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平成21年7月 枚方市保育ビジョン

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Page 1: 枚方市保育ビジョン - Hirakatapg. 2 (3) ビジョンの期間 平成21年度から平成25年度までの5年間とします。 (4) 保育ビジョンと幼児教育ビジョン、枚方市新子ども育成計画

平 成 2 1 年 7 月

枚 方 市

枚方市保育ビジョン

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目 次

1 保育ビジョンの枠組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

(1) ビジョン策定の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

(2) ビジョン策定の趣旨 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1

(3) ビジョンの期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

(4) 保育ビジョンと幼児教育ビジョン、枚方市新子ども育成計画 ・・・・・・・・・・・・・・・ 2

(5) エリアの考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

2 保育をとりまく現況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

(1) 就学前児童数の推移と保育需要の増加 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

(2) 市内就学前児童の保育等の状況(公私立保育所(園)、幼稚園、その他)・・・・・・・・・・ 4

(3) エリア別就学前児童数及び保育所の定員等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

(4) エリア別の人口推計と乳幼児(0~4歳)の推計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

3 市の財政状況及び児童福祉費・保育所費の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

(1) 市の財政状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

(2) 扶助費、児童福祉費、保育所費の推移 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

(3) 保育所経費と民営化効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

(4) 本市保育料の水準 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

4 保育サービスの課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

■ 仕事と子育ての両立支援と多様な保育サービスの充実 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

■ 地域子育て支援の拠点としての保育所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

■ 保育環境の整備(施設等の改善) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

■ 保育の質の向上 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

■ 保育所と小学校等との連携強化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

■ サービス推進のための方策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

5 保育サービス推進の方向性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

(1) 待機児童ゼロの推進-仕事と子育ての両立支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

(2) 多様な保育サービスの充実 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

(3) 地域子育て支援拠点としての保育所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

(4) 病児保育(医療機関併設型)の地域展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

(5) 障害児保育の充実 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

(6) 児童虐待の防止と早期発見 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

(7) 保育環境の整備(公私立保育所(園)の施設改修) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

(8) 保育の質の向上 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

(9) 地域における保育所と小学校等の連携 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

6 サービス推進のための方策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

(1)公私立保育所(園)の役割分担の方向性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

(2)公立保育所の民営化と統合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

(3)保育料の改定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

保育ビジョン資料・用語解説編 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

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1 保育ビジョンの枠組み

<*:保育ビジョン資料・用語解説編 p.18~19 をご参照ください>

(1) ビジョン策定の背景

■子どもや子育て家庭をとりまく状況

子どもや子育て家庭をとりまく状況には、依然として多くの課題や問題点があります。家庭や

地域において人や自然とかかわる経験が少なくなったり、子どもにふさわしい生活時間や生活リ

ズムがつくれないことなど子どもの生活が変化する一方で、不安や悩みを抱える保護者が増加し、

養育力の低下や児童虐待の増加が指摘されています。

■新保育所保育指針*の施行

乳幼児期は、子どもが生涯にわたる人間形成の基礎を培う極めて重要な時期であり、平成 18

年改正の教育基本法でも、義務教育の基礎を培う幼児期の教育の振興が盛り込まれています。少

子化が進み、家庭や地域の子育て力の低下が指摘される中で、保育所における質の高い養護と教

育の機能が強く求められています。政府はこうした状況を受けて、平成 20 年 3 月、8 年ぶり

に保育所保育指針を改定し、平成21年 4 月に施行しました。

