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Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 諸外国におけるバーチャルパワープラントの実態調査 報告書 2017年2月

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諸外国におけるバーチャルパワープラントの実態調査

報告書

2017年2月

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サマリー

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1.調査の目的・概要

VPPの類型・ビジネスモデル

上記類型に対応する諸外国のVPP事例

VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向

VPP事業に関連する規制体系

日本のVPP導入状況・規制体系との相違点

諸外国における VPPの全体像

実証/商用フェーズにおける政策的支援スキーム(卸取引市場、アンシラリー市場や電気料金、託送料金における手当て)

今後の支援スキームに関する規制当局等の考え、議論状況

VPP導入・拡大を 支援するスキーム

VPP等拡大に伴う送配電網や電気料金への影響

VPP普及拡大に向けて、各国で議論されている課題及び対応の方向性

VPP及びその構成要素の拡大 に伴う課題、対応状況

調査対象として欧州2か国(独、英)、米国2地域(NY州、CA州)の規制機関・系統運用者・VPP事業者等を想定

聴取項目としては、VPPのビジネスモデルと規制運用状況、分散型リソース導入拡大に伴う課題とその対応状況を想定

海外現地調査

第1回 (1/16)

• VPPの定義

• 欧米におけるVPP事業成立要因の整理

• VPPの類型

• 主要VPP事業者のビジネスモデル

• VPPを構成する技術要素の導入傾向

• VPP/構成要素の拡大に伴う課題、対応状況

第2回 (2/7)

• VPPの類型

• VPP/DER導入促進策の例

• VPP事業に関連する規制体系

• VPP及びその構成要素の拡大に伴う課題、対応状況

第3回 (2/24)

• 諸外国の課題とその対応策まとめ

• 政策の方向性の検討

諸外国における①VPPの類型、VPPの構成要素となる再エネ関連技術導入の見通し、②VPP普及拡大を推進する仕組み、③VPP普及拡大に伴う課題と対応状況という観点で調査し、今後のVPPの商用展開を検討する際の材料とする

調査の目的

調査の概要 勉強会の概要

≪委員一覧≫ (敬称略・五十音順) 池田 千鶴 神戸大学 教授 太田 豊 東京都市大学 准教授 坂本 織江 上智大学 准教授 曽我 美紀子 西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士 筑紫 圭一 上智大学 准教授 華表 良介 The Boston Consulting Group パートナー 花田 真一 金沢星稜大学 准教授 細江 宣裕 政策研究大学院大学 准教授

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2.調査結果の概要

米国(NY州・CA州)

欧州(独国・英国)

日本への示唆

諸外国における VPPの全体像

DERをアグリゲートするアグリゲーターと、アグリゲータを束ねるリソースアグリゲーター*の2層の事業モデル

DERは商工業需要家が所有するDR

+蓄電池が中心

CA州等ではVPPの法的位置づけが制度上明確化されているが限定的。通常の電源と同様の技術要件。

卸市場・需給調整市場を収益源とするも、将来的には需要家向けエネルギーマネジメントを標榜

スタートアップが既存のCHP等のDERを中心にVPP事業を実施

DERは商工業需要家が所有するCHP/REが中心

特段法的な位置づけはない。通常の電源と同様の技術要件。

卸市場・需給調整市場に加え、需要家向けエネルギーマネジメント(Market

Premium)も収益源の一つ

日本固有の系統事情も踏まえたVPPの活用方法の検討

VPP商用拡大に対応した制度・市場の整備の是非・内容

VPP導入・拡大を 支援するスキーム

DER諸手続きの簡易化

(系統連系上のファストラック等)

市場の特別枠

(【PJMエリア】reg-D)

市場の特別枠

(【英国】STOR Runway等)

入札単位の変更

( 【独国】50→10→5MW

【英国】50→10MW)

標準化

(【独国】VHP Ready)

VPPに特化した市場参加枠設置の是非・方法

DERアグリゲーションに関わる技術的な標準化の推進

VPP/構成要素の 拡大に伴う

課題、対応状況

DER拡大を前提とした、配電事業者の収益源確保に向けた取組が進捗

託送料金の設計において、スタンバイ料金を含めた料金設計の組合せの検討が進捗

DERの価値評価に向けた取組

TSOを中心に託送料金の制度変更が進められているものの、DSOレベルでの検討は不十分

(【英国】TSOではゾーン別料金)

配電系統に接続される電源に対しては接続料金等による回収を前提

今後拡大するプロシューマ向けは、スタンバイ料金が必要となると認識

DERの導入拡大に対応した効率的な設備形成・運用へのシフト

DERの導入拡大により発生する送配電網のコストの負担の在り方

送配電網の効率的な利用に資するネットワーク利用に資する手当の是非・方法

* CA州ではScheduling Coordinatorと呼称

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本編

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目次

目的・背景等 ・・ 6

I. 諸外国におけるVPPの全体像 ・・ 8 1. VPPの定義

2. VPPの類型・ビジネスモデル

3. VPPの類型に対応する諸外国の具体的事例

4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向

5. VPP事業に関連する規制体系

II. VPP導入・拡大を支援するスキーム ・・90 1. 導入拡大に向けた支援策

2. 市場参画に向けた支援策

III.VPP及びその構成要素の拡大に伴う課題、対応状況 ・・102 1. VPP等拡大に伴う送配電網、電気料金への影響

2. 諸外国における対応状況

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目的・背景等 -調査目的-

仕様書を踏まえ、以下の通りの目的で調査を実施。

政策の方向性

<仕様書より>

(1)高度なエネルギーマネジメント技術活用して、ネットワークに分散して存在する再生可能エネルギー、蓄電池等のエネルギー資源や、高度な需要管理手法であるディマンドリスポンスなどを統合し、あたかも一つの発電所(仮想発電所)のように機能させることVPP(Virtual Power Plant)の台頭。

(2)エネルギー・リソース・アグリケーション・ビジネス検討会およびリソースアグリゲーションビジネス実証事業などによる国内導入の機運。

(3)電力・ガス取引監視等委員会では送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討ワーキング・グループを設立し、VPPを始めとした高度なネットワーク利用に関する送配電ネットワークへの影響及び託送料金上の対応について検討を開始。

(4)このような状況を踏まえ、諸外国における①VPPの類型、VPPの構成要素となる再エネ関連技術導入の見通し、②VPP普及拡大を推進する仕組み、③VPP普及拡大に伴う課題と対応状況という観点で調査し、今後のVPPの商用展開を検討する際の材料とすることを本調査の目的とする。

分散型エネルギーシステムへの移行

エネルギーリソースアグリゲーション ビジネスの国内導入機運

高度なネットワーク利用

目指すべき姿 背景・外部環境変化

VPPの普及拡大を推進

≪産業政策の観点≫

系統利用の課題解決

≪エネルギー政策の観点≫

分散型エネルギーリソースの有効活用

高度なネットワーク利用のための

課題とその解決

アグリゲーションビジネスの推進

本調査では、先行する欧米諸国の事例調査などを踏まえ、日本国内におけるVPPの商用展開を図るための施策検討の材料を提供

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目的・背景等 -調査の進め方-

調査の全体像は以下の通り。計3回の勉強会を開催。

第1回 勉強会

時期 アジェンダ

1/16

本勉強会の目的、アウトプットイメージの共有

VPP事業の状況、全体像、課題(1)

海外調査の概要

次回に向けた準備

海外調査実施

第2回 勉強会 2/7 VPP事業の状況、全体像、課題(2)

海外調査結果の報告 最終報告書

第3回 勉強会 2/24 VPP事業の状況、全体像、課題(3) 【最終報告】

わが国の政策の方向性について -

VPPの類型・ビジネスモデル

上記類型に対応する諸外国のVPP事例

VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向

VPP事業に関連する規制体系

日本のVPP導入状況・規制体系との相違点

諸外国におけるVPPの全体像

実証/商用フェーズにおける政策的支援スキーム(卸取引市場、アンシラリー市場や電気料金、託送料金における手当て)

今後の支援スキームに関する規制当局等の考え、議論状況

VPP導入・拡大を支援するスキーム

VPP等拡大に伴う送配電網や電気料金への影響

VPP普及拡大に向けて、各国で議論されている課題及び対応の方向性

VPPおよび構成要素の拡大に伴う課題・対応状況

調査対象として米国2地域(NY州、CA州)、欧州2か国(独、英)の規制機関・系統運用者・VPP事業者等を想定

聴取項目としては、VPPのビジネスモデルと規制運用状況、分散型リソース導入拡大に伴う課題とその対応状況を想定

海外現地調査

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Ⅰ.諸外国におけるVPPの全体像

1. VPPの定義

2. VPPの類型・ビジネスモデル

3. VPPの類型に対応する諸外国の具体的事例

4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向

5. VPP事業に関連する規制体系

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1. VPPの定義 -DR・マイクログリッド・スマコミとの比較(1/2)-

バーチャルパワープラント(VPP: Virtual Power Plant)とは、分散設置されたエネルギーリソース(発電設備、蓄電設備、需要設備)をICTを活用してアグリゲーションし、あたかも一つの発電所のように制御する技術のこと。

大規模工場

水力発電所

ウィンドファーム 火力発電所

店舗 屋根置き太陽光発電・

蓄電池 電気自動車

送電ネットワーク

配電ネットワーク

メガソーラー

マイクログリッド スマートコミュニティ

電気 熱

マイクロCHP

CHP

VPP/DR

VPP:供給力提供(逆潮あり) DR :需要の削減(逆潮なし)

EMS EMS

VPP

DR

出所)三菱総研作成

※DR : Demand Response (ディマンドリスポンス)

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1. VPPの定義 -DR・マイクログリッド・スマコミとの比較(2/2)-

VPP、DR、マイクログリッド、スマコミを、使用するエネルギー設備、電力系統との接続形態、商用化レベルにて整理。

VPP・DRは、電力を対象としているのに対し、マイクログリッド・スマートコミュニティは電力のみならず熱も対象。

マイクログリッド・スマートコミュニティは特定エリア内のエネルギー設備を対象としているのに対し、VPP・DRは地理的な近接性は問わない。

出所)各種資料より三菱総研作成

エネルギーリソース

系統との接続 商用化レベル 電気 熱

発電 蓄電 需要 供給 蓄熱 需要

VPP (バーチャルパワープラント) ✓ ✓ ✓ 設備ごと連系 欧米で商用化

DR注

(ディマンドリスポンス) ✓ 設備ごと連系 欧米で商用化

マイクログリッド ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ 連系点での一点連系

(自立系統可)

米国では軍事基地等

で導入

スマートコミュニティ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ 設備ごと連系、

または連系点一点連系 ―

※注 ネガワットはDRの一部で需要削減のこと。需要造成をポジワットと呼ぶ。

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1. VPPの定義 -DERの定義-

日本における分散型エネルギーと諸外国におけるDER(Distributed Energy Resources)を比較。

わが国における分散型エネルギーは比較的小規模な電源の総称。

一方、諸外国では、配電系統に接続されているものをDER (Distributed Energy Resources)と呼ぶのが一般的。

わが国における「分散型エネルギー」

出所)分散型エネルギーについて、資源エネルギー庁、2015.4

比較的小規模で、かつ様々な地域に分散しているエネルギーの総称であり、従来の大規模・集中型エネルギーに対する相対的な概念

分散型エネルギーには、①使用するエネルギー機器の別、②電気・熱といったエネルギー形態の別、③機器単体か、複数機器の組合せで使用するのかの別など、様々な形態が存在

諸外国における「DER (Distributed Energy Resources)」

配電系統に直接接続されている屋根置き太陽光発電(rooftop PV)や小規模な発電設備などをDERと呼ぶ

配電系統の混雑等の課題は配電事業者が管轄

既に設置されているDERを活用することで新規投資などが不要になるという点から注目を浴びている

出所)EDSO for smart grid ウェブサイト

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2. VPPの類型・ビジネスモデル -欧米におけるVPP・DRの事業成立の背景-

VPP、DRなどが商用化されている国・地域の事業背景と事業成立要因を下図にて整理。

VPPは、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う制度変更(FITからFIP or自家消費へ)と、需給調整市場における供給力確保の2つの要素が事業成立要因であり、主として欧州(主にドイツ、イギリス)で事業として成立しつつある。

DRは、一定の要件を満たした需要反応(負荷抑制)を、卸電力市場における取引価格と同等と認めることにより供給力として活用するもので、主として米国の一部州及び欧州の一部の国で事業として成立している。

電力需給逼迫 需給調整市場

事業制度改革

ディマンドリスポンス

DR

供給力確保のための卸取引市場及び需給調整市場への参加のための制度設計

設備投資の不確実性増加に伴う電源投資の抑制と設備休廃止

アンバンドリングによる系統運用のための需給調整市場の創設

DRPの価格指標 電源投資と比較した費用対効果

需給調整市場 再生可能エネルギー

事業制度改革 FIT制度

Virtual Power Plant

VPP

FIT導入による再生可能エネルギー大量導入

再生可能エネルギーの出力制御ニーズ(FIP制度への移行)

需給調整力確保のための小規模電源の市場参加

再生可能エネルギー導入による調整電源減少

アンバンドリングによる系統運用のための需給調整市場の創設

再生可能エネルギーの付加価値

VPPの価格指標

欧州:再生可能エネルギー等分散型リソースの付加価値付与(Feed in premiumなど)、需給調整市場の追加的供給力確保

米国:事業制度改革に伴う発電設備投資抑制に伴い、供給力不足を解消するために需要反応の市場参加の環境整備

欧州:再生可能エネルギー導入に伴う既存発電設備の市場退出に伴う供給力不足解消のための需要反応の市場参加の環境整備

出所)各種資料より三菱総研作成

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≪参考≫VPPの意味合い

VPPが意味する内容の経緯は以下の通り。

VPPという言葉は、当初は2001年頃のフランスにおけるVPPオークションの概念からスタート。

現在では、分散型リソースを活用し、大規模電源と同等の機能もしくは大規模集中型システムと同等のサービスを提供するビジネススキームを総称するようになっている。

VPPオークション

(Dis-aggregation)

VPP

(Aggregation)

概要 主な国・地域、事業者

電力会社の合併等により卸市場の寡占状態などを回避するため、大規模電源の容量を一部切り出して競売にかけるもの

原子力発電等ベースロード電源の切り出しによる卸市場活性化のための措置

フランス EDF (2001-2010)

ベルギー Electrabel (2003-2005)

イタリア Enel (2007-2008)など

小規模分散型リソースを集約し、大規模電源と同等の機能(競合:発電コスト)を提供することを目的としたビジネススキーム

日本ではさらにここから拡張し、需要サイドの需給制御(自家初自家消費など)も提供するビジネススキームも検討が進んでいる

ドイツ NEXT KRAFTWERKE, Energy2Market

米国 Enernoc, Comverge

英国 Flexitricity, Pearlstone Energy など

出所)各種資料より三菱総研作成

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≪参考≫リソース保有型とリソース非保有型の事例(蓄電池)

蓄電池の保有形態の違い

米国では蓄電池を用いたビジネスが台頭しているが、蓄電池の保有を自社/リースとそれぞれ変えることでリスクのとり方を変えている。

自社保有

SolerCity Sunverge

電力会社

スタートアップ企業

AES

Green Charge

Networks NextERA

システム提供方法(リスクの取り方)

NextERA 自社保有の再エネ発電所に蓄電池を設置

顧客に自然エネルギー発電の電力を低価格で販売

Green Charge Networks リースだが、初期投資・リース料は無料 システムによって削減された電気料の一部を顧客から獲得

AES ユーティリティへの販売のほか、自社保有発電所に併設 技術+運用・保持能力があり、フルターンキーシステムで提供

Sunverge ユーティリティ企業、不動産デベロッパーが主要顧客 一般家庭など、特定の地域に集中的にシステムを提供

Stem

Stem, SolarCity Stemは商用施設、SolarCityは一般家庭が主要設置場所 リースにより、蓄電池システムを提供

出所)各種資料より三菱総研作成

リース販売

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2. VPPの類型・ビジネスモデル -VPPの類型(1/2)-

提供価値(収益機会)によるVPPの類型化

VPP事業者が提供するサービスは「調整力」「卸電力」「需要家向けエネルギーマネジメント」の3種類。

VPPの事業は、「調整力」提供から、「卸電力」取引にその事業範囲を順次拡大する動き。

「需要家向けエネルギーマネジメント」は、多くの実証事業の段階であり商用化は一部の地域・DERでのみ実用化している。

注1:kWだけでなく、kWhによる対価支払も可能 注2:ネガワット(需要削減)の概念も含む

VPP事業者が提供するサービスとその概要

出所)各種資料より三菱総研作成

事業展開の方向性

提供サービス サービス提

供先 概要 主な事業背景

調査対象国における実績

米NY 米CA 独 英

調整力(kW)注1 送配電事

業者

平常時または緊急時に行う需給調整のために、送配電事業者が事前に確保しておくべき容量(調整力)を提供

送配電事業者がリソース稼働を指示し、VPP事業者がそれに対応

再生可能エネルギー電源の増加に伴う調整力ニーズの増大

蓄電池等の応答性・制御性に優れるリソースの増加により、これまで大規模電源が提供していた調整力を、需要側設備が提供することが可能に

○ ○ ○ ○

卸電力(kWh)注2

小売電気事業者

発電事業者

供給力としての電力(ネガワット含む)を電気事業者(小売・発電)に提供

相対取引および卸電力取引市場を通じたやりとりで提供

VPP事業者は、契約時に決められたスケジュールで電力を提供

分散型エネルギーリソースのコスト低減と性能向上により、卸電力市場で大規模電源と競合できるレベルでの電力取引が可能に

△ △ ○ ○

需要家向け エネルギー マネジメント

需要家

需要家に導入されたエネルギーリソース(太陽光発電(PV)、蓄電池など)を制御し、ピークカット、安価な夜間電力活用、PV電力の自家消費最大化、等の需要家向けサービスを提供

基本的に遠隔制御を実施

再生可能エネルギー等分散型エネルギーリソース(DER)の増加に伴い、これらの電源をマネジメントし、需要家にとっての導入メリットを最大化するニーズが増加

将来的には、自家発自家消費への方向性

○:商用化されている △:一部のDERで商用化されている

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2. VPPの類型・ビジネスモデル -VPPの類型(2/2)-

事業形態による事業者別の類型

欧米のおけるVPP事業者として、電力会社(小売電気事業者)が付加サービスの1つとして実施しているケースと非電力会社がリソースを調達したうえでアグリゲーションサービスを提供しているケースに分類できる。

非電力会社ケースでは、需要家のリソースを直接制御するアグリゲーターと、アグリゲーターのリソースを統合制御するリソースアグリゲーターに分類できる。また、活用するリソースについても、自社資産/他人資産で区別できる。

電力会社 非電力会社

小売部門 (または関連会社)

アグリゲーター リソースアグリゲーター

リソース保有型 リソース非保有型

概要

小売電気事業者(あるいはその関連会社)が需要家(電力供給先)のリソースを制御して付加サービスを提供するもの

自社リソースも含めたDERを束ねてサービス提供

DERを束ねてサービス提供。 (第三者とメリットシェアリングを実施)

直接DERを束ねず複数のアグリゲーターを束ねてサービスを提供。 (CA州におけるScheduling Coordinatorと類似)

制御対象 リソース

電力供給先(需要家)が保有している電力消費機器、蓄電池等

自社で設置したリソース(蓄電池など)

第三者が保有するあらゆる分散型リソース。自社では基本的に保有しない

― (アグリゲーターを束ねて、市場取引を実施する主体であり、エネルギーリソースには直接関与しない)

提供する サービス

調整力 (送配電事業者向け)

〇 〇 〇 〇

卸電力 (小売事業者向け)

〇 〇 〇 〇

エネルギーマネジメント 〇 △ 〇 ×

事例 SCE

PG&E AES ES

NextKraftwerke Stem

Sumverge Olivine

出所)各種資料より三菱総研作成

○:商用化事例あり △:先行的商用化事例あり ×:商用化事例なし

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2. VPPの類型・ビジネスモデル -VPPの事業環境の整理-

本調査の調査対象国・地域におけるVPPに関連する事業環境を整理。

各国・地域における電力需給、需給運用、事業体制は現状日本とは異なる事業環境にあり、商用化したVPPに活用されているDERは比較的規模大きい需要家を対象としたものが中心である。

米国 欧州 日本

NY州 CA州 ドイツ 英国

電力需給 • 需要・ピークともに増加傾向 • 需要・ピークとも増加傾向(ダックカーブ)

• 需要は横ばい

• 電力輸出の拡大

• 需要は横ばい • 需要、ピークともに減少 (RE出力抑制)

需給運用 • NY州内で需給バランス • CA州内で需給バランス (一部域外との融通有)

• 欧州単一市場に向けた広域運用のための制度設計

• 同左 (ただし物理的連系容量制約若干有)

• 電力会社エリア内で需給バランス+広域運用

事業体制 • ISO+TDSO • ISO+TDSO • TSO+DSO • TSO+DNO • TDSO

DER導入に関わる 政策的位置づけ

• NEM

• DERの活用によるピーク需要削減と送配電投資抑制

• REはPV、風力の比率高

• NEM

• 同左 +ロードカーブ改善

• REはPV、風力の比率高

• REは優先給電

• FITからオークション(卸取引市場への直接投入)

• REはPV、風力、バイオマス

• REは非優先給電

• RO/FITからCfD

• REは風力、バイオマス

• FITによるREの導入(原則優先給電)

• 2017買取スキーム変更

• REはPVの比率高い

VPP事業の現状 • DRの市場参画を契機に市場機会

• NY州REVによるDER活用施策により市場拡大傾向

• DRの市場参画を契機に市場機会

• CA州のRE及び蓄電池導入施策により市場拡大傾向

• DERの需給調整市場への参画を契機に市場機会を拡大

• DRの市場への参画を契機に市場機会を拡大

• 実証事業段階

• 電力各社の調整力公募でDRの活用

特記事項 • DSIPにより各ユーティリティがDER活用プラン

• 蓄電池を活用したピークシフトにおけるVPPの活用

• DRPにより各ユーティリティがDER活用プラン

• DERサービスプロバイダのためのScheduling coordinator

• 市場参加以外にFIPを活用したREマネジメントも実施

• 集約するDERは数百kW規模以上

• DNOの課題(系統増強、電圧問題等)解決のためのVPP活用

• 蓄電池を活用したVPPの事業機会創出

• 実証事業では比較的小規模DERも活用

• 2020年アンバンドリング

TSO : Transmission System Operator DSO : Distribution System Operator DNO : Distribution Network Operator ISO : Independent system operator

FIT : Feed in Tariff FIP : Feed in Premium RO : Renewable obligation CfD : Contract for Difference NEM : Net energy metering

RE : Renewable energy DER : Distributed energy resources DR : Demand response REV : Reforming energy vison DSIP : Distributed system integration plan DRP : Distributed resources plan

出所)各種資料より三菱総研作成

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2. VPPの類型・ビジネスモデル -VPPに活用するDERの範囲-

本調査の調査対象国・地域における商用化されたVPPに活用するDERの範囲を整理。

商用化されたVPPは、比較的コントロール容易でアグリゲーションコストが小さい、商工業需要家が保有するCHP(コジェネレーション)、自家発電設備(非常用自家発等)、需要(DR)、再生可能エネルギー電源(バイオマス等)を活用する事例が多い。

家庭用需要家をアグリゲーションしてDRP(Demand response program)に活用する事例はほとんどないが、米国におけるDRの事例としてComverge*が挙げられる。

