コラーゲン線維の形成と成熟 - uminaldehyde contents 本 expt. 1 expt. 2 expt. 3 1 m nacl...

16
-47- CollagenSymposium X (1 973) コラーゲン線維の形成と成熟 (和歌山医科大学生化学教室) はじめに コラーゲン線維が特徴的な強い弾力性を示すのはコラーゲン分子聞に生じる共有結合のため といえる.単一のペプチドとして合成された庄成分が二本鎖の β ,さらに三本鎖のコラーゲン 分子である γ(トロポコラーゲン)へと重合し,その過程に水酸化・脱アミノ化・グリコシル 化等種々の修飾を受けつつ一定の規則性のもとに多数あつまって線維として成熟して行く. この重合化高分子化を安定に維持するためには,分子内・分子聞にわたる架橋結合形成が必 要である ←アミノプロピオニトリル (BAPN) 投与による実験的 lathyrism によって架橋 共有結合の必要性は極めて明白に実証され 11, それ以後その結合様式についても次第に明らか にされつつある.複雑な高分子物質中に存在する限られた部分を検索するので,その手段は多 分に間接的なものであり,推測の域を出ない面も多いが,コラーゲン成熟に関する今日迄の研 究成績のうち架橋形成機構を中心にまとめてみる. コラーゲンの成熟と溶解性 成熟過程を検索する基本的な手段として溶解度によるコラーゲンの分画法がある.すなわち, 中性塩溶液(主として食塩)および稀酸溶液(酷酸あるいはクエン酸)に抽出されてくるいわ ゆる可溶性コラーゲンは重合化のすすんでいない未成熟な aβ およびγ成分からなり,不溶 性分画は γ技分が更に重合化した成熟コラーゲンからなっている.この可溶性コラーゲンを更 に構成成分に分画する方法として,ディスク電気泳動 2)および CM セルローズカラムクロマ トグラフィー 31 が開発され, aβ およびγ成分の分離定量に用いられている.これらの方法に より α 成分には幾分アミノ酸組成のことなった二種類があり, α1lt'2と名づけられ, したが って β にも β11 (α1が二本)と β12(a)α2)が存在することも明らかにされている. Martin41 C 14 夕、リンシン投与後のラット皮膚コラーゲン各分画中への C14のとり込 みを経時的に観察し,放射能がu から β へ日を追って移動して行くことを認めた.つまり生成 されたコラーゲン鎖は,時間とともに重合化して行くことが示された.コラーヂンの溶解性は, その分子あるいは線維内に存在する架橋の量と質によってことなり,一般には架橋形成が多い 程可溶化しにくいといえる.生理的加齢により溶解性が減少してくるのも,この架橋の質的量 的な変化と考えられる.また可溶性分画中においても,加齢とともに α 成分が減じγ成分が増 加するという事実もある 51 このようなコラーゲンの成熟不溶化が進行する機構として,次の二つの反応が考えられてい

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Page 1: コラーゲン線維の形成と成熟 - UMINAldehyde contents 本 Expt. 1 Expt. 2 Expt. 3 1 M NaCl Control Lathyrism 1.19 0.57 1. 22 0.53 1. 67 0.45 O. 2 M citrate (p H 3. 5 J Control

-47-

Collagen Symposium, X (1973)

コラーゲン線維の形成と成熟

キ公 キナ 勇

(和歌山医科大学生化学教室)

はじめに

コラーゲン線維が特徴的な強い弾力性を示すのはコラーゲン分子聞に生じる共有結合のため

といえる.単一のペプチドとして合成された庄成分が二本鎖のβ,さらに三本鎖のコラーゲン

分子である γ(トロポコラーゲン)へと重合し,その過程に水酸化・脱アミノ化・グリコシル

化等種々の修飾を受けつつ一定の規則性のもとに多数あつまって線維として成熟して行く.

この重合化高分子化を安定に維持するためには,分子内・分子聞にわたる架橋結合形成が必

要である .β ←アミノプロピオニトリル (BAPN)投与による実験的lathyrismによって架橋

共有結合の必要性は極めて明白に実証され 11, それ以後その結合様式についても次第に明らか

にされつつある.複雑な高分子物質中に存在する限られた部分を検索するので,その手段は多

分に間接的なものであり,推測の域を出ない面も多いが,コラーゲン成熟に関する今日迄の研

究成績のうち架橋形成機構を中心にまとめてみる.

