超長期住宅先導的モデル事業 の意義と今後の取組への期待2...
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超長期住宅先導的モデル事業超長期住宅先導的モデル事業
の意義と今後の取組への期待の意義と今後の取組への期待
超長期住宅先導的モデル事業評価委員長超長期住宅先導的モデル事業評価委員長
京都大学名誉教授京都大学名誉教授
巽巽 和和 夫夫
超長期住宅シンポジウム超長期住宅シンポジウム 2009年1月28日(東京)2009年1月28日(東京)
2月2月 4日(大阪)4日(大阪)
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「200年住宅」とは
超長期に耐用できる質の高い住宅ストックの形成を目指した総合的な取組み。
スクラップ&ビルドの社会から、持続可能な社会への大きな転換を図るという目標。
「住生活基本法」の制定を契機とする住宅政策の「量」から「質」への転換が背景。
「200年住宅」のアピール性
「200年」というネーミングの話題性
住宅政策が重要な政治課題に登場したことの意義
政策実施の迅速性と予算規模の大きさ
1.「200年住宅」への取組み1.「200年住宅」への取組み
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住宅政策の大きな転換
「住宅品質確保法」の制定
平成11年6月公布 12年4月施行
① 住宅性能表示制度の創設
② 住宅紛争処理体制の整備
③ 瑕疵担保責任の特例
「住生活基本法」の制定
平成18年6月公布・施行
住宅政策の「量」から「質」への転換
市場重視・ストック重視の政策展開
豊かな住生活の実現のため、基本概念の擁立と到達
目標の設定
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長期耐用住宅研究開発へのあゆみ
-1960年代から-1960年代から
(1) スケルトン住宅の開発・提案
人工土地型集合住宅
長期耐用都市型集合住宅(総プロ研究)長期耐用都市型集合住宅(総プロ研究)
スケルトン・インフィル(SI)住宅
(2) 住宅供給方式の開発からのアプローチ
二段階供給方式住宅
フリープラン賃貸
スケルトン定借(つくば方式)
(3) 建物の技術開発からのアプローチ
システムズ・ビルディング
SPH、KEP、NPS
センチュリーハウジングシステム(CHS)センチュリーハウジングシステム(CHS)参考:「スケルトン住宅とは何か」建設省
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担い手の育成・ビジネスモデルの構築
国
民
の
意
識
改
革
200年住宅・200年住宅の理念
・超長期住宅ガイドラインの策定
建設システム
維持管理システム流通システム
金融システム 基盤・まちなみ
200年住宅ビジョン200年住宅ビジョン
200年住宅ビジョンの全体像のイメージ
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「200年住宅」政策の推進
住宅・建築関連先導技術開発助成事業 平成19年度
住宅履歴情報整備検討委員会 平成19年度
住宅の長寿命化への取組み住宅の長寿命化への取組み
-長期優良住宅の認定基準案--長期優良住宅の認定基準案- 平成20年2月平成20年2月
超長期住宅推進環境整備事業 平成20年度
住宅・建築物「省CO2推進モデル事業」の創設
平成20年度
超長期住宅先導的モデル事業評価委員会(第1回)超長期住宅先導的モデル事業評価委員会(第1回)
平成20年4月平成20年4月
「超長期優良住宅の普及促進法」の制定 平成20年12月
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長期優良住宅の認定基準(基本性能)
① 構造躯体の耐久性
数世代にわたって住宅の構造躯体が使用可能
② 構造躯体の耐震化
大規模な地震の後も、構造躯体の補修による使用が可能
③ 維持管理の容易性
内装・設備について、維持管理が容易
④ 可変性の確保
居住者のライフスタイルの変化に応じて、間取りの変更が可能
⑤ 耐用性能の確保
省エネルギー性能、バリアフリー性能の確保
⑥ 住環境への配慮
地方公共団体の施策に沿った良好な住環境の確保
⑦ 計画的な維持管理
定期的な点検・補修の計画の策定と維持管理履歴の蓄積
⑧ 面積・階高
どの程度の規模を基準とするべきか
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モデル事業の趣旨
「いいものをつくって、きちんと手入れして、長く大切に使う」「いいものをつくって、きちんと手入れして、長く大切に使う」
というストック社会における住宅のあり方について、具体の
内容をモデルの形で広く国民に提示し、技術の進展技術の進展に資す
