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13
6/28/2009 1 部『中国で 中国で○○ ○○は? Part 4 ? Part 4(最終回) (最終回) 部『応用言語学 応用言語学』 土曜倶楽部第178回例会(2009 土曜倶楽部第178回例会(2009//6 6//26) 26) 1 明海大学 明海大学 星( (REN, Xing REN, Xing)) z 留学生活 z 意識変化 部『中国で 中国で○○ ○○は? Part ? Part 4』 2 z カルチャーショック z 日本語と日本文化 z 名前文化 z z 安全ベルト 留学生が帰国してからやる「バカ」なこと 留学生が帰国してからやる「バカ」なこと 3 z 信号 z 「ありがとう」 z 値引き交渉 z トイレットペーパー z 応用言語学(applied linguistics)とは z 応用言語学の研究史 z 応用言語学の研究分野 部『応用言語学 応用言語学』とは とは 4 z 博士論文 実験音声学 音響分析入門 言語と脳 脳波解析入門 応用言語学とは何か 応用言語学とは何か z 理論言語学(theoretical linguistics言語構造をコントロールする本質的な原理・規則を構 築することを目的とする。 応用言語学( li d li i ti 5 z 応用言語学(applied linguistics言語に関連する人間行動の諸科学研究をマクロ的 にまとめた分野である。すなわち、言語理論も応用し て、幅広い意味でのさまざまな言語行動の分析を行 い、人間の言語行動によって立つ原理・規則を発見 しようとするものである。 応用言語学の研究分野 応用言語学の研究分野 z 母語・第2言語・外国語の教育 教授法理論、指導法、誤り分析、言語テスト z 言語獲得・言語習得・言語理論 母語の獲得、第2言語習得、言語喪失、中間言語、構造 言語学、生成文法 z 言語と社会・文化 6 社会言語学、語用論、言語人類学 z 言語と言語の接触、多言語使用、グローバル化 対照言語学、ピジン(pidgin)、クレオール(creole)、2言 語使用(bilingualism)、国際語としての英語(English as international language)、ダイグロシア(diglossiaz 言語と人間のコミュニケーション行動 異文化間コミュニケーション、ノンバーバル・コミュニケー ション、スピーチ・コミュニケーション、通訳・翻訳研究

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6/28/2009

1

第第ⅠⅠ部部『『中国で中国で○○○○はは? Part 4? Part 4(最終回)(最終回)

第第ⅡⅡ部部『『応用言語学応用言語学』』

土曜倶楽部第178回例会(2009土曜倶楽部第178回例会(2009//66//26)26)

11

明海大学明海大学任任 星星((REN, XingREN, Xing))

留学生活

意識変化

第第ⅠⅠ部部『『中国で中国で○○○○はは? Part ? Part 44』』

22

カルチャーショック

日本語と日本文化

名前文化

安全ベルト

留学生が帰国してからやる「バカ」なこと留学生が帰国してからやる「バカ」なこと

33

信号

「ありがとう」

値引き交渉

トイレットペーパー

応用言語学(applied linguistics)とは

応用言語学の研究史

応用言語学の研究分野

第第ⅡⅡ部部『『応用言語学応用言語学』』とはとは

44

博士論文

実験音声学

音響分析入門

言語と脳

脳波解析入門

応用言語学とは何か応用言語学とは何か

理論言語学(theoretical linguistics)言語構造をコントロールする本質的な原理・規則を構築することを目的とする。

応用言語学( li d li i ti )

55

応用言語学(applied linguistics)言語に関連する人間行動の諸科学研究をマクロ的

にまとめた分野である。すなわち、言語理論も応用して、幅広い意味でのさまざまな言語行動の分析を行い、人間の言語行動によって立つ原理・規則を発見しようとするものである。

応用言語学の研究分野応用言語学の研究分野

母語・第2言語・外国語の教育

教授法理論、指導法、誤り分析、言語テスト

言語獲得・言語習得・言語理論

母語の獲得、第2言語習得、言語喪失、中間言語、構造言語学、生成文法

言語と社会・文化

66

社会言語学、語用論、言語人類学

言語と言語の接触、多言語使用、グローバル化

対照言語学、ピジン(pidgin)、クレオール(creole)、2言語使用(bilingualism)、国際語としての英語(English as international language)、ダイグロシア(diglossia)言語と人間のコミュニケーション行動

