胃炎および胃潰瘍の組織化学的研究 - 岡山大学学術成果リポ...

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616. 38-002+616. 33-002. 44: 612. 05. 1

胃 炎 お よ び 胃 潰 瘍 の 組 織 化 学 的 研 究

第1編

水 解 酵 素 に つ い て*

岡山大学医学部第1外 科教室(指 導:田 中早苗教授)

副 手 竹 本 茂

〔昭和41年8月17日 受稿〕

第1章 緒 言

人 の 胃 の組 織 学 的 検 索 は 光 学 顕 微 鏡 に よつ て充 分

に行 わ れ,今 日に お い て は さ ら に電 子顕 微鏡 単 位 の

研究 が進 め られ て い る.一 方 形 態 学 的研 究 の み に よ

つては推 し計 れ な い 胃 組 織 の 代 謝 を,組 織 化学 的方

法によつ て検 索 す る試 み は,近 来 種 々の 酵 素 につ い

て報告 され て お り,最 近 で はDawson et al.1), Shni

t㎞2), Correia et al.3),吉 利 他4),三 好6),脇 坂 他6) ,

Planteydt et al.7),河 島 他8)ら に よつ て正 常 胃 の系

統的な酵 素組 織 化学 的 研 究 が 発 表 され て い る.し か

し,そ の 胃の 炎 症 像 につ い て は, Shnitka2), Correia

et al.3),吉 利 他4),三 好5)ら の 報 告 が み られ る が,

Biopsyに よ る 標 本 採 取 が 多 く,な お 充 分 な 研 究 が

み られ な い.本 論 文 は こ の点 を 明 らか に す るた め に,

岡 山大学 田 中外 科 に お い て 別 出 され た 潰 瘍 胃 に お け

る水解 酵 素活 性 を 明 らか に す る こ とを 試 み た.

第2章  実 験 材 料お よ び 方 法

実験 材 料 は手 術時,全 身 麻 酔 の も とに 外 科 的 に切

除 され た人 胃 よ り得 た.

手 術 患者 はす べ て,術 前12時 間 は 絶 食 して お り,

前 夜Oleum riciniが 投 与 して あ つ た.術 前,術 中 に

投 与 され た薬 物 は,ラ ボ ナ(pentobarbital calcium),

オ ピス タ ン(pethidin hydrochloride),硫 酸 ア ト ロ

ピン,塩 酸 ス コ ポ ラ ミンで あ り,す べ て ラポ ナ ー ル

(thiopental aodium),笑 気,フ ロ ー セ ン, S. C. C.

(eucciaylcholiae chloride)に よ る 全 身 麻 酔 で あ つ

た.

主 と して 潰 瘍 胃55例 を 用 い たが,対 照 と して は ポ

リー プ 胃5例 を 用 い た.こ れ らを 採 取 後 直 ち に 一30

℃ に 凍結 し, -20℃ の ク リオ ス タ ッ ト中 で20μ

の 凍 結 連 続 切片 を 作 成 し,室 温 にて 可 及 的 早 急 に 乾

燥 させ た.こ れ を10分 間, 10%中 性 ホル マ リンに よ

つ て 固 定 して 水 洗 し,下 記 の 各 反 応 液 中 で染 色 し,

バ ル サ ム また は グ リセ リン封 入 を 行 つ た.ま た 同時

に,凍 結 切片 お よ び パ ラ フィ ン 切片 の ヘ マ トキ シ リ

ン,エ オ ジ ン染 色 を 行 つ た.

1) Alkalinephosphatase: α-naphthyl phosphate

10mg, diaso-blue B 20mg, M/5 Clark-Cub's buffer

pH 9.220ml. 20℃ 30分 問 反応 させ バ ル サ ム封 入

を 行 つ た,酵 素 活性 陽性 部 は紫 褐 色 に 着 色す る.

2) Acidphoephatase: α-naphthyl phosphate 10mg,

diazo-blue B 20mg, Michaelis buffer pH 5.8 20ml.

20℃, 1時 間反 応 させ バ ル サ ム封 入 を 行 つ た.陽 性

部位 は 紫褐 色 に 着 色 す る.

3) β-Esterase: β-naphthyl acetate 10mg. diazo

blue B 20mg, Michaelis buffer pH 7.2 20ml. 20℃,

30分 間 反応 させ グ リセ リン封 入 を 行 つ た.陽 性 部 位

は赤 紫 色 に 着色 す る.

4) Leucine-aminopeptidase: 1-1eucyl-β-naphthy-

lamine hydrochloride 8mg, acetate buffer pH 6.5

10ml, 2/100 M KCN 1ml, 0.85% NaCl pH 6.5 10ml,

diazo-blue B 10mg. 37℃, 30分 ~1時 間 反 応 させ,

次 い で 生 理 食 塩 水 で 洗 浄 し,数 分 間M/10 copper

sulfateの 溶 液 に浸 した 後 グ リセ リン封 入 を 行 つ た.

