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働き方改革プラン(宿泊業) 平成30年3月 北海道

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働き方改革プラン(宿泊業)

平成30年3月

北海道

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働き方改革プラン(宿泊業)

目 次

Ⅰ.はじめに .................................................................. 1

Ⅱ.北海道の宿泊業の現状と課題について ......................................... 2

1.宿泊業を取り巻く環境について ............................................. 2

2.北海道の宿泊業の現状について ............................................. 2

⑴ 労働力 ................................................................ 2

⑵ 労働時間 .............................................................. 4

⑶ 働き続ける意欲と収入 ................................................... 5

⑷ 収益構造の改善と労働時間との関係 ....................................... 8

3.北海道の宿泊業の課題について ............................................ 10

Ⅲ.課題解決に向けての方向性 .................................................. 11

Ⅳ.働き方改革プランの作成 .................................................... 12

Ⅴ.宿泊業における働き方の特徴 ................................................ 13

1.過酷な勤務形態 ......................................................... 13

2.働き方のローテーション勤務が行われない .................................. 13

3.マンパワーに依存する運営形態 ............................................ 13

Ⅵ.働き方改革プラン.......................................................... 14

1.標準的な進め方 ......................................................... 14

⑴ 現状分析と課題の把握 .................................................. 14

⑵ 長時間労働の解消 ...................................................... 14

⑶ 休暇の取得 ........................................................... 15

⑷ 仕事に対する意識付けの強化 ............................................ 15

⑸ 経営の安定 ........................................................... 15

2.モデル企業における改善策の実践 .......................................... 16

⑴ A社の事例 ............................................................ 16

⑵ B社の事例 ............................................................ 18

Ⅶ.働き方改革プラン(具体的な取組方法・実施方法) ............................ 19

1.現状分析と課題の把握.................................................... 19

2.長時間労働の解消........................................................ 24

3.休暇の取得 ............................................................. 31

4.仕事に対する意識付けの強化 .............................................. 35

5.経営の安定 ............................................................. 41

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1

Ⅰ.はじめに

本道は、全国を上回るペースで人口減少や少子高齢化が進行し、人手不足の一層の深刻化

による地域産業の停滞が懸念されるとともに、すべての人がいきいきと働くために、働き方

改革によるワーク・ライフ・バランスの実現が求められています。

道では、昨年度取りまとめた「宿泊業における従業員の働き方改革に向けて」に基づき、

今年度、モデルとなる企業に改善策を実践していただき、企業が働き方改革を進めるための

「働き方改革プラン(宿泊業)」を作成しました。

北海道の観光入込客は、平成 25 年度以降は景気の回復に伴い、国内外の観光需要が堅調

に推移したことなどから、平成 28 年度は 5,466 万人となり、現在も増加基調にあります。

これに伴い、宿泊者数についてもインバウンドの旺盛な宿泊需要もあり、好調に推移してい

ます。しかしながら、その一方で、宿泊業には、それを支える人材の確保や育成、定着化を

はじめとした様々な課題があります。

この冊子は、そうした課題を抱える宿泊業の経営者の皆様に、働き方改革を通じて解決す

るヒントを提供したいという考えから作成しました。この冊子には、工夫を凝らして顧客の

評価を下げることなく、効率的な働き方を実現している事例を元に具体的な取組みを記載

しています。

働き方改革は、これらの宿泊業の人材確保、定着化と効率的な業務運営に基づく経営の安

定化に寄与するものであり、従業員の皆様にとっても経営者の皆様にとっても非常に重要

な取組みです。

北海道にとって観光業は主要産業であり、それを支えるのは宿泊業です。宿泊業を取り巻

く環境が厳しいことは確かですが、働き方改革を通じて、従業員が満足感をもっていきいき

して働き、安定ある経営を目指していただきたいと思います。

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Ⅱ.北海道の宿泊業の現状と課題について

1.宿泊業を取り巻く環境について

宿泊業を取り巻く環境は非常に大きく変化しています。格安な料金設定による他業種か

らの参入もあり、料金設定が難しくなっています。また、インターネット予約が一般化し、

旅行スタイルも非常に多様化しています。このため、従来の宿泊サービスに加え、日帰りサ

ービスの拡充などサービスの多様化が求められています。

ここ数年、富士山をはじめとする国内の多くの景勝地や歴史的建造物などが世界遺産に

登録されるなど、日本の魅力がクローズアップされており、訪日外国人旅行者は、今後、

2020 年の東京オリンピックも控え、さらに増加していくことが予想されます。

2.北海道の宿泊業の現状について

北海道は、全国に比べ、年間総労働時間が長い、年次有給休暇の取得率が低い、非正規労

働者の雇用割合が高いなど、厳しい雇用環境にありますが、特に宿泊業においては、非正規

労働者の占める割合が高いなど、不安定な雇用形態などを背景として、人手不足が深刻化し

ている状況にあります。

以下では、北海道が平成 28 年度に実施した宿泊業の事業主及び従業員を対象としたアン

ケート調査の結果を元に、北海道の宿泊業の働き方に関する現状を整理しました。

⑴ 労働力

① 従業員の過不足について

「正規労働者が不足」と答えた施設は全体の約 3 割、また、「非正規労働者が不足」

と回答した施設は約 4 割となっており、多くの施設で人手不足の状態にあるといえ

ます。

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【従業員の過不足の状況】

資料:北海道「宿泊業における従業員の働き方改革に向けて」(平成 28 年度)

② 離職率について

過去 3 年間の「正規労働者」の離職率をみると、採用 1 年目は 26.8%、2 年目は

45.9%、3 年目は 63.0%となっています。

また、「非正規労働者」の離職率は、1 年目は 31.9%、2 年目は 50.1%、3 年目は

65.4%となっています。

「正規労働者」「非正規労働者」のいずれも、離職率が高い状況であるといえます。

【採用から 3 年以内の離職率(平成 25年度採用)】

資料:北海道「宿泊業における従業員の働き方改革に向けて」(平成 28 年度)

26.8%

45.9%

63.0%

31.9%

50.1%

65.4%

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

1年目 2年目 3年目

正規労働者

非正規労働者

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⑵ 労働時間

① 宿泊業の年間労働時間について

宿泊業の年間労働時間は、2,162 時間となっています。

【年間の平均所定労働時間】

資料:北海道「宿泊業における従業員の働き方改革に向けて」(平成 28 年度)

② 労働時間と手待ち時間について

調査の結果を分析すると、「手待ち時間(勤務時間中に仕事がなく、仕事を待って

いる時間)」が発生しやすい施設は、労働時間が相対的に長いことがうかがえます。

【所定内労働時間(年間)】 【所定外労働時間(年間)】

(注)「該当あり」「該当なし」は「手待ち時間が発生しやすい」の問いに対する回答。

資料:北海道「処遇等改善事例及び処遇改善等促進方策等報告書」(平成 29 年 2月)

