首都圏の光化学オキシダントに関する...

44
首都圏の光化学オキシダントに関する 調査研究 first/43 純也 東京都環境科学研究所

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Page 1: 首都圏の光化学オキシダントに関する 調査研究...首都圏の光化学オキシダントに関する 調査研究 first/43 星 純也 東京都環境科学研究所

首都圏の光化学オキシダントに関する 調査研究

first/43

星 純也

東京都環境科学研究所

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はじめに 2/43

東京の大気汚染の現状

環境基準設定項目(11項目)のうち基準未達成項目 光化学オキシダント(Ox)、微小粒子状物質(PM2.5)の2項目

東京の大気汚染の中で残された課題

原因物質 光化学オキシダント(Ox):NOx, 揮発性有機化合物(VOC) 微小粒子状物質(PM2.5):ばい煙, SOx, NOx, NH3, VOC 等

VOCはOx、PM2.5双方の原因物質となり、大気汚染問題の解決のためにはVOC対策が不可欠

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本日の講演内容

関東地域でのVOCの移流に関する調査 (横浜市との共同調査)

植物起源VOCに関する調査

北京市との共同調査

3/43

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関東地域でのVOCの移流に関する調査 (横浜市との共同調査)

4/43

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調査目的

光化学オキシダント 大気中で移動する空気塊の中で反応して生成

原因物質が発生した地域とオキシダントが高濃度となる地域が異なる

関東地域内で移流しながら生成しているOxの原因物質であるVOCの挙動を捉える

移流している間にVOCがどのように変化し、Oxの生成にどのように関わっているかを調査

6/43

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光化学オキシダントの移流と生成

夏季の関東域内の海風 Oxの移流

相模湾

東京湾

・移流の際の空気塊の移動前後でのVOC成分の変化の把握

→ Ox生成に寄与の大きいVOC成分の特定

0

20

40

60

80

100

120

140

160

Ox濃

度(

pp

b)

時刻(H26.7.23)

Y校

都筑

町田

東大和

南から北へのピーク時間の遅れ・濃度上昇

Y校

都筑

町田

東大和

7/43

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◉調査地点

都内 :世田谷区世田谷(H27)

狛江市中和泉(H27)

府中市宮西町(H27)

町田市能ヶ谷(H26)

東大和市奈良橋(H26)

横浜市:鶴見区生麦小学校(H27)

南区横浜商業高校(Y校)

(H26,H27)

都筑区総合庁舎

(H26,H27)

横浜市との共同調査(VOC移流調査) 概要-1

◎◎

アメダス八王子

アメダス海老名

アメダス府中

府中

横浜商業高校(Y校)

横浜地方気象台

都筑

●●

16.8km

●生麦

10.1km

横浜市西部病院

東京(北の丸公園)

狛江

世田谷

横浜市東部病院

横浜市北部病院

VOC測定地点

気象データ収集地点

東大和

町田

8/43

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横浜市との共同調査(VOC移流調査) 概要-2

◉調査日

・2014年7月23日(水)

8月14日(木)

・2015年7月21日(火)

8月6日(木)

→2014年8月14日は条件が悪かったため

解析対象から除外

◉調査項目

アルデヒド類を含むVOC139成分(横浜2地点は120成分)

◉調査方法

(2014年度) 採取時間:6時から21時(都内),6時から17時(横浜)

1時間毎に試料採取(都内2地点で60試料、横浜2地点で44試料)

(2015年度)採取時間:9時から19時(都内),7時から17時(横浜)

1時間毎に試料採取(都内3地点で66試料、横浜3地点で66試料)

9/43

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Y校 都筑

町田 東大和

横浜:アルカン類が高い。正午前後に濃度が上がる。都内:濃度変動が小さい。Ox高い。

各地点のVOC濃度の推移(H26.7.23)

