モンゴルの租税制度と租税収入(1) -...

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モンゴルの租税制度と租税収入(1) 上野 総合政策学部 始めに A.問題意識と対象 モンゴルは中央アジアにある経済移行国の一つである。これら移行諸国は、移行にあ まり成功しておらず、財政赤字も抱えている。一方で、モンゴルは途上国の中では珍しく、 財政黒字を達成し(2005 年度)、今までも税率の低減を行い、現在でも更なる税率の削減を 検討している。このようなモンゴルの経験は、他の中央アジア諸国の財政健全化に役立つ かもしれない。また、この成功の原因を探ることは、移行国以外の一般途上国へも有益な 示唆を与えてくれるかもしれない。このため、この論文は、モンゴルの財政を対象とする。 財政黒字化の原因は二つしかない。支出削減か税収増加である。モンゴルの財政支出 削減に関しては、世界銀行を中心としてある程度の検討が進んでいる。しかし、税収面に ついては、あまり研究・検討がなされていない。この論文は、租税を中心として税収面を 考察する。 一方で、モンゴル財政は現時点では成功であるが、種々の問題が起こる可能性を抱え ている。たとえば、初めて、しかもたった 1 年だけ達成した、この財政黒字が持続可能な ものなのか、疲弊しているといわれる地方税制はどうなっているのか、2002 6 月に成立 2003 1 月から実施された PSMFLPublic Sector Management and Finance Law公共部門経営財政法)は地方政府にどのような影響を与えているのであろうか、といった 問題が存在し、それらをモンゴルが適切に対処するにはどうすればよいのか、を考察する ことは、モンゴル財政の今後にとって重要である。これらの点をこの論文の対象とする。 1 章でモンゴルの財政制度全般を概観し、第 2 章で一般政府と中央政府の歳入と租 税制度を検討する。第 3 章では地方政府の歳入と税収の問題点を探る。そして最後の第 4 章で、新しく導入された公共部門経営財政法(PSMFL)の問題点を検討する。 B.目的と方法 上記のような問題意識のもとに、この論文は、その第一歩として、モンゴルの租税制 度と、その背景にある財政制度の現況を明らかにすることを中心とし、それに加えて問題 点を探ることを目的としている。 方法は、統計・インタビュー・文献を考察する記述的な方法である。さらに、筆者が モンゴルに滞在した期間(19951999)の観察や、滞在時とその後に参加した日本の国際 協力機構(JICA)の徴税強化支援プロジェクトで得られて知見も利用する。

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Page 1: モンゴルの租税制度と租税収入(1) - Coocanhiroshi-ueno.eco.coocan.jp/MongoliaJ-TaxRevenue1-2014Jun...2 第1章 モンゴルの財政制度と財政の現況 A.過去の財政拡大傾向と最近の縮小

モンゴルの租税制度と租税収入(1)

上野 宏

総合政策学部

始めに

A.問題意識と対象

モンゴルは中央アジアにある経済移行国の一つである。これら移行諸国は、移行にあ

まり成功しておらず、財政赤字も抱えている。一方で、モンゴルは途上国の中では珍しく、

財政黒字を達成し(2005 年度)、今までも税率の低減を行い、現在でも更なる税率の削減を

検討している。このようなモンゴルの経験は、他の中央アジア諸国の財政健全化に役立つ

かもしれない。また、この成功の原因を探ることは、移行国以外の一般途上国へも有益な

示唆を与えてくれるかもしれない。このため、この論文は、モンゴルの財政を対象とする。

財政黒字化の原因は二つしかない。支出削減か税収増加である。モンゴルの財政支出

削減に関しては、世界銀行を中心としてある程度の検討が進んでいる。しかし、税収面に

ついては、あまり研究・検討がなされていない。この論文は、租税を中心として税収面を

考察する。

一方で、モンゴル財政は現時点では成功であるが、種々の問題が起こる可能性を抱え

ている。たとえば、初めて、しかもたった 1 年だけ達成した、この財政黒字が持続可能な

ものなのか、疲弊しているといわれる地方税制はどうなっているのか、2002 年 6 月に成立

し 2003 年 1 月から実施された PSMFL(Public Sector Management and Finance Law、

公共部門経営財政法)は地方政府にどのような影響を与えているのであろうか、といった

問題が存在し、それらをモンゴルが適切に対処するにはどうすればよいのか、を考察する

ことは、モンゴル財政の今後にとって重要である。これらの点をこの論文の対象とする。

第 1 章でモンゴルの財政制度全般を概観し、第 2 章で一般政府と中央政府の歳入と租

税制度を検討する。第 3 章では地方政府の歳入と税収の問題点を探る。そして最後の第 4

章で、新しく導入された公共部門経営財政法(PSMFL)の問題点を検討する。

B.目的と方法

上記のような問題意識のもとに、この論文は、その第一歩として、モンゴルの租税制

度と、その背景にある財政制度の現況を明らかにすることを中心とし、それに加えて問題

点を探ることを目的としている。

方法は、統計・インタビュー・文献を考察する記述的な方法である。さらに、筆者が

モンゴルに滞在した期間(1995~1999)の観察や、滞在時とその後に参加した日本の国際

協力機構(JICA)の徴税強化支援プロジェクトで得られて知見も利用する。

Page 2: モンゴルの租税制度と租税収入(1) - Coocanhiroshi-ueno.eco.coocan.jp/MongoliaJ-TaxRevenue1-2014Jun...2 第1章 モンゴルの財政制度と財政の現況 A.過去の財政拡大傾向と最近の縮小