2,2662,159

2,3062,159

1,9562,162

0

1,000

2,000

3,000

シティホテル

ビジネスホテル

リゾートホテル

旅館

簡易宿泊所

全体

(時間)

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また、手待ち時間が発生しやすい施設のうち、これまでに労働時間短縮の取組みを

実施したことのある施設は 36.0%、今後の実施の計画が「ある」または「検討中」と

答えた施設は 56.0%となっています。

【手待ち時間と労働時間短縮の実施の有無(過去 3年)】

【手待ち時間と労働時間短縮の計画の有無(過去 3年)】

(注)「該当あり」「該当なし」は「手待ち時間が発生しやすい」の問いに対する回答。

資料:北海道「処遇等改善事例及び処遇改善等促進方策等報告書」(平成 29 年 2月)

⑶ 働き続ける意欲と収入

① 低いと感じる収入水準について

「正規労働者」のうち、職場に改善してほしいことで「給与が低い」と回答した人

の平均年収は 271 万円となっています。一方、「給与が低い」と回答していない人の

平均年収は 302 万円となっています。また、「非正規労働者」では、「給与が低い」と

回答した人の平均年収は 183 万円に対し、「給与が低い」と回答していない人の平均

年収は 148 万円となっています。

実施した,

36.0%

23.5%

実施していない,

56.0%

60.3%

8.0%

無回答,

16.2%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

該当あり

該当なし

実施した 実施していない 無回答

n=25

n=179

ある, 24.0%

11.2%

検討中, 32.0%

27.9%

ない, 36.0%

44.7%

8.0%

無回答,

16.2%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

該当あり

該当なし

ある 検討中 ない 無回答

n=179

n=25

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【「給与が低い」の回答と年収】

資料:北海道「処遇等改善事例及び処遇改善等促進方策等報告書」(平成 29 年 2月)

② 労働時間と有給休暇について

職場に改善してほしいことで、「所定内労働時間が長い」と回答した人のうち、

有給休暇を「取りにくいので利用していない」と答えた人の割合は、正規労働者が

62.0%、非正規労働者が 63.6%と、いずれも高い割合となっています。

【労働時間と有給取得(正規労働者)】

【労働時間と有給取得(非正規労働者)】

資料:北海道「処遇等改善事例及び処遇改善等促進方策等報告書」(平成 29 年 2月)

(n=50)

(n=232)

(n=282)

8.0%

19.0%

17.0%

4.0%

20.7%

17.7%

62.0%

37.1%

41.5%

20.0%

15.5%

16.3%

6.0%

7.8%

7.4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

「所定内労働時間が長い」に該当

「所定内労働時間が長い」に非該当

全 体

取りやすいので利用している 取りやすいが利用していない

取りにくいので利用していない 取りにくいが利用している

無回答

(n=11)

(n=303)

(n=314)

26.4%

25.5%

9.1%

16.2%

15.9%

63.6%

18.5%

20.1%

18.2%

10.6%

10.8%

9.1%

28.4%

27.7%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

「所定内労働時間が長い」に該当

「所定内労働時間が長い」に非該当

全 体

取りやすいので利用している 取りやすいが利用していない

取りにくいので利用していない 取りにくいが利用している

無回答

正規労働者 非正規労働者

件数 平均(万円) 件数 平均(万円)

「給与が低い」に該当 117 271 122 183

「給与が低い」に非該当 158 302 181 148

合計 275 289 303 162

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③ 残業と有給休暇について

職場に改善してほしいことで「残業などが多い」と回答した人のうち、有給休暇

を「取りにくいので利用していない」と答えた人の割合は、正規労働者が 68.8%、

非正規労働者が 47.1%と、いずれも高くなっています。

【残業と有給取得(正規労働者)】

【残業と有給取得(非正規労働者)】

資料:北海道「処遇等改善事例及び処遇改善等促進方策等報告書」(平成 29 年 2月)

(n=48)

(n=234)

(n=282)

8.3%

18.8%

17.0%

4.2%

20.5%

17.7%

68.8%

35.9%

41.5%

14.6%

16.7%

16.3%

4.2%

8.1%

7.4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

「残業などが多い」に該当

「残業などが多い」に非該当

全 体

取りやすいので利用している 取りやすいが利用していない

取りにくいので利用していない 取りにくいが利用している

無回答

(n=17)

(n=297)

(n=314)

11.8%

26.3%

25.5%

17.6%

15.8%

15.9%

47.1%

18.5%

20.1%

17.6%

10.4%

10.8%

5.9%

29.0%

27.7%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

「残業などが多い」に該当

「残業などが多い」に非該当

全 体

取りやすいので利用している 取りやすいが利用していない

取りにくいので利用していない 取りにくいが利用している

無回答

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④ 給与、労働時間、仕事を続ける意欲について

「正規労働者」のうち、職場に改善してほしいことで「給与が低い」と「所定内

労働時間が長い」と回答した人のうち、「現在の職場で仕事を続けたい」と回答し

た人の割合は 41.9%に留まっています。

【収入、労働時間と仕事を続ける意欲(正規労働者)】

資料:北海道「処遇等改善事例及び処遇改善等促進方策等報告書」(平成 29 年 2月)

⑷ 収益構造の改善と労働時間との関係

客室稼働率が 75%以上と高い施設は、「手待ち時間が発生しやすい」に該当してい

る割合が 8.0%と低くなっています。

一方、客室稼働率が高い施設は、総労働時間が長くなる傾向があります。すなわ

ち、客室稼働率が高い施設においては、手待ち時間解消に向けた取組みは進んでいる

ものの、業務効率の更なる改善や工夫の余地が残されていると思われます。

41.9%

54.5%

52.6%

72.2%

62.1%

12.9%

11.4%

6.4%

22.6%

12.5%

5.3%

4.9%

9.2%

12.9% 9.7%

15.9%

36.8%

15.3%

16.3%

3.4%

5.3%

3.5%

3.2%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

「給与が低い」に該当

「所定内労働時間が長い」に該当

「給与が低い」に該当

「所定内労働時間が長い」に非該当

「給与が低い」に非該当

「所定内労働時間が長い」に該当

「給与が低い」に非該当

「所定内労働時間が長い」に非該当

全 体

現在の職場で仕事を続けたい

現在の職場は辞めて、他の職場で今の仕事を続けたい

現在の職場は辞めて、他の仕事をしたい

仕事を辞めたい

わからない

無回答

(n=31)

(n=88)

(n=19)

(n=144)

(n=282)

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【客室稼働率と手待ち時間】

資料:北海道「処遇等改善事例及び処遇改善等促進方策等報告書」(平成 29 年 2月)

【客室稼働率と労働時間】

資料:北海道「処遇等改善事例及び処遇改善等促進方策等報告書」(平成 29 年 2月)

1,5841,835 1,937 2,080

2,2541,971

56

111217

174

303

191

1,640

1,946

2,1542,254

2,557

2,162

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2

5

%未満

2

5

%以上

5

0

%未満

5

0

%以上

7

5

%未満

7

5

%以上

ほぼ

1

0

0

(時間/年)

