当院における地域包括ケア病棟の役割 ·...

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢 11-6-1 地域包括ケア病棟・病床(1) 当院における地域包括ケア病棟の役割 西部総合病院 かとう せつこ ○加藤 雪子(看護師),長谷川 啓子,日野 めぐみ,松永 壮子 【背景】 当院は地域に密着した 268 床のケアミックス型総合病院である。2016 年 2 月市内初となる地域包括ケア病棟 (40 床 ) を開設したので開設後 4 か月間の入院動向を分析し、今後の役割について考える。 【目的】 当病棟の入院動向を知り、今後の役割を考える。 【方法】 2016 年 2 月 1 日~ 5 月 31 日までの当病棟入院患者を受け入れ機能別に調査。 【結果・考察】 入院数は延べ 202 名。予定入院 70.3%、緊急入院 29.7%。予定入院の中ポストアキュートが 32.7%、その他の 受入れ ( 周辺機能 ) が 37.6%と最も多かった。緊急入院のサブアキュートでは 22.3%が要介護の患者であり、 生活支援を要していない患者 7.4%を上回った。 予定入院のその他の受け入れでは、地域のケアマネージャーからのレスパイトやリハビリを目的とした入院依 頼が多かった。地域ケアマネージャーの依頼では、タイムリーな診療情報が得られなかったり、医療の視点が 薄く本来の目的であるリハビリをする間もなく看取りとなったケースがあった。 サブアキュートでは要介護状態で在宅サービスを利用していたが、自宅で褥瘡発生、全身状態の悪化に伴い急 激な褥瘡悪化のため緊急入院となった患者が 5 名いた。このようなケースでは、家族、院内・院外多職種との 早期カンファレンスによりケアプラン見直しを行う等、より積極的な退院支援が必要であった。4 か月の入院 動向から、当病棟はポストアキュートの機能を維持していく一方で、サブアキュートや予定入院の周辺機能で あるレスパイト入院が求められている。さらに疾患や ADL から在宅生活を評価し、再構築する場としての役 割があると考える。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-6-1 地域包括ケア病棟・病床(1)当院における地域包括ケア病棟の役割

西部総合病院

かとう せつこ

○加藤 雪子(看護師),長谷川 啓子,日野 めぐみ,松永 壮子

【背景】 当院は地域に密着した268床のケアミックス型総合病院である。2016年2月市内初となる地域包括ケア病棟(40床 ) を開設したので開設後 4 か月間の入院動向を分析し、今後の役割について考える。

【目的】 当病棟の入院動向を知り、今後の役割を考える。

【方法】 2016 年 2 月 1 日~ 5 月 31 日までの当病棟入院患者を受け入れ機能別に調査。

【結果・考察】入院数は延べ 202 名。予定入院 70.3%、緊急入院 29.7%。予定入院の中ポストアキュートが 32.7%、その他の受入れ ( 周辺機能 ) が 37.6%と最も多かった。緊急入院のサブアキュートでは 22.3%が要介護の患者であり、生活支援を要していない患者 7.4%を上回った。予定入院のその他の受け入れでは、地域のケアマネージャーからのレスパイトやリハビリを目的とした入院依頼が多かった。地域ケアマネージャーの依頼では、タイムリーな診療情報が得られなかったり、医療の視点が薄く本来の目的であるリハビリをする間もなく看取りとなったケースがあった。サブアキュートでは要介護状態で在宅サービスを利用していたが、自宅で褥瘡発生、全身状態の悪化に伴い急激な褥瘡悪化のため緊急入院となった患者が 5 名いた。このようなケースでは、家族、院内・院外多職種との早期カンファレンスによりケアプラン見直しを行う等、より積極的な退院支援が必要であった。4 か月の入院動向から、当病棟はポストアキュートの機能を維持していく一方で、サブアキュートや予定入院の周辺機能であるレスパイト入院が求められている。さらに疾患や ADL から在宅生活を評価し、再構築する場としての役割があると考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-6-2 地域包括ケア病棟・病床(1)当院地域包括ケア病棟における運用課題の検討

八千代病院 総合リハビリセンター

うの たつや

○宇野 達也(理学療法士),武井 誠司,松山 太士

【目的】地域包括ケア病棟は対象疾患の縛りがないなど、制度上の制限が少ないため、柔軟な運用が可能である。一方で地域にとって、最適に運用されているか見る必要性がある。本研究の目的は当院、地域包括ケア病棟に、入院した患者を分析し、今後の病棟運用に活かすことである。

【対象】平成 26 年 11 月から平成 27 年 10 月までに院外の急性期病院と院内の急性期病棟から当院の地域包括ケア病棟に入院した 321 例を対象とした。

【方法】院内から転棟した患者(以下 , 院内群)211 例、他院から転入した患者(以下 , 院外群)110 例に分け、検討項目は疾患、年齢、性別、在院日数、転帰、FIM利得およびFIM効率とした。統計処理は x² 検定、対応のない t 検定で有意水準は 5% 未満とした。なお、本研究は当院倫理規定に沿って行った。

【結果】転帰において院内群で骨折・外傷等が有意に多く、呼吸・心疾患が有意に少なく、院内群で在院日数は有意に短く、自宅復帰と年齢において有意に高かった。FIM 利得、利率は院内群 15.35 点、1.75 点。院外群は 13.9 点、1.69 点で有意差はなかった。

