大腿骨頚部/転子部骨折診療...

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大腿骨頚部/転子部骨折診療 ガイドラインの作成経過と問題点 渡部欣忍 1) 萩野 浩 2) 中野哲雄 3) 糸満盛憲 4) 松下 隆 1) 1) 帝京大学医学部整形外科, 2) 鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部 3) 公立玉名中央病院整形外科 4) 北里大学医学部整形外科

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大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドラインの作成経過と問題点

渡部欣忍1) 萩野 浩2) 中野哲雄3)

糸満盛憲4) 松下 隆1)

1)帝京大学医学部整形外科,

2)鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部3)公立玉名中央病院整形外科4)北里大学医学部整形外科

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わが国における整形外科関連の診療ガイドライン

厚生労働省1999年から主要な20疾患についての診療ガイドライン作りが開始された.腰椎椎間板ヘルニア大腿骨頚部骨折

日本整形外科学会大腿骨頚部/転子部骨折,頚椎症性脊髄症,後縦靱帯骨化症,上腕骨外側上顆炎,アキレス腱断裂,外反母趾傷,前十字靭帯損傷,変形性股関節症,骨・軟部腫瘍診断,骨・関節感染症

大腿骨頚部骨折

大腿骨頚部/転子部骨折

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大腿骨頚部骨折と転子部骨折

頚部骨折 転子部骨折

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ガイドラインの作成経過

策定委員会の組織化

臨床上の疑問点の抽出(Reseach Question)

文献の検索と収集

アブストラクトのチェック   (1次選択)

構造化アブストラクトの作成

  論文毎の吟味と評価   (2次選択)

エビデンス

エビデンスの統合(Scientific Statement)

疑問点に対する解答(Recommendation)

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ガイドラインの作成経過

策定委員会の組織化

臨床上の疑問点の抽出(Reseach Question)

文献の検索と収集

アブストラクトのチェック   (1次選択)

構造化アブストラクトの作成

  論文毎の吟味と評価   (2次選択)

エビデンス

エビデンスの統合(Scientific Statement)

疑問点に対する解答(Recommendation)

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臨床上の疑問点の抽出

3-Parts Question (PECO)大腿骨頚部骨折(いわゆる内側骨折)の治療  6.1 入院から手術までの管理

術前牽引は必要か?P:Patient どんな患者にE:Exposure どんなことをするとC:Comparison 何に比べてO:Outcome どうなるか?

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臨床上の疑問点の抽出

リサーチクエスチョンの例大腿骨頚部骨折(いわゆる内側骨折)の治療  6.1 入院から手術までの管理

術前牽引は必要か?P:E:C:O:

大腿骨頚部/転子部骨折患者の術前処置として術前に牽引を行うことは牽引を行わないのと比較してOutcomeが異なるか? 1)除痛効果はあるか? 2)術中の整復は容易になるか? 3)手術時間は短くなるか? 4)偽関節の発生率は少なくなるか? 5) その他

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臨床上の疑問点の抽出

リサーチクエスチョン

章 RQの数1 大腿骨近位部骨折の分類 32 大腿骨頚部/転子部骨折の疫学 53 大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子 94 大腿骨頚部/転子部骨折の予防 45 大腿骨頚部/転子部骨折の診断 66 大腿骨頚部骨折(いわゆる内側骨折)の治療 317 大腿骨転子部骨折(いわゆる外側骨折)の治療 168 周術期管理 139 リハビリテーション 310 退院後の管理 3

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ガイドラインの作成経過

策定委員会の組織化

臨床上の疑問点の抽出(Reseach Question)

文献の検索と収集

アブストラクトのチェック   (1次選択)

構造化アブストラクトの作成

  論文毎の吟味と評価   (2次選択)

エビデンス

エビデンスの統合(Scientific Statement)

疑問点に対する解答(Recommendation)

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文献の検索と収集

日整会ガイドライン委員会の方針

・RCT・CCT・Cohort study・Case controlled study・Case series・Case report

1次データベース

最低過去10年間の文献からGLを作成する.

邦文論文はできる限り採用する.

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文献の検索と収集

ガイドライン作成研究班の基本方針

1990~2002年7月までの論文を採用.

邦文論文については1990年以降の文献のうち,治療法については症例数100以上,予後については200例以上.

・RCT・CCT・Cohort study・Case controlled study・Case series・Case report

1次データベース

治療・合併症 その他

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文献の検索と収集

検索式と文献数 (1996年以降)S1 HIP FRACTURES! S1 5,882S2 (FEMORAL NECK/ DE OR FEMUR HEAD/DE) AND (FRACTURES! OR FRACTURE FIXATION! OR BONE SCREW/DE)

S2 8

S3 (FEMORAL OR FEMUR)(1W)(NECK OR HEAD) (2N) FRACTURE?