異文化間コミュニケーション、ノンバーバル・コミュニケーション、スピーチ・コミュニケーション、通訳・翻訳研究

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6/28/2009

2

言語と人間の心理

心理言語学、認知言語学

言語と脳

脳神経科学、言語障害

言語とコンピュータ、教育機械

コーパス言語学 計算言語学(コンピュータ

77

コ パス言語学、計算言語学(コンピュ タ言語学)、機械翻訳、教育工学

辞書や語彙の研究

辞書学、語用論

言語と政治、経済、社会

言語政策、言語計画

研究分野の3つの円研究分野の3つの円

母語の獲得中間言語第2言語習得

外国語教育

88

認知言語学心理言語学社会言語学コーパス言語学辞書学語用論

誤り分析

明治~大正、昭和初期(萌芽)

英独仏和辞書→辞書学

1945~1960(勃興期)University of Michigan, University of Edinburgh国際応用言語学会(AILA 1949)

応用言語学研究の歴史応用言語学研究の歴史

99

国際応用言語学会(AILA、1949)

大学英語教育学会(JACET、1962)日本

発展と拡大(1970~2000年代)Noam Chomsky:理論言語学、生成文法

米国応用言語学会(AAAL、1977)

TESOL(Teachers of English to Speakers of Other Languages,1967)

日本語教育学会(1962)

各分野の研究、分野間の研究

→細分化 多様化

応用言語学研究の未来応用言語学研究の未来

1010

→細分化、多様化

言語行動の本質→脳のメカニズム

問題点

どの時点で2言語使用教育を始めるのか

教師が2言語使用者であるのかどうか

生徒が2言語使用者であるのか

授業は、それぞれの言語でどのくらいなされるか

教育の最終目的は 2言語使用者か単一言語使用者か

2言語使用教育(2言語使用教育(bilingual educationbilingual education))

1111

教育の最終目的は、2言語使用者か単 言語使用者か

付加的2言語使用(additive bilingualism)

保持型2言語使用教育(maintenance bilingual education)

サブマージョン・プログラム(submersion program)

除去的2言語使用(subtractive bilingualism)

イマージョン・プログラム(immersion program)

日本語学習者のモーラ認知に関する研究日本語学習者のモーラ認知に関する研究

博士(応用言語学)学位論文博士(応用言語学)学位論文

1212

――中国語母語話者と韓国語母語話者を対象として中国語母語話者と韓国語母語話者を対象として――

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3

論文の構成論文の構成

1章 序論

2章 「モーラ」・「音節」・「拍」

3章 モーラの聴覚的認知の特徴

4章 モーラの知覚

1313

4章 モ ラの知覚

5章 モーラの聴取と産出の関係

6章 脳波実験によるモーラ認知の実態

7章 日本語母語話者における外国語の聴取と産出

8章 総論

音韻構造図音韻構造図

〈統語論〉 〈形態論〉

文―――節―――句―――語―――形態素

1414

発話―――韻律句―――韻律語――フット―――音節――モーラ――分節音

〈音韻論〉 (音素)

モーラとはモーラとは

モーラの語源となったラテン語の“mora”(音声学大辞典,1976)は,西洋古典詩のリズム単

位を意味する用語であり,もともと長さの単位として定義されている

1515

として定義されている。

『国語学大辞典』(1995):「モーラ(E.mora;L.mora)とは音韻的長さの単位で,日本語(東

京方言など,以下同様)では,次のいずれかの構造を有し,「拍」とも言う。1つの拍の構造は,一般にCV(C=子音,V=母音,Cはゼロの場合もある)。

研究の動機研究の動機

聴解と会話苦手、相手に意思が伝わらない。

従来の学習⇒文法中心の学習

→会話・発音指導時間短い

1616

清濁の混同、特殊拍の把握力の貧弱さ、聞き手に疲れを感じさせる→上級学習者にもよく見られる。

読む→聴いて話すための日本語

音声教育不十分(指導法、教材)

研究の目的研究の目的

モーラ習得困難原因

知覚と産出の関係

学習者のモ ラ認知の実態

1717

学習者のモーラ認知の実態

モーラ習得方法の改善

日本語教育学会(1991)

「自然な発音・イントネーションで話す」 2位

戸田(2006)

発音クラス受講希望者936名ニーズ調査

「正確な発音・自然な発音で話したい」ー80%

ニーズ調査ニーズ調査

1818

正確な発音 自然な発音で話したい」 80%

特に、上級~超上級レベルー87%

アジア系の学習者

・「日本人のような発音」

・「外国人だと気づかれない発音」

・「特殊拍」(促音、撥音、長音)

