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国 際 金 融 論(2019年度前期)
京都大学公共政策大学院京都大学大学院経済学研究科
岩本 武和
・テキスト:岩本武和『国際経済学 国際金融編』ミネルヴァ書房,2012年(2017年第2刷、2019年第3刷)
・講義資料:http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~iwamoto/1
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岩本武和『国際経済学 国際金融編』ミネルヴァ書房, 2012年(2017年第2刷、2019年第3刷)
序章 国際金融の考え方Part 1 国際収支と外国為替市場
Ⅰ 国際収支(BOP)と国際投資ポジション(IIP)Ⅱ 外国為替市場と為替レート
Part 2 為替レート・モデルⅢ 金利平価(UIP)とアセット・アプローチⅣ 購買力平価(PPP)とマネタリー・アプローチⅤ ポートフォリオ・バランス・モデル
Part 3 国際収支モデルⅥ 対外インバランスの調整Ⅶ マンデル=フレミング・モデルⅧ 資本移動の動学モデル
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4月11日 イントロダクション
4月18日 Ⅰ 国際収支と国際投資ポジション
4月25日 同上(続)5月2日 Ⅱ 外国為替市場と為替レート
5月9日 同上(続)5月16日 Ⅲ 金利平価とアセット・アプローチ
5月23日 Ⅳ 購買力平価とマネタリー・アプローチ
5月30日 同上(続)6月13日 Ⅴ ポートフォリオ・バランス・モデル
6月20日 Ⅵ 対外インバランスの調整
6月27日 Ⅶ マンデル=フレミング・モデル
7月4日 Ⅷ 資本移動の動学モデル
7月11日 同上(続)7月18日 まとめ
7月25日? 前期試験
参考文献• 岩本武和『国際経済学 国際金融編』ミネルヴァ書房, 2012年10月.• 高木信二『入門国際金融 [第4版]』日本評論社,2011年.• 藤井英次『国際金融論[第2版]』新世社, 2013年.• 神田眞人編『図説 国際金融〈2015‐2016年版〉』財経詳報社,2015年.• 小川英二・岡野衛士『国際金融』2016年、東洋経済新報社.• 永易淳・江阪太郎他『はじめて学ぶ国際金融論』2015年, 有斐閣.• 飯島寛之・五百旗頭真吾・佐藤秀樹・菅原歩『身近に感じる国際金融』 2017年,有斐閣.• 佐久間浩司『国際金融の世界』日経文庫,2015年.• 国際通貨研究所編 『外国為替の知識〈第4版〉』 日経文庫, 2018年• Paul R. Krugman, Maurice Obstfeld and Marc Melitz, International Economics, 11th.
Edition, Prentice Hall, 2018 (第8版の国際マクロ経済学の部分の翻訳は、山本章子訳『クルーグマンの国際経済学(下)金融編』ピアソン桐原,2011年).
• Robert C. Feenstra and Alan M. Taylor, International Economics, 4th. Edition, Worth Publishers, 2016 (国際マクロ経済学の部分は独立で出版されている。Robert C. Feenstra and Alan M. Taylor, International Macroeconomics, 4nd. edition, Worth Pubisher, 2016). 4
序章(Introduction)1. 国際経済学の考え方:裁定と一物一価の法則
(Arbitrage and the Law of One Price [LOP])2. 裁定と投機 (Speculation)
3. 国際金融の考え方:裁定と一物一価(実質為替レート)4. 金融危機を考える
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経済の国際化• 国境の壁が低くなり、「モノ・カネ・ヒト」の「自由な移動」が可能になること。
1.モノ → 価格差→国際貿易⇒貿易の自由化⇒財市場の統合
2.カネ → 金利差→国際金融(国際資本移動)⇒資本の自由化⇒金融・資本市場の統合
3.ヒト → 所得差→国際労働力移動⇒労働力の自由移動⇒労働市場の統合??
