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(毎月1回・15 日発行) (3) 第622号 令和2年1月15日 11 4 ×11 26 12 12 14 18 養護教諭に求められる 保健教育力 神奈川学校保健研究会 90 61 10 姿玉川学園小学部 養護教諭 ふじ よし 保健室 今回の講師の一人、片山先生 が、1月25日(土)14時~、 「神奈川学校保健研究会」の例 会で、養護教諭に向けての「が ん教育講座」 を行います。 興味のある方 は、研究会の HPまで。 岩澤玉青 講師 小林 理 講師 片山佳代子 講師

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Page 1: 養護教諭に求められる 保健教育力 - secure-3ssl.com · 3 第622 健康かながわ (毎月1回・15日発行) 和2年1月15日 養護教諭の意欲と 能力向上を後押し

健 康 か な が わ (毎月1回・15日発行)(3) 第622号 令和2年1月15日

養護教諭の意欲と

能力向上を後押し

 

スキルラダーとは、養護

教諭に求められる知識や技

術を段階別(はしご状)に

示したもの。自分のスキル

レベルを確認できると今必

要な学習がわかり、資質能

力向上への意欲が高まるこ

とが期待できる。

 

なぜスキルラダーが必要

なのか。担任にできなくて

養護教諭にできることは何

かと、たびたびその専門性

が問われてきた。その疑問

を払拭しようと研鑽を重ね

てきたが阻む壁があるのも

事実。その壁とは、第一に

養護教諭の多くは学校に一

人しかいない職種であり、

悩みを抱えていても相談す

る同じ職種の人が職場にい

ない、自分のスキルを確認

する機会がないのが現状。

また、教育面の指導では結

果が出るまでに時間がかか

り、数値化・可視化が困難。

健康予防面では指導との因

果関係がわかりにくく、目

標・評価項目を設定しにく

い。さらに、保健室を空け

られず思うように研修を受

けられない現実もある。

 

そこで力量を客観的に評

価し、目標を明確にする指

標としてスキルラダーが役

に立つ。スキルラダーは、

救急処置・健康診断・疾病

予防・保健教育など11の業

務ごとに、新人期・一人前

期・中堅期・熟練期の4段

階で達成目標を設定してい

る。今回、講座内で保健教

育のスキルラダーを用いて

各自スキルチェックを行い

その活用法を確認した。

 

後半は高橋佐和子先生が

所属する「おもしろ健康教

育研究所」の活動を紹介。

研究所では、科学的根拠と

理論的アプローチを踏ま

え、エンターテインメント

性のある健康教育プログラ

ムを提供している。

理論×エンタメで

児童に行動変容を

 

活動の目的は子どもの行

動変容で、そのための秘訣

となるセルフエフィカシー

(自己効力感)、ヘルスビ

リーフモデル(健康信念モ

デル)、計画行動理論(プ

ランドビヘイビア理論)に

ついて解説。例えばセルフ

エフィカシーは、ある行動

をうまく行える「自信」を

意味し、人はセルフエフィ

カシーを強く感じるとその

行動を行う可能性が高い。

セルフエフィカシーを高め

るには、やり遂げる体験を

積む(成功体験)、周囲か

らの賞賛(言語的説得)、

行動への良い感覚の自覚

(生理的・情緒的状態)、自

分と似た状況の人の成功体

験から学ぶ(モデリング)

が有効。参加者は、この理

論を踏まえ研究所が制作し

た笑いと学びが詰まった保

健教育のスライドを観賞

し、子どもの心を動かす保

健教育の手法を学んだ。

 

最後は、「養護教諭は子

どもの実態を最も把握して

いる存在。その強みを活か

し行動変容につながる保健

教育に取り組んでほしい」

と結んだ。

 

当協会の中央診療所所長

で県立がんセンター名誉総

長の小林理医師は、かねて

からがん教育の必要性を掲

げ、実践してきた。今回、

横浜市の戸塚福祉保健セン

ターの協力により、11月26

日、学校での『がん教育』

が実施されることとなっ

た。そこで、県立がんセン

ター臨床研究所・片山佳代

子主任研究員と、がん体験

者の会「マリアリボン」主

催の岩澤玉青さんととも

に、小林先生も講師として

参加した。

 

会場は、横浜市戸塚区に

ある全校生徒540人の南

戸塚中学校(石黒裕校長)。

学年ごとに、3回の講演を

実施。1年生は片山講師が

担当し、「なぜがんになる

人が増えたのか?」「どん

な人ががん検診を受けると

 