陽 性 部 位 は青 紫 色 に着 色 す る.

5) β-Glucuroaidase:先 づ 下 記 〔I〕 の 反 応 液 中

に て37℃, 6時 間反 応 させ た.次 い で 水 洗 し 〔II〕

の 反 応 液 中 に て4℃, 5分 間反 応 させ た.反 応 後 冷

水 で 洗 浄 し, 0.1%酢 酸 を 通 じ,グ リセ リン封 入 を

行 つ た.陽 性 部 位 は赤 紫 色 に着 色 す る.

〔1: 6-bromo-2-naphthyl-β-d-glucuronide 30mg,

phosphocitric buffer pH 4.95 20ml, methanol

* 本論文の要旨は日本消化器病学会第6回 秋季大会において発表した,

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5ml, aq. dest. 75ml.

〔II〕: 0.02M phosphate buffer pH 7.5 40ml,

diazo-blue B 40mg.

第3章  実 験 結 果

第1節  AlP染 色

正常 胃組 織には毛細血管 を除 き活性 を全 く認めな

い.た だ血管系は活性を示す ことが多 く,粘 膜 下に

み られ る大 血管は陰性で あるが,粘 膜下 よ り粘膜 に

入 る細 血管はその内膜に軽度の活性を示 し,主 細胞

周辺 に至 つて数本の毛細血管に分岐 して いる.毛 細

血管 は主 と して粘膜 固有層を腺管 に接 して走 り,冑

小窩 に至 る.こ の腺 管に接 した部分の毛細血管 の活

性 は強度 であ るが,さ らに被蓋上皮に接 して走 り,

あい隣 れる腺 管か ら上行 して 来た毛細血管 と吻 合し

てい る部分 では活性は微弱ない し陰性で ある.

ご く軽 度:の炎症 で,形 態学的変 化が とぼ しい場合

において も,血 管系を除 く粘膜 は陰性で あり,毛 細

血管 に もほ とん ど変化が認め られ ない.し か し炎症

が進 行す るにつれて活性の変化が起つ て来る.ま つ

被蓋上 皮の糜爛,上 皮剥脱,壊 死 などの変化が起 る

と,脱 落上皮およ び壊死部 は陰性 また は微弱陽性 を

示 し,附 近の毛細血管末梢 部は強陽性 を示す.(図

1)し か しほかの部分に は全 く活性の変 化はみられ

ず,軽 度の細胞浸潤が あつて も活性 は 認 め られ な

い.

慢性 炎症 が進行 して肥厚 をきたして も,腺 上 皮に

活性 が出現す ることはす くない.粘 膜下の大小血管

内膜 は弱 または強陽性で あり,粘 膜 内毛細血管 の増

加 および拡張が認め られ る.ま た粘膜 固有層,粘 膜

下 な どに円形細胞浸潤が強 いと,そ の部位 は微弱 ま

たは弱陽性を示 し,腺 上皮 も微弱 陽性 であ ることが

あ る.

リンパ球の集簇 および リンパ小節 の部位において

は,し ば しば微弱か ら中等度陽性 を示 し,こ とに リ

ンパ 小節にお いて は明中心 は陰性 であ り,周 辺 部に

輪状 の活性が 出現す る.(図3)他 の遊 走細胞 には全

く活 性を認めない.

萎 縮性胃炎 にお いて も毛細血管 を除 く上 皮,間 質

と もに陰性で あり,正 常 胃に くらぺて粘膜 内の毛 細

血 管の数は著減 して いる.し か し活性 は変 らず,胃

小 窩附近よ り粘膜下 にいたるまでの部 分に常 と同 じ

活性 を示す.粘 膜下の リンパ小節 はほとん どの場合

活性 を示 さない.

腸 上皮化生部の上 皮は時 に活性 を示 す ことがあ る

が,陰 性の場 合もあ り,こ の活性は腸上皮 に似 た形

態 を示す症例 ほど活性 が強い 傾 向 が ある(図2)。

活性 は線条縁 およびGolgi装 置に強い.

修復機転の乏 しい胃潰 瘍において は,附 近の萎 縮

粘膜 あるいは潰 瘍底 の壊 死層な どに は活性がみ られ

ない.勿 論 その部分の毛細血管は著明に減少 してい

るが,活 性 は保 たれてい る.附 近の リンパ小節や円

形細胞浸潤 もほとんど活性を認めない.修 復機転が

み られ る潰瘍 において は,再 生せ る被蓋上皮および

腺管がみ られ,そ の附近 に毛 細血管が増殖 してい る

が,や は り毛細血管 に活性 がみ られ るにすぎない.

