カスピ海原油輸送に関する問題 - jogmec石油・天 …...kashgan east 1,kashgan west...

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1.カスピ海の探鉱開発状況(ロシア,アゼル バイジャン,カザフスタン) カスピ海の資源開発はソビエト連邦崩壊後, 沿岸の新興独立国が着手することにより,大き く進展している。そして,ロシアもかつての生 産主力地域であったウラル堆積盆の生産量減退 により,西側への供給ソースとして,この地域 の大埋蔵への関心を高めていった。1993年のア ゼルバイジャンでのPS契約をはじめ,西側メ ジャーが競って探鉱掘削を行ってきたが,最近 の掘削結果から,カスピ海地域は北カスピ地域 に原油の大埋蔵があるが,南カスピにはいくつ かの有望ガス田を除き,当初の期待を裏切るも のであった。そして,その北カスピ(ロシア, カザフスタン沿岸)では,旧来進められてきた 西側メジャー・コンソーシアムによる開発だけ でなく,昨今の高油価により経営体力を高めて きたロシア・メジャーも関心を強めており,今 後の有力プレイヤーとなることが予測される。 1.1. 主な開発プロジェクト近況~有望な北カ スピと期待はずれの南カスピ 国際石油企業による本格的な探鉱開発作業が 開始された90年代半ば以降の作業結果(2002初現在)は,北カスピ堆積盆では,既に発見さ れていたTengiz油田,Karachaganakガス田, Astrakhan ガス田の評価が進んだ事に加え, Kashagan油田,Severny鉱区(Khvalynskaya 油田等)と言う巨大油田が新たに確認されて来 て,極めて有望である事が証明された。一方, 南カスピ堆積盆ではこれまで7構造で試掘され たが,まとまった量の油・ガスが確認されたの Shakh-Deniz構造のみで,失望させられる結 果であった。特に同盆地の南部,ないし陸地 (西)側では全く発見がなく,試掘で得られた 地質情報によって,この地域の評価は大幅に下 がった。同盆地北辺部では,Azeri-Chirag- Gunashli油田やShakh-Deniz・ガス田の巨大埋 蔵量(何れも第3紀層)が確認済みである。今 後,北カスピのプレソルト探鉱については沿岸 部での新規鉱区開放が予定されており,また既 24 石油/天然ガス レビュー 02・7 カスピ海原油輸送に関する問題 古 川 純 也 *本稿は,企画調査部 古川 純也(E-mail:furukw-j@jnoc. go.jp)が担当した。 カスピ海における資源開発は,1993年のソビエト連邦の崩壊来の10年間に積極的に進められ てきた。この地域の開発は,中東への対抗軸としてのマーケットの期待があり,日本企業も開 発事業に進出している。ソ連からの新興独立国がカスピ海の大埋蔵開発への関心を高め,それ に米露が影響力を狙い,エネルギー外交を展開するという構図で描かれることが多く,政治的 視点からの注目が非常に大きいが,輸出インフラ未整備,開発資源がマーケットに遠いという 点において,輸送インフラの整備とその「主導権」を巡る争いも顕在しており,外資の動向も また大いに注目される。この輸送インフラ整備の問題はカスピ海資源輸送のボトルネックとも なり,開発動向に大きな影響を与える。埋蔵量評価は今後更に続けられる掘削の中で明らかに なっていくが,現時点における「カスピ海原油」の輸送ルートの可能性を検討してみる。各ケ ースにはさまざまなファクターが絡み合うが,①開発プロジェクト(埋蔵量と生産スキーム) ②輸送インフラ(パイプライン輸送量,建設スキーム)③企業戦略(主に西側企業)④政治的 要因(カスピ海沿岸国,及び影響を与える西側政策)を整理した。

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1.カスピ海の探鉱開発状況(ロシア,アゼル

バイジャン,カザフスタン)

カスピ海の資源開発はソビエト連邦崩壊後,沿岸の新興独立国が着手することにより,大きく進展している。そして,ロシアもかつての生産主力地域であったウラル堆積盆の生産量減退により,西側への供給ソースとして,この地域

の大埋蔵への関心を高めていった。1993年のアゼルバイジャンでのPS契約をはじめ,西側メジャーが競って探鉱掘削を行ってきたが,最近の掘削結果から,カスピ海地域は北カスピ地域に原油の大埋蔵があるが,南カスピにはいくつかの有望ガス田を除き,当初の期待を裏切るものであった。そして,その北カスピ(ロシア,カザフスタン沿岸)では,旧来進められてきた西側メジャー・コンソーシアムによる開発だけでなく,昨今の高油価により経営体力を高めてきたロシア・メジャーも関心を強めており,今

後の有力プレイヤーとなることが予測される。

1.1. 主な開発プロジェクト近況~有望な北カ

スピと期待はずれの南カスピ

国際石油企業による本格的な探鉱開発作業が

開始された90年代半ば以降の作業結果(2002年初現在)は,北カスピ堆積盆では,既に発見さ

れていたTengiz油田,Karachaganakガス田,Astrakhanガス田の評価が進んだ事に加え,Kashagan油田,Severny鉱区(Khvalynskaya油田等)と言う巨大油田が新たに確認されて来て,極めて有望である事が証明された。一方,南カスピ堆積盆ではこれまで7構造で試掘されたが,まとまった量の油・ガスが確認されたの

はShakh-Deniz構造のみで,失望させられる結果であった。特に同盆地の南部,ないし陸地(西)側では全く発見がなく,試掘で得られた地質情報によって,この地域の評価は大幅に下

がった。同盆地北辺部では,Azeri-Chirag-Gunashli油田やShakh-Deniz・ガス田の巨大埋蔵量(何れも第3紀層)が確認済みである。今後,北カスピのプレソルト探鉱については沿岸部での新規鉱区開放が予定されており,また既

