国際通貨基金 - rieti2006/04/01 · 国際通貨基金...
TRANSCRIPT
国際通貨基金
世界・アジア太平洋地域経済見通し2020年春
鷲見 周久IMFアジア太平洋地域事務所長
2020年6月
要旨:「大封鎖」―他に類を見ない危機
リスクリスク
深刻なリスク
• ウイルス感染の先行き、ウイルス変異の可能性、必要な感染拡大防止措置についての不確実性
• 新興国・発展途上国におけるさらに大規模な感染
• 供給・金融の混乱の長引く影響、貿易への波及効果、コンフィデンスの影響、長期的なリスク回避
深刻なリスク
• ウイルス感染の先行き、ウイルス変異の可能性、必要な感染拡大防止措置についての不確実性
• 新興国・発展途上国におけるさらに大規模な感染
• 供給・金融の混乱の長引く影響、貿易への波及効果、コンフィデンスの影響、長期的なリスク回避
政策政策
タイムリー、大規模、協調
• 医療システムの支援
• 影響を受けた人々と企業の保護
• システミックストレス、爪痕の軽減
• 迅速な復旧の促進
• 脆弱な国々に対する国際的支援。 強力なグローバル金融セーフティネット
タイムリー、大規模、協調
• 医療システムの支援
• 影響を受けた人々と企業の保護
• システミックストレス、爪痕の軽減
• 迅速な復旧の促進
• 脆弱な国々に対する国際的支援。 強力なグローバル金融セーフティネット
Apr. 2020 WEO
成長成長
2020年にGDPは縮小、2021年に一部回復
90
95
100
105
110
115
2019 2020 2021
Jan. 2020 WEO Apr. 2020 WEO2020年1月
世界経済見通し
2020年4月
世界経済見通し
1
概要
近の動向近の動向
見通し見通し
リスクリスク
政策政策
2
概要
近の動向近の動向
見通し見通し
リスクリスク
政策政策
3
新型コロナウイルス感染症の拡大:さまざまなタイミングで各国経済が混乱
4
新型コロナウイルス感染症 累計感染確定者数
出所: Our World in Data、IMFスタッフ算定
1
10
100
1000
10000
100000
1000000
10000000
2020
年1月
1日
2020
年1月
8日
2020
年1月
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2020
年1月
22日
2020
年1月
29日
2020
年2月
5日
2020
年2月
12日
2020
年2月
19日
2020
年2月
26日
2020
年3月
4日
2020
年3月
11日
2020
年3月
18日
2020
年3月
25日
2020
年4月
1日
2020
年4月
8日
2020
年4月
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2020
年4月
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2020
年4月
29日
2020
年5月
6日
2020
年5月
13日
2020
年5月
20日
2020
年5月
27日
米国 イタリア 中国 韓国 インド
インドネシア 日本 シンガポール ブラジル ロシア
サービス部門の相当な部分に直接的影響
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
ISRKORAUS
TWNIRL
SGPJPN
HKGUSADEUFINFRALUXAUTNLDBELCZESVNSVKPRTITA
DNKCHEESPESTLTULVACYPMLT
中央値41.1
出所: Haver Analytics、IMFスタッフ算定
注:影響を受けるサービスには、卸売・小売業、運輸、宿泊、飲食サービス、芸術・娯楽活動が含まれる。一部の国については、芸術・娯楽活動に関するデータが入手できていない。AE=先進国、EM=新興国、LIDC=低所得発展途上国
AE: 影響を受けたセクター(GDP比)
EM : 影響を受けたセクター(GDP比)
LIDC: 影響を受けたセクター(GDP比)
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55
RUSCRI
LBNUKRBIHIDN
ARMTURARGEGYLKADZAGEOJORMYSSURPHL
MNEMUSKAZMEXTHAIND
GTMPANIRQ
HUNPOLROUBGR
中央値21.6
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
UZBLSO
VNMKENTZA
UGALAO
MOZETH
NGAKHMMDAKGZ
CMRGHANIC
WLDZMBBGDSDN
中央値19.8
5
PMIからも間接的影響は明らか
製造業PMI(指標:>50 = 景況拡大;季節調整済)
サービス業PMI(指標:>50 = 景況拡大;季節調整済)
出所: IMF『世界経済見通し』; IMF、Global Data Source 、 Haver Analytics
英国 米国 日本 中国ドイツ イタリア 韓国英国 ドイツ イタリア 米国 日本 中国
2020年2月2019年4Q 2020年3月
2020年5月2020年4月
2020年2月2019年4Q 2020年3月