欧州では再生可能エネルギー電源もVPPに活用されており、従来は制御が容易なバイオマスが中心であったが、近年は風力などの電源にもその範囲を拡大している。

出所)各種資料より三菱総研作成

国・地域 商工業需要 家庭用需要 蓄電池

CHP/自家発 再生可能エネルギー 需要(DR) 分散電源 需要(DR)

米国NY ○ ○ ○

米国CA ○ ○ ○

ドイツ ○ ○ ○ ○

イギリス ○ ○ ○ ○

*:Comverge: 家庭用需要家のデマンドレスポンスを対象とした事業を米国東海岸を中心に展開 (http://www.comverge.com/home/demand-response/open-market-programs/ny-iso/)

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2. VPPの類型・ビジネスモデル -VPP事業の取引の流れ(1/4)-

VPP事業の流れは以下の通り。

VPP事業者は、予め需要家と契約を結び、需要家が保有するリソース(蓄電池、需要機器など)の制御権を保有する必要がある。

次いで、VPP事業者は電力会社との間で、電力やネガワット、調整力の提供を行う契約を結ぶ。取引の形式として、相対契約だけでなく、取引所を通じた取引も欧米では一般化しつつある。

実需給の段階では、計画時の取引に従って電力や調整力の供出を行う。その際に、VPP事業者は需要家のリソース制御を行っている。

需給後は、稼働パフォーマンスに応じた精算を行う。またVPP事業者と需要家の間でも精算(メリットシェア)を実施する。

精算 需給 計画 リソース確保

VPP事業者

需要リソース

小売/発電事業者 送配電事業者

VPP事業者

需要リソース

契約

相対取引 取引所取引

kWh提供契約 (ポジワット、

ネガワット)

相対取引 取引所取引

kW提供契約 (調整力)

リソース状況確認 マッチング

小売/発電事業者 送配電事業者

VPP事業者

需要リソース

kWh提供 (ポジワット、

ネガワット)

調整力 提供

制御、 エネルギーマネジメント リソース稼働

稼働 司令

小売/発電事業者 送配電事業者

VPP事業者

需要リソース

メリット シェアリング

支払

VPP事業における一連の取引(電力、金銭)

支払

出所)各種資料より三菱総研作成

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2. VPPの類型・ビジネスモデル -VPP事業の取引の流れ(2/4)-

調整力の種類と取引機会からみた取引の流れ

調整力は、役割や応答性能などに応じて細かく分類される。欧米では、その種別ごとに調整力の調達が行われており、VPPの寄与も可能となっている。

取引機会としては、送配電事業者が定期的にオークションを行うことが一般的。また、前日市場や当日市場の段階でもオークションが実施されている場合が多い。GC後はリアルタイム市場が開設され、実需給時の差分を調達する市場が存在。

我が国ではこれまで電力会社が自社電源の一部を予備力として確保していたが、今年度から調整力公募が始まったところ。

平常時

緊急時 一次予備力 二次予備力

三次予備力

その他 (電圧安定化

など) 前日

長期 (一年前、一か月前

等)

容量オークション

相対契約

前日 オークション

当日

当日 オークション

GC後

リアル タイム市場

精算 需給 計画(⇒取引機会)

周波数変化に対応した有効電力のガバナ等による自動出力調整

市場参加者に義務的に割り当てられることが多く、VPPの市場対象ではない場合が多い

送配電の指令に基づき、LFC等で出力の調整を行うための予備力

VPPの参画事例あり

緊急時に二次予備力を起動させた後、平常時に復帰させるために稼働させる予備力

VPPの参画事例あり

GC (ゲートクローズ)

調整力として、無効電力制御による電圧安定化サービスなども存在

VPPの参画事例は見当たらない

精算

需要リソースの制御実績に基づいて精算

出所)各種資料より三菱総研作成

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≪参考≫調査対象各国における調整力の定義

調査対象各国では、主に二次・三次予備力調達市場で、VPP事業者の参画(需要リソースの投入)が可能になりつつある。当初は三次予備力が主な対象であったが、蓄電池のコスト低減や制御ノウハウの蓄積等により、二次予備力にVPPの事業範囲は広がっている。

下図のように各国で調整力の内容(定義)や名称は大きく異なる。VPP事業の海外事例整理にあたっては、サービス対象となる予備力の内容に注意する必要あり。

国・地域 一次周波数制御予備力 二次周波数制御予備力 三次周波数制御予備力

米国 PJM

周波数応答予備力 (30秒(no recommendation))

(>±0.036Hz)(義務(無償))

運転予備力(最大発電ユニット相当)

30分超予備力 周波数制御(5分)(最大電力の0.7%)

(限界価格方式) 瞬動予備力(10分) クイックスタート(10分)

米国CAISO

周波数応答予備力 30秒(no recommendation))

(>±0.036Hz) (義務(無償))

運転予備力

代替予備力・補完エネルギー 周波数制御(10m) コンティンジェンシー予備力

瞬動予備力(10分) 非瞬動予備力 (10分)

ドイツ 一次予備力(5秒) (<±0.2Hz) (663MW) (義務(提供時有

償))

二次予備力 (5分) (2,000MW以上)

(Pay as Bid)

ミニット予備力 (15分) (最大電力の3%) (Pay as Bid)

時間予備力・緊急時予備力

イギリス

周波数応答予備力

N.A.

運転予備力(5分) コンティンジェンシー予備力(5分-120分)

一次応答/二次応答/高周波数 (10秒, 30秒) (>±0.2Hz,

>±0.5Hz) (義務(提供時有償))

ファスト予備力(2分) ファストスタート

(5分) 短期運転予備力 (5分-120分)

BMスタートアップ (ホットスタンバイ)

調査対象各国における調整力の名称・分類

VPP事業者の参画が徐々に可能に

出所)各種資料より三菱総研作成

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2. VPPの類型・ビジネスモデル -VPP事業の取引の流れ(3/4)-

卸電力の取引機会と取引の流れ

VPP事業者による卸電力(kWh)取引機会として、先渡市場や前日市場、当日市場が存在。

欧米では、先渡市場は相対取引と市場取引の双方が存在し、前日・当日取引は、取引所や系統運用機関(TSO)が運営する取引が主体。これらの市場でVPP事業者の参画が実現。

我が国では、2017年を目途にネガワット市場が開設されるが、下記の前日取引または当日取引に相当する枠組みと考えられる。

精算 需給 計画(⇒取引機会)

卸電力の取引機会

先渡 市場

(数年~1か月)

前日 取引

(1日前)

当日 取引

(GCまで)

リソース 稼働

精算

市場の 概要

VPPの 参画

相対取引や市場での先渡取引等により電力を調達

1日前市場で需給の過不足分を取引

前日取引終了後に発生した需給過不足分を当日に取引し、需給計画を確定(GC)

相対契約等により、VPP事業者が電力会社に対して需要リソースの制御を請け負う

1日前市場で需要リソースを投入

当日市場で需要リソースを投入

GC

VPP事業者は、相対取引や市場取引で取り決められたスケジュールに従って需要リソースを制御

需要リソースの制御実績に基づいて精算

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2. VPPの類型・ビジネスモデル -VPP事業の取引の流れ(4/4)-

需要家向けエネルギーマネジメント

現在のVPP事業は、アグリゲートされたリソースが既存の発電設備と同等の経済性を有することを前提として、前述のように電力提供や調整力提供が主な事業であった。

今後は、リソースの小型化やニーズの多様化を踏まえて、需要家向けのエネルギーマネジメントサービスへの事業拡大が想定されるところ。

この分野に関しては、我が国のVPP実証を含めて、各国で実証事業が行われているところ。

ピーク電力削減 ピークカットを行い、需要家のデマンドチャージを下げる

デマンドチャージが存在する業務・産業需要家が主な対象(家庭は対象外)

昼夜間料金値差利用 電気料金の安い夜間に充電し、高い昼間に放電することにより、電気料金支払額を削減

電源構成におけるベース電源の割合等により昼夜間料金値差が変化する可能性

PV余剰電力の充放電 需要家が設置したPVの余剰電力を蓄電し、夕刻以降に放電することでPV自家消費を推進

FIT価格が電気料金単価より安価な場合に有効

BCP (Business continuity

planning)

停電時等における電力供給

瞬時電圧低下から中長期的な停電対応まで存在

エネルギーマネジメントの例 概要

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2. VPPの類型・ビジネスモデル -VPP事業者の法的位置付け-

電気事業者として取引を行うための資格者が定義されている国・地域が存在する。

米国の一部地域では、VPP事業者(アグリゲーター)を、他の事業者(発電事業者、送配電事業者、小売事業者等)とは区別し、その位置づけを制度上明確化し、アグリゲーターに対する取引条件などを定義している。

上記、VPP事業者の位置付けを明確化していない地域もあり、FERCは各制御エリアに対して、位置付け明確化を働きかけているとされている注1。

概要

電気事業者として 取引を行うための資格名称

以下のように各地域で取引資格者が定義されている

<米国>

CAISO:Scheduling Coordinator (SC)

PJM: Member

ERCOT:Qualified Scheduling Entity (QSE)

<欧州>

ドイツ:Prequalified providers / Certificated trader

VPP事業者として 取引を行うための資格名称

VPP事業者(アグリゲーター)の位置付けが制度上明確化されている地域もある

CAISO:Distributed Energy Service Provider (DERP)

PJM: Curtailment Service Provider (CSP)

注1 “Docket Nos. RM16-23-000 and AD16-20-000”, FERC

出所)各種資料より三菱総研作成

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≪参考≫カリフォルニア州におけるDERPとスケジューリングコーディネーター(1/2)

スケジューリングコーディネーター(SC)とDERP

各種分散型リソースをアグリゲートするために、DERP(Distributed Energy Resource Provider)の取り組みを開始する予定。現状での報酬体系等は決まっていないが、アグリゲーターの位置づけに近い。

出所)CAISO

Olivineの提供サービス DERP/スケジューリングコーディネーターの概要

出所)Olivine

• Olivineは、電力会社やISO/RTO 市場に対する、取引の取次ぎや決済等のプラットフォームをアグリゲーター等に提供

• サービスとしては、プログラム管理、リアルタイム監視・通信、取引取次ぎ・決済等を実施

• DERPとISOを仲介する役割として、スケジューリングコーディネーターが存在

• 日本で検討されているリソースアグリゲーター(RA)に役割が類似しており、Olivine等100社以上の事業者がCAISOに登録済み

提供先

サービス

電力会社 ISO/RTO 市場

プログラム管理 リアルタイム監視 リアルタイム通信 取引の取次ぎ

スケジューリング

コーディネーター

系統運用者

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≪参考≫カリフォルニア州におけるDERPとスケジューリングコーディネーター(2/2)

スケジューリングコーディネーターの要件

カリフォルニア州の場合、CAISOでの電力取引(卸電力取引、調整力取引)を行うには、下記の要件を満たし、当該認定を得る必要がある。

出所)CAISO, Business Practice Manual for Scheduling Coordinator Certification & Termination and Convergence Bidding Entity Registration & Terminationより三菱総研作成

分類 SC認定要件 概要

経営基盤 CAISOとの財務セキュリティを確立し、最低参加要件(FERC Order 741)を満たす

• 100万ドルの有形純資産を有する、または1,000万ドルの総資産を有する

• もしくは「適切」な資格を持つ他団体からの保証書または信用状の形での信用サポートを受けている

運営体制

連絡先の提出 • CAISOとやり取りを行う組織の連絡先を最低2つ用意している

アプリケーションへのアクセス獲得 • アクセス管理ツールを通して、CAISO市場の各アプリケーションに参加するためのデジタル証明書を獲得している

決済品質メータシステムへのアクセス確立 • オペレーションメータの分析と報告を行うシステムを活用し、決済品質メータのデータをCAISOに提出できること

証書の提出 • 倒産等による事業継続が困難な場合に備え、管理しているリソースの振替ができる証明書を用意している

事業実施能力

ネットワークインターフェイスの確立 • CAISOが規定しているネットワーク接続セキュリティ要件を満たしている

• インターネットもしくはECNを選択(ECNはAT&Tの私設ネットワーク)

トレーニングへの参加 • 四半期ごとに開催されているCAISOのSC認証ワークショップへ参加したことがある

市場取引テスト • CAISOのSC認証ワークショップで実施される、複数タイプの入札およびスケジューリングに対応できるかを証明する

試験に合格している

電子振込テスト • Federal Reserve Wire Network(米連邦準備銀行の決済送金システム)やACT(小口決済システ

ム)の活用による電子決済機能を使用できる。CAISOとの金銭のやり取りがつつがなく可能かを確認済みである

SC緊急時対応計画の提出 (第3者のリソースを取り扱うSCのみ対象)

• SCの主要施設が電力供給できない場合の代替入札およびスケジューリング機能を提供する方法を記載した書類を用意している

グリッド連携テスト (第3者のリソースを取り扱うSCのみ対象)

• 24時間のリアルタイム対応能力およびタイムリーにディスパッチ命令に正しく対応するために必要となるCAISO市場の十分な理解があることを証明する試験に合格している

自動ディスパッチシステムへのアクセス確立 • アンシラリーサービスに活用可能な発電施設やDR機器を取り扱うSCは自動ディスパッチシステムを使用できること

停電管理システムへのアクセス確立 • 発電施設やDR機器を取り扱うSCは停電管理システムを使用できること

情報管理 取引用ID

• 取引を行うリソースについて、使用時間帯やアンシラリーサービスへの対応可否等について、CAISOが提示するテンプレートに記載できること

地域市場の電力緩和要件対応 • CAISOがリソースを適切な供給先へ提供できるよう、管理している組織および関連情報を提出できること

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2. VPPの類型・ビジネスモデル -アグリゲーターと需要家の契約-

アグリゲーターとリソース保有の需要家との契約

Best RESという企業がアグリゲーターに対してインタビュー等を実施したところによると、契約に関するほとんどすべての情報が秘密であること、または契約がまだ明確に定義されていない模様。契約はまだ標準化されていない。

一部のアグリゲーターは、典型的な契約期間は1年から数年程度。

現地調査によると、説明責任やインフォームドコンセント等の考え方も整備されていない。また、現在はVPPの対象リソースが高圧程度までであることから、個人情報流出や需要家保護といった観点での課題は浮かび上がってきていない模様。

出所)Existing business models for renewable energy Aggregators, BestRES, 2016

VPP事業者の名称

非公開

検討中

契約次第

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3. VPPの類型に対応する諸外国の具体的事例 -事例まとめ-

欧米における実証段階、商用段階のVPPについて主なものは以下の通り。

VPPのためのDERとして、原則、産業・業務部門の需要家(欧州はコジェネ/再エネ、米国はDR+蓄電池 )が中心。

実証

Power Matching CITY オランダ 情報通信技術を用いたスマートハウスの統合によるエネルギー効率最

大化の達成の実証

25戸のスマートハウスとDER(太陽光発電/風力発電/コジェネ)における最適エネマネ

INERTIA Project ギリシャ スペイン イタリア

DERを統合的に扱うDSM手法の確立および実証 DSMを組み合わせ、配電ネットワークによりアクティブな要素を導入し、

配電ネットワークの構造的慣性の問題にする解決策を提示

マルチエージェント型階層構造のマネジメントシステム

配電系統の自動かつ自律的なリアルタイム需給調整

EcoGrid EU デンマーク DERを含む電力システムにおける大規模リアルタイム市場の実証事業 発電量や消費量を調整可能なリソースに対してTSOが繰り返し価格

シグナルを発することによって、電力システムのバランスを調整

1,948世帯が実証に参加 IBM社のHEMSまたは

Siemens社のHEMSが導入されている

Power Shift Atlantic カナダ

アグリゲートされた需要家側機器の負荷調整を通じてアンシラリーサービスの必要量を緩和

出力変動の大きい再エネの系統へのさらなる導入を促進し、アンシラリーサービスの拡充に伴う設備投資コストの増大を防ぐ

業務・家庭合計で1,400以上の需要家(約17.3MW)が本実証事業に参加

商用

Next Kraftwerke ドイツ バイオマス/コジェネ/DR/太陽光/風力等のDERをアグリゲートしバラン

シング市場への予備力提供、スポット市場における電力取引

全発電設備:3,820 VPP容量:2,452MW

Energy2Market ドイツ 太陽光/風力/バイオマス/水力等による発電設備をアグリゲートし、電

力を電力取引スポット市場における取引、予備力市場へ参加 全発電設備:3,000以上

Flexitricity イギリス 顧客施設のDRや非常用発電設備をアグリゲートし、Frequency

Response、Footroom、STORなどに参加 N/A

EnerNOC 米国 アメリカをはじめ9か国でDR事業を展開 Reliability-Based DR、Price-Based DR、Ancillary Services

を提供

約9,000社、14,000拠点 約9,000MW

分類 名称・企業名 国・地域 事業概要 特徴

出所)各種資料より三菱総研作成

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3. VPPの類型に対応する諸外国の具体的事例 -実証(1/4)-

Power Matching CITY(オランダ)

ICT技術を用いたマルチエージェント型階層構造のマネジメントシステムでの協調制御に向けた実証事業を実施。

制御対象設備は再生可能エネルギー及びスマート家電機器等を想定。

国 オランダ

目的 安価で汎用的なICT技術を用いて分散型リソース、再生可能エネルギー及びスマート家電機器等を統合し、協調制御を実施するソリューションの確立・実証

参加者 ECN (Energy Research Center) Essent HUMIQ KEMA

実施期間 2010年3月~

事業概要 実施内容

対象 一般家庭25軒、ウィンドファーム(2MW)、マイクロガスタービン(30kW) 等

機器 高効率1kW天然ガスボイラ搭載のCHP(12軒) ヒートポンプシステム(13軒) PV(25軒):合計容量1,400kW スマート食洗器(10軒) PEV(1軒)、EV(2軒) 鉛蓄電池(1軒)

VPP概要

マルチエージェント型階層構造のマネジメントシステムの構築 VPP全体の管理者としてCommercial Aggregator(CA)、複数

の需要家や発電設備等を取りまとめるConcentrator、各家庭などのステークホルダーで構成される

VPPの最適化ロジックは価格メカニズム CAが初期価格を提示し、各ステークホルダーにて応札の是非を

検討して入札価格を提示、最安値のものをCAが採用して市場価格を更新する

Commercial Aggregator

EV群 燃料電池、ガスタービン等

Auctioneer

ECN Concentrator

Residential Concentrator

KEMA DEMO Concentrator

Essent Concentrator

太陽光発電、マイクロコジェネ、食洗機、PHEV、等

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3. VPPの類型に対応する諸外国の具体的事例 -実証(2/4)-

INERTIA Project(欧州(ギリシャ、スペイン、イタリア))

設備からの集約情報を起点としたデマンド・サイド・マネジメント手法確立に向けた効率的なグリッド制御を実証。

制御設備は発電リソースや調整可能な需要家側負荷リソースを対象としている。

国 ギリシャ、スペイン、イタリア

目的 発電リソースや調整可能な需要側負荷リソースを含む分散型エネルギーリソースを統合的に扱うデマンド・サイド・マネジメント手法の確立・実証

参加者 ・CERTH /Information Technology Institute(ギリシャ、コーディネータ) 他10社・機関

予算 525万ユーロ

実施期間 2012年10月~2015年9月

事業概要 実施内容

対象 メガソーラー設備、建物設備(CERTH:ギリシャの科学技術センター)、CERTH構内の発電設備(PV、燃料電池、ディーゼル発電設備)

機器 HCAC、照明、EV等

VPP概要(ギリシャにおける実証)

発電側及び需要家側のリソースを含めた様々な分散型リソースを組み込んだデマンド・サイド・マネジメントの確立 IoTの原理を配電ネットワーク制御に応用 センサーを用いて温湿度などの環境要素やエネルギー消費量等

リアルタイム情報を取得 効率的なグリッド制御の実現を目指す

INEERTIAの制御ネットワーク

Local Control Hub (LCH)、Aggregator Control Hub (ACH)、DSO Control Hubの3つのハブで構成

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3. VPPの類型に対応する諸外国の具体的事例 -実証(3/4)-

EcoGrid EU(デンマーク)

調整可能な発電量や消費量のリソースに対して価格シグナルを適用することで電力システムのバランスを調整し、電力のリアルタイム市場を開発・実証。

国 デンマーク

目的 再生可能エネルギーや需要家の参加を含んだスマートな電力ネットワークを目途とした、一般に応用普及可能なリアルタイム市場の開発及び実証

参加者 Eneginet.dk (デンマークのTSO) Eneginet.ek(オランダ、Initiator) 他14社・機関

予算 2,100万ユーロ

実施期間 2011年3月~2014年8月

事業概要

対象 1,948軒

機器 AMR(Automatic Meter Reading) 電気ヒーティングまたはヒートポンプ、HEMS

VPP概要

実施内容・事業体制

発電量や消費量を調整可能なリソースに対してTSOが繰り返し価格シグナルを発することによって、電力システムのバランスを調整

電力需給のバランスに応じて絶えず価格を調整することにより、電力システムのバランスを保つ これにより、コスト効率を悪化させる発電抑制量を削減 再生可能エネルギー電源によるバランシングサービスの実現

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3. VPPの類型に対応する諸外国の具体的事例 -実証(4/4)-

Power Shift Atlantic(カナダ)

アンシラリーサービスの必要量緩和に向け、アグリゲーターがシステム・オペレータからの指令に基づき需要家側機器の負荷調整を一括して制御するシステムを実証。

国 カナダ

目的 需要家側機器の負荷調整を通じてアンシラリーサービスの必要量を緩和し、アンシラリーサービスの拡充に伴う設備投資コストの増大抑制

参加者 New Brunswick Power Corporation (NBPC) 他20社・機関

予算 3,200万ドル

実施期間 2010年~2014年

事業概要

対象 業務分野・家庭分野併せて1,400以上の需要家 (接続容量17.3MW) ※事業終了時点

機器 温水器、業務用冷蔵庫、HVAC 等

VPP概要

実施内容

VPPは、アグリゲーターの需要予測およびシステム・オペレータからの指令に基づき、削減すべき負荷量に関する情報をアグリゲーターとの間でやりとりする 需要家側機器には情報端末が設置され、リアルタイム負荷情報

がアグリゲーターに提供される アグリゲーターは、負荷情報に基づいてディマンドリスポンス

(DR)の指令を需要家に出し、需要家側機器を群として制御

4つのステークホルダー

システムオペレーター

VPP

アグリゲーター

需要家

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3. VPPの類型に対応する諸外国の具体的事例 -商用(1/4)-

Next Kraftwerke社(ドイツ)

2009年創業のスタートアップ(ケルン大学のスピンオフ)企業ながら、ドイツ国内で事業規模トップクラス(2.45GW、9TWh、3,820ユニット)のVPP事業者。

同社の収益機会は①Control Reserve(需給調整市場):②Market Premium(再エネマネジメントによる収益化):③Power trading(卸取引市場)=1:1:1で成長性のある市場は③の領域。

出所)NextKraftWerke 資料より

社名 NEXT KRAFTWERKE

所在地 Cologne, Germany

設立年 2009

年間売上規模 約€273 million (2015)

VPPビジネス スキーム

Next Pool VPP:バイオマス/コジェネ/DR/太陽光発電/風力発電等のDERをアグリゲートしTSOが運営する需給調整市場への予備力提供及び、電力取引市場における電力取引によって収益を得る。 VPP操業データ、最新気象情報、グリッドデータ、リアルタイムの市場データなど、様々な情報を複合的に活用することによって、従来型の電力取引業者にはない優位性。

取引マーケット 需給調整市場(Secondary Control/Minute Reserve) 電力取引市場(スポット市場)