潰瘍底に生 じた 肉芽組織 では,大 多数の新生毛細

血管が潰瘍底に対 して垂直 に走行 し,細 胞浸潤 も多

く,線 維芽細胞や若い線維細胞 も認 め られ,肉 芽の

増殖 が進行中で あると思 はれ る部分 では,毛 細血管

に強陽性,浸 潤細胞に弱 陽性 の活性 がみられ,そ の

他おそ ら く線維芽細胞,線 維細胞,膠 原線維などに

弱い活性が認め られ る.(図4, 5, 6)し か し中には

全 く活性の認め られない 肉芽組織 もあ り,こ れらに

は全 く増 殖の傾向がみえ ない.ま た硝 子様変性が生

じると活性は陰性 とな る傾 向が ある.

潰瘍周辺部には種 々の遊走細胞が集 まるが,粒 子

球,組 織球な どは常に陰性で あり,リ ンパ球様細胞

は強 く浸潤 した ときに活性が 出現 し,弱 い浸潤のど

きには陰性であ る.リ ンパ小節 も附近 の リンパ球浸

潤が強い とき,主 として周辺部 に活性 が出現する.

第2節  AcP染 色

正常胃の 胃底 腺領域に おいて は,壁 細胞が弱ない

し中等度,主 細胞が中等度,副 細胞が微弱ない し弱

陽性,被 蓋 上皮は微弱陽性で あり,幽 門腺領域にお

いては,腺 細胞は微弱 ない し弱陽性,被 蓋上皮は弱

陽性の活性を示す.毛 細血管 および血管 内膜は活性

を示 さず,僅 かに血管 中膜が染色す る程度である.

ご く軽度の炎症で は何 らの活性変化 も認め られな

い.し か し表層性 胃炎のため,被 蓋上皮に比較的強

い炎症,壊 死が起つた場合,そ の箇所 においては中

等度の活性を示 し,胃 小窩 内の影響 の少 ない場所に

くらペて活性が増強 して いる.壊 死,脱 落を起す と

すべて強陽性 とな る.

肥厚性 胃炎に おいて は,正 常 胃腺 に比較 して腺上

皮がやや強 い活性 を示 す.(図7)粘 膜 固 有 層に細

胞浸潤が おこ り,同 所 が微弱 な活性 を示 すと,こ れ

に接す る腺上皮 の活性 が上昇 する1遊 走細胞 のうち

組織球 は中等度 の活性 を示 してい るが,他 はすべて

微弱活性 を呈 し,リ ンパ小節は明中心が微弱ない し

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胃炎および胃潰瘍の組織化学的研究 817

弱活性,周 辺部が陰性 ない し微弱 な活性 を示 してい

る.

萎縮性 胃炎に おいて は,活 性 は低下 してお り,腺

上皮 はほ とん ど微弱活性で ある.

腸上皮化生部 は全例 において中等度ない し強度の

活性を示 し,主 として線条縁 に活性 が強い.

胃潰瘍 にお ける周辺萎縮 粘膜 は,附 近の 胃炎部粘

膜よりも弱い活性を示 し,上 皮系が微弱活性 となる

ので,そ の粘膜固有層 の活性 とほ とん ど同様で ある.

潰瘍底の壊死層 は陰性 であ るが,し ば しば種 々の活

性を有す る細胞 の侵入 がみ られ る.時 にはそ こに逆

に壊死塊 をみ る.潰 瘍壁 にみ られ る再生粘膜上皮は

中等度の活性を示す のが普通 であ る.潰 瘍底に生 じ

た肉芽組織は弱陽性 を示 し,円 形細胞浸潤が多 く起

つても活性は ほとん ど変 らない.(図8)し か し硝

子様変性をお こす と活性 が低 下 して微弱活性を呈す

る.時 に点状 の強い活性を 肉芽組織中にみ るが これ

は人工で はな くておそ ら く線維芽細胞の活性で あろ

う.

第3節  β-Est染 色

正常 胃の胃底腺領 域において は,被 蓋上皮 は微弱

ない し弱,副 細胞 は中等度,主 細胞 は強度,壁 細胞

は中等度 ない し強度 の活性 を示 し,幽 門腺領域 にお

いては,被 蓋上皮 が微 弱ない し弱,幽 門腺は弱 ない

し中等度 の活性 を示 す.粘 膜 固有層は陰性で ある.

軽度 の炎症 の場 合は被蓋 上皮が中等度,粘 膜固有

層が軽度 の活性 を示 すが,他 の部分の活性 も一般に

軽度に増 強す る傾 向が ある.

肥厚性 胃炎 においては,被 蓋上皮は中等度活性を

示 し,壊 死を起 した箇 所は強度,粘 膜固有層 も軽度

の活性 の示 し,腺 上 皮の活性 もやや増強す る.(図

9)し か し症例 によ り胃底腺 の主 細胞の活性のみ は

低下 して弱ない し中等度の活性を示す ことが ある.