新保育所保育指針は、指針を大綱化し大臣告示として法的規範性を有する 低基準と位置づけ

るとともに、特に、保育の取り組みの構造の明確化、保育の内容や方法の改善、保育所の機能の

強化などによって保育の質の向上を図ることなどを主な中身としています。

■本市における保育の状況

一方、本市では、少子化が進む中でも、女性の社会進出や家族形態の多様化などによって保育

所に入所を希望する児童数は増加を続けています。平成 16 年度から 20 年度まで、本市の公私

立保育所(園)では計画的な定員増や定員を超える弾力運用*を行うことにより年度当初には待機

児童ゼロを達成していましたが、20 年度の秋ごろから入所希望者が急激に増加し、平成 21 年

度は年度当初でも 1 歳児・2 歳児クラスで待機児童が発生しました。

■厳しい財政状況

これまで、回復基調にあった本市の財政状況は、平成 20 年度に発生した世界的な金融危機が

景気後退や雇用不安を引き起こし、大幅な税収減をもたらす見込みとなってきており、再び厳し

い状況に転じています。本市における保育の状況や新保育所保育指針の施行などから保育ニーズ

は質量ともに増大することが予測され、現行のサービスを維持することが困難になることも懸念

されます。

(2) ビジョン策定の趣旨

子どもや子育て家庭、本市の保育をめぐる状況、新保育所保育指針の施行などを背景に、増大・

多様化する保育ニーズに応えられる質の高い保育、子育て支援・子ども支援のサービスの提供を

図ることを目的に、公私協調によるサービス提供、効率的効果的な保育所の再配置、公立保育所

の民営化などについて基本的な方向性や将来像を明らかにします。

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(3) ビジョンの期間

平成21年度から平成25年度までの5年間とします。

(4) 保育ビジョンと幼児教育ビジョン、枚方市新子ども育成計画

次世代育成支援対策推進法*に規定する市町村行動計画として、本市は平成 17 年 4 月に「新

子ども育成計画」を策定しました。同計画は、平成 17 年度~26 年度までの10年を計画期間、

17 年度~21 年度を前期計画、22 年度~26 年度を後期計画と位置づけています。今後、前期

計画の進捗等の検証とアンケート調査等を行い、必要な見直しを行う予定です。

保育ビジョンは、喫緊の課題を解決するために策定し、並行して本市教育委員会が検討してい

る「幼児教育ビジョン」をあわせて、「子どもに関する総合的な基本指針」とし、これを枚方市

新子ども育成計画後期計画に反映して、総合的かつ具体的な施策の体系を構築する方針です。

<図1 保育ビジョンと新子ども育成計画>

(5) エリアの考え方

地域子育て支援を含む保育サービス、子育て・子ども支援サービスを効率的効果的に提供する

ためには、地域バランスを考慮しなければなりません。本ビジョンでは、市域を、<図 2>のよ

うに4つのエリアに分けて現状分析や各種施策の検討を進めます。なお、保育サービス等の実際

の利用をこのエリアに制限するものではありません。

保育ビジョン

幼児教育ビジョン

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<図 2 エリア別市内保育所(園)の数・定員等(平成 21年 4 月 1 日現在)>

①・ 北部:12 か所(定員 1366 人)

9校区

(小学校区)

樟葉北・樟葉・樟葉南・樟葉西

船橋・牧野・殿山第二・平野

招提

公立保育所 私立保育所(園) 北牧野(90)

楠葉野(90)

阪(140)

宇山光の子(120)

くずはあけぼの(120)

くずは光の子(150)

招提(120)・樋之上(150)

船橋(120) ・牧野(120)

第二徳風(120)

ハレルヤ(26)

3か所(320) 9 か所(1046)

②中部:14 か所(定員 1326 人) 13 校区

(小学校区)

交北・山田・山田東・小倉

西牧野・殿山第一・磯島

高陵・中宮北・明倫・中宮

桜丘北・桜丘

公立保育所 私立保育所(園) 小倉(90)

禁野(90)

桜丘北(90)

中宮(90)・渚(90)

渚西(90)

宮之阪(90)

山田(90)

青桐(170)

天の川(140)

ギンガ(120)

枚方たんぽぽ(60)

村野(90)

つくし(26)

8か所(720) 6か所(606)

③南部:17か所(定員 1736 人)

14 校区

(小学校区)

枚方第二・枚方・伊加賀・蹉西

山之上・五常・開成・香里・香陽

川越・春日・東香里・蹉・蹉東

公立保育所 私立保育所(園)

香 里 団 地

(150)

蹉(60)

藤田川(90)

走谷(90)

枚方(120)

香里ケ丘(120)

香里ケ丘愛児園(50)

香里敬愛(100)・川越(90)

光善寺(180)・常称寺(120)

親愛(90)・鷹塚山(60)

中振敬愛(120)

茄子作(120)

三矢ゆりかご(150)

愛和(26)

5 か所(510) 12 か所(1226)

④東部:12 か所(定員 1155 人)

9校区

(小学校区)

西長尾・菅原・田口山・藤阪

菅原東・津田南・氷室・津田

長尾

公立保育所 私立保育所(園)

菅原(60) 第2長尾(90)

第ニ光の峰(60)

津田(120)・徳風(150)

長尾(150)・光の峰(90)

氷室(90)・マツガ(90)

まりも(90)・明善(120)

明善第弐(45)

1 か所(60) 11 か所(1095)

④②

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2 保育をとりまく現況

(1) 就学前児童数の推移と保育需要の増加

本市の就学前児童数は、平成 17 年度から減少傾向が明らかなものの、保育所の需要(人数)

は増加を続けています。この傾向がいつまで続くか予測は困難ですが、少なくとも本ビジョンの

終期である平成25年度末までは、就学前児童の減少と保育ニーズの増加が同時に進行すると考

えられます。特に、市南部エリア、市東部エリアで、保育所定数の不足が危惧されます。さらに

平成20年度後半から市内全域で保育所入所希望が急増しています。

一方、長期的にみると、少子化の進行によって保育需要が減少する可能性もあることから、慎

重に見極めていくことが必要です。

<図 3 就学前児童数及び保育所の需要人数の推移(各年4月1日現在)>

(2) 市内就学前児童の保育等の状況(公私立保育所(園)、幼稚園、その他)

平成 20 年 5 月 1 日現在の市内就学前児童の保育等の状況は、保育所(園)27.8%、幼稚園

30.7%、その他(在宅等)41.5%となっています。年齢別にみると、0 歳児から 2 歳児では、

保育所(園)22.6%、幼稚園 0%、その他 77.4%。3 歳児から 5 歳児では、保育所(園)32.7%、

幼稚園 59.6%、その他 7.7%となっており、このうち 5 歳児では、保育所 32.5%、幼稚園

65.5%、その他 2.0%となっています。経年変化でみると、幼稚園、その他はおおむね減少、

保育所(園)は増加の傾向です。

21000

21500

22000

22500

23000

23500

24000

24500

15 16 17 18 19 20 5600

5700

5800

5900

6000

6100

6200

15 16 17 18 19 20

(年度)

(人)

(年度)

(人) ■就学前児童数の推移 ■保育所の需要人数の推移

※需要人数:保育所入所申込者数

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<表1 市内就学前児童の保育等の状況(平成20年5月1日現在)>

保育所(園) 幼稚園 その他 合計(就学前)