VPPリソース バイオマス/コジェネ/DR/太陽光/風力

VPPリソース数 全発電設備:3,820

VPP規模・取引量

VPPネットワーク容量:2,452MW 予備審査通過予備力容量: Tertiary Capacity Reserve 807MW Secondary Control Reserve 658MW 電力取引量: 9TWh

設備・ITシステム 運用設備には「NEXT Box」と呼ばれる制御端末が設置され、中央制御システムとの間で、データ交換が可能

今後の方針 N/A

NextKraftwerke社の3つの収益モデル

① Control Reserve(需給調整市場への販売による収益化) ② Market Premium(再エネのマネジメントによる収益化) ③ Power trading(卸取引市場への販売による収益化)

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3. VPPの類型に対応する諸外国の具体的事例 -商用(2/4)-

Energy2Market社(ドイツ)

2009年創業で、2012年よりVPPビジネスを手掛けている。同社のVPPサービスDAS GRÜNE KRAFTWERK (The Golden Power Plant)は、太陽光、風力、バイオマス、ランドフィルガス、水力による発電設備約3,000施設をアグリゲートする。各発電設備は、リアルタイムの発電量を中央制御システムに提供し、VPPシステムは各発電設備の発電量を制御する。

アグリゲートした電力は、電力取引所(EEX)スポット市場における電力取引、バランシング市場への予備力(Primary Control Reserve、Secondary Control Reserve、Minute Reserve)の提供、需要家への供給に活用されている。

社名 Energy2Market

所在地 Leipzig, Germany

設立年 2009

年間売上規模 約€260 million (2014)

VPPビジネス スキーム

DAS GRÜNE KRAFTWERK (The Golden Power Plant):太陽光、風力、バイオマス、ランドフィルガス、水力による発電設備をアグリゲートし、電力を電力取引スポット市場における取引、予備力市場(Primary Control Reserve/Secondary Control Reserve/Minute Reserve)への参加、需要家への供給に活用

取引マーケット

バランシング市場(Primary Control Reserve/Secondary Control Reserve/Minute Reserve) 電力取引市場(スポット市場) 需要家への電力供給

VPPリソース 太陽光/風力バイオマス/ランドフィルガス/水力

VPPリソース数 全発電設備:3,000以上

VPP規模・取引量 N/A

設備・ITシステム N/A

今後の方針 N/A 出所)Energy2Market 資料よりMRI作成

Energy 2 Marketのビジネスモデル

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3. VPPの類型に対応する諸外国の具体的事例 -商用(3/4)-

Flexitricity社(英国)

コジェネ及び負荷設備(冷蔵、空調など)、非常用発電機等をアグリゲーションすることで、周波数調整(Frequency Response)、短期予備力(STOR :Short Term Operating Reserve)等の市場取引を行っている。

同社システムは、需要家側に設置したオンサイト機器を通じて、発電設備や需要設備の情報をエジンバラに設置された制御室に集約している。National Gridからの指示を受けると、発電設備や需要設備との自動通信を行い、数分以内の発電開始または電力消費量の削減を指示する。

社名 Flexitricity

所在地 Edinburgh, Scotland

設立年 2004

年間売上規模 N/A

VPPビジネス スキーム

顧客施設のDRや非常用発電設備をアグリゲートし、Frequency Response、Footroom、Short Term Operating Reserve(STOR)などに参加

取引マーケット Frequency Response Footroom Short Term Operating Reserve(STOR)

VPPリソース DR、非常用発電設備

VPPリソース数 N/A

VPP規模・取引量 N/A

設備・ITシステム N/A

今後の方針 N/A

出所)Flexitricity 資料より

Flexitricity社のビジネスモデル

需要設備

取引の流れ

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3. VPPの類型に対応する諸外国の具体的事例 -商用(4/4)-

EnerNOC社(米国)

需要家に対し、消費電力を監視する包括的DRアプリケーションDemandSMART や「ESS(EnerNOC Site Server)」と呼ばれる無線通信機能と制御機能を持つ機器など、DR市場に参加するための様々な技術パッケージを提供している。これらを通じてオペレーションセンター(NOC)から需要家の電力使用状況を監視、制御し、DRを実現している。

9つの国で事業を展開しており、日本においては丸紅と共同出資したEnerNOC JapanK.K.がある。

社名 EnerNOC

所在地 Boston, Massachusetts, USA

設立年 2003

年間売上規模 $472 million(2014)

VPPビジネス スキーム

アメリカをはじめ9か国でDR事業を展開 ①Reliability-Based DR:本プログラムは電気事業者が提供する容量プログラムに呼応している。緊急イベント時、電気事業者から信号が発せられると、需要家に自動的にエネルギー削減要求の連絡がされ、需要家はエネルギー使用を削減する。 ②Price-Based DR:本プログラムは自由参加型の料金ベースのプログラムである。需要家はまず行使価格)を登録する。市場価格が行使価格に近づくと自動的に需要家にエネルギー削減要求の連絡がされ、需要家はエネルギー使用を削減する。 ③アンシラリーサービス:本プログラムは配電網事業者や電力事業者により、送電線断絶や大規模発電所の停電など短時間の瞬動予備力要請が実施される際に利用される。

取引マーケット アンシラリーサービス、容量市場、DRプログラム

VPPリソース DR/非常用発電設備/再エネ/蓄電池

VPPリソース数 約9,000社、14,000拠点(2014年7月末時点)

VPP規模・取引量 約9,000MW (総需要削減規模、2013年12月末時点)

設備・ITシステム 消費電力を監視する包括的DRアプリケーションDemandSMART や「ESS(EnerNOC Site Server)」と呼ばれる無線通信機能と制御機能を持つ機器など、DR市場に参加するための様々な技術パッケージを提供

今後の方針 N/A

出所)Enernoc 資料より

EnerNOC社の英国における事業形態

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4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向 -市場環境 米国(1/4)-

米国の市場環境

米国では、カリフォルニア電力危機などの影響により、全ての州においてアンバンドリングがなされているわけではない。アンバンドリングがされている州・地域では、設備投資の先行き不透明などを理由に、新規の電源立地が進まず供給力不足を補完することを目的に系統運用者(ISO)が提供するDRプログラムを契機に市場が成立。

近年は、蓄電池などの分散型リソースもISOが開設する電力取引所に参加することが可能になり、その範囲はいわゆるVPPといわれる領域にまで拡大している。

出所)gtmresearch

各地域で事業展開する主なDR事業者

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4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向 -市場環境 米国(2/4)-

米国のDRの類型別削減ポテンシャル

米国全体でのDの削減ポテンシャルは 6,635 万 kW と推定されている。そのうち商業・ 産業部門が 2,809 万 kW、家庭部門が 813 万 kW、卸市場が 2,881 万 kW そしてその他が 132 万 kW。

電気料金型では時間帯別料金やリアルタイム料金が多く、インセンティブ型では供給力負荷や遮断可能負荷、直接負荷制御の量が多い。

種別導入状況(需要家種別削減ポテンシャル)

出所)FERC、“2012 Assessment of Demand Response and Advanced Metering Staff Report”

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4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向 -市場環境 米国(3/4)-

米国のDRの電力会社別削減ポテンシャル

削減ポテンシャル筆頭となっているのは、ミシガン州で事業を営んでいる私営電力会社のThe Detroit Edison Companyで あり、時間帯別料金の導入量が多い。

上位20社の削減ポテンシャル内訳をみると、遮断可能負荷による対応が最も多い。

出所)FERC、“2012 Assessment of Demand Response and Advanced Metering Staff Report”

米国におけるDR導入上位 20 社(削減ポテンシャル)

(公)

(公)

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4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向 -市場環境 米国(4/4)-

PJMにおけるDRの登録実績の推移

DRに登録された削減方法の内訳でも、Water HeatersとBatteryによるものが増加傾向。

出所)Summer 2016 Energy Market and Reliability Assessment, NERC

PJMにおけるDRに登録された負荷低減方法注(2014/2015)

注 アグリゲーター(CSP(Curtailment Service Provider))が報告した削減方法の割合

2014年 2015年

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4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向 -市場環境 欧州-

欧州の市場環境

電力の統一市場化を目指す欧州では、各国でアンバンドリングが行われており、再生可能エネルギー導入拡大などに伴う需給調整力確保や、分散型リソースの利活用の観点からVPP/DRの事業成立に関わる要因が整う地域から事業化されている。

産業向けDR事業者の活動状況を以下に示すが、2013年当時と比較して、2015年には実施国並びに事業者数の拡大が見てとれる。

出所)SEDC

欧州における産業向けDR事業者の活動状況

一部、市場開放

既に商業化

開発準備中

市場非公開

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4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向 -VPP/DRの導入見通し-

VPP/DRの今後の導入傾向

米国の調査機関によると2023年までにVPPの事業規模は全世界で50億ドル/年を超えるとされている。

上記のなかで日本を含むアジアのシェアは小さいが、他方でVPPに活用する蓄電池リソースの普及はアジア地域で大きいというレポートも存在。

VPPの事業規模見通し例 VPPに活用するエネルギー貯蔵アセットの導入見通し例

出所)Navigant Research

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4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向 -DERのコスト見通し(1/6)-

太陽光発電のコスト見通し(1/3)

国際的な観点から見れば、太陽光発電のコスト低減は着実に進みつつあり、パネルのコストは習熟効果(累積導入量に比して価格低減が図られる効果)を考慮すると、今後さらに価格低減が進むと見込まれる。2030年にかけて現状のパネルコストの半分程度までは低減すると見込まれている。

出所)Current and Future Cost of Photovoltaics, Fraunhofer-Institute for Solar Energy Systems, 2015/2

出所)IEA PVPS Task1 Workshop, 2015/9

習熟曲線にもとづく太陽光発電モジュールの価格見通し 欧州における太陽光発電モジュールの価格見通し

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4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向 -DERのコスト見通し(2/6)-

太陽光発電のコスト見通し(2/3)

他方で、国・地域別のコストの差異は顕著であり、導入拡大が進み既に家庭用電力料金との比較においてグリッドパリティを実現したとされるドイツと比較して2倍近い発電コストとなっている。

ドイツ:Max/Mid/Min;120/160/180<USD/MWh>=13.2/17.6/19.8<kWh/円> ※図中より読み取り

日本:Max/Mid/Min;230/320/420<USD/MWh>=25.3/35.2/46.2<Kwh/円> ※為替レート:110円/$

出所)太陽光発電技術の現状と課題、NEDO、2016年2月

太陽光発電コストの国別比較 太陽光発電設備コストの国別比較

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4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向 -DERのコスト見通し(3/6)-

太陽光発電(PV)のコスト見通し(3/3)

住宅用PVについては、2030年ころには概ね発電コストベースで200[$/MWh](≒25[円/kWh])を下回る見通し。

318

250

139

109 97

119

96

56 45 42

0

50

100

150

200

250

300

350

2013 2020 2030 2040 2050

Levelize

d c

ost

of

ele

ctri

city

[$/M

Wh

]

539

422

231

180 159

135 108

63 51 45 0

100

200

300

400

500

600

2013 2020 2030 2040 2050

Levelize

d c

ost

of

ele

ctri

city

[$/M

Wh

]

非住宅用PVコスト見通し(発電コスト) 住宅用PVコスト見通し(発電コスト)

出所)SOLAR PV(Roland Berger 2016)より三菱総研作成

注 価格見通しの上限値、下限値を記載 注 価格見通しの上限値、下限値を記載

低圧の従量料金の目安

25円/kWh

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4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向 -DERのコスト見通し(4/6)-

ストレージパリティの見通し(ドイツ)

バッテリーのコストがどの程度になると系統電力のコストと同程度になるか、いわゆるストレージパリティについては、ドイツにおける検討事例として下図に示すように、0.15~0.20€/kWh程度にまで価格低減がされれば実現できると想定されている。

• 系統電力は2013年:0.30€/kWh ⇒ 2018年:0.34€/kWhまで上昇

• PVシステムプライスは0.16€/kWh ⇒ 2018年:0.14€/kWh程度まで低減

• 系統電力価格とPVシステムプライスの値差(0.15~0.20€/kwh)まで低減すればPV+バッテリーのコストが系統電力を下回る

出所)INDUSTRY OVERVIEW The Photovoltaic Market in Germany, GTAI,2014

ドイツにおけるPVの価格と低圧電力の見通しにもとづくBreak-evenのバッテリーコスト

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4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向 -DERのコスト見通し(5/6)-

BESS(Battery Energy Storage System )の見通し(1/2)

IEAが毎年公表しているWEO*においては、EV向けバッテリーの価格目標について以下の通り分析をしている。

EV向け(モジュール価格)ではありながら、2025年には$125、2040年には$100を達成するとしている。

Costs have also fallen to less than $270/kWh for batteries used in plug-in hybrid vehicles (PHEVs) and about $210/kWh for battery

electric vehicles (BEVs).

“プラグインハイブリッド車(PHEV)向けバッテリーコストは$270/kWh未満、電気自動車(BEV)向けバッテリーコストは約$210/kWhに下がっている。” in the New Policies Scenario brings projected average battery costs for BEVs down to around $125/kWh by 2025 and just above

$100/kWh by 2040.

“「New Policy Scenario」では、電気自動車(BEV)向けバッテリーの平均コストは2025年までに約$125/kWhまで、

更に2040年には$100/kWhを少し上回る程度にまで下がることが予測されている。”

WEO2016

の想定

2015 2025 2040

270

210

125

100

$/kWh

出所)World Energy Outlook 2016, IEA

WEOのバッテリーコストの想定

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4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向 -DERのコスト見通し(6/6)-

BESS(Battery Energy Storage System )の見通し(2/2)

2016年、EV用 リチウムイオン電池(バッテリーパック≒バッテリーモジュール)の価格見通しについて、以下の通り発表。

2020年には$200-250、2025年には$120-180、2030年には$80-120を達成する見通し。

出所)左図:https://www.bloomberg.com/news/articles/2016-06-13/batteries-storing-power-seen-as-big-as-rooftop-solar-in-12-years 出所)右図:Bloomberg New Energy Finance Summit プレゼン資料, BNEF(2016 April)

<Moderate Scenario>Learning rate=14%の場合、

2020年には、約$250/kWh

2025年には、約$180/kWh

2030年には$120/kWhまで価格が低下する

<Aggressive Scenario> Learning rate=22%の場合、

2020年には、約$200/kWh

2025年には、約$120/kWh

2030年には$80/kWhまで価格が低下する

BNEFの想定

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4. VPPを構成する技術要素の今後の導入傾向 -今後の見通し-

VPP技術要素の今後の見通し

アグリゲーションするDER規模のダウンサイジングや、提供する機能の多様性を追求に伴い、重要な技術要素の一つはICT等情報通信技術。

これらの情報通信技術はVPPのみならず、電力ビジネスそのものを大きく変容させる可能性がある。

構成する技術要素の導入傾向(ICT等技術の活用)

人工知能(AI)

発電量 設備稼働状況 等

機器稼働状況 エネルギー消費状況 自家発電の状況 等

系統負荷 周波数変動 等

気温 天候 電気料金 等

≪AIによるフィードバックの活用例≫ 機器設備の運営・制御 エネルギー需給予測

センサーにより ビッグデータ蓄積

≪各種手法によりビッグデータを処理≫ 制御プログラム 機械学習(以下は手法例) 決定木学習 ニューラルネットワーク データクラスタリング

ディープラーニング

需要家 発電所

ネットワーク 外部要因

IoT技術により、AIからのフィードバックと 各所のデータを相互連携し、制御・意思決定に反映

≪AIによるフィードバックの活用例≫ マーケティング・料金戦略 アセットマネジメント

エネルギー 事業者

(管理部門) フィードバック

フィードバック

出所)三菱総研

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5. VPP事業に関連する規制体系 -欧米の電気事業体系-

調査対象国の電気事業体制に関し、VPP事業に関連するバランシングメカニズム、需給調整市場、卸市場について整理。

米国 ニューヨーク州 米国 カリフォルニア州 ドイツ 英国

事業者構成注1

発電:ConEd等 送電:NYISO 配電:Con Edi社 他 小売:Con Edi 他(公営等)

発電:PG&E, SCE,SDG&E、IPP等 送電:CAISO 小売(民間):PG&E, SCE,SDG&E他 小売(公共):40社程度

発電:4社 送電:4社 配電:862社 小売:17社

発電:100社 送電:5社 配電:7社 小売:100社程度

規制当局

MMU

(Market Monitoring Unit)

NPCC

(Northeast Power Coordinating

Council)

NYSRC

(New York State Reliability Council)

CEC

(California Energy Commission)

CPUC

(California Public Utilities

Commission))

BNetzA (Federal Network Agency for Electricity, Gas, elecommunications, Posts and Railway )

Ofgem (Office of Gas and Electricity Markets)

系統運用注2 NYISO CAISO

(送電設備は民間の3大電力会社が 大半を保有)

TSO4社 (Amprion社、TransnetBW社、

TenneT社、50Herz社)

SOはNGET(National Grid Electricity Transmission)の系統

運用部門が実施 (送電設備は、NGET含む3社で保

有)

バランシング メカニズム

• 小売事業者(LSE)が供給力確保義務。相対やICAPで調達する

• NYISOは一日前市場(DAM)とリアルタイム市場(RTM)を通じて、調整力を確保

• 実需要前日に需給計画を策定 • 一日前市場を通じて所定予備力必

要量の100%を確保 • 当日、更に必要量を確保する場合は、

リアルタイム市場を通じて調達

• 1コマは15分(96コマ/日) • 実需要の45分前にGC

• 1コマは30分(48コマ/日) • 実需要の1時間前にGC

卸市場・ 需給調整市場

• 地点別限界価格(LMP)に基づく1

日前市場(DAM)、リアルタイムスポット市場

• 容量市場(ICAP)

• 金融送電権市場

• 公設の卸電力取引所(PX)

• 1日前市場、1時間前市場、リアルタイム市場

• アンシラリーサービス市場

• 金融送電権市場

• 欧州エネルギー取引所(EEX;European Energy Exchange)にて卸市場(1日前スポット市場)、TSO運営の予備力市場を運営

• 需給調整市場(BM市場)、アンシラリーサービス契約(義務的、必須、商業)に基づきSOが調達

注1 米国は"APPA Annual Directory and Statistical Report 2013-2014"に基づく2011年のデータ、欧州は“COMMISSION STAFF WORKING DOCUMENT, Technical Annex to the Communication from the

Commission to the Council and the European Parliament Report on progress in creating the internal gas and electricity market” COM(2010)84 finalに基づく。なお、欧州の事業者は、発電事業者については国内で5%以上の発電容量シェアを有する事業者数、小売事業者については全国展開を行う事業者の数

注2 ISO:Independent System Operator , RTO:Regional Transmission Operator , TSO:Transmission System Operator

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5. VPP事業に関連する規制体系 -電気事業概観(米国)-

電気事業制度の概要(米国)

米国では、北米電力信頼度協会(NERC)により10地域においてそれぞれ電力品質の管理がされており、これらそれぞれでバランシングメカニズムも異なる。

中でも、小売自由化などが進展している、PJMエリア、カリフォルニアエリア(CAISO)はエネルギー市場による取引が活発。

出所)NERC

米国における電力品質管理の地理的区分

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5. VPP事業に関連する規制体系 -連系線の状況(米国)-

連系線の状況(米国)

10地域それぞれに下位の品質管理区分として、数多くのBA(Balancing Authorities)が存在。

ISO/RTOはBAのうちの一つで、送電線に関する資産を保有せず、広域系統の運用に関して責務を持つ。

出所)http://www.nerc.com/fileUploads/File/AboutNERC/maps/BubbleDiagram_072512.jpg

米国の10地域におけるBAの状況

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5. VPP事業に関連する規制体系 -ニューヨーク州の電気事業体制-

ニューヨーク州の事業者間の役割およびエリアは以下の通り。

出所)America‘s Energy Future : Technology and Transformation, 2009等より三菱総研作成 出所)Power Trends, NYPSC 2016

送電事業発電事業

卸市場

運用

所有

送電事業者

配電事業 小売事業

配電事業者

所有・運用

(自由化部門) (規制部門) (自由化部門)

ニューヨーク州の電気事業体制 ニューヨーク州の送電系統構成

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5. VPP事業に関連する規制体系 -カリフォルニア州の電気事業体制-

カリフォルニア州の事業者間の役割およびエリアは以下の通り。

出所)第4回電力システム改革専門委員会(経済産業省、2012) 出所)California Energy Maps(California Energy Commission)

カリフォルニア州の電気事業体制 カリフォルニア州における電力供給体制図

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5. VPP事業に関連する規制体系 -連系線の状況(欧州)-

連系線の状況(欧州)

欧州では欧州全体での調整力の要件等をENTSO-E(欧州送電系統運用者ネットワーク)にて規定。5のブロックに分割し、その要件等を規定している。国際連系線は右図の通り。

出所)ENTSO-Eウェブサイト 出所)Statistical Yearbook 2011, ENTSO-E

欧州における電力品質管理の地理的区分 欧州における国際連系線の状況

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5. VPP事業に関連する規制体系 -電気事業体制(ドイツ)-

ドイツの電気事業体制および送配電事業者は以下の通り。

RWE、E.ON、EnBW、Vattenfallのいわゆる4大電力が発電容量の80%と小売シェアの約50%を占める。

1996年のEU電力自由化指令を受けて、1998年にエネルギー事業法を施行したが新規参入はほとんど進まず、2005年の規制料金制導入や独立規制機関の設立により、競争環境が整うようになった。

ドイツにおける送配電事業者 ドイツの電気事業体制

発電・卸供給

【自由化】

送電

【独占】

配電

【独占】

販売

【自由化】

4大電力会社

(E.ON,RWE,EnBW,Vattenfall) <発電部門の8割、販売部門の5割程度>

4大送電会社 Amprion社、EnBW Transportnetze社:4大電力系、TenneT社、50Herz Transmission社:外国系

4大電力系配電会社

最終需要家【全面自由化】

再生

可能

電源

発電事業者 取引所

地域配電事業者(900社)

FIT

FIT

出所)Tennet 出所)各種資料より三菱総研作成

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5. VPP事業に関連する規制体系 -電気事業体制(英国)-

イギリスの電気事業体制および送配電事業者は以下の通り。

イギリスの現行電気事業はアンバンドリングが徹底されており、発電/送電/配電/販売(小売)各部門に所有権分離。

発電事業者は主に相対契約によって販売会社と卸供給契約を結んでいるが、電力の一部は取引所やBM市場でも取引されている。

販売会社は大手電力及び電力販売業に参入した大手ガス会社でほぼシェア100%を占める。

発電・卸供給

【自由化】

送電

【独占】

配電

【独占】

販売

【自由化】

最終需要家【全面自由化】

再生

可能

電源 (RO,

FIT)

6大電力を中心に数十社

National Grid等

14地域7社グループ

6大電力を中心に数十社

GBSO【系統運用者】

電力の流れ

供給契約

相対契約

取引所またはBM取引

BM市場

取引所

イギリスにおける送配電事業者 イギリスの電気事業体制

出所)National Grid 出所)各種資料より三菱総研作成

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5. VPP事業に関連する規制体系 -市場参加要件の整理 米国-

