当院でのレ当院でのレミケード治療ミケード治療の実際の実際
平成20年6月7日
香芝旭ヶ丘病院
上田真由美
香芝旭ヶ丘病院の上田といいます.よろしくお願いいたします. レミケードは2003年に認可されてから,2万人以上と多数の方に使用されていますが,今後初めて使用される施設もありますし,また患者さんは点滴治療というだけで不安に思われることもありますので,今回は,当院でのレミケード治療で注意していることを中心に報告させていただきます.
99床人工関節手術 204例(平成18年)関節リウマチ患者 約1000人
当院の紹介
整形外科北川 洋藤井唯誌東 隆司
内科平山俊英新名直樹神本有美リウマチ科藤本 隆
当院の紹介をさせて頂きます. 当院は,99床の病院で平成元年から香芝の地で診療をしており,人工関節手術が平成18年度204例, 全国の病院で18番目に多い症例数で,その関係もあり,リウマチの方も,多数通院いただいています.
レミケード総投与患者数:74人(年齢 28-76歳)
継続患者数:50人
当院の紹介
レミケードはこれまで総投与患者数 74人,4月現在で継続患者数は50名となっています.
胸部レントゲン,胸部CTツベルクリン反応
血液検査:感染症
β-D-グルカン
白血球数
レミケード投与前チェック
既往歴(結核などの呼吸器疾患,癌など)
アレルギー歴の確認
検査
レミケード投与前のチェックについて示します. 安全にレミケード投与を行うためには,まず,投与前のチェックや,患者さんへのケアが大切と考えています. 必要ならば,家族の方も一緒に来院して頂き,説明を聞いてもらいます. レミケード投与前には,リウマチ学会の作成したガイドラインに沿って,投与前の検査を行います. 当院では,胸部レントゲン,胸部CT,ツベルクリン反応,B型・ C型肝炎の感染症のチェック,βーDーグルカン,白血球数をチェックしており,検査漏れがないか,注意するようにしています. また,結核などの呼吸器疾患の治療歴がないか,癌の治療中ではないか,アレルギー歴などをチェックします. 活動性の結核では投与はできませんが,陳旧性のものでも,ツベルクリン反応が20mmを超える場合は,イスコチンの前投薬が必要になってきます. 他に,患者さんが不安に思っていることがないか,費用の件なども含めてうかがうように心がけています.
パンフレットは多数用意し,自由に取っていただけるようにしてあります. パンフレットをきっかけに質問される方もありますし, 不安を早期に拾い上げ,解消したいと思っています.
問診票
ADL評価
関節に関する質問表
(HAQ; Health Assessment Questionnaire)
リウマチ活動性評価
(DAS28のため)
VAS(visual analogue scale)スコア
投与に際して
投与当日, 投与に際して,問診表,HAQの質問表,VAS評価を,自宅で記載して,きてもらいます. 問診表はごくごく一般的なものです. HAQの質問表は,関節リウマチ患者さんのADLを評価するためのもので, 表にあるように,身支度,起きる,食べる,歩くなど それぞれについて,どの程度の困難さかを評価します. さらに入浴,屈伸,握る,その他,といった8つの項目について評価します. VASはVisual analoge scaleの略で,右端がこれまでで最も調子が悪い,左端が最も調子がよいとしてその日の身体の調子を10cmの直線上にチェックしてもらい,100点満点で評価するものです. リウマチの活動性を評価する指標として,DAS28が一般的ですが, 診察時に評価する,疼痛関節数,腫脹関節数,赤沈またはCRPにくわえて,このVASスコアが必要となりますので,大切な評価項目となります.
関節リウマチ ADL評価
HAQ(Health Assessment Questionnaire)
リウマチ活動性評価
DAS28(Disease Activity Score):疼痛関節数,腫脹関節数,
赤沈(CRP),VAS(visual analogue scale)スコア
投与に際して
0 100
最も調子が良いこれまでで最も調子が悪い
今日の身体の調子について X で印を付けてください.