【考察】院内群と院外群では対象疾患に差があることが分かった。骨折・外傷等は院内と比較し、院外は有意に少ない。回復期リハビリテーション病棟協会の報告から運動器の在院日数は 57.2 日であり、地域包括ケア病棟の 60 日間に適応するケースがあると考える。呼吸・心疾患は院外と比べ、院内は有意に少なく、厚生労働省の平成26年患者調査の報告と比べても比率が少ない。このことから、院内に潜在的な呼吸・心疾患のニーズはあると考える。また、FIM は両群ともに向上がみられ、院内群で在院日数が短く、自宅退院が高いことはケアミックス病院の強みであると考える。地域包括ケア病棟の対象は幅広く、地域に合わせた運用していく必要があると考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-6-3 地域包括ケア病棟・病床(1)当会の地域包括ケア病床が目指すところ

内田病院

たなべ ゆうき

○田辺 祐己(事務職),田中 志子

はじめに当院は一般49床(障害者37床、地域包括ケア入院医療管理料1 12床)、療養50床(回復期リハビリ病棟Ⅱ)、ケアミックスの病院である。当会の理念は「地域といっしょに。あなたのために。」であり、地域で必要な機能を提供し、地域を支られる病院、グループになる為に職員一同邁進している。平成26年度の診療報酬改定にて地域包括ケア病棟が新設され、当会の機能においても、同年5月に地域包括ケア入院医療管理料1(以下地域包括ケア病床)を障害者病棟の中に環境を整え新設した。地域住民、他の病院と連携しニーズに応えられるよう取り組みを行っている。 目的当会は機能として、障害者病棟、地域包括ケア病床、回復期リハビリ病棟を有しており、それぞれの役割が違う。その中で当会の地域包括ケア病床の機能を明確にする為の取り組みについて報告を行いたい。

方法医事情報、診療録を元に調査を実施。

内容地域包括病棟協会などでの調査数値を参考にさせて頂き、当会のリハビリ介入実績や在院日数、在宅復帰率など比較を行う。比較の中で当会独自の取り組みも評価を行い、診療報酬で算定出来ない当会独自の取り組みを行う事で、在院日数や、在宅復帰率、在宅や退院後の施設などで継続して生活出来ている日数などを調査し、比較を行いたい。

結果入院患者のうち認知症患者の割合が8割と多く、その中で認知症患者へのリハビリや、摂食機能療法などの介入が多く、効果を認めた。今後地域包括ケアの機能を明確にし、より地域住民のニーズに即した病院運営につなげたい。

考察患者にとって過ごしやすい環境の提供を行っているが、その上で平均年齢、入院の目的などを明確にすることで、当会の地域包括ケア病床がどんな機能なのか振り返った。今後は地域医療構想において、病院の機能を明確にしていくことを求められる中で、当会の役割を合わせて考えたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-6-4 地域包括ケア病棟・病床(1)へき地の急性期病院における地域包括ケア病棟の現状

西伊豆健育会病院 看護部

ふじい さとし

○藤井 聡(看護師)

【はじめに】 当院診療圏人口はおよそ 15000 人であり、高齢化率は全国平均 26.8%に対し 45.2%である。急性期一般病棟36 床、地域包括ケア病棟 42 床の 78 床のケアミックス型として稼動している。

【現状】平成 26 年 10 月から病棟が稼動しており、昨年度の病床稼働率は 97.7%(病院全体で 97%)で、平均在院日数は 23.0 日、在宅復帰率は 93.2%、看護必要度 A 項目は 15.3%となっている。院内での転棟による受け入れが中心となっている。急性期病棟に緊急・予定入院、手術が必要な患者を受け入れ、病状が落ち着いた時点で在宅復帰が可能かどうか毎日多職種で検討。病棟運用基準によって患者受け入れが行われる。ホワイトボードの活用により、入院から退院までの流れが一目でわかるようにしている。多職種連携で入院時からの退院調整を行っている。入院中のサポートだけでなく退院後の生活についても、訪問診療・訪問看護・退院後訪問指導・訪問リハを充実させ、在宅療養が継続できるように支援する体制を整えている。

【考察】ケアミックス型によって、急性期で治療を終えた患者が新たな受け皿を探すことなく療養が継続できるという利点があり、転院を受け入れる場合と違い入院時から患者を取り巻く情報が容易に得られ、チーム全体で共有できている。それらが病床稼働率・平均在院日数・在宅復帰率の維持につながっていると考えられる。退院後も各職種の訪問によって継続して関わることができるため、住み慣れた地域で生活を続けていくための支援につながっていると考えられる。

【課題】昨年度からの課題であった退院後の支援については、訪問診療・訪問看護だけでなく退院後訪問指導や訪問リハが追加となっているが、それを効果的に活用できるようチーム全体で検討し、継続しなければならない。増加の一途をたどる独居・高齢者単独世帯を中心とする退院困難者の在宅療養を継続するためにどういった対応をしていくかが課題。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-6-5 地域包括ケア病棟・病床(1)当院における地域包括ケア病床の実態と課題