平均所定労働時間(時間/年) 平均所定外労働時間(時間/年)

14.0%

8.0%

12.4%

86.0%

92.0%

87.6%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

客室の稼働率

が75%未満

客室の稼働率

が75%以上

全 体

「比較的長めの手待ち時間が発生しやすい」に該当あり

「比較的長めの手待ち時間が発生しやすい」に該当なし

(n=136)

(n=50)

(n=186)

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3.北海道の宿泊業の課題について

以上の特徴を有する北海道の宿泊業の働き方について、現状分析を踏まえて整理すると、

「労働力は不足しており、離職率が高い」、「給与水準の低さ、有給休暇の取りにくさなどが

従業員の働き続ける意欲の低下を招いている」といった点が課題であるといえます。

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Ⅲ.課題解決に向けての方向性

宿泊業においては、「土曜日・日曜日や祝日に休めない」、「労働時間は長くなりがちで

ある」等、業種の特性から、年々、人材確保、特に若者の雇用が難しくなる一方、従業員

の高齢化が進んでいます。

こうした状況において、「働き方改革」の実現に当たっては、従業員の処遇改善を実現

するための基本的な前提として、経営の安定への取組み、「業務改革」が不可欠であり、

「働き方改革」と「業務改革」は車の両輪として、一体的、並行的に取り組む必要があり

ます。

働き方改革を進めるためには「長時間労働の解消」「休暇の取得」「仕事に対する意識付

けの強化」「経営の安定」の 4 つの柱が必要であり、それぞれの柱ごとに実行すべき対応

策を整理しました。

施策の4つの柱

長時間労働の解消

休暇の取得仕事に対する

意識付けの強化経営の安定

• 労働時間の把握• ムダの削減

• 応援態勢の整備(マルチタスク化)

• 業務改革の実施• テクノロジーの導入

• 休暇を確実に取得する

• 将来のキャリアパスを明確にした人事制度の導入

• オープンでフェアな評価方法と報酬制度の導入

• スキルアップのための教育研修制度の導入

• 客室稼働率の向上• 顧客単価の向上

• 人材の安定的な確保

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12

Ⅳ.働き方改革プランの作成

本事業では、昨年度取りまとめた「宿泊業における従業員の働き方改革に向けて」に基づ

き、改善策を実践するためのモデルとなる企業を選定し、中小企業診断士及び社会保険労務

士の指導の下、改善策の実践を進めました。あわせて、文献調査や業界団体へのヒアリング

により事例を収集し、企業が働き方改革を進めるための「働き方改革プラン」を作成しまし

た。

29年度実施 業種別働き方改革プランの策定

28年度実施 就業状況実態把握調査

モデル企業における改善策の実践

先進事例収集

(文献調査)

業種別働き方改革プランの策定

モデル企業の選定4月~5月

6月~12月

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Ⅴ.宿泊業における働き方の特徴

宿泊業の働き方については、次のような特徴があります。

1.過酷な勤務形態

宿泊業での働き方については、「休日が少なく」「長時間勤務」が常態化しています。多

くの宿泊施設では、従業員の勤務方法について「シフト制」を採用しているので、基本的

には土・日などと連休になることは非常に難しい状況にあります。

例えば、レストラン勤務の場合、レストランは朝食から夕食まで営業しているので、日

勤だけでは仕事がまわらないため、日勤シフトに加え、「夜勤シフト」「早朝シフト」とい

ったシフトが組まれます。「夜勤シフト」の場合は夕方に出勤して、夕食営業の準備、閉

店後の片付け、翌朝の朝食の準備など、その日の深夜まで行われます。また、「早朝シフ

ト」は早朝に勤務をスタートし、朝食の準備・片付け、夕食営業の準備など昼過ぎまで働

くといったことです。しかしながら、現実には「夜勤シフト」が終了したあと、仮眠をと

って「早朝シフト」に入る「明け勤務シフト」という勤務状態に移る施設も見られます。

このように、人手不足が慢性化していることもあり、宿泊業における勤務形態は非常に

過酷な状況が見られます。

2.働き方のローテーション勤務が行われない

多くの宿泊業の場合、担当する業務についてローテーションが行わることが少ないこ

とがあげられます。すなわち、接待部門、調理部門、営業部門、フロント部門、本部など

の人事ローテーションが行われないため、どうしても縦割りの組織となっており、運営に

かかる柔軟性に欠ける面が多くの施設で見られます。

3.マンパワーに依存する運営形態

基幹システムの導入による IT 化の促進により、予約管理の効率化やインバウンドに対

するおもてなしを実施している施設も徐々に見られてきましたが、多くの施設の場合、旅

行業者との FAX などの紙ベースの管理など、マンパワーに依存するケースが見られます。

また、施設の老朽化や機材の更新も遅れ気味で、マンパワーを軽減する機械化も遅れて

いる傾向が見られます。

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Ⅵ.働き方改革プラン

1.標準的な進め方

以上の業種的な特徴を踏まえ、モデル企業において改善策を実践した結果から、宿泊業の

働き方改革を進めるために特に重視すべき具体的な事項は、以下の点であると考えられま

す。

①現状分析と課題の把握

②長時間労働の解消

③休暇の取得

④仕事に対する意識付けの強化

⑤経営の安定

⑴ 現状分析と課題の把握

同じ宿泊業であっても、抱えている課題は企業によってさまざまです。

働き方改革を推進するうえで取り組むべき事項は多種多様ですが、自社にとって何が優

先されるべきか、自社の課題解決のために取り組むべき事項が何かは、企業によって異なり

ます。したがって、働き方改革を進める前に、まずは現状がどうなっているのかを確認して

おくことが必要です。

そして、取組の優先順位を明確にするためには、自社の現状を把握しておかなければなり

ません。逆に、自社の現状を曖昧にしたまま働き方改革に取り組むと、間違った方向に進む

ことにもなりかねませんので、注意が必要です。

さらに、現状を把握した後には、成果目標を設定することが働き方改革の実効性を高める

ことにつながります。その際の成果目標は、客観的に評価できるようにできるだけ数値化し

たうえで、具体的な目標達成時期を設定することが必要です。

⑵ 長時間労働の解消

宿泊業は「朝早く、夜遅い」のイメージが強い業界です。しかし、実際に働いている時間

の中身をみると、就業時間の中には「手待ち時間」もあり、総労働時間は長い割に実際の労

働時間はそれほど長くない場合もあります。したがって、長時間労働の解消のためには、ま

ず、総労働時間のうち、本当に必要な時間はどの程度であるのかを正確に把握することが重

要です。

現状の就業の実態を定量的に記録することにより、手待ち時間や、不要な残業時間の実態

が見えてきます。そのデータを分析し、ムダの削減や、効果的なシフトの作成等を行うこと

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により、長時間労働の解消へと繋げていくことが可能となります。