血圧,体重,体温,SpO2 のチェック,血液検査
投与当日
採血結果がでてから診察
抗ヒスタミン薬,NSAIDSの内服
レミケード投与前に 水溶性プレドニン20mg
レミケード点滴
外来で,まずその日の体調をうかがいます. その後,血圧,体重,体温,SpO2を測定し,採血します. 体調に問題なければ,前投薬の抗ヒスタミン薬,NSAIDSを内服いただきます. 採血は30分程ででますので,その後,診察となり,疼痛関節数,腫脹関節数の評価のほか,骨髄抑制や肝機能障害,呼吸器症状などをチェックし,問題がなければ,レミケード投与となります. レミケード投与に必要な物品をマニュアルにそって準備します. レミケードの取り扱いで特に注意する点は, 第一にバイアル内は陰圧になっているので泡立てないように注意します. 第二にバイアルをゆっくり回転させながらおだやかに溶解させます. 第三に,用量は体重によって異なってくるため,体重換算表により,必要な溶解液量を確認し,5分間静置した後に,指示量を,生食内にゆっくりと注入します. レミケードの,副作用予防として,内服薬の抗ヒスタミン薬,NSAIDSの内服のほかに,水溶性プレドニンの前投与は,基本的に行うようにしています. レミケードは,フィルターつきのルートを用意し,エラスター留置針にて,血管確保し,バイタルサインをチェックの後,投与開始します.
・泡立たないように
・ゆっくり回転(振らない)
ゆっくり
(6ヶ月まで)
レミケード点滴スピード
約180分
30ml/hr
100ml/hr
約240分6030 120 180
6030 120
60ml/hr
30ml/hr
通常
(6ヶ月以降)
10ml/hr
レミケードの点滴スピードは,図のように,投与6ヶ月までは,最初5分間は,時間10mlで,その後,時間30mlにアップさせ,30分後には,時間60mlで,ゆっくりと,合計4時間以上かけて,点滴します. 6ヶ月以降は,特に,投与時反応がなければ,3時間程で点滴します. 初回の方は,最初は,特にゆっくりと点滴を行い,十分な観察を行います.
自動血圧計,心電図モニター,SpO2 モニターを装着.
15-30分間隔でバイタルサイン,
蕁麻疹の有無などをチェックします.
点滴風景
外来での投与風景です. 自動血圧計,心電計,SpO2計を装着し, 開始15分は,その場から離れず,バイタルサインは,30分間隔でチェックをしています. 外来では,限られたスペースですので, 快適とはいきませんが,忙しい方には喜ばれます.
病棟での投与風景です. プライバシー重視の方や,ゆっくりでもよい方は,一泊入院で,お願いしています. ゆったりとすごせ,友達同士で,近況を話し合い,すごされるかたもあります. プライバシー重視の方では,個室を希望される方もあります. 翌日はそのまま仕事に行かれる方もおられます. 現在,5床程度の,外来化学療法室を,建設予定中で,今後は,外来でも,快適に点滴投与できる予定です.
投与時反応の症状
CheifetzCheifetz A et al. Am J A et al. Am J GastroenterolGastroenterol 2003; 98: 1315.2003; 98: 1315.
軽度軽度
顔面紅潮顔面紅潮動悸動悸発汗発汗頭痛頭痛めまいめまい悪心悪心
中等度中等度血圧低下血圧低下//上昇上昇(SBP20mmHg(SBP20mmHg以上以上))顔面紅潮顔面紅潮胸部不快感胸部不快感息切れ息切れ体温上昇体温上昇動悸動悸蕁麻疹蕁麻疹
重度重度血圧低下血圧低下//上昇上昇(SBP40mmHg(SBP40mmHg以上以上))悪寒を伴う体温上昇悪寒を伴う体温上昇顔面紅潮顔面紅潮胸部不快感胸部不快感著明な息切れ著明な息切れ喘鳴喘鳴
5人/74人 2人/74人 0/74人
投与時反応に関しては,当院では,頭痛などの,軽度の副作用が5名,中等度の蕁麻疹を,2名に認めました. 当院では原則的に,レミケード投与前に,水溶性プレドニン20mgの投与,抗ヒスタミン薬,NSAIDSの投与を,行っている影響があるかもしれませんが,投与時反応のために中止になった方は,一人もおられず,安全性については,高いものと,私達も感じております. 副作用発現時,軽症のものは,投与速度を落として対応し,蕁麻疹など,中等度以上のものでは,ドクターコールし,ソルメドロールなどを,すぐに投与できるように,準備しています. 投与後には,感染症の合併が,最も多いので,感冒様症状や,異和感などがあったら,すぐに受診するよう,繰り返し,説明するようにしています.