1 宜野湾記念病院 医療相談室,2 宜野湾記念病院 リハビリテーション部,3 宜野湾記念病院 看護部,4 宜野湾記念病院 医局

いなみね こう

○稲嶺 孝(医療ソーシャルワーカー)1,千知岩 伸匡 2,花城 須磨子 3,杉本 みかる 3,湧上 聖 4

はじめに 当院は回復期リハビリ病棟 69 床、一般病棟 66 床からなる計 135 床の地域中核の病院である。平成 28 年 4月より一般病棟の 10 床が地域包括ケア病床として稼働した。近隣には介護保険施設や有料老人ホームが多数ある。当院における地域包括ケア病床の実態と課題、地域における特性やニーズを考察していく。 対象と方法 地域包括ケア病床算定開始までの平成 27 年 9 月~平成 28 年 3 月、算定開始後の平成 28 年 4 月~ 5 月までに当院地域包括ケア病床に入退院した 77 例を①入院経路、②入院目的、③疾患、④入院期間、⑤退院先⑥介護保険の有無(平成 28 年 4 月~ 5 月)を後方視的に調査した。 結果 ①自宅 34%、他院の急性期病床 21%、居宅系介護施設 19%、特別養護老人ホーム 26%②治療 68%、リハビリ 31%、検査入院 1.3%、教育入院 1.3%③整形疾患 19.5%、肺炎 19.5%、脳梗塞 4%、悪性腫瘍 8%、心不全 10%、尿路感染症 12%、糖尿病教育入院 1%、脱水・食欲不振 8%、その他 18%④ 1-15 日 27%、16-30 日30%、31-45 日 20%、46-60 日 14%、60 日以上 9%⑤自院の一般病床 1%、自宅 38%、他院の急性期病床 2%、介護老人保健施設 4%、居宅系介護施設 30%、特別養護老人 25%⑥介護保険あり 87%、なし 13% 考察 在宅扱いとなる施設からの入院が 5 割弱を占めており、過半数以上が治療目的の入院であることが分かった。また、60 日超えのケースの要因としては病状が不安定、退院先の確保が困難(介護保険の認定待ち含む)であったこと等が考えられる。10 床という限られた病床数のため、一般病床で待機になるケースや病状が安定せず自宅や在宅扱いとなる施設に退院できないケースもあったことから、入院時から退院まで時期に応じたアプローチを計画的に実施する必要性を感じた。今後は入院から退院まで一貫して把握できるシートの作成を検討し、さらに糖尿病の教育入院や嚥下機能評価等で病床が活用できるよう周知していきたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-6-6 地域包括ケア病棟・病床(1)地域包括ケア病棟における急性期病院からの受入状況の検討

金上病院 医療相談室

ひらま しょうた

○平間 翔太(医療ソーシャルワーカー),大野 光

【はじめに】地域医療構想に基づき各地で病棟再編が進んでいる。地域における当院の役割として急性期病院の後方支援としての機能が求められている。そこで当院では平成 27 年 4 月より一般病棟 20 床を地域包括ケア病棟へと転換し、平成 28 年 2 月よりさらに 36 床へと増床した。これにより入退院患者の動向について変化があったので報告する。 【期間・対象・方法】期間:地域包括ケア病棟を 36 床とした平成 28 年 2 ~ 5 月の 4 か月間と病棟再編前の一般急性期病棟 20 床における平成 26 年 2 ~ 5 月の 4 か月間(大腸 EMR 症例や短期滞在手術等の入院は除く)。対象:急性期病院からの受入患者。方法:①入院総数内に占める急性期病院からの受入割合②平均在院日数③転入院患者におけるリハビリテーション目的患者の割合④退院先の内訳について検討した。 【結果】①について、再編前は入院総数 111 件中 19 件(17%)、再編後は 143 件中 44 件(31%)②について、再編前は 52.8 日、再編後は 43.5 日③について、再編前は 19 件中 10 件(52%)、再編後は 44 件中 37 件(84%)④について、再編前は在宅退院件数が 7 件(37%)、施設入所者 4 件(21%)、その他 8 件(42%)。再編後は在宅退院件数が 22 件(50%)、施設入所者 3 件(7%)、その他 19 件(43%)であった。 【考察】一般急性期病棟から地域包括ケア病棟へと病棟再編を行い病床数を増床したことで、急性期病院からの受入件数比率は増加した。また、平均在院日数は短縮した。これは地域包括ケア病棟には 60 日の入院期限があることが要因の一つであると考えられた。在宅退院者件数は増加したが、これは再編に伴いリハビリテーション目的で当院へ転入院される件数が増加したこと、退院調整会議や家屋調査など自宅退院に向けての取り組みを強化したことなどがその要因として考えられた。今後も急性期病院の後方支援としての機能を充実させながら患者様の状態に合わせた支援が提供できるよう努めていきたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-6-7 地域包括ケア病棟・病床(1)当院の2つの地域包括ケア病棟を比較して

原土井病院 リハビリテーション部

しもはらい あやの

○下拂 綾乃(理学療法士)

【はじめに】 当院は 556 床のケアミックス病院であり、一般 86 床、回復期 104 床、療養 232 床、緩和ケア 30 床を有している。 H26 年 4 月より一般病棟 44 床 (C4 病棟 ) を、H27 年 10 月より療養病棟 60 床 (A2 病棟 ) を地域包括ケア病棟へ移行した ( 以下、前者を C4、後者を A2 と表記 )。 移行前は異なる病棟機能であった 2 つの地域包括ケア病棟のデータを比較・考察し報告する。

【対象】 H27 年 10 月~ H28 年 5 月の期間に入院した患者 (C4:485 名、A2:358 名 ) とした。

【結果】  平均年齢、直入院率、平均在院日数、リハビリ平均単位、リハビリ介入率は C4:71.5 歳、95.3%、18.9 日、2.32単位 / 日、68.7%、A2:81.4 歳、15.5%、40.5 日、2.31 単位 / 日、79.9%であった。 在宅復帰率に大きな差はなかったものの、C4 の方がより自宅や居住系介護施設への退院が多く、A2 は在宅復帰強化型病棟への転棟も多い結果となった。

