気分障害(うつ病)と抗うつ薬€¦ ·...

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1 名城大 薬理学:精神疾患 II 気分障害(うつ病)と抗うつ薬 到達目標: 1.うつの病態と関連神経(セロトニン神経、ノルアドレナリン神経)との関係を理解し、説明で きる。 2.抗うつ薬の作用機序と、病態への適用の妥当性を理解し、説明できる。 刺激過剰 不安 うつ 中枢神経の 器質変化 中枢神経の 器質変化 中枢神経の 過剰興奮 中枢神経の 機能低下 ベンゾジアゼピン誘導体 5-HT 1A アゴニスト (タンドスピロン) 伝達物質増加 受容体活性化物質 (強迫神経症、 パニック障害) 1. うつ病の基本概念 (うつの病態) うつ病・うつ症状 認知症 頭部外傷 パーキンソン病 神経疾患 エイズ ウイルス性脳症 結核 感染症 甲状腺低下症 下垂体機能低下症 ACTH過剰症 内分泌疾患 抗精神病薬 (抗パーキンソン病 薬) 薬物の副作用 糖尿病 ビタミンB欠乏症 低K血症 代謝性疾患 ストレス 青斑核 NE神経) DRN:背側縫線核 DS:背側線条体 VS:腹側線条体 PFC:前頭前野皮質 Amyg:扁桃体 Neocortex:新皮質 Nature neuroscience 8:261 (2005) 背側縫線核 5-HT神経)

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名城大 薬理学:精神疾患 II

気分障害(うつ病)と抗うつ薬到達目標:

1.うつの病態と関連神経(セロトニン神経、ノルアドレナリン神経)との関係を理解し、説明できる。

2.抗うつ薬の作用機序と、病態への適用の妥当性を理解し、説明できる。

刺激過剰 不安不安 うつうつ中枢神経の器質変化

中枢神経の器質変化

中枢神経の過剰興奮

中枢神経の機能低下

ベンゾジアゼピン誘導体5-HT1Aアゴニスト(タンドスピロン)

伝達物質増加受容体活性化物質

(強迫神経症、パニック障害)

1. うつ病の基本概念(うつの病態)

うつ病・うつ症状認知症 頭部外傷

パーキンソン病

神経疾患

エイズ ウイルス性脳症

結核

感染症

甲状腺低下症

下垂体機能低下症ACTH過剰症

内分泌疾患

抗精神病薬

(抗パーキンソン病薬)

薬物の副作用

糖尿病 ビタミンB欠乏症

低K血症

代謝性疾患

ストレス

青斑核(NE神経)

DRN:背側縫線核 DS:背側線条体VS:腹側線条体 PFC:前頭前野皮質Amyg:扁桃体 Neocortex:新皮質

Nature neuroscience 8:261 (2005)

背側縫線核(5-HT神経)

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① うつ病は、縫線核(中脳・橋:セロトニン神経)、

および青斑核(橋:アドレナリン神経)が強い外

的刺激に反応して、セロトニン神経、およびアド

レナリン神経終末にて、器質変性(神経伝達物

質合成と放出の減少)とシナプス前膜および後

膜の受容体の減少を起こし、その結果、シナプ

スの機能低下に伴う刺激伝達機能を低下させ、

その刺激を軽減させる、いわゆる過剰刺激を回

避する生体防御機序と考えられる。

② これら縫線核や青斑核由来の神経が投射する脳の部位の受容体(5-HT1A, 5-HT2, アドレナリンα1、アドレナリンα2受容体)の機能/器質変性(down-regulation、不活性化等)が一つの原因と考えられる:

背側縫線核-前頭葉、大脳新皮質、

正中・内側縫線核-辺縁系(海馬と周辺部)等で見られる。

橋・青斑核-前頭葉、海馬

③ それ故、アドレナリン神経やセロトニン神経のシナプス間隙のこれらモノアミンの濃度を高めること

により、減弱した神経伝達を高める薬物が抗うつ薬効果を持つとされている。

中脳縫線核中脳縫線核

うつ病の病態

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うつ症の成立と抗うつ薬の作用機序(図説)