萎縮性胃炎 において も,表 層性炎症の強い場合 は,

被蓋上皮は肥 厚性 胃炎と同様に強い活性を示す,ま

た粘膜 固有層 も弱活性 を示 すが,主 細胞,副 細胞の

活性が著明に低下 して,と もに弱活性を示すに とど

まる.幽 門腺上 皮は対照 に比 してやや活性が低下す

るに とどまる.

遊走細胞 は組織球を除 き,一 般 に陰性 を呈す るも

のであるが,著 明な円形細胞浸潤 をと もな う胃炎,

胃潰瘍においては,そ れ らの 円形細 胞,主 と して リ

ンパ球は微弱活性を呈 し,リ ンパ小節 は微弱ない し

中等度の活性を示す ことが あり,そ の 中心 部 が 強

い,

腸 上皮化生をお こす と活性は多 くの場合強陽性を

示 す.し か し陽性を示 さない場合 も例外的に存在す

る.

胃潰瘍周辺部の粘膜上皮の うち,胃 腺頸 部の腺細

胞 に比較 して,新 生腺管は明 らか に 強 い 活性を示

す21) 22).(図10)潰 瘍底 の壊死 層は弱 陽性,肉 芽組

織 は陰性,硝 子様変性 部において も陰性 であ る.円

形細胞浸潤の強弱 によつて活性 が左右 され る様子は

み られない.た だ しこの肉芽組織 附近 の筋 肉組織,

またはこれを肉芽 が取 り巻いた状態 において は,筋

肉は中等度 ない し強 度の活性 を示 す.(図11)

第4節  AmP染 色

正常 胃粘膜 においては,活 性 は全 くみられ ない.

炎症 をおこ して も活性 は全 く現 れないが,た だ腸

上皮 化生をおこす と,微 弱 か ら強度 までの種 々の程

度 の活性 が出現 する16) 17).こ の活性の強 さは腸上皮

化生 が腸 上皮に似 れば似 るほど強 くなる傾 向が ある.

(図12)

また壊死をお こすと活性 が出現 することが ある,

潰瘍において も再 生上 皮,肉 芽 組織,硝 子様変性

部な どすべて陰性 であ る.し か し肉芽組織に おいて

は,時 に軽 度に活性 をみ ることがある.こ れ は線維

芽細胞 および幼若 な線維細胞 に活性が あるため と考

え られ る.(図13)

遊走細胞で は組織球 に弱 陽性 の活性が みえ るが,

他 はすべて陰性で ある.

第5節  β-Gl染 色

正常 胃の 胃底腺領域に おいて は,被 蓋上皮は弱な

い し中等度,副 細胞,主 細胞 は弱活性,壁 細胞 は中

等度 ない し強度の活性を示す.幽 門腺領域の被蓋 上

皮 には弱 ない し中等度の活性,幽 門腺 には中等度な

い し強度の活性 が認められ る.そ の粘膜固有層 は弱

ない し中等 度活性 を示す.

軽 度の炎症 および慢性増殖性炎症が起 ると,粘 膜

全 体の活性 が増強す る.(図14)勿 論壊 死 部 分 はさ

らに増 強 した活性 を示す.

萎縮性粘膜 においては,や は り被蓋上皮が 中等度

ない し強 度の活性 を示 し,壁 細胞 も数 は減少 してい

るが正常 と同様 に強い活性 を呈 する.た だ主細胞,

副細胞,粘 膜 固有層 は軽度 の活性 を示す にとどまる.

幽門腺 も弱 ない し中等度 の活性 を示す.

腸上 皮化生 が発生 す ると,そ の部は全例 において

強い活性を示す.

リンパ球 その他 の遊走細胞 も微 弱な活性 を示 して

いるが,細 胞 浸潤 が著明な場 合はその粘膜上皮 の活

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818 竹 本 茂

性 も上 昇す る.リ ンパ小節 は中心部が 中等度,周 辺

部が微弱 ない し弱活性を示す.

潰瘍 壁に存在す る新生腺管 は,強 度 活性 を示 し,

(図15)潰 瘍底の壊死層 は微弱 ない し中等 度,肉 芽

組織 は弱活性 を示す.(図16)硝 子様変性 をおこ し

た箇所 も微弱 な活性を示す.