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カスピ海原油輸送に関する問題

古 川 純 也*

*本稿は,企画調査部 古川 純也(E-mail:[email protected])が担当した。

カスピ海における資源開発は,1993年のソビエト連邦の崩壊来の10年間に積極的に進められてきた。この地域の開発は,中東への対抗軸としてのマーケットの期待があり,日本企業も開発事業に進出している。ソ連からの新興独立国がカスピ海の大埋蔵開発への関心を高め,それに米露が影響力を狙い,エネルギー外交を展開するという構図で描かれることが多く,政治的視点からの注目が非常に大きいが,輸出インフラ未整備,開発資源がマーケットに遠いという点において,輸送インフラの整備とその「主導権」を巡る争いも顕在しており,外資の動向もまた大いに注目される。この輸送インフラ整備の問題はカスピ海資源輸送のボトルネックともなり,開発動向に大きな影響を与える。埋蔵量評価は今後更に続けられる掘削の中で明らかになっていくが,現時点における「カスピ海原油」の輸送ルートの可能性を検討してみる。各ケースにはさまざまなファクターが絡み合うが,①開発プロジェクト(埋蔵量と生産スキーム)②輸送インフラ(パイプライン輸送量,建設スキーム)③企業戦略(主に西側企業)④政治的要因(カスピ海沿岸国,及び影響を与える西側政策)を整理した。

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存契約鉱区での追加探鉱も若干予定されているため,今後数年間で更に新たな巨大油田が発見される可能性があり,またポストソルト探鉱についても巨大油田の可能性は低いものの,中小規模油田が多数発見されてくる可能性がある。一方,南カスピについても,既存契約鉱区の探鉱義務作業が未だかなり残っているので,特に深海部での発見の可能性も若干は残されている。それ以外のトルクメニスタンのカスピ海付

近,カザフスタンのカスピ海東方の北Ustyurt盆地,東Aral盆地や更に東方の中国国境付近では,新たな探鉱活動は殆ど行われておらず,今後の探鉱が待たれるが,カスピ海地域の生産が本格化し,パイプライン整備がなされるまでは大きな進展は期待しがたい。トルクメニスタン

(一部ウズベキスタン)のAmu Darya盆地(アフガニスタンの北)では比較的大きなガス田が

80年代以前に発見済みであるが(現在合計約50tcfの確認可採埋蔵量),最近の探鉱・開発作業は地元企業によって細々と行われているに過

ぎない。

1.2.主なプロジェクト概要(別表参照)①KashaganAKCO(Agip Kazakhstan North Caspian

Operating Co):Agip(オペレーター),BG,ExxonMobil,RD/Shell,TotalFinaElf各1 4 . 2 9%, B P 9 . 5 1%, I N P E X 7 . 1 4%,Statoil4.77%カザフスタン沖合に位置するKashagan構造

では,1998年11月にPSAが締結され,2000年に大埋蔵の確認が発表されたが,現段階で埋蔵量

についての公式発表はない。2001年にBPとStatoilがファームアウトし,権益は残り6社に分割された。またAgipがオペレーター選出されOK I OCから改称している。現在までKashgan East 1,Kashgan West 2の2本の試掘に成功しており,2002年中にKashagan Eastに2本の掘削が予定されている。2本の試掘結果からAgipによれば,最低推定埋蔵量100億bblとの見方を示している。②TengizTengizChevroil(ChevronTexaco50%,

ExxonMobil25%,カザフスタン政府20%,LukArco5%)TengizChevroil(TCO)は1993年に組成されたJVであり,40年間のライセンスを有している。推定可採埋蔵量約90億bbl。総投資額は90億ドル。2002年4月にはCPCを通じて230千b/dを黒海に,Atyrau-Samaraを通じて50-60千b/dをロシア国内に輸送を行っている。2002年には273千b/dの生産を計画しているが,20億ドルの投資により2005年までに380千b/d,2010年にはピーク生産700千b/dを計画している。③AstrakhanENIがAstrakhannefteprom(Gazpromの関

連会社StroitransgazとAstrakhan州政府の50-50のJV)との50-50のJVを組成し,47億ドルといわれる同プロジェクトに取組む。ENIは1998年にGazpromとの戦略的提携を結んでいるが,当時の国内ガス需要の停滞と投資削減により,

同開発は見送られていた。Astrakhanガス・コンデンセート田ではGazpromが既にガス生産を行っており,今回のプロジェクトでは深度

6000mまでの開発を行う。2001年中に探鉱を開始し,2002年までに100百万ドルの投資を行う計画。ボルガ川河口に位置する N o r t hAstrakhanガス・コンデンセート田は,1800平方kmにコンデンセート32億bbl,天然ガス6tcfが埋蔵されている(いずれも推定)4~5年内

の生産開始が目標で,ピーク生産は27百万t/y(原油換算)と見込まれている。④Senerny,Kurmangazy等北カスピ鉱区(ロシア,カザフ境界鉱区)ロシアとカザフスタンは2002年5月に北カス

ピ海の両国合意境界線上にある3フィールド

(Kurmangazy,Tsentralnoye,Khvalynskoye)の共同開発について合意した。カスピ海沿岸5カ国国首脳会議(4月23,24日トルクメニスタンAshgabatにて開催)ではカスピ海領有権についての議論が平行線のままであり,全体の解決が容易でないことが再認識されているが,ロ

シア,カザフスタンの両国は1998年のカスピ海分割協定(中間線による北カスピ海底資源分割に関する2国間協定)に既に合意しており,両

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国は同協定に基づき境界上にある地下資源について共同開発を進めるべく,具体的な合意に至

っている。3フィールドの管轄についてはTsentralnoye,Khvalynskoyeはロシアの管区,Kurmangazyはカザフスタンの管区とされるが,地下資源開発はそれぞれ均等シェアで共同

開発される。Khvalynskoyeは,Severny鉱区に隣接しており,Lukoilが従来から探鉱事業を実施してきた。(同社は1995年のロシアによる北カスピ海のライセンス付与後,探鉱掘削を続