コラーゲンの成熟と溶解性

成熟過程を検索する基本的な手段として溶解度によるコラーゲンの分画法がある.すなわち,

中性塩溶液(主として食塩)および稀酸溶液(酷酸あるいはクエン酸)に抽出されてくるいわ

ゆる可溶性コラーゲンは重合化のすすんでいない未成熟な a,β およびγ成分からなり,不溶

性分画はγ技分が更に重合化した成熟コラーゲンからなっている.この可溶性コラーゲンを更

に構成成分に分画する方法として,ディスク電気泳動 2)およびC Mセルローズカラムクロマ

トグラフィー 31が開発され,a,β およびγ成分の分離定量に用いられている.これらの方法に

より α 成分には幾分アミノ酸組成のことなった二種類があり, α1, lt'2と名づけられ, したが

ってβ にも β11 (α1が二本)と β12(a)とα2)が存在することも明らかにされている.

Martinら41 は C14 夕、リンシン投与後のラット皮膚コラーゲン各分画中へのC14のとり込

みを経時的に観察し,放射能がu から βへ日を追って移動して行くことを認めた.つまり生成

されたコラーゲン鎖は,時間とともに重合化して行くことが示された.コラーヂンの溶解性は,

その分子あるいは線維内に存在する架橋の量と質によってことなり,一般には架橋形成が多い

程可溶化しにくいといえる.生理的加齢により溶解性が減少してくるのも,この架橋の質的量

的な変化と考えられる.また可溶性分画中においても,加齢とともにα成分が減じ γ成分が増

加するという事実もある 51

このようなコラーゲンの成熟不溶化が進行する機構として,次の二つの反応が考えられてい

Page 2: コラーゲン線維の形成と成熟 - UMINAldehyde contents 本 Expt. 1 Expt. 2 Expt. 3 1 M NaCl Control Lathyrism 1.19 0.57 1. 22 0.53 1. 67 0.45 O. 2 M citrate (p H 3. 5 J Control

ー -48

一つは a成分間志の結合によるゴラーゲン分子(トロポコラーゲン)の生成であり,他

の一つは,分子同志の結合形成,すなわち線維構造の安定化である.前者を分子内結合,後者

を分子間結合と夫々区別してよんでいる.

る.

collagen

β 十アミノプロピオニトリル (BAPN)を投与した動物は,動脈破裂,骨・関節の奇型等種

々の結合織異常をともなう,いわゆる lathyrismとよばれる症状を呈する。このような動物か

ら分離したコラーゲンの特徴は 可溶性で未成熟な分画が著増することにある.その理由とし

て,コラーゲンの成熟すなわち分子内・分子間の架橋形成反応を BAPNが阻害するためと考え

られる.

Fig.l (ま,

Lathyritic 2

可溶性コラーゲンに由来するとされる尿中総オキシプロリンが BAPN投与で増

TEAli

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i

中ム

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0.8 ... 伺

マヨ、、、

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也》ロ

E 04 ... メ。』円。::e' 0.2

30 25

Urinary excretion of hydroxyproline

• - Control rat

ーo--Lathyritic rat

20 '15 10

Dal"s

:1 o

Fig.l

量することを示している.尿中オキシプロリンが約 2倍に増量した時期の皮膚コラーゲンにお

いて,可溶性分画が著増していることが判る (Table1 ). この可溶性分画をディスク電気泳

動で分離すると,中性塩分画・酸可溶分画ともに,a成分の増加, β成分の減少が認められた

(Fig. 2).

また CMセルローズクロマトグラフィーにより塩可溶分画をさらに分離すると, Fig. 3に

示したように a1 • a 2の増加, β12 成分の減少が認められた.酸可溶分画のクロマトパター

ンも上記とほ J同型で, β成分の減少 a成分の増加が著明である (Fig. 4). これらの成績

から BAPNによるコラーゲンの成熟阻害は明らかである.

Chouら61は,鋼欠乏状態にした動物のコラーゲンも, BAPNの場合と同様な変化をおこす

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-49一

Table I The solubili ty of rat skin collagen

Status 1Mr、JaCl O. 2 M citrate Insoluble

Rat No soluble [%J soluble [%J [%J

Control

1

2

3

4

13.8

11. 5

7.2

11. 2

17.3

20.6

9.1

15.9

68.9

67.9

83.7

72.9

Av. 10.9 15.7 73.4

1 34.0 29.0 37.0

2 18.7 30.3 51. 0

Lathyrism 3 11. 8 14.3 73.9

4 21. 8 23.1 55.1

Av. 21. 6 24.2 54.2

β ピ竺づ 同 β

ll'

C C

: 1¥1 :¥aじISolubl.必じollagenJ fO.21v1ピitrate5olubl. CollagellJ

Fig. 2 Acrylamide-gel electrophoretic patterns

。f rat skin collagens

C : Control rat

L : Lathyritie rat

ことを見出し,銅イオンがコラーゲン成熟に関与する反応に必須の因子であることを示してい

る.