2020年5月2020年4月
6
原油価格は暴落、為替レートに圧力
出所:Bloomberg, L.P.、Argus、Rystad Energy、Thomson Reuters DataStream、IMFスタッフ算定注:損益分岐点価格はプロジェクト操業のためのRystad Energyによる2017年の見積もりに基づく。生産により加重された平均の損益分岐点価格。
原油価格の損益分岐点、地域別(1バレルあたり米ドル)
05
101520253035404550
Mid
dle
East
Euro
pe
Aust
ralia
Afric
a
Russ
ia
Asia
Nor
th A
mer
ica
Sout
h Am
erica
Breakeven priceWEO oil price assumption 2020
中東
欧州
オーストラリア
アフリカ
ロシア
アジア
北米
南米
一次産品輸出国:為替レート(流行発生以降の変化率)
-30
-25
-20
-15
-10
-5
0
BRA CHL IDN MEX PER RUS ZAF
COVID-19 GFC
4/9ブラジル チリ
インドネシア
メキシコ
ロシア
南アフリカ
損益分岐点価格
WEO 推定原油価格2020年COVID-19
ペルー
7
市場の急落やリスクプレミアムの急上昇に伴い、金融環境はタイトに
60
65
70
75
80
85
90
95
100
105
110
t-30 t t+30 t+60
China Hong Kong SAR Japan Korea Singapore US Europe
中国がWHOに通知2019年12月31日
WHOがリスクを「高い」に修正2020年1月26日
WHOが「世界的
な緊急事態」を宣言2020年1月31日
欧州での急拡大2020年2月22日
中国 韓国 シンガポール
-1
0
1
2
3
4
5
6
t-30 t t+30 t+60 t+90
GFC Covid-19GFC
出所: Bloomberg、JP Morgan注: 事象別の初期ショック発生日(t)は以下のとおり:GFC=2008年9月15日(リーマン・ブラザーズ倒産)、Covid-19=2020年1月30日(WHOが新型コロナに関して世界的緊急事態を宣言)。
株価(指標、2020年1月26日= 100、x軸が日数)
アジア新興市場:ソブリン債リスクプレミアム(累積日次、5年物CDSのスプレッド。単位はパーセント)
8
香港 日本 欧州米国
信用スプレッドの拡大
EMBIソブリン債スプレッド(ベーシスポイント)
出所: Bloomberg Finance L.P、Haver Analytics、Thomas Reuters Datastream、IMFスタッフ算定注:EMs = emerging markets(新興市場)。データは2020年4月7日まで。
0
200
400
600
800
1000
1200
Jan-
19
Apr-
19
Jul-1
9
Oct
-19
Jan-
20
Apr-
20
ChinaIndiaSouth AfricaEMsCommodity exporters
中国インド南アフリカEMs一次産品輸出国
Jan-
19
0
1000
2000
3000
4000
5000
0
200
400
600
800
1000
Jan-
19
Apr-
19
Jul-1
9
Oct
-19
Jan-
20
Apr-
20
BrazilRussiaTurkeyArgentina (right scale)
9
ブラジル
ロシア
トルコ
アルゼンチン(右軸)
2019
年1月
2019
年4月
2019
年7月
2019
年10
月
2020
年1月
2020
年4月
2019
年1月
2019
年4月
2019
年7月
2019
年10
月
2020
年1月
2020
年4月
新興国からの大規模な資本流出
新興国への非居住者累積ポートフォリオフロー(10億米ドル;日次の観察に基づく)
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
20
t-30
t
t+30
t+60
t+90
GFC COVID-19
-15
-10
-5
0
5
10
15
t-30
t
t+30
t+60
Indonesia India Thailand China Malaysiaインドネシア
インド タイ 中国 マレーシア
アジア新興国の累積ポートフォリオフロー(10億米ドル)
10
出所: Bloomberg、JP Morgan注: 事象別の初期ショック発生日(t)は以下のとおり:GFC=2008年9月15日(リーマン・ブラザーズ倒産)、Covid-19=2020年1月30日(WHOが新型コロナに関して世界的緊急事態を宣言)。
…そして、 対米ドル為替の下落とクロスカレンシーベーシスの拡大
90
92
94
96
98
100
102
t-30
t
t+30
t+60
GFC Covid-19
-700
-600
-500
-400
-300
-200
-100
0
t-30
t
t+30
t+60
t+90
Covid-19 GFC
-80
-70
-60
-50
-40
-30
-20
-10
0
t-30
t
t+30
t+60
t+90
Covid-19 GFC