るとともに、普及啓発普及啓発を図る
「200年住宅」政策の中心的事業
平成20年度~24年度(5年間)の予定
2.超長期住宅先導的モデル事業の発足2.超長期住宅先導的モデル事業の発足
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提案応募件数・採択件数
提 案 部 門第1回 第2回
応募 採択 応募 採択
住宅の新築戸 建 476 24 225*2 26
共同建 31 5 20*2 3
既存住宅棟の改修 29 4 26 7
維持管理・流通等のシステムの整備
48 5 29 8
技術の検証 13 2 8 2
情報提供及び普及 53 (1)*1 18 2
合計 603 40 325 48
第1回募集:4月11日~5月12日 第2回募集:8月1日~9月12日
*1:「技術の検証」に含む *2:「戸建」と「共同建」両部門に重複1件
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提案に関する若干のコメント
(1) 提案者について
新築戸建部門の応募が圧倒的多数。特に在来木造が大多数。
住宅メーカーが総合的提案を中心に高い水準の安定的な実力を示す。研究開発の充実と多年にわたる事業の実績。
工務店などを中心とする地域中小規模の建設業者や宅建業者は、技術・経営の立ち後れをカバーすべく多様な努力。
共同住宅の応募が非常に低迷。デベロッパーと建設業者に技術開発への動機と意欲が希薄か。
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フランチャイズ化やグループ化によるネットワークの形成
① 同業種(主として工務店)の組合組織による全国的ネットワーク。 中央におけるサポート機能
② 地方自治体による事業者サポート体制
③ 異業種の協業的なネットワーク
a.設計事務所と工務店b.工法提案者と工務店c.建材・木材店と工務店
戸建て木造住宅の技術・経営水準の向上のためには極めて好ましい
「維持管理・流通システム」部門等における、他業種の事業者からの参入。住宅産業構造に変化をもたらす。
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(2) 提案の特徴
提案は全体として高い水準
高水準の提案が集団をなしている。その上で先導的に突出した個高水準の提案が集団をなしている。その上で先導的に突出した個別技術を提案したものを評価して採択。別技術を提案したものを評価して採択。
先導的な個別技術の慣用化
先導的な個別技術が公開され、多用され慣用されるようになると先導的な個別技術が公開され、多用され慣用されるようになると「在来的技術」に仲間入り。住宅技術水準全体の向上をもたらす。「在来的技術」に仲間入り。住宅技術水準全体の向上をもたらす。
在来的技術の上手な組み合わせ
在来的技術を上手に組み合わせて、バランスの良い、欠点の少な在来的技術を上手に組み合わせて、バランスの良い、欠点の少ない安定したシステムにまとめることも重要な方向。い安定したシステムにまとめることも重要な方向。
地域に根ざす特性を持つ提案の増加
地域産材の活用、地域の森林・製材組合などとの連携。気候・風地域産材の活用、地域の森林・製材組合などとの連携。気候・風土への特性への配慮、地域人材とのネットワーク。土への特性への配慮、地域人材とのネットワーク。
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提案中に多く現れる先導的個別技術(例示)
外断熱工法 給水さや管工法 木質ラーメン構造
通気工法
高耐久コンクリート
木材防腐・防蟻処理
免震工法
制振工法
プレカット工法
排水ヘッダー工法
床下空間確保
基礎貫通ユニット
点検口設置
エネルギーモニタリング
住宅履歴情報
床・天井先工
逆梁二重床工法
地産地消
買取保障
修繕積立金
金融機関連携
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耐久性
耐震性
管理容易性
可変性
省エネルギー、バリアフリー
面積・階高
維持管理
計画性
住環境
モデル事業提案の多様な特性
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(3) これからの課題
個別技術的先導性は小さいが、総合的に優れた「200年住宅」像の構想。
DIY的アプローチによる維持管理、改修システム。インターネットの活用も。それに対応する建材、家具、建具産業のあり方。
スケルトン賃貸、設備・インフィルのリース・システムのビジネスモデルの検討。
技術・事業の開発力を必要としている地域への支援
モデル事業への応募者の分析による住宅産業の構造的解析。
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スクラップ&ビルド型社会から、サスティナブル社会への大