米国においても発電設備全般に対して市場参加要件が存在。

市場参画においては守るべき規定もあるが、それを満たせば原則、 DER及びそれをアグリゲーションしたVPPに通常の電源と同様の技術要件の元で市場参画可能。

* ファストトラック対象については各エリアで扱いが異なるものの、連系申請に係る試験・調査の免除、申請期間の緩和等が図られている。

** Connecting Transmission Owner

ニューヨーク州 カリフォルニア州 ≪参考≫PJMエリア

DERの定義 将来的にDR(ディマンドリスポンス)可能な全てのリソース

配電系統に接続されているエネルギーリソース全般

配電系統に接続されている電源設備、蓄電設備

需給調整市場 参加要件

• NYISOの認定を受けること • 容量:0.5MW以上 • CTO**アタッチメント設備、システムアッ

プグレード設備 等

• SCの資格を持っていること • 容量:0.5MW以上 • 機能:AGC、CAISO認証通信 等

• PJM memberであること • 容量:0.5MW以上 • 機能:AGC、ランプレート最大出力

/10分

卸市場 参加要件

• NYISOの認定を受けること 適切な経営基盤を有していること

(100万$以上の自己資本等) 財務リスクマネジメントの実施・レビュー

(市場リスク、信用リスク、流動性リスク等)

全従業員のNYISO研修の修了

※ DR等の参加要件については別途参照

• SCの資格を持っていること 適切な経営基盤を有していること(100

万$以上の自己資本等) 事業実施能力として、グリッド連携テスト、

市場取引テストなどをクリアしていること

※ DR等の参加要件については別途参照

• PJM memberであること 適切な経営基盤を有していること(100

万$以上の自己資本等) PJMによるリスクマネジメントレビュー(市

場リスク、信用リスク、流動性リスク等)を受けていること

※ DR等の参加要件については別途参照

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5. VPP事業に関連する規制体系 -参加可能な市場概要 米国(1/2)-

各地域において、卸取引市場、周波数調整市場への参加が可能であり、特にFERC order745を受けて周波数調整市場においては蓄電池、フライホイール等の分散型リソースの参入を促進する条件緩和がなされている(例:PJM / Reg-D)。

市場参加規定としてはdispatchに対応できるよう、通信設備設置義務などが課されている。

ニューヨーク州 カリフォルニア州 ≪参考≫PJMエリア

調整力市場

規模 • 2,620 MW(2016) • 600-800MW(2016、Regulation-up/down

Reserve) • 2,179 MW (2016)

単価

• $13.76/MWh(2014,平均, Regulation)

• 蓄電池等に有利なマイレージプログラムはリアルタイム市場にのみ整備。

• $3.90~5.41MWh(2014,平均,Regulation-

Up,Down)

• 2016.2.19にRegulation Reserveの調達量が倍増し、単価が$5/MWh→ $15/MWhに増加。

• 応答速度の速い蓄電池等に有利なRegulation -mileageプログラムを整備。

• $43.70/MWh (2014,平均, Regulation)

• 2016年の単価は全てのプログラムで前年より減少傾向

• 応答速度の速い蓄電池等に有利なReg-Dマイレージプログラムを整備。

参加条件

• 最小参加単位:1MW

*ただしSCRは0.1MW未満でもレビュー/実績報告をすることで参加可能

• 技術要件:インターバルメータを設置し、NYISOとの通信環境を整備し、定められた規定時間内に応答すること 等

• 最小参加単位:0.5MW • 技術要件:CAISOの発するEMS制御の信号

(AGC)応答が可能で、応答時のリソースの測定精度が25%を超えていること 等

• 持続時間:一日前市場60分、リアルタイム市場30分

• 最小参加単位:0.1MW • 技術要件:インターバルメータを設置し、PJM

からのレギュレーション制御信号に自動的に応答すること 等

• 持続時間:最大6時間または10時間

卸取引 市場

• 全供給力:31,138 MW(2015) • 市場参加者数:約400社 • 卸電力取引に占める市場取引の割合:

相対取引:50%、一日前市場:48%、 リアルタイム市場:2%

• 取引価格:$24-$35 /MWh (2016.11)

• 全供給力:60,703 MW (2015) • 取引件数:平均27,589 件 / 日 • 取引価格:$24-$35 /MWh

(2016.11,Southern CA)

• 全供給力:182,447 MW(2016) • 市場参加者数:979社(2016.9) • 卸電力取引に占める市場取引の割合:

相対取引:4.9%、市場取引:19.3%、 自己調整:75.8%

• 取引価格:$22-$34 /MWh (2016.11)

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5. VPP事業に関連する規制体系 -参画可能な市場概要 米国(2/2)-

米国では電力市場のみならずアンシラリーサービス(AS)への参加も可能。小規模のDERもアグリゲーションをすることで、市場参画を促す仕組みがある。

市場参画においては守るべき規定もあるが、それを満たせば原則、通常の電源と同様の技術要件の元で市場参画可能。

ニューヨーク州 カリフォルニア州 ≪参考≫PJMエリア

DR容量 • DR容量:1,325 MW(2015) • DRプレーヤー:3,896 社(2015)

• DR容量: 1,400 MW(2015) • DR供給力:70,000 GWh (2015) • DRP:78 社 (2015)

• DR容量:9,834 MW(2016) • DR供給実績:9,034 GWh(2016.) • DRプレーヤー:979 社(2016)

DRメニュー

• Day-Ahead Demand Response Program • Demand Side Ancillary Services Program • Emergency Demand Response Program • ICAP Special Case Resources program

• プロキシ需要リソース(PDR) • 信頼度DRリソース(RDRR) • その他配電会社が個別に実施するDRプログ

ラム

• Limited DR • Extended Summer DR • Annual DR • それぞれで前日取引・リアルタイム取引が有

市場参加実績

• 1,373.2MW(2016) (DSASP 106.5MW, EDRP+SCR 1,266.7MW)

• 1400MW (PDR 200MW, PDRR 1,200MW)

• 8,748.5MW(2016) (前日 8,486.5MW, リアルタイム 262.1MW)

取引高 • $0 - 500/MWh(EDRP, SCR) • $950 - 1,000/MWh (PDRR) • 前日取引 $40.4/MWh、

リアルタイム取引 $46.0/MW(2016)

DERに対する参加要件

• 最小負荷削減量

‐DADRP. DSASP:1MW

‐ICAP-SCR, EDRP:0.1MW

• インターバルメータを設置すること

• NYISOとの通信環境を整備し、定められた規定時間内に応答すること

• ベースライン算定データ提出 • Demand Side Resourcesとしての

NYISOへの登録

• 最小負荷削減量:0.5MW(PDRR、PDRのAS取引の場合)、0.1MW(PDRでエナジー一日前市場またはリアルタイム市場にて取引する場合)

• 10kW単位での入札が可能

• PDR参加で10MW以上ないしAS参加の資源は遠隔測定規制が課される。

• 配電会社が実施するDRプログラムに参加する場合は当該規定に従うこと

• Sub-Lap内でアグリゲーションをすること

• 最小負荷削減量:0.1MW(この要件を満たすためのアグリゲーションは可能)

• リアルタイムテレメトリーをJetstreamシステム経由でPJMのエネルギーマネジメントシステムに接続すること

• 前日までの容量確保 • 通信規格(DNP3 protocol)を満たすシステ

ムの設定・認証 • ANSI認定を受けているメーターを使用すること

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≪参考≫CAISOにおけるSub-lapとDRPに課される要件

アグリゲーションにあたっては、DERPが系統混雑を新たに発生させる事態を避けるため、系統状況を踏まえて設定されているゾーン(Sub-lap)でのリソース集約が必須となっている。DREPは、Sub-LAP毎にアグリゲーションを形成し、事業を行うことになる。

DERPの事業要件 CAISO Sub-lap

出所) Energy Storage and Aggregated Distributed Energy Resource Education Forum(CAISO)

項目 概要

エリア アグリゲーションはSub-LAP内のみで可能

リソース条件 配電系統に接続しているエネルギーリソース(behind-the-meterリソースも可能)

ただし1リソースの規模が1MW超のものは、アグリゲーション不可

アグリゲーション下限量 500kW以上

アグリゲーション上限量 20MW未満

その他 ネットメータリング適用リソースのアグリゲーションは不可

メーター計量値のみで稼働量を確定できるリソースのみアグリゲーション可(稼働量算定にあたりベースライン設定が必要なリソースや稼働方式はアグリゲーション不可)

アグリゲーション総量10MW超の場合およびアンシラリーサービスを提供する場合は、通常の発電設備と同様の通信・テレメトリーを要求

DRPはISOから負荷分配計数(GDF:generation

distribution factor )を事前に設定される。一方で、保持するバスの中でその配分はDRPが任意に設定可能。

• 23のSub-LAPが存在

• もともと、エリア間の金融的送電権(CRR)を取引するために設定された区割り

注 黄色はSMUD、赤色はImperial Irrigation District等の公営電力会社の管轄でCAISOとしてSub-LAPに指定していない地域。

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5. VPP事業に関連する規制体系 -ニューヨーク州(1/2)-

調整力の種類(ニューヨーク州)

応答時間や同期整流の有無により調整力が分類されている。それぞれにおいて必要調達量が異なる。

種類 Regulation

Total Operating Reserve (NERCの定義するTotal Operating ReserveよりRegulationを除く)

Total 10-Minute Reserve (NERCの定義するContingency Reserve)

Total 30-Minute Reserve

10-Minute Spinning Reserve

10-Minute Non-Synchronized Reserve

30-Minute Spinning Reserve

30-Minute Non-Synchronized Reserve

定義

発電

通常、AGCによって秒単位で、系統周波数を調整するために提供される発電資源

指示を受けて10分以内に所定出力に到達可能な同期電源

指示を受けて10分以内に所定出力に到達可能な非同期電源

指示を受けて30分以内に所定出力に到達可能な同期電源

指示を受けて30分以内に所定出力に到達可能な非同期電源

需要

系統周波数を調整するためにある特定の需要から提供される調整力資源

指示を受けて10分以内に所定の電力消費量に調整可能な同期需要資源

指示を受けて10分以内に所定の電力消費量に調整可能な非同期需要資源

指示を受けて30分以内に所定の電力消費量に調整可能な同期需要資源

指示を受けて30分以内に所定の電力消費量に調整可能な非同期需要資源

応答要件 ー 指令発出から10分以内に応答可能であること

指令発出から10分以内に応答可能であること

指令発出から30分以内に応答可能であること

指令発出から30分以内に応答可能であること

必要調達量算定の考え方

必要量は毎月毎時毎に決定される

最大限必要となる調達量(1310 MW)の50%以上

最大限必要となる調達量(1310MW)の倍以上

(最も深刻な事故で引き起こされる調達ロスへの対応)

最大限必要となる調達量(1310MW)

備考 エネルギーマネジメントシステムを通じて6秒毎にディスパッチされる。

複数の発電ユニットで構成されるリソースは対象外

(参考)NYISOは、アンシラリーサービスとして上記の他、Annual Budget Charge and Other Non-Budget Charges and Payments, Voltage Support Services, Energy

Imbalance Services, Black Start Capability Services を規定

出所)NYISO、Ancillary Services Manual (2016.2)

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5. VPP事業に関連する規制体系 -ニューヨーク州(2/2)-

DRプログラムの概観(ニューヨーク州)

NYISOにおいては4種のDRプログラムが整備されている。

プログラム 取引対象 参加要件

Day-Ahead Demand Response Program

(DADRP) Energy

インターバルメータ設置(需要家負担)

入札価格は$50/MWh以上

Demand Side Ancillary Services Program

(DSASP)

Reserve

発電設備もしくは蓄電設備がある

Demand Side Resourcesとしての登録が必要

同期の場合は10分以内、非同期の場合は30分以内に予備力を提供可能

給電指令に従うこと

Regulation

出力調整が可能かつ給電指令に対応できる発電設備、デマンドサイドレギュレーションプロバイダー、限定蓄電設備がある

NYISOの認定を受けること

市場参加に際して、AGC 容量及び出力変化率情報が必要

通信設備による6秒単位応答

Emergency Demand Response Program

(EDRP) Energy

インターバルメータ設置(需要家負担)

入札価格は$50/MWh以上

通知後2時間以内に負荷削減

ICAP Special Case Resources program

(SCR)

Energy インターバルメータ設置(需要家負担)

事前に季節別(夏/冬)×種別(負荷/発電)を登録

Capacity インターバルメータ設置(需要家負担)

事前に季節別(夏/冬)×種別(負荷/発電)を登録

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5. VPP事業に関連する規制体系 -カリフォルニア州(1/2)-

調整力の種類(カリフォルニア州)

CAISOは下記4種類の調整力を定義している。

これらは、NERCの信頼性基準とWECCの地域信頼性基準の双方に準拠している。

種類

Regulation Reserve Operating Reserve

Regulation-up/down Reserve

Regulation Mileage-up/down Reserve

Spinning Reserve Non-Spinning

Reserve

定義 • CAISOバランシングエリアのAGC*信号に応答可能なリソース

• CAISOバランシングエリアのAGC*信号に応答可能なリソース

• 4秒のインターバルにおけるAGC設定点の絶対変化を基準とする

• 指示を受けて10分以内に所定出力に到達可能なリソース

• グリッドに同期する

• 指示を受けて10分以内に所定出力に到達可能なリソース

• グリッドに同期しない

応答要件 • 信号に対応し、出力を増加/減少させる必要がある

• 信号に対応し、出力を増加/減少させる必要がある

• 応答:10min以内 • 稼働:最低2h

• 応答:10min以内 • 稼働:最低2h

必要調達量算定の考え方

• NERC信頼性要件を満たすように、ピーク負荷の割合または固定数として設定される

• NERC信頼性要件を満たすように、ピーク負荷の割合または固定数として設定される

• Contingency Reserves(Spinning ReserveとNon-Spinning Reserveの合計)要求の50%以上

• Contingency Reservesの要件は、最大の単一システムのコンティンジェンシーに等しい

備考 • システム周波数を制御するために使用される。

• システム周波数を制御するために使用される。

• - • -

*AGC : Automatic Generation Control 自動発電制御 出所)Argonne National Laboratory, “Survey of U.S. Ancillary Services Markets”

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5. VPP事業に関連する規制体系 -カリフォルニア州(2/2)-

DRプログラムの概観(カリフォルニア州)

CAISOにおいては2種、電力会社においては2種に大別されるDRプログラムが整備されている。

また、CAISOは電力会社に対し、DRプログラムの策定・実行を義務化している。

提供者 プログラム 取引対象 参加要件

CAISO プロキシ需要リソース(PDR)

Energy 一日前市場またはリアルタイム市場における0.1 MW程度の

リソース

Non-Spinning Reserve 一日前市場またはリアルタイム市場における0.5MW程度の

Non-Spinning Reserve

Residual Unit Commitment

(RUC) 翌日の市場で電力供給可能なリソース

CAISO 信頼度DRリソース(RDRR) Energy 一日前市場または信頼性リアルタイム市場におけるリソース

電力会社 Reliability-based programs (信頼性に基づくプログラム)

Energy

Ancillary Services

アンシラリー料金制度と空調制御プログラムのコントロール下にある需要家が対象

ISOが系統の信頼性低下や域内の送電緊急事態を公表したときのみ発動

電力会社 Price-responsive programs (価格応答プログラム)

Energy

Ancillary Services

一日前価格応答→一日前の市場基準や比較的高い市場価格を示す場合が条件となり発動するプログラム

当日価格応答→各種制御プログラムによる予備力をはじめとしたプログラム

出所)CAISO Annual Report 2015 より三菱総研作成

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5. VPP事業に関連する規制体系 -PJMエリア(1/2)-

調整力の種類(PJMエリア)

応答時間や同期整流の有無により調整力が分類されている。

それぞれにおいて必要調達量が異なる。

種類 概要 調達手段 需要側参加

の可否 提供技術要件

周波数調整 (Regulation Service)

PJMの指令に基づき、リアルタイムで系統需給バランスを維持するために、出力/需要の調整を実施すること

市場調達 ( 受 渡 前 日 に 参 加 者 は PJM Regulation Marketに入札。PJMは当日の受渡60分前~受渡に落札)

・ AGC機能付きガバナを有すること ・ PJMからのAGCシグナルを検知できること ・ 最低限のパフォーマンス基準(*1)を満たすこと ・ 初回パフォーマンステスト(initial performance

test)の75%以上に適合すること(*1)

無効電力調整 (Reactive Supply and

Voltage Control)

系統電圧を維持するための発電機からの無効電力供給や電圧制御

発電機に提供義務 (価格はOATT Attachment 2で規定)

× ・ 無効電力調整(供給)試験を実施し、提供可

能な範囲を発電機毎に決定する

待機予備力 (Supplemental

[Operating] Reserve)

発電機の事故等による需給インバランスを解消するための出力調整

提供義務 (価格は、当日LMPに準じる)Schedule 6参照

○ ・ 明確な規定ないが、Synchronized Reserveと

同様と考えられる

瞬動予備力 (Synchronized

Reserve)

発電機の事故等による需給インバランスを解消するための、同期電源/負荷による出力調整

市場調達 ( 受 渡 前 日 に 参 加 者 は PJM Synchronized Reserve Marketに入札。PJMは当日の受渡60分前~受渡に落札)

○ ・ 給電指令から10分以内に指示された出力(又

は負荷調整)に到達できること ・ その他に技術的な要件は見当たらない

ブラックスタート (Black Start)

停電時の系統復旧のため単独で発電機を起動し運転

系統所有者が指定 (発電機能力やコストを考慮して指定。価格はOATT Schedule 6Aに従うコストベース料金)

× ・ 給電指令から90分以内に系統に電力を供給し、

かつ16時間以上稼働可能であること ・ パフォーマンステストに適合すること

出所)Energy & Ancillary Services Market Operations、 http://www.pjm.com/~/media/documents/manuals/m11.ashx

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5. VPP事業に関連する規制体系 -PJMエリア(2/2)-

DRプログラムの概観(PJMエリア州)

PJMにおけるDRプログラムは、以下に示す経済性プログラム、緊急性プログラムが整備されている。

種類 名称 取引種別 取引単位 概要 参加要件

経済性プログラム

Economic Load Response (Energy) day ahead market

エネルギー 100 kW ・PJMからのシグナルを受けて発生 ・day-ahead scheduling reserveに基づく支

・Full PJM Membership ・インターバルメータ設置 ・前日までに30分間の予備力を確保していること ・取引単位500kW以上

Economic Load Response (Energy) Real Time Market

エネルギー 100 kW ・PJMからのシグナルを受けて発生 ・リアルタイムLMPに基づき削減に対する支払が計算される。

・Special PJM Membership ・インターバルメータ設置

Economic Load Response (Synchronized Reserves)

予備力 500 kW ・PJMからのシグナルを受けて発生 ・synchronized reserveに基づき削減に対する支払が計算される。

・Full PJM Membership ・インターバルメータ設置 ・PJMの通知から10分以内の負荷削減を実行 ・PJMトレーニング受講 ・取引単位500kW以上 ・24時間対応できること

Economic Load Response (Day ahead scheduling reserve)

予備力 500 kW ・PJMからのシグナルを受けて発生 ・デイアヘッドLMP(the Locational Marginal Price)に基づき削減に対する支払が計算される。

・Full PJM Membership ・インターバルメータ設置 ・前日までに30分間の予備力を確保していること

Economic Load Response (Regulation)

レギュレーション

500 kW ・PJMからのシグナルを受けて発生 ・PJM Energyに基づき削減に対する支払が計算される。

・Full PJM Membership ・インターバルメータ設置 ・PJMからのレギュレーション制御信号に自動的に

応答 ・上げ下げ信号に対して5分以内に追従 ・PJMトレーニング受講

緊急性

プログラム

EMERGENCY –Full エネルギー 100 kW ・削減量のみに応じた支払いを受ける ・Full PJM Membership ・インターバルメータ設置

EMERGENCY –Energy エネルギー 100 kW ・削減量のみならず容量に応じた支払いを受ける ・Special / Full PJM Membership ・インターバルメータ設置

EMERGENCY –Capacity Only

容量 100 kW ・容量削減に応じた支払いを受ける ・Full PJM Membership ・インターバルメータ設置

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5. VPP事業に関連する規制体系 -市場参加要件の整理(欧州)-

ドイツ、英国ともに、卸電力取引市場、需給調整市場が存在し、それぞれのマーケットに応じた技術要件が決められている。

ドイツ、イギリスとも、卸取引市場は任意市場、需給調整市場はTSOが開設する市場であることから、DER及びそれをアグリゲーションするVPPも市場で取引するためにはそれぞれの市場の参画要件を満足する必要がある。

いずれの市場でも、市場参加要件を満たすVPPが市場参加、取引されている(需給調整市場におけるPrimary ReservesなどはVPPでは市場参加要件を満たせない場合がある)。

ドイツ 英国

DERの定義 配電系統に接続されているエネルギーリソース全般 配電系統に接続されているエネルギーリソース全般

DERの 需給調整市場

参加要件

参加可能な市場は ① Primary Reserves ② Secondary Reserves ③ Tertiary reserves (Minute Reserves) 最低入札要件は5MWであり、法的にはすべての需給調整市場でDERは活用可能注。継続時間は②12時間、③4時間。ただし、卸市場の価格が相対的に低く採算性が低い。

参加可能な市場は ① Firm Frequency Response(Fast Reserve) ② the Short Term Operating Reserve(STOR) ③ Frequency Control Demand Management 等 最低入札要件は①10MW,②3MW,③3MW。 継続時間は①30分、②120分、③30分

DERの 卸市場

参加要件

取引所名:EPEX Spot

市場種類:前日スポット市場 / 当日市場 ≪要件≫ • 取引を行う地域においてBRPに参加し、少なくとも 1 つのTSOと

バランス契約を結ぶこと 等

• 前日取引では、1時間ブロックあたり0.1MW

• 時間前取引の最低入札は1MW。15分単位のブロック

取引所名:N2EX / APX UK

市場種類:前日スポット市場 / 当日市場 ≪要件≫ • N2EXでは市場参加者が取引所に参加する際に、” Market

Conduct Rules”***を取交す。 • N2EXでは、取引単位1MW、30分~4時間

* Balance Responsible Party ** EPEX Spot の決済機関 *** 市場参加者の市場操作等の禁止が規定され、必要な場合に調査を行なう権限がN2EX に与えられている。 注 法的には参加可能であるが、測定・検証、契約等の要求事項が障壁となっておりアグリゲーション市場の拡大が課題

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5. VPP事業に関連する規制体系 -系統連系要件(欧州)-

系統連系要件(ドイツ)

ENTSO-EのTransmission Codeに基づき、系統利用者(発電ユニット)に最低限の技術的な要件が課せられている。

出力変化速度や力率調整、無効電力供給などの技術的要件が存在。

0 10 20 30 40 50 60 70

系統周波数(Hz)

50.0

49.9

49.8

49.7

49.6

49.5

49.4

49.3

49.2

49.1

49.0

48.9

時間(sec)

周波数低下にあわせた負荷遮断を実施

このような系統周波数変動に対しても定格出力を維持できなければんならない。

0 10 20 30 40 50 60 70

系統周波数(Hz)

50.0

49.9

49.8

49.7

49.6

49.5

49.4

49.3

49.2

49.1

49.0

48.9

時間(sec)

周波数低下にあわせた負荷遮断を実施

このような系統周波数変動に対しても定格出力を維持できなければんならない。

このような系統周波数変動に対しても定格出力を維持できなければならない

出所)Transmission Code(BDEW、2007)より三菱総研作成

1. 有効出力制御に関する要件

連続的出力調整機能として、最低負荷運転時と最大負荷運転時の出力範囲において、少なくとも毎分あたり定格出力の2%以上の出力変化速度が要求される。

最低負荷運転時の出力水準については、発電設備運用者とTSOとの間にて事前合意が必要。

左図の太線が示すような周波数変動が起こった場合、例え定格出力で運転されていたとしても、予め決められた出力レベルを維持できなければならない。

2. 電圧無効制御に関する要件

定格出力100MW以上の発電設備は、系統運用者が要求する無効電力補償に係る付加的な要件を満たさねばならない。系統運用者は必要に応じて、発電設備に指令を出すことができる。指令を受けた発電ユニットは数分以内に力率調整が行えねばならない。