⑶ 休暇の取得

前述のとおり、平成 28 年度調査の結果からは、宿泊業の従業員の多くが「有給休暇が取

りにくい」と感じています。休みにくい、休みが少ないことは、定着率の低下や、就業希望

者の減少に繋がります。逆にいうと、休暇を取得しやすい職場になれば、人材不足を解消で

きる可能性が高いと言えます。

人材の意欲やスキルを向上させ、より質の高いサービスの提供を実現するためにも、休暇

の取得は非常に重要な要素となります。

⑷ 仕事に対する意識付けの強化

従業員が同じ職場で安心して働き続けるためには、「将来のキャリアパス」を明確に示

した人事制度を整備し、従業員が高い意識を持ち続けられるような仕組みを提供すること

が必要です。

さらに、求める人材像、能力・スキルを明確にした人事制度を導入したならば、それを

的確に評価する仕組みと評価に応じた報酬制度を明確にする必要があります。

⑸ 経営の安定

平成 28 年度調査の結果からは、給与が低いことが働き続ける意欲の低下の大きな要因

となっていることがうかがえます。従業員の給与を引き上げ、安定的な雇用を維持するた

めには、経営を安定させて、従業員の処遇改善を図ることが可能となる環境を整えていく

ことが必要です。

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2.モデル企業における改善策の実践

働き方改革プラン策定にあたっては、モデル企業の対象となった 2 社(A 社・B 社)にお

いて、以下のような手順で検討を進めました。

⑴ A 社の事例

・定着率が低く、人手不足の状態が続いている。

・部門間のマルチタスク化が十分ではない。

・人事評価についてのフィードバックが十分ではない。

・社内の職員で構成する部署横断型のプロジェクトチームを編成。

・メンバーは職員に対する公募と会社の推薦により選定し、主要部

署(営業、フロント、予約、車両、料飲、経理)から参加。

・風土改革(意識革命)。

・評価制度の見直し。

・業務改革への取組み。

・上記の取組みを通じて、労働時間の短縮、休暇の取得などの働き

方改革につなげていく。

STEP1 現状分析と課題の把握

STEP2

進むべき方向性の確認 STEP3

部署横断型プロジェクトチームの編成

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・ワークショップ形式での課題検討

メンバーは 3 つのグループに分かれ、それぞれのテーマについ

て調査、分析し、ワークショップ形式で打ち合わせを実施。打ち

合わせの結果、3 つのカテゴリで成果目標を設定し、具体的な解

決策を検討・実施。

成果目標のカテゴリ 具体的なテーマ

風土改革 ・承認活動の実践

・離職率 5%以上改善、若手社員の離職者数ゼロ

人事評価の見直し ・新たな人事評価シートの作成

・年に複数回のフィードバックの実現

業績改善及び制度改革

・新たな就業制度の提案

・マルチタスクによる業務効率改善の検討・提案

・新たな人材の確保

(実施成果)

成果目標のカテゴリ 具体的なテーマ

風土改革

・承認活動の実践

→プロフィールカードの設置、サンクスカードの設置

・離職率 5%以上改善、若手社員の離職者数ゼロ

→実績は次年度に測定

人事評価の見直し

・新たな人事評価シートの作成

→評価シートは次年度改正予定

・年に複数回のフィードバックの実現

→上司との面談を複数回実施

業績改善及び制度改革

・新たな就業制度の提案

→次年度以降実施

・マルチタスクによる業務効率改善の検討・提案

→業務改革を行うための基礎調査を実施

・新たな人材の確保

→今後、適宜採用を検討

対 応

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⑵ B 社の事例

・定着率が低く、人手不足の状態が続いている。

・人手不足の慢性化により、体力的に厳しい勤務状態が常態化。

・現状と諸規程に不一致があり、従業員は将来に不安を抱えてい

る。

・社内の職員で構成する部署横断型のプロジェクトチームを編成。

・メンバーは、社長の推薦等により、主要部署(フロント、厨房、

施設)から参加。

・仕事に矜持が持てる職場にするための意識改革。

・異なる部署間の連携強化と従業員のマルチタスク化。

・従業員が安心して働ける就業規則や雇用契約の整備。

・改善事項の提案と実践

メンバーから具体的な改善事項(10 項目)を提案。コストをか

けずに容易に実施できる事項から順次実践し、効果を検証。

(改善提案の例)

・宿直シフトの改善

・権限移譲

・ビジネス用 LINE(chatluck)の試験的導入

・ジョブローテーションの実施

・フェイスブックページの開設

・券売機の設置

STEP1 現状分析と課題の把握

STEP2

進むべき方向性の確認 STEP3

部署横断型プロジェクトチームの編成

対 応

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Ⅶ.働き方改革プラン(具体的な取組方法・実施方法)

具体的に取組む場合には、自社の現状や問題意識、経営課題、優先順位をしっかり把握し

たうえで、自社にあった対応策を選定してください。

1.現状分析と課題の把握

・自社の従業員の満足度を把握し、働き方改革の方向性や

取り組むべき事項、優先順位等を判断。

・従業員アンケートの実施

全従業員を対象に、「会社」「仕事」「職場」「待遇」な

どの切り口から匿名のアンケート調査を実施。

・従業員に対する面談調査の実施

各部門から 1 名以上の従業員を選び、対面方式で、現

在の仕事の進め方や仕事上の課題、仕事に対する満足

度、会社に改善してほしい事項等を聞き取り。

・課題の明確化と、働き方改革として取り組むべき優先事

項の決定。

・アンケート調査では、従業員の本音を引き出すため、回

答者の匿名性を担保しておくこと。

・面談を行う場合は、社外のコンサルタント等第三者の協

力等により、面談に応じる従業員の匿名性を担保するこ

と。

・面談調査は、形式的なものにならないよう、事前に「当

社が働き方改革に取り組む」ことを社長の言葉で従業員

に伝え、経営陣と従業員とが共通の認識を持ったうえで

目的

見込まれる効果

現状分析と課題の把握

アンケート調査や意識調査の実施

ポイント

容易 普通

難やや

方法

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実施すること。

・現状と課題を把握した後は、働き方改革として優先的に

取り組むべき事項の検討に繋げること。

【面談調査の質問例】

◯従業員向け

・業務の現状(出勤時間、退勤時間、シフト体制、勤務体制)

