信濃川をめぐる弥生時代の...

信濃川をめぐる弥生時代の越後と信濃の交流

(株）吉田建設笹澤正史

平成28年度史跡古津八幡山　弥生の丘展示館企画展４関連講演会　信濃川をめぐる弥生時代の越後と信濃の交流　笹澤正史

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◎弥生時代中期における越後と信濃の交流の活性化

• 弥生時代中期に北陸西部から小松文化の担い手が海岸伝いに北上し、新潟県内で本格的な稲作農耕集落が日本海沿岸に成立。

• 小松文化の北上に呼応して、信濃の栗林文化の担い手が新潟県の日本海沿岸に進出。

→北陸と信濃の交流拠点となる上越市吹上遺跡の成立(小松式土器８割、栗林式土器２割）

• 吹上遺跡をはじめ、柏崎市下谷地遺跡、長岡市大武遺跡などの大規模玉作遺跡が相次いで成立。玉作遺跡を核とした北陸と信濃・東北との交流が本格化する。→隣接地域の土器が新潟県各地で出土するようになる。


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図１．新潟県への稲作農耕文化(小松文化)の波及と周辺地域との交流


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図２．新潟県における弥生時代中期の遺跡分布


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図３．上越市吹上遺跡の遺構と遺物図４．長野県に運ばれた青銅器と玉


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図５．新潟県における弥生時代中期中頃の遺跡と土器型式の分布

国道49号

国道252号

国道17号

国道117号

国道292号

国道18号

国道8号


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図６．吹上遺跡出土小松式土器と栗林式土器


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図７．小松式土器(北陸系)と栗林式土器(信州系)及び川原町口式土器(東北系)の比較


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• 弥生時代中期中頃に成立した新潟県内の日本海沿岸の中核集落が相次いで衰退

• 上越地域の越後と信濃の交流拠点であった吹上遺跡で小松式土器(３割弱）と栗林式土器(７割)の比率が逆転

→集落内の構成員が大きく変化する

• 内陸の信濃川水系を中心に栗林文化が拡散し、活発な活動痕跡を残す

• 東北系土器が信濃川水系沿いに栗林式土器と共伴して出土する例が増加する

◎弥生時代中期後半における信濃川流域への栗林文化の拡散


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図８．新潟県における弥生時代中期後半の遺跡と土器型式の分布

国道49号

国道252号

国道18号

国道117号

国道17号国道292号

国道8号


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図９．吹上遺跡出土小松系土器と栗林式土器及び川原町口式土器


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◎弥生時代後期以降の信濃川流域における交流状況

• 弥生時代後期前半に東北系の天王山文化が南下し、信濃川水系に多くの集落が出現する。その影響は、信州の一部まで及ぶようになる。

→長野市吉田高校グランド遺跡で天王山式土器が出土

一方、弥生時代中期後半に信濃川水系に拡散した栗林文化は、現在の魚沼郡南半まで後退する。

• 天王山式(系)土器と信州系土器は高地性環濠集落など高地の遺跡や長岡市松ノ脇遺跡を除き同じ遺跡で出土することが稀で、同じ地域にあっても別個に集落を築いて活動していた様子が見られる。

• 日本海沿岸は、北陸系文化の強い影響下にあるが、内陸の信濃川水系沿いは、東北及び信州系文化の影響下にあったようである。


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• 東北系土器と信州系土器が新潟県内で共伴することは稀であるものの、威信財や装身具に鹿角装鉄剣(木島平村根塚遺跡、新潟市古津八幡山遺跡)や多量のガラス小玉(根塚遺跡、長野市長野女子校校庭遺跡、村上市山元遺跡）、鉄石英製管玉を所有するといった共通点が認められ、相応の交流があったことが推測できる。

• 弥生時代後期前半から後半にかけて信州系土器の新潟県内での出土例は、高地性環濠集落を除き極端に少ないが、上記のような装身具等の出土状況から一定の交流は続いていたと考えられる。

• 再び活発な交流状況が確認できるようになるのは、弥生時代終末期から古墳時代初頭にかけてで、高地の遺跡を中心に信州系土器の出土が増加する。このことからこの時期、高地の遺跡を舞台に信州と越後との交流が盛んであった状況が垣間見れる。


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図10. 新潟県における弥生時代後期の遺跡と土器型式の分布

国道49号

国道252号

国道17号

国道117号

国道18号

国道292号

国道8号


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図11. 法仏式土器(北陸系)と箱清水式土器(信州系)及び天王山式土器(東北系)の比較


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図12. 新潟県出土の信州系土器と長野県出土の東北系土器及び北陸系土器


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図13. 日本海沿岸の鉄器の流通状況


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図14. 新潟県内の高地性環濠集落と平地の環濠集落


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図15. 新潟県における高地性環濠集落及び高地性集落の消長


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図16. 新潟県内の弥生時代後期の墳墓と鉄製品

裏山遺跡出土の鉄製品


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図17. 赤い土器(箱清水式土器)と長野県内出土の弥生時代後期の鉄製品や装飾品


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図18. 長野県木島平村根塚遺跡の弥生時代後期の墳丘墓


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図19. 根塚遺跡から出土した土器、鉄剣、玉


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図20. 長野市長野女子高校校庭遺跡から出土した箱清水式土器と北陸系土器


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◎越後と信州との往来に際して幹線道路の役割を果たした信濃川沿いの道

弥生時代中期に北陸西部の小松文化が新潟県内へ流入し始めたことを契機として、稲作農耕文化に付随する様々な情報や文物を獲得するために、隣接地域の人々が徐々に県内に訪れるようになる。その主要な経路のひとつとして、内陸部の信濃川流域が利用されるようになったと考えられる。特に信州方面と会津、下越方面の人々に重要視され、北陸方面との交流のみならず、会津・下越と信州を結ぶルートとしても機能するようになったようである。信濃川流域沿いの遺跡から出土した考古学資料は、そうした往時の人々の交流状況を推測させてくれる。


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