esmo-acf cervical cancer: guide for patients - … cancer: a guide for patients - information based...

34

Upload: doandien

Post on 25-Jul-2019

216 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided
Page 2: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 1

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

子宮頸癌:患者さんの手引き

ESMO 診療ガイドラインに基づいた患者さん向け情報

日本語訳版発行にあたり

がん患者さんの最も切実な要望の一つが、ご自身の罹患したがんに関する正確な治療情報を得

ることです。日本癌治療学会では各種学術団体が発刊したがん関連診療ガイドラインの公開、が

ん治療全般に関わる横断的がん治療支持療法に関する診療ガイドラインの策定などを行って参り

ました。一部のがんでは患者さんやそのご家族にわかりやすい「一般向け」の診療ガイドライン

が発刊されていますが、それらが網羅する領域はまだ十分とは言えない状況です。

がん患者さんにとって最も大切な標準治療について分かり易く解説したガイドラインを提供す

る目的で、本学会前理事長の西山正彦先生と当時の欧州臨床腫瘍学会(EUROPEAN SOCIETY OF

MEDICAL ONCOLOGY, ESMO)会長 ROLF A. STAHEL 先生が合意し、「ESMO/ANTICANCER

FUND GUIDES FOR PATIENTS日本語訳」を発刊することとなりました。日本と欧州では使用可

能な抗腫瘍薬や手術方法なども若干異なりますが、病態の理解、治療の流れなど患者さんにわか

りやすく解説された診療ガイドラインは大変貴重な情報源となることが期待されます。また、本

邦においてこうした患者さん向けの診療ガイドラインを発刊する後押しともなり、患者さん向け

ガイドラインのあり方についても大変参考になるものと期待しております。本シリーズの翻訳、

作成に多大なるご尽力を頂いた日本癌治療学会理事、教育委員会、編集委員会の皆様をはじめ、

ご支援を下さったすべての皆様に心より感謝申し上げます。

平成 28年 7月 日本癌治療学会

理事長 北川雄光

この度、ESMO (欧州臨床腫瘍学会)の発行する“ESMO GUIDES FOR PATIENTS”を

「ESMO 患者さんの手引き」として日本語訳し、日本の癌患者さんに提供することになりまし

た。

最近の癌治療の発展はめざましく、癌患者さんにとっては数多くの治療法の選択が可能になっ

てきています。患者さんにとっては朗報です。しかし、いっぽうでは大量に発信される情報の中

で、癌に携わる医療従事者と患者さんとの間での知識のギャップが問題になっています。あふれ

かえる情報の中で、癌に対する正確な情報を整理し、自分に最適な治療法を見つけ出すことは本

当に難しいことであろうと思います。このような情報の海の中で迷っている癌患者さんに対する

ガイド役として、この「ESMO 患者さんの手引き」は作成されています。

この手引きは“ESMO/ANTICANCER FUND GUIDES FOR PATIENTS” を、出来るだけ忠実に

日本語訳することにしてあります。ヨーロッパと日本では、保険制度を含む医療事情が若干異な

っていますので、この手引きがそのまま日本の患者さんに当てはまらないこともあろうと思いま

す。もし判断に困ることがありましたら、主治医の先生に直接お聞きいただければと思います。

この手引きが日本の癌患者さんにとって有用な案内役となることを期待しています。

最後に、この手引きの作成に尽力いただいた日本癌治療学会教育委員会、そして編集委員会の先

生方に心から感謝したいと思います。

平成 28年 7月 日本癌治療学会

編集委員会委員長 小川修

Page 3: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 2

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

子宮頸癌:患者さんの手引き

ESMO 診療ガイドラインに基づいた患者さん向け情報

翻訳 東京大学医学部産科婦人科:

川名敬、有本貴英、足立克之、森繭代、鶴賀哲史

この患者さん用手引きは、患者さんとご家族が、子宮頸癌がどのような病気であるかをよ

り理解し、子宮頸癌の状態に応じた最善の治療を受けることができるように、がん克服基金

(Anticancer Fund)により準備されたものです。患者さんには、ご自身の子宮頸癌の病状

や病期によって、どのような検査や治療が必要であるかを担当医に聞いていただくことをお

勧めします。ここに掲載されている医学的な情報は欧州臨床腫瘍学会(European Society

for Medical Oncology: ESMO)の子宮頸癌のための診療ガイドラインに基づいたものです。

この患者用手引きは ESMO の協力のもとで作成され、ESMO の許可のもと配布されていま

す。この手引きは医師により執筆され、専門医向け診療ガイドラインの主要な著者を含む、

ESMO 所属の二名の腫瘍医によって監修を受けています。また、ESMO のがん患者ワーキ

ンググループの代表者にも監修を受けています。

がん克服基金(Anticancer Fund)に関する情報を更に知りたい場合は以下のサイトへア

クセスして下さい: www.anticancerfund.org

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)について更に知りたい場合は以下のサイトへアクセスして下さ

い: www.esmo.org

*が付いた用語に関しては、巻末に注釈があります。

【日本語版を翻訳した日本癌治療学会より注記】

この手引きは欧州臨床腫瘍学会(ESMO)により 2011 年に作成されたものを、ESMO と

の契約に基づき、日本癌治療学会が原文に忠実に日本語に翻訳したものです。

Page 4: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 3

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

目次

子宮頸癌の定義 ................................................................................................................................................................. 4

子宮頸癌の頻度は? ....................................................................................................................................................... 5

子宮頸癌の原因は? ....................................................................................................................................................... 6

子宮頸癌の診断は? ....................................................................................................................................................... 7

適切な治療を受けるには何が重要か? ............................................................................................................ 10

治療の選択肢として何があるの? ...................................................................................................................... 13

治療の副作用の可能性として何があるの? ................................................................................................... 21

治療後にどんなことが起き得るか? ................................................................................................................. 24

用語の説明 ...................................................................................................................................................................... 26

このテキストは Prof. Jan Bernheim (the Anticancer Fund) によって書かれ、 Dr. Gauthier

Bouche (the Anticancer Fund)、Dr. Svetlana Jezdic (ESMO)、 Dr. Christine Haie-Meder

(ESMO)、Prof. Cristiana Sessa (ESMO) 、Dr. Magdalena Grce (European Cervical Cancer

Association) によって監修されています。

Page 5: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 4

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

子宮頸癌の定義 本定義はアメリカ国立がん研究所(NCI)の許可を得て引用しています。

子宮頸癌は、子宮頸部の組織にできる癌です。子宮頸部とは、子宮と腟をつないでいる臓器

です。通常、進行が遅く、症状がない癌ですが、子宮頸部細胞診*で見つけることができま

す。子宮頸部細胞診検査とは子宮頸部から擦り取られた細胞を顕微鏡下で調べる方法です。

子宮頸癌はほとんどの場合ヒトパピローマウィルス(HPV)*というウイルスの感染によ

って引き起こされます。

女性生殖器の解剖。女性生殖器の臓器は子宮(子宮体部と子宮頸部)、卵巣、卵管、腟を含みます。子宮には子宮筋層とよばれる筋肉の外層と子宮内膜とよばれる内層があります。

子宮に発生するその他の癌に関する重要事項

他の種類の癌が子宮体部に生じることがあります。そのほとんどは、子宮内膜癌です。この

タイプの癌の診断や治療法は子宮頸癌とは異なります。子宮内膜癌に関する情報を更に知り

たい場合はこちらへアクセスして下さい。

http://www.anticancerfund.org/cancers/endometrial-cancer

この患者さん用手引きは、子宮頸癌に関することのみ記載しています。

Page 6: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

子宮頸癌の頻度は?

子宮頸癌は女性が罹る癌の中で3番目に発症頻度が高い癌です。ヨーロッパでは 2008 年

の 1 年間で女性 10 万人に 10.6 人の割合で子宮頸癌と診断されました。これは女性が診断

される全てのがんのおよそ 4%を占めます。ヨーロッパの女性が生きている間に子宮頸癌を

発症する確率は 1%近くです。子宮頸癌の発生に最も関連の深いタイプのヒトパピローマウ

イルス(HPV)*の感染を予防できるワクチンが使えるようになっており、将来、子宮頸

癌の頻度は低下するようになってくるでしょう。

子宮頸癌のリスクは、行政検診プログラムが進んでいない東ヨーロッパ(特にセルビア、ル

ーマニア、ブルガリア、リトアニア)で高くなっています。残念なことに、検診プログラム

の状況は発展途上国では更に悪く、新規患者の 85%がそれらの国から発症します。発展途

上国では先進国に比べ検診や治療を受けることが難しいので、死亡率が 10 倍高くなってい

ます。さらに、現在のところ、ワクチンによる子宮頸癌予防は費用が高く、依然として世界

の多くの女性は利用できそうにありません。

Page 7: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 6

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

子宮頸癌の原因は?