・業務の中で改善・工夫したほうがよいと思う点

・給与についてどう思うか

・休暇は取れているか、休みにくさを感じることはないか

・会社の制度としてあったようがよいと思うものは何か

・部門内の他の従業員や、他部門の従業員との情報共有の状況

・今後も現在の状態が続いたら将来的には会社はどうなると思うか

◯支配人向け

・経営上の課題

・人員不足や離職の現状、離職理由

・不足している人材、募集に対する応募の状況

・人員不足により発生している影響とその対応

・人事評価の仕組み

・就業規則等の整備状況

・従業員のマルチタスク化の状況

・従業員とのコミュニケーションの機会

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・複数の従業員が参加する会議をリードできる能力を各従

業員が身につけることにより、従業員自らが働き方改革

に主体的に取り組める体制を整備。

・部署横断型の改革チームの編成と技法の習得

異なる部署の従業員が参加する働き方改革推進チーム

を社内に設置し、社外のコンサルタントの指導の下、特

定のテーマに基づきチームメンバーが意見を出し合って

会議を活性化する方法を実際の会議の場で習得。

・従業員による主体的な取り組みを通じた働き方改革の推

進のスピードの加速化。

・推進チームの会議は定期的に(例えば 2 週間に 1 度のペ

ースなどで)開催し、会議の参加者は上司・部下の関係

なく個人として参加・発言すること。

・会議での発言にによって社内の立場や勤務査定の点で不

利になることがないように留意すること。

・会議では、①批判しない、②質より量、③自由奔放、④

アイデア結合推奨を基本ルールとすること。

・会議参加者のうち 1 名をファシリテーターとして、ファ

シリテーターが発言量のコントロール及び議論の活性を

促すこと。

・ファシリテーション技法を習得しながら従業員が意見を

出し合った結果、日常業務の中では気づいていなかった

課題が表面化し、課題の解決に着手。

目的

見込まれる効果

現状分析と課題の把握

ファシリテーション技法の習得

ポイント

容易 普通

難やや

方法

事例

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・働き方改革の進捗を検証できるようにするため、数値で

示した成果目標と目標達成時期を設定。

・生産性の目標値と達成時期の設定

様々な生産性指標のうち、自社にとって重要と思われ

る指標を検討、選択したうえで、過去のデータに基づい

て目標値と達成時期(3~5 年後程度)を設定。

・個別の実施事項に対する成果目標の設定

生産性目標を達成するために必要な実施事項を抽出

し、各事項を実施した後に達成すべき目標と達成時期

(1~3 年後程度)を設定。

・生産性の向上、従業員の処遇改善。

・生産性指標の定義には様々なものがあることから、自社

が目指す姿に合致するものを選択すること。

【生産性指標の例】

・ 1 人あたり売上高=(売上高/従業員数)

・ 1 人あたり利益=(当期利益/従業員数)

・ 総労働時間あたり利益=(当期利益/総労働時間)

・ 総人件費あたり利益=(当期利益/総人件費)

現状分析と課題の把握

目標とする指標の設定

容易 普通

難やや

目的

見込まれる効果

ポイント

方法

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【働き方改革における実施事項と成果目標設定の例】

実施時期 実施事項(例) 成果目標

1~2 年目 アンケート調査や意識調査の実施

ファシリテーション技法の習得

ムダの削減 残業◯%削減

有給休暇取得を前提としたシフト編成 有給休暇取得率◯%上昇

平均有給休暇取得日数◯日増

従業員間のコミュニケーションの強化

スキルアップのための教育研修制度の導入

定着率◯%増

2~3 年目 従業員のマルチタスク化

変形労働時間制の導入

業務の標準化・マニュアル化

テクノロジーの導入

残業◯%削減

有給休暇取得率◯%上昇

平均有給休暇取得日数◯日増

有給休暇取得者数◯%増

各種休暇制度の導入 有給休暇取得率◯%上昇

平均有給休暇取得日数◯日増

有給休暇取得者数◯%増

病気休暇制度の導入 退職者数◯名減

休館日の設定 有給休暇取得率◯%上昇

平均有給休暇取得日数◯日増

全員が年間 1 日以上有給休暇取得

キャリアパスを明確にした人事制度の導入

評価の見える化

定着率◯%増

客室稼働率の引き上げ・維持

客単価の引き上げ

生産性◯%上昇

売上◯%増、利益◯%増

人材の安定的な確保 新規人材獲得◯名

3 年目以降 生産性の上昇 生産性◯%上昇

1 人あたり売上高◯円

1 人あたり利益◯円

総労働時間あたり利益◯円

総人件費あたり利益◯円

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2.長時間労働の解消

・各従業員の実労働時間及び休憩時間の正確な把握。

・作業ごとに要する時間の正確な把握。

・各従業員が作業に要した時間の記録

全従業員が業務ごとの従事時間を表(Excel 等で作

成)に、作業を終えるごとに記録。

・ICカードによる時間管理

各従業員の出退勤時刻を IC カードで自動的に記録す

るシステムを導入し、IC カードを全従業員に配布。

・長時間労働の解消、労働時間の短縮。

・作業時間を正確に把握するためには従業員の理解と協力

が不可欠であることから、全従業員に対し、作業時間の

記録がなぜ必要なのか、記録を行うことによってどのよ

うな成果が得られるか等を、しっかりと説明すること。

・IC カード導入には一定の初期費用が必要となることか

ら、売上規模や従業員規模を考慮したうえで、導入の費

用対効果に留意すること。

・従業員ごとの繁閑の差を把握後、それまで一律であった

各従業員の出退勤時刻を調整することにより、勤務時間

の長い従業員の労働時間を短縮。

・データを活用して、出社時刻、退社時刻、休憩時間を明

確にしたシフト表を作成し、効率的な働き方を実現。

・データに基づき残業が多い部署や従業員に対しヒアリン

グを行い、長時間労働の背景や原因を把握。

目的

ポイント

容易 普通

難やや

長時間労働の解消

労働時間の見える化

方法

見込まれる効果

事例

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【作業時間の記録表の例】(フロント業務)

時刻 業務内容

所要

時間

(分)