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第 1章 モンゴルの財政制度と財政の現況

A.過去の財政拡大傾向と最近の縮小

租税制度と租税問題の検討のためには、その背景となる財政全体をある程度概観して

おく必要がある。故に、財政の検討からはじめる。最近までの財政の第 1 の問題は、一般

財政支出1 の対GDP比が過去において継続拡大してきて、高止まりしていることであった。

1995年に最小の 27%という非常に望ましいレベルを達成して以来、1999年まで急拡大し 39%

に達した(図1-1)。その後も徐々に増加し、2001 年と 2002 年では 44%の水準にあり、

2003年には 45%にも達した。

しかし最近の 2 年間では、望ましい方向に変化し、対 GDP 比で減少してきている。2004

年に 1995年以来はじめて縮小を示し、39%までさがり、2005年では 34%まで縮小した

(上野 2005)。縮小の主な原因は、高いGDPの伸び率であった。名目GDPは、2004 年

に対前年比で 33%、2005 年には 25%で成長した(実質では 2004 年 11%、2005 年 6%)。

一方で、一般財政支出(名目)は対前年比で 2004年 16%、2005年で 7%増加しただけであ

る。従って、主な原因は、高い GDP成長率にある。

対GDP比減少の第 2 の原因は、政府の歳出削減努力にある。最近の消費者物価指数

は、2004 年 11%、2005 年 10%の上昇であるから、一般財政支出は実質では、2004 年にプ

ラス 5%(=1.16/1.11-1)、2005 年でマイナス 4%(=1.07/1.10-1)の増加であっ

たことになる。

図1-1.一般政府の財政支出(対 GDP比、%)

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

45.0%

50.0%

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

財政支出

(出典:上野 2005)

1 一般財政支出(general government expenditure)とは、ここでは中央政府と地方政府

の財政支出の合計を指す。これを世界銀行は統合支出(consolidated expenditure)とも呼

んでいる。“一般政府”も同様に、中央政府と地方政府の合計を指す。

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従って、一般財政支出の拡大は、GDPの実質成長率よりは小さく抑えられており、特に 2005

年は実質マイナスで、削減されている。

B.大きな財政規模

世界銀行(World Bank,1996、p.114、Table7.2)は、1995 年前後に一人当たり所得レベ

ルがUS$1,000までの国は、平均で対GDP比26%前後の財政支出を行っているとしている。

モンゴルの一人当たり所得レベルは 1996年に US$400、2002年に US$445、2004年に US$605

であるから、この範囲に十分入る。このベンチマークから考えれば、1995 年の 27%は良い

が、2004年の 39%、2005年の 34%は、高すぎる。2003年の 45%とは一人当たり所得が大略

US$15,000以上の国々の支出レベルである(前出 World Bank参照)。支出削減が望ましい。

C.財政収支:赤字から黒字へ

ここでは、支出ではなく財政収支の経年的変化を見てみる。財政赤字の対 GDP比は 1995

年に理想的な 0.9%を記録して以後 1998 年の 12.5%まで急速に拡大した(図 1-2)。即ち、

1996-2000年の民主連合政権は明らかに財政を放漫にし、せっかく達成した 1995年の赤字

0.9%を再拡大してしまい、財政赤字は 1998年には GDPの 12.5%に達した。1999年以後は、

赤字はなだらかに減少し 2001年には 4.5%まで縮小したが、2002年には再上昇し 5.7%に達

した。3%は財政赤字限度として一般的に使われる値であるが、これをかなり超過している。

短期間に 12.5%から 4.5%まで縮小した実績からすれば、モンゴル政府が赤字を 3%まで低

下させる能力は十分あると思われるが、達成しようという政府の意思の強固さが問われて

いる。

更に、2001 年の 4.5%への赤字減少の要因は支出削減ではなく、財政収入の増加であ

った。1998年から 2001年まで財政支出が伸び続けた(図 1-1参照)にも関わらず、財政収

入が対 GDP比で、1998年の 29%から 2001年の 37%へ増加した結果である。2003年には、財

政赤字は再び上昇し 5.9%となった(図 1-2)。この拡大は、歳入の増加を上回った歳出の

増加が原因であった。

図 1-2.一般政府の財政支出と財政赤字、GDP比(%)

-20.0%

-10.0%

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

財政支出

財政赤字

財政収入

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出典:上野(2005)