0~2 歳児 人数 2,472 0 8,443 10,915

割合 22.6% 0.0% 77.4% 100.0%

3~5 歳児 人数 3,787 6,912 899 11,598

割合 32.7% 59.6% 7.7% 100.0%

合 計 人数 6,259 6,912 9,342 22,513

割合 27.8% 30.7% 41.5% 100.0%

保育所(園) 幼稚園 その他 合計(就学前)

5 歳児のみ

(再 掲)

人数 1,289 2,600 79 3,968

割合 32.5% 65.5% 2.0% 100.0%

*住民基本台帳による人口で、学齢区分にしたがった満年齢による。

*保育所(園)の人数には簡易保育所入所人数を含む。

*幼稚園の人数には市外への通園児を含む。

<表 2 市内就学前児童の保育等の状況の推移(各年度5月1日現在)>

保育所(園) 幼稚園 その他 合計(就学前)

平成 16 年度 人数 5,973 7,632 10,624 24,229

割合 24.7% 31.5% 43.8% 100.0%

平成 17 年度 人数 6,025 7,502 9,970 23,497

割合 25.7% 31.9% 42.4% 100.0%

平成 18 年度 人数 6,044 7,359 9,676 23,079

割合 26.2% 31.9% 41.9% 100.0%

平成 19 年度 人数 6,194 7,095 9,440 22,729

割合 27.3% 31.2% 41.5% 100.0%

平成 20 年度

(再掲)

人数 6,259 6,912 9,342 22,513

割合 27.8% 30.7% 41.5% 100.0%

(3) エリア別就学前児童数及び保育所の定員等

平成 21 年 4 月 1 日現在のエリア別の保育所(園)の配置状況等は、P.3<図 2>のとおり

です。中部エリアに公立保育所(園)が集中し、逆に東部エリアには 1 か所のみとなっています。

また、入所希望者の増により、30 人の定員増や弾力的運用(平均で定員の 110%の入所受

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け入れ)を行ったにもかかわらず、平成 21 年度は年度当初でも 1 歳児・2 歳児クラスで待機

児童が発生しました。なお、平成 20 年度のエリア別就学前児童数等の状況を巻末参考資料とし

て掲載しています。

<表3 エリア別就学前児童数等の状況(平成21年 4 月 1 日現在)>

地域

就学前児童数

(人)

保育所数

(か所) 定員

(人)

入所

児童数

(人)

入所率

(%)

待機児

童数*

(人)

入所申込者の内、入所していない児童数(人)

総数 0 歳児 公立 民間

北部 4,597 720 3 9 1,366 1,484 108.6 0 23

中部 4,600 823 8 6 1,326 1,436 108.3 13 27

南部 7,738 1,223 5 12 1,736 1,941 113.5 21 58

東部 5,344 775 1 11 1,155 1,302 112.7 6 65

計 22,279 3,541 17 38 5,583 6,163 110.4 40 173

(4) エリア別の人口推計と乳幼児(0~4歳)の推計

日本全体や大阪府、近隣市はすでに人口が減少しています。本市では平成 24 年までは微増す

ると予測されていますが、長期的には減少局面を迎えることは確実です。本市の人口をエリア別

にみると、北部・中部では減少傾向が始まっています。南部においては平成 24 年までは増加傾

向が続くものの、その後、減少していくと予測されます。東部においては、平成 24 年度に向け

て微増が続き、その後緩やかに減少していきます。

0~4歳児の人口推計は、平成 19 年に1万 8396 人であったものが、平成 29 年には1万

4209 人と、10年間で約 22.8%減少する予測となっています。

<表4 エリア別人口推計>

北部エリア 中部エリア 南部エリア 東部エリア 合計

平成19年 92,690

(3,867)

94,596

(3,834)

124,656

(6,148)

92,165

(4,547)

404,107

(18,396)

平成24年 93,394

(3,441)

95,060

(3,449)

127,947

(5,313)

93,909

(3,990)

410,310

(16,193)

平成29年 91,863

(3,022)

93,294

(3,051)

126,478

(4,572)

93,548

(3,564)

405,183

(14,209)

平成34年 89,203

(2,705)

90,399

(2,732)

123,580

(4,147)

92,230

(3,376)

395,412

(12,960)

※ 上段が全人口、下段( )は、0~4 歳児

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3 市の財政状況及び児童福祉費・保育所費の状況

(1) 市の財政状況

平成 19 年度の一般会計決算は、実質収支で 6 年連続の黒字を計上し、8つの特別会計を合

わせた実質収支総額でも、前年度に続き黒字を計上することができました。また、今年度から公

表が義務づけられた4つの健全化判断比率(注 1)も、早期健全化基準を下回ることができました。

しかし、単年度収支は平成 11 年度以来、8 年ぶりに赤字となり、また、経常収支比率(注 2)