Ox濃度

横浜 横浜

都内 都内

10/43

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VOCがオキシダントを生成する能力の評価法

光化学オキシダント主成分:オゾン

VOCが大気中でオゾンを生成する能力はVOCの個別成分によって異なる

⇒MIRによって基準化

11/43

MIR(Maximum Incremental Reactivity) :単位VOC量が生成しうるオゾン量を示す最大オゾン生成能(g-O3/g-VOC)

MIRの例 プロパン:0.49、トルエン:4.00、ホルムアルデヒド:9.46

測定したVOCをオゾンの生成能力で評価

オゾン生成能(μg-O3/m3) =個々のVOC濃度(μg/m3)× 個々のMIR

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各地点のオゾン生成能[濃度×MIR]の推移

Y校 都筑

町田 東大和

横浜 横浜

都内 都内

オゾン生成能換算ではアルカンの割合が減少、芳香族、アルデヒドの割合が上昇

12/43

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0

50

100

150

0

200

400

600

800

1000

Ox濃度

[pp

b]

オゾン生成能

[μg-

O3/m

3]

Others

Fluorocarbons

Halide

Oxygenate

Ketone

Aldehyde

Biogenic

Aromatic

Alkene

Alkane,Cycloalkane

Average Ox.

Maximum Ox.2015年調査日2日間(7月23日、8月6日)の

横浜7:00-17:00、都内9:00-19:00平均値

各地点のオゾン生成能の推移

2015年度 2015年度

2015 2014

◆横浜に比べ東京のOxが高い ◆横浜ではアルケン、芳香族の割合が多く東京では アルデヒドの割合が増加 (2014年度、2015年度とも同様)

横浜 都内

13/43

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●東大和

Y校

都筑

●●

町田

空気塊の移動経路の推測

①風向・風速から1時間後の移動地点を推測。

→ 東南東・風速2.4m/s の場合、 1時間で西北西へ8.6km進むとみなす。

②1時間後に移動した地点から、さらに

1時間後の移動地点を次の1時間値から推測。

これを順次繰り返す。

③都筑、町田、東大和の何れかの測定局の

半径2.5km以内に入った場合に、空気塊が

その測定局を通過したとみなす。

④ Y校、都筑、町田の各地点について、6時から

20時を起点に、同様の操作を繰り返す。

11:00 都筑通過

12:00 町田通過

Y校、都筑、町田でのVOCデータから、空気塊の移動前後でのVOC濃度の増減を確認する。

Y校9時を起点にした場合の推測経路

9:00 Y校 発

14/43

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空気塊の移動の推測

南から北側の測定局へ空気塊が移動している

と推測されるケースを下記の通り得た。

2014年7月23日:17ケース

2015年7月21日:11ケース

2015年8月6日 :14ケース

これらのケースでのVOC成分の変化を解析

15/43

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131 78

64

40

152

112

16

16

123

155

22

24

31

21

0

50

100

150

0

100

200

300

400

500

600

移動前 移動後

Ox濃度

[pp

b]

オゾン生成能

[μg-

O3/m

3]

Others

Fluorocarbons

Halide

Oxygenate

Ketone

Aldehyde

Biogenic

Aromatic

Alkene

Alkane,Cycloalkane

Ox2014年7月23日

(途中通過あり)

24 17

12

9

28

25

3

4

23

34

4 5 6 5

0

50

100

150

0%

20%

40%

60%

80%

100%

移動前 移動後

オゾン生成能

[μg-

O3/m

3]に占める割合

Others

Fluorocarbons

Halide

Oxygenate

Ketone

Aldehyde

Biogenic

Aromatic

Alkene

Alkane,CycloalkaneOx.2014年7月23日

(途中通過あり)

空気塊の移動前後のオゾン生成能の変化(2014年)

◆空気塊の移動前後でオゾンの生成能が減少 ◆アルカン、アルケン、芳香族炭化水素の割合が減少 ↓ 減少したVOCがオゾンの増加に寄与

空気塊を捕らえられた試料でのみ解析

↓ 実大気観測で 地域内移流を捉えてVOC変化を確認

16/43

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空気塊の移動前後のオゾン生成能の変化(2015年)