発電ユニットは、系統運用者が追加の無効電力供給を必要とする場合、その要求に応じて必要な機器を設置しなければならない。機器設置に伴う費用は系統運用者より支払われる。

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5. VPP事業に関連する規制体系 -バランシングメカニズム(欧州)(1/2)-

バランシングメカニズム(ドイツ)

バランシンググループ(BG)と呼ばれる複数の送電グリッドへの電力投入地点、グリッドからの電力取り出し地点の集合ごとに計測され、各々のBGの5分毎の発電量(グリッドへの投入量)と供給量(グリッドからの引き出し量)の差分がインバランスと定義される。

バランシンググループに発生したインバランスの決済は、当該バランシンググループの代表者である「バランシンググループ・マネージャ」とTSOの間で実施される。

出所)The German Market for System Reserve Capacity and Balancing Energy, August 2015

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Electricity trading

11 December 2013

Distress

markets

Exchanges

Prompt

•Last minute adjustments,

wind, peaking marginal plant

•Reflects shorter term market

fundamentals

Forward Trades

Week

Ahead

Month

Ahead

Season

ahead

•Bulk of trading, to remove

volatility, provide security

•Reflects long term market

fundamentals

Gate closure: positions notified to

grid; open market trading ends

OTC and Bilateral,

often via Brokers

Day

Ahead

Within -day

hours ahead:

3 1 2 1hr

30

mins

Balancing

Mechanism

Delivery of

electricity

5. VPP事業に関連する規制体系 -バランシングメカニズム(欧州)(2/2)-

バランシングメカニズム(英国)

調整力はエネルギー市場の延長であり、補完する機能を持つ。

出所) HOW THE UK IS INNOVATING WITH ELECTRICITY MARKET REFORM(UK Trade & Investment, 2014)

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5. VPP事業に関連する規制体系 -調整力の種類(欧州)-

調整力の種類(欧州)

仔細は各国別に委ねているものの、 ①応答を開始してから発電機が所定の出力レベルになるまでにかかる時間、②所定の出力で運転継続が可能な時間、の2点を基準にENTSO-Eにて調整力を分類。

負荷・周波数制御にはFCR、FRR、RRの順番で優先順位が決まりそれぞれ役割を補完しあっている。

欧州(大陸欧州) 英国

周波数制御予備力

FCR (Frequency Containment

Reserves)

• Primary Control

Reserve

• Frequency Response

Dynamic

• Frequency Response

Static

周波数回復予備力注1

FRR (Frequency Restoration

Reserves)

• Secondary Control

Reserve

• Direct Activated

Tertiary Control

Reserve

• Fast Reserve

• Fast Start

• Start-up 等

代替予備力

RR (Replacement Reserve)

• Schedule Activated

Tertiary Control

Reserve

• Direct Activated

Tertiary Control

Reserve

• STOR

注1:FRRはさらにFRR-A(自動周波数回復予備力;Automatic Frequency Restoration Reserves)とFRR-M(手動周波数回復予備力;Manual Frequency Restoration Reserves)に分離。

注2:Primary:FCR , Secondary, Tertiary:FRR , Slow Tertiary:RR

出所)ENTSO-E 他より三菱総研作成

ENTSO-Eにおける調整力の定義

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5. VPP事業に関連する規制体系 -調整力の種類(ドイツ)-

調整力の種類(ドイツ)

ドイツ国内においてTSOに対してバランシング電力の競争入札への参加、バランシング電力の供給を行うには、その供給源となる発電ユニットや需要はTSOの予備審査(prequalification)を通過する必要がある。

需給調整市場に参加する電源の要件を満たしているか否かについては、一般的には電源が系統に接続する際にその認証を受ける。

認証は、電源の各予備力が求める諸要件(起動停止、持続時間等)に加えて、System Operatorとの制御信号の送受に関わる通信設備要件などが含まれる。

出所)Federal Ministry for the Environment, Nature Conservation and Nuclear Safety

ドイツにおける調整力の種類と概要

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5. VPP事業に関連する規制体系 -調整力の種類(英国)-

予備力・調整力の種類(英国)

ENTSO-Eの分類にあわせてそれぞれ予備力・調整力が整備されている。

FCR

義務的周波数調整 Mandatory Frequency Response

右記の通り、3種類存在

いずれに対しても、運転範囲(49.8Hz - 50.2Hz)における変動に対して自動的に出力調整をする必要

①Primary response(発電増/需要減) 開始:≤ 10 sec 持続:≥ 20 sec ②Secondary response(発電増/需要減) 開始:≤ 30 sec 持続:≥ 30 min ③High frequency response(発電減/需要増) 開始:≤ 10 sec 持続: -

商業的周波数調整 Firm Frequency Response

義務的と同様に3種類存在。最低10MW以上 同上

需要側調整 Frequency Control by Demand Management

サイトに設置されたリレーが動作したときに、自動的に需要家への供給を遮断することで周波数調整を行うサービス

開始:≤ 2 sec 持続:≥ 30 min 最低:3MW以上

FRR・RR

Fast Reserve

National Gridからの給電指令に従い、迅速かつ信頼性のある有効電力を系統へ供給するサービス

最低50MW以上提供可能(複数ユニットをアグリゲート可能)

開始:≤ 2 min ( ± 30 sec) 持続:≥ 15 min 出力変化率:≥ 25MW/min

STOR Short Term Operating Reserve

追加的に有効電力を供給するサービス 最低3MW以上の発電増/需要減を提供できる

(複数サイトからでも可)

開始:≤ 240 min(但し、大体は≤ 20 minで契約している) 持続:≥ 2 hour (契約MW全量) 回復:提供後 ≤ 1,200 hour に回復 ≥ 3回/week

Fast Start 緊急時に休止状態から迅速に起動して定格出力

分の電力を供給。

開始: ≤ 5 min or ≤ 7 min (低周波数リレー動作から自動で5min以内、またはNGからの指令を受けて7min以内)

需要側調整(DSBR)

Demand-side balancing reserve

不測の事態に需要を停止することで予備力を提供する

30minのコマ(window)に2コマ以上提供可能

最低25MW以上 (複数サイトからの提供可)

出所)National Grid資料等から三菱総研作成

種類 概要 要件

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5. VPP事業に関連する規制体系 -需給調整市場(ドイツ)-

需給調整市場の市場規模(ドイツ)

需給調整市場の市場規模は、2015年において€547M。

出所)The German Market for System Reserve Capacity and Balancing Energy, August 2015

ドイツにおける需給調整市場の取引規模

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5. VPP事業に関連する規制体系 -需給調整市場(英国)(1/2)-

需給調整市場の市場規模(英国)

需給調整市場の市場規模は、2015-2016年において£565M(=€661M)まで拡大。

2015-2016年の成長率でみると、STOR(運転予備力)およびFootroom(混雑緩和)がそれぞれ36%増、77%増。

予備力の 種類

市場規模 (€m)

市場規模 (GW)

最小単位 年間収益 (€/MW)

Fast Reserve 152 ~3 50MW €47k to €58k

STOR 73 ~2 3MW €29k to €53k

Commercial freq. resp.

147 ~2.5 10MW (FFR) 3MW (FCDM)

€58k to €64k

Mandatory freq. resp.

56 N/A Generators >100MW

Varies; covers costs

Reactive power

84 N/A Generators >50MW

Varies; covers costs

Footroom 9 ~0.3 N/A €29k to €41k

Others 127 - - -

出所)THINKING GRIDS, http://www.thinkinggrids.com/thinking-grids/ancillary-services-increasingly-important-marketplaces(2016.10.3取得)※換算レートは日本銀行報告省令レート(平成28年10月分)を採用, https://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/syorei/index.htm/

市場規模 (£M)

市場規模 (£M)

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5. VPP事業に関連する規制体系 -需給調整市場(英国)(2/2)-

需給調整市場の価格水準(英国)

STOR(Utilisation)の2015年価格水準平均は€200/MWh程度であり、直近2年においては下降傾向にある。

なお、予備力確保設備に対しても規模と時間に応じて料金STOR(Availability)が支払われる。価格水準は、ここ2年間で€3.8~7.0/MW/h程度を推移。

出所)National Grid, http://www2.nationalgrid.com/UK/Services/Balancing-services/Reserve-services/(2016.10.13取得)より作成 ※換算レートは日本銀行報告省令レート(平成28年10月分)を採用, https://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/syorei/index.htm/

0

1

2

3

4

5

6

7

8

180

185

190

195

200

205

210

215

220

225

230

7.1 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 8.1 8.2 8.3 8.4 8.5 8.6

STOR待機分

平均価格(€/M

W/h)

STOR実稼働

平均価格(€/M

Wh)

2014年 2015年

1・2月 3・4月 5・6月 7・8月 9・10月 11・12月 1・2月 3・4月 5・6月 7・8月 9・10月 11・12月

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5. VPP事業に関連する規制体系 -欧米の託送料金の整理-

今回対象の地域における託送料金(送電料金、配電料金)の概要は以下の通り。

米国ではニューヨーク州で託送料金に関する制度改正を検討中(後述)。

英国では発電側課金/ゾーン別料金を設定しているが、TSOに接続するものが対象。配電系統接続のDERに対する設定事例はない。

米国 NY州 米国 CA州 ドイツ 英国

規制当局

FERC (Federal Energy Regulatory Commission) NYPSC (New York Public Service Commission)

FERC (Federal Energy Regulatory Commission) CPUC (California Public Utilities Commission))

BNetzA (Bundesnetzagentur)

Ofgem (Office of Gas and Electricity Markets)

送電料金

規制の種類 総括原価方式 総括原価方式 レベニューキャップ方式 スーパーシャロー方式

レベニューキャップ方式注1

シャロー方式

発電/小売負担 小売事業者100%負担 小売事業者100%負担 小売事業者100%負担 2016年から以下のように変更注2

発電:小売=17:83

料金設計 kWとkWhの組み合わせ kWとkWhの組み合わせ kWとkWhの組み合わせ kWとkWhの組み合わせ

配電料金

規制の種類 総括原価方式 総括原価方式 レベニューキャップ方式 スーパーシャロー方式

レベニューキャップ方式注1 シャロー方式

発電/小売負担 小売事業者100%負担 小売事業者100%負担 小売事業者100%負担 小売事業者100%負担

料金設計 kWとkWhの組み合わせ kWとkWhの組み合わせ kWとkWhの組み合わせ kWとkWhの組み合わせ

注1 厳密には英国ではRIIO(Revenue using Incentives to deliver Innovation and Outputs)基本的には事前に収入上限を決めるレベニューキャップの枠組みを維持した仕組み。

注2 これに加えてバランシングサービス50%ずつの配分。

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5. VPP事業に関連する規制体系 -欧州の託送料金(1/6)-

欧州における託送料金(送電料金)制度関連の国際的なトレンド

国際的な託送料金(送電料金)制度は、発電事業者への負担を求め、固定費を基本料金で回収する傾向がある。

送電ロスは発電側の焚き増す制度、送電事業者が調達する制度のいずれも存在。

出所)送配電網の維持・運用費用の 負担の在り方検討WG 第3回資料

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5. VPP事業に関連する規制体系 -欧州の託送料金(2/6)-

託送料金の料金算定方法(ドイツ)

ドイツでは日本と同様、送配電コストについては、小売事業者が100%負担。

出所)送配電網の維持・運用費用の 負担の在り方検討WG 第3回資料

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5. VPP事業に関連する規制体系 -欧州の託送料金(3/6)-

託送料金の料金算定方法(英国)

送電コストの一部を発電事業者に求めた上で、発電・小売両者向けの料金に地点別料金を採用。

出所)送配電網の維持・運用費用の 負担の在り方検討WG 第3回資料

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5. VPP事業に関連する規制体系 -欧州の託送料金(4/6)-

DSOによる託送料金(配電料金)の規制

託送料金(Network Tariffs)は、規制当局によって決められた、ネットワークの維持管理のために必要な一定の収益が得られる許可コストにより決まる(レベニューキャップ方式)。

出所)Network tariff structure for a smart energysystem(Eurelectric, 2013)等より三菱総研作成

託送料金は資本コスト、運営費、その他で構成されたコストに基づき、設定・許可される。

Connection ChargeとNetwork Tariffの内訳はその利用方法に依存してDSOが設定する。

Network tariffに含まれるコストは、DSOの役割と責任に依存

Network tariffには通常右表の直接的なコストが含まれる

託送料金に含まれる一般的なコスト DSOの収益とその内訳

資本コスト Capital costs

(CAPEX)

ネットワークサービスを提供するために必要な資産への投資により発生するコスト

減価償却費(depreciation)と資産収益率(rate of

return on assets)を含む

<主要な項目>

架空線および地下ケーブル

変電所

コントロールセンター

情報通信技術(ICT)

メータリングシステム

その他資産

運営費 Operation Costs

(OPEX)

企業の運営・維持に必要なコスト

<主な項目>

システムサービスと保守を含む運用(O&M)

ネットワーク損失の調達(Procurement of network losses)

顧客サービス(Customer service)

(計量サービス、請求書発行、その他管理及び商業コスト)

間接費(Overhead costs)

その他

Others 利息、その他の引当金を含む

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5. VPP事業に関連する規制体系 -欧州の託送料金(5/6)-

料金設定のオプション

現状は、英国・ドイツともに複合料金(kWとkWhでの課金)であるが、それ以外にも以下のようなオプションが挙げられる。

Eurelectricの発行しているレポート「Network tariff structure for a smart energysystem」によると、託送料金を設定する上では、

収入妥当性(revenue adequacy)、経済性(Economic efficiency)、透明性(transparency)、安定性/予測可能性(Stability and

predictability)等を考慮して設定する必要があるとしている。

種類 オプション

定量料金 Volumetric tariffs (€/kWh)

1. フラット(一定量のエネルギーに対し固定価格) 2. 固定(エネルギーの単位/kWhあたりの固定価格) 3. ToU(使用時間帯別のkWhあたりの価格) 4. イベント駆動型、CPP含む(価格はピーク時に高くなる) 5. ダイナミック、リアルタイム価格含む(卸売価格に依り変化するなど、変動型)

容量料金 Capacity tariffs (€/kW)

1. フラット(あらかじめ設定した容量に対する固定価格) 2. 変動-例えば2種類の容量レベルを設定 (複数の容量レベルを設定し、レベルごとに価格を決める) 3. ToU(使用時間帯別のkWあたりの価格)

複合料金 Two part tariffs (€/kW)+(€/kWh)

上記タイプの組合せ (例:エネルギー要素内にToU、イベント駆動型、ダイナミックの組合せが可能)

上記のいずれか +システムサービス契約

1. 制限可能なタリフオプション (例:事前設定した量の負荷を減らした場合にネットワークタリフを下げる等) 2. その他

出所)Network tariff structure for a smart energysystem(Eurelectric, 2013)より三菱総研作成

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5. VPP事業に関連する規制体系 -欧州の託送料金(6/6)-

料金設定のオプションに対する考え方

料金設定においては、そのインセンティブの有無、負荷・エネルギー消費・ネットワークコスト等への影響という評価軸で整理されている。

種類 インセンティブ 負荷に対する影響 全体的なエネルギー消費に対する影響

ネットワークコスト 削減に対する影響注1

規制による トレードオフ評価基準

定量料金 Volumetric tariffs (€/kWh)

• 時間帯に関係なく全体的に消費を削減

中~高: 消費全体の削減を奨励

するが、プライスシグナルは

時間帯別料金より低い。

〇わかりやすさ/受容性

×経済性

×コスト反映性

×収入妥当性注2

容量料金

Capacity tariffs (€/kW)

• ピーク消費を削減

• 消費をオフピーク時間帯にシフト

中注3:

需要家のピーク需要の削

減を奨励すると同時に消

費全体の削減も奨励。

高: ピーク需要(ピーク時間

帯の消費)がネットワーク

コストの主要作用因

〇わかりやすさ/受容性

〇経済性

〇コスト反映性

〇収入妥当性注2

時間帯別定量 Time-of-use volumetric

• ピーク時間帯の消

費を削減 • 消費をオフピーク時

間帯にシフト 中~高: ピーク時間帯の価格を引

き上げることで、全体的な

消費削減を奨励。

〇経済性

〇コスト反映性

×収入妥当性注2

複合料金

Two-part tariff 電力要素 €/kW

エネルギー要素 €/kWh

(フラット又はToU料金)

• ピーク使用の削減

• ピーク時間帯の消費削減

• 消費をオフピーク時

間帯にシフト

〇経済性

〇コスト反映性

〇収入妥当性注2

×高くて複雑な税金

注1 損失は除く 注2 事後調整をしないDSOの場合 注3 ToU容量ベースタリフは中~高。

出所)Network tariff structure for a smart energysystem(Eurelectric, 2013)より三菱総研作成

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≪参考≫日本の電力需給の推移

日本の電力需給(電力需要、ピーク需要)の推移

電力需要(発電電力量)およびピーク需要は2010年前後をピークに減少傾向。

出所)エネルギー白書、2016 出所)原子力・エネルギー図面集2015、電気事業連合会

電力需要(発電電力量)注の推移 ピーク需要の推移

注 一般電気事業用のみ

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≪参考≫日本の需給運用形態

需給運用形態

区域(エリア)ごとの需給管理が原則。

広域的な運用については、広域的運営推進機関(OCCTO)の指令に基づき電力融通を実施する体制。

出所)電力システム改革後の電力産業の姿について、資源エネルギー庁

地域電力会社内での需給管理 広域運用のイメージ

出所)電力システム改革の概要、資源エネルギー庁

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≪参考≫日本の電力事業体制

電力事業体制

電力システム改革後も、送配電事業者は一体となって規制部門として運営される。

出所)電力システム改革の概要、資源エネルギー庁

電力システム改革後の各事業者の姿 送配電部門の位置づけ

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≪参考≫日本の再エネ導入にかかる政策的位置づけ

再エネ関連制度

FIT制度に基づき太陽光発電を中心に導入拡大。自然変動電源を含めた再エネの抑制は火力等より下位に設定。

出所)再生可能エネルギーの導入促進に係る制度改革について、資源エネルギー庁

固定価格買取制度(FIT制度)と導入状況 優先給電ルール

出所)優先給電ルールの見直しについて、資源エネルギー庁

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≪参考≫VPPにかかる取り組み

VPP関連の取り組み

蓄電池等のエネルギー設備を活用したビジネスモデルの確立に向けて5年間の実証事業を実施中。

出所)エネルギーリソースアグリゲーションビジネス検討会の背景について、資源エネルギー庁

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Ⅱ.VPP導入・拡大を支援するスキーム

1. 導入拡大に向けた支援策

2. 市場参画に向けた支援策

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VPP導入・拡大を支援するスキーム -概要-

VPP導入・拡大を支援するスキーム

VPPを導入拡大しようとする直接的な支援策はなく、間接的にVPPの事業を成立させるための制度面での整備(市場参画に向けた支援策)が中心である(ただし、技術実証/社会事業等の助成事業は存在する)。

他方、VPPを構成するDERの導入拡大については、一般的な導入補助に類される支援策と、市場参画を促す支援策の2つが挙げられる。

概要 事例

1.導入拡大に

向けた支援策

VPP 直接的な支援制度はなし -

DER

再生可能エネルギーに対しては、日本と同様に、固定価格買取制度(FIT)をはじめとした導入拡大の支援策が設置されている。

蓄電池等、現状経済的補償が必要な技術に対しては、調達義務や補助金などの支援スキームが存在する

① 税控除 (【米国】PTC/ITC注2)

② FIT/FIP制度注3(欧州)

③ RPS制度注4(欧州・米国)

④ ネットメータリング(米国)

⑤ 調達義務(蓄電池) (【米国CA州】AB2514 等)

⑥ 導入支援(蓄電池) (【独国】KfW275 他)

2.市場参画に

向けた支援策

VPP

アグリゲーションするDERのダウンサイジングや、提供機能の多様化などを図るために、市場の特別枠を設定したり、入札単位を小さくしたりするよう規制当局が要請するなどの取り組みがある注1。

発電設備、通信設備の要件や、通信プロトコルなどの規格化/標準化により事業参入を容易化するための支援スキームなどはいくつか存在する

① 市場の特別枠

② 入札単位の変更

③ 標準化 (Open ADR / VHP Ready 他)

DER 連系や市場参画のための手続き等を既存電源等に比べ

て簡略化するなどが存在する ④ DER諸手続きの簡略化

出所)各種資料より三菱総研作成

注1 間接的にはVPPの構成要素であるDERの市場参画にも寄与する。 注2 PTC:Production Tax Credit、ITC:Investment Tax Credit

注3 RPS:Renewables Portfolio Standard 注4 FIT:Feed In Tariff、FIP:Feed In Premium

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1. 導入拡大に向けた支援策 -DER(再エネ関連①~④)-

調査対象国の再生可能エネルギー関連施策について整理。

米国では税控除、RPS制度注1、ネットメータリング制度が中心。欧州ではFIT/FIP注2制度が中心。

米国 ニューヨーク州 米国 カリフォルニア州 ドイツ 英国

再エネ電力 導入目標

30% (2015年) ※RPS制度における義務履行目標

25%(2016年), 33%(2020年) ※RPS制度における義務履行目標

35%(2020年) 31%(2020)注4

現状 24% (2015年) PG&E- 28.0 %(2014年) SCE – 23.2%(2014年) SDG&E - 31.6%(2014年)

25.3%(2013年) 14.9%(2013年)

主な再エネ 促進制度

RPS制度(証書取引) 生産税額控除(PTC)注3 投資税控除(ITC)注3 住宅再エネ税控除(RRETC)注3 ネットメータリング

RPS制度(証書取引) 生産税額控除(PTC)注3 投資税控除(ITC)注3 住宅再エネ税控除(RRETC)注3 ネットメータリング

市場プレミアム制度(FIP) ※2014年にFITから変更

Renewable Obligation (RO):RPSの一種

CfD-FIT:差金決済型FIT ※2014年に、ROからCfD-FITへ移行

その他

• Reforming the Energy

Vision (REV):NYPSCが推進しているエネルギー事業規制改革。2030年の再エネ比率50%を目指して、大幅な制度改革を討議中。電気料金制度の大幅な改変も標ぼう

- - -

注1 RPS:Renewables Portfolio Standard

注2 FIT:Feed In Tariff、FIP:Feed In Premium

注3 PTC:Production Tax Credit、ITC:Investment Tax Credit、RRETC:Residential Renewable Energy Tax Credit 注4 政府としての法定目標は設定されておらず、「国家再生可能エネルギー行動計画」の数字を引用

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1. 導入拡大に向けた支援策 -DER(②固定価格買取制度(FIT/FIP))-

欧州ではFIT制度からFIP制度への移行が進んでいる。

FIP制度:再生可能エネルギー電気を卸電力市場に直接販売し、卸電力価格に市場プレミアムを上乗せした額を再生可能エネルギー事業者に支払う方式。

種類 概要 採用実績のある国

プレミアム固定型FIP 電力卸市場価格に固定されたプレミアムを付与

スペイン(-2007)

プレミアム固定型FIP (上限・下限付)

市場価格とプレミアムの和に上限と下限を設定

スペイン(2007-2013)