しかし 2004 年から、様相が大きく変わり、財政赤字は減少に転じた。先ず 2004 年に

は赤字 0.9%を達成した。これは、GDPの 3%以下の赤字という一般的ベンチマークを 1995

年いらい 9年ぶりに達成したことになる。更に、2005年には、財政黒字 3.2%を達成した。

しかもこの殆どは、政府による支出削減によって達成された。これは素晴らしいことで、

財政当局が、強い支出抑制を行うという財政規律を持っており、財政規律を維持する能力

を持っていることを示している。

これらは、成長・貧困戦略書で想定された 2004年以後の財政赤字比率である 4.5~5.5%

より十分低く、非常に良い実績である。これらは主に、三つの理由によって達成されたと

思われる。第1に、2004 年の支出計画が小さな伸びしか計画しなかったこと、即ち支出抑

制型の予算計画が為されたこと;第2にその予算を、財政経済省が忠実に実行したと思わ

れること;第 3 に比較対象であるGDPが 10.6%と大きく成長したこと、である。特に重

要な成果は、第1と第2の理由である。これらの結果、2004 年の支出実績は、インフレー

ションを除いた実質では 2003年より縮小している。これは途上国においては非常に珍しく、

かつ素晴らしい成果である。

D.小結

先ず、財政支出のそのものは、先に検討した如く、2004 年時点でさえ大きすぐる。削

減が望まれる。勿論、2004 年以降の財政当局の支出削減努力の成果は素晴らしいものであ

り、このような財政規律を維持することが望ましい。

ADB(Asian Development Bank, 2000、p.5)によればモンゴル政府は、移行の初

期段階では旧ソ連邦からの援助が消滅したにもかかわらず、西側からの大量のODAと好

調な輸出収入の伸びがあり、その結果政府は比較的高いレベルの社会部門支出・住宅用支

出・暖房用支出を維持できたとしている。その結果、勿論移行以前より低下はしているが、

最近でも国際水準に比較して高いレベルの保健医療・教育支出を保っている。1998 年の財

政支出の最大部門は、教育(支出の 15%)・社会保障(同 15%)・保健医療(6%)といった社

会部門支出であった(ADB 2000、p.5)。これらが過大な歳出の大きな原因となって

いる。

一方で財政赤字は縮小し、2005 年には黒字までも達成した。政策が良好に働いたよう

にみえる。しかし、上記の財政当局の努力に次いで対GDP赤字削減に寄与したのは、G

DPの大きな成長である。この成長は、主にモンゴルの輸出産品である銅・金・カシミア

の国際価格上昇と、良い天候による畜産・作物の生産増加の二つの原因による。これらは、

モンゴル政府の政策や民間の企業努力による内発的なものではなく、偶然にたよる外発的

なものである。即ち、これらが近い将来逆転し経済に対してマイナスに働くことは十分あ

りうる。ここ暫くのこのような外的好条件が継続すると想定すべきではなく、むしろ例外

と考え、これらから得られる利益(即ち赤字削減又は黒字)を積み上げて、将来ありうる

マイナス・ショックへの抵抗力をつけておくことが、重要であろう。

2008 年には中央政府の総選挙が控えている。2 大党派である革命党(MPRP)も祖

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国・民主連合の主体である民主連合も、どちらも過去に於いて、選挙前の 1-2年に財政を

拡大している。従って今回も、その可能性は高いといえる。この傾向を、押さえ込む必要

がある。さもないと、再度赤字拡大へ向かう恐れがある。

第 2章 歳入と租税制度の現況と問題点

A.歳入の種類と規模

2005 年度の一般政府歳入(中央プラス地方、General Government Revenue)は、以下

の表 2-1 のとおりである。前述のとおり2005年の歳入はGDPの37%と、ピーク年

2001年の 39%から低下してきているが、やはり大きい。又、経済移行後初めて、財政黒字

を達成している。その主な原因は、歳出削減とGDP成長であった。この年の歳入の殆ど

である 83%は租税収入である。租税収入は、その主な順に挙げれば、付加価値税(Value Added

Tax)が最も大きく、総歳入の 22%を占める。次が所得税(Income Tax)で、これは企業所

得税(14%)と個人所得税(7%)とに分かれる。次は、これを租税と分類して良いのかど

うかわからないが、社会保障費への払い込み(Social Security Contributions、11%)で

ある。次が商品税(Excise Taxes、9%)であり、関税(Taxes on Foreign Trade)は少な

く 7%である。この低い関税の貢献度は、モンゴル政府が一時期、酒類を除き全関税ゼロと

いう急進的な租税政策を採用した名残である。むしろ 7%もあるだけ不思議といえる。地方

税項目のほとんどは、その他の税(Other Taxes)のところに入っている。

B.租税制度と規模 2

1990 年の市場経済への移行後、国際機関の支援とガイダンスにより、1991 年 5 月に

最初の税制改革が実施された。内容は「①企業からの上納金に代わって売上高税を採用、

②輸出税を廃止すると同時に輸入には一律 15%の関税を導入、③酒・タバコ・石油への物

品税(商品税、筆者注)の導入、個人所得税や法人所得税の税率簡素化などの措置が実施

に移された」(アジア経済研究所、1997、p.11、及び Ueno 2000, Table A4)。1993 年時点

での税法としては、一般税法(General Taxation Law)、個人所得税法(Personal Income

Tax Law)、法人所得税法(Economic Entity and Organization Income Tax Law)、売上高

税法、商品税法(Excise Tax Law)などが制定され、所得課税を中心とした税制が導入さ

れた(金融財政事情研究会、2001、p.1-1)。その後 1997 年に一般税法の改訂が行われた。

1998 年に、3 付加価値税法が制定され、これにより、モンゴルの課税制度は、所得課

税から消費課税にウェイトを移した(同前、p.1-1)。

2 以下の記述は、GOM(2003e)と金融財政事情研究会(2001)に大きく依拠している。

前者は、一般税法であるから、当然租税制度を記述してある。後者は、国際協力事業団(当

時)によるモンゴル支援のための委託プロジェクトの一環として作成された多数の報告書

のひとつである。筆者は、国内支援委員会のメンバーとして、後にはその委員長として、

このモンゴル支援プロジェクトに参加した。 3 1998 年という開始年については疑問があり、いずれ再検討する必要がある。

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表 2-1.一般政府の歳入内訳(単位:10億トゥグルグ、当年価格;出典:上野 2005)

2005 2005(%)

TOTAL REVENUE AND GRANTS 838 100.0

CURRENT REVENUE 833 99.4

I.Tax Revenue 692 82.6

A.Income Tax 179 21.3

1.Corporate Income Tax 121 14.4

2.Personal Income Tax 58 6.9

B.Social Security Contributions 96 11.4

C.Property Tax 6 0.8

D.Taxes on Domestic Goods and Services 271 32.3

1.Value Added Tax 181 21.6

2.Excise Taxes 79 9.4

3.Special Purpose Taxes 11 1.3

a.Tax on Fuel and Gasoline 6 0.7

b.Tax on Vehicles 5 0.6

E.Taxes on Foreign Trade 57 6.8

1.Customs Duties 53 6.3

2.Export Duties 4 0.5

F.Other Taxes 84 10.0

1.Stamp Fees 31 3.7

2.Royalties 32 3.8

3.Land Payment 14 1.7

4.Fees on Usage of Timber 1 0.1

5.Hunting Fees 3 0.4

6.Other Fees 3 0.3

II.Non-tax Revenue 140 16.8

1.Dividends from SOEs 23 2.8

2.Interest and Fines 14 1.7

3.Rent 9 1.1

4.Navigation Fees 14 1.7

5.Revenues from Budget Entities 69 8.3

6.Others 11 1.2

CAPITAL REVENUE 1 0.1

GRANTS FROM FOREIGN GOVERNMENT 4 0.5

(出典:上野 2005)

(注)おおよそ、1,000トゥグルグ=1US$。

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2003年に一般税法の大幅な改定が行われ、これが現在の租税制度の大枠を決めている。