1時間移動 1時間移動

2時間移動 2時間移動

2014年と同様の結果が得られ、大気観測によるOx生成の評価がより確実に

◆移流時間が 1時間より2時間の方がOxの増加が大きい

↓ 大気中でVOCとの反応が進みOxが生成される様子を捉えている

17/43

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Aldehyde Formaldehyde 0.7667

Aldehyde Acetaldehyde 0.4646

Ketone Methylethylketone 0.0626

Ketone Acetone 0.0526

Aromatic m,p-Xylene -0.2847

Aromatic 1,2,4-Trimethylbenzene -0.2583

Aromatic 3,4-Ethyltoluene -0.1237

Aromatic 1,2,3-Trimethylbenzene -0.095

Aromatic 1,3,5-Trimethylbenzene -0.0734

Alkene trans-2-Pentene -0.0363

Alkene trans-2-Butene -0.0301

Aromatic 2-Ethyltoluene -0.03

Alkene 2-methyl-2-Butene -0.0266

Alkene cis-2-Pentene -0.0212

Aromatic p-Diethylbenzene -0.0201

Alkene 2-Methyl-1-Butene -0.0171

Oxygenic Butylacetate -0.0129

Alkene 1-Pentene -0.0125

Alkene 1,3-Butadiene -0.0121

Aromatic m-Diethylbenzene -0.0076

Alkene 3-Methyl-1-Butene -0.0062

Biogenic beta-Pinene -0.0039

化学種 物質名 傾き

移動前後で濃度変動のあったVOC成分

減衰率小

減衰率大

増加率小

増加率大

移動前後のOx濃度差(⊿[Ox])と移動前後

のオゾン生成能差(⊿[VOC]*MIR)

18/43

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Aldehyde Formaldehyde 0.7667

Aldehyde Acetaldehyde 0.4646

Ketone Methylethylketone 0.0626

Ketone Acetone 0.0526

Aromatic m,p-Xylene -0.2847

Aromatic 1,2,4-Trimethylbenzene -0.2583

Aromatic 3,4-Ethyltoluene -0.1237

Aromatic 1,2,3-Trimethylbenzene -0.095

Aromatic 1,3,5-Trimethylbenzene -0.0734

Alkene trans-2-Pentene -0.0363

Alkene trans-2-Butene -0.0301

Aromatic 2-Ethyltoluene -0.03

Alkene 2-methyl-2-Butene -0.0266

Alkene cis-2-Pentene -0.0212

Aromatic p-Diethylbenzene -0.0201

Alkene 2-Methyl-1-Butene -0.0171

Oxygenic Butylacetate -0.0129

Alkene 1-Pentene -0.0125

Alkene 1,3-Butadiene -0.0121

Aromatic m-Diethylbenzene -0.0076

Alkene 3-Methyl-1-Butene -0.0062

Biogenic beta-Pinene -0.0039

化学種 物質名 傾き

移動前後で濃度変動のあったVOC成分

◉ 移動後にOx濃度とともにVOC濃度

が増加

→ アルデヒド類、ケトン類

→ 二次生成と考えられる

◉ 移動後に移動前よりOx濃度が増加

した一方で、VOC濃度が減少

→ 芳香族類

(キシレン、トリメチルベンゼン、

エチルトルエン)

アルケン類(ペンテン、ブテン)