業務の詳細 人数 改善の可能性・

改善方法

開館前 玄関の施錠の解除

館内の電気をつける

売店の復旧

新聞の交換

・・・・・・・・

開館後 日帰り受付

宿泊客精算

客室清掃&セット

・・・・・・・・

閉館後 ボイラー電源切り

玄関の施錠

メールチェック

・・・・・・・・

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・既存の業務の内容を検証し、ムダな業務を削減すること

により、労働時間を削減。

・ムダな作業の洗い出し

作業時間の記録表(p.25)を元に、従業員が日々の業

務の中で過剰と考える業務やサービスについて検討。

・ムダな作業の削減・見直し

作業を洗い出した結果、過剰と思われるものは削減。

また、必要な業務についても、従業員が意見を出し合っ

て効率化の方法を模索し、導入コストのかからないもの

から随時試行。

・手待ち時間の削減など、労働時間の短縮。

・現場の意見・声を大切に「できることは何か」をスタッ

フ自らで考えてもらい、成功事例を積み重ねながら取り

組みを進めること。

・現場からの声や、アンケートで得たお客様の声に基づいて、

サービスの改善に繋げること。

・レストランに食器の返却棚を設置し、食器の回収をセルフ

サービス化。当初は返却棚に食器が溜まるためその整理

に手間を要し効率化されない等の問題が発生したが、返

却棚の設置場所や厨房との間の動線の整理等の試行錯誤

を繰り返した結果、スムーズに流れる仕組みが構築され、

レストラン部門の業務の一部が軽減。

容易 普通

難やや

目的

方法

ポイント

長時間労働の解消

ムダの削減

見込まれる効果

事例

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・ある部署が忙しい時間帯は、比較的手の空いている部署

の人材がヘルプに回れるような応援態勢を構築すること

により、全員の業務を平準化。

・マルチタスク型人材の育成

シーズンオフを利用して、部門の枠を超えた座学での

研修や、OJT による実務研修を実施し、全従業員が他の

部門の仕事を理解。

・マルチタスク型のシフトへの切り替え

縦割りで働いていた全職種(営業、予約、フロント、

販売(売店)、接客・レストラン、調理、施設、用度仕

入、経理)が参加するマルチタスク型のシフトを作成。

・全従業員が業務全般を理解し、臨機応変にサポートし合

うことにより、手待ち時間が解消し、労働時間が短縮。

・マルチタスク化に適さないと思われる従業員に対して

は、会社が求める水準に対してどこが不足しているか

等、具体的に指導・助言を行い、従業員のモチベーショ

ン維持に配慮すること。

容易 普通

難やや

目的

見込まれる効果

ポイント

長時間労働の解消

従業員のマルチタスク化

方法

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・1 ヶ月単位の変形労働制時間制を採用することにより、

宿直シフト等に伴う所定外労働時間を削減。

・1 ヶ月単位の変形労働時間制の導入

1 ヶ月以内の期間を平均して 1 週間当たりの労働時間

が 40 時間以内となるように労働日や労働日ごとの労働

時間を設定し、それに応じた勤務シフトを編成。

・所定外労働時間の削減。

・変形労働時間制の導入に当っては、就業規則の変更、ま

たは、労使協定の締結が必要となるので、社会保険労務

士に相談する等、導入や運用の方法に留意すること。

・タイムカードに記録された各従業員の勤務時間を集計し

たところ、一部の従業員について極端な長時間労働がみ

られたため、社会保険労務士の指導の下、就業形態を 1

ヶ月単位の変形労働時間制に変更。

容易 普通

難やや

目的

見込まれる効果

ポイント

長時間労働の解消

変形労働時間制の導入

方法

事例

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・作業方法の改善、標準化、マニュアル化等を通じてこれ

までの業務方法を見直し、業務を効率化。

・業務の標準化とマニュアルの作成

各部署の担当業務について、できるだけ細分化・項目

化したうえで標準化し、マニュアルを作成。

・労働時間の短縮。

・スタッフの業務内容を理解したうえで、何がネックでど

うすれば改善できるかを現場とともに考えながら進めて

いくこと。

・マニュアルの導入後は、定期的に運用状況をチェック

し、適正に機能しているかどうかを検証すること。

・フロント業務のルールを明確化し、手順書を作成。引継

時間を短縮したことに加え、フロントスタッフの交代時

の引継漏れや解釈違いの防止、新規就業者が業務内容を

覚えるための時間の短縮を実現。

・布団敷きの作業を標準化し、マニュアルを作成。それま

では担当者ごとにやり方が異なり曖昧であった作業内容

を見直すとともに、従来の 1 名での作業を 2 名 1 組での

作業に変えることで、作業のスピードアップを実現。

・仲居係の仕事内容について、イラストや写真を多用し、

直感的に理解しやすいマニュアルを作成。従来は業務完

了まで時間がかかっていた勤続年数の短いスタッフも、

比較的短時間で業務を安定的に行うことが可能となり、

労働時間の短縮が実現。

容易 普通

難やや

目的

見込まれる効果

長時間労働の解消

業務の標準化・マニュアル化

方法

ポイント

事例

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・IT を活用することで個々の業務を効率化し、日々の労働