3 コラーゲン中のアルデヒド

コラーゲン中にはわず、かながらアルデヒドの存在することが知られていたが,これが架橋形

成と関係があると考え,検討が加えられたのは約10年前である 7' その後,このアルデヒド基

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-50-

I

nりー

0.7:'

ミE c R

~ O.SO 伺.., h 。J2 ...,

0.2;'

800

CM-cellulose chromatography of denatured 1. 0 M NaCI

soluble collagen (73mg) from rat skin

The eluting buffer was 0.06 ionic strength sodium

acetate buffer. with a superimposed linear gradient

from O. 0 to O. 1 M r、~aCI over a total volume of

800 ml.

Normal collagen

ー Lathyriticcollagen

700 60日300 400 500

Effluent (ml)

3 Fig.

βI~

}

(

(

l

() i:i

ミE

:-.i

E 、 O_~II= L

" /

11 ユ

800

CM-cellulose chromatography of denatured O. 2 M citrate

soluble collagen [70 mg J f.rom rat skin

Condi tions were the same as those for Fig.

700

3.

)

ハu

nhリ:;00 ヨOOtoO

l汀flu<,nt¥ mll

Fig. 4

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EA

Fhu

が直接分子内および分子間結合に関与しているとする証拠がつぎつ gと出されたが,その」例

として先述のBAPN投与動物コラーゲンの場合を示す.可溶性分画中のアルデヒドは Table

Eの如く中性塩・酸可溶いず、れの分画も BAPN投与で著減していたし,またTableIIIに示し

Table II Aldehyde contents of soluble collagen isolated from

control and lathyritic rat skin

Collagen

fraction Status

Aldehyde contents 本

Expt. 1 Expt. 2 Expt. 3

1 M NaCl Control

Lathyrism

1.19

0.57

1. 22

0.53

1. 67

0.45

O. 2 M citrate (p H 3. 5 J

Control

Lathyrism

0.82

0.29

0.94

0.40

0.74

0.24

申 :μmolesbutylaldehyde equivalents per 100 mg of collagen

Table III Aldehyde contents of each component of soluble collagen

isolated from control and lathyritic rat skin

Collagen Status

Aldehyde contents Cμmoles / 1 00 mg J fraction

1 2 β11 β12

Control 0.79 0.77 0.68 1 M NaCl

Lathyrism 0.17 0.18 0.28

O. 2 M citrate Control 0.96 1.22 0.58 0.58 (pH 3. 5J Lathyrism 0.22 0.31 0.26 0.40

たように, CMセルローズで分画した可溶性コラーゲンの各成分いずれも, BAPN群ではアル

デヒドが減少していた.同様な結果が銅欠乏動物のコラーゲンでも認められている 61 上記の

成績からコラーゲンの成熟とアルデヒドの存在が密接な関係、にあることがよく判る.

4 In vitroの線維再形成

可溶性コラーゲンを invitroで加温すると不溶性の線維に変化することは,かなり以前から

知られており,コラーゲン線維の再生現象とよばれる. Grossら8)は,条件を種々かえること

により線維の形成速度あるいは生成した線維の性質がことなることを観察し,コラーゲン成熟

機構解明に重要な子段を提供した.

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戸川

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0.5

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0.2

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....

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------困層酬。

~・・.--

。。 20 40 60 80 100 120 140 160

Time in minutes

Fig. 5 Rate of fibril formation of citrate soluble collagen

lncubation was at 3T C in 0.15 M NaCl, p H 7. 1,

0.23, collagen concentration 0.05 %.

一・ Control collagen

-0 -- Lathyritic collagen

この方法を利用してlathyritic な可溶性コラーゲンの線維形成を検討した結果を Fig. 5に

示したが,その生成速度は極めておそくなっている.また再生した線維を電子顕微鏡でしらべ

てみると,対照では天然コラーゲンによく似た規則的な横紋が認められるが, lathyritic colla-

genによる再生線維は横絞も不鮮明でやや細い紐状を呈し,形態的にもかなりことなる (Figs.

6, 7). つまりアルデヒドの少ない lathy ri ti c collagenは線維形成のための架橋形成が円滑

に進行せず,また出来あがったものも不完全で、あることが推定できる.

5 分子内架橋結合の性質

β および T成分中に存在する分子内架橋共有結合の部位と構造については,可溶性コラーゲ

ンを材料として種々検討されてきた Bornstein ら91は,ブロムシアンでコラーゲン鎖を処

理し,メチオニン残基で切断して数個のペプチドを得,そのおのおのについて含まれているア

ミノ酸残基をしらべた結果,分子内結合はコラーゲン鎖のアミノ末端に当る非らせん部のいわ

ゆるテロペプチド中に存在することを明らかにした.同時にβ鎖は,となりあったα鎖中のリ

ジン残基に由来するアルデヒド (a-アミノアジピン酸-o-セミアルデヒド),すなわちアリシ

ンが二個よってアルドール縮合していることを間接的に示した.後述するが, β成分中には不

飽和のアルデヒドが存在することも見出された.現在推定されているアルドール縮合の模式図

を Fig. 8に示した. BAPNがテロペプチド中のリジンからアリシンヘ変化するのを阻害して

いることも, lathyritic collagenの検索で明らかにされている.