基本的に、全ての子宮頸癌は特定のタイプのHPV*(皮膚または性器に疣贅(いぼ)を引

き起こすウイルスと同じ仲間のウイルス)によって引き起こされることが明らかになってき

ています。HPVの感染は直接接触によって起こり、子宮頸部の場合、一般的には性的接触

によって起こりますが、皮膚と皮膚との接触によっても起こることがあります。HPVは一

般的な集団においてみられる、ありふれたウイルスです。ほとんどの成人女性は、一生のど

こかでHPVに感染していますが、大多数の場合、なんの病気の兆候を起こすこともなく、

6か月~2年以内に感染が治まっていきます。しかしながら、まれにHPV感染が治まらな

い場合があり、その場合、HPV 感染が持続して、子宮頸癌の発症につながる子宮頸部の前

癌病変が出現する危険性が高まります。いわゆる(発癌性の、癌を引き起こす)ハイリスク

型HPVの中で、特にHPV16 型と18型は、世界中の子宮頸癌の患者さんに最も高い頻

度で見られるタイプです。ハイリスク型HPVの持続感染は子宮頸癌の発生に必要ですが、

これだけでは子宮頸部の前癌病変の発生には不十分です。ハイリスク型 HPV に感染してか

ら子宮頸癌が発症するまでには数年~数十年はかかるのです。すなわち、子宮頸癌の発症に

はその他の要因も必要です。その要因とは、HPVに感染するリスクと、HPV に感染した

後に子宮頸癌に進行するリスクであり、このいずれかが子宮頸癌の発症にかかわっているの

です。:

・HPV*に感染する危険因子

‐複数のパートナーとの避妊なしの性行為または複数のパートナーがいる男性との性行為

‐早い年齢での性行動の開始

‐ホルモン避妊薬の長期使用

‐複数回の妊娠

‐衛生状態の悪さ

‐その他の性感染症(例 クラミジアトラコマチス、Ⅱ型単純ヘルペス)

・HPV*感染後に子宮頸癌を発症する危険因子

免疫防御機能が低下*している状態: ヒト免疫不全ウイルス(HIV*)の感染や免疫

系*に作用する薬での治療による免疫不全*の状態。正常な状態では免疫システム*が

HPV 感染を排除し、子宮頸癌が発生するリスクを下げています。

・その他の免疫機能や健康状態を悪化させる因子

喫煙、偏った食生活(例えば果物や野菜の摂取不足)、不規則な睡眠パターン、運動不

注意点として、それ自体には発癌の危険を高める効果はないかもしれないものの、上記の危

険因子に強く関係する補助的な危険因子があります。例えば、ホルモン避妊薬は性行動の開

始が早い女性に使われることが多く、貧困層や発展途上国に住む人々は、公的医療サービス

の利用が難しく、定期的な婦人科検診を受けられないため、リスクが非常に高いと言えます。

婦人科診察(内診)*にて子宮頸部表面の細胞を綿棒で拭う検査が行われば、子宮頸癌を早

期発見することもできます。早期に発見された場合、子宮頸癌の治療は容易で、効果的です。

したがって、子宮頸癌のために命を危険に晒すことになる最も重要な危険因子は、婦人科診

察*と子宮頸部細胞診*を定期的に受けるようにしないことです。

Page 8: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 7

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

子宮頸癌の診断は?

子宮頸癌はこのような時に疑われます:

婦人科診察*で異常が発見された時。

子宮頸部から採取した細胞に重度の異常を認めた場合。

月経期間以外での出血。

性交後の出血。

子宮頸癌の診断は以下の診察・検査によって行われます。

1. 診察 診察では、医師による視診と触診があります。医師は腟内に腟鏡*を挿入し子宮頸部を直接、

観察します。また*腟直腸双合診(双手診)*により腫瘍の場所や大きさ、骨盤内の他の臓器

へ病気が広がっているかを評価します(骨盤内診察、内診*)。一方で明らかな病気の無い

健康な女性に対しても、子宮頸部の細胞を採取し顕微鏡での検査を行います(細胞学的検査

*)。これらの検査が痛みなどで困難な場合や腫瘍の拡がりがはっきりしない場合にはこの

検査を麻酔のもとで行うこともあります。

2. 子宮頸部細胞診*(パップスメア) 1 前癌病変は長年、何の自覚症状もないこともありま

す。進行もゆっくりなので、癌になる前に早期発見

し治療できる機会があります。子宮頸部は婦人科検

診で視診、触診が可能であり、子宮頸部の表面から

簡単に細胞を採取することができ、スメア(塗抹標

本)を作り、子宮頸部から剥がされた細胞に対して

病理学的検査*を行います。この検査をパップスメア

*または子宮頸部細胞診*と呼びます。

これらの細胞を検査室で顕微鏡を用いて観察することにより、前癌病変を早期に診断するこ

とが可能になっています。前癌病変として、異形成*と呼ばれる子宮頸部表面の細胞異常が

あり、これを長年放置すれば癌になる可能性があります。また(異形成よりさらに進んだ)

初期の子宮頸癌も、より危険な状態である浸潤癌になる前に容易に見つけることが出来ます。

子宮頸部細胞診*(パップスメア)で得られた細胞は以下のように分類されます:

正常。

軽度の異形成*を示す。これらの多くは HPV*(ヒトパピローマウイルス)の

感染によるものです。軽度異形成*は軽度扁平上皮内病変(LSIL)、または

軽度子宮頸部上皮内腫瘍(CIN1)と呼ばれることもあります。これらは通常

は自然に退縮*し治っていくものですが、より高度な異形成*に悪化していく

こともあります。

1 いくつかの発展途上国では子宮頸部細胞診は行われていません。そのような国では、酢酸を子宮頸部に付け

て直接病変を見る検査法が代用になることがあります。

Page 9: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 8

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

中等度から高度の異形成*を示す。他の言葉では高度扁平上皮内病変(HSIL)