神奈川学校保健研究会の12月例会が12月14日、当

協会で開催された。神奈川県立保健福祉大学保健福

祉学部看護学科准教授・高橋佐和子先生(写真)を

招き「養護教諭に求められる保健教育力」のテーマ

で研修を行った。養護教諭の専門性について具体的

な評価指標も示しながら研修は行われた。会員ら県

内の養護教諭18人が参加した。

 「2人に1人ががんに罹

患する時代」といわれ、

身近な病気となったがん

に対し、国は学校におけ

る『がん教育』の推進を

図っている。文部科学省

の新指導要領により、中

学校は2021年度から

保健体育科での『がん教

育』が全面実施となるこ

とが決まった。それを踏

まえ各地で、専門医など

外部講師を招いて行う『が

ん教育』が始まっている。

養護教諭に求められる     保健教育力

神奈川学校保健研究会

 

玉川学園小学部は、東

京都町田市にある私立の

共学校です。今年度で創

立90周年となりました。

自然豊かな61万㎡のキャ

ンパスで幼稚部生から大

学院生までが生活をして

います。

 

児童数475人。現在

は4学年毎に校舎分けを

されているので、小学部

低学年校舎では4年生が

最上級生として下の学年

を引っ張ってくれていま

す。玉川学園前駅から低

学年校舎まで徒歩約10分

ですが、その道のりは平

坦なものではなく、子ど

もたちは毎日丘を越えて

やってきます。急な坂道

での転倒はヒヤッとする

ものですが、上級生が下

級生を連れて保健室まで

一緒に来てくれる姿は頼

もしいものです。時には、

小学生の頃によく保健室

を訪れていた子が、中学

生や高校生になって小学

生に付き添ってきてくれ

ることも。子どもの成長

をさまざまな場面で見る

ことができ、一貫校なら

ではの嬉しさを感じるこ

とがあります。

 

子どもたちが、ふと保

健室でこぼす「保健室っ

てなんか落ち着くよ

ねぇ」という言葉に私自

身も励まされながら、子

どもたちのさまざまな思

いを受け止め、時には背

中をそっと押しています。

 

私学の保健部会や神奈

川学校保健研究会など

で、他校の養護教諭の先

生方と繋がりをもつこと

ができます。一人職の養

護教諭にとって大切な場

です。他愛のない話も含

めて共有し合える仲間を

もちながら、日々成長中

です。

玉川学園小学部養護教諭

藤ふ じ

部べ

佳よ し

子こ

保健室

当協会の小林医師が講師として参加

南戸塚中学校で

初めての『がん教育』

いいのか?」「がんになら

ない生活とは?」など、生

徒たちに問いかけながら、

がんについての正しい知識

を伝えた。

 

2年生と3年生には、小

林医師によるがんの基本的

な知識と、岩澤さん自身の

体験談という2部構成で行

われた。

 

がんの主な原因に、飲

酒・喫煙、食生活など生活

習慣の乱れがあり、気をつ

けることで6割のリスクが

減らせるという。また、ピ

ロリ菌や肝炎ウイルス、ヒ

トパピローマウイルス(H

PV)など、感染症による

がんもある。「ここで大切

なのは、感染症が原因のが

んでも、がん自体は感染し

ません」と小林医師は話す。

 

また、生活習慣に気をつ

けても、4割はがんになる

可能性がある。そこで重要

なのが、がん検診を受け、

早期に発見することだ。が

んは症状がないうちに見つ

かれば、8割以上が治る病

気になっているという。

 

がんが身近になった今、

がんに対する情報はしばし

ば目にするが、そのすべて

が正しいものとは限らな

い。科学的根拠に基づく知

識を、子どものころからき

ちんと学ばせるというのが

『がん教育』の主旨でもあ

る。正しく知ることで、必

要以上に恐れず、差別や偏

見を助長せず、がんやがん

患者と向き合える。それは、

がんになった方たちを、ど

うサポートしていくかにつ

ながる。

 

岩澤さんからは、自身の

体験を通して、何ががん患

者を傷つけるのか、何が助

けになるのかなどが語られ

た。そして、「苦しいこと

があったら、助けを求める

勇気、求められたら手を差

し伸べる力強さと優しさを

持ってほしい。がんであっ

てもなくても、みんなで支

え合う社会であってほしい

と思います」と結んだ。

 

終了後、飯田太副校長か

ら講師らに向けて、「今回、

がんに対する関心を引き出

していただいた。がん=怖

いではないところが、子ど

もたちに伝わったと思いま

す」という言葉があった。

今回の講師の一人、片山先生が、1月25日(土)14時~、「神奈川学校保健研究会」の例会で、養護教諭に向けての「が

ん教育講座」を行います。興味のある方は、研究会のHPまで。

岩澤玉青 講師 小林 理 講師

片山佳代子 講師