【考察】 移行前に亜急性期としての機能を持っていた C4 は、現在でもより治療を必要とする患者が直入院する傾向がある。亜急性期としての構えが継続しており、入院日数上限が 60 日であるにもかかわらず比較的早期の退院・転棟を勧める体制が残っていることが在院日数を短くしているのではないかと考える。 一方、療養病棟であった A2 は、直入院よりも転入、平均在院日数が高い数値となっている。平均年齢やリハビリ介入率が高く、在宅復帰強化型病棟への転棟も多いことから、より在宅復帰に難渋する患者が入院する傾向にあるのではないかと予測する。 以上より、同じ地域包括ケア病棟でも異なる特徴を持っていることが分かる。 C4 では亜急性期の治療を行いながらも在宅復帰に向けた積極的なリハビリが必要であり、A2 では在宅復帰に難渋するであろう患者への工夫したリハビリが必要になると考える。病棟の特徴を考慮しつつ、個々の患者状況に合ったリハビリテーションを提供していかなければならない。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-7-1 地域包括ケア病棟・病床(2)地域包括ケア病棟から他病棟へ転棟した患者の実態調査

光風園病院 リハビリテーション部

むらなか ゆか

○村中 結香(理学療法士),杉山 寛行

はじめに当院は平成 26 年に医療療養病棟から地域包括ケア病棟へと転換した病棟で、入院患者は急性期病院からだけではなく、自宅や介護施設、地域の病院といった様々な所から入院をしてくる。疾患も多種多様で、期限の2か月では在宅復帰が困難な患者が多く、医療療養病棟などへ転棟する患者もいる。そこで、転棟をした患者がどういった病状で、何を目的に転棟しているのかを明らかにするために調査を行った。

方法2014 年 12 月~ 2015 年 12 月に地域包括ケア病棟から転棟した患者 68 名を対象として、診療録等からの後ろ向き調査とスタッフへの聞き取り調査を実施した。調査項目は、年齢、在院日数、疾患、転棟理由、処方職種、リハビリテーション目的とした。

結果転棟後にリハビリテーション ( 以下リハ ) を継続した患者は 41 名、療養目的は 27 名だった。平均年齢は 78 歳で平均在院日数は 136 日、リハを継続した患者の疾患としては呼吸器疾患 15 名、特殊疾患 5 名、運動器疾患5 名が多かった。処方された職種は PT21 名、PT・ST8 名、PT・OT・ST3 名、OT1 名、ST1 名だった。処方目的は、移動手段獲得、移乗動作獲得、車椅子評価、家族指導、コミュニケーション手段の検討の准で多かった。リハビリテーション実施者の転棟理由は 41 名中 23 名が病状が重く入院中に積極的にリハができなかったことでリハの継続が必要と判断されたためだった。

考察転棟後にもリハを行った患者が半数以上いる事や患者の平均年齢が高く呼吸器疾患や特殊疾患、運動器疾患が多い事が分かった。また、1 つの職種だけではなく多職種のリハが必要な患者が多い事や病状が安定するまでに時間がかかる事、長く疾患と向き合う必要がある患者が多くを占めている事が分かった。これらの事から、今後は早期退院に向けて疾患に対する理解を深めること、また、転棟時の情報共有への取り組みが必要だと考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-7-2 地域包括ケア病棟・病床(2)地域包括ケア病棟移行後の当院における透析患者の受け入れ状況とその後の転帰についての考察

1 原病院 透析室,2 原病院 内科,3 恵光会 原病院 看護部

しんぐう げんた

○神宮 玄太(准看護師)1,左野 翔太 1,清水 俊一 1,白石 美幸 1,林 磨里子 3,石田 香代子 3,久原 伊知郎 2

【はじめに】当院において平成 26 年 7 月から一般病棟全てが地域包括ケア病棟へ移行し、さらに同年 11 月から療養型病棟が在宅強化型に認定された。地域包括ケア病棟における透析患者の受け入れ状況とその後の転帰、病棟における管理上の問題点について療養型病棟との関連を含めて考察した。

【方法】地域包括ケア病棟へ移行後の平成 26 年 7 月~平成 27 年 6 月までの入院透析患者 133 例(地域包括ケア病棟入院 94 例、療養型病棟入院 39 例)についての分析、転帰、問題点について考察する。

【結語】地域包括ケア病棟へ入院症例のうち、整形外科疾患が 46% を占めていた。地域包括ケア病棟から在宅復帰できた症例が 94 例中 42 例、療養型病棟へ移動後 3 か月以内に退院できた症例が 11 例あった。療養型病棟が在宅強化型へ移行する前は、地域包括ケア病棟から療養型病棟への移動が円滑にできないケースもあったが、在宅強化型へ移行後は、病棟間の移動が比較的円滑に行えた。在宅強化型へ移行後、療養型病棟への直接入院症例が減少傾向にあった。透析患者は入院が長期化しやすく、地域包括ケア病棟入院後、60 日以内に退院が難しい症例があり、療養継続のためには療養型病棟、介護施設との連携が必要であった。病院機能維持のためには、在宅復帰率などの基準を意識しながらの病棟運営が求められる。地域包括ケア病棟において、当初はPTAなどの手術の算定ができないなどの問題点があったが、現在は診療報酬改定にて一部改善された。リハビリに関しては、出来高算定ではないため、施設毎に個々の症例に応じたリハビリ単位数を設定している状況である。当院におけるリハビリにおける取り組みや問題点についても考察した。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-7-3 地域包括ケア病棟・病床(2)病院リハの垣根を超えて~地域包括ケア病棟症例を通して~