現在の租税の種類も、この改定一般税法(General Taxation Law, revised on January 1,

2003)によって規定されている。先ず、租税(National Tax)は国税(State Tax)と地方

税(Local Tax)に分けられている(GOM, 2003e,Article 15)。国税とその税率は、国会に

あたる国家大会議(State Great Khural)4 が決定し、地方税とその税率はアイマク(県に

相当する)と首都ウランバートル市(以後両者を総称してアイマクと呼ぶ)それぞれの代

表者会議(Representative Khural)が決定する。ただし、地方税の税率は、国家大会議が

決定した限度を超えてはならない。行政レベルは 3 層になっており、アイマクの下にソム

(村に当たる)がありウランバートル市の下に地区(これも以後総称してソムと呼ぶ)が

ある。しかし、ソムは税の決定権はなく、アイマク代表者会議がソムに関する租税を決定

し、徴収し、ソムへ配分する。

国税は、以下の 8種類からなる:付加価値税、企業所得税、所得に関する推定課税(小

売店などの小企業で会計帳簿を作成していない企業用)、個人所得税、商品税、輸入関税、

ガソリン・ディーゼル税、鉱物資源ロイヤルティー(採掘権、現在販売額の5%)。地方税

は、以下の 15種類と規定されている:銃砲税(ゲーム即ち狩猟が重要なモンゴル観光の魅

力となっている)、首都移入税(モンゴルでは人口が極端に首都に集中し、総人口の 50%近

くが首都にいると言われる、政府はこの人口集中を抑制したい)、犬飼育税、相続・贈与税、

不動産税、郵便切手・印紙税、水源・鉱泉利用税、運輸・自動車税、特定の鉱物資源(銅、

金、蛍石などと思われる)を除く自然資源の開発許可と開発活動税、植物利用税、他の一

般的な鉱物資源の利用税、狩猟・捕獲許可料、土地税、森林・材木利用税、一つの不明な

税。

これら地方税は、数は多いがいずれも額の小さい税であり、地方財政収入へあまり貢

献しない。表 2-1からもわかるように、地方税を大きいものからあげていっても、切手・

印紙税(Stamp Fees、一般政府歳入の 3.7%)、土地税(Land Payment、1.7%)、不動産税(Property

Tax、0.8%)、自動車税(Tax on Vehicles、0.6%)、狩猟・捕獲税(Hunting Fees、0.4%)

しかない。これをみれば、地方は一般歳入のわずかなシェアしか得られないであろうこと

が判る。

C.徴税制度と JICAプロジェクト

徴税組織は、GDNT(General Department of National Taxation、国家租税総局、

日本の国税庁にあたる)、アイマク税務署、ソムの国税検査官からなる(GOM 2003e,

Article19)。これら全体をNTA(National Tax Administration、国家租税管理組織)と

呼ぶ。NTAが国税(State Tax)と地方税(Local Tax)を徴収する。GDNTとアイマク

税務署の中に、税不服解決委員会が設置され、この委員会は納税者と徴税組織の間の紛争

を解決する権限を持つ。GDNT はアイマク税務署を統括し、アイマク税務署はそれぞれの

下にあるソムの国税検査官(及びウランバートル市の地区税務事務所)を統括する。即ち、

4 モンゴルは、国家大会議だけの一院制を取っている。

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各アイマクの税務署長は GDNT の長が指名し、ソムの検査官と首都の地区税務事務所の長

は、それぞれのアイマク税務署の長が、アイマク知事と相談の上で、指名する。GDNT

長官は、租税政策の形成に参加できる。

徴税能力向上のために、IMFの提言に従い、1996 年にGDNTはその内部にLTO

(Large Taxpayers Office、高額納税者オフィス)を設置した(IMF 1999、pp.47-48)。

LTOは徴税効果と効率を上げるために、高額納税者だけに集中して徴税を行うことを目

的としている。当初 56 の企業を 10 人の税務官担当することから出発し、非常に効果的に

働き、国税増収に貢献した。以後、その対象企業数を増加させ、現在も国税徴収に大きく

貢献している。

日本の JICA(当時の国際協力事業団、現国際協力機構)は、IMFとは別にGDNT

の徴税機能強化のために、数次にわたる協力プロジェクトを実施した。5 この徴税諸プロジ

ェクトの提言の一部を反映して、この 2003 年改定の一般税法(GOM 2003e)は、NTA

の権限を大幅に強化した。主な強化内容は以下である:納税企業(個人)への立ち入り査

察権限;対象企業(個人)に関する関連情報を、銀行を含む関連企業から、入手できる権

限;納税者が銀行口座の開設と廃止を、NTAに届け出る義務;差し押さえ権限;源泉徴

収(withhold tax on salaries)をしない企業への差し押さえ権限;脱税・納税遅延企業に

対する罰則的追加税;一般の中央・地方政府職員がNTAを支援し情報を提供し協力する

義務;などである(GOM 2003e, Articles 10, 13, 14 ,24 and 29)。

更に、税務官に対する、徴税へ励むインセンティブのためと、賄賂などの汚職に対す

る防止対策として、徴税成果が良い者に対してボーナスや報奨金(ただしそれらの全額が

月給額を上回らないこと)を与える(GOM 2003e, Article25)。6

これらの強化策やインセンティブが、高い税収率(2005 年度でGDPの 37%、図 1-

2 参照)を支えていることは確かであり、他の財政基盤の弱い途上国への示唆となりうると

思われる。

D.中央政府の歳入と租税収入

第 3 章で述べるように、地方政府の歳入が一般政府の歳入に占める割合は、ほんのわ

ずかである。2005 年では9%でしかない。この事実からわかるように、一般政府の歳入構

成は、殆んどは中央政府歳入構造の反映である。ただ一般歳入に比べて、中央政府歳入は

一項目だけ歳入項目が多い。表 2-2 は 2005 年度の中央政府の歳入をあらわしており、

5 主なものは4プロジェクトある:フェーズI(1998-99、「モンゴル国市場経済化支援

調査」プロジェクトの後半部分として実施された)、フェーズ II(2000-01、「徴税機能強

化支援フェーズ II」プロジェクト)、フェーズ II の延長(2001-03、「納税者情報管理制度

整備」プロジェクトと呼ばれる)、フェーズ III(2003-05、「税務教育システム構築」プロ

ジェクト)。これらはすべて 2005 年 7 月までに終了し、現在は一つの小さなフォローアッ

プ・プロジェクトがあり、フェーズ II の延長とフェーズ III の提言をGDNTが実施・運

営している実施面への支援を行っている。これも 2007 年夏ごろには終了予定である。 6 また、税務官は、租税業務遂行上に得られた税以外の不法行為の情報を関係機関へ通報