や中等度~高度の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN2~CIN3)と呼ばれることもあ

ります。これら中等度、高度の異形成は、もし治療しないで放置すれば子宮

頸癌になりうるものです。

子宮頸癌を示す。

腟内に感染がある場合には正確な検査ができないので、感染に対してきちんとした治療が行

われた後に改めて子宮頸部細胞診をやり直します。

細胞診*で診断が困難な場合には、細胞診に加えて HPV*(ヒトパピローマウイルス)の感

染の有無と HPV のタイプを確認します。HPV*タイプの結果はその後の治療計画には必ず

しも影響を与えませんが、どの HPV タイプが感染している細胞診異常なのかで危険性がど

の程度であるのかという情報を得ることできます。

子宮頸部や腟の細胞診検査は25歳から65歳の女性に3年から5年ごとに実施されること

が望ましく、これにより潜在している癌が危険な大きさになる前に発見することができると

考えられます。この細胞診というスクリーニング過程において、異常が発見された女性には、

診断のためのさらなる精密検査を行います。

細胞診で異常を疑われた場合には、組織診(生検*)が必要となります。子宮頸部表面の全

層を含む組織をサンプルとして切除することで、細胞診のように細胞の形だけではなく、病

変がどのような組織構造を取っているかを観察することができます。

3. コルポスコピー(腟拡大鏡検査)*

子宮頸部細胞診*において高度な異常が発見された場合や、細胞診結果に疑念がある場合に

は、コルポスコピー*(腟拡大鏡検査)が必要になります。この検査は内診*の時に同時に行

われ、患者さんは内診の時のように診察台に横になった状態で、医師は腟鏡*を腟内に入れ

て子宮頸部を目視できるようにし、コルポスコープで子宮頸部の観察を行います。コルポス

コープとは拡大レンズのついた双眼鏡に似た機器で、医師は体外から子宮頸部をくまなく明

確に観察することができます。この時、医師がお酢のようなごく弱い酢酸を子宮頸部に塗付

すると子宮頸部の異常が疑われる部分が見えやすくなります。異常が疑われる部分が見られ

る場合には生検*(組織採取)を行うことになります。

4. 組織病理学的検査*

子宮頸部細胞診*(パップスメア)で異常が疑われた時に、さらに

詳しく見る目的で、コルポスコピー*下に行われる検査です。腫瘍

の一部を生検*により採取し、病理医*が検査を行います。病理医は

標本を見て、子宮頸癌であるかを確定診断し、その病変の特徴につ

いて詳しい情報をもたらします。なおこの組織検体はコルポスコピ

ー*中に医師が特殊な器具を腟内に挿入して用手的に採取します。

Page 10: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 9

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

5. 一般的な血液及び尿検査

血液や尿の検体を検査室で分析し、一般的な健康状態を確認したり、貧血*、肝機能障害や

腎機能障害、尿路感染などのような未診断の病気がないかを確認したりします。

6. 画像検査

画像検査は病気の広がりや転移*の有無を確認するため

に用いられています。CT スキャン*、MRI(核磁気共鳴

画像法)*は腫瘍が骨盤内でどれほど広がっているのか、

また骨盤内の太い血管や大動脈に沿って存在するリンパ

節*(子宮頸癌が進展しやすい部位)への転移*があるの

かなどを可視化して確認するために有用ですが、これら

の点において MRI*は CT*より優れていると言われてい

ます。よく行われる補助検査としては胸部 X 線*検査も

あります。また泌尿器系の検査として静脈性腎盂造影検

査が行われます。(泌尿器系とはたとえば腎臓と膀胱を繋げている尿管についてです。尿管

は増大した子宮頸癌あるいはリンパ節*により圧迫されることがあります。)造影剤を静脈

内に*注入することにより泌尿器系(尿管が正常か圧迫されていないか)を X 線検査*で確

認することができます。なおこの腎盂造影検査は事前に血液検査で腎臓が正常であること確

認した後に行われる必要があり、腎機能の低下がある場合には、腎臓への障害を防ぐために

造影剤の注射時に特別な予防的措置を講じなければなりません。

Page 11: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 10

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

適切な治療を受けるには何が重要か?

医師は最善の治療を決定するために、患者さんと癌の両方に関するあ

らゆる側面を考慮しなければなりません。

患者さんに関する情報

年齢と妊孕性に関する状況(今後出産を希望しているかどう

か)。初期の子宮頸癌では、多少リスクがあることさえ承知す

れば、多くの患者さんで子宮を温存することができ、結果とし

て妊娠できる可能性もあります。もし患者さんが子供を望まな

いならば、治療法の選択にあたって妊孕性の温存は考慮しなく

てよいので、最も標準的で効果的な治療を選択できます。

全身の健康状態や手術に耐えうるかどうか:年齢や糖尿病*、心臓病、呼吸器系の障

害といった他の疾患の病状などを考慮して治療法を選択しなければなりません。

癌に関する情報

・ステージ(進行期)の診断

ステージ(進行期)とはその病気が身体の中でどの程度広がっているかを示すものです。医

師はステージを基に、癌の拡がりと患者さんや癌の特性に応じたリスクや予後*を評価し、

今後の適切な治療を選択します。癌がより初期のステージであるほどよい予後が期待でき、

より低侵襲で適切な治療が行われることになります。

ステージの決定は二回行われます。まずは治療を開始する前に、内診などの診察や画像検査

を用いて行われます。これは最良の治療法を決定するためのものです。そして二回目は、手

術を含む治療が行われた場合に、手術によって切除した組織を精査し、治療の妥当性を確認

するために行われます。切除した組織を病理学的に検査*することにより最初に決定したス

テージ(術前臨床進行期)が妥当であったかどうかが確認され、ステージを再考することも

あります。実際、術後の所見から(手術で得られた組織の状態から)、追加の治療が望まし

いことが明らかになることもあります。

以下の表は国際産婦人科連合(FIGO)が定めている子宮頸癌の臨床進行期の定義を示した

ものです。これらの定義はやや専門的すぎる部分もあり、より詳しく医師に説明してもらう

ことをお勧めします。臨床的な検査や画像検査の結果がそろい、それらを総合的に評価した

上で初めて最終的なステージを決定します。

Page 12: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 11

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

前癌病変は 0 期として、さらに浸潤癌についてのステージ(I-IV 期)と、各ステージ内の

亜分類を下の表に示します。

進行期 定義

ステージ

0

前癌病変:ごくわずかな病変が子宮頸部の上皮と呼ばれる表層(皮膚と似ている)にの

み存在する状態。これらは子宮頸部上皮内癌*や子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)*とも呼ば

