーク

マーケティング

・市場調査

・競合分析

・ブランド企画

・トレンド分析

ファッション教養

・歴史、業界研究

・国際基準

・コンプライアンス

グローバルクリエー

ション

ファッションビジネス

演習

グローバルビジネス

演習

プロデューサー養成

グローバルファッション

ビジネス

・海外進出企画

・成功事例研究

デニム・ジーンズに特化したスキル習得

産地コラボレーション・マーケティング・マネジメント

達成度評価

達成度評価

達成度評価

達成度評価

55

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平成24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進」取組成果概要

【クリエイティブ(ファッション)分野(職域プロジェクト)】「デニム・ジーンズクリエイター養成基盤整備のための教育プログラム開発と実証」

(中国デザイン専門学校)

達成度評価基準・手法等のあり方のイメージ

達成度評価基準手法等のあり方

第3者評価

文部科学省

デニム・ジーンズ教育プログラム認定機構(仮称)

教育機関

教育訓練実施

教育機関―教育プログラム申請

認定機構―申請教育プログラムの認定

既存の資格、能力認定のポジションの明確化と

活用

新たな学習者の達成度評価指標の開発

デニム・ジーンズ産業人材認定機構(仮称)

学習者の達成度評価及び認定

学習者の達成度評価指標の検証

教育プログラムの検証

モデル・カリキュラム構成

⑤科目詳細(1科目=学習ユニット×4で構成)

④履修モデル

③科目体系

②科目概要

①標準カリキュラム

1.科目シラバス

A ユ ニ ッ ト

B ユ ニ ッ ト

C ユ ニ ッ ト

D ユ ニ ッ ト

2.コマシラバス

1コマごとの教育

項目と目標の明

確化

達成度評価指標・手法

科目または学習ユニット

自己評価

教員評価

試験による理解

度チェック

科目または学習ユニット

自己評価

教員評価

試験による理解

度チェック

科目または学習ユニット

自己評価

教員評価

試験による理解

度チェック

科目または学習ユニット

自己評価

教員評価

試験による理解

度チェック

科目または学習ユニット

自己評価

教員評価

試験による理解

度チェック

履修ロードマップ

科目

履修

評価

備考

A○

BLv1

B―

―Lv1

C○

ALv2

・○

CLv3

・ ・― ―

― ―・ ・

既存認定・検定試験の活用

新たな認定の構築

学習知識・技術の明確化

社会的な評価の仕組み作り

単位互換・キャリア段位制度・ジョブカー

ド制度への活用

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デニム・ジーンズクリエイター養成基盤整備のための教育プログラム開発と実証

育成人材像のイメージ

日本のものづくり産業としてのデニム・ジーンズアパレルが、新たな価値を創造し、構築の進展する国際分業体制でのポジ

ションと期待される役割を担うことのできるデニム・ジーンズクリエイター。

イメージ図

育成を目指す人材像

デニム・ジーンズアパレルの課題

学習ユニット積上げ方式

単位制、

学習者の達成度評価

レベル1

レベル2

レベル3

レベル4

新たな学習システム

基 礎 ・ 応 用 技 術 習 得

Step

1

Step

2

Step

3

日 本 の も の づ く り 産 業 の 次 代 を 担 う

グ ロ ー バ ル に 活 躍 で き る デ ニ ム ・ ジ ー ン ズ ク リ エ イ タ ー の 養 成

職業人としての知識・能

力・素養

服飾系専門知識・技術

デニム・ジーンズ

専門知識・技術

マーケティング力

マネジメント力

ものづくり現場力

語学力・グローバルコミュ

ニケーション力

プロフェッショナル

コミュニケーション

クリエイターマインド

職 業 能 力 評 価 制 度 ( キ ャ リ ア 段 位 制 度 等 )

・専門知識・技術

・論理的思考力

・問題解決力

・自己表現力、伝達力

・傾聴力

・グローバルコミュニケーション力

・チームワーク

・自律性、責任感

・主体性

・向上心

・情熱

CA

D/

CA

M等の

生産工程のデジ

タル化が進展

アジア新興国におい

ても高品質の生産が

可能となった

●生産工程の付加価値が低下

●品質・価格の競争力の低下

企画・開発等、生産工程以外から付加価

値の創造が必要

グローバルに対応した新たな生産戦略が

必要

アジア新興国の経済成長の結果、中間

層が増加し、アジア新興国の消費者を

マーケットとした製品を提供する必要性

が増加

「マーケットに合ったものづくり」という視

点に立ったビジネスモデル構築が必要

国 際 分 業 を 進 め 、 日 本 の デ ニ ム ・ ジ ー ン ズ 産 業 が 付 加 価 値 を 確 保 で き る

ビ ジ ネ ス モ デ ル を 確 立 す る こ と が 重 要

中核的専門人材

育成人材像

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3. 総 括

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世界市場が急速に変化していく現状のなかで、時代に即応した人材の育成は

急務となっている。グローバル化の波が確実に日本にも押し寄せているなか、

日本のファッション界は総力をあげ、この問題に取り組む必要性に迫られてい

る。 “COOL JAPAN”の名のもとに、現在日本のファッション文化は世界でも再

評価されている。我々は世界から注目されるコンテンツを生み出す学生を育て、

世界に羽ばたかせることを使命としている。日本が世界を牽引していた時代は

もう過去の事であり、変化するグローバルファッションにどう向き合っていく

のかが課題となる。そういった意味では、このプロジェクトが背負う役割とい

うものは非常に大きいものがある。 今回、文部科学省の指導の下、この事業ではファッション分野における次世

代の人材育成に取組んだ職域プロジェクトのマネジメントを実施したが、どれ

も将来のファッション教育の最先端をゆく教育プログラムであり、今後さらな

る発展が期待される。国際的な人材を輩出する目的を持つこれらの事業を土台

として、全国のファッション教育のスタンダードとして定着するよう、今後も

継続的に見守っていきたいと考えている。そしてさらに、今後新たなファッシ

ョンの形を創造するプログラムが提案され、それが延いては全国で独自性のあ

る質の高い教育が生まれることを願うばかりである。 各職域プロジェクトにおける高度なファッション教育が誕生した一方で、業

界に横たわる問題点や課題も見えてきた。IT システム導入の遅れ、地方性など、

教育界としての問題は山積しているといってよい。この「クリエイティブ分野

における専門人材産学コンソーシアム」では、引き続きこの問題に取り組んで

いく方針である。特にグローバル化の遅れという面では深刻であり、中国をは

じめとしたアジア諸国の対応、その先にある市場の変化に対応した人材の育成

を強力に推進するべきである。 日本のファッション界が、今後更なる発展を遂げ、時代を切り拓く若者を育

て上げるためには、教育界の力だけでは限界がある。産業界と教育界、関係団

体が共に手を携え、今後の人材育成を考えていかなくてはならない。そういっ

た意味では、本コンソーシアム事業を今後も継続的に行い、情報の共有や検討、

修正などを常に繰り返しながら、日本のファッション界の発展に寄与していけ

ればと考えている。

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