対米ドル為替、特定のアジア諸国 1/(指標、t-30=100)
出所:Bloomberg、IMFスタッフ算定1/ 含まれる国:中国、香港、インド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、台湾、タイ、ベトナム。単純平均。
韓国:1年のクロスカレンシーベーシス(ベーシスポイント)
日本:1年のクロスカレンシーベーシス(ベーシスポイント)
11
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
4000
4500
On-budget Off-budget
G-20 G-20 (percent of GDP; rhs)
予算内 予算外
G-20 (percent of GDP; rhs)
迅速かつ大規模な政策対応
0
20
40
60
80
100
0
20
40
60
80
100
Credit/financialpolicies
Taxpolicies
Socialpolicies
Regulatorypolicies
Other
AE: Announced EM: AnnouncedAE: Implemented EM: ImplementedEM:実施
信用/
金融
政策
税務
政策
社会
政策
規制
政策
その他
G-20+:経済政策対応(国の割合)
出所:IMFスタッフ算定注:G20 +にはスペインが含まれる。政策は2020年4月1日現在、財政措置は2020年4月8日現在。G-20全体で採用されている裁量的財政措置。資産購入はG-20全体の下限
を示す。信用/金融政策には、政府による保証、ローン、返済免除、規制緩和が含まれる。税務政策には減税/免税/控除/納税猶予が含まれる。社会政策には失業手当、病気休暇、現金供与が含まれる。規制政策には価格管理、雇用/貿易制限が含まれる。その他の政策には公共投資と企業補助金が含まれる。
G-20+:裁量的財政措置(10億米ドル)
G-20+:金融政策措置(国の割合)
世界の合計:8兆米ドル
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
0102030405060708090
100
Loosened Cut policyrate
Providedliqudity
Assetpurchases(US dollarbillion; rhs)
緩和 Cut policy rate
流動性
供給
資産購入
(10億ドル;
右軸)
AE:発表AE:実施
EM:発表 G-20(GDP比パーセント、右軸)
政策金利
引き下げ
12
概要
近の動向近の動向
見通し見通し
リスクリスク
政策政策
13
パンデミック
シャットダウン期間
金融環境
一次産品
価格14
WEO ベースラインにおける仮定
パンデミックは2020年後半に徐々に沈静化し、感染拡大防止措置の段階的解除が可能にパンデミックは2020年後半に徐々に沈静化し、感染拡大防止措置の段階的解除が可能に
流行が深刻な国:2020年に約8%の労働時間を喪失 その他の国:約 5%の労働時間を喪失 国により異なる
流行が深刻な国:2020年に約8%の労働時間を喪失 その他の国:約 5%の労働時間を喪失 国により異なる
今年の前半は、先進国と新興市場・発展途上国でタイトな金融環境が続く 2020年後半には金融環境は緩和基調に 今年の前半は、先進国と新興市場・発展途上国でタイトな金融環境が続く 2020年後半には金融環境は緩和基調に
2020年3月末の先物市場価格に基づくと、1バレルあたりの原油スポット価格の平均(APSP)は、2020年:35.6ドル、2021年:37.9ドル。その後数年にわたって価格は上昇するが、2019年の平均レベル(61.4ドル)を下回る 金属価格は2020年に15.0%、2021年に5.6%下落。食品価格は2020年に1.8%下落し、その後2021年には0.4%上昇
2020年3月末の先物市場価格に基づくと、1バレルあたりの原油スポット価格の平均(APSP)は、2020年:35.6ドル、2021年:37.9ドル。その後数年にわたって価格は上昇するが、2019年の平均レベル(61.4ドル)を下回る 金属価格は2020年に15.0%、2021年に5.6%下落。食品価格は2020年に1.8%下落し、その後2021年には0.4%上昇
世界 先進国経済 米国 ユーロ圏 日本 英国 カナダ 韓国その他アジア
先進国
2019 2.9 1.7 2.3 1.2 0.7 1.4 1.6 2.0 1.6
2020年1月からの変化 0.0 0.0 0.0 0.0 -0.3 0.1 0.1 0.1 0.2
2020 -3.0 -6.1 -5.9 -7.5 -5.2 -6.5 -6.2 -1.2 -5.1
2020年1月からの変化 -6.3 -7.7 -7.9 -8.8 -5.9 -7.9 -8.0 -3.4 -6.9
2021 5.8 4.5 4.7 4.7 3.0 4.0 4.2 3.4 4.5
2020年1月からの変化 2.4 2.9 3.0 3.3 2.5 2.5 2.4 0.7 2.0
成長予測: 先進国(前年比、パーセント)
15出所:IMF『世界経済見通し』
世界新興市場・発展途上国 中国 インド ブラジル ロシア
一次産品輸出国
低所得発展途上国
2019 2.9 3.7 6.1 4.2 1.1 1.3 1.3 5.1