れる。基底層のみ(軽度)の状態から、中層部まで(中等度)、全層(高度)が癌細胞

に置換されているかどうかという度合いにより CIN1~3 に分類される。

ステージ I 浸潤癌の最初の段階:目視出来なくとも生検*で採取した組織を顕微鏡を用いて病理学

的検査をすることで間質(=子宮頸部の表層よりも下の組織)まで癌が浸潤しているこ

とが証明されるもの。病変は子宮頸部をこえない(腟や子宮傍組織*には達しない)。

病変の大きさと肉眼で見えるかどうかにより、以下のように細分類される。

Stage IA 顕微鏡的に証明される浸潤癌で目視はできず、間質浸潤の深さは 5 ㎜以

内、幅は 7 ㎜をこえないもの。

Stage

IA1

間質浸潤*の深さが 3mm 以内で、広がりが 7mm をこえない

もの。

Stage

IA2

間質浸潤*の深さが 3mm をこえるが 5mm 以内で、広がりが

7mm をこえないもの。

Stage IB 肉眼的に確認できる癌、または顕微鏡を用いて存在が確認できる程度だが

IA2 をこえるもの。

Stage

IB1

腫瘍径が 4 ㎝以下のもの。

Stage

IB2

腫瘍径が 4 ㎝をこえるもの 。

ステージ II 癌が子宮をこえて広がっているが、骨盤壁には至らないもの、ないしは腟壁の下 1/3

には達していないもの。

Stage IIA

肉眼的に確認できる癌で、子宮頸部をこえて腟に浸潤が認められるが、子

宮傍組織*浸潤は認められないもの。

Stage

IIA1

肉眼的に病変が確認でき最大径が 4cm 以下のもの。

Stage

IIA2

肉眼的に病変が確認でき最大径が 4cm をこえるもの。

Stage IIB

肉眼的に確認できる癌で、子宮傍組織*浸潤の認められるもの。

ステージ

III

癌が骨盤壁に達するか、腟壁浸潤が下 1/3 に達するもの。あるいは片方または両方の

尿管*を圧迫しているもの。

Stage IIIA 腟壁浸潤は下 1/3 に達するが、子宮傍組織浸潤は骨盤壁にまでは達してい

ないもの。

Stage IIIB 子宮傍組織浸潤が骨盤壁にまで達しているもの。または片側または両側の

尿管を巻き込んでいるもの(明らかな水腎症や無機能腎を認めるもの)。

ステージ

IV

進行性で転移*している癌。

Stage

IVA

隣接する骨盤内の臓器(膀胱、直腸)に浸潤しているか、小骨盤腔をこえ

る(腹部、鼠蹊部まで達している)もの。

Stage

IVB

遠隔転移*、例えば肺、肝臓等まで達するもの。

Page 13: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 12

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

生検*組織や、手術を行った場合に手術で摘出された標本の検査について

まず診断をつけるために組織を生検*して、病理組織検査*を行います。治療のために手術を

行った場合は(初期の癌で、子宮頸部円錐*切除術、子宮全摘術、リンパ節*摘出術や生検術

のいずれかを行って手術で組織を摘出した場合)、術後にさらに、摘出した組織の検査を含

めて二回目の病理組織検査*を行います。この検査によって癌のタイプがわかり、癌がどの

程度広がっていたかという進行期を精密に確認することができます。この術後病理組織診断

は、術後にさらに追加して治療を要するかどうか決めるためにも必要です。

生検*の結果には、以下の情報が含まれます。

◦子宮頸癌の組織型*

・扁平上皮癌(類表皮癌、マルピーギ癌、紡錘細胞癌などとも呼ばれます):最も頻度

が高く(全子宮頸癌の 80-90%を占める)、子宮頸部の外側から発生します。

・腺癌:全子宮頸癌の 10-15%を占め、子宮頸管内(内頸部)の腺*組織から発生しま

す。扁平上皮癌と比べ予後*が悪いとされます。

・さらに稀な組織型*もあります(例えば、神経内分泌癌や明細胞癌など)。

◦癌のグレードとは、顕微鏡での検査における癌細胞や組織の異型の程度を示し、癌の成長

する速度や悪性度を反映しています。癌は、発生した元々の組織によく似ている高分化型

から、元々の組織との類似性を失った未分化型までに分類されます。一般的に、高分化型

の癌は未分化の癌に比べ予後*が良いとされます。

◦手術で癌を摘出した場合は、以下のような検査を行います。

・断端:手術で摘出した標本の外側の縁(断端)に、癌細胞がないかどうか調べます。

もし腫瘍細胞が存在した場合は、手術で腫瘍が完全に取り切れていないと考えられる

ため、追加の治療が必要になります。

・脈管侵襲*(リンパ管侵襲・静脈侵襲):リンパ管内や静脈内に癌細胞がないかどうか

調べます。これは、子宮頸癌が子宮頸部から流れ出てリンパ節*へとつながるリンパ管

を通じて広がるためです。顕微鏡検査でリンパ管*の中に腫瘍細胞があった場合は、手

術で摘出した部分を超えて癌が広がっている危険性があり、化学療法*や放射線療法*

といった追加治療の適応があります。

・リンパ節*転移の有無:リンパ節に癌細胞がある場合は、子宮頸部摘出や子宮全摘に加

え、骨盤内のリンパ節を完全に切除すること(骨盤リンパ節郭清術*)が推奨されます。

脈管侵襲*があった場合は、癌がリンパ節へと広がっているかもしれないので特に必要

です。本当に転移しているか否か調べるために、骨盤内のリンパ節を手術で摘出しま

す。

・子宮傍組織*への広がり:子宮の片側あるいは両側の子宮傍組織*に腫瘍が広がってい

た場合は、癌の進行期は IIB 期となります。癌細胞がリンパ管*やリンパ節*に広がっ

ている危険性が高いため、化学療法*や放射線療法*といった追加治療が必要です。

Page 14: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 13

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

治療の選択肢として何があるの?

異なる分野を専門とする医療専門家からなる、多分野共同チームが

治療計画を立てていきます。領域の異なる専門家が、集学的検討*あ

るいは腫瘍症例検討会と呼ばれる話し合いを行います。この検討会

で、適切な臨床情報や画像所見、臨床検査の結果を用いつつ、国際

的な診療ガイドラインやエビデンスに基づく医学的勧告に従って治

療計画の協議が行われます。

治療の種類や程度は、子宮頸癌の進行期や腫瘍の性質、再発・死亡

リスクにより決まります。

進行期が最も初期の場合は、局所の手術療法のみで十分治癒が期待

できます。もう少し進んでいる病期の場合は、通常は化学療法*と放射線療法*を組み合わせ

て治療を行います。

下記に挙げた治療には利点と危険性、また禁忌*があります。治療の結果につき情報を得る

ために、腫瘍専門医*に、それぞれの治療で予期される利点と危険性につき相談しておくこ

とをお勧めします。いくつかの治療法から選択できる場合には、それぞれの患者さんにおけ

る利点と危険性のバランスを吟味して決めるほうがよいでしょう。

0 期と IA1 期

0 期は前癌病変、すなわち子宮頸部の表層(上皮)の小さな範囲に病変が限られている場合です。子宮頸部上皮内癌*や、子宮頸部上皮内腫瘍*(異型度 1、異型度 2、異型度 3)が含まれます。 IA1 期とは顕微鏡下での観察でのみわかり肉眼ではわからない浸潤癌です。浸潤の大きさは、深さ 3mm、広がり 7mm を超えないものとなります。

円錐切除術*

標準治療は円錐切除術*という手術です。ただ、前癌病変である子

宮頸部上皮内腫瘍*の異型度 1(あるいは軽度扁平上皮内病変、

LSIL)は、治療をせずに消退*する可能性が高いとされます。この

場合、1 年間程度慎重な経過観察を行えば良く、円錐切除術*が行

われるのは子宮頸部上皮内腫瘍の異型度 2、3(あるいは高度扁平

上皮内病変、HSIL)のみです。

円錐切除術*では、腟と連続している子宮口近くの子宮頸部を、頸

管内上皮まで含まれる深さで円錐状に組織を摘出します。円錐切

除術は、コールドナイフ(=普通のメス)、レーザーメス、あるい

はループ式電気焼灼切除法*(LEEP)と呼ばれる器械を用いて行い

ます。摘出した標本の病理組織検査*で浸潤がなく、断端にも顕微鏡下で癌細胞がなければ、

円錐切除術*で治癒するので追加の治療は必要ありません。

Page 15: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 14

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

円錐切除術*以外では、子宮摘出

術*(単純子宮全摘出術)の選択

肢があります。今後妊娠や出産を

希望しない場合に選択肢となりま

す。子宮を摘出すれば、後に子宮

癌になる危険性がなくなります。

一部の症例では、子宮頸部の摘出

や子宮全摘に加えて、骨盤内のリ

ンパ節*の摘出が勧められる場合

があります。手術前の生検*検体

の病理組織検査*で、癌細胞が腫

瘍周囲のリンパ管*や血管の中に

存在する場合です。これは脈管侵

襲*(リンパ管侵襲・静脈侵襲)

