民間企業が 海洋資源開発分野に 参入するために - …2011/01/17 ·...
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民間企業が海洋資源開発分野に
参入するために
海洋技術フォーラム幹事
東京大学 理事・副学長 大和裕幸
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本日の趣旨
海洋基本法施行から8年、グローバルに成長する海洋石油・ガス、海底鉱物資源、海洋再生可能エネルギー、海洋科学技術研究開発などへの我が国民間企業の海洋開発分野への参入が進みつつあります。今回のシンポジウムでは、海洋資源開発分野への我が国民間企業のさらなる参入のために、どのような取組がなされているか、また、どのような対策が必要かについて、産、官、学及び政治の各分野からの専門家を招き、多面的に討議を行います。
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はじめに
• 参与会 新海洋産業振興・創出PT• 主査 湯原哲夫参与 2015年11月18日逝去
• その議論のサマリー
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総論• 海洋国家のビジョン
• 海洋の平和的積極的利用と環境保全の調和をはかり新たな海洋立国を実現する• 経済基盤・国富の源泉
• 安全の確保
• 産業的利用と科学的知見の創出
• ビジョン実現のための産業創出• 開発・産業化・保全を総合的・一体的に行う
• 国家的合意のもとで産官学をあげての産業戦略
• 清新な新産業の創出
• 海洋産業先進国との協調・競争
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海洋新産業創出のステップとその内容、事例ノルウェーの経験をもとに
ステップ 内容 最近の事例
① 政策 政策目標と法整備(海域利用、環境規制)
海洋産業に関わる事例
1. ノルウェーの北海域の石油・天然ガス産業/8年
2. イギリスの海洋エネルギー産業 /8年(進行中)
3. デンマーク 洋上風力発電事業
4. ブラジル:深海底石油ガス田開発
5. 韓国の海洋エネルギー事業
6. 米国・カナダの海洋エネルギー事業
7. インドの大規模海洋エネルギー利用計画
② 基盤1. 公的研究機関におけるR&D2. 実証設備の建設、民間の利用促進3. インフラ整備
③新産業創出• 市場• 起業• 産業技術
1. 事業者の創出 (売る人)• 複数のベンチャーの競争• 公的資金による長期的融資
2. 産業技術・製造技術の構築(作る人)• 試作、実海域における実証試験をへて
商業化を図る
3. 市場の形成と全量買取り制度(買う人)
◎官民事業化プロジェクト→商業化プロジェクトへ
④ 産業競争力
1. 輸出産業として国際競争力(システムー標準—認証、輸出促進支援)
2. 途上国でプロジェクト創出(国際連携)5
各論1. 海洋石油天然ガス開発のための探査活動
2. 海洋掘削事業の国際競争力強化
3. 海洋プラント産業の基盤技術の強化
4. メタンハイドレート開発における民間企業の参画促進
5. 熱水鉱床等の開発における資源探査と生産システム開発の民間企業の活用
6. 海洋再生可能エネルギー
7. 海事産業等
「海洋開発をリードする人材育成」も課題6
① 海洋石油天然ガス開発のための探査活動
•我が国が開発可能な資源を確保するため、三次元物理探査船等により周辺海域での探査事業を行い、その成果を民間企業に引き継ぎ、探鉱活動を進める。
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② 海洋掘削事業の国際競争力強化
•海洋石油・天然ガス開発における大水深・極域の掘削を対象に、最新鋭掘削リグの開発を支援し、海洋掘削事業と掘削リグ製造事業を戦略的に強化する。
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③海洋プラント産業の基盤技術の強化
•我が国 EEZ 及び周辺海域にある小規模な天然ガス田を開発するため海洋プラント (サブシー・洋上プ口セス ・プラント技術) の開発計画を官民連携して企画・推進する。
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平成24年12月18日CIGS 第3回海洋シンポジウム「海洋立国への新たなる展開」 坂本氏の資料より
海洋石油・天然ガス資源の大部分は深海域に賦存し、開発事業は水深500m以上の深海域へと移っている
最深部では水深3000m付近で開発が行なわれるなど事業の成長分野は今後、ますます深海域に移行する
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スコットランドと日本のサブシ―分野における連携サブシー分野は技術革新が進行中、技術潜在力のある日本と連携
④メタンハイドレート開発における民間企業の参画促進
•メタンハイドレート・サブシ一生産システム分野において、国による支援等により民間企業の参入を促し、サブシー技術の機器製造などの新産業の創出に繋げる。
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総合海洋政策本部参与会議新海洋産業振興・創出PT平成27年11月18日石油資源開発株式会社副社長石井正一氏資料より13
日本メタンハイドレート調査株式会社(JMH)
総合海洋政策本部参与会議新海洋産業振興・創出PT平成27年11月18日石油資源開発株式会社副社長石井正一氏資料より14
⑤ 熱水鉱床等の開発における資源探査と生産システム開発の民間企業の活用
•商業規模での鉱量確保のため、民間の探査船も活用して資源探査を加速する。
•官民で資源データを共有して産業化資源の確保を加速すると共に、世界に先駆けた産業化を推進し海外の資源確保・開発への道を開く。
•実海域パイロット試験に向けて、採鉱・揚鉱・選鉱・製錬等を含む生産システムの開発を将来の事業主体と資機材供給企業が連携して行い、商業化を進める。
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http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/01/1354417.htm16