2020年1月からの変化 0.0 0.0 0.0 -0.6 -0.1 0.2 0.2 0.1
2020 -3.0 -1.0 1.2 1.9 -5.3 -5.5 -3.4 0.4
2020年1月からの変化
-6.3 -5.4 -4.8 -3.9 -7.5 -7.4 -6.0 -4.7
2021 5.8 6.6 9.2 7.4 2.9 3.5 4.7 5.6
2020年1月からの変化
2.4 2.0 3.4 0.9 0.6 1.5 1.8 0.5
成長予測:新興市場と低所得発展途上国(前年比、パーセント)
16出所:IMF『世界経済見通し』
17
今回の危機の深刻さ
出所:IMF『世界経済見通し』、IMFスタッフ算定注:t:COVID-19=2019年第1四半期、GFC=2007年第4四半期。
世界の実質GDP: 世界金融危機 と2020年4月の世界経済見通し(指標: 四半期)
90
95
100
105
110
115
t t + 2 t + 4 t + 6 t + 8 t + 10
GFC COVID-19
t + 11
新型コロナウイルス感染症の影響:実質GDP(指標)
85
90
95
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105
110
115
120
19Q1 20Q1 21Q1
AE: Apr. 2020 WEO AE: Jan. 2020 WEOEM: Apr. 2020 WEO EM: Jan. 2020 WEO
21Q4
AE:2020年4月世界経済見通し
EM:2020年4月世界経済見通し
AE:2020年1月世界経済見通し
EM:2020年1月世界経済見通し
アジアの詳細分析:国別
成長予測:新興市場と発展途上国(前年比、パーセント)
出所:IMF『世界経済見通し』注:2020年4月世界経済見通しに基づく予測。
インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー モンゴル ネパール フィリピン スリランカ タイ ベトナムバングラデシュ ブルネイ カンボジア
2019 5.0 4.7 4.3 6.5 5.1 7.1 5.9 2.3 2.4 7.0 7.9 3.9 7.0
2020 0.5 0.7 -1.7 1.8 -1.0 2.5 0.6 -0.5 -6.7 2.7 2.0 1.3 -1.6
2020年1月からの変化
-4.4 -5.8 -6.2 -4.5 -6.4 -3.8 -5.7 -4.0 -9.2 -3.8 -5.4 -3.4 -8.4
2021 8.2 5.6 9.0 7.5 8.0 5.0 7.6 4.2 6.1 7.0 9.5 3.5 6.1
2020年1月からの変化
3.2 -1.1 4.1 1.5 2.9 -0.8 1.2 -0.1 2.6 0.5 2.2 -0.1 0.6
18
アジアの詳細分析:国別
成長予測:太平洋島嶼国とその他の小規模国(前年比、パーセント)
出所:IMF『世界経済見通し』注:2020年4月世界経済見通しに基づく予測。
2021 2.9 7.0 2.2 13.2 3.2 1.4 1.3 14.4 2.9 0.5 3.8 3.8 1.2 3.5 4.9
2020年1月からの変化
-3.0 3.8 0.2 7.7 1.2 0.7 0.0 12.2 0.4 -1.7 1.1 -1.0 -1.7 -0.7 2.1
ブータンフィジ
ーキリバス モルディブ
マーシャル諸島 ミクロネシア ナウル パラオ
パプアニューギニ
ア サモアソロモン諸
島東ティモー
ル トンガ ツバル バヌアツ
2019 5.3 0.5 2.3 5.7 2.4 1.2 1.0 0.5 5.0 3.5 1.2 3.1 -0.1 6.0 2.9
2020 2.7 -5.8 0.0 -8.1 -0.2 -0.4 -1.7 -11.9 -1.0 -3.7 -2.1 -3.0 -1.2 -1.0 -3.3
2020年1月からの変化
-4.5 -8.8 -2.3 -14.1 -2.5 -1.2 -2.4 -13.7 -3.6 -8.1 -5.0 -8.0 -4.9 -5.4 -6.4
19
アジアの詳細分析:下方修正は新型コロナウイルス感染症と世界的需要減が原因
-3.4 -3.9 -3.9 -4.4 -4.8 -4.8 -5.0-5.7 -5.9 -6.2
-9.0 -9.2-9.9
-12
-10
-8
-6
-4
-2
0
2
4
6
KOR IND VNM IDN CHN SGP HKG PHL JPN MYS AUS THL NZL
Coronavirus Impact External Demand Impact Other Revisions Policy offset Net Impactコロナウイルスの影響
外需の影響 その他の修正 政策対応による相殺
Net Impact
KOR インドベトナム
インドネシア韓国 中国 香港
シンガポール
フィリピン 日本
マレーシア
オーストラリア タイ
ニュージーランド
最終的な影響
2020年成長予測の修正(1月からの変化)(パーセントポイント)
出所:IMF『世界経済見通し』、スタッフ算定注:インドの数値は会計年度ベース。コロナウイルスの影響は、国内の感染拡大防止措置と社会的距離の確保による影響を意味する。外需の影響には、旅行や貿易の阻害、金融市場からの波及効果が含まれる。その他の修正には、一次産品価格の変化による影響が含まれる。