けてきた。)ロシアとしてはKurmangazy(カザフ領と認定)についてカザフスタンに妥協す

ることで,Khvalynskoye開発の主導権を確保した。両国はそれぞれ自国シェアについて外資へのファーム・アウトを検討中と伝えられてい

る。⑤Azeri Chirag Guneshli(ACG油田)権益シェアはBP(オペレーター)34.14%,

Unocal10.28%,Lukoil10%,Socar10%,Statoil8.56%,ExxonMobil8%,TPAO6.75%,DevonEnergy5.63%,伊藤忠3.92%,DeltaHess2.72%。1994年12月にライセンスが付与された。生産段階については,フェーズⅠは2001年8月に計画承認され,2005年に350千b/dの生産を目標に,Ce Central Azeriフィールドを開発する。フェーズⅠ投資総額は34億ドル。フェーズⅡはWest Azeri,East Azeriの開発により2006年2Qに生産開始,フェーズⅢではDeep Water GuneshliとWest Chiragで2008年2Q生産開始の計画である。2002年3月の生産量は119千bo/d。Baku-Supsaパイプラインは改修により,125千b/dの能力を有しており,全て同ラインにより輸送されている。BPによれば,2008~2010年にピーク生産約1100千bo/d,を見込んでいる。⑥Shakh Denizガス・コンデンセート田BP(オペレーター)25.5%,Statoil 25.5%,

LukAgip 10%,OIEC 10%,Socar 10%,TotalFinaElf 10%,TPAO 9%原油パイプライン輸送を考察する上で,

Shakh Denizからのコンデンセート輸送量を考慮しなければならない。埋蔵量約5億bbl。ピー

ク生産量は約10万b/dと予想される。

2.輸送インフラの状況

カスピ海周辺の輸送インフラが域外輸出向けとして十分ではない理由として,かつては沿岸国(イランを除く)がソビエト連邦構成国であったことが挙げられる。アゼルバイジャン,カザフスタン,トルクメニスタンのいずれにとっても,ソ連国内需要あるいは西側への輸出いずれを指向するとしても,既存のインフラはロシアを経由するものしかなかった。したがって独立国として新たなマーケット(ロシア以外の市場)を自国のイニシアチブで開拓するためには,開発投資とあわせて,輸送部門への莫大な投資が必要であり,現在では国際コンソーシアムによる各プロジェクトが進行中である。以下に各パイプライン・プロジェクトの概要を整理す

る。

2.1.既存パイプライン概要(別表参照)①CPC(Cazpian Pipeline Cocortium)パイプライン<ルート>カザフスタンTeng i z~ロシアNovorossiisk

<総延長>1420km<輸送能力>第1フェーズ56万b/d,第2フェーズ2003年完了75万b/d,第3フェーズ2007年完了95万b/d,第4フェーズ2010年完了134万b/d

<権益>ロシア24%,カザフスタン19%,オマーン7%, C h e v r o n T e x a c o 1 5 %,Lukarco12.5%,Rosneft-Shell7.5%,ENI2%,BG2%,BP1.75%,Oryx Caspian1.75%2001年10月に開通。②北ルート(Baku-Novorossiisk)Bakuの原油をロシアに運搬するこの輸送シ

ステムは,ソ連の中央集権体制の名残であり,

ロシアの国営パイプライン会社Transneft運営する。チェチェン紛争により,チェチェン迂回

ルート(100km)が2000年4月に完成している。1000千b/dの輸送能力を有する。③西ルート(Baku-Supsa)

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Bakuと黒海の輸出港Supsaを結ぶ全長920kmのパイプライン。同ラインの利用はAIOCプロジェクトに限定されているため,ブレンドを避

けてAzeri原油としての輸出が可能となっている。1百万b/dの輸送能力がある。1999年5月より輸送開始されている。比較的安い建設費に

より増強が可能であるが,CPCパイプラインが完成したため,Supsa港からの積出し拡大はボスポラス海峡の過密化を招くという問題を抱え

ている。④Atyrau-SamaraCPC完成までは,カザフスタン原油を輸出する唯一のパイプラインであった。全長737km。原油はロシアを経由して,欧州に輸出されてい

るが,割当て量はロシアが決定している。

2.2.建設中・計画中パイプライン概要①MEP(Main Export Pipeline)

<ルート>アゼルバイジャンBaku~グルジアTbilisi~トルコCeyhanMEPはカスピ海中央部のACG油田(埋蔵

量50億bbl;ピーク生産量70~90万b/d)とShakh-Denizガス田のコンデンセートの搬出路として,直接地中海岸のトルコのCeyhanに搬出する100万b/d能力のパイプラインを想定したパイプラインであるが,カザフスタン沖合からの輸送(海底パイプラインあるいはタンカー),ロシア沖合からの輸送とリンクすることも可能であり,最近では北カスピの開発参加者もパイプライン事業への参加に関心を示してい

る。2002年6月現在の参加企業はBP38.21%,Socar25%,Unocal8 .9%,Statoi l9 .58%,TPAO7.55%,ENI5%,TotalFinaElf5%,伊藤忠3.4%,Delta Hess2.36%。2001年になってE N I( A K C O)が, 2 0 0 2年6月にはTotalFinaElfが参加予定である。また参加検討

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カスピ海周辺の原油パイプライン

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【主なカスピ海原油輸送パイプライン】��名称�

北ルート�(Northern Route)�Baku~Novorossiisk����西ルート�(Western Route)�Baku~Supsa���CPCパイプライン�(Caspian Pipeline Consortium)�Tengiz~Novorossiisk�Atyrau~Samara���

ルート�アゼルバイジャン・バクー~ロシア・ノボロシスク�����アゼルバイジャン・バクー~グルジア・スプサ���カザフスタン・テンギス~ロシア・ノボロシスク���カザフスタン・アティラウ~ロシア・サマラ��

パイプライン事業者�Transneft�������ACG油田の開発事業者を中心とした国際コンソーシアムAIOC��CPCコンソーシアム※1����Transneft����

輸送能力総延長等�10万b/d�1483km�ソ連時代に輸送開始�2000年4月チェチェン・バイパスによる輸送開始��14万b/d�814km�1999年4月輸送開始�2001年に輸送能力増強�(10万→14万b/d)�56万bbl/日�1,420km�2001年8月輸送開始�2015年には135万bblに増強予定�30万b/d�737km�ソ連時代に輸送開始�2000年11月,20万bblから30万bblに増強��

概要�・2000年上半期の稼働状況=0.35万bbl/日�・アゼルバイジャン国営石油会社SOCARが保有する同国陸上油田の原油を輸送�・チェチェン紛争には供給途絶(1996年6月~2000年4月)�・2002年1月現在の稼働状況は,11.9万bbl/日�・ACG油田のうちChirag油田の原油を輸送��・2001年実績は,11.0万bbl/日�・カザフスタンのテンギス油田の原油を輸送�・テンギス油田の生産量=25.1万bbl/日(2001年実績)�・2001年10月現在の稼働状況は,20.5万bbl/日�・カザフスタンの陸上油田の原油を輸送�

※1:ロシア政府24.0%,カザフ政府19.0%,オマーン政府7.0%,シェブロン(米)15.0%,LukArco(露/米)12.5%,Rosneft-Shel1(露/英)l7.5%,ExxonMobil(米)7.5%, Agip(伊)2.0%, BG(英)2.0%,BP(英)1.75%,Keer-McGee(米)1.75%�

※2:Socar25.0%,BP(英)38.21%,Unocal(米)9.58%,Statoil(ノルウェー)8.71%,TPAO(トルコ)7.55%,ENI(伊)5.0%,伊藤忠3.4%,Delta Hess(米)2.36%�

操業中�

名称�BTCパイプライン�Baku~Tbilisi~Ceyhan���カザフスタン~中国�Ak t y u b i n s k~Xinjiang�(新彊)���KTIOP �(K a z a k h s t a n Turkmen i s t a n Iran Oil Pipeline)�カザフスタン~トルクメニスタン~イラン���Odessa~Brody~Gdansk����Druzhba-Adriaパイプライン��

ルート�アゼルバイジャン・バクー~グルジア・トビリシ~トルコ・ジェイハン��カザフスタン・アクチュビンスク~中国・新彊ウイグル自治区・カラマイ油田���カザフスタン・カシャガン油田~トルクメニスタン~イラン・ネカ�����ウクライナ・オデッサ港~ブロディ~ポーランド���ロシア~ベラルーシ~ウクライナ~ハンガリー~クロアチア��

パイプライン事業者�※2�����カザフ政府�CNPC(Ch i n a N a t i o n a l Petroleum Corp.,中国石油天然気集団公司)��KazMunaiGaz�(カザフ)�TotalFinaElf(仏)������Druzhba社���

輸送能力総延長等�100万b/d�1,743km�2005年1月完成予定���40万~80万b/d�3,000km�構想段階�����100万b/d�1,250km�構想段階������最大80万b/d�Odessa~Brodyは完成,ポーランドへの延伸計画中��計画段階,初期10万b/d

概要�・アゼルバイジャンのACG油田の原油を輸送するパイプライン�・現在,詳細設計(Detailed Engineering)を実施中�・2005年1月完成予定�・CNPCが権益を有するカザフ北西部の油田と中国西部の油田を,中国新彊経由で同国東部に輸送するパイプラインの計画であるが,同油田の生産量が予想を大きく下回ったため計画は停滞している。��・カザフ及びトルクメニスタンの油田の原油を,イランまで輸送し,スワップ取引によりペルシャ湾で原油を引き取る。将来的には,イラン南部の既存パイプラインと結んでペルシャ湾まで輸送することも視野に入れている。�・カスピ海原油輸送のボスポラス海峡迂回ルートとして黒海沖合のターミナル増強,パイプラインを建設。ポーランドへの延伸が計画されている� ロシア既存ラインDruzhbaパイプラインを経由してアドリア海に搬出するルート�

計画中�

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中と伝えられていたChevronTexaco,Lukoilは現時点での参加を見送っているが,Lukoilはカスピ海の開発状況を注視したいとのコメントの通り,今後の開発状況(特にロシア沖合)に応

じて輸送手段確保に動く可能性もある。Socarは今後のシェア比率低下を検討しており,今後も新規参加の余地はあると考えられる。また,

カザフスタン政府もCPC完成後,更に拡大する自国の生産原油輸送の対応のため,輸送ルート

複数化を検討しており,MEPの利用も候補の一つとして検討している。2003年3Q着工,2006年末完成予定。②イランルート(カザフスタン~トルクメニス

タン~イラン)テヘランまで40万b/dの短距離のパイプライ

ンを新たに建設し,既存の湾岸からテヘランまでのパイプラインを逆送させてスワップを行い最も安いコストの搬出路を作ることをイラン側

は計画している。Kashagan原油の輸送ルートとしてTotalFinaElfが関心を示している。③中国ルート1997年に中国国営石油会社(CNPC)が,カ

スピ海東北岸のカザフスタン西部の油田開発権取得とそこからの長距離パイプラインを中国国

境まで約1,100km建設するF/Sをカザフ側と合意し(50万b/d程度の能力),更にそのパイプラインを中国の太平洋岸まで建設する構想も

打ち上げた。しかしながら,この気宇壮大な構想は,途中経由地の中国タリム盆地での探鉱結果が期待はずれであった為に,現在では経済合理性を殆どなくし,実行されない可能性が高くなってい

る。④その他ルートその他,パイプライン増強の可能性としてル

ート増強案である,第二CPC,第二MEPといったオプションも考えられる。

3.輸送に関する問題点

カスピ海地域の輸送パイプラインを巡る議論が様々にあるのは,これまで埋蔵量評価が一定ではなかったことにもよるが,より大きな問題

として,単純な経済性評価だけでなく,政治的影響も受けやすい環境にあったことが挙げられる。埋蔵量評価の観点で言えば,当初は複数の輸送パイプライン・プロジェクトに対し,十分な資源量があるのかという危惧があり,かつて

は輸送量を巡るCPC対MEPの競合の構図が取上げられたが,その後判明した埋蔵量から判断し,今やカスピ海原油の輸送には複数パイプラインが必要であると言われている。その輸送ルートの決定は上記プロジェクトの組み合わせにより決定されるが,前述のように単純な経済性だけでなく,むしろ多元的要因が影響に勝るケースも考えられ,以下にいくつかの問題点を整