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4

文化庁(1971):英語母語話者、中国語母語話者 、朝鮮語母語話者及びタイ語母語話者について、この特殊拍の習得の困難が指摘されている。

Takebayashi(1992):英語を母語とする日本語学習者の場合 特殊拍に関して留意すべき点を上

特殊拍習得の困難特殊拍習得の困難

1919

習者の場合、特殊拍に関して留意すべき点を上げている。

野元(1990):全体としては易しいとされる日本語音声の中で、日本語特殊拍については、仮名書きに代表される表記法との関連と音韻的音節としての意識の強さを指摘しつつ、習得が困難な点としてあげている。

大坪(1990):拍感覚の問題として特殊拍の聴き取りや発音の困難を捉え、この特殊拍の聴き取りや発音の問題は、学習者がかなりの上級者になっても、困難な印象を伴ったまま、なかなか改善されない。

戸田(2003):特殊拍の習得は母語に関わらずが

2020

困難であることがわかる。

研究方法研究方法

対象者

中国人日本語学習者

韓国人日本語学習者

認知実験 傾向分析 指導法

2121

認知実験→傾向分析→指導法

認知→知覚、記憶、思考、言語、学習、意識などの認知活動を総称

(日本語教育学事典、2005:p.546)

意識 ① 言語 ② 神経

パルス ③ 音声波 ④ 神経

パルス ⑤ 言語 ⑥ 意識

→ 言語中枢 → 運動中枢 → 音声器官 → 聴覚器官 → 聴覚中枢 → 言語中枢 →

2222

音声言語による情報の伝達の過程(藤崎・杉藤,1977:p.67より一部修正)

ディクテーション

音声教育聴取

モーラ

2323

知覚(促音)

認知実態(脳波実験)

モ ラ認知

聴取&産出

①①聴取実験聴取実験CVCV型、CVC型(頭高型)

母語

母方言男性(名)

女性(名)

合計(名)

中北方方言(CN) 4 10 14

2424

中国語

北方方言(CN) 4 10 14

南方方言(CS) 8 8 16

合計 12 18 30

韓国語

ソウル方言(KN) 4 11 15

釜山方言(KS) 5 10 15

合計 9 21 30

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5

まとめまとめ

中国語母語話者

CVCV型: 語末長音+>促音+>語中長音+

VCV型: 語末長音+=促音+>語中長音+

韓国語母語話者

CVCV型 促音+ >語末長音+>語中長音+

2525

CVCV型: 促音+ >語末長音+>語中長音+

VCV型: 語末長音+>促音+>語中長音+

母方言による差がある。

2626

ディクテーションの過程の概略(西端1998 )

②②ディクテーションディクテーション

「タータ」,「タンタ」,「タッタ」,「タタ」

平板型,頭高型

①単語レベル

②文レベル 「これは と読みます。」

2727

被験者 中国語 韓国語 合計

Ⅰグループ 10 10 20

Ⅱグループ 10 10 20

Ⅲグループ 10 10 20

合計 30 30 60

実験計画実験計画

特殊拍の有無判断が正しくディクテーションできたか。

特殊拍に後続する子音が正しくディク

2828

特殊拍に後続する子音が正しくディクテーションされたか。

アクセント型の違いによって,ディクテーションの誤りに差があるか。

結果

学習者は特殊拍に後続する子音を濁音に聴取される傾向がみられた。これは,特殊拍の有無に関わらず,C2 の音声的特徴によって,特殊拍の有無を判断するのではないかと思う。

アクセント型の違いによる差も確認された 学

2929

アクセント型の違いによる差も確認された。学習者は母語に関わらず,同じような傾向を示している。

単語レベル:平板型>頭高型

文レベル:平板型<頭高型

ディクテーションに見られる複合的問題点

中国語母語話者も韓国語母語話者も特殊拍に後続する子音(清音)→濁音 *長音

教授法,例えば「タタ」の場合,語頭・語末とも同じ発音 あると教え る が 般的 ある

3030

同じ発音であると教えているのが一般的であるが、実際に日本語母語話者が発せられた自然発話では,語頭と語中及び語末での音声的特徴が違う。その矛盾から学習者が語末での清音を濁音に聴取されると思われる。

