肝臓がんと薬物治療pharm-hyogo-p.jp/hp01/kanjakyousitu/sk12.pdf④new fp 療法...
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肝臓がんと薬物治療
薬剤部
本日の内容 肝細胞がんに対する薬物治療 (1)肝動注化学療法 ① Low dose FP 肝動注療法 ② 5-FU 肝動注 + IFN-α 療法 ③ FP 肝動注 + IFN-α 療法 ④ New FP 療法 (2)分子標的治療薬 ネクサバール錠について
(1)肝動注化学療法
主に肝臓以外の臓器へ癌が転移している場合や血管へ腫瘍が拡がっている場合など、手術療法や内科的局所療法が行えない場合に選択
脚や下腹部の動脈からカテーテルを挿入し、皮膚の下に留置したリザーバーから肝臓内に直接抗がん剤を注入する方法 (インターフェロンα 製剤を併用することもある)
カテ-テル
抗がん剤
肝臓
①Low dose FP 肝動注療法
第1週
(1~5日目)
第1週
(6・7日目) 第2~4週
5-FU リザーバー動注 なし (第1週と同様)
シスプラチン リザーバー動注 なし (第1週と同様)
・使用する抗がん剤「5-FU」「シスプラチン」
・1コース4週間で効果があれば1~6コースを
1.5ヶ月~2ヶ月毎に行います
・インターフェロンα隔日投与で併用する場合があります
1コースの投与スケジュール
② 5-FU 肝動注 + IFN-α 療法
第1週
(1~5日目)
第1週
(6,7日目)
第2週
(8~12日目)
第2週
(13,14日目)
第3週
第4週
5-FU リザーバー動注 なし リザーバー動注 なし なし
イントロンAまたは オーアイエフ
注射 週3回×4週間注射します
・使用する抗がん剤「5-FU」
「インターフェロンα製剤」
・1コース4週間で効果がなくなるまで行います
1コースの投与スケジュール
③FP 肝動注 + IFN-α 療法
第1週
(1~5日目)
第1週
(6,7日目)
第2週
(8~12日目)
第2週
(13,14日目)
第3週
第4週
5-FU リザーバー動注 なし リザーバー動注 なし なし
シスプラチン 1日目のみ
リザーバー動注 なし
8日目のみ
リザーバー動注 なし なし
イントロンAまたは オーアイエフ
注射 週3回×4週間注射します
・使用する抗がん剤「5-FU」
「シスプラチン」
「インターフェロンα製剤」
・1コース4週間で効果がなくなるまで行います
1コースの投与スケジュール
インターフェロンα と抗がん剤併用 による相乗効果
・がん細胞増殖抑制効果の増強 ・細胞周期の遅延作用 ・血管新生抑制効果
④New FP 療法
・使用する抗がん剤「5-FU」
「アイエーコール+リピオドール」
(アイエーコール:シスプラチンを肝動注用に 粉末化した製剤) ・1コース3週間で効果がなくなるまで行います
1コースの投与スケジュール
第1週
(1~5日目)
第1週
(6,7日目)
第2週
(8~12日目)
第2週
(13,14日目) 第3週
5-FU リザーバー動注 なし リザーバー動注 なし なし
アイエーコール
1日目のみ
リザーバー動注 なし
8日目のみ
リザーバー動注 なし なし
肝動注化学療法の副作用とその対策
シスプラチンによる副作用と対策 5-FUによる副作用と対策
好中球減少(78%)
好中球低下により感染症を合併した場合、肝不全となる場合がある
⇒好中球減少の早期に減量・休薬・G-CSF製剤を投与
血小板減少(80%)
門脈圧亢進による胃食道静脈瘤などの出血しやすい病変がある場合、血小板低下による消化管出血は肝性脳症を誘発する場合がある
⇒慎重に経過観察し、早期に対応する
悪心・嘔吐(40%)
摂食低下によるアルブミン低下により〔腹水貯留→摂食量の低下〕の負のサイクルに陥りやすい
⇒急性期対策としての5-HT3受容体拮抗薬やアプレピタント等の予防投薬、遅延性(2.3日後)嘔吐にはステロイドやメトクロプラミドを投与
口内炎などの粘膜障害
摂食低下によるアルブミン低下により〔腹水
貯留→摂食量の低下〕の負のサイクルに陥りやすい
⇒口腔内の清潔、口腔ケアによる口内炎予防
肝細胞がんでは肝硬変を合併していることが多いため、骨髄抑制、消化管出血、 腹水貯留に対する合併症には特に注意が必要
動注化学療法に特有の合併症
・消化管粘膜障害
・動脈炎、肝動脈閉塞
・リザーバー感染・閉塞
⇒造影検査により早期発見し対処する
インターフェロンの主な副作用
発現時期 よくみられる副作用
初期症状 (1週間以内)
中期症状 (2~12週間)
後期症状 (3ケ月以降)
検査値異常 (治療期間中)
インフルエンザ様症状(発熱:95.9%、悪寒、 全身倦怠感、頭痛:90%、関節痛など)、 食欲不振、皮膚(発疹、かゆみなど)
全身症状(微熱、倦怠感(93.7%))、 消化器症状 (腹痛、吐き気、便秘、口内炎など)
脱毛
貧血(ヘモグロビン減少:87.4%)、 血小板減少、白血球減少:96.7% 肝機能障害(ASTやALT異常)
(2)分子標的治療薬
がん細胞において増殖や病気の進行に関わる遺伝子やたんぱく質などの分子の働きを抑えることによりがんの進行を抑える経口治療薬
ネクサバール錠200mg
ネクサバール錠について
①対象となる人とは? ②飲み方は? ③副作用は? ④日常生活で注意することは?