刺激情報

NE/セロトニン放出(通常刺激)

アミンポンプ

α2/5-HT1

刺激伝達 過剰刺激

過剰刺激―NE/セロトニン過剰放出

過剰刺激伝達

α2/5-HT1

1 【通常刺激:NA/5-HT通常放出】 2 【前神経の過剰刺激によるNA/5-HTの過剰放出】

NANA/

1) アミンポンプによる再取り込み:シナプス間隙の

アミン濃度の低減

2) 自己抑制型受容体刺激にてアミン放出の抑制

アミンの過剰放出により、再取り込みと

自己抑制型α2/5-HT1受容体刺激による

放出抑制不能。 その結果、過剰刺激伝達がおこる

3 【うつ症の成立:刺激伝達減少(伝達物質産生低下、受容体減少)】

4 【抗うつ薬による刺激伝達改善】

受容体減少

過剰刺激 過剰刺激の制御

NA/セロトニン

放出減少

トランスポーター

アミン量減少

再取込阻害

X

α2遮断

通常刺激伝達通常刺激

再取込阻害

X

α2遮断

通常刺激伝達通常刺激

抗うつ薬投与

X

4

3.〔抗うつ薬の作用点-概要〕

(1) 非選択的モノアミントランスポーター阻害(再取り込み阻害) モノアミン上昇(2) 非定型的うつ薬:α2遮断作用(放出促進) ↓(3) 特異的セロトニントランスポーター阻害(再取り込み阻害) 受容体刺激(活性化)

(4) セロトニン・ノルアドレナリントランスポーター阻害 ↓(再取り込み阻害) 抗うつ作用

(5) MAO阻害

(1) 非選択的モノアミン再取込み阻害薬(第一世代)

a.三環系抗うつ薬〔イミプラミン、アミトリプチリン〕b.非三環系抗うつ薬〔マプロチリン〕

(2) 非定型(第ニ世代)抗うつ薬

〔アモキサピン、ミアンセリン、トラゾドン、セチプチリン〕(3) 選択的セロトニン再取込み阻害剤 (Selective Serotonin Reuptake Inhibitor : SSRI)

〔フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン (シタロプラム)〕(4) セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害剤

(Serotonin Noradrenalin Reuptake Inhibitor : SNRI)〔ミルナシプラン〕

(5) MAO阻害薬 :〔サフラジン〕

2.〔躁うつ病の分類〕

①双極性うつ病→躁とうつ気分を交互に繰り返すもの

②単極性うつ病→うつ気分だけのもの③単極性躁病(稀)

→ ・睡眠障害・妄想→罪業妄想、

微小妄想

・抑うつ気分・意欲制止・不安・焦燥

軽症 重症

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4.三環系抗うつ薬の概要(第一世代抗うつ薬)

① グアネチジン、エフェドリン、チラミンのようにアミンポンプを通して作用す

る薬物の作用を変動させる。② ノルアドレナリン、アドレナリンの作用を増強する。(副作用②参照)③ MAO阻害薬との併用により発熱(悪性症候群)、けいれんなど、時に致死的と

なる。

相互作用

①抗コリン作用:口渇、便秘、頻脈、遠視性調節麻痺、排尿困難、眼内圧上昇(緑内障に禁忌)

②交感神経系の亢進(NA濃度増加):血圧上昇、心拍数増加、心収縮力増加注)高濃度では、交感神経系の抑制(α1遮断):血圧下降

③抗H1作用:眠気、鎮静

副作用

うつ病、小児の夜尿症(抗コリン作用の強い第3級アミン)適応

①抗うつ作用 → 神経終末でのアミン再取り込み阻害による。

シナプス間隙のモノアミンの増量を介して抗うつ作用を発現する。作用発現は遅く、作用発現までに2~4週を要する。

②第3級アミン抗うつ薬:イミプラミン、アミトリプチリン→比較的選択的にセロトニン(5-HT)の再取り込みを強く阻害する。

③第2級アミン抗うつ薬:デシプラミン(イミプラミンの脱メチル化代謝物)、ノルトリプチリン(アミトリプチリンの脱メチル化代謝物)