する義務を負っている。

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9

表 2-2.中央政府の歳入内訳(単位:10億トゥグルグ、当年価格;出典:上野 2005)

2005 2005(%)

TOTAL REVENUE AND GRANTS 793 100.0

CURRENT REVENUE 764 96.3

I.Tax Revenue 636 80.2

A.Income Tax 168 21.2

1.Corporate Income Tax 121 15.3

2.Personal Income Tax 48 6.1

B.Social Security Contributions 98 12.3

C.Property Tax 0 0.0

D.Taxes on Domestic Goods and Services 254 32.0

1.Value Added Tax 169 21.3

2.Excise Taxes 79 10.0

3.Special Purpose Taxes 6 0.7

a.Tax on Fuel and Gasoline 6 0.7

b.Tax on Vehicles 0 0.0

E.Taxes on Foreign Trade 57 7.2

1.Customs Duties 53 6.7

2.Export Duties 4 0.5

F.Other Taxes 58 7.3

1.Stamp Fees 27 3.4

2.Royalties 29 3.6

3.Land Payment 0 0.0

4.Fees on Usage of Timber 0 0.0

5.Hunting Fees 2 0.3

6.Other Fees 0 0.0

II.Non-tax Revenue 129 16.3

1.Dividends from SOEs 22 2.8

2.Interest and Fines 8 1.0

3.Rent 9 1.1

4.Navigation Fees 14 1.8

5.Revenues from Budget Entities 66 8.3

6.Others 9 1.1

CAPITAL REVENUE 0 0.0

GRANTS FROM FOREIGN GOVERNMENT 4 0.5

GRANTS FROM LOCAL GOV. TO CENTRAL GOV. 24 3.0

(出典:上野 2005)

(注)おおよそ、1,000トゥグルグ=1US$。

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10

その最下段が、この特別な歳入項目である。即ち、地方政府から中央政府への移転収入

(Grants from Local Government to Central Government)というものが存在する。この

具体的内容はモンゴル国統計局担当官によって、以下のように説明された(筆者による現

地調査、2006 年 8 月 31 日~9 月 9 日)。この項目は主に民営化の売り上げと政府資産の民

間への売却額であり、それらはまず地方政府収入として登録され、そこから地方政府が中

央政府へ、額の大部分を移転する、との説明であった。

2005年度の中央政府の歳入の主なものは以下である(表2-2参照)。まず租税収入(Tax

Revenue)が中央政府総収入の殆んどである 80%を占め、残りの主なものは非税収入(16%)