20
アジアの詳細分析: 成長率低下は世界金融危機時よりも急激
-10.0
-8.0
-6.0
-4.0
-2.0
0.0
2.0
4.0
6.0
World Asia China Japan India Korea AUS & NZL ASEAN APD SmallStates
2019-20 2008-09
世界アジア 中国 日本 インド 韓国
オーストラリア・ニュージーランド APD Small
States
アジア太平洋小規模国
成長率低下の比較:現在と世界金融危機(成長率のパーセントポイント差; 2020年-2019年、2009年-2008年)
出所: IMF 『世界経済見通し』 、スタッフ算定注:インドの数値は会計年度ベース。 21
アジアの詳細分析: 一方で、より力強い回復を遂げる可能性がある
0
2
4
6
8
10
12
14
World Asia China Japan India Korea AUS & NZL ASEAN APD SmallStates
2009-2010 2020-2021
世界 アジア 中国 日本 韓国オーストラリア・ニュージーランド
アジア太平洋小規模国
出所: IMF『世界経済見通し』 、スタッフ算定
注:インドの数値は会計年度ベース。
回復後の比較:世界金融危機と新型コロナウイルス感染症流行(成長率のパーセントポイント差; 2021年-2020年、2010年-2009年)
22
インド
• 新型コロナウイルス感染症• …
概要
近の動向近の動向
見通し見通し
リスクリスク
政策政策
23
新型コロナウイルス感染症:ベースラインよりさらに悪い3つのシナリオ
シナリオ 1 ベースラインシナリオよりも、2020年の流行が約50%長期化。
シナリオ 2 2021年に流行の第2波が発生(ただし第1波よりも弱い)
シナリオ 3 2020年に流行が長期化し(上記のとおり)、かつ2021年に流行の第2波。
波及経路:感染拡大防止措置、金融環境のタイト化、政策対応、政策で相殺できない危機の爪痕。
24
シナリオの仮定の詳細
2020年の流行が長期化
• 流行がベースラインよりも約50%長く継続
• 金融環境のタイト化:ソブリン債の平均リスクプレミアムが新興市場で+25 bp、社債の平均リスクプレミアムが新興国で+75 bp、先進国で+50 bp
• 財政・金融政策の対応を強化
• 先進国と新興市場のいずれでも、より深刻な危機の爪痕
2021年に新たな流行
• ベースラインの約3分の2程度の規模で流行の第2波が発生• 金融市場環境のタイト化は上記シナリオ1の2倍• 危機の爪痕はシナリオ1の約2倍
2020年の流行が長期化
かつ2021年に
新たな流行
• 金融環境のタイト化がさらに50%増加• 流行の第2波による危機の爪痕が50%増加
25
新型コロナウイルスの悪化シナリオ: GDPと石油価格への影響(ベースラインからの乖離(パーセント))
‐8
‐6
‐4
‐2
0
2019 20 21 22 23 24
世界の実質GDP
(パーセント)
Longer outbreak in 2020
New outbreak in 2021
Longer outbreak in 2020 plus new outbreak in 2021‐20
‐15
‐10
‐5
0
2019 20 21 22 23 24
実質原油価格
(パーセント)
‐8
‐6
‐4
‐2
0
2019 20 21 22 23 24
先進国の実質GDP
(パーセント)
‐8
‐6
‐4
‐2
0
2019 20 21 22 23 24
新興国の実質GDP
(パーセント)
2020年の流行が長期化
2021年に新たな流行
2020年の流行が長期化+2021年に新たな流行
26
新型コロナの悪化シナリオ:財政への影響(ベースラインからの乖離)
0
5
10
15
20
2019 20 21 22 23 24
先進国政府支出/GDP
(パーセントポイント)
Longer outbreak in 2020
New outbreak in 2021
Longer outbreak in 2020plus new outbreak in2021
0
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2019 20 21 22 23 24
新興国政府支出/GDP
(パーセントポイント)
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2019 20 21 22 23 24
先進国政府債務/GDP
(パーセントポイント)
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2019 20 21 22 23 24
新興国政府債務/GDP
(パーセントポイント)
2020年の流行が長期化
2021年に新たな流行
2020年の流行が長期化+2021年に新たな流行
27
• …• 金融リスク
概要
近の動向近の動向
見通し見通し
リスクリスク
政策政策
28
部門別のグローバル金融の脆弱性
資産運用会社が低イールド環境下でリスクテイクを増やしている一方、企業・政府部門の脆弱性が高まっている(世界の非金融部門の債務が記録的な高水準となっているため)。