→比較的選択的にNAの再取り込みを強く阻害する。

作用

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第1世代の抗うつ薬:三環系抗うつ薬(個別)

薬理作用・機序①NA, 5-HTの神経終末への再取込みを抑制。

②セロトニン再取込み、アドレナリン再取込みをほぼ同等注)デシプラミンは、アドレナリン再取込み>セロトニン再取込み

③抑うつ気分改善作用が強い。臨床適用・うつ病、夜尿症。副作用 ・緑内障に禁忌(抗コリン作用)

イミプラミン

薬理作用① NA, 5-HTの神経終末への再取込みを抑制:イミプラミンより強い② 抗コリン作用:副作用として現れる(口渇、緑内障悪化)

臨床適用:うつ病、夜尿症副作用

・抗コリン作用:口渇、排尿困難、眼内圧亢進、視調節障害、便秘・パーキンソン様症状などの錐体外路症状(D2遮断による)

相互作用・MAO阻害薬との併用で、異常高熱、昏睡等の症状が現れることがある・グアネチジンなどの降圧剤の作用を減弱する。禁忌: 緑内障に禁忌(抗コリン作用)

アミトリプチリン

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第2世代の抗うつ薬:作用機序が異なるもの

・弱いセロトニン再取込み阻害作用・トラゾドンの活性代謝物が5HT1B(Gi)のアゴニスト、

5HT2受容体(Gq) のアンタゴニストとして作用する。・間接的にノルアドレナリン神経機能を亢進する。・抗コリン作用は弱いが、眠気が強い。(抗H1作用)

トラゾドン

・シナプス前膜のα2受容体を遮断し、シナプス間隙へのノルアドレナリン放出を促進することが抗うつ作用と関係する。

・抗コリン性の副作用は少ない。・眠気がみられる。(H1遮断作用による)

ミアンセリン

・三環系抗うつ薬でノルアドレナリンの再取込みを抑制することによって抗うつ作用を示す。

・抗コリン作用は非常に弱く速効性である。

アモキサピン

第3世代の抗うつ薬:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

・うつ病、パニック障害、強迫性障害。不安 にも有効。・副作用:悪性症候群、錯乱・痙攣・併用禁忌:MAO阻害薬

パロキセチン

・セロトニンの再取込みを選択的に阻害する。・ノルアドレナリン取込み阻害に対する選択性は

クロミプラミンやトラゾドンに比べて低い。・うつ病や強迫性障害、パニック障害に用いる。・併用禁忌:MAO阻害薬

フルボキサミン

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セロトニン・ノルエピネフリン再取込み阻害薬(SNRI)

・ セロトニンとノルアドレナリンの再取込みを阻害する。・うつ病に用いる。・速効性ゆえに急性期の治療 ・抗コリン作用なし

ミルナシプラン

ロフェプラミン セチプチリンマプロチリン トラゾドンミアンセリン フルボキサミンミルナシプラン

仮面うつ病自律神経障害

意欲回復作用ノルトリプチリン アモキサピンフルボキサミン ミルナシプラン

意欲の欠如無感動

鎮静作用アミトリプチリン ミアンセリントラゾドン セチプチリン

不安、焦燥、取り越し苦労内的不穏

抑うつ気分を解消させる

イミプラミン クロミプラミンアモキサピン フルボキサミンマプロチリン パロキセチンミルナシプラン

抑うつ気分、悲哀感絶望感、落胆

作用抗うつ薬うつ病型

ミアンセリンなど臨床用量でヒスタミンH1、5-HT2、α1、α2受容体遮断作用を持つものがあり、三環系抗うつ薬にもH1、5-HT2、α1、D2、ムスカリン受容体遮断作用を持つものがある。

うつ病と抗うつ薬の選択(概要)

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5.抗うつ薬の生体アミン取り込み阻害作用IC50(nM):副作用探索