も 93.2%と前年度から 3.6 ポイント悪化するなど、本市の財政状況は、これまでの回復基調か

ら再び厳しい状況へと変化してきています。

さらに、米国のサブプライムローン問題をきっかけに、昨年 9 月以降、世界的な規模で金融

危機や大幅な景気後退が起こりました。このことが、輸出需要に支えられてきた日本の景気や雇

用、税収にも大きな影を落としてきています。

本市でも、平成 20 年度の法人市民税が、平成 19 年度を大きく下回る見込みとなるなど、現

実に深刻な影響が出始めています。また、平成 21 年度は、一段と市税収入が減少することが見

込まれるなど、今後の財政状況はさらに厳しさを増すと予測されます。

(注1) 平成19年6月、地方公共団体の財政の健全化に関する法律が施行されたことにより、

地方公共団体が監査委員の審査に付した上で、議会に報告するとともに、住民に対し公表す

ることが義務づけられた、4つの財政指標(実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費

比率及び将来負担比率)のこと。

(注2) 経常収支比率とは、毎年収入されるお金で、自由に使えるもの(経常一般財源)のう

ち、経常的支出(人件費・扶助費・公債費などの毎年必ず支出しなければならない経費)に

使われているお金の割合です。この数値が高いほど財政構造が硬直化していると言われてい

ます。

(2) 扶助費、児童福祉費、保育所費の推移

■ 扶助費の動向

扶助費は、平成元年度以降、介護保険制度が創設された平成12年度を除き、毎年増加

し続けています。平成19年度の市の歳出総額(普通会計)は7億4700万円減少して

いますが、扶助費は前年度と比較して 5.1%、11億4500万円増の234億円となっ

ています。児童福祉費についても子育て支援施策の拡充や児童手当や特例給付費の引き上

げ等の影響もあって、増加が続いています。

■ 保育所費の動向

児童福祉費で一番大きな割合を占めるのは保育所の運営経費等である保育所費で、平成

19 年度決算では、児童福祉費全体の 56%を占め、約 80 億円を計上しています。今後の

財政の見込みがきわめて厳しいなかで、このままでは、必要な保育サービスの質・量にわた

る充実はもちろん、現行のサービス水準の維持も困難になることが懸念されます。

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<表5 平成 15 年度から 19 年度までの児童福祉費の内訳(一般会計)>

年度 児童福祉費 ① 児 童 福 祉

総務費 ②保育所費

③母子・父

子福祉費

④ 家 庭 児

童 相 談 室

⑤施設費 ⑥医療助成

15 年度 12,164,948 3,258,289 7,805,303 3,461 3,148 369,950 724,798

16 年度 12,923,919 3,892,986 7,947,002 5,497 3,185 367,656 707,593

17 年度 13,332,936 4,094,295 8,142,394 8,721 6,435 351,945 729,146

18 年度 13,845,812 4,677,025 8,072,955 8,711 6,527 340,458 740,137

19 年度 14,441,106 5,187,716 8,026,398 9,753 4,478 323,523 889,238

① 児童福祉総務費:児童手当、児童扶養手当、地域子育て支援等に要する経費②保育所費:公立保育所

の管理運営や私立保育所(園)・病児保育等に要する経費③母子・父子福祉費:母子・父子家庭の福祉増

進、ファミリーサポートセンター事業に要する経費④家庭児童相談室費:児童虐待防止、育児支援家

庭訪問事業に要する経費⑤施設費:幼児療育園・すぎの木園の管理運営に要する経費⑥医療助成費:

乳幼児・ひとり親家庭の受診に係る医療費の助成に要する経費

*数値については、四捨五入しているため、児童福祉費と①~⑥の合計とは異なります。

(3) 保育所経費と民営化効果

■ 児童一人あたりの年間経費

平成19年度決算で、公立と私立の年間経費を比較すると、歳出ベースで児童一人当た

り 48万円の差があります。平成15年度には約60万円の差がありましたので、児童一

人当たり12万円、差が縮小したことになります。その要因として、公立保育所の人件費

関係の減少に対し、私立保育所(園)に係る経費が増加しており、増加の要因は定員増に

よる入所児童数の増加、障害児加配補助金や延長保育補助金の増加などです。

<図4 公私立保育所(園)の児童一人当たりの年間経費(平成 19 年度)>

保育料関係

公立

私立

私立のみの特定財源

補助金

保育料 (保護者

負担)

保育料 軽減額(市負担)

補助金 (国・府負担)

ソ フ ト 交 付 金

(国負担)

市負担

負担金 (国・府負担)

公立合計:157万円

私立合計:109万円

公立・私立運営経費の差=48万

保育料 (保護者

負担)

保育料軽減額 (市負担)

補助金 (国・府負担)

市負担

市の実質負担分

上記以外

(単位:千円)

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(4) 本市保育料の水準

■ 本市保育料の水準

本市の保育料は、平成 10 年の改定後は引き上げを伴う改定を行っていません。この間、国

も保育料徴収基準を改定していないことから、平成 19 年度決算では、本市の保育料水準は国

の徴収基準額の 61.1%で、改定当時とおおむね同じ状況です。

近年、大阪府内各市が保育料の改定を行っていますので、本市は府内 31 市中で2番目に低

い状況です。府内各市保育料水準の平均は、国基準に対して 69.5%となっています。

■ 保育料の徴収率

平成 19 年度の現年度の保育料徴収率は 97.3%で、府内では 31 市中 14 番目です。近年、

少しずつですが低下する傾向にあるため、口座振替の勧奨や督促・催告、電話や訪問による

納付相談を行っています。また、入所継続の手続きの際に、未納のある保護者に対して納付

誓約書、納付計画書の提出を求めるなど、納付意識の向上を図る取り組みを進めています。

■ 保育にかかる経費の負担割合

本市の保育にかかる経費(78 億 2600 万円)のうち、保護者の負担は 17.56%(13 億

7400 万円)で、それ以外は国・府・市がそれぞれの負担割合によって負担しています。

なお、保育料を国基準より低く抑えているため、その軽減分(8億 7400 万円)を、市の

一般財源から補填しています。

<図5 保育にかかる経費の財源内訳>

市負担

(保育料軽減分)