金融システム上重要な国・地域において脆弱性が高まっている部門別割合(脆弱性が中程度または高いと分類された国・地域のGDP比率[銀行、資産運用会社、その他の金融機関、
保険会社に関しては資産の対GDP比率]、カッコ内は脆弱な国の数)
29
0%
20%
40%
60%
80%
100%
April 2020 GFSRGlobal financial crisis
より高い脆弱性
政府(10)
非金融企業部門(14)
家計(14)
銀行(9)
保険会社(9)
資産運用会社(6)
その他の金融機関(12)
国際金融安定性報告書(2020年4月)
世界金融危機
0
5
10
15
20
25
30
35
202530354045505560
2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
対税収利息比率(右軸)
対GDP債務比率
一般政府債務残高対GDP比率、支払利息の対税収比率、2007年~2020年(パーセント)
1. 先進国2. 新興国、中所得国 3. 低所得発展途上国
0
5
10
15
20
20253035404550556065
2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
対税収利息比率(右軸)
対GDP債務比率
出所:IMF 『世界経済見通し』データベース注:利息の対税収比率は、所得グループ内の諸国の加重平均。2020年における低所得発展途上国の対税収利息比率の上昇は、ナイジェリアやザンビアなど、比率の大幅な上昇が見込まれる複数の国が主な要因となっている。
政府:公的債務は引き続き脆弱
0
5
10
15
20
405060708090
100110120130
2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
対税収利息比率(右軸)
対GDP債務比率
30
2020年の総資金調達ニーズ(GDP比)
そして、複数の国が相当規模の総資金調達ニーズを抱える
05101520253035404550
JPN
USA ITA
ESP
CAN
BEL
FRA
PRT
GBR FIN
AUT
IRL
AUS
NLD ISL
DEU
DNK
SWE
SVK
NZL
KOR
BRA
UKR
HUN
ROU
TUR
POL
MEX IND
MYS PER
THA
PHL
IDN
RUS
COL
Maturing debt Budget deficit
先進国 新興国、中所得国
BRA
UKR
H
UN
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POL
MEX
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D
MYS
PE
R
THA
PHL
IDN
R
US
CO
L
財政赤字満期償還
出所: Bloomberg Finance L.P.、IMF 『世界経済見通し』データベース、IMFスタッフ算定
日本
米国
イタ
リア
スペ
イン
カナ
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ベル
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ンス
ポル
トガ
ル
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オー
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リア
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ンド
オー
スト
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ア
オラ
ンダ
アイ
スラ
ンド
ドイ
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マー
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デン
スロ
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ア
ニュ
ージ
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ンド
韓国
ブラ
ジル
ウク
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ハン
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マニ
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ド
メキ
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ド
マレ
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ー
タイ
フィ
リピ
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イン