・第二級アミン三環系抗うつ薬はノルアドレナリンの取り込み阻害作用が比較的強く、第三級アミン三環系抗うつ薬にはセロトニン取り込み阻害作用が比較的強い。

・生体内ではイミプラミン、アミトリプチリンは第二級アミンに変化するので、ノルアドレナリン取り込み阻害作用が強くなる。

・近年、特異的なアミントランスポーター阻害薬(SSRI、SNRI)が開発された。

副作用関連作用

5-HT刺激

抗H1作用

抗α1

作用抗コリン作用

3028ミルナシプラン

1,9004.4470アモキサピン

16,200422,300ミアンセリン

17,0001435イミプラミン

5,3002439アミトリプチリン

4,300211.5クロミプラミン

42,0006203.8フルボキサミン

5,100810.29パロキセチン

DANA5-HT再取り込み阻害IC50(nM)

上の表から、抗うつ薬の他の受容体に対する効果から薬物の副作用を予測してみよう

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臨床作用(2):副作用三環系抗うつ薬はコカイン様交感神経刺激作用とフェノチアジン様副作用(抗ムスカリン、抗ヒスタミンH1、

抗α1作用)が見られる。

・末梢神経症状:抗コリン作用により口渇、便秘、排尿困難、瞳孔調節障害、眼圧亢進(緑内障悪化)が現れる。・循環器症状:心拍増加、心収縮力増加、血圧上昇など交感神経刺激作用が現れる。・中枢神経症状:鎮静作用(抗H1作用)と中枢性抗コリン作用を持つ。アミトリプチリンは最も強く、イミプラミンは中

等度の中枢作用を持つ。注)抗コリン作用および起立性低血圧は連用により耐性を生ずる。三環系抗うつ薬はほとんど身体的・精神的依存

を起こすことはない。

低血圧、(片頭痛の予防)セロトニン5-HT2受容体の阻害(遮断)

射精障害セロトニン5-HT1受容体の阻害(遮断)

錐体外路系の運動障害(アミトリプチリン)、内分泌系の変化、性機能障害(男性)

ドーパミンD2受容体の阻害(遮断)

クロニジンなどのα2受容体刺激薬降圧作用の阻害、持続性勃起

アドレナリンα2受容体の阻害(遮断)

プラゾシンやテラゾシンの降圧作用の増強、起立性低血圧、めまい、反射性頻脈

アドレナリンα1受容体の阻害(遮断)

目のかすみ、口腔乾燥、洞性頻脈、便秘、尿閉、記憶障害ムスカリン受容体の阻害(抗コリン作用)

主たる抗うつ薬の効果増強、沈静、嗜眠、体重増加、低血圧ヒスタミンH1受容体の阻害(遮断)

パーキンソニズムの改善、精神病の悪化神経終末におけるドーパミン再取込み阻害

胃腸障害、不安の増加、性機能障害、錐体外路系の副作用、モノアミン酸化酵素阻害薬の作用増強

神経終末におけるセロトニン再取込み阻害

振戦、頻脈、不眠、勃起、射精障害、グアネチジンの降圧作用の阻害、交感神経興奮アミン作用の増強

神経終末におけるノルアドレナリン再取込み阻害

起こりうる副作用薬理学的特性

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6.気分安定薬: 抗躁病薬

1.炭酸リチウム、 2.バルプロ酸、 3.カルバマゼピン

基本的には、神経膜の興奮(発火)および神経細胞の興奮を抑制する薬物:神経細胞膜の情報伝達系の阻害(炭酸リチウム)、GABA系の活性化(バルプロ酸)、Na+チャネル阻害(カルバマゼピン)。

Na+チャネル阻害の他、GABAA受容体機能の亢進。

神経細胞膜の興奮抑制作用を有し、急性躁病、難治性躁病、統合失調症の神経・運動興奮、小児の異常行動に効果を示す。 抗てんかん薬

副作用:複視、眩暈、運動失調。 NA神経亢進による不整脈、再生不良性貧血

(長期投与)