11.17%

市負担38.40%

保育料17.56%

国・府負担32.87%

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4 保育サービスの課題

■ 仕事と子育ての両立支援と多様な保育サービスの充実

本市では、保育所入所待機児童ゼロを目標に掲げ、平成 16 年度から集中的に取り組み、平成

19 年 4 月までに、認可保育所において 396 人の定員増と定員の弾力的運用を行い、平成 16

年度から 20 年度まで年度当初で待機児童ゼロを達成してきました。しかし、近年、年度途中で

の待機児童は年々増加し、平成 21 年度には年度当初でも待機児童が発生しました。保護者の就

労等により必要となる保育サービスを確保することは、仕事と子育ての両立支援という少子化対

策の観点からきわめて重要な課題であり、保育所入所枠の拡充が緊急に求められています。

また、保護者の働き方などの多様化にともない求められる保育サービスも多様化していること

から、多様な保育サービスの充実も必要です。

■ 地域子育て支援の拠点としての保育所

保育所保育指針の改定にともない、入所する子どもの保護者のみならず地域の子育て家庭に対

する支援が保育所の役割として位置づけられました。さらに、児童虐待の防止や早期発見、発達

障害者支援法も踏まえた障害児へのきめ細かな対応が課題となってきています。

■ 保育環境の整備(施設等の改善)