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6

③促音の知覚

実験①②~促音・長音>撥音

2モーラ(非促音)と3モーラ(促音)に限定した。

日本語の促音は子音が /p,t,k/ のものに現れる

⇒/t/ + /a/

3131

平板型&頭高型

単語レベルと文レベル

文レベル:「これは と読みます。」

/tata/-/taQta/

後続子音種

促音の現れる位置合計 %

第2拍目 第3拍目 第4拍目 第5拍目 第6拍目

閉鎖音 198 17 15 4 2 236 71.08

破擦音 19 1 0 1 0 21 6 33

日本語教育基本語彙にみられる促音語後続子音の調音法別の個数

3232

破擦音 19 1 0 1 0 21 6.33

摩擦音 74 1 0 0 0 75 22.59

合計 291 19 15 5 2 332 100.00

% 87.65 5.72 4.52 1.51 0.60 100.00

子音促音の位置

合計 (%)第2拍 第3拍 第4拍 第5拍 第6拍

p 31 7 1 0 0 39 11.75p 6 0 1 0 1 8 2.41t 60 8 7 0 0 75 22.59t 13 1 0 1 0 15 4.52ts 5 0 0 0 0 5 1.51

日本語教育基本語彙にみられる促音語後続子音別の語数

3333

k 73 1 5 4 0 83 25.00k 26 1 1 0 1 29 8.73d 1 0 0 0 0 1 0.30

d 1 0 0 0 0 1 0.30s 37 0 0 0 0 37 11.14 37 1 0 0 0 38 11.45 1 0 0 0 0 1 0.30

合計 291 19 15 5 2 332 100.00% 87.65 5.72 4.52 1.51 0.60 100.00

単語レベル:

4種類( /tata/ ベース平板型と頭高型+/taQta/ ベース平板型と頭高型)×24段階(閉鎖持続時間の長さ)×5回=480音声

分レベル:

4種類(/tata/ ベース平板型と頭高型+/taQta/ ベース平板型と頭高型)×24段階(閉鎖持続時間の長さ)×5回

3434

板型と頭高型)×24段階(閉鎖持続時間の長さ)×5回=480音声

3535

40 0%

60.0%

80.0%

100.0%

1taQta

1tata

3636

0.0%

20.0%

40.0%

90 100 110 120 130 140 150 160 170

促音判断境界値測定の一例

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7

被験者

日本語母語話者

(東京方言話者,大学生・大学院生)10名

中国語母語話者

級学 者 学 学院

3737

(上級学習者,大学生・大学院生)10名

韓国語母語話者

(上級学習者,大学生・大学院生)10名

a1

160.00

140.00

韓国語中国語日本語

非促音語(単語)

3838tata0180.00160.00140.00120.00100.0080.00

tata

120.00

100.00

a1

160.00

140.00

韓国語中国語日本語

促音語(単語)

3939taQta0

160.00140.00120.00100.00

taQ

ta

120.00

100.00

a1

120.00

110.00

韓国語中国語日本語

非促音語(文)

4040tata0140.00130.00120.00110.00100.0090.00

tata 100.00

90.00

80.00

ta1

110.00

105.00

100.00

韓国語中国語日本語

促音語(文)

4141taQta0125.00120.00115.00110.00105.00100.00

taQ

t

95.00

90.00

85.00

結果

非促音語・促音語から

無声破裂音/t/の位置

語頭・語中→音声的特徴が異なる。

中国語母語話者:

4242

閉鎖音に後続する子音の音声的特徴による判断。

韓国語母語話者、日本母語話者:

閉鎖持続時間長で判断。

アクセント型による影響

母語と関係なく、頭高型>平板型

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8

④聴取と産出

2モーラ語:「オパ」,「ギャプ」

3モーラ語:「タクー」,「エッキ」

日本語母語話者10名(男4名 女6名)

4343

日本語母語話者10名(男4名,女6名)

中国語母語話者10名(男2名,女8名)

韓国語母語話者10名(男2名,女8名)

中韓2言語使用者 10名(男3名,女7名)

JLPT2級以上

産出実験方法

ⅰ:調査語を2回ずつ被験者に聴かせ,被験者にリピートさせ,その音声を録音した。

ⅱ:調査語が書かれたカードを被験者にみ

4444

ⅱ:調査語が書かれたカ ドを被験者にみせて,調査語を2回ずつ読んでもらい,その発話を録音した。実際にデータとして使ったのは2回目の発話である。

ⅲ:調査語を含む句を読んでもらい,その発話を録音した。

「これは です」である。

4545

日本語母語話者 e Q kiⅰ 90-158 217-342 105-184

ⅱ 88-139 207-375 111-188

ⅲ 80-134 154-247 99-157

標準範囲 80-158 154-375 99-188

結果

4

6

8

10

12

14

16

18

20 C

K

CK

4646

0

2

4

知覚 産出 知覚 産出 知覚 産出 知覚 産出

促音(+) 促音(-) 長音(+) 長音(-)