と呼ばれ、癌細胞がリンパ節に広

がっている可能性が疑われます。

この所見があると、癌の進行期が

IA1 期よりも進んでいる可能性が

高くなります。この場合、本当に

リンパ節に癌が広がっているか否

か調べるために、骨盤内のリンパ

節を摘出します。

稀に、術中や術後の早い時期に出

血多量といった合併症がおこるこ

とがありますが、通常重篤ではあ

りません。しかし、もし妊娠中に円錐切除術*を行った場合は、出血量が多くなることも稀

ではなく、また例えば早産といった、術後妊娠中に起こる合併症の頻度も 2 倍になります。

そのため、0 期の治療は出産後に延期されることも多いです。

円錐切除術*によって後々起こる合併症(晩期合併症)は非常に稀です。晩期合併症には頸

管無力症があり、この場合早産のリスクが高くなります。

円錐切除術*は、いわゆる「診断的生検*」としても用いられます。例えば疑わしい病変を断

片として生検*するのではなく、小さくても病変を一括切除して診断を行う場合です。円錐

切除術で切除した検体の病理組織検査*の結果、その進行期によっては、診断的円錐切除術

で治癒が可能であり、追加の治療が必要ないこともあります。

再発*の危険性がある場合の補助療法

補助療法とは、最初の治療に追加して行われる治療のことで、最初の治療だけでは治癒しな

い可能性がある時に行われます。補助療法の目的は、再発のリスクを下げて癌を治すことで

す。

Page 16: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 15

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

手術前の進行期が IA1 期である子宮頸癌の場合、摘出した検体の病理組織検査*の結果が

IA1 期であれば、癌は治癒すると考えられ、追加の治療は必要ありません。しかし、摘出検

体の病理組織検査*の結果、腫瘍が術前の予想より広がっている、つまり IA1 期より進んだ

病期であることがあります。摘出検体で浸潤が 3mm より深い場合や、円錐切除検体の断端

に腫瘍細胞があった場合です。癌がリンパ管や血管に存在する場合、病期がより進んでいる

可能性もあります。このような場合に、補助療法の適応となります。

補助療法の適応につき要約しますと、3 つのリスク因子(癌が術前の予想より大きい、深い

間質浸潤*、脈管侵襲*)のうち 2 つ以上がある場合に勧められます。術前の生検*で脈管侵

襲を認め、子宮全摘術*と骨盤リンパ節の摘出術を行い、術後診断でリンパ節*や子宮傍組織

*に腫瘍が認められた場合も補助療法の適応となります。

補助療法は放射線治療*の外照射と化学療法*とを同時に行う、同時化

学放射線療法となります。外照射では、体外の線源で作られた放射線

を、骨盤部(この中のリンパ管*やリンパ節*に沿って癌が広がる)に

向けて照射します。化学療法*は全身の癌細胞を殺すことができる薬剤

を使いますが、同時化学放射線療法の場合は、リンパ管やリンパ節に

存在し得る癌細胞を殺すのと同時に、放射線の効果を増強する狙いが

あります。子宮頸癌の同時化学放射線療法で最もよく使われる薬剤は

シスプラチンで、放射線療法を行っている間に週一回、体表面積 1m2

あたり 40mg が使われます。シスプラチンを投与する際は、腎臓の傷

害を防ぐために多量の静脈内*点滴を行います。

IA2 期

IA2 期は顕微鏡でのみ確認することができるものの、肉眼ではがんを確認することができな

い浸潤癌です。癌の浸潤 の深さは 3mm を超え 5mm 以内、幅は 7mm 以内です。

手術治療

標準治療は手術療法です。手術療法には、子宮と骨盤内リンパ節*の摘出が含まれます。

妊娠希望のある若い患者さんは、子宮温存手術を受けることができます。円錐切除

術*により子宮頸部を 円錐状*に広く切除したり、子宮頸部全体を摘出(子宮頸部摘

出術)したりします。

それ以外の患者さんは、子宮だけを摘出する単純子宮全摘術*や子宮傍結合織*と両

側の卵巣と腟の上部と一緒に子宮を摘出する広汎子宮全摘術を受けることになりま

す。

補助療法

手術で摘出された検体(腫瘍、子宮、リンパ節*)を病理組織学的に検討*することで、補助

療法が必要かどうかを判断するのに必須の情報がえられます。IA1 期の項で詳しく述べたよ

うに、 手術によりがんの組織が完全には摘出されていない可能性があったり、がんが子宮

傍結合織*やリンパ節など子宮近傍の組織までひろがっていたりする場合に、 がんを根治さ

せることを目的として手術後に追加する治療を補助療法といいます。

Page 17: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 16

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

IA1 期と同じように、手術で摘出された骨盤リンパ節の中にがん細胞が検出される場合や、

摘出された子宮頸部の周辺組織の外縁に顕微鏡的にがん細胞がないとは言いきれない場合

(断端陽性)は、補助療法を行うことが推奨されます。

このような状況では、放射線外照射*と全身化学療法*を同時に行います。外照射では、もと

もとがんがあった部位とリンパ管*やリンパ節*のあった骨盤領域に、 体外から放射線を照

射します。一般的な化学療法*では全身のがん細胞を死滅させる薬剤を用いますが、IA2 期

の補助療法として用いる場合には、骨盤内のリンパ管やリンパ節に残っているかもしれない

がん細胞を死滅させる意図で薬剤を用います。子宮頸癌に対しては、シスプラチン*が同時

化学放射線療法として最も一般的に用いられる薬剤で、放射線治療期間中に週に一回、体表

面積 1m2あたり 40mg を投与します。

IB1 期

IB1 期は肉眼的にわかる、もしくは IA2 期を超える顕微鏡的な浸潤がんで、腫瘍の最大径が 4cm 以内のものです。

Page 18: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 17

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

IB1 期の子宮頸癌の治療方法には、いくつかの選択肢があります。

- 手術治療のみ

- 外照射と腔内照射を併用した放射線治療*(腔内照射とは、腫瘍に密着させた小線源

*による局所治療)

- 放射線治療と手術治療の併用

これらの治療法のうち、他の治療よりも絶対的に優れている治療はありません。以下の項目

を検討して、治療方法を選択する必要があります。

1. 子宮頸癌と患者さんそれぞれの特徴

2. もしあれば、患者さんの希望

3. 治療を受ける病院が得意な方法と経験数

標準的な手術治療では、子宮と両側の子宮傍結合織*、卵巣、骨盤内のリンパ節を摘出する

広汎子宮全摘術*が行われます。

Page 19: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 18

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

予後が非常に良いタイプのがんであれば、将来妊娠を希望する患者さんは、より切除範囲の

狭い妊孕性温存手術(広汎子宮頸部全摘術:子宮頸部だけを摘出 子宮傍結合織*も摘出す

る場合としない場合あり)を選択できます。リスクなく子宮を温存できる条件は、腫瘍の最

大径が 20mm 以下であること、生検*の顕微鏡検査でリンパ管内にがん細胞の浸潤がない

こと、臨床的にリンパ節*転移がないことです。

IA 期の場合と同様に、最初の手術治療で摘出した検体の病理組織検査で、腫瘍が完全に摘

出できているといえない 場合、化学放射線療法*つまり化学療法と放射線治療を同時に行う

併用療法を追加する必要があります。(具体的には、摘出した臓器の辺縁までがん細胞が広

がっている場合や、子宮傍結合織*もしくはリンパ節*にがん細胞がある場合です。)

IB2~IVA 期

IB2 期は肉眼的にわかるもしくは IA2 期以上の顕微鏡的な浸潤がんで、腫瘍の最大径が4cm を超えるものです。 IVA 期は進行がんで、他の骨盤内臓器(膀胱、直腸)までがんが浸潤している状態で、 腹腔や鼠径部など骨盤腔を超えてがんが広がる場合も含まれます。

化学療法*と一緒に放射線治療*を行うのが標準的な治療です。放射線治療は子宮頸部の原発

巣と 転移の可能性があるリンパ節*の腫瘍を叩く目的で行われます。化学療法*には2つの

目的があり、放射線治療の効果をより高め、放射線照射範囲外にあるがん細胞を死滅させま

す。放射線治療と併用する場合の化学療法ではシスプラチン*を単独で投与するのが最も一

般的ですが、プラチナ系以外の薬剤でもプラチナ系 と同等の効果があります。放射線治療

として外照射(化学療法を併用して)と、 外照射終了後の腔内照射が通常行われます。

Page 20: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 19

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

55 日以内にすべての治療を終了しなければなりません。傍大動脈リンパ節*に転移がある

場合、傍大動脈領域*まで外照射の範囲を広げます。

化学療法*併用の放射線治療*(腔内照射を含む)終了後の画像診断で病変が完全に消失して

いない場合は、 補足的な子宮摘出(広汎手術)を追加治療として行うことがあります。よ

り進行した症例で化学療法併用の放射線治療で病変が完全に消失したと考えられる場合でも、

検出できないような病変が残存していて再発の原因となる可能性があります。治療終了後に

補助化学療法を継続することが有効であるという報告が複数ありますが、標準的な治療では

ありません。腫瘍が消失していても、転移*の可能性を最小限にするために補助化学療法*を

追加することが考慮されますが、補助化学療法の有効性は確立されていないため、臨床試験

*として行うことが推奨されます。

IVB 期

IVB 期は肺や肝臓などの離れた臓器に広がる(転移*)進行癌をさします。

化学療法*は、根治を目的とするものではありませんが、

病状の軽快や維持を期待して行います。化学療法は、シ

スプラチン*をはじめとする白金製剤を用いるのが一般

的です。二剤併用化学療法として白金製剤にトポテカン

*やパクリタキセル*を加えると、副作用は強くなります

が奏功率や病状が進行するまでの期間を改善させること

ができます。腎機能、神経や心機能などに強い副作用が

でるリスクを事前に評価して、化学療法の薬剤を選択し

ます。化学療法は、通常は外来化学療法室で経静脈点滴投与により行います。嘔気やアレル

ギー反応などの急性の副作用を予防するために、デキサメタゾン*などのコルチコステロイ

ド*や制吐剤を化学療法開始前に投与します。シスプラチン*を投与する場合には、腎障害を

予防するために十分な輸液を行います。 他の多くの化学療法と同じように、中期的、長期

的な副作用もあります。投与後数週間で、血球産生が減少することがあります。血液検査で

白血球数や血小板数が一時的に著しく減少していることがわかった場合、次コースの治療を

延期したり投与量を減量したりしなければなりません。患者さんによっては、シスプラチン

*が原因で、手や足の神経症状(皮膚がちくちくしたり、感覚が鈍くなったり、痛かったり)

や聴力低下がおきることがあります。

Page 21: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 20

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

進行がんに対して化学療法を行った*後に、残存した子宮頸部の病巣が出血や感染を起こし

たり、その他の不快な症状があらわれることがあります。そのような場合には、緩和的*な

放射線治療や外科的摘出により症状を改善させることができます。骨転移*などの強い痛み

の原因となる転移病巣にたいしても、同じような対処が可能です。

Page 22: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 21

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

治療の副作用の可能性として何があるの?