時間を短縮。

・現状分析と必要な業務の IT化

個々の業務の現状を分析したうえで、労働時間の短縮

の効果が見込める業務について、IT 機器を導入し、自動

化、省力化。

・労働時間の短縮。

・初期投資が必要になるため、導入は慎重に検討すること。

・従来と異なるやり方になることも多いことから、特にベ

テランの職員は導入に抵抗する傾向が強いため、導入す

る意義、効率化につながること等をしっかりと理解させ

たうえで導入すること。

・各フロアの一角にタブレット型端末を設置、朝の客室の

状況(朝食時の布団上げやチェックアウト後のメンテナ

ンスの開始可否)の連絡・確認を LINE の機能を使って

実施。LINE の「既読」機能により連絡の受信状況が確

認できるようになったため、電話確認の手間が不要とな

り、作業時間が短縮。

・予約台帳について、従来は仮予約表(紙)から各部署に

配布する本予約表(紙)に記載して作成していたもの

を、各予約サイトからの予約を一元的に管理ししてパソ

コンやタブレット端末などにリアルタイムで自動的に配

信する仕組みを構築。紙への転記の労力が削減されたこ

とに加え、転記ミスのチェック、本予約表の配布などの

作業時間も削減。

容易 普通

難やや

目的

方法

長時間労働の解消

テクノロジーの導入

見込まれる効果

ポイント

事例

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3.休暇の取得

・有給休暇を確実に取得する体制を構築することにより、働

きやすい職場環境を整備し、人材の確保・定着を実現。

・有給休暇取得を前提としたシフトの設定・運用

シフトを組む際、先に各従業員の有給休暇日を設定。休

暇により不在となる従業員が存在する前提でシフトを組

み、その中で業務を行うように工夫することにより、「忙

しいので休めない」という事態を回避。

・有給休暇カレンダーの活用

各従業員が年間を通じて有給休暇の取得希望日を全員

が確認できるカレンダーに記入、互いに調整しながら計

画的に有給休暇を取得。

・有給休暇取得日数の増加。

・人材の確保・定着。

・シフト編成のルール(勤務時間の基本パターン、休日の日

数)を明確にするとともに、必要に応じて社会保険労務士

のアドバイスを受けながら就業規則の改定等も行うこと。

・1 ヶ月単位の変形労働時間制の導入とともに、全員が 2 ヶ

月に 1 日の有給休暇を取得すること、シフトを組む際に

は各従業員の有給休暇を最初に考慮することをルール化。

容易 普通

難やや

目的

見込まれる効果

休暇の取得

有給休暇取得を前提としたシフト編成

方法

ポイント

事例

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・有給休暇以外に休暇の取得が可能となる病気休暇制度を

導入し、退職を防止。

・病気休暇制度の導入

持病の治療のため定期的な通院が必要等、健康上の理

由により休暇が必要な従業員を対象に、休暇制度を導入。

・業務ノウハウを有するベテラン従業員の退職の防止。

・病気休暇制度の導入にあたっては就業規則をはじめ既存

の諸規程の変更が必要となるため、社会保険労務士に相

談する等、専門家のアドバイスを受けて行うこと。

目的

見込まれる効果

休暇の取得

病気休暇制度の導入

方法

ポイント

容易 普通

難やや

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・各種の休暇制度を新たに導入することにより、有給休暇の

取得を促進。

・リフレッシュ休暇の設定

閑散期に連続休暇の取得を義務付ける「リフレッシュ

休暇制度」を設定。

・記念日休暇等の設定

「バースデー休暇」「結婚記念日休暇」など、各従業員

の記念日に休める制度を導入。

・有給休暇取得日数の増加。

・従業員が休日を取得しやすい環境とするため、連続休暇や

記念日休暇等の制度の導入後は、上司が率先して制度を

活用し休暇を取得すること。

目的

見込まれる効果

休暇の取得

各種休暇制度の導入

方法

ポイント

容易 普通

難やや

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・施設の休館日を設定し、従業員に休暇を付与。

・休館日の設定

館内の一斉点検日も兼ねて休館日を設定することによ

り、自動的に全従業員の休日が実現。

・休日の増加。

・施設の休館日を設けることが顧客サービスの低下につな

がらないように留意すること。

・休館日に全従業員に対して休暇を付与する場合は、就業規

則に「特別休暇」の条項を設ける等、社会保険労務士など

のアドバイスを受けながら行うこと。

・従来から年間 1~2 日設けられていた館内施設点検日を休

館日とするとともに、就業規則を改定し、休館日当日は従

業員には特別休暇を付与。

目的

見込まれる効果

休暇の取得

休館日の設定

方法

ポイント

容易 普通

難やや

事例

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4.仕事に対する意識付けの強化

・担当業務の異なる従業員同士がお互いの業務を理解し合

い助け合う職場の風土を構築することを通じて、組織の

一体感を醸成。職場の雰囲気を「この職場で働き続けたい」

と思えるものへと変革。

・「プロフィールカード」の設置

各従業員の顔写真、名前、部署名、自己 PR を掲載した

「プロフィールカード」を全員が作成し、従業員が必ず通

る場所に掲示。

・「サンクスカード」の導入

全従業員にカードを配布し、社員同士で感謝の気持ち

を相手に伝えるための一言を添えて、同部署、別の部署の

感謝している人に手渡し。

容易 普通

難やや

目的

仕事に対する意識付けの強化

従業員間のコミュニケーションの強化

方法

【プロフィールカードの例】

【サンクスカードの例】

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・従業員間の一体感の醸成。

・人材の定着。

・一部の部署・部門等に限らず、全社を上げて取り組み、全

社的な風土改革に繋げること。

・複数の施設を有する企業においては、施設単位での実施も

可。

・「サンクスカード」の導入当初は、「同部署の人に手渡す期

間」「別の部署の人に手渡す期間」を定める等、「サンクス

カード」を活用させるような働きかけを行い、「サンクス

カード」の利用の定着に努めること。

・特定の部門について、従業員全員の「プロフィールカード」

を台紙 1 枚に貼り、他部署の従業員も含めた全従業員が

必ず通る場所に掲示。シフトが重ならないことの多い従

業員や、日常業務の中で接点のない部署の従業員からも

「わかりやすい」「顔と名前が一致するようになった」等

の声が上がり好評。

・社内に設置した働き方改革推進チームのメンバーが主導

して「サンクスカード」をお互いに手渡すことを実施。1

週間ごとに渡す相手の部署を変えることを 3 ヶ月間継続

し、「サンクスカード」が定着するとともに、職場の雰囲

気が「相談しやすい」「働きやすい」ものへと変化。

ポイント

見込まれる効果

事例

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・従業員が「この会社で働き続けたい」と思えるような環境

を整備し、従業員の離職を防止。

・等級制度の導入

会社が求める人材像や、昇給・昇格に必要なスキル・能

力基準を定義し、それぞれのレベルに等級を付与。

・永年勤続表彰制度の導入

従業員の定着化の動機付けのため、勤続年数に応じ、10

年、15 年、20 年、25 年、30 年勤めた従業員に 表彰状

の贈呈、特別休暇の付与、旅行費用の補填を実施。

・人材の定着。

・人事制度の更改は非常に難しいことから、経営者自身が深

く関与したうえで、時間をかけて実行すること。

・等級の定義については、従業員が自らのスキル向上を目指

す動機となるよう、「入社初年度は 1 等級、4 年目では『こ

の程度の能力とスキルができる』状況になれば 2 等級に

ランクアップする」など、わかりやすく客観的な内容にす

ること。

容易 普通

難やや

目的

見込まれる効果

仕事に対する意識付けの強化

将来のキャリアパスを明確にした人事制度の導入

方法

ポイント

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・求める人材像、能力・スキルを明確にした人事制度を導入

した後、それを的確に評価する仕組みと評価に応じた報

酬制度を明確にし、従業員の意欲を向上。

・オープンでフェアな評価制度と報酬制度の導入

評価の対象、評価者、評価の指標を従業員に開示。また、

それに応じた賃金テーブル、昇給額なども開示。

・業務の実態に見合った人事評価シートの作成

個別の業務について具体的な評価項目を定め、各項目

の評価点をウェイト付けした評価シートを作成し、各従

業員の業績の評価に活用。

・定期的な人事面談と従業員へのフィードバック

人事評価の結果を従業員にフィードバックする機会を

設定。従業員が自らの課題をより強く認識するよう、フィ

ードバックは年間に複数回を実施。

・人材の定着。

・人事評価の変更は、オープンでフェアな評価方法や報酬

制度の導入と一体として取り組み、経営者の強い意思の

下で実行すること。

・自社単独で行うのは難しいことから、場合によっては、

社会保険労務士等と相談しながら実施すること。

・従来は何が評価され何が評価されていないのかが不明確

であり、また、会社が個々の従業員に何を求めているの

か等がフィードバックされていなかったため、従業員の

努力の方向性が定まらず、各人のキャリア設計も不透明

な状態であったことから、評価結果を従業員に伝える機

会を年に複数回設け、業務上の課題等を話し合う、アド

容易 普通

難やや

目的

ポイント

仕事に対する意識付けの強化

評価の見える化

方法

見込まれる効果

事例

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バイスを与える等のフィードバックを実施。

・労働時間の見える化(p.24)により整理された具体的な

業務の内容に基づき、社外のコンサルタントの助言を受

けながら評価シートを作成し、従業員に開示。

【評価シートの例】(フロント業務)