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内《

U

Hhd

Fig. 6 Electron micrograph of control collagen fibrils formed in

vitro and stained with phosphotungstic acid (x 28,000)

Fig. 7 Electron micrograph of lathyri tic collagen fibrils formed in

vi tro and stai ned with phosphotungstic acid (x 28,000)

この分子内結合が高次な線維構造の安定化に直接役立っているのではなく ,成熟機構の中間

的反応であり ,生じたア ルドール縮合物中の遊離アルデヒドが次に述べる分子問架橋反応にそ

のまま 利用されると考えられる .現在アル ドール縮合以外の分子内結合様式は全く 推測の域を

出ていない .

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am守帥

hu

a Chain -NH -CH -CO-

(CH2J 2

CH2

CHO

a Chain

CHO

CH2

(CH2J2

-NH四 CH-CO-

同 NH-CH -CO-

(CH 2J2

CH2

CH-OH

CH-CHO

(CH 2J2

-NH -CH -CO-

Fig. 8 Scheme of aldol condensation

6 不飽和アルデヒドの存在

-NH -CH -CO-

(CH 2J2

CH2

CH

11

C-CHO

(CH 2J2

-NH -CH -CO-

分子内結合が以上のべた如くアルドール縮合であることはほぼ確定的であるが, Fig.8に示

したように,この際なわ一個のアルデヒドが遊離の形で残存していることになる.このことは,

Table皿に示した β成分中のアルデヒド含量が 100mgあたり約 0.5μmoles存在することか

らも判る.BAPN投与により可溶性コラーゲン各分画中のアルデヒドは一様に減少しているが,

その性質について以下のような検討を加えた Pazら¥0)の方法にしたがい Nーメチルベン

ツチアゾロンヒドラゾン (MBTH)により試料中のアルデヒドをアジン誘導体にかえて,紫外

部吸収スベクトルを測定した.

β12成分のpHLOにおける吸収スペクトルをFig.9に示したが,対照コラーゲンでは,飽

和アルデヒドに対応する298mμ のピーク(極大)と 312,326 mμの不飽和アルデヒドに対応

するショルダーが認められる.一方lathyriticcollagenでは,不飽和に相当するショルダーは

ほとんど消失している. pH 4.0では全般に長波長側に移動するが, pH 1.0 の場合と同様

la thyritic collagenでは,やはり不飽和アルデヒドに相当する吸収が認められな Lミ(Fig.10).

なわ a成分には,飽和アルデヒドに対応するピークのみで,対照と lathyrismの聞に差はなか

った.

この成績から明らかなように, β鎖を形成している分子内架橋結合には飽和と不飽和のアル

デヒドが混在している.つまり,アルドール縮合した後脱水をうけて不飽和型となった方が次

の分子間結合に利山されやすいのではないかと思われる (Fig.8).この脱水反応が如何なる機

構で進行するかは不明であるが, BAPN投与によってこの過程も円滑に進行しない可能性もあ

る.またlathyriticcollagenの β成分でアルデヒドが減。不飽和型も見出されないのは,分子

内結合にも,以下にのベるアリシンとリジンの E ーアミノ基によるシッフ塩基型結合が生じて

いるのかもしれない.

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F町

urD

0.5

0.4

()

280 :180

Absorption spectrum of the azine derivative ofβ12

component of O. 2 M citrate soluble collagen with

MBTH at p H 1. 0

Control collagen

Lathyri tic collagen

:160 120 340

¥¥" a¥"e Length 1mμ

:100

Fig. 9

C2.3mgJ

C3.5mgJ

も可口、¥

¥

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¥

¥

¥

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1

ttI

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0.2

ーハU

ー)

(

11¥0 320

日a¥'e Len宮th(mμ

Absorption spectrum of the azine derivative ofβ12

component of O. 2 M citrate soluble collagen with

MBTH at p H 4. 0

Control collagen

Lathyritic collagen

380 ハりρりi

)

(

1

1

()

280

Fig. 10

C2.3mgJ

C3.5mgJ

分子間架橋結合の性質7

分子間結合を検索するのには不都合な面が多く,

BAPN投与によって大部分の架橋結合反応が阻

より成熟したゴラーゲンは不溶性となり,

しかし,分子内結合ほど確定的な成績はない.