促音(+):知覚・産出⇒ K > CK > C

長音(+):知覚⇒ C > K > CK

産出⇒ K > C > CK

⑤脳波実験による日本語モーラ認知の実態

実験①②③④→聴取と産出の関係、

聴取→神経パルス(脳内処理)→産出

4747

聴取能力の向上が必ずしも発音の正確さには結びつかない(戸田2003)→認知過程に何らかの原因

言語脳科学の研究成果は、直接的とは言わずとも第二言語習得研究と外国語教育学に影響を与えるものである。

創造・予想・判断

体性感覚野(認識・行為)

4848脳の四つの領域

聴覚野、言語認識・音楽認知・記憶

視覚野

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9

脳波とは

生きている人間の頭部に2つの電極を貼り付けると、その間にわずかな電位差(電圧)が生じる。その大きさは数十μV(1μV=百万分の1V)に過ぎないが

4949

μV(1μV=百万分の1V)に過ぎないが、脳波計(差動増幅器)で数万倍に増幅すると、リズムを持った波として観察できる。これが脳波である。脳波は、その固体が生きている限り絶え間なく自発的に出現する(入戸野・堀2000)

5050脳波測定の原理図

5151大脳皮質と電極

脳機能測定方法脳機能測定方法

電気生理学的方法

脳波計測法(EEG:electro encephalo graphy)

脳磁場計測法(MEG:magnetonc ephalo graphy)

事象関連電位(ERP:event related potential)

5252

事象関連電位( p )

事象関連磁場(ERF:event related field)

血流力学的測定方法

機能的磁気共鳴画像法

(fMRI:functional magnetic resonance imaging)

ポジトロン画像法(PET:positron emission tomography)

事象関連電位(Event-Related Potential:ERP)

光や音、あるいは自発的な運動といった特定の事象に関連して生じる一過性の電位変動である、自発脳波に重畳して記録される。意識を持って活動する人間から安全に記録できる。従来の行動指標に加え を測定する とにより 外からは観察

5353

に加えてERPを測定することにより、外からは観察できない心理活動に関する様々な知見が得られる。ERPは脳活動の指標ではあっても、脳で生じるすべての神経活動を反映するわけではない。ERPが記録できるのは、頭皮上で観察できる電場を形成するように配置されたある程度大きな神経集団が一斉に活動するときだけである。

5454

脳波計Electro-Cap

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10

5555

国際10/20法:モントリオール大学のジャスパー(Jasper)により提唱

された方法なので,モントリオール法あるいはジャスパー法といわれることもある。これは,頭部を計測することによって導出部分を割り出していく方法で,鼻根(Nasion)と後頭結節(Inion)間,および左右両耳介前点(または外耳孔)間をそれぞれ計測し,それを10%および20%で均等間隔に分割していくものである。計測によって電極位

置を定めるので,何度検査をしても,あるいは検者が代わっても,必ず同一部部位に付けることができて,位置に関して再現性のある導出結果が得られる(末永・岡田2004)。

5656実験室配置図

脳電位トポグラフィー脳電位トポグラフィー

5757

P1

N1

P2

N2

P3

P1 非特殊投射系の活動に関するところから、これより時間的に先行するいわゆる中間潜時反応との関連が深い。さらに、聴覚皮質の反応とも言われており、要するに卑近な表現を用いれば、聞こえていれば必ず出る反応。

N1/P2 基本的には聴覚皮質の反応。ただし、内因性の成分が重畳しており、語音判断の根拠となる N1とP2は 通常ペア で出現することも知られ

5858

る。N1とP2は、通常ペアーで出現することも知られている。また、睡眠時には出現しないところからも、高次機能の認知と関わることが確かめられている。

N2 Attentionと高い相関を示す。従って、言語音のような対象では、特に注意が傾けられると大きな振幅を持って出現しやすい。

P3 一般的な思考、判断等の高次機能を反映。

595959 6060

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実験手順(収録)

被験者をシールドルーム内の椅子に座らせ、

国際10-20法に基づくエレクトロ・キャップ

(Electro-Cap International 社製、ECI-2)を装着。

6161

実験はノーマルによる Silent Repetition によった。各刺激音の提示間隔は2999~3000mesc 。

再生音圧は65dBSL(音圧計:リオン社製・型式NL-14)