1 国分中央病院 リハビリテーション室,2 国分中央病院 理事長

ふたがわ まさる

○二川 優(理学療法士)1,下境田 雄麻 1,小西 由衣 1,菊地 昭人 1,松元 容子 1,藤﨑 剛斎 2

【背景】平成 26 年4月に 18 床の地域包括ケア病棟を申請し、翌月から 28 床に増床し現在まで地域包括ケアシステムの一翼を担っている。当院の関連施設として、平成 27 年 6 月に地域密着型特別養護老人ホーム『ソ・ウェルこくぶちゅうおう』を開設し、より地域に根差した医療と介護を提供できる体制を整えている。今回、地域包括ケア病棟から関連施設へ退院前に、関連施設と連携し退院先の環境調整・訓練・スタッフへの指導を行う機会を得たため、ここに報告する。【患者紹介】70 歳代女性。H26 年 12 月右被殻出血発症(左弛緩性片麻痺)。Brunnstrom recovery stage 上下肢 2 レベル。先天性脳性小児麻痺による、両下腿部成長不全を呈している。【内容】退院予定約 1 週間前より、上記関連施設に訪問し以下の事を実施した。①トイレ移乗・動作評価②移乗補助用具作成③トイレ移乗動作反復訓練④施設スタッフへ動作介助方法指導【詳細】トイレ移乗・トイレ動作は、介助者と本人の負担が多く移乗補助具なしでの動作は転倒のリスクが高い。移乗を行なう為に、施設のトイレ環境の採寸を行い、膝立ちで移乗を行うための台を作成した。その後施設へ訪問し、移乗台を使用しての動作反復訓練とトイレ動作の介助方法指導を行った。【結果】移乗台のセッティングの介助は必要だが、施設内でのトイレ動作を自立させる環境調整が行えた。また、関連施設のスタッフと共に動作訓練を行うことで、本人の不安を解消するだけでなく、迎えるスタッフに対してより詳細な情報伝達が出来た。【結語】地域包括システムの根幹として、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される事が必要とされる。今回、病院内でのリハビリの枠にとらわれず、退院先の環境下で生活復帰の関わりを持てた事は、今後の退院支援として貴重なケースになった。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-7-4 地域包括ケア病棟・病床(2)地域包括ケア病棟における退院先と FIM 得点との関連について

八千代病院 看護部

かわい たけゆき

○河井 丈幸(看護師),青山 由妃子,松本 佳代

【目的】地域包括ケア病棟は在宅復帰を目指すための病棟だが、回復リハ病棟に比べて短い入院期間で在宅復帰する必要がある。本研究の目的は退院先と FIM 得点の変化を調査し、在宅復帰への影響を明らかにすることである。

【方法】対象・期間:平成 27 年度中に地域包括ケア病棟を退院した患者のうち、欠損データを除いた 357 名。分析:当該データを電子カルテより匿名化して抽出し、入院時と退院時の FIM について比較した。更に FIM得点を 1 ~ 3 点を中重度介助・4 ~ 5 点を軽介助・6 ~ 7 点を自立の3群に分け、退院先について居住系在宅施設を含む自宅(以下、在宅群)と老健・特養・病院を含む施設(以下、施設群)でクロス集計し、これらをU 検定及び Wilcoxon の符号付順位検定を用い、ロジスティック回帰分析を実施した。

【結果・考察】入退院時の FIM を比較したところ、運動 13 項目および認知 5 項目の全てにおいて有意に得点が上昇しており(p<0.001)、FIM 合計得点も入院時 72.2 ± 27.3 から退院時 89.2 ± 31.0 と有意に得点が上昇していた(p<0.001)。次に退院先別で退院時の FIM 3群を比較すると、食事・整容・清拭・トイレ動作・排尿管理・移乗ベッド・移乗トイレ・移動・理解・問題解決・記憶の 11 項目で、施設群の方が介助をより必要とする割合が有意に多かった(p<0.05)。この中で多重共線性を考慮して多変量解析した結果、退院先に最も影響を与える FIM 要因は理解で中重度介助だった(オッズ比 4.23、95%CI:1.67-10.73、p=0.002)。退院先に影響を及ぼすのが認知面であることが明らかになったため、看護師としての更なる介入方法を検討する必要がある。

【まとめ】在宅群に比較して施設群では FIM 得点は低く介助量が多かった。退院先に影響のある認知面に対しアクティビティ活動などの看護介入の必要性が示唆された。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-7-5 地域包括ケア病棟・病床(2)地域包括ケア病棟におけるレクリエーションの効果

光風園病院 看護部

むらかみ つよし

○村上 健(准看護師),前田 真宏

【はじめに】当病棟は平成 26 年 11 月に医療療養病棟から地域包括ケア病棟に転換した 60 床の病棟である。転換前より入院患者に対してレクリエーション(以下レク)を行ってきた。しかし、このレクが患者の身体機能や認知機能向上に寄与し効果的に退院へ繋げられているか疑問が出てきた。この度、改めてレクの方法を検討し、患者にどの様な影響を与えるのか検証してみた。