→ Ox生成への関与が疑われる

減衰率小

減衰率大

増加率小

増加率大

19/43

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9/10 人為起源VOC排出源の絞り込み

人為起源VOC排出量の削減目標の策定のために、

人為起源VOC排出源の絞り込みと、BVOCのOx生成量を把握する

東京湾

これまでの結果と課題

・Ox生成への関与が疑われる成分を特定

・PRTR対象外の成分のため、発生源が不明

残された課題

発生源集積地域におけるVOC濃度の面的調査

年4回(四季)の調査、100成分以上のVOC測定

東京湾岸でのVOC濃度の時系列調査

大規模発生源がある東京湾岸で夏季を中心に 横浜市と共同で調査 アルデヒド類を含め、2時間毎の濃度変動把握

東京湾

平成29年度からの研究 20/43

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植物起源VOCに関する調査

21/43

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植物から放出されるVOCを把握する意義 22/43

VOCの発生源

人為起源:工場、事業所、自動車、建設現場、家庭 等

自然起源:植物、火山 等

全世界規模のVOC排出は植物起源の方が圧倒的に多い

しかし

高濃度光化学オキシダントは森林地帯ではなく植物の少ない都市域で発生 ⇒NOxとVOCの濃度の関係でオキシダントの生成が影響される 都市域特有の問題

都市域で植物起源も含めた総VOC排出量の把握

人がコントロールできる人為起源VOCをどの程度減らせばOxが下がるかを評価していく

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【予備調査】

29樹種を対象

・東京都農林総合研究センターで改良された、最も近い

うちに緑化に使われそうな12樹種

・都立木場公園に植栽された都市公園の典型的樹木17樹種

葉重量 基礎

放出量 活動係数

BVOC放出量

品種改良された樹種 3/12 (25%) 都立公園の樹種 8/17 (47%) ⇒ BVOCを放出しない樹種

植物起源VOC(BVOC)の排出量の算出法 23/43

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関東地方の植物からのVOC排出量推計

首都圏に緑地がないように見えるが、 「ない」のはなく、「把握できていない」のが実情。 インベントリは1kmメッシュなので、街路樹や都市緑地はほとんど認識できていない。

実際に東京都の地図を見てみると緑地は実に多い。

24/43

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BVOC 放出特性

目的: 都内市街地(23区)全体の樹木が放出するBVOCを把握する

① 都内区部全域の樹木資源(分布、総葉重量、総葉面積)の把握

② 樹木からの単位BVOC放出量(葉重量・葉面積あたり)の観測

郊外 都市

「BVOC放出特性」は、生育環境(郊外 vs 都市)で異なる可能性がある

・放出成分 ・放出量 ・放出時期

「大学共同研究」

「衛星画像解析」

① × ② から 都内区部全域からのBVOC放出量の全体像の把握を試みる

郊外の樹木の観測データは多くあるが、都市での観測例は殆ど存在しない

BVOCの排出量把握の課題 25/43

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衛星画像解析による樹木分布の推定方法:

目視抽出

目視分類に対し、面積誤差5%以内で

樹木を自動抽出できる技術を構築 都内13区の樹木分布(緑葉期)

自動抽出

都内の広葉樹

単位地表面積あたりの葉重量

平均0.54 kg/m2

※JATOP推計

総葉重量 (緑葉期)

・常緑樹 9,000 トン ・落葉樹 13,000 トン

5/10

第二本庁

都内13区における常緑樹と落葉樹別の総葉重量

100%

0%

・画像輝度値を用い、地表物から樹木を抽出(昨年手法の高精度化)

・緑葉期と落葉期の樹木分布の差から常緑樹と落葉樹の分布を推定

都内13区の樹木面積 (緑葉期)

・常緑樹 17 km2

・落葉樹 24 km2

※衛星データ推計

比較

しかし、大気質シミュレーションの活用には、計算の入力データに樹木の葉面積分布が必要

都内区部全域の樹木の葉重量の把握

World View 2

26/43

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衛星画像を用いた,単位地表面積あたりの樹木葉面積(LAI)分布の推定技術を確立

樹木のLAIの現地観測

同一地点のLAIと衛星データの関係式導出

魚眼カメラ

解析

LAIの 算出

全天 写真

関係式をもとに,衛星画像からLAI分布を直接推定

衛星データ

N

DV

I値

現地観測LAI値

LAI=0.13exp(衛星データNDVI/0.19)