カルバマゼピン

GABAトランスアミナーゼ阻害、Na+チャンネル、T型Ca2+チャネル抑制、K+チャ

ネル亢進により、神経細胞膜の興奮を抑制する。 躁病、躁うつ病の躁状態 (統合失調症-陽性) 抗てんかん薬

副作用-禁忌: 肝障害、カルバペネム系薬(併用禁忌;てんかん発作誘発)、

カルバマゼピンとの併用で、奇形発生頻度が上がる。

バルプロ酸

ホスファチジルイノシトール(PI)の代謝回転を阻害して、細胞膜を介する情報伝達

系を遮断する。 急性躁病、難治性躁病、統合失調症の神経・運動興奮の適用

催眠作用:不眠の躁患者-REM睡眠が抑制され、睡眠異常が改善。

治療有効域が狭い(0.8‐1.2mEq/L);TDMが必要

炭酸リチウム

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7.〔抗うつ薬の作用機序:その不思議〕・・・・研究最前線

1)三環系抗うつ薬の作用は、シナプスに放出されたアミン(5-HT、NA)が、神経終末(シナプス前

部)に再取込みされるのが阻害され、その結果、シナプス間隙のアミン濃度が上昇し、シナプス後膜の受容体(5-HT2A、α1)を刺激することによる、と考えられてきた。しかし、多くの抗うつ薬の作

用が現れるまでには2~3週間を要する。モノアミントランスポーター阻害によるシナプス間隙のアミン濃度上昇は早く生じ、刺激伝達経路が活性化されるのに、なぜ臨床効果の発現までに2~3週間を要するのか?

2)シナプス間隙のアミン濃度の上昇と、それに続くシナプス後膜の受容体およびセカンドメッセンジャー刺激経路の器質的な変化が抗うつ作用に関与するのではないかとの考えが提唱されてきた。

3)アミン再取り込み阻害薬(第一世代の抗うつ薬)の処置が、① 海馬神経やその周辺神経細胞(歯状回)の脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生を促進する

ことが観察されること、② BDNF産生能を欠いたマウスでは抗うつ効果が出ないことが報告された。

* J Neurosci. 2005 Feb 2;25(5):1089-94Brain-derived neurotofic factor and depressant drugs have different but coordinated effects onneuronalTurnover, proliferation, and survival in the adult dentate gyrus

4)Santarelli L. 達は、抗うつ薬の長期投与により、海馬とその周辺(歯状回)の神経細胞の増殖をマウスを用いた実験で確認した。更に、海馬とその周辺の神経細胞を破壊(X線照射破壊)したマウス、または遺伝子改変したマウス(5-HT1A

-/-)においては、抗うつ薬による神経細胞の増殖は見

られない。 Science, 301: 805, (2003)

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Requirement of hippocampal neurogenesis for the behavioral effects of antidepressants. Science 301:805 (2003)Santarelli L, Saxe M, Gross C, Surget A, Battaglia F, Dulawa S, Weisstaub N, Lee J, Duman R, Arancio O, Belzung C, Hen R. Center for Neurobiology and Behavior, Columbia University, New York, NY 10032, USA.

Various chronic antidepressant treatments increase adult hippocampal neurogenesis, but the functional importance of this phenomenon remains unclear. Here, using genetic 1)and radiological 2)methods, we show that disrupting antidepressant-induced neurogenesisblocks behavioral responses to antidepressants. Serotonin 1A receptor null mice 1)were insensitive to the neurogenic and behavioral effects of fluoxetine, a serotonin selective reuptake inhibitor. X-irradiation of a restricted region2) of mouse brain containing the hippocampus prevented the neurogenic and behavioral effects of two classes of antidepressants. These findings suggest that the behavioral effects of chronic antidepressants may be mediated by the stimulation of neurogenesis in the hippocampus.

・鬱病患者:脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor : BDNF)の量が減少している。・ 抗鬱薬が、海馬のBDNF及びその受容体(TrkB)発現を増加させる。・ BDNFが海馬神経新生を促進する。またBDNF遺伝子を減少改変したマウスでは、海馬神経新生が

減少し、海馬萎縮する。・ 抗うつ薬の海馬新生作用はBDNFノックアウトマウスでは見られない。

抗うつ薬→BDNFの発現増加→海馬神経新生

海馬ニューロンのストレス障害からの回復、さらなる障害から保護

BDNF発現量(濃度)を増加させて神経栄養作用を生じさせ、神経を新生させるまでに充分な時間が必

要。したがって、抗うつ薬の臨床効果に時間を要する。