【研究方法と対象】運動機能だけでなく認知機能にも働きかけるレクの内容や時間の検討などを行い、平成 28 年 1 月 1 日よりレクの方法を変更した。平成 27 年 12 月 31 日までに退院した従来型のレク対象者 100 名と平成 28 年 1 月 1 日以降入院し改定後レク対象の退院患者 100 名の患者を比較した。比較するデータは、患者の年齢、性別、入院時バーサルインデックス(以下 BI)、退院時 BI、在院日数とした。検定にはスチューデントt検定(以下t検定)を行った。

【結果】患者の基礎データである年齢、性別、入院時 BI については P 有意差はなかった(p< 0.05)。退院時 BI は取り組み前の平均 49.25 点から取り組み後 51.15 点と上昇したが P = 0.359 で有意差はなかった。入院時 BI から退院時 BI の上昇点では、取り組み前 14.55 点、取り組み後 16.45 点であり、有意差はなかった。在院日数は取り組み前 47.29 日、取り組み後 42.12 日で P = 0.019 と有意差を認めた。

【考察】在院日数について有意差を認めた要因として認知機能に働きかけるレクを行う事で認知機能が向上した可能性が考えられた。しかし、今回は認知機能に対するデータが取れておらず実際に認知機能が上昇したかは不明である。また、在院日数に影響を及ぼす因子は認知機能だけではなく、家族背景なども含めて今後、検討しなくてはならない。今後はレクの効果をより客観的に評価する必要があり、その結果を受け、今後もレクの改善を図っていきたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-7-6 地域包括ケア病棟・病床(2)地域包括ケア病床における基準クリアの一覧表作成

栗林病院

はまうず しんすけ

○濱渦 新介(放射線技師)

慢性期病院である当院において、今年 3 月より、病棟の一部を地域包括ケア病床へと転換した。 それに伴い施設基準の一部である、在院日数(60 日以内)、重症度の割合(A 項目 1 点以上が 1 割以上)、リハビリ単位(1 日平均 2 単位以上)をクリアする必要があるが、電子カルテ上では在院日数の表示はあるものの、重症度やリハビリ単位は個別に確認する必要があった。 そのため病棟より、上記の項目を全職員が一目見て確認できる一覧表があれば良いとの要望があり、今回Excel にて一覧表を作成することとなった。 また、電子カルテ上での平均在院日数は病棟単位でしか計算できないため、病棟の一部である地域包括ケア病床のみの平均在院日数は表記できなかったが、Excel にて地域包括ケア病床のみの平均在院日数を計算、表記することに成功したので、合わせて報告する。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-7-7 地域包括ケア病棟・病床(2)地域包括病床におけるシナプソロジーの効果検証

真木病院

いちかわ みちよ

○市川 美千代(看護師)

当病棟は、地域包括ケア病床32床を有する51床の病棟である。慢性期の患者が多く、認知症の患者が増加している中、運動機能リハビリとともに、認知機能面へのアプローチの必要性を実感している。以前より、脳を活性化できるというシナプソロジーを取り入れていた。今回その効果を検証したので報告する。1. 目的 シナプソロジーを実施することで脳の活性化を図る。2. 対象者 地域包括ケア病床入院中の患者様30名3. H28年6月13日~H28年7月31日4. 評価方法①長谷川式簡易知能評価スケール②FIM評価③TMT-A:1~25の数字を線で結び、かかった時間・間違った回数で評価する。5. 実施方法  病室やホールに対象者を集め、1日1回10分間実施する。出来ることよりも悩んだり間違えたりする方が脳は活性化するため、出来ることより一段階難しいものを行うようにする。① 相違じゃんけん ②ボディタッチ4動作 ③指折りどこさ④ストレッチ4動作 ⑤腕4動作 ⑥肩たたき3で止まる⑦歩いて3で止まる ⑧3動作ね・うし・とら ⑨指数えグーパー6. 結果、評価長谷川式簡易知能評価スケール平均 1.46 増加、FIM平均 13.6 増加、TMTA平均 -1.82 秒早くなり、全ての項目で向上した。年齢、認知力、実施日数での差はなく、患者同士の能力が近かったグループでの変化が大きく、また、認知症があり個別に実施することが多かった患者も全ての項目が向上するという結果が得られた。言動でも、「今日はまだなの?」など楽しみにする発言や個々に自主練習をする姿が見られた。退院時にも「楽しい入院生活ができた」「良い思い出が出来た」「家でも同じように続ける」などの発言が聞かれ、マイナスな発言は聞かれなかった。能力の向上以外にも、患者同士の関わりが増え、自然とコニュニケーションが生まれ、患者間のトラブルが減るといった心理面における効果もみられた。 地域包括ケア病床は、身体機能、認知機能を維持、向上し在宅復帰につなげることが求められる。今後も患者が、その人らしい生活に戻れるよう援助していきたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-8-1 スキンケア(1)拘縮手による手掌内の不快臭・浸軟に対するハンドケアの効果 ~緑茶とルイボスティーを用いて~