本市の公私立保育所(園)は建設から 30 年以上を経過しているものが多く、老朽化が進んで

おり、施設の改修や設備の充実、耐震化等を順次、着実に進めていくことが必要です。

■ 保育の質の向上

新保育所保育指針では、指針の法的規範性を明確にするとともに、保育所の役割や保育内容の

充実、保護者支援、保育の計画などを主な改定内容として、特に「保育の質の向上」に力点を置

いています。本市では、保育の量的充足と並行して質の向上を進めなければなりません。

■ 保育所と小学校等との連携強化

新保育所保育指針では、就学に際し、子どもの育ちを支えるための資料を「保育所児童保育要

録」として小学校に送付することを義務づけています。保育所は、養護と教育を一体的に実施す

ることから、幼稚園とともに幼児教育の主たる担い手と位置づけられます。今後、小学校等の地

域の関係機関との連携を強化していくことが求められています。

■サービス推進のための方策

上記に示した課題の解決を図ると同時に、より効率的効果的なサービス提供のための保育所配

置の再構築、公私協調によるサービス提供の一層の充実を図るとともに、必要な財源の確保方策

の具体化に向けて検討を進める必要があります。

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⑦ ⑤

⑨◎

⑩④

5 保育サービス推進の方向性

ここでは、前項で設定した課題解決のための保育サービス推進の方向性等を示します。サービス量

等の数値はめざすべき将来像としての設定です。

(1) 待機児童ゼロの推進-仕事と子育ての両立支援

本市における保育ニーズは、少子化の進行に反して増加を続けており、今後も仕事と子育ての

両立を支援する保育サービスの潜在需要はきわめて大きいと考えられます。本市では、香里団地

などの住宅団地や府営住宅の建て替えや工場跡地、社宅跡地等のマンション開発などにより、こ

こ1~2 年、南部エリアや東部エリアで保育ニーズが急激に増大しています。あわせて、昨年秋

以降の経済不況に起因する保育所入所希望も市域全体で増えてきています。

こうした状況のもと、保育サービスの量的拡大は緊急に取り組んでいかなければならない 重

要課題であり、認可保育所の定員増を基本として、次のような手法の活用も検討して、待機児童

解消に努めます。

●私立保育所の建て替え等にあわせて定員増を図る。

●認可保育所の定員増には分園方式*も選択肢とする。

●公立保育所の民営化にあわせて定員増を図る。

●公立保育所の定員の見直しを図る。

一方、仕事と子育ての両立支援には、事業主が事業主行動計画*などに基づき子育てを支援す

る雇用環境の整備等を行うことが不可欠であり、国や大阪府などとともに啓発等に努めます。

(2) 多様な保育サービスの充実

■一時預かり(一時保育)*・特定保育 <図6 一時預かり・特定保育の現状>

北部地域

一時預かり

特定保育

①くずはあけぼの

②牧野

中部地域

一時預かり

特定保育

③青桐

④村野

東部地域

一時預かり

特定保育

⑧第2長尾

⑨長尾

⑩光の峰

夜間保育 ◎明善第弐

南部地域

一時預かり

特定保育

⑤常称寺

⑥親愛

⑦三矢ゆりかご

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③④⑤

⑦⑥

一時預かりは、保護者が傷病等で療養が必要な場合、また育児疲れで保護者のリフレッシュを

図る必要がある時などの緊急・一時的に保育が必要な場合に、就学前の児童を対象に一時的に保

育所で預かる制度で、特定保育は、保護者がパート就労などで週 2~3 日程度、就学前の児童の

保育ができない場合に保育所で預かる制度です。

現状は、一時預かり・特定保育とも、あわせて 10 か所で実施しています。利用者の利便性の

向上等のために各エリアに一時預かりを 1 か所ずつ増やして 14 か所にすることをめざします。

特定保育については、一時預かりの増設後の利用状況を見て必要性を検討します。

<表6 一時預かりの整備>

保育サービスの種類 現行 将来像

一時預かり

北部2か所

中部2か所

南部3か所

東部3か所

北部3か所

中部3か所

南部4か所

東部4か所

■ 夜間保育

東部に夜間保育所(明善第弐)が 1 か所整備されています。

■ 休日保育

市内保育所(園)で 1 か所の整備をめざします。

(3) 地域子育て支援拠点としての保育所

新保育所保育指針は、「保育所は、入所する子どもを保育するとともに、家庭や地域の様々な

社会資源との連携を図りながら、入所する子どもの保護者に対する支援及び地域の子育て家庭に

対する支援等を行う役割を担う」として、地域子育て支援を保育所の役割の一つと規定していま

す。

従来は、祖父母や親戚、隣近所などが自然な形で子育て家庭を支えてきました。今では、こ

うした結びつきも薄れ、保護者が育児不安や孤独感に悩まされ、自信を失っていくケースもあり

ます。そこで、保育所(園)が家庭や地域社会、児童委員や NPO などと連携を図りながら子育て

家庭に対する支援を行うことはとても有効です。地域子育ての支援の拠点はこの役割を先導し拡

充していく機能をもつものです。

<図7 地域子育て支援の拠点の現状>

北 部

(2)

① 楠葉野保育所(公)

② ファミリーポート(民間施設)

中 部(1)

③ サプリ村野(公的施設)

南 部

(3)

④ 光善寺保育園(私)

⑤ 香里団地保育所(公)

⑥ 枚方保育所(公)

東 部

(2)

⑦ まりも保育園(私)

⑧ 明善保育園(私)

各エリア 1 か所ずつ 増設

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■ 地域子育て支援拠点の今後の展開

公私立保育所(園)を中心に、現行 8 か所ある拠点を、4 つのエリアに 4 か所ずつ、あわせて

16か所に増設することをめざします。

公立保育所では、エリアのバランス等を考慮して 4 か所増設して7か所を拠点施設に位置づ

けます。また、4つのエリアに基幹となる公立保育所を位置づけ、地域子育て支援のエリアごと

のネットワークの中心とします。私立保育所(園)では、各エリア 1 か所ずつ拠点が必要な地域で

事業実施園を公募し 4 か所の増設を図ります。

<表7 地域子育て支援拠点の将来像>

エリア 現行の

拠 点

将来像

増設数 保育所(園)等の名称 エリア別か所数

北部 楠葉野保育所

ファミリーポートひらかた

公立1

民間1

楠葉野保育所、阪保育所、

ファミリーポートひらかた、

民間保育所(園)1園

4か所

(公立2、民間2)

中部 サプリ村野 公立2

民間1

渚西保育所、桜丘北保育所、

サプリ村野、民間保育所(園)1園

4か所

(公立3、民間1)

南部

枚方保育所

香里団地保育所

光善寺保育園

民間1

枚方保育所、香里団地保育所、

光善寺保育園、民間保育所(園)

1園

4か所

(公立2、民間2)

東部 明善保育園

まりも保育園

公立1

民間1

菅原保育所、明善保育園、

まりも保育園、民間保育所(園)

1園

4か所

(公立1、民間3)

合計 8か所 公立4

民間4

16 か所

(公立 8、民間 8)

[凡例]

:エリアの地域子育て支援の基幹となる公立保育所

:民間保育所(園)又は民間法人の運営する施設

(4) 病児保育(医療機関併設型)*の地域展開

<表8 病児保育延利用者数の推移>

エリア 施設名 15 年度 16 年度 17 年度 18 年度 19 年度

北部 ピッコロケアルーム(4 床) 881 961 838 899 998

中部 枚方市病児保育室(5 床) 692 696 675 735 673

南部 枚方病児保育室(8 床) 1,487 1,486 1,444 1,301 1,254

合 計 3,060 3,143 2,957 2,935 2,925

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現状は、北部エリア4床、中部エリア 5 床、南部エリア8床の 3 か所 17 床が整備されてい

ますが、東部エリアには病児保育室が整備されていません。より身近なところでサービスが利用

できるようにするため、東部エリアにおいて医療機関併設型病児保育の設置に取り組みます。

(5) 障害児保育の充実

障害児保育については、昭和 40 年頃から公立保育所が障害のある児童の受け入れを始め、

昭和 50 年頃には、公私立保育所(園)で障害児の入所が本格的に増えてきました。公立保育所

では障害児の入所は必要に応じて加配保育士を配置し、私立保育所(園)では、市が昭和 54 年

度に創設した補助制度を活用して私立の特色を生かした障害児保育を展開するなど枚方市で

は先駆的に取り組んできました。

ところが、いま、従来の障害の概念では捉えにくい「配慮の必要な子ども」への対応が課題

になっています。

本市の障害児保育制度は、身体障害者手帳や療育手帳の所持者、特別児童扶養手当の対象児

童、公的機関等が知的な発達の遅れがあると認めた児童を対象に適用しています。こうした従

来の「障害」の概念では捉えきれない児童、例えば発達障害者支援法に規定される発達障害児

であっても、知的な遅れがない場合は、障害児保育制度の適用は受けられません。しかし、そ

うした子どもの中に、保育の実施にあたって特別な配慮が必要なケースも少なくありません。

枚方市では、これまで進めてきた障害児保育制度の基本を守りつつ、保育における発達障害

児等へのきめ細かな対応に取り組んでいきます。

(6) 児童虐待の防止と早期発見

日常、子どもたちや保護者と接する機会の多い保育士等は、子どもの様子、状況から不適切

な養育等や虐待が疑われる状況に遭遇することもあります。保育所(園)や保育士等には、児童

虐待の防止等に関する法律が規定する虐待に関する通告義務が課せられており、早急に関係機

関と連絡を取り、児童虐待の防止や早期発見に努めます。その場合の対応は、関係機関との連

携のもとに、子どもの 善の利益を考慮し、子どもの福祉を重視した支援を行います。

(7) 保育環境の整備(公私立保育所(園)の施設改修)