と上記の地方政府からの移転収入(3%)である。非税収入の主なものは予算内独立法人

(Budget Entities)7 からの収入(8%)である。

租税収入では、付加価値税(Value Added Tax)が最大で 21%をしめる。続いて大き

な税源は、所得税(Income Tax、企業所得税が 15%、個人所得税が6%)、関税に代表さ

れる外国貿易税(Taxes on Foreign Trade、7%)である。税収とは考えられないが、税収

として統計上含まれている大きな収入が社会保険払い込み(Social Security Contributions、

12%)である。

逆に、中央歳入とされていない項目(歳入ゼロの項目)が、不動産税(Property Tax)、

自動車税(Vehicle Tax)、土地使用料(Land Payment)、木材採取・利用税(Fees on Timber

Use)、その他使用料(Other Fees、水源使用料など)、資本収入(Capital Revenue)であ

る。資本収入とは、前述した民営化の売り上げと政府資産の民間への売却額であり、地方

歳入として登録される。これらすべては、法的に地方税として規定されている。

E.小結と問題点

ここでは、歳入と租税制度の問題点を指摘する。第 1 の問題又は重要検討課題は、地

方自治に関係する。上記のごとく、地方税は存在するが、地方政府(アイマクとソム)は、

徴税組織を持つことができず、実際に持っていない。8 地方独自の徴税権を持たずに、自治

は不可能である。更に、上記から推測できるように、地方税から期待できる税額はわずか

である。独自財源が小さくては、地方自治は不可能である。結果として、地方政府は中央

政府からの補助金に依存している。さらに、小中高等学校・診療所・病院といった通常は

地方自治体が行うことが望ましい機能が、2003 年 1 月から中央政府直轄に変更された。こ

のことは、カリキュラム権限・人事権・財政権限などのあらゆる面で、地方政府の権限を

奪うかまたは弱めている。これらのことは、最終的な目標である地方自治の制度から遠ざ

かり、社会主義時代の中央直轄型の行政制度へ逆戻りする危険性をはらんでいる。

第 2 に、対象企業(個人)に関する所得関連情報を銀行から入手できる権限、が問題

7 これは多分、鉄道・電気・石炭などのユーティリティー関連だと思われるが、確認を要

する。 8 これは、旧社会主義時代の中央統制税制・財政の観念が、そのまま現在でも残存してい

ることを意味しているように思われる。

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11

となる。これは、国際的な一般合意である、銀行による個人情報守秘義務に反する。筆者

のインタビューにおいて、IMF(国際通貨基金)モンゴル事務所長は、この理由により、

この権限は望ましくないと述べている。しかし一方では、銀行からの情報がないと脱税そ

の他の裁判において、NTAの証拠能力が非常に弱くなり、裁判に勝てなくなる。従って、

NTAにとっては望ましい権限である。この矛盾に対する解決策は多分、ケース・バイ・

ケースの特例規定・特例法を定めて調整することであろうと思われるが、この矛盾に対し

て専門家が合理的な解決策を作り出す必要がある。この問題をより一般化すれば、銀行の

個人情報守秘義務・銀行内部情報守秘権利をどう扱うか、の問題となる。最近の国際的な

一般的な動きは、社会的な必要性か社会的正義が存在するならば、これら義務・権利はケ

ースに応じて削減される方向にあるように思われる。たとえば、最近スイスのいくつかの

銀行は、マネーローンダリングに関する情報の外部提供に合意している。ただし、すべて

の納税者は銀行口座の開設と廃止をNTAに届け出ねばならない、とするNTAの権限は

行き過ぎであろう。

第 3 に、税不服解決委員会の設置場所に問題がある。この委員会は納税者と徴税組織

の間の紛争を解決する目的を持っているので、NTA内に設置されNTAが運営する内部

組織として設置されたのでは、その独立性が保てない。この委員会は、JICA プロジェクト・

チームが提言した、税務裁判所(税金関係のみを扱う裁判所)を、実施しようと意図した

と思われるが、チーム提言は、独立性を考慮して裁判所として提言している。独立性が必

要である。

第 4 に、重要な問題として、汚職の問題が残っている。勿論、税務官の不法行為(賄

賂を貰った上での税軽減等)に対する懲罰が一般税法(GOM 2003e, Articles 25)に規定さ

れているが、その実効性については、疑問を呈する意見を多く聞いた。モンゴル政府は近

年(多分 2006 年)、税務に限らず一般的に、官僚による汚職を取り締まる汚職対策法を立

法し、取締りを強化すると宣言している。望ましいステップであり、有効に実施されるこ

とが望まれる。さらにこれに加えて、税務官に関しては汚職への誘惑が特に強いため、税

務官用の特別な汚職防止・懲罰の仕組みを作る必要があると思われる。

第 3章 地方政府の歳入と税収の現況と問題点

A.地方歳入と中央政府の地方行政区内での支出

MSY(Mongolian Statistical Yearbook、モンゴル統計年鑑)の財政統計は不備で、

地方政府と中央政府の歳入を足し上げても一般政府の歳入(General Government

Revenue)にならない。足し上げられない理由は、社会保険払込金と中央政府から地方政府

への補助金との、二つの歳入面において額面が一致しないためである。後者の中央政府か

ら地方政府への補助金は、これを地方政府の歳入に入れると、一般政府としては歳入の二

重計算になるので、一般政府では排除せねばならない。これで、補助金については足し上

げられない理由が成立する。しかし、社会保険払込金については、説明がつかない。そこ

で簡便法として、一般政府(中央プラス地方政府)と地方政府(アイマクとソム政府)の

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歳入を正しいものとして、地方政府の歳入が一般政府歳入に占める割合を算出した(表 3

-3)。

表 3-1.一般政府の歳入 (単位:10 億トゥグルグ、当年価格)(出典:上野 2005)

General Gov. Rev. 2002 2003 2004 2005

TOTAL REVENUE AND GRANTS 477 554 717 838

CURRENT REVENUE 470 545 706 833

I.Tax Revenue 359 421 583 692

A.Income Tax 72 98 144 179

B.Social Security Contributions 54 65 82 96

C.Property Tax 3 5 6 6

D.Taxes on Domestic Gooods and Services 179 190 244 271

E.Taxes on Foreign Trade 25 33 45 57

F.Other Taxes 26 31 62 84

II.Non-tax Revenue 111 124 123 140

CAPITAL REVENUE(from Immovable Assets Sales) 0 0 1 1

GRANTS AND TRANSFERS 7 9 6 4

I.from Foreign Governments 7 9 6 4

II.from Local Gov. to Central Gov. 0 0 0 0

表 3-2.地方政府の歳入 (単位:10 億トゥグルグ、当年価格)(出典:上野 2005)

Local Gov. Rev. 2002 2003 2004 2005

TOTAL REVENUE AND GRANTS 105 52 69 78

CURRENT REVENUE 104 47 60 71

I.Tax Revenue 86 35 48 59

A.Income Tax 26 4 8 10

B.Social Security Contributions 0 0 0 0

C.Property Tax 3 5 6 6

D.Taxes on Domestic Gooods and Services 44 13 15 17

E.Taxes on Foreign Trade 0 0 0 0

F.Other Taxes 13 13 20 26

II.Non-tax Revenue 19 12 12 12

CAPITAL REVENUE(from Immovable Assets Sales) 0 2 1 1

GRANTS AND TRANSFERS 0 3 8 6

I.from Foreign Governments 0 0 0 0

II.from Central Gov. to Local Gov. 0 3 8 6

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表 3-3.地方政府の歳入が一般政府歳入に占めるシェア(%)(出典:上野 2005)