⑥ 海洋再生可能エネルギー開発
•世界最大級の規模の浮体式洋上プラントの実現を睨んで、商業化のための海域の実測データの取得、海洋土木技術の強化、系統連係等のインフラ整備、海域利用者との調整を進める。
•海洋エネルギー開発で各省と民間企業とで、導入目標に沿った中長期のロードマップを共有し、商業化を進める。
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英国政府主導 洋上風力発電「ラウンド1~3」の全体計画
ラウンド 沖合 年 設備 年間発電量 風車建設費(推定)
1 2.5km 2001~ 1.5GW 4TWh 6000億円
2 11 2003~ 7.1 19 2兆8400億円
3 100~300 2010~2020 32.0 84 12兆8000億円
計 40.6GW 107TWh 16.2兆円
戦略的ロードマップの作成導入目標の設定により、市場への信頼性が上がる
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英国政府による洋上風力発電事業推進のための戦略的な環境整備
発電コスト削減目標:現在22円/kWh。2020年までに、19円/kWhへ洋上風力発電産業はまだ未成熟。コスト削減余地は大きい。
2015年11月5日(木)14:00~17:30海洋セミナー 「欧州の海洋再生可能エネルギー開発の現状と日本の現状」より
均等化発電原価の内訳をみると、設備投資で最大の割合を占めるのは• タービン(31%)• 基礎工事(15% )• 変圧(15% )、• 設置工事(約18%)
イノベーションによる
コスト削減ポテンシャルは 25‐40% 程度。
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英国政府による洋上風力発電事業推進のための戦略的な環境整備
英国政府による洋上風力発電事業推進のための戦略的な環境整備開発可能海域の特定
洋上風力発電の開発を推進する上で、まず海洋・海底の土地や資源の帰属や権限についての規定が必要
英国では、2004 年に「エネルギー法」を制定し、洋上の大気及び水の流れ(風力、潮力、波力等)からエネル
ギーをつくり、そのエネルギー輸送を行う目的などのために利用可能な海域として、領海を越えた排他的経済水域を「再生可能エネルギー海域(Renewable Energy Zone, REZ)」として指定。
REZ における開発ライセンス付与する実施機関として、英国王室の資産管理会社である The Crown Estateを指定。
開発を進め易くする体制整備の一環として、最初に政府が体系的な調査(例:英国政府が実施した戦略的環境アセスメント)を実施する等して、風況以外にも様々な
活動や制約状況をふまえた開発可能海域あるいは候補地を事前に絞り込んだ。
進行中の実証事業の成果等を活用し、開発可能海域マップを作成し、迅速なスクリーニングを可能にし、事業者の開発を進めやすくする基盤整備を実施。
2015年11月5日(木)14:00~17:30海洋セミナー 「欧州の海洋再生可能エネルギー開発の現状と日本の現状」より
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⑦海事産業等
•シエールガス等の新しいエネルギー資源の輸送等の海上輸送の分野における新たな動きに迅速に対応するとともに、海洋開発市場の成長を取り込むべく市場への参入を開始している海事産業(海運・造船等) の成長を支援する。•また、資源開発企業やエンジニアリング企業を含め、我が国の裾野の広い総合的な海洋産業の形成を進める。•理学的探査などの科学的知見の創出も必要
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海洋開発をリードする人材の育成
• 海洋開発技術者の育成をオールジャパンで推進するため、産学官を挙げたコンソーシアム
• 大学では、企業から派遣された講師が、実践的な授業を展開し、企業が提供する実際の事業現場で実習も行う。
• 現在2000人程度とされる、日本の海洋開発技術者の数を、2030年までに5倍の1万人程度に引き上げる
「未来の海パイオニア育成プロジェクト」
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/0720uminohi.html 22
2000~2010年の実績を評価する 2011.1.17 海技研で講演/湯原哲夫氏
海洋エネルギー実用化へ向けた政策、基盤、技術力1990 年代のトッ
プランナー日本
は 2000 年前後か
らの世界の動き
(政策,買い取り
制度,公的開発基
盤の整備,ベンチ
ャーへの公的資
金支援)に取り残
され、今や周回遅
れで、世界の海洋
エ ネ ル ギ ー 利
用・開発のプレー
ヤーとしてすら
認められていな
い( 欧米の後追
いながらも、韓国
中国、インドの積極的推進にも比較できない程の遅れが報告されている.OECD-IEA 海洋エネルギー部)
項目 具体的施策 欧州 米国 中国 韓国 日本
政策 誘導する政策
買取制度、税制支援、政策
目標,規制緩和
◎
◎
◯
◎
X
基盤 公的基盤整備
系統接続、実証設備、投融
資制度、シーグラント制度
◎
◯
△
◯
△
事業化 技術開発(テクノロジ)と
実証(エンジニアリング)
自国の大規模実用 PJ
◎
◎
△
◯
△
競争力 途上国の公的プロジェク
トに、開発商用機の大量輸
出(製造は現地)
◎ ◯ X △ ◯
総合
順位
◎
1
◎
2
◯
4
◯
3
△
5
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まとめ• EEZフィールドでの国富の獲得
• すでにある技術的蓄積• 国際協調も必要
• 開発から産業化までのロードマップ作成• 政策から事業まで見据えた展開
• 国のリードと民間意見の反映• 産業化まで視野に入れた産官学連携
• 理学工学と産業の総合展開• 理学探査+工学システム+産業・経済メカニズムへの展開
• 技術者教育システムの展開
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