S3 5,448

S4 (HIP OR TRANSCERVICAL OR CERVICAL OR INTERTROCHANT? OR SUBTROCHANT? OR INTRACAPSULAR? OR EXTRACAPSULAR) (2N)FRACTURE?

S4 8,929

S5 (HIP JOIN(L)SU OR ARTHROPLASTY, REPLACEMENT, HIP/DE OR HIP PROSTHESIS/DE) AND FRACTURE?

S5 2,526

S6 (FEMUR OR FEMORAL OR HIP) (2N)(PROSTHES? OR REPLACEMENT? OR SCREW?) AND FRACTURE?

S6 3,661

S7 S1:S6 S7 13,848

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文献の検索と収集

Medlineによる文献数 (1985年以降)

3,509581221

328621

1,0405146

534144

1,81511

2242,050

3422,3921,231

65717

86

9869

19816

37414

3051

29335104439349

2,5303910

7218342616

4122

479139

1,29712

3731,682

1321,814

915

241500

193963

24

6020

14929

16020

180267

1,4512910

6148164357

2310

28197

7686

211985

491,034

852

7452

144

9185

19617

5149

67434

892

53423

557569

1,2423912

6104128289

168

24960

6224

181807104911

1,514

1,86025

810

182175400

2812

425126991

10296

1,29790

1,3871,323

147662

351059

3066

740

46120

3123

79

43925

25

5457

14385

649

2290

45274

43317274

62129

50

5985

17898

15636

3870

26413

33446343

32415

23

244791

25

3414

14606

15230

182169

508580

273575

31

3216

1277

103237

16253463

6,902124

5827

562906

1,6779155

1,036335

3,19428

8734,095

5694,6642,010

Practice Guideline Systematic Review Meta-Analysis RCT CCT Clinical Trial Multicenter Study Cohort Study Case-Control Study Case Series Case Report Review

6,932 編

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文献の検索と収集

Study designによる論文の絞り込み

Practice Guideline Systematic Review Meta-Analysis RCT CCT Clinical Trial Multicenter Study Cohort Study Case-Control Study Case Series Case Report Review

3,509581221

328621

1,0405146

534144

1,81511

2242,050

3422,3921,231

65717

86

9869

19816

37414

3051

29335104439349

2,5303910

7218342616

4122

479139

1,29712

3731,682

1321,814

915

241500

193963

24

6020

14929

16020

180267

1,4512910

6148164357

2310

28197

7686

211985

491,034

852

7452

144

9185

19617

5149

67434

892

53423

557569

1,2423912

6104128289

168

24960

6224

181807104911

1,514

1,86025

810

182175400

2812

425126991

10296

1,29790

1,3871,323

147662

351059

3066

740

46120

3123

79

43925

25

5457

14385

649

2290

45274

43317274

62129

50

5985

17898

15636

3870

26413

33446343

32415

23

244791

25

3414

14606

15230

182169

508580

273575

31

3216

1277

103237

16253463

6,902124

5827

562906

1,6779155

1,036335

3,19428

8734,095

5694,6642,010

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アブストラクトのチェック

文献の1次選択□ 疫学/危険因子□ 予防□ 診断□ 分類□ 治療(内側)□ 治療(外側)□ 治療(その他)□ 合併症□ 麻酔管理□ 看護・管理□ リハビリ□ 経済的要因□ その他

・国際医療情報センター(IMIC)の協力の下に検索・収集さ れた論文をデータベース化した.・ファイルメーカー(PC & Mac)上で各論文の採否を班員2名でチェックした.

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アブストラクトのチェック

1次選択論文

594511221

111175370

1813

15043

59400

5940

5941,231

8815

85

271166

40

162

8800

880

88349

6553010

7114158319

309

22671

65500

6550

655915

81400

142442

22

305

8100

810

81267

5732510

588

126254

218

21080

57300

5730

573852

3461

144

6158

13817

4127

60346

00

3460

346569

2983312

661

113225

148

510

29800

2980

2981,514

57720

89

120130287

2412

20153

57700

5770

5771,323

49662

171041

3041

4900

490

4979

12821

24

313694

62

233

12800

1280

128274

20422

50

4456

12793

5312

20400

2040

204343

6814

23

132860

1223

6800

680

68169

27180

153

270000

2700

270

27463

1,304985726

257336774

4920

363110

1,31600

1,3160

1,3162,010

Practice Guideline Systematic Review Meta-Analysis RCT CCT Clinical Trial Multicenter Study Cohort Study Case-Control Study Case Series Case Report Review