全天写真 撮影

解析の流れ

画像を取得 分布を推定 LAIを算出

100m

例:江東区木場公園

5/10 都内区部全域の樹木の葉面積の把握 27/43

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・対象樹種: 23区植樹本数上位20種のうち、H27年度予備観測で放出を確認した種

・観測場所: 「下水道局森ケ崎水再生センター」(プラタナス、モミジバフウ、シラカシ、ウバメガシ)

「東京都環境科学研究所」 (ハナミズキ、クスノキ)

ハナミズキ

プラタナス

クスノキ

モミジバフウ

ウバメガシ シラカシ

・観測方法: 「枝チャンバー法」 静岡県立大学(共同研究)の技術導入

枝チャンバー法測定 測定対象樹種

5/10 樹木からの単位BVOC放出量の観測 28/43

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BVOCのOx生成量の把握

東京湾 ① 衛星画像解析による樹木の資源量調査 ・今年度開発の「葉重量」推計手法を用いて、残り10区の葉重量を算出

・今年度開発の「葉面積」推定手法を用いて、都内区部の葉面積を推計

② 樹木からの単位BVOC放出量の観測 ・優先6樹種の放出量の季節変動を観測 四季別(年4回以上)の調査 森ヶ崎水再生センターと都環研で調査 1樹種、1季で10試料ずつ測定

・観測結果と樹木資源量をもとに,都内区部のBVOC放出総量を把握

・生育環境(市街地 vs 郊外)放出量を比較し、都市樹木の放出特性を把握

・放出量データを大気質シミュレーションへ組込み、BVOCの都市大気への影響を予測

・ 人為起源VOCとBVOCの、 Ox生成への寄与割合の正確な把握

・ Ox対策における人為起源VOC削減目標への定量的提言

H29年度

H30年度 以降

平成29年度からの研究 29/43

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東京-北京共同調査

Feb. 19th – Mar. 1st , 2017

( 東京-北京研究員交流プログラム)

30/43

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PM2.5の生成メカニズム

PM2.5

人為起源 自然起源

発生源

ガス

二次生成粒子

大気中で反応 粒子化

一次粒子黒いススなど

硫酸アンモニウム:(NH4)2SO4

硝酸アンモニウム: NH4NO3

有機炭素:OC

硫黄酸化物:SO2窒素酸化物:NO, NO2

アンモニア : NH3

揮発性有機化合物:VOC揮発性有機化合物:VOC

31/43

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2/20 (月) AM8:00 2/21 (火) AM8:00 2/22 (水) AM8:00

2/23 (木) AM8:00 2/24 (金) AM8:00 2/25 (土) AM8:00

5 μg/m3 75 μg/m3 101 μg/m3

15 μg/m3 27 μg/m3 13 μg/m3

北京の空 32/43

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2/26 (日) AM8:00 2/27 (月) AM8:00 2/28 (火) AM8:00

3/1 (水) AM8:00

22 μg/m3 83 μg/m3 11 μg/m3

4 μg/m3

北京の空 33/43

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0

50

100

150

200

1 6 12 18 24 6 12 18 24 6 12 18 24 6 12 18 24 6 12 18 24 6 12 18 24 6 12 18 24 6 12 18 24 6 12 18 24 6 12 18 24 6 12 18 24

2017/2/19 2017/2/20 2017/2/21 2017/2/22 2017/2/23 2017/2/24 2017/2/25 2017/2/26 2017/2/26 2017/2/28 2017/3/1

PM

2.5質量濃度(μg/m

3)

都内平均

北京(米国大使館)

米国大使館前

北京のPM2.5濃度 34/43

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北京市のPM2.5濃度は下がってきている。 ・ 80.6μg/m3(2015)→73μg/m3(2016) ・ 2013年度に比べ20%減 ・ ただし、2017年度までに60μg/m3に下げるという目標達成は