患者管理表の活用
布団の上げ下げで肩痛(+)整形外科で関注
効果良好のため,
投与間隔11週へ延長
投与間隔
血液データ(CRP,KL-6,MMP-3,β-D-グルカンなど)
レントゲン,CTなどの検査
インフルエンザワクチンの接種
医師の指示のもと、70名を,超える関節リウマチ患者さんに、入院・外来でレミケードの投与を行っています。 これまでの報告から、抗ヒスタミン薬、水溶性プレドニンの前投与など、副作用を予防する方法を取り入れ、安全にレミケードが投与できるようになりました。 それに加えて、患者管理表を作成し,活用するようにしています. 投与間隔,血液データ,CRP,KL-6,MMP-3,βーD-グルカン,などの記入,レントゲン,CTなどの検査履歴などを記入し,治療経過が,分かりやすくなるようにしています. 軽度の投与時反応を経験した場合は、医師への伝達、日直看護師への申し送りの資料として活用しています。 その他、インフルエンザワクチンの接種の有無、この例の方の場合,布団の上げ下げなどで症状が悪化しステロイドの関注を行ったこと、効果良好のためレミケードの投与間隔を延長したこと、などを記載し、スタッフの誰にでもわかるよう,時系列に記載した表を作成し,活用しています.
患者 年齢3/3(月)-3/8(土)
3/10(月)-3/15(土)
3/17(月)-3/22(土)
483/11(火)入院32回目 7w
603/18(火)外来26回目 9w
効果不十分→7週効果十分・寛解→9週スケジュール管理表
レミケード
(点滴)
3回目以降は8週間隔で点滴
レミケードの投与スケジュール
0週 2週 6週 14週 22週
8週 8週
上の表はスケジュール管理表,下は,レミケードの投与スケジュールを示しています. 基本的にはレミケードの点滴は8週間隔ですが,効果不十分な場合,7週へ変更したり,逆に,効果十分である場合は,9週やそれ以上に延長と,投与間隔が,変更となることも多いため,スケジュールに関しては,外来ブースの見やすいところに,このようなスケジュール表をはり,いつ何人のレミケード投与があるか,一目でわかるようにし,変更などの問い合わせにも,スムーズに返答できるようにしています.
65歳女性
H18年7月 8月 9月 10月
5
3
2
1
0
CRP レミケード投与
DAS28CRP 4.6 3.5 2.7 2.2
HAQ 9 4 3 3
効果を認めた典型的な方を提示します. この方は,平成15年に関節リウマチを発症,平成16年に右膝の滑膜切除術を受けられたかたですが,平成18年7月からレミケードの治療を受けられ,一度の点滴で高い効果を認めています. CRPも改善,リウマチの全体的な指標であるDAS28も改善し,寛解の範囲に入ってきています. ADLの基準であるHAQスコアーも9から3に改善を認めており,これは,牛乳パックの開閉や階段昇降,など当たり前のことがやや困難であったのが,何の困難もなく可能となっています. 現在もレミケード治療を継続されており,14回目となっています. 痛みが軽減することでどうしても無理をしてしまうこともみられ,日常生活で無理をしないような指導も大切と考えています.
レミケード治療にて
冷蔵庫がスムーズに開けられるようになった.
畑仕事が少しづつ再開出来るようになった.
海外旅行に行けるようになった.
レミケード治療により 冷蔵庫がスムースにあけられるようになったなど,小さな当たり前の日常生活がスムースにできる喜びもありますし, 畑仕事が少しづつ再開できるようになった,海外旅行にも行けるようになったなど趣味にも目をむけられるようになった,などの声を私たちは多く聞けるたびに共に喜んでいます.
リウマチ治療の大きな進歩を踏まえ
正しい知識と治療の提供に
努めていきたいと思います.
最後に
最後に リウマチ治療は,どんどん進歩しており,10年前に比べると,変形もすすまず,QOLもはるかによくなっていますが,まだ一般の方に十分普及しているとは言えません. リウマチと聞いて,骨が変形して動けなくなると思い込まれる方もおられます. 実際,リウマチと診断され,自殺を考えたんです と言われたこともありました. 病気になり,何で私が,と思われることも多いでしょうが,正しい知識の提供と,きちんとした治療の提供で,悲観的に思われることがなくなる時代が,もうおとずれていると思います. 関節リウマチも完治する時代がいずれやってくるかもしれません. それまで私たちは現在ある治療のなかで,安全な治療を提供し,患者さまに出来るだけ苦痛のない生活が提供でき,患者さまのQOLの向上につとめていきたいと思います.