第4章  総括な らびに考按

大 田9)の 研究によれば, AIP活 性が犬 の幽 門腺 と

胃底腺 の壁細 胞および粘膜固有層 に存在 するとい う

が,人 の正常 胃 粘 膜 に お い て は, Dawson et al. 1),

Correia et al. 3),吉利他4),三 好5), Planteydt et al.7),

河 島他8), Plosscowe et al. 10), Gomori11)ら の報告に

よれば,毛 細血管を除 いては全 く陰性で あるが,正

常腸 管において は小腸絨毛 表層のみに活性が 出現す

る1) 12).上 皮 細胞において は一般 にAlP活 性 は清

藤12), Jervis13), Przeleka14)ら の報告にみ られ るごと

く,小 皮縁 および核上部のGolgi装 置附近に認め ら

れ る.松 峯他15)も胃粘膜におけ るAlPは 通常毛細

血管壁 および腸 上皮 化生部 に活性を示す に過 ぎず,

腸上皮 化生部 の活性 は空腸 固有上皮に近似 し,小 皮

縁およ び核上部 に活性 を有 す ると述べてい る. Shni

tka2), Planteydt et al.7), Plosscowe et al.10), Fodden16),

Madden et al.17)ら は腸上 皮化生部には常に活性が

出現 す るとして いるが,河 島他8)は 腸上皮化生部に

時 にAlP陽 性 と報告 してい る.本 研究 において も一

部 の腸 上皮化生部 において 同様の所 見を得た.ま た

消化管粘膜,皮 膚,乳 腺,甲 状腺,脳 な どの部分で

は毛細 血管に強い活性が存在 することが知 られてい

るが,こ の陽性の毛細血管を観察 する ことによつて,

肥厚性 炎症によ り毛細血管の増殖 がおこ ることが明

らかとな る一 方,萎 縮性変 化によつ て毛細 血管 が減

少 する こと も認め られ た.ま た潰瘍 部の再 生粘膜,

および肉芽の増殖部に も毛細血管が増加 してお り,

福 田18)が潰瘍底にお ける血管変化 として閉塞性動脈

炎,組 織 化血栓,血 管 自身の瘢痕組織 内埋没消失 な

どを挙 げてい る如 く,比 較 的大血管 は冒 されて いる

のに反 して,毛 細血管は逆 に増殖が著 し く,潰 瘍底

に対 して垂直 に走行 す る傾 向を示 した.ま た炎症 に

よって普通にはAlP活 性の 認め られない粘膜 内毛

細血 管末梢部 にまで活性が 出現 してお り,と くに潰

瘍 附近 ではFodden et al.16)が 指摘 して い るごと く

強 い活性 が 認 められ る. Martin18)は 組織 培養 した

線維芽細胞 のAlP活 性 を検索 し,種 々の活性 をみ

た と報告 してい るが,潰 瘍底 の 肉 芽 組 織 にお いて

Shnitka2),河 島他8), Monie et al. 20)ら は胃潰瘍の線

維 化の著明な部分 の 線維 芽細胞 お よ び膠 原線維 に

AIP活 性を 認 めてい るが,本 研究 に お い て も同様

に線維性増殖 部に著明な活性を認 めた,こ れは線維

芽細胞,若 い線維 細胞,膠 原線維の活性 とみられ,

この部に多数認 められ る毛細 血管の活性のdiffusion

artefactで はない.し か し硝子様 変性 を おこした り,

陳旧な 肉芽組織 において は微 弱な活性または陰性 化

してお り,毛 細血管 も減 少 してい る.遊 走細胞で は

Monisetal.20),武 内鋤 らによれば,好 中球にAlP

活性 が強い と報告 されて いるが,本 研究においては

Kawashima et al.22), Braunstein et al. 24)の 報告の

如 く,粒 子球はすべて陰性ない し微弱 陽性を示 した

にすぎない.し か も武 内23), Braunatein et al.24)ら

によれ ば,リ ンパ球 はAlP活 性 を 持たないとされ

てい るが,本 研究 においては高度に炎症部に浸潤 し

た リンパ球や,肥 大 した リンパ小節 の周辺部にはか

な りのAlP活 性を認めた.

以上の如 く胃炎において 毛 細血管以外にAIP活

性陽性 を示 す部分は,腸 上皮化生を形成 した時,お

よび リンパ球 様細胞 浸潤の著明な慢性 胃炎の リンパ

球 集簇 や リンパ小節 周辺部 であ り,胃 潰瘍ではその

潰瘍底の線維性増殖 部である.