Local Gov. Rev. in % of General Gov. Rev. 2002 2003 2004 2005

TOTAL REVENUE AND GRANTS 22% 9% 10% 9%

CURRENT REVENUE 22% 9% 8% 9%

I.Tax Revenue 24% 8% 8% 9%

A.Income Tax 36% 5% 6% 6%

B.Social Security Contributions 0% 0% 0% 0%

C.Property Tax 94% 100% 100% 100%

D.Taxes on Domestic Gooods and Services 24% 7% 6% 6%

E.Taxes on Foreign Trade 0% 0% 0% 0%

F.Other Taxes 50% 41% 32% 31%

II.Non-tax Revenue 17% 10% 9% 8%

CAPITAL REVENUE(from Immovable Assets Sales) 83% na 100% 100%

GRANTS AND TRANSFERS 0% 36% 139% 148%

I.from Foreign Governments 0% 0% 0% 0%

II.from Local Gov. to Central Gov. 0% 0% 0% 0%

この表 3-3 からわかるように、地方政府歳入の一般政府歳入内でのシェアは、9%~

22%と非常に低い。地方自治へは程遠い状態といえる。

更に特徴的なことは、2002 年には 22%であったシェアが 2003 年には 9%へ激減し、

以後 9%~10%のレベルで低迷している点である。これは、主として PSMFL(公共部門経

営・財政法)が 2003 年 1 月から実施されたことが原因であると思われる。PSMFL はニュ

ージーランド型の NPM(New Public Management、新公共経営)9 を導入し、予算策定・

執行を有効化・効率化することを、その柱としている。その結果、地方政府の大きな支出

項目であった教育と保健への支出管理主体が、地方政府から中央政府のそれぞれの省へ移

管された。そのため、付加価値税と所得税のうちで、2002 年まで地方政府の歳入と定めら

れてきた部分が、地方政府収入から中央政府収入へ移管された。その結果として、地方の

歳入シェアが 9%へ激減したものと思われる。この問題は、次の第 4 章でより一般的に、

PSMFL の問題として検討する。

もう一つの検討課題は、個人所得税である。個人所得税は、少なくとも 2000 年度まで

は 100%地方税であった(World Bank, 2002a, p.88, Table5-5)。これが、2003 年改訂の一

般税法では中央政府税と規定されてしまった。実際の配分においては、2005 年度で 83%

9 NPM とは、ニュージーランド・英国・米国において開発・実施され、先進国の多くが

採用している、予算と行政の改革手法である。予算策定・執行を有効化・効率化すること

を目指している。その特徴は、(1)契約をベースとした予算経営をする;(2)達成すべ

き業績目標によって予算策定し予算支出項目による予算制限はしない;(3)事後評価によ

って、ある政府活動の成功・不成功をはかる;などである。

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(=48/58、表 2-1 と表 2-2 を利用)が中央政府の歳入となり、従って残りの 17%が地方政

府収入となっている。10 個人所得税は地方にとって比較的大きな税収源であったから、こ

の 100%から 17%への削減は、地方政府にとって大きな痛手のはずである。このような変

更が、果たして適切な改訂であったのかどうかは、検討の余地がある。

これら地方政府の税収減は、中央から地方への補助金増加額と、中央政府自身の直轄

による地方政府地域内での公共事業(2003 年以降には教育と保健分野での中央政府事業に

代表される)の増加額とで、相殺する形で分析する必要がある。しかし、地方への補助金

額の統計は公表されているが、後者の中央政府直轄事業の内訳が全く公表されていない。

このような統計未公表は、予算の透明性義務の観点からも、財政政策分析のために必要な

データである点からも、問題点として指摘せねばならない。

同様なことが、付加価値税についても言うことができる。即ち、付加価値税の地方政

府の取り分は、経年的に減少してきている。地方政府は、1998 年には付加価値税総収入の

31%を得ていた(World Bank, 2002a, p.88, Table5-5)。しかし 2005 年には7%

(=1-169/181、表 2-1 と表 2-2 を利用)しか得ていない。地方政府の歳入は、大幅に削減

されてきている。この法的根拠、行政的理由は不明である。

制度上の問題も重要である。2003 年改訂一般税法では、個人所得税も付加価値税も中

央政府の歳入であると規定している。にもかかわらず、上記の如く、僅かではありが、2005

年度では、個人所得税の 17%と付加価値税の 7%は地方政府の歳入となっている。多分、

別な諸法律が存在し、このような配分が行われているのであろうが、そのような諸法律の

存在は、国税庁・財務省でのインタビューでは示唆されなかった。ここにも、透明性に欠

けるという大きな問題がある。

上記の PSMFL に伴う歳入の移管に関して、当然のことながら、地方行政区内での中

央政府による教育・保健分野での支出が増加せねばならない。残念ながら、この面での中

央政府支出統計が発表されておらず、直接的に確認できない。11 しかし一般政府の教育・

保健関連支出を見れば、間接的にではあるが、両分野での支出が維持されたかどうかを、

確認することができる(表 3-4)。

表 3-4.教育・保健の支出、一般政府歳出内でのシェア(10億トゥグルク、当年価格、%)

2002 2002(%) 2003 2003(%) 2004 2004(%) 2005 2005(%)

Total Exp. 548.6 100.0 615.8 100.0 752.5 100.0 764.6 100.0

Education 103.7 18.9 115.4 18.7 141.0 18.7 147.8 19.3

Health 58.0 10.6 58.1 9.4 73.2 9.7 80.2 10.5

(出典:上野 2005)

10 改訂一般税法の規定と、実際の配分の違いの理由は、不明である。いずれフォローア

ップ調査が必要である。 11 いずれ、この支出面での実態調査を行う必要がある。

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表 3-4 からわかるように、教育の一般政府支出内でのシェアは約 11%で一定に保たれてお

り、保健のシェアも 9~11%レベルで一定している。即ち、地方政府から中央政府へ移管さ

れた歳入部分は、中央政府の支出として還流され、全体として(一般政府として)の支出

は維持されている。従って、残された問題は、この支出額を地方政府が管理すべきか、中

央政府が管理すべきかの問題である。現在は、中央政府が管理している。

B.地方税制度と地方税収

上記では地方歳入の規模を検討したが、ここでは歳入を構成する税目を検討する。表 3

-3 からわかるように、地方税と規定された不動産税(Property Tax)は 100%が地方の歳

入となっている。地方政府は徐々に、この税金に依存せねばなるであろう。不動産税以外

の地方税の主なものが含まれている“その他の税(Other Taxes)”は、その 31~50%が地

方の歳入となっている。

これら以外で大きな地方歳入は、所得税と付加価値税(Taxes on Domestic Goods and

Services の主な部分)である(表 3-2)。これは前述したように、第 2 章Bで述べた地方

税の法的な定義と異なっている。所得税・付加価値税は法的に中央政府税と定められてい

るにもかかわらず、これら税目のある程度の額が地方税収として計上されている。理解し

がたいことであるが、別な法律によって、これら税目における地方政府の取り分が規定さ

れているものと思われる。残りとしては、非税歳入がある程度存在する(表 3-2)。いずれ

にしろ、わずかな額である。

第 4章 公共部門経営財政法(PSMFL)

第 3 章で検討したごとく、2003 年から実施されている PSMFL は地方財政に大きな影

響を与えている。さらに重要なことは、この法律が目指す NPM(ニュー・パブリック・マ

ネジメント、新公共経営)型の行政改革が、果たしてモンゴルにとって望ましいものかど

うかについて、未だ確たる証拠がないことである。この章は、まず PSMFL を概観し、次

に NPM を途上国に導入することに関する一般論を検討し、最後に前章で明らかにされた

PSMFL の問題を再説し、検討課題を示す。

A.公共部門経営財政法(PSMFL)