手術のリスクと副作用

全身麻酔*で行われるどのような手術にも通常ある程度のリスクが伴います。このような合

併症の頻度は高くはなく、深部静脈血栓症*、心臓または呼吸の問題、出血、感染、麻酔*に

対する反応などが含まれます。

女性の生殖器官は下部尿路や下部消化管とともに骨盤内に位置しています。手術中、尿路系

(下部尿路)や腸管を損傷するリスクがあります。

骨盤リンパ節*や傍大動脈リンパ節*を廓清した場合、リンパ管が損傷されることによりリン

パ液が貯留して下肢が腫れるリンパ浮腫が起きることがあります。リンパ液が手術を受けた

部位に貯留するリンパ嚢腫が生じるリスクもあり、これは多くの場合、自然に消失します。

尿管狭窄など尿路の流出が妨げられると水腎症を発症することがあり、尿が腎臓から流れる

路を作るための器具(ドレーン)を腎盂に留置する処置(腎瘻造設術)を要することがあります。

子宮が摘出*されると骨盤底を支持する筋肉群が損傷または脆弱化しうるため、手術後数年

してから尿失禁や腟脱のリスクが高まります。

卵巣摘出が含まれる手術を閉経*前に受けた場合、手術後に更年期症状が生じることがあり

ます。ホットフラッシュ、気分不安定、寝汗、腟の乾燥、集中力の低下などがしばしばあり

ます。

腫瘍専門医*や産婦人科医とご相談のうえ、適切なアドバイスをもらうことで副作用は軽減

することができます。

手術以外の治療法によるリスクと副作用

手術以外の治療法(放射線療法および化学療法*)による副作用の大部分は、通常は治療終

了後にもとに戻ります。副作用の一部には、予防または軽減する方法があります。この点は

前もって主治医とご相談いただくのがよいでしょう。

骨盤放射線療法

子宮頸がん治療のための体外照射療法*の副作用は、主に子宮頸部や子宮をとりまく臓器へ

の照射が原因となります。尿路への照射の影響としては、排尿痛、膀胱痙攣による尿意切迫

感、膀胱の内側の層の潰瘍や壊死*、血尿や尿路閉塞があります。下部消化管への照射の影

響としては直腸違和感、下痢、粘液性*あるいは血性の直腸分泌物、まれに腸の穿孔があり

ます。腟の狭窄も骨盤照射により起こりうる遅発性の副作用です。これら照射後の反応に対

する治療に関して、腫瘍専門医*からのアドバイスがあるでしょう。強度変調放射線治療

(Intensity Modulated Radiotherapy : IMRT*)など、最近の新しい外照射技術は、こう

いった毒性を軽減することを目的としています。

Page 23: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 22

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

小線源治療*

前述の外照射療法*の副作用は小線源療法*でもみられますが、小線源療法は照射する標的を

絞り込んでいるため、副作用の頻度は下がります。腟の乾燥は治療後にしばしばみられます。

腟の狭窄と乾燥も起こることがあり、その結果長期にわたる性交障害が生じることがありま

す。若年女性では照射療法が卵巣機能を停止させ、その結果さらなる腟の乾燥や性交障害を

生じることもあり得ます。また、卵巣機能の低下が骨粗しょう症*のリスクを高め、かつ/

または骨盤骨折につながることもあり得ます。これらの問題については、専門家の治療を受

ける必要があります。子宮頸がんはホルモン依存性ではないため、ために、禁忌となるよう

な疾患がなければホルモン療法を受けてこれらの副作用を避けることもできます。

化学療法

化学療法*の副作用は比較的多く、投与薬剤や投与量、個人の因子によって影響されます。

もし過去に他の医学的問題(心臓病など)を経験したことがあれば、予防措置や治療強度の

調整がなされる必要があります。通常、異なる薬剤を組み合わせて使用する場合は、単一薬

剤の場合と比べて、副作用が生じやすくなります。

子宮頸がんに使用される化学療法*の副作用でもっとも頻度が高いのは腎機能障害や脱毛、

血球減少です。シスプラチン*による腎機能障害を予防するために、十分な量の静脈輸液が

推奨されています。プラチナ化学療法単独で脱毛は多くの場合生じません。血球減少は貧血

*や出血や感染の原因となります。いったん化学療法が終了したら、毛髪は再生し、血球数

も正常に戻ります。

他の副作用には、頻度の高い順に以下のようなものが含まれます:

倦怠感

食欲低下

嘔気、嘔吐、下痢

脱水

爪や皮膚の軽度の変化(しばらくすると消失)

口縁などの炎症

味覚消失

注射部位の痛みを伴う腫脹や炎症

紅潮や発疹などのアレルギー反応

手や足の神経障害(末梢神経障害)(皮膚のヒリヒリ感や感覚低下、痛みを生じうる)

視力の一過性の変化や消失

耳鳴りや聴覚の変化

血圧低下

徐脈

筋肉痛、関節痛

けいれん発作

Page 24: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 23

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

この他に、稀ですがより重篤な副作用も起こりえます。特に脳卒中、心筋梗塞*、腎機能や

肝機能の障害が含まれます。

全ての症状や異常は直ちに医師に報告してください。

Page 25: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 24

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

治療後にどんなことが起き得るか?

いったん治療が終了した後も、治療による副作用を経験することは

めずらしくありません。

治療が終わった後に、不安、睡眠障害、うつ状態が生じる

ことがあります。このような症状で苦しむ患者さんは、専

門家による精神的なサポートが必要になるかもしれません。

子宮頸がんで手術を受けても大多数は、性機能が保たれま

す。放射線療法*は膀胱、直腸、腟の支持組織を脆弱にする

ことがあり、通常可逆的ではありますが、排尿や排便や性

交上の後遺障害を生じることがあります。

記憶力や集中力の低下、倦怠感は化学療法*の副作用として

は稀ではありませんが、通常数か月以内に消失します。

医師によるフォローアップ

治療が終了すると、医師は定期的な診察および以下の目的に即したフォローアップを提示します。

・腫瘍の再発の検出

o ステージ 0で治療を受けた場合、2 年以内に 3 回連続で子宮頸部細胞診(細胞

診)*が異常を示さなければ、再発*のリスクは健常女性が子宮頸がんを生じるリ

スクより高くありません。このような患者さんは 2 年経過ののち、健常女性を

対象とした通常のがん検診、すなわち 3 年ごとの細胞診*に戻ることができます。

o より高いステージであった場合、細胞診を含む臨床検査および婦人科診察*が、

最初の 2 年間は 3か月ごと、次の 3 年間は 6か月ごと、それ以降は 1 年ごと

に推奨されます。

o ステージ1以上で治療を受けた場合、定期的に問診、症状についての質問、身体

診察、そして何らかの異常がある場合はさらなる検査をうけるほうがよいでしょう。

・治療に伴う副作用の評価とその治療

・精神的なサポートおよび通常の生活に戻るための情報の提供

通常の生活への復帰

癌が再発するかもしれないと考えながら生きていくのは大変です。ただし低ステージで適切

に治療した場合、再発*は極めて例外的です。診断時点で進行したステージであった場合、

再発リスクは高くなります。再発は局所再発(腟や骨盤内など)、領域リンパ節再発(鼠径

リンパ節*など)、遠隔再発(肝臓、骨、肺転移*など)があります。現時点では、治療を完

了した後に、再発リスクの軽減のために推奨できるこれといった方法はありません。癌その

もの、あるいは治療の結果、通常の生活に戻るのが困難な患者さんもいます。身体イメージ

や性的問題、倦怠感、仕事、感情、ライフスタイルについて聞きたいことがあるかもしれま

せんが、そのような場合には親戚や友人や医師に相談するとよいかもしれません。多くの国

では、患者団体による支援や電話による情報サービス、電話による悩み相談などを受けるこ

とができます。

Page 26: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 25

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

もし癌が再発したら?