1,304 編

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アブストラクトのチェック

1次選択論文の採用率

採用 総数 採用率(%)Practice Guideline 98 / 116 84Systematic Review 57 / 57 100

Meta-analysis 26 / 26 100RCT 257 / 525 49CCT 336 / 774 43

Clinical Trial 49 / 87 56Multicenter Study 20 / 54 37Cohort Study 363 / 872 42

Case-control Study 110 / 281 39

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文献の検索と収集

採用した論文数

対象論文 1次選択論文

2次選択論文

英語論文 6938 1382 297

日本語論文 2469 565 62

・1次選択文献に含まれなかった文献のうち,2002年7月までの範囲で,リサーチクエスチョンに対して必要と考える文献は各章責任者が選択・追加した.・選択されたすべての論文に関して,査読担当者によってアブストラクトフォームを作成した.・章責任者がアブストラクトフォームと原文献とを参照・評価してリサーチクエスチョン別にエビデンスレベルが高い文献を選択した.

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構造化アブストラクト 構造化アブストラクトの作成

文献ID著者・タイトル・誌名・年・ページ研究デザインEvidence Level研究施設目的研究期間対象患者症例数追跡率対象人種介入主要評価項目とそれに用いた統計手法結果結論コメント備考

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ガイドラインの作成経過

策定委員会の組織化

臨床上の疑問点の抽出(Reseach Question)

文献の検索と収集

アブストラクトのチェック   (1次選択)

構造化アブストラクトの作成

  論文毎の吟味と評価   (2次選択)

エビデンス

エビデンスの統合(Scientific Statement)

疑問点に対する解答(Recommendation)

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論文の吟味とエビデンスの抽出 Systematic Review

大腿骨頚部骨折(いわゆる内側骨折)の治療  6.2 治療方法の選択

外科的治療では骨接合術と人工物置換術のいずれを選択するか?

Parker MJ, Rajan D:Internal fixation or arthroplasty for displaced subcapital fractures in the elderly? Injury 1992

10510.1 0.20.01 0.05

骨接合術

輸血を受けた人数

インプラント周囲骨折

0.11

深部感染

0.26

再手術率

3.73

0.18

vs 人工骨頭置換術

相対リスク(Relative Risk)

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疑問点に対する解答

研究班での推奨大腿骨頚部骨折(いわゆる内側骨折)の治療  6.2 治療方法の選択

外科的治療では骨接合術と人工物置換術のいずれを選択するか?

非転位型(Garden stage I,stage II)は骨接合術を推奨する。

転位型(Garden stage III,stage IV)は人工物置換術を推奨する。

ただし、対象患者の全身状態、年齢を考慮して、手術方法を選択すべきである。

Grade D

Grade D

Grade D

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推奨 Grade

Grade 内容 内容補足

A 強い根拠に基づいている 質の高いエビデンスが複数ある

B 中等度の根拠に基づいている質の高いエビデンスが1つ,または中程度の質のエビデンスが複数ある

C 弱い根拠に基づいている中程度のエビデンスが少なくとも1つある

D 根拠がない、あるいは専門家の意見委員会で設定した基準を満たす研究論文がない

推奨に書かれている内容の確からしさでgradingした。Yes、Noで解答できる質問では8段階評価となる。

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肯定と否定Grade ABCDDCBA

強い根拠に基づいて推奨する.   ・   ・根拠はないが推奨する.根拠はないが推奨しない.   ・   ・強い根拠に基づいて推奨しない.

肯定

否定

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疑問点に対する解答

日整会GLでの推奨大腿骨頚部骨折(いわゆる内側骨折)の治療  6.2 治療方法の選択

外科的治療では骨接合術と人工物置換術のいずれを選択するか?

非転位型(Garden stage I,stage II)は骨接合術を推奨する。

転位型(Garden stage III,stage IV)は人工物置換術を推奨する。

ただし、対象患者の全身状態、年齢を考慮して、手術方法を選択すべきである。

Grade I

Grade I

Grade I

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推奨 GradeGrade 内容 内容補足

A行うよう強く推奨する強い根拠に基づいている

質の高いエビデンスが複数ある

B行うよう推奨する中等度の根拠に基づいている

質の高いエビデンスが1つ,または中程度の質のエビデンスが複数ある

C行うことを考慮してもよい弱い根拠に基づいている

中程度のエビデンスが少なくとも1つある

D推奨しない否定する根拠がある

肯定できる論文がないか,否定できる中程度のエビデンスが少なくとも1つある

I委員会の審査基準に満たすエビデンスがない,あるいは複数のエビデンスがあるが結論が一様でない

肯定の程度については推奨A~Cまでの3段階評価だが、否定の根拠の強さは文章表現でしか示せない。

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出典CASP Japan

Evidence-based Health Careの考え方

根拠 経験

価値患者・家族・社会の好みや願い

確かめられた治療効果 医療従事者の技術・技能医療施設の設備・体制

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まとめ