私立保育所(園)については、各園に意向調査を行い、建替え又は大規模修繕について継続

的な実施を図ります。公立保育所については、建物の老朽化が進んでおり、順次、耐震診断を

実施し、耐震工事、大規模改修を実施することをめざします。また、児童の安全を確保するた

め門扉オートロック化を実施し、快適な保育環境のためエアコンについても各クラスに整備し

ていきます。

(8) 保育の質の向上

保育の質の向上の目標は、子どもの幸せを第一に考え、子どもをひとりの人間として尊重し、

すべての子どもがもつ権利や自由が 大限尊重されることです。

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保育の質の向上に向けた具体的な実践としては、まず、「保育士等の資質や保育の専門性を高

め、保育所において質の高い人材を確保すること」や「保育所が、子どもが健康で安全に生活で

きる場となるようにすること」が挙げられます。

保育士等の資質・専門性の向上のためには、保育士等が保育実践や研修を通じて保育の専門性

を高めること、高い倫理観と人権意識を持つことが も大切です。また、人材育成のリーダーと

しての施設長の役割も非常に重要です。

本市では、保育実践の事例研究や様ざまな研修、地域子育て支援の仕組みづくりを公私立保育

所(園)が協調して行い、大きな成果を上げています。

また、子どもの健康及び安全の確保については、保育所における保健・衛生面の管理に万全を

期すとともに、感染症や事故への適切な対応が可能となるリスクマネジメントを進めることが大

切です。

保育の質の向上を図るために、本市独自のアクションプログラムの策定をめざします。

(9) 地域における保育所と小学校の連携

保育所は、その保育が小学校以降の教育や生活につながることを踏まえ、発達の連続性に配慮

して保育課程を編成し実践しなければなりません。さらに、子どもの育ちを支えていくためには、

保育所と小学校の関係者が直接的に交流し、双方における生活と学びの実情や子どもの育ちの歩

みと見通しについて、互いに理解を深めることが大切です。

そのため、エリアごとに保育所(園)と小学校の交流の機会を設け相互理解を深めるよう取り組

みます。具体化に向けては、エリアの基幹となる公立保育所がエリア内保育所(園)のネットワー

クの中心として、小学校との連携の窓口の役割を担います。

平成 20 年 3 月、厚生労働省が策定した「保育所の質の向上のためのアクションプログラム」

では、市町村が、「保育所が、地域子育て支援拠点、幼稚園、小学校、放課後児童クラブ、要保

護児童対策地域協議会など地域の関係機関等と積極的な連携及び協力を図ることできるよう」支

援することが望ましいとしています。

こうした連携の上に立って、幼保一元化及びその具体化としての「認定こども園」*について、

国制度の動向を慎重に見極めながら、本市の方向性を定めていくこととします。

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6 サービス推進のための方策

(1) 公私立保育所(園)の役割分担の方向性

保育所待機児童ゼロの推進と地域の子育て支援の充実、小学校などとの連携などの保育サービ

スの課題に対して、本市では、従来にも増して、公私立保育所(園)が協調して取り組んでいき

ます。そのなかで公私立保育所(園)の役割分担は基本的に次のとおりとします。

公立保育所は、主としてエリアにおける「基幹的保育所」や「地域子育て支援の拠点」として

集中化と重点化を進めます。私立保育所(園)については、保育士配置基準の充実や多様な保育の

実施など保育機能の充実を図ります。

<表 10 公私立保育所(園)の基本的な役割分担の方向性>

区分 説明 担当保育所(園)

基幹的保育所 ●エリア内の地域子育て支援

拠点のネットワークの中心

●エリア内の保幼小等の連携

における保育所(園)側の窓口

●保健や福祉、教育など他機関

等との連携

4つのエリアごとに1つずつ、あわせ

て4つの公立保育所

地域子育て支援の

拠点

●地域子育て支援拠点事業*を

実施する保育所

●子育て支援にかかわる人材

の育成や連携

公立保育所 7 か所(4基幹的保育所含

む)

私立保育所(園)7 か所

多様な保育の実施 ●一時預かり、特定保育、夜間

保育、休日保育

私立保育所(園)を中心に必要か所数を

確保

地域に密着した保

育所(園)

●通常保育(障害児保育、地域

子育て支援等を含む)

公私立保育所(園)