ドネ
シア
ロシ
ア
コロ
ンビ
ア
31
米国ハイイールド債のスプレッド(ベーシスポイント)
コーポレートクレジット市場のスプレッドは、世界金融危機の半分のレベルまで急激に拡大
S&P 米国投機的格付けのデフォルト率(発行体の割合、パーセント)
投機的格付け企業のデフォルト予測は不況時のレベルまで予測を修正
非金融企業:社債市場では信用リスクが急上昇
0
2
4
6
8
10
12
14
16
82 85 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 18
Recession Actual default rateBase forecast Pessimistic case
ユーロハイイールド債のスプレッド(ベーシスポイント)
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
Jan
08Ja
n 09
Jan
10Ja
n 11
Jan
12Ja
n 13
Jan
14Ja
n 15
Jan
16Ja
n 17
Jan
18Ja
n 19
Jan
20Ja
n 20
Feb
20Fe
b 20
Mar
20
Mar
20
Apr 2
0US High-Yield Air travel Energy
32
米国ハイイールド 航空 エネルギー 景気後退
基本予測 悲観的ケース
実際のデフォルト率
1月8日
1月9日
1月10
日
1月11
日
1月12
日
1月13
日
1月14
日
1月15
日
1月16
日
1月17
日
1月18
日
1月19
日
1月20
日
1月20
日
2月20
日
2月20
日
3月20
日
3月20
日
4月20
日
家計:アジアにおけるいくつかの国は、家計債務が依然として相対的に高い
出所:国際決済銀行33
0
20
40
60
80
100
120
140
Indo
nesia
Kore
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Mal
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Thai
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Aust
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Chin
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Japa
n
New
Zea
land
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apor
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ries
AEs
2008-Q4 2018-Q4 2019-Q3
家計債務(GDP比)
イン
ドネ
シア
韓国
マレ
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オー
スト
ラリ
ア
中国
日本
ニュ
ージ
ーラ
ンド
シン
ガポ
ール
新興
国
すべ
ての
国
先進
国
イン
ド
香港
機関投資家:圧力にさらされている
1日の債券ファンドフロー(資産の割合、パーセント)
債券ファンドはアウトフローの急増に直面...
保険ポートフォリオの推定損益(パーセント、年初来)
...これは従来の「 後の買い手」も圧力下にあるため
-10
-8
-6
-4
-2
0
2
4
6
1 Ja
n
8 Ja
n
15 J
an
22 J
an
29 J
an
5 Fe
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12 F
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19 F
eb
26 F
eb
4 M
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11 M
ar
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ar
25 M
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1 A
pr
8 A
pr
15 A
pr
US insurers Euro area insurers
‐3
‐2
‐1
0
1
Jan‐19
Apr‐19
Jul‐19
Oct‐19
Jan‐20
Apr‐20
Jan‐19
Apr‐19
Jul‐19
Oct‐19
Jan‐20
Apr‐20
Interdecile range Asset‐weighted average
Corporate bond funds
‐3
‐2
‐1
0
1Jan‐19
Apr‐19
Jul‐19
Oct‐19
Jan‐20
Apr‐20
Municipal bondfunds
HY bond funds
34
1月1日
1月8日
1月15
日
1月22
日
1月29
日
2月5日
2月12
日
2月19
日
2月26
日
3月4日
3月11
日
3月18
日
3月25