ネクサバール錠について
①対象となる人とは? ・切除不能な肝細胞がん
手術で腫瘍をすべて取り除くことができない
転移があるなど
・肝予備能がChild分類Aの人
ほぼ通常の肝機能を保っており自覚症状が無い
・
ネクサバール錠について
②飲み方は?
通常、1回2錠を1日2回 計4錠
・体の状態によって医師が投与を中止したり、 薬の量を減らすこともあります。 医師の指示に従ってください。 ・飲み忘れたからといって2回分をまとめて 飲まないようにしてください
理由:高脂肪食はネクサバール錠の作用を弱める ことがあるため
ネクサバール錠について
服用上の注意点
高脂肪食をとる場合、食事の1時間前~ 食後2時間までの間は薬の服用は避ける
例)8時に高脂肪食を食べた場合は・・・
ネクサバール錠について
高脂肪食とは? 脂肪分が多く高エネルギー な食物のことをいいます。 約900~1000kcal (脂肪含有量50~60%)
ネクサバール錠について ③副作用は?
(1)皮膚症状 手足症候群(55.2%)発疹(40.7%) 脱毛(36.6%) (2)高血圧(27.6%) (3)消化器症状 下痢(35.2%)食欲不振(14.5%) (4)疲労感(15.9%) (5)呼吸器症状 嗄声(11%) (6)出血(10%) 血便 血痰 鼻血 爪の中の出血
起こりやすい副作用
ネクサバール錠について
③副作用は?
(症状) ・手のひらや足底の皮疹 ・赤く腫れ、皮膚がむけたり、痛みを伴うこともある (特徴) ・服用を休止すれば、症状は改善する ・再び服用を開始できる ・対処方法および予防方法がある
手足症候群
手足症候群の症状と重症度
ネクサバール錠について
(1)硬くなった角質の除去 (2)皮膚の乾燥を防止 ・保湿クリームの塗布 ・就寝時は木綿の手袋や靴下を着用 (3)皮膚に強い刺激を与えることは避ける ・熱いお湯での洗い物や入浴 ・窮屈な靴や身体を圧迫するような衣服の着用 ・長時間立ち続けたり、長い距離の歩行
手足症候群予防のための対処法
ネクサバール錠について ③副作用は?
○心筋虚血 心筋梗塞
○肝機能障害 黄疸
○呼吸器障害 (急性肺障害 間質性肺炎 呼吸困難など)
○発疹 多形紅斑 スティーブンス・ジョンソン症候群などの皮膚症状
その他の注意が必要な副作用
発熱、全身に発疹、眼粘膜の充血や唇、外陰部 などの粘膜にただれが伴う皮膚症状
→すぐに医療スタッフに連絡しましょう
ネクサバール錠について
④日常生活で注意することは? ・女性の方は妊娠しないように気をつけてください。 胎児に影響を与えるおそれがあります。
・血圧の測定を定期的に行ってください。 ・高脂肪食の摂取に注意してください。 ・健康食品の中にはネクサバール錠の作用に影響を与え る可能性があります。服用するときは必ず主治医に相 談してください。
お薬の治療効果を高めるために
効果
副作用 (望ましくない症状)
・使い方や注意点をよく理解しましょう ・疑問点や気になることは気軽に相談してください