理してみた。

3.1. Bosporus海峡問題;限界能力とバイパス

P/L計画2000年時点でのBosporus海峡を通過する石

油は120万b/d程度であるが,現在導入が進められている最新のナビゲーションシステムの場

合,280百万b/d程度まで安全に通過可能になると言われているが,タンカー以外の航行数も

増加しているので(タンカーは全航行数約5万隻の15%程度),現実的には200bbl程度が限界ではないかとも言われている。事故による大きな人的被害や環境被害の可能性についてトルコ政府は非常に神経質になっており,タンカー航行数の大幅増加にはあらゆる政治的手段を駆使して制限を加えようとしている。このため,現在既にカスピ海地域で発見されている石油埋蔵

量からの予想生産増量分200万bblの半分以下しかこの海峡を通過できない計算となる。(カスピ海原油以外にもロシア原油輸出の増加分もあるため)即ち,今後発見される分を除いても,

2010年時点で150万b/dが出荷不能になる可能性がある

3.2.黒海-地中海積み替えパイプラインBosporus海峡の航行能力の問題を回避する

ために,トルコ陸上ルートとは別にロシア,ブルガリア政府などによって提案されているのが,一旦タンカーで黒海から搬出し,ブルガリアで陸上パイプラインに積み替えて地中海岸に

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出したうえ再びタンカーに積む案である。ブル

ガリア-ギリシャの300kmという最短の迂回ルート(能力70万b/d)とブルガリア-マケドニア-アルバニア間約900km(同能力)の2つのルート案があり,ロシア企業やいくつかの国際石油会社が強い興味を示しているが,いずれ

も計画の初期段階である。

3.3.ロシアルート;第2CPCの可能性4つの巨大油・ガス田が発見済みの北カスピ

海地域から黒海のロシア領Novorossiyskまでの100~150b/dの輸送能力のパイプライン(CPC)は既に完成し,昨年末より稼働しているが,これだけでは北カスピ海の搬出能力が十分でないのでこれに併行した第2パイプラインを建設す

る案がKashagan油田開発に関わっている国際石油企業側から浮上している。また,周辺のロ

シア領で発見済みの巨大なSeverny鉱区や,Astrakhanガス田からの液体生産量を考えると,今後新規の発見がなくても第2ラインが必

要になる可能性が高いが,この場合はBosporus海峡の航行能力を超えると考えられるために,ブルガリア-ギリシャ・ライン建設等とパッケ

ージになる可能性が高い。この他Druzhbaパイプライン改修によりポーランド,アドリア海に

出荷するルートも検討されている。

3.4.MEPの位置づけ当初BP等の石油会社側は,建設コストが高

い(4ドル/bbl弱程度と推定されている)このルートに難色を示し,イランとのスワップする計画を目論んでいたが,米国の強い政治的圧力でこれを断念し,現在は同ラインの建設を計画している。トルコ政府も「このルートを建設し

ないのであれば,現在以上のBosporus海峡のタンカー通行を認めない」との政治的プレッシャーをかけており,イランルートの見込みが立たない以上,事実上このルートの建設が必須の

状況である。ACG油田とShakh-Denizガス田からの液体

生産量以上に,どの程度輸送余力が出てくるかは不透明であるが,場合によっては,

Kashagan油田などカスピ海北部油田生産量の

一部を輸送する可能性もある。

3.5.イランルートの問題点政策的に米国が支持しないルートである。カスピ海で投資している殆どの国際石油企業の本音はこの安いイランルートが政治的に利用可能であれば,自ら新しいパイプラインに投資してでも利用を希望している。原理的には,イラン

北部で80万b/d程度の国内需要があるため,同僚水準までのスワップが可能であり,更に湾岸-テヘラン間の既存パイプラインを逆送させて現物も直接輸出すれば,非常に安いコストで

150万b/d程度の実質的な搬出が可能になる計算。これだけでカスピ海中央部以南の全ての既発見油田からの生産原油を搬出可能である。しかしこのスケールでの実現性は非常に低い。理由は米国の強固な阻止姿勢とイラン側の国外原油依存に関する安全保障上の懸念である。米国

政府の反対理由は次の通りである。イランとの関係が良好でなく,地域の勢力バランスを崩しかねないカスピ海原油搬出の殺生与奪権や通過料収入を与えたくないこと。これに加え,このルートでは結局ホルムズ海峡の内側にカスピ海原油が出てしまって実質的に中東原油となるので,そもそも中東原油に対するバランサーを育成すると言う米国政府のエネルギー政策としてのカスピ海資源開発への政治介入の理由をなくしてしまうと言う強い危機意識があるためである。従って,仮に米国・イラン関係が改善したとしても,このルートへの米国の

政策は不変と考えられる。また,イラン側も一定割合以上のスワップ

(例えば50万b/d規模)には難色を示すであろう。国内生産原油のほとんどが輸出用となり,国内需要のほとんどが西側資本が生産するカザフ原油に頼るという状況は政策的にも認められ

ないはずである。

3.6.その他~現実性ないアフガン原油パイプラ

イン米国のアフガン攻撃に関連して,米国の隠された意図として,中央アジアの石油を国際市場に搬出するルートとしてアフガニスタンを確保

― 30 ―石油/天然ガス レビュー ’02・7

Page 8: カスピ海原油輸送に関する問題 - JOGMEC石油・天 …...Kashgan East 1,Kashgan West 2の2本の試 掘に成功しており,2002年中にKashagan East に2本の掘削が予定されている。2本の試掘結

する狙いがあるといった解説が度々メディアに登場するが,現時点ではその可能性は全くない

と言って良い。現在相当規模の石油埋蔵が確認されているアゼルバイジャンやカザフスタン北西部からアフガニスタン経由パキスタンルートは,トルコや黒

海経由に比べて距離が約2倍あり,経済性が全く見込めず(8ドル/bbl程度の輸送コストとならざるを得ない。),またアフガニスタン北側のトルクメニスタンでは,パイプライン建設に値するような大規模油田は未だ確認されていない。この地域はガス胚胎地域であり(この地域