日
4月1日
4月8日
4月15
日
地方債
ファン
ド
社債
ファンド
地方債
ファンドハイイールド債
ファンド
資産加重平均十分位範囲
米国の保険会社 欧州圏の保険会社
1月19
日
4月19
日
7月19
日
10月
19日
1月20
日
4月20
日
1月19
日
4月19
日
7月19
日
10月
19日
1月20
日
4月20
日
1月19
日
4月19
日
7月19
日
10月
19日
1月20
日
4月20
日
新興国の官民セクター債務(GDP比)
現在、新興国市場のレバレッジは大きく拡大している…
新興国は現在、世界金融危機の時よりも脆弱
債務構成(GDP比;対外負債残高)
…そして、海外ポートフォリオフローへの依存度が高まっている
0
50
100
150
200
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300
0
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75
100
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1996 98 2000 02 04 06 08 10 12 14 16 18
Interquartile range for emerging market debt
China (right scale)Median emerging
market debt
0
5
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15
20
25
2000 02 04 06 08 10 12 14 16 18
Emerging markets interquartile rangeFrontier markets interquartile range
Median
35
フロンティア市場の四分位範囲
新興国の四分位範囲
Median
新興国債務の中央値
中国(右軸)
新興国債務の四分位範囲
中央値
概要
近の動向近の動向
見通し見通し
リスクリスク
政策政策
36
政策提言
感染拡大防止措置に伴う経済的影響を緩和するための措置が必要:• 資金の割り当てを増やして医療システムを支え、財源に余裕がない場合は医療支出を優先する• 大規模でタイムリー、かつ対象を絞った財政・金融セクターの措置により、影響を受けた人々や企業を保護する
• 現金給付、賃金補助、失業手当、信用保証• 監督当局:銀行融資条件の慎重かつ一時的な調整を奨励• 財政的制約がある新興市場・発展途上国:重要な公共サービス、社会保障支出を優先する
• 金融刺激策や流動性ファシリティにより、システミックストレスを軽減し、コンフィデンスを高め、ショックの伝播を抑制する
• 新興市場:実行可能な場合、為替レートを柔軟にして外的ショックを吸収する。場合により、為替介入や一時的な資本フロー管理が必要になる可能性がある
• 企業活動の正常化後に回復を促す:各国の財政的制約に合わせた、協調した財政刺激策
感染拡大防止措置に伴う経済的影響を緩和するための措置が必要:• 資金の割り当てを増やして医療システムを支え、財源に余裕がない場合は医療支出を優先する• 大規模でタイムリー、かつ対象を絞った財政・金融セクターの措置により、影響を受けた人々や企業を保護する
• 現金給付、賃金補助、失業手当、信用保証• 監督当局:銀行融資条件の慎重かつ一時的な調整を奨励• 財政的制約がある新興市場・発展途上国:重要な公共サービス、社会保障支出を優先する
• 金融刺激策や流動性ファシリティにより、システミックストレスを軽減し、コンフィデンスを高め、ショックの伝播を抑制する
• 新興市場:実行可能な場合、為替レートを柔軟にして外的ショックを吸収する。場合により、為替介入や一時的な資本フロー管理が必要になる可能性がある
• 企業活動の正常化後に回復を促す:各国の財政的制約に合わせた、協調した財政刺激策
人命を救うこと、そして適切な感染拡大防止措置を実施して医療システムの崩壊を避けることが優先事項。パンデミックを制御するには国際的に協調した行動が必要である。人命を救うこと、そして適切な感染拡大防止措置を実施して医療システムの崩壊を避けることが優先事項。パンデミックを制御するには国際的に協調した行動が必要である。
国際協調が不可欠:• ワクチンと検査に関して国際協調が必要
• 医療制度が脆弱な国、財政的苦境に陥っている国を支援する:専門知識・人材、無償援助による医療機器の支援、譲許的条件による融資
• 二国間の債権国はIDA適格国に関して債務の支払い免除を検討すべき• 二国間・多国間の中央銀行のスワップラインをより広範な国々に提供する• IMFは加盟国に対して積極的に支援を行っている
国際協調が不可欠:• ワクチンと検査に関して国際協調が必要
• 医療制度が脆弱な国、財政的苦境に陥っている国を支援する:専門知識・人材、無償援助による医療機器の支援、譲許的条件による融資
• 二国間の債権国はIDA適格国に関して債務の支払い免除を検討すべき• 二国間・多国間の中央銀行のスワップラインをより広範な国々に提供する• IMFは加盟国に対して積極的に支援を行っている 37
Thank you!
IMF Regional Office for Asia and the Pacific