評定要素 着眼点 ウェイト 評定 点数

予約業務

①売上・収益拡大につながるような電話・インターネット等の予約受付業務が遂行されていたか

②予約内容のチェックや予約内容の変更について、ミスやトラブルなく、正しく遂行されていたか

③予約業務活動をレベルアップするための工夫・改善をしていたか

電話対応 ①電話を迅速にとり、施設の代表であるという意識を持

った上で、挨拶、正しい日本語に留意して、気持ちよく対応していたか

チェック イン

①当日のチェックイン活動について、客室担当者との事前打ち合わせ、連携作業は十分にされていたか

②ゲストカルテをよく把握して、ゲストの特性に合わせた顧客満足度を高めるチェックインができていたか

③チェックイン活動がマンネリ化しないための工夫・改善をしていたか

チェック アウト

・・・・・・・・

客室への 案内

・・・・・・・・

・・・・・・・・ ・・・・・・・・

業績評定 合計

責任感 ①困難があっても自己の役割を達成しようとしていたか ②誤りや失敗に対して責任回避することはなかったか ③仕事に対して陰日向なく取り組んでいたか

積極性 ・・・・・・・・

規律性 ・・・・・・・・

・・・・・・・・ ・・・・・・・・

業務知識 ①担当業務遂行に必要な知識を十分持っているか ②・・・・・・・・

理解判断力 ・・・・・・・・

創意工夫力 ・・・・・・・・

・・・・・・・・ ・・・・・・・・

意欲・能力評定 合計

全体の中での重要度に応じて

項目ごとにウェイト付け

(例:全体を 100 としたときに

予約業務は 10 など)

項目ごとの評価点 ウェイト×評定(評価点)

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・従業員が自らの将来の姿を描けるように、従業員がスキル

アップできる仕組みを用意。

・等級別、階層別の研修

等級別、階層別に、「基本研修」「企業人材育成」「ホテ

ルスタッフ育成」「自己啓発援助」等の研修制度を導入。

・自己啓発への援助

海外留学援助制度や各種資格への援助制度を導入。

・他部署への短期研修

OJT の一環として、他部署への短期研修制度を導入。

従業員は幅広く施設の業務全般について理解。

・人材の育成、人材の定着。

・従業員個人の自己啓発意欲だけに頼るのではなく、職種別、

階層別の教育研修制度を体系化して、個々の従業員のス

キルアップ、能力向上を促すこと。

・新卒者は「総合サービス」部門に配属後、同部門で 2~3

年に渡って施設の全業務に携わることで業務の全体像を

把握し、あらゆる業務(いわゆるマルチタスク)に対応で

きる基本スキルを習得。その後は、定期的に各部門を異動

しながら、適性を見極めて専門性を高める。

・自己啓発の一環として、サービス内容を競うイベントを実

施。電話応対コンクール、フロント応対コンクール、料理・

カクテルコンテストなど。

容易 普通

難やや

目的

仕事に対する意識付けの強化

スキルアップのための教育研修制度の導入

方法

ポイント

見込まれる効果

事例

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5.経営の安定

・客室稼働率をできるだけ高水準で維持することにより、非

正規労働者の通年雇用化、収益改善を通じた従業員の処

遇改善を実現。

・サービスレベル向上を通じたリピーターの獲得

利用者の個々の事情に配慮したホスピタリティの提供

や、また来たいと思われる「おもてなし」のサービス強化

等により、リピート客を獲得。

・季節雇用者の通年雇用化。

・従業員の処遇改善。

・サービス(=頼まれたこと行う)から一歩進んで、ホスピ

タリティ(=顧客がやって欲しいことを察知して行う)の

提供ができるよう、利用者の個々の事情を理解、察知した

価値提供を追求すること。

・徹底的に掃除してホテルをピカピカにする、顧客には必ず

立ち止まってきちんと挨拶する、電話には笑顔で明るく

元気よく対応する、などのことを徹底した結果、宿泊客の

印象が良くなり、リピート客の増加で稼働率が改善。

・閑散期に低価格のプランを設定し、リピーターに案内を出

すなど集客を促すことにより、オフシーズンの客室稼働

率を高め、通年の稼働率が平準化され非正規労働者の通

年雇用化を実現。

容易 普通

難やや

目的

見込まれる効果

ポイント

経営の安定

客室稼働率の引き上げ・維持

方法

事例

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・客単価を引き上げることにより、収益改善を通じた従業員

の処遇改善を実現。

・イベント等を考慮したきめ細やかな価格設定

日本国内の休日のみならず、訪日外国人観光客を意識

して海外の各国の休日も考慮し、外国人観光客に人気の

時期には料金を上げるなど、時期に応じたきめ細やかな

価格を設定。また、国内や海外のアーティストのコンサー

トや、スポーツイベントも考慮。

・ホテル予約サイトの完成度を高める

ホテルの予約サイトの登録情報が不完全である場合や

間違っている場合には、利用者は不安になって予約を避

けるケースが多くなることから、ホテル名、住所、連絡先

は言うに及ばず、アメニティや施設設備、チェックイン時

間等、登録される項目をすべて正確に登録。

・施設の評価の点数を上げる

施設の評価、レビューの点数を上げることを目指し、

「清潔な部屋を心がける」「顧客からの依頼にはすぐ対応」

「多言語対応可能(日本語、中国語、英語)」など、日々

の基本事項を徹底。

・アメニティ、施設整備の充実

Wi-Fi をはじめ、施設のコンセプトに応じたアメニティ

や設備を用意。

・従業員の処遇改善。

・単純な価格の引き上げは顧客離れを招きかねないことか

ら、値上げの実施には相応のサービス向上が必要である

ことを強く意識すること。

目的

見込まれる効果

ポイント

経営の安定

客単価の引き上げ

方法

容易 普通

難やや

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・人材を安定的に確保し、サービスの向上に努めることで、

売上や利益の増加を実現。

・新規採用者の雇用形態を契約社員から正社員へ転換

従来は契約社員であった新卒者の採用形態を正規雇用

へ切り替え。

・短時間勤務制度の導入による退職者の再雇用

短時間勤務制度を導入したうえで、経験豊富な退職者

を再雇用。

・外国人労働者の採用

訪日外国人旅行者の増加に対応するため、外国人など

外国語のできる人材を積極的に採用。

・人材の定着。

・従業員の処遇改善。

・サービスの向上。

・人材確保のための方策は様々であるが、まずは自社の現

状や経営環境に見合う事項、比較的実行しやすい事項か

始めること。

・人材確保のために最も重要な要素は、従業員が将来に希望

を抱いていきいきと働く職場であることを念頭に置き、

ひとつひとつの課題を確実に対応しながら、働きやすい

職場を作っていくこと。

・家庭の事情により通常のシフト勤務が難しくなった従業

員を対象に、短時間勤務制度を適用。

容易 普通

難やや

目的

見込まれる効果

ポイント

経営の安定

人材の安定的な確保

方法

事例

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働き方改革プラン(宿泊業)

【ほっかいどう働き方改革支援センター運営等事業委託業務】

平成 30 年 3 月

◆事業委託者

北海道経済部労働政策局雇用労政課

札幌市中央区北3条西6丁目

◆事業受託者(内容に関する照会先)

「ほっかいどう働き方改革支援センター運営等事業」受託コンソーシアム代表者

株式会社道銀地域総合研究所 地域戦略研究部

札幌市中央区大通西4丁目1番地 道銀別館ビル

TEL:011-233-3562 FAX:011-207-5220