モンゴルの PSMFL の概要については、World Bank(2002a, p.4)が、以下のように

要約している。

「公共部門の経営戦略であり、以下の点を含む。

■執行組織(省庁・独立行政法人・国会関連機関)が、産出特定型(output based)の

予算・公共経営・報告を、採用する;

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■発生ベースの予算と会計を採用する;

■公共事業執行のための投入財の決定・運用の決定権を、執行組織の長(大臣または最

高執行責任者)へ権限委譲する;

■執行組織は、その公的活動をビジネスと考え、ビジネスの戦略計画を作成し、執行組

織の長は、年度末にその戦略計画について受任結果責任(accountability)を問われ

る;

■経常予算と資本予算を統合する;即ち、公共投資と公共サービス生産費用・必要移転

費用の、歳出議決(appropriation)を通じて、これを行う;

■執行プログラムを持つ執行組織の長は、上記予算の費用推定を準備し、(年度終了直

後には、筆者注)年度報告書を作成する;

■(財務省は、筆者注)政府全体の予測財務諸表(3 年、筆者注)とその年度末の財務

諸表を発生ベースで用意する。」

B. NPM型予算経営方式の途上国への導入の是非

モンゴルに PSMFL を導入したことの是非を検討するために、一般論として、NPM 型

の行政改革を途上国に導入すべきかどうか、について検討する。

導入の是非については現在でも専門家の間で意見が分かれている。アジア開発銀行は、

導入すべきという考えから、モンゴルに対し PSMFL の成立へ向けて技術協力とソフト・

ローンを提供し、実現へ誘導した。一方で、過去の経験を見ると、途上国で最も早くNP

M型の予算経営方式を採用したのはジャマイカであり、その結果は失敗であったといわれ

ている。

OECD の NPM 型行政改革を眺めた上で、途上国への適用可能性を考察した Schick

(1997)は、途上国が NPM を採用することに慎重であり、NPM 型の行政改革を開始する

以前に予算策定と予算執行が達成すべき必要条件がある、と主張している。Schick(1997)

に関して、World Bank (1998a, p.8)を要約すれば以下となる。

「OECD の行政改革努力の経験から、Schick(1997)は以下のような点を途上国へ示唆

している。

“基礎(the basics)を正しく構築せよ”

1.実績予算または成果型予算を導入する前に、実績達成を求めるような、かつ実

績達成を支援するような環境を強化せよ;

2.産出(outputs)を制御しようとする前に、投入(inputs、費用項目)を制御

せよ;

3.発生主義の会計を行う前に、現金の計算・報告を達成せよ(account for cash);

4.内部制御を作り上げる前に、外部制御を作り上げよ;

5.管理結果責任(managerial accountability)を導入する前に、内部制御を作り

上げよ;

6.統合財務管理システム(integrated financial management system)を導入す

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17

る前に先ず、信頼できる会計システムが作動している状態を作り出せ;

7.結果基準型予算(budget for results)を達成する前に、活動基準型予算(budget

for work)が先に出来上がっていなければならない;

8.公共部門において業績型契約を導入する前に、民間市場において正式な契約が

励行される状態を実現せよ;

9.業績型会計監査に入る前に、財務会計の実効ある実施が行われている状況を作

りだせ;

10.政府活動管理者(managers)に、信用に基づいて与えられた資源を効率的に

使うことを要求する前に、資金の流れが予測可能な予算を採用し実行せよ。

…行政改革の担い手(中央予算担当機関)は、改革を行う基礎(basics)を準備するこ

とに集中すべきである。」

これらの必要条件は、PSMFL の内容項目に対して、明らかな対照を示している。

C.小結

前章で述べたごとく、地方政府の歳入シェアが 2002 年の 22%から 2003 年の 9%へ激

減した。これは、明らかに地方政府の権限と能力の大幅な縮小である。地方政府は、住民

の主な需要である教育と保険において、住民に最も近く、住民の需要を知り、住民へのサ

ービス提供に向いている。その地方政府が、これら行政サービスの管理運営、職員の雇用

解雇、財政資源とその管理、などの権限を持たないことは望ましいのであろうか?

さらに、上記Bでの一般的検討から出てきた Schick(1997)の必要条件を、モンゴル

は満たしているのであろうか?筆者の、4年間(1995-99)のモンゴル滞在での観察と経験

が正しいならば、答えは、必要条件を満たしているとはいえない。例えば、この観察に基

づいて、筆者は最近以下のようなコメントを書いた。

「モンゴル政府には、政策実施能力の問題が存在した。モンゴル政府は、政策は曲がりなりに

も作成するし、作成能力も徐々にではあるが出来つつあった。問題は、実施能力がとても低か

ったし、現在でも低いのではないだろうか。もっとも、これはモンゴルに限らず発展途上国全体

が抱えている問題である」(上野 2007、p.57)

「これは(PSMFL は)、アジア開発銀行とUNDPが中心となり推進し、世界銀行・IMFも同調し、

推し進めた。これにたいして私は反対し“時期尚早であり、市場経済に対応できる伝統的な

(マックス・ウェバー的な)官僚制度の構築のほうが当面の優先課題である”と主張してきた。契

約を守ることが重要であるという社会通念が明確に成立していないモンゴルの当時の状況で、

契約を主体とするニュー・パブリック・マネジメントを導入できるとは思えなかった」(上野

2007, pp.60-61)

モンゴルの PSMFL が以上の問題を抱えているとするならば、どのような改善策があるの

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であろうかを、今後検討していく必要がる。

謝辞

この研究は、「2006 年度南山大学パッヘ研究奨励金I-A-2」の支援、及び「科学研

究費補助金、基盤研究(B)17330066『移行経済国における“市場形成”の進展、課題、

政策と日本の協力』(代表駿河輝和)」の支援を受けて行われたので、ここに感謝したい。

参考文献

アジア経済研究所、1997、「国別経済協力指針策定のための基礎調査、モンゴル報告書」3

月。

金融財政事情研究会、2001、「モンゴル国市場経済化支援調査(徴税機能強化フェーズ II)、

ドラフトファイナル・レポート」国際協力事業団(当時)委託調査報告書のドラフト、

(社)金融財政事情研究会。

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