緑水会病院 看護部

ふじた ちづ

○藤田 智津(介護福祉士),森本 尚子

Ⅰ.はじめに緑茶葉を用い手掌内の湿潤の軽減及び不快臭の改善が認められたと報告されている。そこで、健康茶として知られ、抗酸化作用のある「アスパラチン」を唯一含む食品である「ルイボスティー」と「緑茶」の比較検証を行った。Ⅱ.研究方法1.対象者 両手指拘縮があり、手掌内に不快臭・浸軟がある3名2.研究期間 平成27年8月19日~11月24日3.方法 ①「緑茶葉」と飲用後乾燥させた「ルイボスティー茶葉」各10gパックをそれぞれガーゼで包み、 右手掌内に緑茶、左手掌内にルイボスティーを挟み、ガーゼを巻き固定する。② 茶パックは2週間に1回、ガーゼは適宜交換する。③ 不快臭・浸軟について入浴時は入浴前その他は午前の清拭時にチェックしチェック表に記入する。 不快臭については「6段階臭気強度表示法」による評価尺度を使用し、評価・考察する。Ⅲ.結果 ルイボスティー、緑茶共翌日には臭気レベルが下降し、2~3ヶ月で不快臭が消失した。浸軟についてもルイボスティー、緑茶共2ヶ月後には消失し、ルイボスティーは緑茶と同様の吸湿効果が得られた。Ⅳ.考察手掌内のケアを毎日していても、湿潤し不快臭、皮膚トラブルが発生する。感染の危険性も高く、湿潤環境の改善は重要である。「ルイボスティー」と「緑茶」の効果に着目し手掌内のケアをした結果 、ルイボスティーに含まれるアスパラチンが、緑茶に含まれるカテキンと同様の消臭効果が得られることがわかった。効果が現れるのは不快臭・浸軟共緑茶が早かった。そのことから、緑茶よりもルイボスティーは、遅延性であると考える。茶パックの交換は、2週間毎でも効果が持続したことは、どちらも持続性に優れているものと考える。ルイボスティーも緑茶同様の効果がありハンドケアに活用できると考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-8-2 スキンケア(1)酒粕パックによる手荒れの改善

緑水会病院 看護部

ふくどめ ちかし

○福留 親志(介護福祉士)

Ⅰ はじめに 医療職者は手荒れを起こすリスクが高く、さらに手荒れによる「感染の伝播」が問題となっている。そこで酒粕の美容効果に着目し、酒粕と精製水で作ったパックでスキンケアを行った結果、効果が得られたので報告する。Ⅱ 研究方法 1)対象者 乾燥、ひび割れ、皮剥けの手荒れがある職員 9 名 2)研究期間 平成 27 年 8 月 16 日~ 11 月 16 日まで 3)方法 (1)パックの作成方法 酒粕 100g をすり鉢ですり潰し、精製水 50 g、エッセンシャルオイル数滴を加えて混ぜ合わせる。 (2)使用方法 ①終業時に酒粕パックを手に塗布し、3 ~ 5 分後に水で洗い流す。 ②休日も 1 回パックを行う。 (3)データの収集・分析方法 施行前の手荒れの状態をチェックし所定の用紙に記入し、結果を評価・考察する。Ⅲ 結果 (1)乾燥に対して A、D氏は 1 週目には乾燥がなくなった。B氏は 3 週目、C氏は 9 週目、E氏は 11 週目には乾燥が軽度になった。 (2)ひび割れに対して D氏は 1 週目にはひび割れがなくなった。 (3)皮剥けに対して D氏は 1 週目、C氏は 2 週目、E氏は 11 週目には皮剥けがなくなった。 (4)重度の乾燥、ひび割れ、皮剥けがあるF、G、H、I氏はパック使用時に掻痒感、しみる症状 が出現し改善しなかった。Ⅳ 考察 酒粕には保湿効果と新陳代謝を改善する効果がある。開始 1 週で乾燥がなくなったA、D氏は開始時の乾燥が軽度であった為早期に効果が得られたと考える。開始 2 週目~ 11 週目で軽度の乾燥になったB、C、E氏は開始時の乾燥が強かった為、3 ヶ月では乾燥がなくならなかったと考える。ひび割れ、皮剥けがなくなったD、C、E氏は保湿効果と新陳代謝の改善により効果が得られたと考える。手荒れが改善しなかった F、G、H、I氏は酒粕の刺激で掻痒感、しみる症状が出現したと考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-8-3 スキンケア(1)頭皮ケア~鱗屑にオリーブ油、炭酸水を使用したケアを試みて~

立神リハビリテーション温泉病院 介護部

はたの りな

○畑野 利奈(介護福祉士),床波 八千代,田中 幸枝,立石 いづみ,當房 菜摘

【はじめに】 当院は、病床数 110 床の医療療養病床を有しており、入院患者の平均年齢は約 85 歳である。高齢者における皮膚症状の特徴はドライスキンが代表的である。 日々の介護業務を行う中で、入浴場にて「フケの塊ができている」という気づきがあった。入院患者様の頭皮状態の調査を行うと共に、頭皮に認める鱗屑を考慮したケアを日々の介護業務に取り入れて提供した。 今回、医師の指示のもと鱗屑に対しオリーブ油や炭酸水を使用した頭皮ケアを行ったので報告する。

【方法】〈調査〉・ 調査期間:2015 年 7 ~ 12 月・ 対象:入院患者の頭皮状態を評価し、鱗屑を認めた者を乾性と脂性に分類〈ケア方法〉・ 定期的な頭皮の観察・ ケアの実施 毎日のブラッシング:毛並みと逆方向に行う 入浴前は乾性にはオリーブ油、脂性には炭酸水を塗布:優しくマッサージするように塗布し、 シャンプーハットを被せ保湿