デンマーク

プレミアム変動型FIP 電力卸市場価格の上下に応じて、付与するプレミアムが変動

イタリア

ドイツ

オランダ

スイス

出所)各種資料より三菱総研作成

FIP制度の種類と概要

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1. 導入拡大に向けた支援策 -DER(④ネットメータリング)-

ネットメータリング(カリフォルニア州)

カリフォルニア州では1996年からネットメータリング(NEM)制度を開始。発電量と消費量の合計に基づき電気料金の支払が決まるもの。

2016年1月に新たに「Net metering 2.0」として改正。主な改正点は、接続費用の採用や電気料金の設計変更等。

改正の背景として、PV所有者が電気料金をほとんど負担せず、電気料金で回収される系統運用費用の多くをPV非所有者が負担しており不平等が生じているため価格設計を変更すべき、という提言が電力会社からあったことが挙げられる。

NEM 1.0

(1996年~)

NEM 2.0

(2016年~)

売電単価 小売電気料金 小売電気料金

接続費用 $0 $ 75~150

最低基本料金注

の設計

消費量-発電量に依存

左図を用いて表すと、

(C-A)[kWh]×

(0.02~0.03)[$/kWh]

消費量そのものに依存

左図を用いて表すと、

C[kWh]×

(0.02~0.03)[$/kWh]

TOU 選択制 義務付け

出所)「カリフォルニア州でのネットメータリング制度の変更」クリーンエネルギー研究所、2016

CA州のNEM制度の主な変更点 NEM制度の仕組み

注 PVの所有/非所有に係らず全ての需要家が支払う基本料金

仮に年間の発電量と消費量が同じなら、電気料金の精算は0円

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1. 導入拡大に向けた支援策 -DER(蓄電池関連⑤⑥(1/2))-

その他DER(蓄電池)に関する施策

その他のDERとして蓄電池に関する施策がある地域を整理。施策があるエリアとないエリアで分類すると、施策がないエリアでは電力価格の高騰と再エネ価格の低減ならびにFIT制度の終了による自家消費ニーズが高まっている。

施策ありのエリアでは導入補助や電力市場取引によるインセンティブが中心。

米国・加州 米国・ハワイ ドイツ オーストラリア

市場の特徴

蓄電池の調達義務に加え、導入補助や市場取引制度等の施策によって特に家庭用蓄電池の導入が進んでいる

元々電気料金が高かったことに加え、余剰電力買い取り制度が廃止された影響で自家消費のニーズが向上

導入補助(現在は2割程度)および低金利融資により蓄電池導入を後押し

系統電力価格の高騰およびFIT

価格の下落、FIT制度の廃止の影響で、自家消費のニーズが向上。

施策

規制・制度 • AB2514(調達義務)

• DRAM(市場取引制度) × × ×

税制・金融 × × • KfW270(低金利融資) ×

財政支援 • SGIP(導入補助)

× • KfW275(導入補助)

• KfW153(住宅補助) ×

上記の施策を推進する理由

• PVの大量導入に当たって調整力を確保するため

• 家庭用蓄電池を系統への調整力に使うため

• PV自家消費を促進するToU

の導入を検討中

• PVの普及拡大に伴う系統への悪影響を緩和するため

• PVの大量導入に伴う系統への悪影響を緩和するため(自家消費促進)

日本への示唆

• 長周期の家庭用蓄電池を普及させるため、補助金設計をkWhベースに変更

• DRとして家庭用蓄電池を利用するための市場取引(DRAM)の開始

• ToUの導入により、PV+Btの事業性が向上し、家庭での自家消費が促進

• 系統への売電量の制限による自家消費の促進

• 自家消費促進のために必要な最適蓄電池コストの分析

• 蓄電池に対する直接的な施策がなくても、電力価格、FIT

制度の状況等によって市場の魅力度は大きく変わる

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1. 導入拡大に向けた支援策 -DER(蓄電池関連⑤⑥(2/2))-

蓄電池導入施策(カリフォルニア州)

カリフォルニア州では、送配電用蓄電池より需要家用蓄電池の導入拡大が想定より進んだことで、需要家用蓄電池に系統への調整力の機能を持つことが要求され始めている。

特に、「系統利益の最大化(送配電網投資抑制)」「ピーク電源代替(DRリソースとしての蓄電池)」としての意義を求められている。

上記のようなユースケースの拡大が想定される中、kWhベースでの補助政策や比較的長時間容量の要件が具備されるなど、蓄電池のkW価値⇒kWh価値への転換が起こっている。

目的・背景 政策・制度の概要 蓄電池の導入に係る政策・制度

蓄電池の

調達義務

カリフォルニア州エネルギー貯蔵法

(AB2514)

• 送配電用蓄電池の代わりに、需要家用蓄電池の目標値が増加

• 需要家用蓄電池の要求仕様に系統への調整力の要件が具備

(送配電網投資抑制、ピーク電源代替等)

需要家用蓄電池を

中心とした政策

SGIP

(自家発電の導入補助制度)

• 補助金設計の変更

kW⇒kWhベース

• ピーク需要時の放電の義務付け

系統利益の最大化

(送配電網投資抑制)

DRAM

(DRの市場取引制度)

• DRアグリゲーションによる

市場取引制度を開始

(ピーク予備力を確保するため)

ピーク電源代替

(DRリソースとしての蓄電池)

Net metering 2.0

(PVの余剰電力買取制度)

• 2019年までにPVの自家発自家消費を推進するToUを義務付ける予定

PVの自家発自家消費

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2. 市場参画に向けた支援策 -VPP/DER導入促進策の例-

市場参画に向けた支援策

VPP/分散型エネルギーリソース(DER)が市場等で参画できるような取組として、諸外国では以下のような促進策が講じられている。

* FFR:Firm Frequency Response ** TCR:Tertiary Control Reserve、SCR:Secondary Control Reserve

出所)各種資料より三菱総研作成

概要 主な事例

VPP

① 市場の特別枠

VPP/DERなどに対して市場参画を促すために、卸市場や調整力市場において特別な参加市場を策定。

特に蓄電池については、その応答性の速さなどを背景に別の市場枠を策定している動きもある。

• 【米国PJM】reg-D(Fast response調整力)

• 【英国】STOR Runway/Enhanced Frequency Response等

② 入札単位の変更

より小規模な電源が直接参加できるようにするため、最小入札単位を押し下げている。

規制当局からの要請に基づき市場運用者が変更する場合が多い。

• 【英国】FFR*への提供容量が50MWから10MWに引き下げ

• 【ドイツ】TCR,SCR**の参画要件として最小入札単位は制度開始当初は50MWであったが、2011年に10MW、2012年からは5MWに緩和

③ 標準化 技術性能、情報通信プロトコル、情報セキュリティなどに関して最

低限満たすべき最低要件を定めることで、より多くのVPP/DERの参画を促す。

• 【EU】VHP Ready(欧州におけるVPPの標準規格)

• 【米国】Open ADR(DRシグナルの通信データモデル)

DER ④ DER諸手続きの

簡易化

DER系統連系等において、一定規模容量以下の設備に対して、手続き等を緩和することで参入障壁を下げる。(規制側の効率化が主目的であると思われる)

• 【米国】系統連系上のファストトラック

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2. 市場参画に向けた支援策 -①市場の特別枠(1/2)-

Reg-D(Fast response調整力の特別市場)

米国PJMの周波数調整市場では、2011年のFERC Order755を受けて、市場の資源に対してパフォーマンスによるインセンティブを与えるため、2種類のRegulation シグナルを規定。

Reg-A:従来型の発電等の資源に送られる指令。

Reg-D:バッテリーやフライホイール等の応答の速い資源に送られる指令。

2016.1-9における決済額平均は$16.52/MW(Reg-Aとの加重平均値のため、実質はこれよりも高額)。

応答の速いReg-Dにインセンティブを与えるために、 パフォーマンススコア、便益係数、マイレージの3つのパラメータを設定。

パフォーマンススコア:シグナルへの応答性の高さを示す指標。0~1までの数値を取る。Reg-DはReg-Aよりも高い値を取る傾向にある。

便益係数(Benefits Factor):Reg-Dの割合に従い設定される係数。Reg-Dの比率が少なくなるほど減少し、2.9~0の値を取る。

マイレージ:シグナルに対して、実際に応答した量の積算値。Reg-DとReg-Aのマイレージの比によって、Reg-Dへの支払いが加算される。

RegDの現状

項目 現状

PJMからの調達信号に対して応答した資源の数

RegA:229

RegD:52

決済額 $16.52/MW ※RegDとRegAの加重平均

(前年同期間比-$19.04/MW,-53.5%)

注)2016.1~9の間における値

出所)State of the Market Report for PJM, 2016Q3

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2. 市場参画に向けた支援策 -①市場の特別枠(2/2)-

STOR Runway(英国)

元々、National Gridが同期していない予備力調達の一つとしてSTOR(Short-term Operating Reserve)を実施。

さらに、上記要件を満たさないDSR(Demand Side Response)の参加を促すための新サービスとして試験的に運用中。

• ENTSO-Eにおける分類としては、RR(Replacement Reserve;代替予備力)の位置づけ

• National Gridが同期していない予備力として調達 • 技術要件は以下の通り 3MW以上の発電増/需要減を提供可(複数サイトからでも可) 開始:≤ 240 min(但し、大体は≤ 20 minで契約している) 持続:≥ 2 hour (契約MW全量) 回復:提供後 ≤ 1,200 hour に回復 回数:≥ 3回/week

• STORポートフォリオを開発しづらいDSRがその難しさを克服するために設計したサービス DSRの参加者は義務となる容量を確保していなくても、STORを包括

して入札できる STORのパラメータと価格が合意してから、プロバイダは必要な容量を

契約すればよい

• 入札の結果は通常のSTORの一部として取り扱う 最低入札3MW 他のSTORプロバイダと経済的に見合う場合のみ受け入れ

• National Gridは STOR Runwayを100~200MW契約する

STOR

STOR Runway

出所)STOR Runway Update , National Grid

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2. 市場参画に向けた支援策 -③標準化-

VPPの標準化(調査対象分野「②VPP導入・拡大を支援するスキーム」関連事項)

先行してVPPビジネスが商用化されたドイツでは、これまで個別にTSOとVPP事業者の間で協議を行ってきた発電設備および通信設備の要件を規格化して、VPP事業規模の拡大と規格の国際化を図るために設立された事業者協会であるVHP Readyを設立し標準化を推進している。

現在、Ver3.0が公表されているが、2017年にはVer.4.0を公表する予定で、最終的には、欧州規格(IEC)及び国際規格(ISO)につなげることを目指しており”Open ADR”との連携やドイツ国内の規格団体との連携等も進めており、当初2011年にVattenfall社で提唱された構想が徐々に拡大している。

出所)VHP Ready ウェブサイト

機器・設備における検討項目 VPP Readyで対象となる機器・設備

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2. 市場参画に向けた支援策 -④DER諸手続きの簡易化-

DER諸手続きの簡易化

DERに対しては、Fast Track Processが用意されており、費用負担の低減などがある。

接続する電圧階級 Fast Track対象電源

< 5 kV ≤ 500 kW

≥ 5 kV and < 15 kV ≤ 2 MW

≥ 15 kV and < 30 kV ≤ 3 MW

≥ 30 kV and ≤ 69 kV ≤ 4 MW

出所)NYISO Tariffs Open Access Transmission Tariff (OATT) Attachment Z

通常 Fast Track

系統連系審査

(手数料) 記載なし

$500

(手数料、返金不可)

系統連系審査

(デポジット)注

$50,000(固定コスト)※ +$1,000/MW(変動コスト)

$1,000

出所) CAISO “Business Practice Manual For Generator Interconnection Procedures”

大規模施設 小規模発電

① ② ③

注 通常の場合、合計で最大$250,000。$1,000未満は切り上げ

実際の調査コストがデポジットを上回る場合、その差分を支払う必要あり。

実際の調査コストがデポジットを下回る場合、未使用のデポジットは返金される。

Fast Track 対象電源 Fast Trackの費用(以下の①-③の費用)

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Ⅲ.VPP及びその構成要素の拡大に伴う課題、対応状況

1. VPP等拡大に伴う送配電網、電気料金への影響

2. 諸外国における対応状況

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1. VPP等拡大に伴う送配電網、電気料金への影響 -事業環境の整理≪再掲≫-

本調査の調査対象国・地域におけるVPPに関連する事業環境を整理。

各国・地域における電力需給、需給運用、事業体制は現状日本とは異なる事業環境にあり、商用化したVPPに活用されているDERは比較的規模大きい需要家を対象としたものが中心である。

米国 欧州 日本

NY州 CA州 ドイツ 英国

電力需給 • 需要・ピークともに増加傾向 • 需要・ピークとも増加傾向(ダックカーブ)

• 需要は横ばい

• 電力輸出の拡大

• 需要は横ばい • 需要、ピークともに減少 (RE出力抑制)

需給運用 • NY州内で需給バランス • CA州内で需給バランス (一部域外との融通有)

• 欧州単一市場に向けた広域運用のための制度設計

• 同左 (ただし物理的連系容量制約若干有)

• 電力会社エリア内で需給バランス+広域運用

事業体制 • ISO+TDSO • ISO+TDSO • TSO+DSO • TSO+DNO • TDSO

DER導入に関わる 政策的位置づけ

• NEM

• DERの活用によるピーク需要削減と送配電投資抑制

• REはPV、風力の比率高

• NEM

• 同左 +ロードカーブ改善

• REはPV、風力の比率高

• REは優先給電

• FITからオークション(卸取引市場への直接投入)

• REはPV、風力、バイオマス

• REは非優先給電

• RO/FITからCfD

• REは風力、バイオマス

• FITによるREの導入(原則優先給電)

• 2017買取スキーム変更

• REはPVの比率高い

VPP事業の現状

• DRの市場参画を契機に市場機会

• NY州REVによるDER活用施策により市場拡大傾向

• DRの市場参画を契機に市場機会

• CA州のRE及び蓄電池導入施策により市場拡大傾向

• DERの需給調整市場への参画を契機に市場機会を拡大

• DRの市場への参画を契機に市場機会を拡大

• 実証事業段階

• 電力各社の調整力公募でDRの活用

特記事項 • DSIPにより各ユーティリティがDER活用プラン

• 蓄電池を活用したピークシフトにおけるVPPの活用

• DRPにより各ユーティリティがDER活用プラン

• DERサービスプロバイダのためのScheduling coordinator

• 市場参加以外にFIPを活用したREマネジメントも実施

• 集約するDERは数百kW規模以上

• DNOの課題(系統増強、電圧問題等)解決のためのVPP活用

• 蓄電池を活用したVPPの事業機会創出

• 実証事業では比較的小規模DERも活用

• 2020年アンバンドリング

電力需給 • 需要・ピークともに増加傾向 • 需要・ピークとも増加傾向(ダックカーブ)

• 需要は横ばい

• 電力輸出の拡大

• 需要は横ばい • 需要、ピークともに減少 (RE出力抑制)

TSO : Transmission System Operator DSO : Distribution System Operator DNO : Distribution Network Operator ISO : Independent system operator

FIT : Feed in Tariff FIP : Feed in Premium RO : Renewable obligation CfD : Contract for Difference NEM : Net energy metering

RE : Renewable energy DER : Distributed energy resources DR : Demand response REV : Reforming energy vison DSIP : Distributed system integration plan DRP : Distributed resources plan

出所)各種資料より三菱総研作成

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2. 諸外国における対応状況 -状況と対応策-

VPPやDERの導入拡大に伴う課題項目毎に、先行して導入が進む欧米における対応状況について整理。

欧米で商用化されているVPPは、①現状存在するDERと送配電ネットワークを有効に活用、②既存電力供給手段(大規模電源)と同等のコスト競争力を有する、ことなどを前提に課題対応がなされている状況。

これらに不足している要素について、蓄電池等の新たなリソースの導入、託送料金の見直しなどの対応が実施されている。

米国では大規模電源の不確実性が高いことからDERの活用が注目されている。欧州では、環境性の観点からDER導入が進んでいるが、供給力は広域運用で確保される見通し(現地調査より)。

項目 欧米での状況・対応策

該当するVPP提供サービス

調整力 卸電力 需要家向け

エネマネ

事業

環境

VPPの市場規模に影響する要素の見通し

(特に電力需要、再エネ導入量の見通し)

欧州:再エネの導入拡大や事業火力売却⇒調整力ニーズ

米国:電力需要増に対応する調整力・卸電力ニーズ 〇 〇

DER

競争力

既存電源に対するDERのコスト競争力

(調整力電源、卸電源としての競争力、ならびにグリッドパリティ・ストレージパリティの達成時期)

欧州:グリッドパリティに近い状態(独など)

米国:FIT制度ではないため、自家発自家消費に強いニーズ 〇 〇 〇

技術

DERに課す技術要件(応答速度、持続時間等) • 通信規格、技術規格の統一化(独)

• 通信・テレメトリー要件の標準化を指令予定(米FERC)

• スマートメータインフラの整備(米)

送配電事業者との通信・テレメトリー要件 〇 〇

需要家構内のリソースに対する稼働指令と実績計測 〇 〇 〇

制度・政策

VPPの事業機会を確保する電力取引制度設計

(調整力公募、卸取引制度、計量等)

• VPPの参画を明示的に認める取引市場創出(米・英・独)

• 最低入札容量の緩和指令を予定(米FERC) 〇 〇

FIT後の再エネ電源の買取制度 • FIPなどDER売電価格の市場連動化(独) • 元来FIT制度でないため、DER外部売電スキームが成立しやすい(米)

〇 〇

DER増に伴う系統制約/抑制補償(接続制限 等) • 再エネ出力抑制に対する機会損失費用の補償(独) 〇 〇 〇

下流側での潮流変化・潮流増(逆潮流の場合) • 家庭用需要家へのデマンドチャージ導入(米など)

• アグリゲーションにおける系統混雑考慮(米) 〇 〇

自家発自家消費の拡大による系統利用の減少 • PVの設置容量に応じた固定料金の課金(米) 〇

蓄電池等の活用における託送料金の2重課金 - 〇

注 送配電料金制度に強く関わる部分を赤枠で記載。次頁以降で詳細検討。

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2. 諸外国における対応状況 -課題と対応の方向性-

VPPやDERの導入拡大に伴う課題のうち、本検討の主要な視点の一つである、送配電料金制度に強く関わる課題と、それらの課題への欧米諸国の対応の方向性を整理。

VPP事業促進に資する対応策と、潮流変化に伴う需要家負担の不公平性を是正する対応策に大きく分類される。

ローカル系統の課題のうち、電圧はDSO、周波数はTSOが管轄。電圧問題については①として英国が対応策を検討。

課題 概要 対応の方向性 調査対象国における対応事例

①DER増加に伴う 系統制約

(接続制限)

• 配電網へのDER接続容量が上限に達し、 再エネ普及やVPP事業活性化が阻害される

• より柔軟な接続を許容し、それに応じた柔軟な料金を設定するNon-firm型接続(Flexible接続)の導入

英:Flexible Distributed Generation connection

②下流側での 潮流変化・潮流増

• DERの活用に伴い、配電側での潮流が大きく変化する。また、逆潮流を伴う場合は配電側での潮流増を招く(配電系統の混雑は配電事業者が制御)

• その結果、下記のような問題が発生

DER搭載需要家は、自身の電力需要に基づくコスト負担以上に配電系統を利用 (DER非搭載需要家との不公平性)

局所的な系統混雑が発生し、 配電網維持コストが逆に増加

≪不公平の是正≫

• 低圧需要へのデマンドチャージ(kW料金)導入

• 低圧需要を含めた全て需要家に対して、 想定される逆潮流量に応じた接続料金を課金

≪局所制約問題≫

• アグリゲーションルールに地域制約を導入 (ローカルな地域間でのインセンティブ無し)

欧米:低圧需要家までを含めた系統利用料金に関わる再構築を検討中

米CA:系統状況を踏まえて設定されて

いるゾーン(Sub-LAP)でのリソース集約が必須

③自家発自家消費の拡大による系統利用の減少

• 自家発自家消費の拡大により、送配電系統の利用量自体が減少し、単位あたりの送配電コスト増を招く(デススパイラル)

• 基本料金と従量料金の比率見直し

• DER容量に応じたスタンバイチャージ課金

欧米:プロシューマ需要家向けのスタンバイチャージの検討

④蓄電池等の利用における託送料金の2重課金

• VPP事業者が蓄電池等を電力融通等に利用し逆潮流を伴う場合、充電と放電の両方で託送費を負担する恐れがある

• 揚水発電と同様の託送費ルールを蓄電池リソースに適用

-

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≪参考≫デススパイラルについて

デススパイラルの要因とその背景

DERの拡大に伴い、送配電網の利用が減少し、DER非保有者の負担増となることでさらにDER拡大が進む。

他方、送配電網自体の老朽化が進んでおり、需要減等も考慮した設備投資計画が必要。

送配電網のデススパイラル デススパイラルの背景(電事連資料より)

出所)送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討WG 第1回資料3 出所)送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討WG 第2回資料4より三菱総研作成

系統需要の減少

省エネ・効率化の進展(節電の定着、省エネ機器買替え)

自家発自家消費の増加(PV等)

人口や世帯構造の変化 など

電源の設備投資計画

火力発電等の電源の建設計画との整合性

PV・WT等の導入拡大による調整力不足、

送配電設備の利用率低下

送配電設備の高経年化

鉄塔、架空線、ケーブル、変圧器等それぞれの設置場所や

劣化状況を元に個々に判断が必要

送配電設備の負担のあり方

現状、電源立地エリアの需要家が託送料金にて費用を負担

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2. 諸外国における対応状況 -①DER増加に伴う系統制約(1/3)-

Flexible Plug and Play(英国)

英国において、DERの導入は送配電系統の増強費用の抑制や、エネルギー利用効率の向上など効果を認め、DERの導入のためのDNO(Distribution Network Operator)がDER受入のためのツールを開発している。

Flexible Plug and Play(FPP) UK power networksが実施したFPP (2012-2014)では、増加する配電系統に接続するDERに対応するためにANN : Active

network managementと呼ばれる技術によりDERの接続に関わる配電系統設備増強と出力抑制を最適化し、より多くのDER

の接続を可能とするツールを開発した。

出所)London Power networks資料より三菱総研作成

英国におけるFPPツールのイメージ

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2. 諸外国における対応状況 -①DER増加に伴う系統制約(2/3)-

FDG connection(英国)

前述のDERの受入ツールに加えて、DER導入に際して出力抑制を伴う、系統接続に関わるルールも整備されつつある。

Flexible Distributed Generation (FDG) connection 容量、電圧、逆潮流などの問題などの制約のために、これらの技術的課題を解決するためのネットワークの改修・増強により、接続コストが予想以

上に高くなる可能性が高いエリアが存在する。

FDG-Connectionは、既存のネットワーク内で、特段の補強を必要とせずに、出力抑制を前提に接続ポイントを提供することを目的としている。

このために、UK Power Networksでは、制約のあるエリアに関してHeat mapと呼ばれる地図情報を提供し、同エリアの接続に際しては出力抑制を前提とした接続契約を締結する。

出所)London Power networks資料より三菱総研作成

英国におけるHeat mapのイメージ

太陽光発電(Solar)

の導入量が過大

再エネ導入量に

余力あり

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2. 諸外国における対応状況 -①DER増加に伴う系統制約(3/3)-

ローカル混雑による出力抑制への補償(ドイツ)

ドイツでは、EEG(再生可能エネルギー法)において、再エネの優先給電が規定されているが、系統不安定時において、再エネの出力抑制を実施可能。ローカルな対策で対応できる場合にはその金銭的補償が行われる。