転換を図るためには、超長期住宅システムを構築するだけではなく、それらに関連する数多くの新しいサブシステムを形成する必要がある。
住宅社会システムの研究開発
既にスタートしている研究開発テーマを除いたいくつかの課題のイメージ
(1) 地域建材・技術の活用と循環型地域経済の形成
(2) 地域に根ざす住まい・まちづくり
(3) 所有・利用・管理・流通システム
(4) 住宅金融・税制システム
3.持続可能な住宅社会を目指して3.持続可能な住宅社会を目指して
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超長期住宅先導的
モデル事業
持続可能の住宅社会構築への取り組み
地域産材・技術活用システム
地域住まい・まちづくり
住宅金融税制
システム
先導的技術開発
住環境整備
省CO2推進モデル
事業
住宅履歴情報整備
所有・利用・管理・流通システム
持続可能型住宅社会
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(1) 地域建材・技術の活用と循環型地域経済の形成
地域住宅文化の振興、循環型地域経済の形成、自然環境の保全、CO2の削減など、多様で総合的な目標の確立。
中・低層集合住宅を含めた、「まちぐるみ木造建築」主義に徹して、国産材を計画的・安定的に利用する。
木材について、林業、製材、流通、建設、リフォームなど、縦のフローの産業システムを構築する。
多種多様な地域産材を建築・住宅用途に開拓する。
和紙、織物、陶磁器、家具、建具和紙、織物、陶磁器、家具、建具
地域間の横の連携を図って、相互の地域建材を利用し合うことで、需要量を拡大し、産業化を図る。
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(2) 地域に根ざす住まい・まちづくり
住まい・まちづくりにおけるフローの創出とストック整備との連携設計、生産、管理、修繕、リフォーム、流通、建材、設備、設計、生産、管理、修繕、リフォーム、流通、建材、設備、
環境、景観、住生活、住教育環境、景観、住生活、住教育
過密・老朽・低質住宅市街地の再生
“外来種”ハウジングの地域化への努力中高層マンション、大規模団地、工業化住宅中高層マンション、大規模団地、工業化住宅
地域に根ざす担い手の育成居住者、NPO居住者、NPO
大工・工務店大工・工務店
建材・設備店建材・設備店
建築士事務所建築士事務所 -- ““まちなか建築家まちなか建築家””
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建材・設備店大工・工務店
建築士事務所
居住者NPO
地域の住まい・まちづくりの担い手
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(3) 所有・利用・管理・流通システム
マンションの超高層化・大規模化に伴う異なる居住者階層の
混合、用途の複合などから、建替え、大規模修繕はもちろん、
経営の困難が予想される。
新しい所有・利用・管理の形態を構築する。
超長期にわたる住宅ストックの存在期間と数世代に区分され
て良好な状態で「住み継ぎ」が行われるための流通と管理の
システム。
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(4) 住宅金融・税制システム
超長期間を対象とする住宅融資制度の創設。高額化する初
期建築費部分をどのようにカバーするか。「住み継ぎ」に関連
づける方法など。
固定資産税等の税制の問題。長期に耐用する優良な住宅が
より高額な課税となる現行制度からの脱却。建築物のうち、
社会資産的性格を持つ部分(スケルトン)を非課税として、私的
資産的な部分(インフィル)によみ課税するなどの新しい税制の
構想。
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50年間に30%減価すると想定。在来住宅初期投資額を「1」、超長期対応初期追加投資を「0.2」、50年毎の追加投資を「0.2」とする。50年毎に建替えた場合の200年間の投資額の合計は、
1×4=4超長期対応住宅を初期投資し、50年ごとに追加投資を行った場合の200年間の総投資額は、1+0.2+0.2×3=1.8
通常住宅(50年)と超長期住宅(200年)の投資・資産変化の比較
1.01.2
0.2
0.840.73
0.65
0.60
0.20.93 0.85
0.20.2
Ⅰ期(50年)
50年間の減価
0.36
Ⅱ期(50年)
50年間の減価
0.31
Ⅲ期(50年)
50年間の減価
0.28
Ⅳ期(50年)
50年間の減価
0.25
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200年住宅の発展を願いつつ200年住宅の発展を願いつつ
おお わわ りり