酸化グラフェンを用いた樹脂複合材の 熱伝導性改善...
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はじめに
電子・通信機器の小型化やLED照明機器の高性能化に伴って、発生する熱を効率よく放熱する重要性が高まり、成形加工しやすい高熱伝導性樹脂複合材料の開発が進められている。もともと熱伝導率の低い樹脂を熱伝導性材料とする方法として、一般に高熱伝導性無機粒子を樹脂に充填することが行われている。無機粒子としてはアルミナがよく用いられているが、近年はアルミナよりも高熱伝導性の六方晶窒化ホウ素、安価な酸化マグネシウムが注目されている。
本稿は、著者らが見出した酸化グラフェン吸着による窒化ホウ素および酸化マグネシウムの表面改質方法、酸化グラフェン改質窒化ホウ素の熱伝導性について紹介する。
熱伝導性充填剤としての六方晶窒化ホウ素、酸化マグネシウム
1 . 六方晶窒化ホウ素(h-BN)h-BNは、窒素とホウ素からなる六角網平面が
積層した平板状の層状化合物で、炭素からなる六角網平面(グラフェン)が積層したグラファイトと似ている。平板状粒子の端面には水酸基やアミノ基等の官能基がある。一方、粒子の大部分を占める平面部分[(0001)面]は化学的に安定なため、官能基はなく、化学的修飾も困難である。非常に高い熱伝導率を有するが異方性がある(図 1 参照)1)。
一般に表面自由エネルギーが大きく異なる無機粒子を樹脂に混合する場合、両者界面の接着性をよくするために無機粒子表面を有機化することが行われる。現状はシランカップリング剤などを反応させる表面改質が行われているが、有効なのは官能基が存在する端面のみであり、粒子表面の大部分を占める平面部分には有効な表面改質手段がない。2 . 酸化マグネシウム(MgO)
MgOは、アルミナよりも安価で熱伝導性の高い(45 ~ 60 Wm-1K-1)点で高熱伝導材料用無機粒子として適しているが、水分との接触で水和して水酸化マグネシウムとなりやすく、その際に体積膨張を起こすので、高熱伝導性複合材の形状安定性に悪影響を及ぼす。さまざまなMgO粒子の表図 1 六方晶窒化ホウ素(h-BN)の模式図
㈱KRI 伊Itou藤 玄
Makoto*1、在
Zaima間 弘
Hiroaki朗*2
特集 自動車電動化で需要高まる静音・放熱のための材料技術
酸化グラフェンを用いた樹脂複合材の熱伝導性改善技術
*1 新機能性材料研究部 上級研究員 技術士(化学部門)*2 新機能性材料研究部 主席研究員 理学博士〒600-8813 京都市下京区中堂寺南町134☎075-322-6832
解説・事例-熱
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面改質が行われているが、安定性などの点で課題が残っている。
酸化グラフェンの無機粒子への吸着
1 . 酸化グラフェン(GO)についてGOは、グラファイトを酸化・剥離処理(ハマー
ズ法)することによって作製され、水酸基、エポキシ基およびカルボキシル基を有する1~数層のグラフェンであり、薄いシート状物質である(図2 参照)。通常は1重量%程度の褐色水分散液として利用される。2 . h-BNへのGO吸着
GO水分散液(図 2 参照)に撹拌しながらh-BN(D50粒子径11μm)を加えていくと、投入量に比例して上澄みの褐色(GOに由来)が薄くなり、GO 0.2~0.3gに対してh-BN 投入量100gくらいで無色透明となり、薄茶色の沈殿が生成した。
顕微ラマン分光を用いると、およそ1μm四方の分解能で任意のピークのマッピングを行うことができるので、h-BN上に存在するGOの分布を調べることができる。上記処理を行ったh-BN粒子のGOのGバンド(1590cm-1)のマッピングを行ってみると、任意の10粒子の測定ポイントのほぼ全てでGバンドが検出された(図 3 参照)。このことから、GOは単独で凝集沈殿などを起こしているのではなく、h-BN粒子に吸着したと考えられる。
大きなGOシートに対して小さなh-BNナノ粒子が吸着する事例[図 4(a)]2)は知られているが、ここで紹介するような、大きなh-BN粒子(3~100μm)に同等か小さなサイズのGOが吸着する逆パターンの事例は知られていなかった[図 4(b)]。GOシートに対して小さなh-BNナノ粒子が吸着するケースでは、吸着はファンデルワールス力によって起こるとされている。逆のパターンも、同じファンデルワールス力によると考えられる。
なお、板状h-BNの端面は水酸基により負電荷を帯びるので3)、同じ負電荷を有するGOは電気的反発を受けて吸着できず、結果として図 4(b)のように板状h-BN粒子の両面にGOが吸着したものが生成していると考えられる。3 . GOのMgOへの吸着
ここでは詳細は述べないが、MgOについても、
図 2 用いたGOのAFM像
(a)GO>h-BNの場合
(b)GO≦h-BN(GO修飾h-BN)の場合
GOシート
GO
h-BN
図 4 h-BNとGOの吸着形態の模式図
(a)分析粒子の顕微鏡像 (b)分析粒子のGバンドの分布
図 3 GO吸着h-BN粒子の顕微ラマン分光(一例)
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