出力抑制に対しては手引書「EEGに基づく供給電力管理の手引き(Leitfadenzum EEG-Einpeisemanagement)Ver 2.1, 2014」によりその機会損失費用が補償されることが規定されている。

根拠法 • EEG(再生可能エネルギー法)11条によるもの(局地的対策で済む場合)

• EnWG(エネルギー事業法)13条(2)によるもの(全系的な対策が必要な場合)

抑制の順番

• 系統安定性が維持できないような状況では、以下の順序で再生可能エネルギー電源の抑制・解列が実施される。

まずはEnWG13条(1)に基づき系統分割や再給電などの系統運用および市場を通じた措置

さらに過負荷対策が必要な場合、EEG11条による再生可能エネルギー電源の抑制・解列

なお全系的な問題が残る場合、EnWG13条(2)による再生可能エネルギーの抑制・解列

金銭補償 • EEGに基づく抑制・解列の場合(局地的対策で済む場合)、金銭的補償が行われる

• EnWG13条(2)に基づく抑制・解列の場合、金銭的補償はなされない

出所)海外の再生可能エネルギー電源に係る優先規定の検討状況について、資エ庁 等より三菱総研作成

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2. 諸外国における対応状況 -②下流側での潮流変化・潮流増(1/12)-

系統利用料金の再構築(NY州)(1/11)

NY州では2010年以降需要は頭打ちの状況で、今後も省エネの進展、屋根置き太陽光発電等の自家消費増加により需要減少の予測。

他方、ピーク需要は緩やかに増加傾向の予測であり、日本と同様デススパイラルについて懸念されており、何も対策を講じず従来の方法で送配電等設備の高経年化対策を実施する場合は、今後10年間で約300億ドルの追加投資が必要と試算。

NY州で懸念されているデススパイラル (Vicious Cycle)

出所)Power Trend 2016,NYISO

電力需要は減少傾向

ピーク需要は増加傾向

省エネを織り込んだ電力需要見通し

省エネを織り込んだピーク需要見通し

出所)Disruptive Challenges, Edison Electric Institute

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2. 諸外国における対応状況 -②下流側での潮流変化・潮流増(2/12)-

系統利用料金の再構築(NY州)(2/11)

NY州での太陽光発電、コジェネ(CHP)の導入量は急上昇している。

出所)Constructing the Future of Energy, ConEdison

太陽光発電とコジェネ(CHP)の導入の推移

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2. 諸外国における対応状況 -②下流側での潮流変化・潮流増(3/12)-

系統利用料金の再構築(NY州)(3/11)

大規模ハリケーンや先のデススパイラル等を背景に、2014年4月にNY州知事がエネルギービジョン改革(REV:Reforming Energy Vison)を発表。DERを既存の電力システムの中に効率化するような形で取り込む分散型電力システムを構築することとしている。

REVを受けて、NYPSCは以下の通り3つのトラック(論点)に分けて制度設計を実施している。

2017-2021年をStage1準備期間とし、2022年以降をStage2運用促進期間として段階的に実施。

出所)New York State Department of Public Service

REV概念図 REVにおける3つのトラック

≪論点1:市場設計≫

配電レベルのDER取引市場の構築と従来の設備計画の統合

配電事業者にDER取引市場運営主体、DSPとしての役割付与等

出所)Constructing the Future of Energy, ConEdison

≪論点2:料金規制改革≫

託送料金、規制料金改革 (原価算定方法、原価期間等)

配電事業者の新たな収益源の模索 等

≪論点3:大規模RES導入促進策≫

RPS達成の実行計画 (2030年に50%達成)

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2. 諸外国における対応状況 -②下流側での潮流変化・潮流増(4/12)-

系統利用料金の再構築(NY州)(4/11)

3rdパーティによるDER普及注を促進するため、DERを取引する市場として配電系統プラットフォーム(DSP:Distributed System Platform )の開発を目指している。

新たに投資が必要な技術について、スマートメータインフラ、配電自動化システム(DA)、関連情報通信技術、高度な配電マネジメントシステム/DERマネジメントシステム(ADMS/DERMS)、分析・計画ツールの5つと例示。

系統情報の把握等はスマートメータインフラが担う。

出所)Distributed System Implementation Plan, NYSEG RG&E

スマートメータインフラ

:メータを通じたきめ細やかな使用電力量等の情報を取得/需要家設備の監視・制御

配電自動化システム(DA)

:配電レベルの潮流管理、電力品質管理等

情報通信技術

:需要家・DERプロバイダ・配電事業者間のネットワーク

ADMS/DERMS

:配電事業者がDERを運用・管理できる一連のシステムの総称

分析・計画ツール

:配電事業者が取得したデータの分析等をするための基礎となるシステム

注 原則として、電気事業者(配電事業者)自体がDERを所有することは認められていない。例外としては、系統規模のBESSや実証PJ等。

配電系統プラットフォーム(DSP)の技術開発要素

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2. 諸外国における対応状況 -②下流側での潮流変化・潮流増(5/12)-

系統利用料金の再構築(NY州)(5/11)

これらの実現に向けては以下のような配電系統プラットフォーム(DSP:Distributed System Platform)及び技術開発を想定。

DERMSやADMSはこれらをつかさどる重要な技術とされている。

出所)Distributed System Implementation Plan, NYSEG RG&E

高度な配電マネジメント

システム (ADMS)

DERマネジメントシステム (DERMS)

配電系統プラットフォーム(DSP)の概要図

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2. 諸外国における対応状況 -②下流側での潮流変化・潮流増(6/12)-

系統利用料金の再構築(NY州)(6/11)

NYPSCは2015.2.26策定のREVに基づき、電力システムにおける新たなビジネスモデル・機会の創出を企図し、実証プログラムを開発。

特に、DSP構築、料金構造検討、DER取引価値の特定等に向けて、NYPSCは実証PJを立ち上げ。2015年8月4日に以下の7件が承認された。

各実証PJでは、3rdパーティとの連携強化による新たな商品・サービスの提供を模索。

事業者名 PJ名 概要

ConEd社

Clean Virtual Power Plant • SunPower社、SunVerge社と提携。

• 家庭用需要家向けのPV・蓄電複合システムの構築。

• 停電時の回復力サービスおよびバーチャル発電所として系統サービスを提供。

Building Efficiency

Marketplace

• Retroficiency社と提携。

• 商業用需要家と省エネ事業者間の取引市場を構築。

• 電力の使用実態の需要家への周知。省エネや電気料金節約のための消費者意識の向上を図る。

Orange & Rockland社 Customer Engagement and

Marketplace Platform

• Simple Energy社と提携。

• 需要家の積極的関与を促すオンライン取引市場を構築。

• 需要家のニーズに合った商品やサービスの検索を支援。

• PVやLEDバルブ、家電機器のリサイクル等のサービスを提供するサードパーティの参加を促す。

Iberdrola社

Flexible Interconnect Capacity

Solution

• Smarter Grid solutions社と提携。

• 需要家に最も価値をもたらすDERの最適接続地点を選定。

• DERの自動制御により運用コストを抑制。系統情報や需要家情報を活用したDER取引市場を構築。

Community Energy

Coordination • コミュニティ内の接続可能なエネルギー目標の策定支援。集約された需要家とコミュニティ・ソーラー等

のDERをつなぐプラットフォームを提供。需要家に対してファイナンス面での支援も実施。

Central Hudson社 Central – E • 家庭用需要家向けのオンライン省エネ取引。

• 需要家は、使用電力データ、推奨される行動例およびサードパーティからの商品・サービスのオファーを受領。より詳細なデータ分析を希望する需要家は月4.99ドルでプレミアムサービスを受けることが可能。

National Grid社 Neighborhood Solar • 低中所得者層向けのルーフトップPV導入プロジェクト。

• 需要家は初期投資コストを負担する必要はなく、電気料金を延滞している需要家に対しては、プロジェクトの便益が延滞金の返済と相殺される。

出所)REV - Demonstration Projects、NYPSC等より三菱総研作成

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2. 諸外国における対応状況 -②下流側での潮流変化・潮流増(7/12)-

系統利用料金の再構築(NY州)(7/11)

Reforming the Energy Vision (REV)に基づく実証事業の目的:第三者・電気事業者における新しい収益源の機会の創出

実証すべき課題として、以下が整理されている。

第3者参加パートナーシップ、新規ユティリティビジネスモデル、需要家コミュニティ形成、経済的価値の特定、料金設計、トランザクティブグリッド、スケーラビリティ、市場規制、費用効果性、タイムフレーム

出所) Flexible Interconnect Capacity Solution Initial Filing, Demonstration Plan

Iberdrolaの実証事業の評価指標と内容 Iberdrolaの実証事業の実証スケジュール(導入期)

評価指標 内容

FICS オプションの選択

FICSオプションを選択しているプロジェクトにおける容量(MW)とその割合で評価

系統接続のタイムフレーム

DERデベロッパに対して求められる系統接続に必要な期間について、FICS導入前後での所要期間を比較

発電削減量に占めるシェア(割合)

デベロッパへの提案には予測削減率が含まれる。この予測削減率は、発電削減量のうちに占める各デベロッパの構成割合の現状と予測の比較に基づき、作成される。

FICSでの全ユティリティの収益

FICSから得たユティリティの収益($/MW)を評価。

顧客満足度 全ての接続後のプロジェクト参加者(今後継続するか否かを問わず)に対して調査を行う。この調査は今後のプロセス向上にフィードバックされる。

出所) Flexible Interconnect Capacity Solution, Demonstration Project

Implementation Plan

例)Iberdrola社 (Flexible Interconnect Capacity Solution、FICS)

DERの系統接続を促進する、低コストで迅速なサービスインフラの提供 に向け、以下の項目について実証。

• ANM(動的ネットワーク管理、Active Netwark Management)の技術実証:大規模DERの相互接続対処に向けた必要な監視およびリアルタイム制御機能を提供する技術ソリューションの構築。

• 収益性の実証:ANMプラットフォームを利用したビジネスモデルにおける、DER所有者の収益性の確保。

• DER所有者許容性の実証:DER所有者の収益性に沿った、系統連系に係る柔軟性、コスト効率性の検証。

実証スケジュール:導入フェーズ、実証フェーズの2期構成。導入期は2016年内に終了している。

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≪参考≫ Iberdrola社 実証PJ “Flexible Interconnect Capacity Solution”

FICS(Flexible Interconnect Capacity Solution)の概要

FICSはDG(小規模発電者)やDERデベロッパに対して、ビジネス創出・利益創出に向けた系統接続やシステム更新申請の負荷軽減を実現する「プラットフォーム」の構築を目指す。具体的には、DG・DERデベロッパに対し、以下のコスト削減・収益増の機会を創出する。

コスト削減:レベニューロスの削減、DERの追加に伴うシステム更新申請の負荷軽減。

収益増 : 系統接続するDERの追加に伴う煩雑性の解消、設備費用の削減。

FICSが提供する新たなビジネスモデル FICSが提供する直接/間接的費用と収益

出所) Flexible Interconnect Capacity Solution Initial Filing

注 図中のDは直接費用/収益、Iは間接費用/収益

出所) Flexible Interconnect Capacity Solution Initial Filing

ステークホルダー

系統接続の柔軟化 従来通りの系統増強

費用 便益 費用 便益

ユティリティ

調査・モデリング費用(D)

システム使用料(D) 資本支出の増加

高資本支出に伴う投資利益

ANM資本支出(D)

維持管理費用増(D)

従来通りの補強による資本投資、投資利益の損失(I)

アセット利用率向上(D)

スマートグリッドプラットフォーム(I)

DERマーケット(I)

DERデベロッパ

資本投資に占めるANMの割合(D)

システム利用料(D)

歳入ロスの削減率(D)

早期投資回収(D)

資本投資削減(D)

プロジェクト稼働(D)

柔軟な系統接続(I)

需要家の投資利益の増加(I)

高い資本投資:系統増強(D)

プロジェクトの遅延、不稼働(D)

最大の収益(D)

会社単位での系統接続

需要家 系統管理費用

配送電遅延保障(I)

デベロッパの増加(I)

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≪参考≫ ConEd社 実証PJ “Clean Virtual Power Plant”

Clean Virtual Power Plantの概要

家庭用需要家向けのrooftop PV・蓄電システムをアグリゲートすることで、仮想的な発電所を構築するもの。

災害発生時等のレジリエンス・サービスを需要家に提供するとともに、蓄電設備による安定した出力を市場に投入することで収益を上げるモデルの構築を目指す。

PJ名 Clean Virtual Power Plant

PJコスト 1,200万ドル

(月額サーチャージとしてすべての需要家からコスト回収)

定型事業者 SunPower社、SunVerge社

DER 設備

rooftop PV SunPower社が設置し、需要家と20年間のリース契約を締結

BESS 需要家サイトに設置されるが、ConEd社が所有・制御

VPP (集約後)

• VPPの合計設備容量は、 1,800kW/BESS性能4,000kWh

• SunPower社、SunVerge社のオペレーションセンターを通じて、ConEd社の配電系統システムと接続

ConEd社に 期待される収益

• レジリエンス・サービスの対価 • VPPの供給力を卸電力市場やDER取引で販売する

ことによる収益

出所)REV - Demonstration Projects、NYPSC等より三菱総研作成

Clean Virtual Power Plantのイメージ

オペレーションセンター(SunPower社/SunVerge社)

オペレーションセンター(SunPower社/SunVerge社)

配電会社(ConEd社)

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2. 諸外国における対応状況 -②下流側での潮流変化・潮流増(8/12)-

系統利用料金の再構築(NY州)(8/11)

REVの方向性としては、プラットフォーム市場を通じてDERが電力システムにもたらす価値を最大限評価し、適切な報酬を提供できる仕組みにする。

特にDERが設置される地点ごとに価値は異なり、その運用方法によっても価値は異なる。DERの普及に市場原理を活用し、DER便益がDER費用を上回る場合、普及が拡大する。

ただしこれらの実現には、スマートメータインフラの整備やデータ取得・共有方法の確立、配電レベルの地点別限界価格(LMP+D)の算出方法が確立されることが目指されており、長期的な取り組みである。

出所)”Benefit Cost Analysis”, Con Ed(2016)より作成

注 設置地点、運用方法により費用と便益が逆転することもありえる

資本費

運用維持費

系統接続費

その他費用

配電設備投資抑制

系統安定化

送電設備投資抑制

容量価値

アンシラリー価値

エネルギー(kWh)価値

再エネ証書価値

その他社会的価値

DER費用

DER便益

DER

価値

配電便益

送電便益

発電便益

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2. 諸外国における対応状況 -②下流側での潮流変化・潮流増(9/12)-

系統利用料金の再構築(NY州)(9/11)

米国では、DER導入拡大の効果の一つとして、ピーク需要の削減に伴う送配電投資抑制効果を挙げ、規制当局が送配電系統を保有するユーティリティに対してDER受入のための環境整備を促している。

出所)Con Edison資料より三菱総研作成

Distributed System Integration Plan(DSIP) 左記のような項目に基づきDSIPを策定し、DERの導入に関わる費用対効果を検証することがUtility(TDSO)に求められている。

DERの費用対効果分析のイメージ DSIPにおける検討項目

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2. 諸外国における対応状況 -②下流側での潮流変化・潮流増(10/12)-

系統利用料金の再構築(NY州)(10/11)

前掲のDSIPの作成のもと、Utility(TDSO)は、従来型のビジネスモデル(電力流通設備を形成し、その利用に基づき費用回収する)から、新たなビジネスモデルへの変革(Earnings Adjustment mechanism : EAM)を促されている。

出所)Con Edison資料より三菱総研作成

NY州における電力会社(Utility)のビジネスモデルの方向性

ビジネスモデル

収益

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2. 諸外国における対応状況 -②下流側での潮流変化・潮流増(11/12)-

系統利用料金の再構築(NY州)(11/11)

配電事業者がプラットフォームからの新たな収益を得るまでには、実証を通じた有効性を検証する必要があるが、これらは長期的な(10年単位)構築になる。

短期的に配電事業者の収益性を改善するための経過措置として以下のような取り組みが挙げられる。

現行 経過措置 目指すべき姿

主な収益源

概要

• 総括原価方式

≪現状の課題≫

• 配電事業者には自社設備に優先してDER導入を促すようなインセンティブが働かない

• DERによる需要家の自家消費増加に伴い、現在の料金制度では配電事業者が設備投資等にかかるコストを回収困難になる (デススパイラル)

+インセンティブ規制

• 配電事業者が事前に設定した目標の達成状況(パフォーマンス)に応じて収入が加減させるインセンティブ規制を導入

≪想定されるインセンティブ目標例≫

• 負荷平準化/ピーク需要削減

• エネルギー効率向上

• DER系統連系の迅速化

• 設備利用率

• 天候の影響調整 等

+プラットフォーム収益

• 配電事業者が保有するプラットフォームを活用した新たなビジネスによって得られる収益(プラットフォーム自体の使用料も含む)

• DERプロバイダーの拡大が配電事業者にとって収益拡大になる仕組み

≪想定されるビジネスモデル例≫

• Web等を利用したDERプロバイダーと需要家との仲介(蓄電池・サーモスタット等の販売仲介)

• スマートメータデータの加工・DERプロバイダーへの提供

• DERアグリゲーションによる卸電力市場等への入札

• DER調達のファイナンス

• プラットフォーム使用料 等 出所)Order Adopting a Ratemaking and Utility Revenue Model Policy Framework, NYPSC (2016)

出所)Distributed System Implementation Plan, NYSEG RG&E等より三菱総研作成

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2. 諸外国における対応状況 -②下流側での潮流変化・潮流増(12/12)≪再掲≫-

リソースアグリゲーションにおける制約(米国CA州)

アグリゲーションにあたっては、DERPが系統混雑を新たに発生させる事態を避けるため、系統状況を踏まえて設定されているゾーン(Sub-lap)でのリソース集約が必須となっている。DREPは、Sub-LAP毎にアグリゲーションを形成し、事業を行うことになる。

DERPの事業要件 CAISO Sub-lap

出所) Energy Storage and Aggregated Distributed Energy Resource Education Forum(CAISO)

項目 概要

エリア アグリゲーションはSub-LAP内のみで可能

リソース条件 配電系統に接続しているエネルギーリソース(behind-the-meterリソースも可能)

ただし1リソースの規模が1MW超のものは、アグリゲーション不可

アグリゲーション下限量 500kW以上

アグリゲーション上限量 20MW未満

その他 ネットメータリング適用リソースのアグリゲーションは不可

メーター計量値のみで稼働量を確定できるリソースのみアグリゲーション可(稼働量算定にあたりベースライン設定が必要なリソースや稼働方式はアグリゲーション不可)

アグリゲーション総量10MW超の場合およびアンシラリーサービスを提供する場合は、通常の発電設備と同様の通信・テレメトリーを要求

DRPはISOから負荷分配計数(GDF:generation

distribution factor )を事前に設定される。一方で、保持するバスの中でその配分はDRPが任意に設定可能。

• 23のSub-LAPが存在

• もともと、エリア間の金融的送電権(CRR)を取引するために設定された区割り

注 黄色はSMUD、赤色はImperial Irrigation District等の公営電力会社の管轄でCAISOとしてSub-LAPに指定していない地域。

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2. 諸外国における対応状況 -③自家発自家消費の拡大による系統利用の減少(1/6)-

米国での電気料金に関する検討状況

米国において、DERやVPPの導入拡大に伴って発生している課題について言及している以下のレポートについて整理。

NARUCの概要 FERC Docket Nos.の概要

NARUCとは米国の公益事業委員会(PUC)の団体で、公益事業委員会の共通課題等を取り上げる機関

2016年11月に”Distributed Energy Resources Rate Design

and Compensation”というレポートを公開

主に、DER普及に伴い、各州が検討すべき電気料金設計案、DERへの報酬のあり方について整理

各種設計案については単独での利用のみならず、組合せなどでの設計も可能

FERC(米国連邦エネルギー規制委員会)とは、米国の電力事業・ガス事業に関する規制・監督を行う 機関

2016年11月に” Docket Nos. RM16-23-000; AD16-20-000”

というレポートを公開

DERの卸市場参加拡大に向けて参加要件の障壁を取り払うように促すようISOに求めるもの

蓄電リソースに対して、どの市場でも参加可能にすること、最小取引要件を引き下げることなどを明示

さらに、DERアグリゲーターに対して、通信システム等の要件を定めるように促している

カリフォルニア州の制度が最も進んでいると指摘しつつ、同州においても届出上の課題や一部市場への参入障壁が残っている等の指摘

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2. 諸外国における対応状況 -③自家発自家消費の拡大による系統利用の減少(2/6)-

電気料金設計案(米国NARUC manual)

DER普及に伴い、各州が検討すべき(考慮できる)電気料金設計案について整理。

各種設計案については単独での利用のみならず、組合せなどでの設計も可能。記載内容の概要は以下の通り。

出所)NARUC manual on distributed resources rate design and compensation DER Compensation Options , NARUC

瞬間デマンド(kW)に応じ

課金する料金体系 Demand Charges

デマンドチャージにより回収する費用範囲を見定めたうえで、以下のような観点からオプションを組み合わせる仕組み。

• クラス別(顧客タイプ、地域)、ピークの重なり等の重大性、偶発性

• DERのタイプ別に導入による影響が異なるものの、一般的にPV、DG、EE等のDERプロシューマにとっては配電コストや系統に対し支払うコストの削減につながる

固定料金/最低料金 Fixed Charges

and Minimum Bills

従量料金の他に系統接続に対する固定料金や最低チャージを設定して回収する仕組み。

• カリフォルニアPUCは最低料金を10ドルに設定し、回収している。

• マサチューセッツSolar Energy Act においては、配電会社がDPUに対し、ネットメータリング需要家に対する最低料金を提案できることになっている

スタンバイ/バックアップ料金 Standby and Backup Charges

自家発所有者(家庭用PV設置者等も含む)に対し、計画的/突発的な設備の供給停止が起きた際における、顧客への供給を継続する仕組み。

• スタンバイチャージは計画的/突発的な設備の供給停止が起きた際における損失額をユティリティが算定。通常、デマンドチャージ($/kW)と従量課金($/kWh)から成る

系統連系/メータ費用 Interconnection Fees/Metering

Charges

系統連系費用、メータ設置費用を徴収する仕組み。

• 系統連系費用は固定費用と出力に応じた従量費用で設定されることが一般的。カリフォルニア州:$75~$150、マサチューセッツ州:$0~$7,500と州により課金額・幅が多様

kWh

kWh

kWh

kWh

$

$

$

$

デマンド(kW)に応じて決定

最低料金を一律に設定

デマンドチャージ($/kW)と従量課金($/kWh)

固定費用と出力に応じた従量費用($/kW)

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2. 諸外国における対応状況 -③自家発自家消費の拡大による系統利用の減少(3/6)-

DERへの報酬のあり方(米国NARUC manual)

DERへの報酬方法の種類については、以下の4種類が整理されている。

Transactive Energy はDERの活用を促進すべく、Gridwiseアーキテクチャ会議(GWAC)を中心として実装に向けた検討が進められている。

出所)NARUC manual on distributed resources rate design and compensation DER Compensation Options , NARUC

ネットメータリング Net Energy Metering

再生可能エネルギーの余剰電力を系統線に流して売電できるようにし、消費分から発電分を控除した「ネットの消費量」で課金する仕組み

• 加州では価格を見直して継続運用している。

• 電力需給の状況を問わず1kWhが等価交換されるため、TOUの導入等の対策が検討される

リソース価値による値付け Value of Resource

(VOR)