癌が再び生じた場合、再発*と呼びます。再発には局所再発(腟や骨盤内など)、領域リン

パ節再発(鼠径リンパ節など)、遠隔再発(肝臓、骨、肺転移*など)があります。

治療は再発の範囲によります。再発時は病状に応じた治療になります。局所再発の場合、症

例によっては、手術や放射線療法、化学療法*、あるいはこれらの組み合わせにより、治癒

や疾患のコントロールを得られる可能性があります。例えば以前に手術のみを受けた再発例

の治療は、放射線療法*や化学療法*で行われます。以前に小線源療法*を受けた場合でも、

必ずしもその後の治療で体外照射療法が受けられないわけではありませんが、以前に体外照

射療法を受けた場合に再度同治療が行われるのは例外的な場合のみです。

もしこれらの方法で局所あるいは領域の疾患コントロールができない場合、いわゆる緩和的

化学療法*治癒を目指すのではなく、一時的な疾患のコントロールや延命を目指す)が有力

な選択肢の一つとなります。膀胱や直腸など骨盤臓器を巻き込む局所領域再発の場合は、ま

れにではありますが、これらの摘出(骨盤内臓器全摘除術)が提案されることもあります。

その場合排尿および排便のためにストーマ造設が必要になります。

もし癌が遠隔転移*として再発した場合、ステージⅣB 期と同様に扱い、化学療法*が行われ

ることになります。このような場合、その病変が子宮頸がんの転移でよいのか、別のがんの

転移あるいはそもそも転移ではないという可能性がないかを確かめる目的に、可能なかぎり

疑わしい病変の生体組織検査(生検*)を行うほうがよいでしょう。初回時ステージ IVB の

癌の場合のように、特に生命を脅かしうる病変のコントロールや生活の質(QOL)改善を

目的に、それぞれの転移病変に対する手術または放射線療法が考慮されることがあります。

Page 27: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 26

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

用語の説明

MRI/磁気共鳴画像診断

医療の分野で用いられる画像診断技術。磁気共鳴を利用しています。しばしば、異なる組織

間のコントラストを際立たせて構造をより鮮明にするために、造影剤が注射されます。

X線

X 線は放射線の一種で、物体の内部の画像を撮影するのに用いられます。医療上、体内の画

像を得るために広く用いられています。

悪性

悪性とは進行し重症化しうる病態を意味します。癌と悪性腫瘍は同義語です。

異形成(軽度/高度)

顕微鏡でみると程度の差はあるが異常に見える細胞で、癌ではないが、前がん病変になりう

るもの。

壊死

生体組織が死滅すること

円錐切除生検

子宮頸部や頸管から円錐形に組織を取り除く手術。子宮頸部の病気の診断あるいは治療のた

めに行われます。円錐切除術*とも呼ばれます。

化学療法

がん細胞を殺傷したりがんの増大を抑制する薬剤を使った抗癌治療。一般的にこれらの薬は

静脈からゆっくり注入されますが、経口投与や、がんの場所によっては手足へ直接注入され

たり、肝臓へ注入されたりすることもあります。

間質浸潤

その臓器を支える結合組織や血管の中にがん細胞がひろがること。

血小板

血液凝固において、基本的な役割を担う小さな細胞成分。血小板数が低い患者さんは、重度

の出血をきたす危険性があります。血小板数が高い患者さんには血栓症の危険があり、血栓

形成に伴う血管閉塞により、脳卒中または重篤な状態に陥ることがあります。また、血小板

の機能不全の場合にも、重度の出血をきたす危険性があります。

強度変調放射線治療(IMRT)

放射線治療の一種で、コンピューターで作った画像から計算した腫瘍の容積や形状に基づい

て、立体的に放射線を照射します。強度に強弱をつけた放射線のビームを多方向から腫瘍に

当てます。これにより腫瘍近くの正常組織へのダメージが軽減されます。

Page 28: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 27

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

禁忌

患者さんへ提示すべき治療や処置を行えない状態や症状。禁忌には絶対的禁忌と相対的禁忌

があり、絶対的禁忌はこのような状態や症状を有する患者さんにその治療を決してしないほ

うがよいということを意味しており、相対的禁忌はこのような状態や症状を有する一部の患

者さんでは利益が危険を上回り治療を考慮してもよいことがあるということを意味していま

す。

後天性免疫不全症候群(AIDS:エイズ)

後天性免疫不全症候群は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV*)感染による免疫異常の病気です。

エイズを発症した人の免疫システムは低下して、日和見感染しやすくなり、普通の免疫状態

では腫瘍形成しないような腫瘍が発症します。

骨粗しょう症

骨量・骨密度が低下し骨が脆くなる病気。

骨盤内診察/婦人科診察(内診)

腟、子宮頸部、子宮、卵管、卵巣、直腸に腫瘤 や形状の変化があるかどうかを専門的な医

療者が触診すること。子宮頸部を観察したり子宮頸部細胞診の検体を採取したりするために、

腟鏡*を使用して腟を展開することもあります。

コルチコステロイド

副腎皮質ホルモン全般を称したもの。副腎の外側部分(副腎皮質)で産生されるホルモンで、

人工的にも製造される。副腎皮質ホルモンには体内で色々な作用があり、様々な病気の治療

に用いられます。ホルモン補充や免疫抑制、癌による症状や癌治療の副作用に対する治療と

して用いられます。リンパ腫や白血病の治療に用いられることもあります。

コルポスコピー(腟拡大鏡検査)

コルポスコープ(腟拡大鏡)と呼ばれる双眼鏡のような拡大レンズがついた器具を使用し子

宮頸部を精密に観察する検査のこと。

コンピューター断層撮影(CT)

体内の臓器を X 線でスキャンし、その結果をコンピューターで合成して体内の各臓器を画

像化する X 線撮影法の一種。

再発

がんや病気が再び起こることで、通常はがんや病気が存在しないか検出できない期間があっ

た後に起こります。がんの再発は、最初に発生した(原発)腫瘍と同じ部位に再発する場合

もあれば、別の部位に再発する場合もあります。再発がん、再発性疾患とも呼ばれます。

細胞学的(検査)

細胞学の、あるいは細胞学に関連したという意味。細胞学は細胞の構造や機能を研究する科

学です。

Page 29: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 28

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

深部静脈血栓症

脚や下部骨盤の深い部分の静脈内に血栓(血の塊)を形成すること。痛み、腫脹、熱感、発

赤といった症状が患部に見られることがあります。DVT とも呼ばれています。

造影剤・造影検査

体内の異常部位を見やすくするために有用な薬物のこと。静脈への注射、肛門からの注入、

内服によって体内に投与されます。X 線検査*(レントゲン検査)、CT スキャン*、MRI*、

その他の画像検査で使われます。

子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)

子宮頸部表面に異常な細胞が増殖するもの。細胞異常の程度や子宮頸部の組織がどれだけそ

の異常な細胞で占められているかの程度により 1~3 段階に表現されます。

子宮摘出術(単純子宮全摘術/広汎子宮全摘術)

子宮体部を取り除く手術で、子宮体部と子宮頸部を取り除くこともあります。子宮体部と子

宮頸部の両方を摘出する方法は、単純子宮全摘術と呼ばれます。子宮体部のみ摘出する場合

は、子宮腟上部切断術と呼ばれます。広汎子宮全摘術では子宮体部、子宮頸部のほか、腟の

一部分を切除します。卵巣や卵管、近傍のリンパ節*も切除します。 子宮全摘術*。子宮を摘出する手術で、他の臓器や組織を一緒に摘出することもあります。単純

子宮全摘術では、子宮体部と子宮頸部を摘出します。単純子宮全摘術+付属器摘出術の場合は、

(a)子宮と一つ(片側)の卵巣・卵管を摘出するか、(b)子宮と両方(両側)の卵巣・卵管を摘

出します。広汎子宮全摘術では、子宮体部、子宮頸部、両方の卵巣・卵管、そして子宮近傍の

組織を摘出します。これらの手術は下腹部横切開か縦切開で行われます。

下腹部横切開 縦切開

Page 30: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 29

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

子宮頸部細胞診

子宮頸部の表面の細胞を擦って採取し、顕微鏡で観察する検査法です。癌や癌に進行するこ

とのある病変を検出できます。また、癌以外の感染や炎症の病変を観察することもできます。

パップテストやパパニコロー検査という呼び方もあります。

子宮傍組織/子宮傍結合織

子宮の下部分の両脇にある間隙。

シスプラチン

様々な癌の治療に用いられる薬剤。シスプラチンには金属の白金が含まれています。癌細胞

の DNA を損傷したり DNA の複製を阻害することで癌細胞を死滅させます。シスプラチン

はアルキル化剤の一種です。

集学的検討

専門分野(学問分野)の異なる複数の医師が患者さんの病状や治療選択肢について検討・議

論して行われる治療計画の手法。がん治療において集学的検討は、腫瘍内科医(薬によるが

ん治療を行う)、腫瘍外科医(手術によるがん治療を行う)、放射線腫瘍医(放射線による

がん治療を行う)が参加します。腫瘍症例検討会とも呼ばれます。

腫瘍医

がん治療を専門とする医師。特定のがん治療を専門とする腫瘍医も存在します。例えば、放

射線を用いたがん治療を専門とする放射線腫瘍医などです。

小線源療法

針、シード(カプセルのようなもの)、ワイヤー、カテーテルの中などに密封された放射性

*物質を、直接腫瘍内もしくはその近傍に留置することによって行う放射線治療の一種。注

入放射線療法、内照射療法、放射線近接照射療法とも呼ばれています。

心筋梗塞

心筋梗塞または心臓発作は、心臓の一部への血液の供給が途絶えることで、心臓の細胞が死

滅します。治療しないでいると、心臓発作は心筋に重大な損傷をきたしたり、死亡すること

もあります。

神経学的な

神経もしくは神経系に関連した。

上皮内癌(CIS)