調音時間長調音時間長

調音時間長(msec) 刺激音

平板型 頭高型

taRta 584 483 taNta 588 517

6262

taNta 588 517 taQta 587 553 tata 454 501

tatata 586 575

男性(22歳)、東京都世田谷区

被験者被験者

母語 性別 年齢 利き手 職業 言語形成期

女 22 右 大学生 横浜市 日本語 男 22 右 大学生 横浜市

6363

女 26 右 大学院生 長春市 中国語 男 31 右 大学院生 長春市 女 28 右 大学院生 ソウル市 韓国語 男 36 右 大学研究員 ソウル市

手順手順

刺激音をランダムで聞いてもらい

「頭の中で繰り返すように」指示

リラックスした状態

課題を聞く際にERP波形に影響を及ぼす要因

6464

課題を聞く際にERP波形に影響を及ぼす要因となる行動などについて被験者に注意

視線、目、口、まばたきは、体の動きなど

取り込みは単発課題、加算平均回数は35回

加算平均回数加算平均回数

脳波の分野→目的の違いに応じて

さまざまである。

課題に対する被験者の負担を考慮

6565

明瞭な波形を得るため→35回

数十回の脳波データを特定の事象の開始時点に揃えて、時間ポイントごとに加算平均することにより

→脳電位を抽出

刺激音の選定刺激音の選定

平板型、頭高型(城生1997)

子音⇒/t/ + 母音⇒ /a/

音素の種類:脳内での反応時間が異なる。

6666

/p/>/t/> /k/ (林・筧1989,1990)

/pa/⇒ /ta/

/taRta/ , /taNta/ , /taQta/ ,

/tata/ , /tatata/

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音素・音節ターゲット毎の反応時間音素・音節ターゲット毎の反応時間(林・筧(林・筧1989 1989 ))

6767

解析装置と方法

解析ソフトはATAMAP(キッセイコムテック社)

被験者の瞬目などによるアーチファクトが発生したため 取り込みソフトEPLYZERを用いて

6868

したため、取り込みソフトEPLYZERを用いてRAWデータ再加算を行った。

次に、解析ソフトATAMAPの波形とトポグラフィーを摺り合わせ、ソフト搭載のマーキング機能で陰性波・陽性波で最も色濃くトポグラフィーが反応したところでカーソルを立てた。

データ処理法データ処理法

ピーク潜時(PL ,Peak Latency)ピーク間潜時(IPL ,Inter Peak Latency)トポグラフィー上で読み取れる電圧の相対差をもとに情報処理。

6969

差をもとに情報処理。① N1、P2、N2のピーク潜時② 「P2-N1」、「N2-P2」のピーク間潜時③ N1~P3のピーク潜時相加平均値④ N2、P3の電圧情報⑤ アクセント型

「モーラの観点」、「音節の観点」特殊拍の有無により、「1モーラ」の増減

いずれの被験者も3音節である/tatata/を聴いたときの脳神経活動のみが他とは異なる特徴が見られた。学習者はもとより 日本語母語話者でもモーラ数より

結果結果

7070

学習者はもとより、日本語母語話者でもモ ラ数より、音節数が強く認知されていると考える。N2の潜時、N1~P3潜時平均値日本語>韓国語>中国語P3:男性被験者全員頭高型の電圧が高い。

特殊拍→音節?特殊拍の認知スタイル長音の認知が難しい?

⑥⑥日本語母語話者の外国語習得日本語母語話者の外国語習得

中国語の学習

声調の聴取・発音

第3声、第2声

韓国語の学習

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韓国語の学習고맙습니다/go map sum ni da ⇒「マプ」감사합니다/gam sa ham ni da ⇒「ハム」

根強い拍感覚同じモーラ内では上がったり下がったりしない。

日本語学習者におけるモーラの聴取実態には「語中長音+」,「語末長音+」,「促音+」の3つの誤聴パターンがある。

日本語学習者は特殊拍に後続する子音の音声的特徴によって,特殊拍の有無を判断する。

結論結論

7272

徴 , す

脳神経レベルでの認知では,「モーラ」より「音節」がERPに及ぼす影響が大きい。その反応は、頭高型が平板型より顕著に現れる。

日本語学習者は拍感覚が欠如しているため、モーラの聴取や産出に大きな問題となる反面、日本語母語話者には、拍感覚が妨げになり、他の言語に対する聴取及び産出に影響を及ぼす。

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ご清聴ありがとうございます☺

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