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。。F町

υ

害され線維が弾力性を失なうところから,分子内と同様分子間架橋反応にもアリシンの関与が

考えられた。

一方不溶性コラーゲンは,色々な物理的化学的手段により可溶化することができるが,その

際分子間結合もきれるため,その分離同定には使えない.一般的にいって,分子間結合は分子

内よりも不安定な結合様式をとっていると推定できるが,稀酸に対する溶解性の多様さなどか

ら,分子間結合には不安定なものと比較的安定なものとが存在し,しかも色々な条件下(例え

ば生理的加齢)で不安定型が安定型へ変化してくることも考えられる.

いずれにしても,実際に分子間架橋を確認するためには,まず、不安定な結合を安定化さす必

要がある.そのこころみも種々おこなわれたが, Na BH4 による還元が安定化にもそれ以後の

操作にも好都合で、あることが Baileyらl1}により見出され,その後この方面の研究は大いに進

歩した.通常は, トリチウムでラベルした NaBT4を用い,結合部にとりこませた後加水分解

し,アミノ酸分析機ても放射性物質を分離,構造決定する方法が使われている.この方法によっ

て次のものが分子間架橋結合物として提示されている.

まず不安定な結合として,アリシンとオキシリジンがシッフ塩基を形成したいわゆるアルジ

ミン結合があり,オキシリジノノルロイシンとして同定されているl1}(Fig.ll).これと類似の

Allysine

-NH-CH-CO- -NH-CH-CO- -NH-CH-CO-

CCH2J2 CCH2J2 CCH 2J2

CH2 CH2 CH2

CHO CH NaBH4 CH2

11

NH2 N NH

CH2 CH2 CH2

CH-OH CH-OH CH-OH

CCH 2J2 CCH 2J2 CCH2J2

-NH -CH -CO- -NH-CH-CO- -NH -CH -CO-

Hydroxy-

lysine

Aldimine bond

(ムり 7_D州日ydr叶 ¥H刷y刊dro侃叫吋X勾yl匂ys剖In叩1旧0

lysinonorleucine ) norleucine

Fig. 11 Formation of aldimine bond

結合として,アリシンとリジンによるリジノノルロイシンも石在認されている.

比較的安定なものとしては,アリシンとオキシアリシンとがアルドール縮合したシンデシン

が認められているが,この縮合形式は骨とか歯などの硬組織にみられる特殊ともいえるもので,

軟キ且品哉では石雀言忍されていない 12} (Fig. 12).

これら以外にも,構造は不明であるが分子間架橋に関与する結合隊式として, Kang らは,

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Allysine

Hydroxy-

allysine

57-

-NH-CH-CO-

C CH 2 ) ~ -NH-CH-CO- -NH-CH-CO-

CH2 C CH 2) 2 or CCH 2) ~

CHO CH~CHO CH 2

CHO HO-CH CH-OH

CH-OH CH-OH HO-C-CHO

CCH 2)2 C CH 2) 2 C CH 2) 2

-NH-CH-CO- -NH-CH-CO- -NH-CH-CO-

Syndesine

Fig. 12 Formation of syndesine cross-Iink

post-histidine peak l31や pre-hydroxylysine peak l41の存在を報告している.また彼等は l4¥

ラベルしたニワトリのヒナの皮膚酸可溶性コラーゲンを invitroで線維形成させた際,経時的

に分子・内のアルドール翁百合ヰ勿が減少し, リジノノルロイシン・オキシリジノノルロイシンあ、よ

び、post-histidine peakが相対的に噌力11して行くことを見出した.いいかえると,分子内結合

が線維形成の進行とともに消失して,別の分 f-間結合に平!jJIJされていった,と解釈することが

で、きる.

なお金属やーs-s-結合の関与は否定されている.

8 リジルオキシダーゼ

すでにのべてきたように,コラーゲンの成熟にとってアリシン生成が第一段階ともいえるが,

この反応機構については解明されていない点が多い.BAPNがこの反応を阻害し,銅イオンが

必須の因子であるところから,モノアミンオキシダーゼの関与が予測されてきた.ところが,

いわゆるミトコンドリアに豊富に存在するモノアミンオキシダーゼは,ペプチド中のリジン残

基には全く活性を示さないため,アリシン生成には別のアミンオキシダーゼ様酵素の存在が示

唆されてきた.