の石油生産量は1万b/dと殆どゼロに近い。ウズベクの分を含めても20万b/d程度),今後も大油田が発見される可能性が高くないだけでな

く,新規の探鉱活動自体も不活発である。90年代半ばのUnocal社などによる石油パイプライン構想は,天然ガスのパイプラインがもし出来れば,その後探鉱して大油田が更に発見された場合に可能性が考えられる,或いはカザフスタンや西シベリア原油が大幅増産されれば,これを搬出する補助的なルートとすると言うもので,その条件が満たされる可能性は当面殆どなくなった。また,天然ガスパイプラインについても周辺国の需給を考慮すれば,実現は困難で

あろう。(石油/天然ガスレビュー2002年5月号112頁参照)

4.米露「パワーゲーム」は,より実利的な関

係へ

90年代半ばから米国がこの地域の石油投資,特にパイプライン経路に政治介入を積極的に行ってきたことから,石油を巡る”グレートゲーム”の再来であり,”列強”がその利害をむき出しにした資源争奪戦を行っているとの見方が我が国では根強い。しかし,これは全く誤った見方である。確かにロシアは,カスピ海地域への開発,パイプライン事業に関わることにより,①資源確保②パイプラインによるタリフ収入③エネルギーを通じた旧ソ連邦諸国への影響力の継続といった具体的なメリットがあり,これはソ連崩壊後むしろロシアとしては守るべきもの

であったという認識が強くある。しかし,米国が「エネルギー政策として」この地域に拘るその第一の目的は,この地域の資源をイランやロシアによって将来政治介入されることなく自由に国際市場(地中海)に搬出させる様な輸送路の確保,ないしはイラン経由でホルムズ海峡の中に流れて実質的な”中東原油”とならない様にする事であり,第二にこの地域に安定的な投資環境を確立させて,国際石油企業による資源開発投資がスムースに行われるようにすることである。どちらもカスピ海原油の対中東原油バランサーとしての位置づけ,換言すれば将来の国際石油市場の柔軟性・安定性の確保を狙ったものである。この点については,米国の考え方は徹底して市場主義(投資環境整備)であって,囲い込みを目指すものではない。この「エネルギー政策」と,独立を果たした中央アジア諸国のロシアからの政治・経済的独立という国務省,国防省筋による地政学的な外交・軍事戦略とが,「エネルギー政策」と渾然一体となって展開されたがために,「米国が帝国主義時代の様な資源確保策に走っており,米系メジャーズの権益を国益として追求しようとしている」と言ったよう

な時代錯誤の誤認も生じたと考えられる。カスピ海地域で主要な石油投資を行ってい

る,換言すれば主導的地位にある石油企業は,どちらかと言えば米系企業と言うよりは,BP,

ENI,Total,Shellと言った欧州系企業であり,米系メジャーのために米国政府が積極政治介入していると言う見方は,物事の極一面だけに焦点を当てた見方である。しかも,今後この地域から輸出される石油の殆ど全ては欧州に出荷されることが確実であり,米国向けや日本向けに輸出されることは,距離が遠くタンカーフレートが高いために例外的な事例に留まると考えられている。また,米国が強く政治的に押し

ているMEPのコストは相対的に高く,米系石油企業はむしろ米国政府が強硬に反対しているコストの安いイランルートの実現を強く望んでいるが,この点でも米国石油企業の利益擁護を主目的として米国政府が政治介入していると言

う見方は成り立たない。エネルギー大国としてのロシアは既にOPEC

― 31 ― 石油/天然ガス レビュー ’02・7

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政策の脅威となるほどに原油生産量を回復し,中期的にはマーケットにおけるプレゼンスを強めていくことが予想される。ロシアにとって,エネルギー協力は西側との政治経済協力の重要

なカードであり,EUとはエネルギー安全保障に関する協議を進めてきた。同様に2002年5月の米露首脳会談でのエネルギー協力確認は,両国のより実利的な関係構築を示していると言えよう。ロシアの原油輸出拡大,戦略的備蓄制度

の検討は,米国にとってカスピ海地域と同じく「対中東バランサー」となりうるものとして歓

迎される。カスピ海のパイプライン建設についても、もはやかつての米露の「勢力争い」といった政治思惑的な要因ではなく、より経済性に基づくフ

ィジビリティが評価されるはずで、第二CPCパイプライン等ロシアを経由した新パイプライン

構想にも米国は反対しない見通しである。

― 32 ―石油/天然ガス レビュー ’02・7

事業内容�当初個々の油田開発を対象に,3グループが契約交渉を実施していたが,アゼルバイジャン政府により共同開発に調印(1993年6月)。期待埋蔵量46億bbl。1997年11月から試験生産開始試験生産約12.4万b/d(2001年8月現在)。8月以降、本格開発(Phase-1)へ移行。日本企業:ITOCHU Oil Exploration(Azerbaijan) Inc(伊藤忠石開100%)�期待埋蔵量21億bbl。試掘1号井ガス層発見。2号井ガス、コンデンセート発見。3号井出油。しかし,CIPCOはKarabakh構造につき原始埋蔵量73百万bbl,可採埋蔵量約22百万bblと発表し,商業量の原油発見に到らず,撤退。�期待埋蔵量14億-26億bbl。開発・生産期間30年。開発費総額見込み41億㌦。1998年7月1号井開坑。99年7月期待可採埋蔵量14兆~25兆のガス田発見。��開発・生産期間30年。期待埋蔵量9.8-14.4億bbl。試掘井3坑掘削後、2000年3月PSA終結,撤退。��日本企業:シエコ北アプシェロン石油(伊藤忠石開52.8%,太陽石油5.2%,石油公団42.0%)�期待埋蔵量3.7-7.3億bbl,14.5BCF。探鉱期間:3年<探掘井2坑を掘削>,開発生産期間:30年��1998年1月3D震探完了,2000年10月に試掘1号井掘削開始,結果はドライ。�期待埋蔵量5.9~11億bbl。探鉱期間:4年<探掘井2坑掘削>(追加探鉱期間2年<探掘井2坑掘削>)1998年7月3D震探開始,3D解釈の結果,99年9月LukAlco撤退。�

アゼルバイジャン共和国領カスピ海における主なPS契約締結状況�

No�1���������2�������3�����4������5�����6�����

鉱区名(対象油田名)�Azeri, Chirag, Gunashli 油田��������Karabakh鉱区�������Shakh-Deniz鉱区����Ashrafi・Dan�Ulduzu鉱区�����Lankaran Deniz,��Talysh Deniz鉱区��Yalama/D-222鉱区����

参加会社名・権益比率�SOCAR 10%, bp 34.1%,, UNOCAL 10.05%, LUKoil 10%, Devon Energy 4.8%, Statoil 8.56%, Exxon 8%, TPAO 6.75%, 伊藤忠 3.92%, Delta Hess 3.76%���SOCAR 7.5%, Pennzoil 30%, LUKoil 12.5%, LUK Agip 45%, Agip 5%�����SOCAR 10%, BP 25.5%, Statoil 25.5%, TPAO 9%, TotalFinaElf 10%, LUK Agip 10%, OIEC(イラン) 10%�SOCAR 20%, BPAmoco 30%, UNOCAL 25.5%, CIECO 20%, Delta Hess 4.5%���SOCAR 25%, TotalFinaElf 55%, OIEC 10%, Wintershall 10%���SOCAR 40%, LUK Arco 60%��(LUKoil 32.4%, Arco 27.6%)��

契約調印時期�1994年9月�

��������

1995月11月�������

1996年6月�����

1996年12月�【終結】�

����

1997年1月�����

1997年7月�����

オペレーター�AIOC�(Azerbaijan International Operating Company)������CIPCO��(Caspian International Petroleum Company)���BP�����NAOC�(North absheron Operating Company)��TotalFinaElf�����LUK Arco�����

≪沖合≫�

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期待埋蔵量7.3億bbl~水深100~500m。�探鉱期間:4年<探掘井2坑>,追加探鉱2年<追加探掘井1坑>�プロジェクト期間:25年(5年の延長可)1998年2~5月:3D震探実施。�2001年8月試掘1号井開坑。�期 待 埋 蔵 量 石 油 3 億 b b l , ガ ス700BCF��探鉱期間:3年<探掘井1坑>(追加探鉱期間2年<探掘井2坑>)�生産期間:20年�2D震探350-400kmを1998年4月に実施,2001年4月試掘1号井掘削開始,結果はドライ。��期待埋蔵量ガスコンデンセート1.6億bbl,ガス13Bcf, 石油14.6億bbl。��探鉱期間3年(2坑掘削,3D)+追加探鉱期間2年(2坑掘削)��生産期間20年�1998年5月~7月3D震探実施。2000年12月試掘1号井掘削開始,結果不成功。�1997年10月Basic commercial principles of the agreement調印。三井グループ権益15%取得。��1998年2月 アリエフ大統領訪日時基本合意書に調印。�1998年6月 PS調印。期待埋蔵量:3.7~7.3億bbl��2000年4月試掘1号井開坑、結果はドライ。�2001年5月試掘2号井開坑、結果はドライ。日本企業:Mitsui KurDashi Exploration B.V.(三井石油開発37.6%,三井物産12.6%,石油公団49.8%)�期待可採埋蔵量10~25億bbl。538km2

の3D実施。第1坑は2000年第三四半期開坑予定。�総開発費;15~25億ドル�1997年8月に基本合意書を調印(ワシントン)。�2000年3月RD/She l lがLa smo,Central Fuel Companyから合計25%の権益を36百万ドルで買収。�2000年12月に試掘1号井開坑、高圧のためサスペント。��2001年7月リグ交換後,リエントリーするも再びサスペント。�1997年12月初,SOCARはBal Abihaプロジェクトの探鉱についてClosed biddingを実施。水深700~900m。�*1996年~1997年にJNOC及び日本コンソーシアムがスタディを実施。��2001年7月,地震探鉱作業中にイランから威嚇行為を受け,作業を中断。��

7������8��������9�������10������������11�������������12�������

Nakhichevan鉱区�����Oguz鉱区��������Absheron鉱区�������Kurdashi鉱区������������Inam鉱区�������������Araz, Alov & Sharg鉱区������

SOCAR 50%, ExxonMobil 50%������SOCAR 50%, ExxonMobil 50%��������SOCAR 50%, Chevron 30%,TotalFinaElf 20%������SOCAR 50%, Agip 25%, Mitsui 15%,TPOC 5%, Repsol 5%����������SOCAR 50%, BP 25%, RD/Shell 25%������������SOCAR 40%, ExxonMobil 15%, BP 15%, Statoil 15%, TPAO 10%, Alberta Energy 5%����

1997年8月������

1997年8月��������

1997年8月�������

1998年6月������������

1998年7月�������������

1998年7月�������

ExxonMobil������ExxonMobil��������Chevron�������Agip������������BP�������������BP�������

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97年9月に基本合意書に調印。��98年12月25日,PS契約調印。�2001年10月試掘1号井開坑。��日本企業:日本アゼルバイジャン石油(JAOC)(石油資源開発25.0%,インドネシア石油13,9%,伊藤忠石油開発8.3%,帝国石油8.3%,石油公団44.5%)�1999年4月にアリエフ大統領訪米中にPS契約調印。��期待埋蔵量約10億bbl(SOCAR評価)�2000年4月議会にて承認。�1999年4月にアリエフ大統領訪米中にPS契約調印。��期待埋蔵量約8~11億bbl(SOCAR評価)当該鉱区は,イランとの境界線付近に位置し,イラン側は昨年12月に同鉱区についてRD/Shel l、LasmoとSeismic Option契約を結んでおり,それにアゼルバイジャン側が対抗して昨年12月に入札を行った経緯がある。現在,議会の承認待ち。�

13�������14����15

YananTava, Atashkyah, Mugan Deniz鉱区����Zafar-Mashal鉱区���D-43,44,73鉱区�(Lerik-Deniz)�

SOCAR 50%, 日本アゼルバイジャン石油 50% ������SOCAR 50%,ExxonMobil 30%,Conoco 20%���SOCAR 50%,ExxonMobil 30%,BP Amoco 20%(予定)�

1998年12月�������

1999年4月����

1999年4月�

日本アゼルバイジャン石油������ExxonMobil����ExxonMobil

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カザフスタン共和国領カスピ海周辺における主な石油契約締結状況�

No�1��

鉱区名(対象油田名)�カスピ海沖合Kashagan, Aktote, Kalamkas Sea, Kairan, Kashagan South West field��

参加会社名・権益比率�Agip16.66%, British Gas16.66%, Royal Dutch-Shell16.66%, ExxonMobi16.66%l, TotalFinaElf16.66%, Inpex8.33%, Phillips8.33%��

契約調印時期�1993年12月�

オペレーター�Agip KCO��(Agip Kazakhstan North Caspian Operating Company)��

事業内容�93年12月:Agip他外国企業7社はカスピ海北部海域での地質調査のためのコンソーシアムを結成し,カザフスタン政府と契約を締結。�94年9月~96年8月:カスピ海北部地域で地震探鉱26,180kmを実施(300百万US$)。地震探鉱終了後,KCS社(カザフスタン)を加え,コンソーシアムを結成。�97年11月:カシャガン構造を中心に12鉱区を選定し,PSAを締結(98年4月発効)。�98年9月 KCSからInpexへの権益譲渡契約を締結�99年9月 試掘1号井(Kashagan East-1)開坑。�00年7月 試掘1号井テスト成功�00年10月 試掘2号井(KW-1)開坑。�01年5月 評価1号井(KE-2)開坑。�01年8月 BP/Statoilが権益売却�01年11月 評価2号井(KE-3)開坑。�日本企業:インペックス北カスピ海石油�(インペックス45.0%,石油資源開発2.5%,三菱商事2.5%,石油公団50.0%)�

�≪沖合≫�

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No�2������������������������3��

鉱区名(対象油田名)�Tengiz & Korolevskoye fields(埋蔵量:石油90億bbl, ガス3Tcf)��������������������Karachaganak oil-gas-condensate field��(石油&コンデンセート24億bbl, ガス16Tcf)���

参加会社名・権益比率�Tengizchevoil JV (Chevron 45%, Mobil 25%, Kazakoil 25%,LukArco 5%)��*Tengiz field の周辺部2,462km2についても探鉱ライセンスの公式承認を待っている状況。����������������事業体制:Karachagnak Operating Structure(KOS)��<Agip 32.5%, BG 32.5%, Texaco 20%, Lukoil 15%> *Kazakgazが85%のoverriding interestを持つ。��

契約調印時期�1990年������������������������

1997年11月�

オペレーター�Chevron������������������������Agip��

事業内容�79年:テンギス油田発見。(カスピ海東部に位置)�90年:隣接するコロレフ油田とともにテンギス・コロレフ両油田の開発に関する協定をソ連政府とChevron社との間で調印。�91年末:ソ連解体後,両油田の所有権はカザフスタン政府に移行し,Chevron社は改めて同国政府と交渉実施。�93年4月:「カザフネフチェガス(テンギスムナイガス)→Kazakoil」と出資比率50対50の合弁企業「Tengizchevoil」を設立。期間40年,初期投資15億ドル,総事業費90億ドル。�96年5月:Mobil社はカザフスタン側のシェア50%(全体の25%)を取得。�97年1月:Lukoil社はChevron側のシェア10%(全体の5%)を取得。�98年1月:Tengiz & Korolev fieldsにて3D地震探鉱開始。(1,155km2),T-5050坑井(深堀)を掘削開始。�2000年5月:ChevronはKazakhoilから5%を購入。�*2001年は368,000b/dで生産中�79年:同石油-ガス-コンデンセート田発見。ソ連時代に国境を挟んでロシア側に位置するオレンブルグ・ガス化学コンビナートに原料を供給するためにガスプロムによって開発。その後,ソ連邦の解体により同コンビナートとの関係が切れ所有権もカザフスタンに移行。�92年7月:カザフスタンは国際入札を実施,結果Agip,BGの企業連合が開発権を落札。�94年12月:GazpromがBG,Agipと同等の条件で開発に参加決定,輸送と加工を担当。�95年3月:開発についてカザフ政府と合意。(Agip,BG42.5%, Gazprom15%)�96年7月:LukoilはGazprom権益15%の取得につき合意。�97年8月:TexacoはAgip,BGより20%の権益を取得。GazpromはLukoilに権益を正式譲渡。�97年11月:ナザルバエフ大統領訪米時,PSA調印。�99年10月:3D震探 830km2収録。�99年12月:PS契約改定。AtyurauへのP/L建設盛り込む。�*01年の平均生産量はコンデンセート100,000bc/d, ガス:500,000Mscf/d�

�≪陸上≫�

Page 14: カスピ海原油輸送に関する問題 - JOGMEC石油・天 …...Kashgan East 1,Kashgan West 2の2本の試 掘に成功しており,2002年中にKashagan East に2本の掘削が予定されている。2本の試掘結

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事業内容�ロシア,カザフ双方が領有権を主張する海域であったが,ロシア側が先行して探鉱活動を開始。�1999年6月:第1試掘井開坑,2000年5月Khvalynskayaで出油・ガス�2000年6月:第2試掘井開坑,10月Shirotnayaで出油��2001年5月 ロシア・カザフ共同開発表明。��

ロシア共和国・カザフスタン共和国領境界部のカスピ海における主な石油契約締結状況�

No�1�������2

鉱区名(対象油田名)�Severny Caspian鉱区(埋蔵量:22億bbl)(ロシア)����Kurmangazy structure��

参加会社名・権益比率�Lukoil�������Royal Dutch/Shell Group, TotalFinaElf and Statoil ASA��

契約調印時期�1998年4月�

������

未定�

オペレーター�Lukoil���������

≪沖合鉱区≫