内臓の外側や内側を覆う表面の組織や皮膚にできるごく初期の癌で、別の層やその臓器自体

へは浸潤していないもの。

静脈内 (IV)

静脈の中へ、静脈の中の、の意味。静脈内という用語は通常、静脈内に挿入した針や管を通

して薬剤などの物質を投与する方法を指して用いられます。

Page 31: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 30

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

生検

病理医による検査のために細胞または組織を採取すること。病理医はその組織を顕微鏡で調

べたり、その細胞または組織に対して他の検査を実施します。生検の手技には様々な種類が

あります。最も一般的なものとしては以下のものがあります:(1)切開生検、組織のサン

プルだけを採取する方法;(2)摘出生検、しこりや疑わしい領域の全体を摘出する方法;

(3)針生検、組織や体液のサンプルを針を用いて採取する方法。太い針を使用する場合は、

コア生検と呼ばれる。細い針を使用する場合は、穿刺吸引生検と呼ばれます。

組織型

顕微鏡下に観察できる腫瘍細胞や腫瘍組織の構造の特徴に基づいて腫瘍を分類したもの。

退縮

腫瘍の大きさや体内のがんの広がりが縮小すること。

腟鏡

腟腔内を観察しやすくするために腟を展開するための器具

腟直腸双合診(双手診)

婦人科診察の1つで、医師が人差し指と中指を腟と直腸内に挿入して行う診察法です。もう

片方の手で同時に下腹部を圧迫して、指と手で挟んで診察します。患者さんに少し不快な感

覚を与えますが、骨盤内の臓器の異常を診察するために重要な診察法です。

転移

身体のある場所から他の場所へとがん細胞が拡がること。拡がった細胞によって形成される

腫瘍は転移性腫瘍や転移巣と呼ばれます。転移性腫瘍は原発の(元の臓器の)腫瘍と似通っ

た細胞を含みます。

デキサメタゾン

(副腎で自然に産生されるステロイドホルモンと似た)合成ステロイドで白血病・リンパ腫

の治療として、あるいは癌によって引き起こされる症状や癌治療の副作用の治療として用い

られます。

糖尿病

体内で十分なインスリンが産生されないかインスリンが適切に働かないために血中のグルコ

ース(糖の一種)濃度が異常に高くなる疾患を指します。

トポテカン

「トポイソメラーゼ阻害剤」に属する抗癌剤。DNA の複製に関わるトポイソメラーゼ I と

いう酵素を阻害します。この酵素が阻害されると、DNA 鎖が切断されます。これによりが

ん細胞が分裂することを妨げ、結果的にがん細胞が死滅します。

粘液分泌

粘液や粘液状の物質が体から出ること。粘液とはゲル状の物質で、通常は体の内側の表面

(粘膜など)を保湿・保護しています。

Page 32: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 31

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

白金製剤/治療

白金成分から生成された薬剤を使用した治療である。シスプラチン、カルボプラチンやオキ

サリプラチンが含まれます。

パクリタキセル

乳がんや卵巣がん、AIDS*関連のカポジ肉腫の治療に用いられる薬。他の薬と併用して子宮

頸がんや非小細胞性肺がんの治療にも用いられます。また、パクリタキセルに関して他の種

類のがん治療の研究も行われています。細胞分裂を止めることにより細胞の成長を阻害し、

がん細胞を死滅させます。

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)

ヒト免疫不全ウイルスは、エイズ(後天性免疫不全症候群*)を発症させるウイルスです。

性行為、血液、母乳によって感染したり、母体から胎内の児に感染することがあります。

ヒトパピローマウイルス(HPV)

HPV は、局所的な皮膚や粘膜に感染するウイルスの仲間です。生殖器に感染する HPV に

は、大きく分けて2つのグループがあり、性器のイボを引き起こす低リスク型と、女性には

子宮頸癌、腟癌、外陰癌、肛門癌を、男性には陰茎癌、肛門癌などの癌を引き起こす高リス

ク型があります。

貧血

赤血球またはヘモグロビンの不足を特徴とする状態。ヘモグロビンを含む鉄は肺から全身へ

と酸素を運びますが、貧血状態ではこの酸素運搬は減少します。

病理医

顕微鏡を使って病気の細胞や組織を調べる病理組織学を専門とする医師のこと。

病理学的検査/組織病理学的検査

顕微鏡やその他の方法を用いて病気の細胞や組織を調べること。

閉経

女性の卵巣がホルモン生成を停止し、月経が止まる時期。自然閉経は通常 50 歳頃に起こり

ます。12 か月連続して月経が訪れなかった場合、その女性は閉経を迎えたと言えます。閉

経の症状はホットフラッシュ(顔の紅潮)、気分の変動、寝汗、腟の乾燥、集中力の欠如、

不妊が挙げられます。

放射性の

放射線を発する。

放射線治療

放射線を用いたがん治療で、特定の領域に生じたがんを対象とします。

傍大動脈リンパ節/領域

腰椎の前方、大動脈の近傍にあるリンパ節*群のこと。これらのリンパ節には、下部消化管

や骨盤内臓器からのリンパ流が集まります。

Page 33: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided

Cervical Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 32

This document is provided by the Anticancer Fund with the permission of ESMO. The information in this document does not replace a medical consultation. It is for personal use only and cannot be modified, reproduced or disseminated in any way without written permission from ESMO and the Anticancer Fund.

麻酔

患者さんが痛みを感じず、反射が消失し、ストレスに反応しにくくなる、可逆的に意識を失

った状態は麻酔薬*として知られる特定の物質によって人工的に引き起こされ全身的または

部分的にでも麻酔がかかれば、手術を受けることができます。

脈管侵襲(リンパ管侵襲・静脈侵襲)

癌がリンパ管内や血管内に広がっていること。

免疫系/免疫システム

免疫系とは、腫瘍細胞や、ウイルス・バクテリアといった体外から侵入した異物を識別して

殺すことにより体を病気から保護する生体システムとその一連の作用のこと。

免疫不全

身体が感染症やその他の疾患と闘うために必要な能力が落ちている状態。

臨床試験/臨床研究

新たな医療行為が人々にどれだけ有用かを試験する研究の一つです。これらの研究には、疾

患のスクリーニング、予防、診断、治療などに対するものがあります。 臨床研究ともいい

ます。

リンパ管

リンパ液や白血球などが流れる細い脈管です。

リンパ節

リンパ組織の丸い塊で、周囲は結合組織の被膜につつまれています。リンパ節ではリンパの

濾過が行われているほか、リンパ球の貯蔵場所にもなっています。リンパ節はリンパ管*に

沿って分布しています。リンパ腺とも呼ばれます。

リンパ節郭清術

リンパ節を摘出して、顕微鏡下で癌がないかどうか検査する術式。所属リンパ節切除術では、

腫瘍が存在しうる領域の一部のリンパ節を摘出しますが、根治的なリンパ節郭清術では、腫

瘍が存在しうる領域のほとんどすべてのリンパ節を摘出します。リンパ節切除術とも呼ばれ

ます。

ループ式電気焼灼切除法(LEEP)

組織内に細いワイヤーを入れて低圧電流を流し、子宮頸部の異常な部分を取り除く方法。局

所麻酔を用い、また手術の後には出血を防ぐための薬を使うことがあります。

予後

その疾患のたどると思われる結果または経過:回復または再発*の見込みのこと。

Page 34: ESMO-ACF Cervical Cancer: Guide for Patients - … Cancer: a guide for patients - Information based on ESMO Clinical Practice Guidelines – v.2012.1 Page 5 This document is provided