大 田9)に よれば犬 の胃粘膜 にはAcP活 性 は 認 め

られ ないと報告 しているが,人 の正常消化管粘膜上

皮 において は軽度 陽性 であ り,主 細胞,壁 細胞,小

腸絨毛表層 などに中等度 の活性 を 示す1) 8) 12).し か

し壁細胞に はAcP活 性を認 めないと 報告 している

者 もある6) 7).炎 症 に よ る 活性 変化 は, Correia et

al.3), Madden et al.17)ら は殆 ど変 化が ないとして

い るが, Roaeman et al.25)は 軽 度 に 上昇す ると報

告 してい る.本 研究では,炎 症 によつて粘膜上皮の

活性 が増 加 し,そ の増殖傾 向が あれば さらに強い活

性を示す.も ちろん潰瘍辺縁部の再生粘膜は中等度

活性 を示 し,正 常胃腺頸 部の分裂増殖部 に比較 して

やや強い活性 を示 した26) 27).ま た壊死部 はと くに強

い活性 を示 す ことはWachsteiu28)ら も述ぺた通 りで

ある.一 方萎 縮性変化を ともな うと活性 は低下の傾

向を示 す6). AcP活 性 と胃液分泌機能 との関係につ

いて三 好5)は 白鼠 に ヒス タ ミンな どの分泌刺激剤を

投与す るとAcP活 性 は 増強 し,プ スコパ ンなどの

分泌抑制剤を投与 すると活性は低下 す ると述 べてい

るが, Correia et al.8)は ヒスタ ミン投 与 によつて

AcP活 性は影響 されない と報告 して お り,三 好5)も

あ る症 例において は萎縮性変化が分泌低下を解説 し

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胃炎および胃潰瘍の組織化学的研究 819

得る し,あ る症 例では酵素活性が解 説 し得 るか もわ

からないが,粘 膜 自体の分泌機能 を明快 に表現す る

こと もまた酸度曲線を分析 することと同様に,現 段

階では困難で あると論 じて い る.腸 上皮化生部 は中

等度か ら強度の活性を示す が,こ の活性は十二指腸

絨毛の活性 に酷似 して いる12). Goldfieher et al.29)

はAcPがribosomeで 産生 されてColgi装 置 に送

られ,さ らにlysosomeに 達 す るとい う.本 研究 に

おいては,腸 上皮化生 部の所見 がOgawa30)の 所見

とほぼ一致 したが, lysosomeに 一致す ると思 われる

細胞質顆 粒を充 分に染め 出す ことは出来 なかつ た.

AcP染 色法 の 改良 が 待 たれ る.潰 瘍部の 肉芽 組織

や硝子様変性 部は一般 に微弱 な活性 を 示すが8),線

維増殖部では僅かに活性が増強 する.こ れは膠 原線

維,線 維芽細胞,線 維細胞 の活性 と思 われ る.遊 走

細胞では組織球に強陽性 を示す ほかは,リ ンパ球,

粒子球な ど微弱ない し弱 活 性 を 示 す と されてい る

が6) 24),本 研究にお いて も同様 の所見 が得 られた.

ことに リンパ小節の 明中心 が周辺 部よ り強い活性を

示すことは, AlP活 性 と逆 の関係にあ り,興 味 ある

事実である.

β-EstはDawson et al.1), Shnitka2)ら は 胃の噴

門部,体 部 に強 い活性 を示 す と報告 してい るが,一

般に胃底腺領域 の深 部腺 管に 強 い 活 性 が 認 め られ

る3) 8).本 研究 では炎症 に よ つ て 活 性 はAcP同 様

に変化す ることが多いが,こ とに潰瘍部再生腺管が

強い活性 を示 したのは印象に残 る事実で ある.潰 瘍

瘢痕部には活性 は認 め られないが,そ の附近の筋 肉

組織は しば しば中等度 の活性を示す.坂 本31)らは創

傷治癒 過程 におけ るEst活 性を観察 し,創 表面 に流

出 した遊走細胞 に強い活性を認めてい るが,本 研究

では胃潰瘍底 の壊死 層および線維素滲 出層 における

遊 出細胞に弱い活性 しか認め られなかつ た.ま た一

般に組織球 は強い活性 を示 すが,他 の遊走細胞 は陰

性または微弱 な活性 を示 す物圏).本 研究で も同様の

所見を得たが,た だ リンパ 小節 の中心部は,リ ンパ

球浸潤の強い症例 において,時 に明 らかに活性を認

めた.そ の他,腸 上 皮化生部には他の水解酵素同様

に強い活性を示 したの.ま た潰 瘍および強い炎症部

に接 する平滑筋は中等度の活性を しば しば示 したが,

このような報告はまつた くみ られない.

AmP活 性 は正常 胃粘膜 にはまつ た く発見 されな

いが1) 7) 8) 32),小 腸 絨毛には強い活性が認 められ てお

り1)腰),一 般に小腸 分泌粘液中 に多 く含 まれて いる

とい う.腸 上皮化生は,慢 性 胃炎 にお ける胃粘膜の

再 生によつて生 じる逆行 性変化であ るが,胃 粘膜に

まつ た くないAmPが 十 二指腸 絨毛の如 くに化生部

に出現 する2) 7) 8) 32). Shnitka2)は 小皮縁に強陽性を

呈 すると しているが,腸 上 皮化 生部において も同様

の局 在 を 示 した. Shnitka2), Planteydt et al. 7),

Wattenberg32)な どはこれ を悪性変 化と 密接 な関係

があ ると報告 して いる.他 の炎症 によつ てAmP活

性が粘膜上 皮に出現 す ることはない.潰 瘍底 にまれ

に活性を認め ることがあ るが,こ れは新鮮 な潰 瘍の

症例であ り, Monie et al.21), Okamoto et al. 33)は

炎症 におけ る間質 増殖時 および 修 復 過 程 に おいて

AmP活 性が増 強す ると述 べて い るが,し か し炎症

産物の吸収が終 るとこの活性は次第に消失す るとい

う.遊 走細胞では組織球 を除き活性 を認 めなかつた.