DERシステムにより生じるコストと利益(発電量)を分離してそれぞれを定量化するための手法。

• DERの所在地や密度、他の(天然ガスの)価格、系統での再生可能エネルギーの価格、CO2削減、汚染物質削減等に応じて費用、利益を定量化

サービス価値による値付け Value of Service (VOS)

配電ユティリティに対してDERが提供できる追加的サービスを特定し、その価値を定量化する手法。

• 値付けの対象とするサービスの例として、電圧サポート、ランピング、ローカルブラックスタートなど。マイクログリッドや蓄電リソースから得られるサービスも対象となる

トランザクティブエナジー Transactive Energy

従来の計画ベースの電力需給制御システムではなく、「経済的な「価値」を主な管理パラメータとして用いて、電力インフラにおける需要と供給をダイナミックに調整する管理手法」

• DERはユティリティないしグリッドへの供給のみならず、直接的に他の需要家との契約・売電が可能となり、収益機会が拡大

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≪参考≫「スタンバイ/バックアップ料金」についての補足

スタンバイ・バックアップチャージについては、大規模工場の自家発電・CHPの喪失に対する仕組みが大本である。分散型リソースへの適用には手続き改善等の課題がある。

スタンバイチャージは、ユティリティのシステム信頼性確保を目的として、発電者が供給できなかった分の電力供給を埋め合わせた量に応じて支払いがなされる。バックアップチャージについても、同じくユティリティの信頼性確保が目的であるが、あくまで計画的手供給停止のみを対象にするサービスである。

現状、DERを含め相当量の発電量については、その予備電源に係るスタンバイコストが発電者に対して請求されておらず、需要家のコスト負担を増している。一つのDERが電力系統に起き得る重大な不足の事態に備えてコストを配分するようなことは生じていない。

DERを系統に組み込む場合は、系統の信頼性確保を念頭に入れて料金設計をすべきで、DER投資はそれらのコスト分を考慮したうえで判断されるべきである。

加えて、PVの天候変動に伴う出力変動を埋め合わせる電源コスト等については、何らかの方法を持って発電者から徴収されるべきである。

いくつかの南東部のユティリティはスタンバイチャージを導入ないし計画しており、需要家がDERに投資をすることに影響を与えている可能性がある。たとえば、アラバマ州の“the Alabama Power Company” が導入している “Rate Rider RGB

Supplementary, Back-up or Maintenance Power schedule” は、太陽光発電の出力に応じて課金がなされる仕組みである。 Santee Cooperにおいても同様の規制が導入されている。

出所)NARUC manual on distributed resources rate design and compensation DER Compensation Options , NARUC

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≪参考≫ Value of Service (VOS) について(1/4)

概念的には、下図に示すように、DERがどの部分のサービスをカバーできるかにより価格付けを行う手法。

提供されるサービスに着目して価格付けを行うため、リソースの種類や技術などに関しては着目しない。

出所)NARUC manual on distributed resources rate design and compensation DER Compensation Options , NARUC

注 Resource Adequacyは、ISOがLSEに対し自社想定需要の115%相当の供給力確保義務を課す仕組みであり、契約容量に応じ支払いがなされる。

DERにより提供されるサービスの項目とその対象

ISO/RTO向け 需要家向け

電力会社向け

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≪参考≫ Value of Service (VOS) について(2/4)

サービス価値支払いによる収益がコストを上回る例として、系統ないしエンドユーザに対する1次供給をした場合の価値支払いが挙げられている。

種類 業務部門施設の蓄電池でのデマンド調整

(カリフォルニア州、サンフランシスコ)

概要

• 蓄電池でのデマンド調整を行っているサンフランシスコのホテルにおける実測データと、各種料金から計算。

• 最大の収益機会はデマンドが500kWを超えないように調整することによるもの。

• 20年間におけるバッテリーの更新費用(7年目、14年目の2回)等も含めたコストと収益の現在価値を比較。

収益の種類

① 購入電力量削減

② ISOサービスないし供給力確保義務

(Resource Adequacy)

③ 調整力市場(Spinning Reserve, Regulation)等

その計算方法

① 小売料金単価×削減量

② アンシラリー市場の時間当たり決済額平均×放電量

、RA等の容量についてはSOCに基づき把握

③ ②と同じ

種類 ニューヨーク州での配電網増強遅延(UPGRADE

DEFERRAL)、(ニューヨーク州、ブルックリン、クイーンズ)

概要

• 最大の収益機会はConEdによるBQDMプログラム:ブルックリン、クイーンズにおける配電網整備の代わりにビハインドメーターで需要調整を行うことで費用が支払われるもの。

• BQDMは計画・準備段階のものであり、substationの増強が2017-2019年にかけて実施される

収益の種類

① UPGRADE DEFERRAL による支払

② ISOサービスないし供給力確保義務

(Resource Adequacy)

③ 調整力市場(Regulation)等

その計算方法

① 需要調整量に応じて計算

② 市場価格×供給量

③ ②と同じ

出所) THE ECONOMICS OF BATTERY ENERGY STORAGE , RMI

注 Resource Adequacyは、ISOがLSEに対し自社想定需要の115%相当の供給力確保義務を課す仕組みであり、契約容量に応じ支払いがなされる。

業務部門施設の蓄電池でのデマンド調整 配電網増強遅延

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≪参考≫ Value of Service (VOS) について(3/4)

需要家マネジメントによる収益の検討が進められている。

出所) THE ECONOMICS OF BATTERY ENERGY STORAGE , RMI

種類 集合住宅での需要マネジメント

(アリゾナ州、フェニックス)

概要

• アリゾナ州では屋根置きPVの増加に伴い、同施設向けの新しいタリフ(Salt River Project)を設定。基本は的な料金設計の仕組みはTOUであるが、蓄電池の設置により取引単価が異なる。

• 系統からの購入量はネットゼロと仮定

収益の種類

① Salt River ProjectのTOU、充電単価減による収益

② ISO/RTOサービス*ないし供給力確保義務(Resource Adequacy), RA

* Regulation, Spinning Reserve 等

その計算方法

① 小売料金単価差額×需要量

② アンシラリー市場の時間当たり決済額平均*×供給可能量

種類 逆潮流価格が低下したネットメータリング制度

(カリフォルニア州)

概要

• 最大の収益機会は蓄電池利用による屋根置きPVの自家消費。

• 系統からの購入量はネットゼロと仮定

• ネットメータリング対象世帯における逆潮流価格は 3.5

cents/kWhと想定

収益の種類

① 自家消費分× 小売電力単価

② ISO/RTOサービス*ないし供給力確保義務(Resource Adequacy), RA

* Regulation, Spinning Reserve 等

その計算方法

① 小売料金単価×使用量

② 市場価格×供給可能量

③ ②と同じ

集合住宅での需要マネジメント 逆潮流価格が低下したネットメータリング制度

* アリゾナ州は発送分離等が実施されていないため、決済額はCAISOの値を使用

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≪参考≫ Value of Service (VOS) について(4/4)

DERの価値評価(CA州)

DER導入拡大の効果と送配電系統の増強を定量評価した上で、DERの導入効果を算定し、同効果に基づくDER受入のための設備投資をオーソライズするプランを作成する必要がある。

電力システムに連系するDERの地点別便益とコストを評価する。この評価はローカルな発電容量の削減、配電系統の増強に関わる費用の回避と、信頼性の確保を両立し、最終的にその便益を受ける系統利用者の支払う料金により賄われる

費用対効果の高いDERを導入するための標準的な料金、契約、その他の仕組みの推奨

既存のCPUCが承認済みのプログラム、インセンティブ、料金などを調整してDERをローカルで最大限に活用する

費用対効果の高いDERを電力システムに統合し、系統利用者の便益をもたらすために必要とされる公共的な支出を明確化する

信頼性を確保する手段として、配電系統の技術及び運用に関連したDERの受入に関わる障害を明確化する

AB 327 Added PUC Code Section 769より

出所)PGE資料より三菱総研作成

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≪参考≫ Transactive Energy(TE)について

TEは、「経済的な「価値」を主な管理パラメータとして用いて、電力インフラにおける需要と供給をダイナミックに調整する、管理手法」。 DOEのGridwiseアーキテクチャ会議(GWAC)が主催・検討している次世代電力システムのフレームワーク。

トランザクティブエナジーについての基本的な考え方(フレークワーク)を示したGWACでは、今後の電力システムのあり方として、インテリジェントな電力系統から、自動化によるVPPの実現といった先に、トランザクティブといったコンセプトを掲げられており、その実現例として電力会社規模のマイクログリッドといったものが記されている。

出所)The GridWise Architecture Council ”GridWise Transactive Energy Framework Version 1.0”(2015)

トランザクティブな取引の実現に向けた電力系統の進展についての考え方 トランザクティブエナジーの取引の概要

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2. 諸外国における対応状況 -③自家発自家消費の拡大による系統利用の減少(4/6)-

蓄電リソースやDERアグリゲーターに対する要請(米国Docket(FERC) )

卸電力市場への参加資格

• 蓄電リソースに対し、卸電気市場で技術的に提供可能なすべての容量、エネルギーおよび補助的なサービスを提供する資格を与えること。具体的には以下の配慮をすること。

• ブラックアウト、周波数調整等の機能補償支払いが認められている市場について特に蓄電リソースの参加を認めること。

• 最低ランタイムを低減すること。

蓄電設備の入札パラメータ

• 入札パラメータは、蓄電資源の物理的および運用上の特性を反映して考慮すること。具体的には以下の通り。

• 充電状態

• 充電限度の上限/下限

• 最大エネルギー充電率、最大エネルギー放電率

卸売販売者・バイヤーとしての参加資格

• 売り手買い手双方合意のもとで市場精算価格設定・価格決定時期を合意できること。

• 通常、RTO/ISOがディスパッチしない卸電力ニついては卸取引価格が設定されないため、RTO/ISOがディスパッチ可能な電源として市場に参加させる。

最小容量 • 出力の最小要件は100kW以下とすること。

充電される電力の価格

• 卸電気市場→蓄電リソースへの販売価格は、卸売LMP(地域別限界価格)に従って設定されること。

出所)FERC Docket Nos. RM16-23-000 and AD16-20-000 , FERC

地域的要件 遠隔メータリングや通信技術等の面で技術的に実現可能な範囲で地域的要件を設定すること。

情報・データ要件 下記に係るアグリゲーター単位での情報・データを提出すること。(1)総容量、(2)最小および最大運用限界、(3)ランプレート、(4)最小ランタイム、 (5)デフォルト分配係数

DERリストの変更 アグリゲーターはDERリストを変更することができる。変更が安全性または信頼性の懸念をもたらさない場合、すべての資源を再登録する必要はない。

計測および遠隔測定システム要件

RTO / ISOの単位でDERアグリゲーションに必要なシステムに係るハードウェアおよびソフトウェア等の要件を特定する。 各RTO / ISOは原則的には配電ユティリティないし地方の規制機関が規定する計量システム要件に準拠し、計測データが不十分な場合にのみ追加的なシステム要件を適用することができる。

RTO/ISO,DERアグリゲーター、および配電事業者間の調整

次の事項を踏まえて調整を行う。 (1)新しい分散エネルギー資源集約の登録、および(2)RTO / ISO、分散型エネルギーリソースアグリゲーター、および関連する分配ユーティリティー間の操業調整を含む進行中の調整

市場参加契約 市場参加契約においては、DERアグリゲーターが採用する可能性のあるビジネスモデルを制限しないこと。

蓄電リソースに対する要請の主なもの DERアグリゲーターに対する要請の主なもの

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2. 諸外国における対応状況 -③自家発自家消費の拡大による系統利用の減少(5/6)-

日本(東京電力)と米国(カリフォルニア州、PG&E社)を例にとった自家発補給料金(Standby Service)の概要

日本では高圧以上(50kW以上)の需要家に対して自家発補給料金が設定されているが、米国では原理的には家庭用を含むすべての需要家に当該料金を適用できる。

ただし米国の場合、ネットメータリング適用のDER設置需要家、および容量1MW以内で全量自家消費するPVを設置している需要家については、自家発補給料金の支払いを免除される旨、約款(Tariff)に明記されている。

日本(東京電力) 米国(カリフォルニア州、PG&E社)

名称 自家発補給電力 Standby Service

サービス概要

• お客様の発電設備の検査、補修または自己(停電による停止等を踏む)により生じた不足電力を補給

• 通常は全量を自家発で賄うが、場合によってPG&E保有発電設備から供給を供給

• 停電などの事象の際に、PG&Eが準備していた予備力を提供

対象需要家 高圧および特別高圧需要家 家庭用を含む全ての需要家

対象自家発 需要家保有の発電設備 需要家保有の発電設備

例外規定 -

下記需要家は上記料金の支払いを免除

• ネットメータリング制度適用の分散型リソース注を設置している需要家(1需要家あたり1MW以内)

• 容量1MW以内で、全量自家消費する(逆潮流しない)PVを設置している需要家

注 バイオマス、太陽光、太陽熱、風力、地熱、燃料電池(再エネ由来燃料利用)、小水力、消化ガス、埋設ガス、廃棄物発電、潮流発電、海洋温度差発電

出所)電気需給約款(東京電力)および Electric Schedule S (PG&E)、Electric Schedule NEM (PG&E)

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2. 諸外国における対応状況 -③自家発自家消費の拡大による系統利用の減少(6/6)-

カリフォルニア州における自家発補給料金の見直しに関する事例

カリフォルニア州における従来からのネットメータリング制度を用いた導入量には上限(Cap)が課されていた。

しかし、同州での再エネ(特にPV)の導入量は加速的に進み、2015-16の段階で上限値にほぼ到達したため、新たなネットメータリング制度

(Net Metering 2.0) が検討され、2016年にCPUCによって決定された。

新制度により、ネットメータリングによって今後新たにPV等を導入する需要家にとっては、一定のコスト増となる。しかし、当初議論された内容と比べると、分散型リソース設置者に配慮された内容とされている。送配電コスト負担の公平性の観点では、直接的な影響があるのは系統連系料金の徴収のみである。

概要 コスト水準

系統連系料金の徴収

(Interconnection Fee)

• 新規NM需要家に対して、系統連系料金を新たに徴収

75~150$ (電力会社によって異なる)

時間帯別料金への強制加入

(Time-of-Use Rate)

• 新規NM需要家に対して、単純料金の適用を禁止し、TOU料金の選択のみを許可

電気料金への上乗せ

(Non-bypass Fee)

• 系統から購入する電力量に対して、追加コストを負担される。これらは、省エネプログラムや低所得者向け電気料金への充当が想定されており、配電網運用への充当とはなっていない

• 分散型リソースの発電量に対しては課金されない

2~3cent/kWh(電力会社によって異なる)

出所)Decision 16-01-044 (California Public Utilities Commission, 2016)

カリフォルニア州ネットメータリング2.0の概要

注)本制度は、既存NM制度下で分散型リソースを導入した需要家には遡及適用されない。

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≪参考≫配電系統整備に向けたインフラのあり方について(1/2)

新たな配電系統へのDER導入に伴う配電料金の新たなあり方に関しては、各国・地域とも検討をようやく始めたところ。

新たな考え方に基づく配電系統(設備形成・運用、料金制度)への移行に際して懸念される事項としては、以下のような事項が挙げられる。

メータリング

インフラ

• 配電系統に接続する需要家及びDERのモニタリングのためのメータリングインフラの整備が必ずしも十分ではなく、各国・地域で導入を進めているスマートメータインフラの整備が必要になる

• 再生可能エネルギー電源の出力と需要のミスマッチを正確に把握するためには、低圧需要家へのスマートメータリング

インフラの整備が必要不可欠という認識

システム

更新

• 従来型の電力システム利用を前提に最適された、料金メニュー及び費用回収に関わる体制の中で、情報システムも構築されていることから、従来と異なる料金体系(例えば、従量料金のみから、基本料金+従量料金のような課金形態)に変更することにより、情報システムの大幅な更新が必要になる

• さらに、低圧需要家については、必ずしもリアルタイムにモニタリングすることを前提にした需給運用ではないかったことから、スマートメータを含む低圧需要家のリアルタイムのモニタリングとその情報に基づく需給運用のシステム構築への改修は

相応のコストを必要とする。

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≪参考≫配電系統整備に向けたインフラのあり方について(2/2)

Radio Ripple Control System (ドイツ)

ドイツにおいては、DSOからTSO向きへの潮流が恒常的な状況にあるが、LVに接続されているDERは必ずしもリアルタイムにモニタリングされているわけではないことから、これらのモニタリングを可能にする技術の導入を進めている(MV/HVはリアルタイムモニタリング可能)。

Radio Ripple Control System Europäische Funk-Rundsteuerung GmbHが提供する、広域のRF信号により制御されるコントローラにより、再生可能エネル

ギーの出力抑制などを可能にする。

自前でシステム整備が困難なDSOを中心に、低圧系統に接続される再生可能エネルギーの出力抑制のための集中管理型のシステムが構築されていると推測される。

出所) Europäische Funk-Rundsteuerung GmbHより三菱総研作成

ドイツにおける出力抑制のためのシステムイメージ

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単語集

分散型エネルギー 日本では小規模で様々な地域に分散しているエネルギーの総称。諸外国においてDER(Distributed Energy Resources)とは、配電系統に直接接続されている小規模な発電設備や蓄電池等を指す。

ストレージパリティ 再エネ(主に太陽光発電)と蓄電池により系統電力と同程度となること、もしくはその状態を示す。グリッドパリティは再エネ(主に太陽光発電)が系統電力と同程度となること。

SC Scheduling Coordinator (スケジューリングコーディネーター)のことで、CA州において電気事業者として電力取引を行うための資格名称。

DERP Distributed Energy Service Provider (分散型エネルギーサービス供給事業者)のことで、CA州においてVPP事業を行う事業者の資格名称。

NARUC National Association of Regulatory Utility Commissionersのことで、米国公益事業委員会(PUC)の団体で、公益事業委員会の共通課題等を取り上げる機関

NERC North American Electric Reliability Corporation(北米電力信頼度協会)のことで、北米の電力系統の信頼度を維持する活動を行っている組織。

FERC Federal Energy Regulatory Commission(米国連邦エネルギー規制委員会)のことで、米国において、電力事業・ガス事業に対する規制・監督を行う委員会。

NYPSC New York Public Service Commission(ニューヨーク公益事業委員会)のことで、米国ニューヨーク州の公共サービス関連の規制機関。

CPUC California Public Utilities Commission(カリフォルニア公益事業委員会)のことで、米国カリフォルニア州の公共サービス関連の規制機関。

ENTSO-E European Network of Transmission System Operators for Electricity(欧州送電系統運用者ネットワーク)のことで、欧州34カ国の系統運用者42社から構成される欧州全域の系統運用者の協調機関

BNetzA Bundesnetzagentur(連邦ネットワーク庁)のことで、ドイツのネットワーク関連(電力、ガス、通信、郵便、鉄道、)などを管轄する官庁。

Ofgem Office of Gas and Electricity Markets(電力ガス規制当局)のことで、英国における電力・ガス市場を管轄する官庁。

Eurelectric The Association of the Electricity Industry in Europe(欧州電気事業者連盟)のことで、電気事業者の業界団体。

PTC/ITC/RRETC 米国の税控除制度。PTC:Production Tax Credit(生産税額控除)、ITC:Investment Tax Credit(投資税控除)、RRETC:Residential Renewable Energy Tax Credit(住宅再エネ税控除)

AB2514 カリフォルニア州エネルギー貯蔵法で、電力会社に対して蓄電池の導入義務を課すもの。

SGIP Self Generation Incentive Program(自家発電の導入補助制度)のことで、自家発電や蓄電池に対する助成制度の一つ。

DRAM Demand Response Auction Mechanism(DRの市場取引制度)のことで、DER等でピーク負荷を調達するためのプログラム。

Open ADR Open Automated Demand Responseで、自動DRの通信プロトコルの一つ。米国で規格化された。

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(様式2)

頁 図表番号1125252729303132333435363839404142424343444445454647485152535454555556576170717273

Energy 2 Marketのビジネスモデル

NextKraftwerke社の3つの収益モデル

Power Shift Atlantic

INERTIA Project

EnerNOC社の英国における事業形態

カリフォルニア州の電気事業体制

カリフォルニア州における電力供給体制図

非住宅用PVコスト見通し(発電コスト)

バランシングメカニズム(欧州)

ENTSO-Eにおける調整力の定義

ドイツにおける送配電事業者

欧州における電力品質管理の地理的区分

欧州における国際連系線の状況

CAISO Sub-lap

バランシングメカニズム(欧州)

報告書の題名 諸外国におけるバーチャルパワープラントの実態調査

委託事業名 平成28年度国際エネルギー使用合理化等対策事業

受注事業者名 株式会社三菱総合研究所

米国の10地域におけるBAの状況

ニューヨーク州の送電系統構成

タイトル

EcoGrid EU

諸外国における「DER (Distributed Energy Resources)」

住宅用PVコスト見通し(発電コスト)

ドイツにおけるPVの価格と低圧電力の見通しにもとづくBreak-evenのバッテリーコスト

WEOのバッテリーコストの想定

DERのコスト見通し

米国における電力品質管理の地理的区分

Power Matching CITY(オランダ)

種別導入状況(需要家種別削減ポテンシャル)

Flexitricity社のビジネスモデル

二次利用未承諾リスト

ドイツにおける調整力の種類と概要

DERP/スケジューリングコーディネーターの概要

習熟曲線にもとづく太陽光発電モジュールの価格見通し

欧州における太陽光発電モジュールの価格見通し

太陽光発電コストの国別比較

太陽光発電設備コストの国別比較

Olivineの提供サービス

米国におけるDR導入上位 20 社(削減ポテンシャル)

PJMにおけるDRに登録された負荷低減方法注(2014/2015)

欧州における産業向けDR事業者の活動状況

VPPの事業規模見通し例

VPPに活用するエネルギー貯蔵アセットの導入見通し例

アグリゲーターと需要家の契約

イギリスにおける送配電事業者

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(様式2)

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需給調整市場(英国)

需給調整市場の価格水準

NEM制度の仕組み

STOR Runway

VPP Readyで対象となる機器・設備

ピーク需要の推移

地域電力会社内での需給管理

広域運用のイメージ

ドイツにおける需給調整市場の取引規模

欧州における託送料金(送電料金)制度関連の国際的なトレンド

託送料金の料金算定方法(ドイツ)

託送料金の料金算定方法(英国)

電力需要(発電電力量)注の推移

系統利用料金の再構築(NY州)

NY州で懸念されているデススパイラル (Vicious Cycle)

太陽光発電とコジェネ(CHP)の導入の推移

電力システム改革後の各事業者の姿

送配電部門の位置づけ

固定価格買取制度(FIT制度)と導入状況

優先給電ルール

VPP関連の取り組み

Fast Trackの費用

機器・設備における検討項目

送配電網のデススパイラル

英国におけるFPPツールのイメージ

英国におけるHeat mapのイメージ

ドイツにおける出力抑制のためのシステムイメージ

REV概念図

配電系統プラットフォーム(DSP)の技術開発要素

Iberdrolaの実証事業の実証スケジュール(導入期)

FICSが提供する新たなビジネスモデル

FICSが提供する直接/間接的費用と収益

配電系統プラットフォーム(DSP)の概要図

DERの費用対効果分析のイメー

NY州における電力会社(Utility)のビジネスモデルの方向性

DERにより提供されるサービスの項目とその対象

DERの価値評価(CA州)

トランザクティブエナジーの取引の概要