(2) 公立保育所の民営化と統合

本市では、平成16年4月、宇山保育所を民営化し、その縮減した経費を財源(一部)に活用

して、大幅な定員増による待機児童の解消、一時保育(現在の一時預かり)やつどいの広場(現

在の地域子育て支援拠点施設)等の子育て支援の充実を図りました。

今後も、保育ニーズの推移等を踏まえて、公立保育所の民営化などにより本市域における保育

所配置の効率的効果的な再構築に取り組むとともに、節減した財源等を活用して待機児ゼロの推

進や地域子育て支援の充実などを図ります。本ビジョン期間における推進手法として次のポイン

トを重視していきます。

●0歳児保育を実施していない公立保育所は、民営化にあわせて実施する。

●公立保育所が集中している中部エリアの一部公立保育所について民営化を進める。

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pg. 17

●今後の公立保育所の再構築については、民営化だけでなく統合も有効な選択肢とする。

保育ビジョン期間では、既に民営化方針を明らかにしている蹉保育所を含めて2か所程度の

民営化に取り組むとともに統合について検討します。なお、民営化にあたっては、保護者の意見

を十分に聞き、これを踏まえて民営化を受ける社会福祉法人と十分に協議し、保育や行事等の引

継ぎを十分に行うとともに民営化後もフォロー・見守りなどに万全を期していきます。

また、保育ビジョン期間以降については、就学前児童人口や保育需要の推移、保育に係る国制

度等の動向などを見極めて、適切な対応に努めます。

(3) 保育料の改定

微増傾向にある保育料滞納者に対しては、納付相談や督促などを進めるとともに、やむを得な

い事情があると認められる場合は、軽減措置等をとります。また、悪質なケースについては、各

市の取り組みを参考に厳正な対応を図っていきます。

本市の保育料の水準については、府内 31 市中で 2 番目に低い状況にあり、厳しい財政状況

のなかで保育や子育て支援等に必要な財源の確保を図るためには、一定の見直しを行う必要があ

ります。今後、世界的な規模での景気後退、雇用不安など経済社会状況の動向も見極めながら検

討していくこととします。

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pg. 18

参考資料 p.6 関係

平成 20 年度のエリア別就学前児童数等の状況

■平成 20 年 4 月 1 日現在

地域

就学前児童数

(人)

保育所数

(か所) 定員

(人)

入所

児童数

(人)

入所率

(%)

待機

児童数

(人)

入所申込

者の内、

入所して

いない児

童数(人)

総数 0 歳児 公立 民間

北部 4,590 735 3 9 1,361 1,431 105.1 0 0

中部 4,628 787 8 6 1,321 1,446 109.5 0 12

南部 7,627 1,234 5 12 1,716 1,916 111.7 0 24

東部 5,596 805 1 11 1,155 1,298 112.4 0 8

計 22,441 3,561 17 38 5,553 6,091 109.7 0 44

■平成 20 年 12 月 1 日現在

地域

就学前児童数

(人)

保育所数

(か所) 定員

(人)

入所

児童数

(人)

入所率

(%)

待機

児童数

(人)

入所申込

者の内、

入所して

いない児

童数(人)総数 0 歳児 公立 民間

北部 4,585 735 3 9 1,361 1,561 114.7 55 61

中部 4,535 786 8 6 1,321 1,514 114.6 74 100

南部 7,654 1,202 5 12 1,716 2,029 118.2 153 182

東部 5,397 771 1 11 1,155 1,384 119.8 101 104

計 22,171 3,494 17 38 5,553 6,488 116.8 383 447

用語の解説

*新保育所保育指針←p.1

保育所保育指針は、保育所における保育の内容やこれに関連する運営等について定めたもの。

平成 20 年 3 月に改定が行われ、平成 21 年 4 月から施行されましたが、厚生労働大臣によ

る告示となり、 低基準としての性格を持つことになりました。

本ビジョンでは、改定された保育所保育指針を新保育所保育指針としています。

*定員の弾力的運用←p.1

待機児童の解消のため、保育所の 低基準を満たしていれば、保育所の定員を超えて児童の入

所受入れが可能になりました。枚方市では、年度当初は定員のおおむね 15%、年度途中からお

おむね 20%(緊急枠別途 5%)まで受入れができることとしています。

保育ビジョン資料・用語解説編

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pg. 19

*次世代育成支援対策推進法←p.2

次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、育成される社会の形成を目的として、国、

地方公共団体、事業主及び国民の責務を明らかにするなど次世代育成支援対策を推進するために

平成 15 年から施行された法律

*待機児童数←p.6

入所申込が提出されており、入所要件に該当しているが入所していない児童のうち、①国庫補

助事業による家庭的保育事業、特定保育で保育している児童 ②地方公共団体における単独保育

施策において保育されている児童及び他に入所可能な保育所があるにも関わらず、特定の保育所

を希望し、保護者の私的な理由により待機している児童を除いた数です。

*分園方式←p.11

保育所の分園については、本園(中心保育所)とは別に設置される小規模な保育所で、通常の

交通手段により 30 分以内の距離にあり、本園と一体的に運営が行われている施設。都市部では

待機児童の解消を目的として設置されています。

*事業主行動計画←p.11

平成 15 年に施行された次世代育成支援対策推進法により、仕事と家庭の両立を支援するため

の雇用環境の整備について、事業主が行動計画を策定することとされました。国及び地方公共団

体は特定事業主行動計画を、常時雇用する労働者数が 100 人を超える事業所は一般事業主行動

計画を策定する義務があります。

*一時預かり(一時保育)←p.11

一時保育は、児童福祉法の一部改正により平成 21 年度から一時預かりに名称変更されました。

*病児保育←p.13

保育所等に入所している児童が、病気や怪我によって集団保育が困難な期間、医療機関等に付

設されたスペース(病児保育室)で預かります。

*認定こども園←p.15

幼稚園の機能と保育所の機能を併せ持ち、保護者が働いている、いないに関わらず、教育・保

育を一体的に受けられる施設です。また、すべての子育て家庭を対象に、子育て支援を行います。

*地域子育て支援拠点事業←p.16

乳児または幼児及びその保護者が相互の交流を行う場を開設し、子育てについての相談、情報

の提供、助言その他の援助を行うことにより、地域の子育て支援機能の充実を図り、子育ての不

安感等を緩和し、子どもの健やかな育ちを支援する事業。この事業は、保育所や公共施設のスペ

ース、児童館などで実施することとされており、施設の機能によりセンター型、ひろば型、児童

館型に分類されます。