1968年にPinnellら旧は,ニワトリ怪からペプチド中のリジンを酸化的に脱アミノする特殊

な酵素を見出し,リジルオキシ夕、、ーゼと名づけた.木酵素活性は,銅欠乏およびBAPN添加で

著明な阻害をうけることが明らかにされている.さらに部分的に精製した本酵素襟品と, BA

PN で処理して得られたアルデヒドの少ない基質を適当な条件で、インキユパートすると ,a成

分中のアリシンが増加し,さらにインキュベートをつづけると,そのまま不溶化するという興

味ある事実も見出された l6) 要するに,酵素的にアリシンが出来れば,それ以後の分子内結

合は勿論,分子間結合も非酵素的に生成される可能性を示すものである.

以上の諸性質および生体内の分布から invivo のアリシン形成にリジルオキシダーゼ、が関

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58

与していることは確実と思われる.実際には a鎖中に含まれる約30個のリジン残基のうち,

酸化をうけるのはアミノ末端に近い部位に存在するリジンのみであるが,これはその部位が非

らせん状で酵素が近づきやすいためであろう.

なおリジルオキシダーゼ以外にも,アリシン生成に関与すると思われる酵素の存在は種々検

討されてかり,血中などに見出されているいわゆるべンジルアミンオキシダーゼの関与する可

能性も論じられている 171

まとめ

生体の各組織におけるコラーゲンの存在状態はそれぞれことなっているが,リボゾーム上で

合成されたもともとのコラーゲン鎖は当然同」と考えられる.したがって組織にみられる成熟

コラーゲンの相違は,合成後にうけるコラーゲン鎖の修飾の質と量の差によるといえよう.プ

ロリン・リジンの水酸化についで糖質の付加がおこり,最後にリジンの酸化的脱アミノが行な

われて架橋結合を生じ,弾力性に富んだ安定な不溶性線維ができあがる.オキシリジンあ、ょが、

そのアルデヒドが関与している架橋結合は骨を始めとする硬組織に見出されているが,軟組織

では確認されていない.一般の組織では,オキシリジンの水酸基にガラクトースーグルコース

の二糖体がグリコシド結合しており,オキシリジンが架橋結合に関与するのをむしろ阻害して

いると考えられている.

線維芽細胞で合成され,分泌されたトロポコラーゲン分子が相集まって規則性をもった線維

形成を行なうのは,分子の長軸にそって存在するアミノ酸側鎖の電気的相互作用によるところ

が大と思われる.コラーゲン分子のアミノ酸組成からみて,極性と非極性部分が交互にならん

でいることが判るが,この分子が平行にならんだ時には,となりあった極性部分で正負の電荷

による静電的な相互作!はが生じるであろうし,また非極性部分では疎水結合をつくる可能性も

考えられる.

し、ずれにしても分子同志が会合して線維をつくる場合は,まず数個所で弱い結合が互いにひ

きつけあうことから始まると思える.この状態下で,となり合った分子上に存在するリジンあ

あるいはアリシンが自然に反応しやすい環境におかれることになり,つづいて分子内分子聞に

共有結合が生じ,線維構造の成熟安定化が進行する.

本文中でのべたように,分子内結合としてはアルドール結合が,分子間結合としては不安定

なものとしてアルジミン結合,安定なものとしてアルドール結合の二種が,現在のところ構造

的に知られている.生理的加齢により溶解性の減じたコラーゲンでは,架橋結合が増加すると

同時に,還元性の不安定結合(アルジミン)が減少しているのが認められている山. つまりア

ルジミン結合がfllJ等かの機構で、もはや還元されない形に変化していると思える.いいかえると,

IJII齢によりシッフ塩基が飽和化され安定化してくると考えられる (Fig. 13).

コラーゲンの本質的な機能はその弾力性と強靭性にあるわけであり,それをささえるものと

して安定性のある架檎結合が存在する.したがって生化学的には,如何にしてこのような架橋

が形成されるかを明らかにすることが重要な課題である.ここに概説したように,架橋結合の

係式に関してはかなり明らかにされたが,その生成反応機構上もっとも重要な酸化的脱アミノ

反応についての研究は不充分な面が多いし,さらに生じたアルデヒドが直接結合に使われる反

応に関しでも,生体内でどのように進行するかは全く想像の域を出ていない.またコラーゲン

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H

R-N=C-R

Stabilized in vivo /

by addition to double /

bond ? /

¥Stabilized 計

by reduction with NaBH.'

H

R-N-C-R I I x x

H

R-N-C-R

I I H H

Fig. 13 Scheme of stabilizaton of Schiff base intermediate

-59-

線維の大きさやその組織における配列方向・分布などを調節するものは何かも,興味ある大き

な問題である.この点、に関しては,結合織のもう一つの主要成分であるムコ多糖が何等かの役

割をもっていると考えられるが,納得の出来る知見は今日迄得られていない.

結合織を研究する上て¥線維(コラーゲン)と基質(ムコ多糖)の相互作用を検討しく行く

ことがこれからのもっとも重要な課題であろう.