【結果】〈調査結果〉・ 25 名に鱗屑を認めた。乾性 20 名、脂性 5 名・ 平均年齢 84.8 ± 8.4 歳・ 脳血管疾患 19 名、運動器疾患 2 名、呼吸器疾患 4 名・ 整容動作能力 (FIM):1 点 23 名、2 点 0 名、3 点 2 名・ 入浴動作能力 (FIM):1 点 24 名、2 点 1 名、3 点 0 名〈ケアの結果〉・ 改善:乾性 15 名、脂性 4 名・ 改善後再発:乾性 2 名、脂性 1 名・ 再発を繰り返す:乾性 1 名・ 症状悪化:乾性 2 名

【考察】 鱗屑を認めた患者様における整容・入浴動作能力は、ほとんどが全介助レベルであった。このような患者様は、ご自分で洗髪や整髪が困難である。このような障害を抱えた患者様を支援する介護スタッフとしては、頭皮の状態に着目する事が重要と考える。 また、鱗屑に対する頭皮ケアにより改善を認めた事から、頭皮状態に着目したケアが有用である可能性が示唆された。改善が得られなかった患者様については、ケアの実施方法などを再検討していきたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-8-4 スキンケア(1)長期療養の頭皮ケア~塩洗髪を試みて~

いけだ病院

おくだ ようこ

○奥田 陽子(介護職員),伊藤 明代,中村 明日香,武田 真理子,松岡 かおり,兼村 三千彦

1. はじめに 当院は療養型病棟であり、セルフケア不足の患者が多く 9 割以上の方が特別機械浴で入浴している。当院の特別機械浴は週に 1 ~ 2 回、患者の体調に合わせて実施している。入浴が週に 1 ~ 2 回のため、多くの患者の頭皮は皮脂やフケが蓄積して痒みを感じており、髪の毛はべたつきがあり、清潔を保てていないのが現状である。 また、老年期の方の頭皮にシャンプーの刺激は強く、必要な皮脂まで洗い流してしまい、皮脂の過剰分泌に繋がるケースもある。 そこで、頭皮の皮脂やフケのケアに「塩洗髪」というものがあり、「塩に含まれるナトリウムイオンには、皮脂などのたんぱく質を溶かす塩溶効果がある」と知り、実施を試みた。 今回、特に頭皮トラブルを抱えている患者 4 名に対し、塩を使った洗髪ケアを実施したので報告する。

2. 目的 塩洗髪を行い、頭皮の皮脂の過剰分泌を軽減し、患者様の頭皮の状態の改善を図る。

3. 方法  1)期間:平成 28 年 4 月 15 日~ 6 月 22 日  2)対象:自力での入浴が困難な 4 名。1 人はコミュニケーションが図れる方。  3)方法   4 月 15 日~ 4 月 19 日    (1)職員に対し文献をもとに塩洗髪の手順・手技の統一をする   (2)〇✕△の 3 段階で評価を行うオリジナルのアセスメントシートの作成   (3)対象患者の頭皮の状態の評価   4 月 20 日~ 6 月 22 日   (1)週に 1 ~ 2 回塩洗髪の実施 ( 入浴時 )   (2)週に1回アセスメントシートを用いて評価する

 上記方法にて塩洗髪を実施し、頭皮の皮脂の過剰分泌を軽減し、患者様の頭皮の状態の改善に取り組んだ結果を報告する。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢11-8-5 スキンケア(1)清潔ケアの充足を図り、手足のスキントラブルを予防

南高井病院 2病棟

しのはら ようすけ

○篠原 洋介(介護福祉士),谷中 裕和

<はじめに>当病棟は寝たきりで介護度の高い患者が多い。その大半は麻痺や拘縮・免疫力の低下があり、スキントラブルを起こすリスクが高い。特に手足の指間や手掌に発症することが多く、手足浴や軟膏処置で対応している。1日4回のおしぼりによる部分清拭、週に2回の入浴、指間ガーゼやハンドロールの使用で予防に努めているが、発症を激減させるには至っていない。スキントラブルを予防する事はできないかと考え、前年度発症した患者・部位・症状を調査すると、共通の身体的特徴がみられた。そこで、スキントラブルを起こすリスクをその特徴から 4 段階に分類し、リスクごとに対応策を実施した結果、効果がみられたため報告する。 <活動期間>H 27 年 4 月 1 日~H 27 年 11 月 30 日 <対象患者>(計12名)1.H 26 年度及びH 27 年 4 月・5 月に手足のスキントラブルがある患者2.身体的特徴からリスク4段階に当てはまる患者 <方法>1.患者をLV 0 ~LV 3 に分類2.手足浴の手順書の作成3.手足浴の実施、毎月第1週及び異常時に写真撮影、週1回アセスメント・評価 <考察> 結果として前年度より手足に関するスキントラブルの発生件数は減少した。症状や有効であった軟膏から、真菌が原因であったと考えられる。真菌は高温で湿潤した環境で増殖するため、手足浴により清潔にすることでスキントラブル発生予防につながったと考える。 <まとめ> 今回スキントラブルの予防を目標として活動するにあたって、スタッフ間でのアセスメントの統一や、手技の統一が難しく、統一したケアを行っていくことが今後の課題として挙った。今回の活動を通し、患者の皮膚トラブルの減少に至っただけでなく、スタッフの清潔ケアに対する意識の向上にも繋がった。