厳しい模様

PM2.5の低下とともに光化学オキシダントの問題がクローズアップ ・ VOC対策が必須であり、国を挙げて取り組んでいる。

大気汚染対策の状況 ・ 北京中心部はディーゼル車の流入を規制し、暖房もガス供給

を行っている。 ・ 5環より外は大型車の走行が多い。 ・ 暖房も河北省まで行くと80%が石炭を利用している。 ・ ガソリンスタンド対策について研究院で対策技術の研究を

行ってきた。現在、北京市は荷卸時(STAGEⅠ)と給油時(STAGEⅡ)の対策まで完了。

北京の空 近年の北京の情報 35/43

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環状2号線: 中心部大型車の流入が規制され、乗用車ばかりだが、いつも渋滞し

ている。

環状5号線: 郊外の幹線道路は大型車の通行が多い。 (ただし、私達が見ていた時間はナンバープレートによって大型車の走行が規制されていた時間帯で、違反車が多いとのこと)

北京の空 北京の道路状況 36/43

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① 調査時期(四季に1回) 北京:2月(今回訪問時)、7月、10月、1月 東京:3月、5月、8月、11月、2月 ② 採取場所 北京:2ヶ所 →次回から3ヶ所に増やす予定 東京:2ヶ所 3月は環研屋上のみ 5月からは環研屋上及び森ヶ崎水再生センター(大田区)

光化学オキシダントに関する共同調査 東京、北京双方の大気中VOCの年平均濃度と組成を把握 測定データを相互比較して発生源との関係を検討、考察

共同調査の実施 37/43

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③ 採取期間、時間 北京:5日間 各日:昼間 3試料,夜間 1試料 東京:1日間 2時間毎に12試料採取 0-2,2-4,4-6,6-8,8-10,10-12,12-14, 14-16,16-18,18-20,20-22,22-24時

④ 分析方法 北京:キャニスター採取 GC/MS分析 分析は北京工業大学のGC/MSを利用 東京:キャニスター採取 GC/MS分析 DNPH含浸カートリッジ採取 LC/MS分析(アルデヒド類)

⑤ 対象成分数 北京:約130成分,東京:約140成分 このうち、北京、東京で共通の成分は90~100成分

共同調査の実施 38/43

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市内のホテルの最上階(6階)の部屋を借りてサンプリング

キャニスターを用いてVOCを採取

VOCサンプリング(北京) 39/43

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東京都環境科学研究所屋上 奥がキャニスター、手前のシェルター内にアルデヒド採取用ポンプ等を収納

アルデヒド採取カートリッジ

VOCサンプリング(東京) 40/43

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(東京都) 2~3回分のデータが出てからデータの確認と解

析方法の相談に北京を訪問(2017年秋を予定) (北京市) 次回訪問時にはデータの解析手法の相談に加え、

具体的な対策技術についてアドバイスが欲しい 例えば、処理装置や溶媒回収装置の具体的なメーカー、低VOC塗料の具体的な製品名などについて

平成29年度の研究 41/43

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まとめ

大気中VOCの観測からオキシダント生成に影響のあるVOC成分を特定した。

今後は発生源の探索を進める。

植物起源VOCの排出量の把握を進めてきた。都内区部の葉面積の把握手法を確立したので、VOCの基礎放出量の測定結果と合せることにより総排出量の把握が可能となる。

北京市との技術交流、共同調査を進めてきた。今年度は調査結果の解析を行う。

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謝辞

本講演の研究内容は東京都環境科学研究所の下記の担当者とともに実施した内容をまとめたものです。 石倉淳士(現東京都環境局) 國分優孝 橳島智恵子 また、共同で調査を実施していただいた横浜市環境科学研究所の福崎有希子氏に謝意を表します。

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2017/7/14 VOC対策セミナー

ご清聴ありがとうございました