しか し武内23)らは好中球に活性を認め ると報告 して

い る.

β-Gl活 性は正常胃では壁細胞 に強いが1) 2) 9),主

細胞 には弱 く2) 4),他 の上 皮に も軽度 の 活性 がみ ら

れ,幽 門腺 にもかな りの 活性がみ られ る8).炎 症 に

よる変化 はAcP, Estな どとほぼ同様の傾向を持つ

てい たが,こ とに壊死部の活性が強い. Campbell et

al. 34)は β-Glが 新 生 増 殖部 に最 も強い活性 を示す

と して いるが,本 研究に おいて も潰瘍再生上皮の腺

管 に強 い活性を認めた.潰 瘍底の結合組織や浸潤細

胞 に特別の所見 はな く,す べて弱い活性を示 した.

ことに線維増殖部が強い とい う傾向はみ られなかつ

た.ま た胃液酸度 と β-Gl活性 との相関関係 も認め

られない という5).

第5章  結 論

外科 的に切除 された人の 胃の潰瘍および炎症 像に

つ いてAlP, AcP, β-Est, AmP, β-Glの5種 類の

水解酵素 の組織化学的研究を 行 い,次 の 結 果 を得

た.

1.胃 炎で は胃粘膜毛細血管末梢部にいた るまで,

血管 内膜細胞にAlP活 性が認め られ る.

2.萎 縮性 胃炎で は 胃粘 膜 のAcP, β-Est, β-Gl

活性 がやや低下 する. AIP, AmP活 性 は陰性で あ

る.

3.肥 厚性 胃炎 では 胃 粘 膜 のAeP, β-Eat, β-Gl

活性 がやや上昇 す る. AIP, AmP活 性 は陰性で あ

る.

4.胃 貴瘍底の肉芽組織 では著明なAlP活 性 を認

め るが,硝 子様変性を起す と活性は低下 し,そ の部

の新生毛細血管は潰瘍底に対 して垂直に走 る傾向が

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820 竹 本 茂

み える.ま たAcP, β-Gl染 色 も僅か に活性 を認 め

るが, β-Eet染 色では活性を認 めず, AmP染 色 では

稀 に活性 を認め ることが ある.

5.潰 瘍辺縁 部の再 生粘膜腺管で は, AcP, β-Eet,

β-Gl活 性 が上昇 してい る.

6.変 性壊 死に際 して は,各 酵 素 とも 活性が 増強

す る.

7.腸 上 皮化生部で は,各 酵 素と も強 い 活性を呈

し,十 二指腸 の絨毛に類似 した活性 を示 す.

8.炎 症部 に接 す る平滑筋で は, β-Est活性が特異

的 に増強す る.

9.細 胞浸潤 が多い部分に接す る上 皮細胞 のAcP,

β-Gl活 性 は,他 の部の上皮細胞 に比 較 して増強 し

て いる.

稿 を終 るにあた りご校閲,ご 指導 いただいた田中

教授な らびに緒方講師,ま た終始 ご指導,ご 鞭達下

さつた河島先生 をは じめ とす る当教室組織 化学研究

班の諸先生,教 室 の諸先輩,諸 兄 に深謝 します.

参 考 文 献

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胃炎および胃潰瘍の組織化学的研究 821

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竹 本 論 文 附 図 説 明

Fig. 1. Gastritis chronica(AIP), gastritisに よ りeuperf. epithet附 近 の 毛 細 血 管(↑)に 活 性 が 生 ず る.

(4×10)

Fig. 2. Int, metaplaeia (AlP), Int. metaplasia(↑)に 時 に 活 性 が み られ る. (5×4)

Fig. 3. Gastritis chronica (AlP),多 くの リ ンパ 濾 胞 の 周辺 部(↑)に 環 状 の 活 性 が み え る. (5×4)

Fig. 4. Ulcuerand (AlP),潰 瘍底 の 肉 芽 組 織 に 強 い活 性 が 認 め られ,辺 縁 部 の 粘膜 下 に 横 行す るAlP陽 性

の毛 細 血 管 が み え る. (5×4)

Fig. 5. Ulcusboden (AIP),時 に は 潰 瘍 底 の 肉芽 組 織 に も活 性 を欠 くが,毛 細 血 管 には 強 い活 性 が あ り,潰

瘍 底 に直 角 に走 行 して い る. (5×4)