文 献

1) Levene, C. 1., and Gross, J.: J. Exptl. Med., 110, 771 (1959)

2) Nagai, Y., Gross, J.,and Piez, K. A Anη • N. Y. Acad. Sci., 121, 494 (1964)

3) Piez, K. A., Eigner, E. A., and Lewis, M. S. : Bioche冊目try,2, 58 (1963)

4) Martin, G. R., Piez, K. A., and Lewis, M. S. : Biochim. Biophys. Acta, 69, 472 (1963)

5) Salazar, M. E., Paz, M. A., Salomone, J., and Cadavid, N. F. G. : Proc. Soc. Exp. Bi-

01. Med., 131, 970 (1969)

6) Chou, W. S., Savage, J. E., and 0' Dell, B. L. : J. Biol. Chem., 244, 5785( 1969)

7) Levene, C. 1. : J. E却 tl. Med., 116, 119 (1962)

8) Gross,J., and Kirk, D. :J. Biol. Chem., 233,355 (1958)

9) Bornstein, P., and Piez, K. A. : Biochemistγy, 5, 3460 (1966)

10) Paz, M. A., Blumenfeld, O. O. Roikind. M., Henson, E., Furfine. C., and Gallop, P. M.

:Aγch. Biochem. Biophys., 109, 548 (1965)

11) Bailey, A. J., and Peach, C. M. : Bioche刑 . Biophys. Res. Com冊 uns.,33, 812 (1968)

12) Bailey, A. J., Fowler, L. J., and Peach, C. M. : ibid, 35, 663 (1969)

13) Kang, A. H., Faris, B., and Franzblau, C. : ibid, 39, 175 (1970)

14) Franzbl剖 1,C., Kang, A. H., and Faris. B. : ibid, 40, 437 (1970)

15) Pinnell, S. R., and Martin, G. R. : Proc. Natl. Acad. Sci., 61, 708 (1968)

16) Siegel, R. C., and Martin, G. R. : J. Biol. Chem., 245, 1653 (1970)

17) Rucker, R. B., and O'Dell, B. L. : Biochim. Biophys. Acta, 235, 32 (1971)

18) Bailey, A. J. : Gerontologia, 15, 65 (1969)

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阿南功一氏

(1) 出来上ったトロポコラーゲンが束;!大にな

った (Achillestendon のごとく)f愛に, mat-

uration-agingで分子間結合がさらに増えて行

くのでしょうかつ もしそうであるとすれば,

線維束の隙間にアミン・オキシダーゼが入って

行くほど余中谷はないように思います.

もしーCHO が露出したまま集合して行くと

すれば, -CHOはそう長期に安定ではないと

思われますが.

(2) 細胞で糖成分がついて出て来ることの意

味としてー全くのスペキュレーションですがー,

fibrinogen がfibrinpolymerになる日寺のcross

linkageのごとく糖が切り放されながら Schiff

baseを生ずる方式が collagen のよ坊合にもある

かもしれないと考えますが,こういうことを調

べた文献はあるのでしょうか?

松村勇一氏

(1) Agingにより分子間架橋結合が増加し,

しかも不安定型の結合が減少して行くことは知

られていますが,これらの結合すべてにアルデ

ヒド基が関与するものかどうかは判っていませ

ん.線維が出来上った状態で脱アミノを受ける

可能性はないと思います.しかし,未変性コラ

ーゲンに対するカルボニル試薬や NaBH4の反

応性から,遊離のアルデヒドが存在することは

確実と考えられます.

(2) Hy-lysiこ糖質が結合することによって架

橋形成が調節されていることは石窟かなようです

が, fibrin形成のような機構はコラーゲンにつ

いては知られておりません.

文 献

1) Butler, W. T., and Cunningham, L. W.

: J. Biol. Chem., 241, 3882 (1966)

2) Spiro, R. G. : in Chemistry and Mol-

ecular Biology of the Inteγcellular

Matrix (ed. E. A. Balazs), Vol. 1,

Academic Press, London &NewYork

(1970), p. 195

言義

近藤勝彦氏

(1) コラーゲンの架橋結合が出来上ると,コ

ラーゲン分解酵素の作用を阻害する方向に働か

ないかどうてもしょうか?

(2) グルコース・アミノグリカンはコラーゲ?

ン線維束中に存在すると考えられますが,この

グルコース・アミノグリカンの存在によって架

橋形成はどのような影響をうけると考えられま

すかっ

松 村 勇 一 氏

(1) コラーゲンの架橋形成が進むにつれて色

々な物理化学的な因子に対する抵抗性が増加し

ますが,酵素に対しでもその作用を受けにくく

なるようです.ただし,そのような成熟コラー

ゲンでも, turn overすることが知られていま

すので, ln VlVO における分解には,全く解明

されていないある種の酵素系が関与しているの

ではないかと思われます.