Fig. 6. Ulcusbodenか らgranulation (AlP),し ば しば 肉芽 組 織 にAIP活 性 陽 性 で あ る. (5×4)

Fi9. 7. Gaat . hypertroph. (AcP), Gaet. hypertroph.の 部 で はAcP活 性 は 軽 度 に増 強 す る. (5×4)

Fig. 8. Ulcue vent. (AcP),肉 芽 組 織 は 軽 度 の 活 性 を 示 す .再 生 腺 管 は 強 い 活 性 を示 す. (5×4)

Fig. 9. Grit. hypertroph . (β-E8t), Gast,. hypertroph.の 胃底 腺 深 部 に強 い活 性 が み られ る.粘 膜 附 近 の 平

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822 竹 本 茂

滑 筋(↑)は 炎症 に よつ て 強 い 活 性 を示 す. (5×4)

Fig. 10. Uleus vent. (β-Eet), Ulcuerandのatrophicな 腺 管(↑)に も 深 部 に 小 部 分 活 性 が 認 め られ るが

atrophicで な い部 分 の腺 管(↑)で は 比 較 的 広 範 囲 に 活 性 を示 す. (5×4)

Fig. 11. Ulcuerand (β-Eet),一 般 に 肉 芽 組織 は ほ とん ど 陰 性 で あ る が,肉 芽 組 織 に 取 囲 まれ た 平 滑 筋組 織

に は 強 い 活 性 が み られ る. (5×4)

Fig. 12. Int. metaplaeia (AmP), Int. metaplasiaに 活 性 が 認 め られ る. (5×4)

Fig. 13. Ulcus vent. (AmP),肉 芽 組 織 に 弱 い 活 性 が 認 め られ る .潰 瘍 辺 縁 部 の 粘 膜(↑)に も活 性 が 認 め

られ る.こ れ はH. E.染 色 標 本 で 検 討 す る とInt. metaplasiaで あ る. (5×4)

Fig. 14. Gast. chronica (β-Gl),壁 細 胞 に 強 い活 性 を 示 す. Superf. epith.も 炎症 の つ よい 部 分 で は 活 性 が

つ よ い. (4×10)

Fig. 15. Ulcusrand (β-Gl),潰 瘍 辺 縁 部 の 粘膜 上 皮 は 強 い 活 性 を示 す . (5×4)

Fig. 16. Ulcusboden (β-Gl),潰 瘍 底 の 肉 芽 組 織 は 弱 い 活 性 を示 す .表 面 の 壊 死 層 に は や や 強 い 活 性 が み ら

れ る.(5×4)

Histochemical Studies on Enzyme Activities in Gastritis

and Stomach Ulcer

Part 1 Hydrolytic enzymes

By

Shigeru TAKEMOTO

First Department of Surgery, Okayama University Medical School, Okayama, Japan.(Director: Prof. Sanae TANAKA)

AUTHOR'S ABSTRACT

Using the human stomach tissues resected at the operation for gastric ulcer and gastritis,

histochemical studies were carried on five kinds of hydrolysates such as AlP, AcP, beta-

Est, AmP and beta-Gl and the following results were obtained.

1. In gastritis the AlP activity in vascular endothelial cells has been observed even in

those of the capillary blood vessels of the stomach mucosa.2. In the case of atrophic gastritis the activity of AcP, beta-Est and beta-Gl are

somewhat decreased, while there can be seen no activity of ALP nor of AmP.3. In hypertrophic gastritis the activity of AcP, beta-Est and beta-Gl in the stomach

mucosa is slightly elevated, but there can be observed no activity of A1P and AmP.

4. While there can be observed a marked activity of AlP in the neoplasm at the fundus

of gastric ulcer, the activity decreases as there occurs hyaline degeneration, and the regene

rated blood capillary vessels in this regenerated area run perpendicularly to the ulcer base. In

the stained specimens of these tissues from such a region there can be detected a slight activity

of AcP and beta-Gl, but no activity of beta-Est, while that of AmP can be seen occasionally.

5. In the regenerated mucosal gland ducts in the peripheral area of ulcer the activity

of AcP, beta-Est and beta-Gl is found to have increased.

6. In the case where the tissue has fallen into a degenerated necrotic state the activity

of everyone of these hydrolysates is increased.

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胃炎および胃潰瘍の組織化学的研究 823

7. In the area of intestinal metaplasia, all these enzymes show strong activity, resembling that in the villi of duodenum.

8. In those smooth muscles adjacent to inflammatory region, the activity of beta-Est is specifically increased.

9. The activity of AcP and beta-Gl of the epithelial cells in the area with marked cell infiltration is higher than in those epithelial cells located in other regions.

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胃炎および胃潰瘍の組織化学的研究 825

竹 本 論 文 附 図

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竹 本 論 文 附 図