(2) すべてのコラーゲンに. Glu -Gal-Hy-

Lysという単位が見出されますが,その含量に

はかなりの差があるようです.腎の基底膜に存

在する特殊なコラーゲンは非常に高濃度の糖質

を上記の形で含んでいますが,形態的に線維を

形成せず,むしろ不規則な形状をとっています.

1追って,事唐E空カfイ寸加することによって.Hy-Lys

が架橋形成に関与するのを阻害されていると考

えられています.

大久保達也氏

Topocollagen 7うずcell memdraneをj亘る H寺lこ

はlysine(二糖がついて出ますが, これはまった

くcrosslinkageに関係しないのでしょうか?

松 村 勇 一 氏

Hy-Lysに車唐質がイ寸加することにより, その

εーアミノ基はもはやアルデヒドとは反応、し得な

くなるのではないかと考えられます.つまり,

糖による Hy-Lysの修飾が間接的にコラーゲン

の架橋結合形成を調節している,ということに

なります.

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Formation and Maturation of Collagen Fiber

Yuichi Matsumura

(Department of Biochemistry, Wakayama Medical Unive.rsity)

-61-

It is generally accepted that the high tensile strength of collagen fiber is de-

pendent on the existence of coval巴nt crosslinks betw巴ena-chains or tropocollag巴n

molecules stabilizing the fibers. The need for these crosslinks has been d巴monst-

rated very clearly in experimental lathyrism which is produced by injection ofβ-

aminopropionitrile (BAPN) into animals.

The changes observed in lathyritic collagen are as follows

1) 1ncrease of soluble collagens (both in neutral salt and dilute acid sol-

ution).

2 ) Decrease ofβcomponents and increase of a-components in soluble

fractions.

3 ) Decrease of ald巴hydein all fractions examined.

4) Disappearance of unsaturated aldehyde from β-componen t.

5) Slowing down of fibril formation rate in in vItγO.

From these observations, it is strongly suggested that aldehyde is involved in

both interchain and intermolecular crosslinking systems and that BAPN inhibits th巴

formation of aldehyde.

After partial digestion of soluble collagen by cyanogen bromide, it was indica-

ted that intramolecular (interchain) crosslink was present in the N-terminal telo-

P巴ptide region of tropocollagen molecules and that the crosslink consisted of two Iys-

ine aldehydes (allysine), I. e. a-amino adipic o-semialdehyde, by aldol condensa-

tion. Since aldehyde function contained in the aldol condensation product may

react further to give intermolecular crosslink, the intramolecular crosslink may be

an intermediate in the cours巴 of fiber formation.

The study of these intermolecular crosslinks is more difficult since their pre-

sence is limited in insoluble collagen. Among various chemical reagents which

induce the changes in the stability of collagen fibers, the most significant compound

is sodium borohydride. R巴ductionof the fibers with this reagent stabilized the

labile intermolecular crosslinks already present. 1t is considered that unsat-

urated and labile regions involved in the crosslinks may be saturated and stabilized

by this reduction. To isolate the crosslinks from other amino acids, reduction

was carried out with tritiated sodium borohydride prior to hydrolysis, a..d the amino

acid mixture obtained was separated by amino acid analyzer. '. Compounds involv巴d

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-62-

in crosslinks should then be detectable from the tritium activity.

From the studies to date, it is clear that the collagen fibers contain both labile

and stabile intermolecular crosslinks. The labile crosslinJωar巴 aJdiminebonds

formed ihrough the condensation of the carbonyl function of allysine with the ε-

NH 2 group of hydroxylysine, while the stable crosslinks appear. to be aldols derived

from the δ-semialdehydes of lysine and hydroxylysine. These aldehydes are formed

by specific enzyme system such as lysyl oxidase, the activity of which is inhibited

remarkably by BAPN.

The formation of collagen fiber probably originates from aggregation of tropo-

collagen by charge interaction of the amino acid side chains along t,he length of the

molecule. In this manner, the reactive group of a tropocollagen molecule can take

correct position against that of the adjoining molecule and permit the spontaneous

reaction for crosslinking. With increase in ag巴, decrease of the solubility and

increase in the extent of crosslinking are observed in collagen fibers. Simulta-

neously, there is decrease in the labile crosslinks, suggesting that further stabi-

lization of these crosslinks may occur to produce saturated crosslinks.

The nature and biosynthesis of the stabilizing crosslinks has not been elucida-

ted. Although many factors probably concern this process, it might be the most

important aspect of the biochemistry of collagen to establish the role of the muco-

polysaccharide in the formation and maturation of collagen fiber.