・「モノ・カネ・ヒト」の全てが、安い所から高い所へ移動する。
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裁定の数値例
• 日本:100万円→自動車→アメリカ:1万ドル→コメ2t→日本:200万円• アメリカ:5000ドル→コメ1t→日本:100万円→自動車→アメリカ1万ドル
• こうした取引によって利鞘を稼ぐことができるのは、日本とアメリカの間で、自動車とコメの相対価格に差があるからである。
• 日本 :自動車1台=コメ1トン(コメに対する自動車の相対価格は1)• アメリカ:自動車1台=コメ2トン(コメに対する自動車の相対価格は2)
日 本 アメリカ
自動車(1台) 100万円 1万ドル
コ メ(1 t) 100万円 5,000ドル
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一物一価の法則(Low of One Price: LOP)
日 本 アメリカ
自動車(1台) 120万円 9000ドル
コ メ(1 t) 80万円 6000ドル
日本でもアメリカでも、
自動車3台=コメ2トン(コメに対する自動車の相対価格は1.5)となり、価格差は消滅する。
裁定取引の結果、地域間で一物一価へ収束していく。
国際的な裁定取引=国際貿易によって利鞘を稼ぐ機会も消滅する。
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裁定(arbitrage)地域間の価格差を利用して利ざやを稼ぐ行為
安い所で買って、高い所で売ること
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裁定のメカニズム日 本
• アメリカへ自動車を輸出⇒自動車の需要が増加⇒自動車の価格が上昇
• アメリカからコメを輸入⇒コメの供給が増加⇒コメの価格が下落
アメリカ• 日本へコメを輸出
⇒コメの需要が増加⇒コメの価格が上昇• 日本から自動車を輸入
⇒自動車の供給が増加⇒自動車の価格は下落
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裁定取引の例• 新聞のチラシで、キャベツの値段が、Aスーパーの方がBスーパーより安いという情報
を知れば、誰もがAスーパーで買い、Bスーパーのキャベツも安くなるといったように、私達は意識せずに裁定取引をしている。もちろん、現実には情報が不完全だったり、取引コストがかかったり等の理由により、このようにはならない。
• 外国為替市場(為替裁定取引)東京市場で$1=¥120、NY市場で$1=¥130
¥120→$1→¥130
ドルが安い東京市場で¥120で$1を買い、この$1をNY市場で¥130円で売れば、$1当たり¥10儲かる。
その結果、東京でドル買い、NYでドル売りという裁定取引が発生し、東京でもNYでも仮に$1=¥125という一物一価が成立する。
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理論と現実(事実認識と価値判断)
• 現実には、こうしたことは、必ずしも成り立たない。だから、経済学は抽象的な理論にすぎない? 現実には、
①国境にはさまざまな障壁が存在する②国内においても需要と供給によって価格メカニズム(市場原理)が 働くとは
限らないし、価格調整には時間がかかる(「長期」の理論)。
• 重要なことは、「裁定取引によって成立する一物一価の世界」が、経済学では望ましいと考えていることである。
• つまり「望ましい」という価値判断(理念)がある。このことは「一物一価が成立する世界」と、「内外価格差が存在する世界」を比べてみれば分かるだろう。自由貿易によって内外価格差が消滅することは「望ましい」!
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理論と現実 cont.
• 経済学では、理論と現実が異なるとき、理論が間違っている場合も多い。その場合は、現実に合わせて理論を修正しなければならない。
• しかし、現実が間違っている場合は、現実を理論(理念)に合わせて変革していかなければならない。
• 大切なことは、理論は価値判断に基づいており、その価値判断を見抜くこと、またその価値判断が本当に望ましいのか、問うてみることである。
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理論と現実 cont.• 「理論の正しさは経験からは演繹できない。いや、経験から演繹できるような理論
は、真の理論とはなりえない。真の理論とは日常の経験と対立し、世の常識を逆なでする。それだからこそ、それはそれまで見えなかった真理をひとびとの前に照らしだす。アダム・スミスの〈見えざる手〉の理論ほど、日常の経験と対立し、世の常識を逆なでする理論もないだろう。
• ・・・それゆえ、世間にひろく流布している経済学批判の多くは、まったくの的外れである。それらはたんにひとびとの日常的な経験をそのままくり返すだけの批判でしかない。
• ・・・いわく、現実の市場における価格は経済学が想定しているほど自由には上下しない。いわく、現実の市場における資本や労働は経済学が想定しているほどには自由には移動しえない。」(岩井克人『21世紀の資本主義論』ちくま学術文庫,2006年,22頁-23頁)
要素価格の均等化(ヘクシャー=オリーン・モデル)
日本(資本豊富国) アメリカ(労働豊富国)
自動車(資本集約財) 利子が安い [↗] 利子が高い [↘]
コメ(労働集約財) 賃金が高い [↘] 賃金が安い [↗]
1.①日本(資本豊富国)は、相対的に利子(資本の価格)が安いので、自動車(資本集約財)の価格が相対的安い(自動車に比較優位)。
②アメリカ(労働豊富国)は、相対的に賃金(労働の価格)が安いので、コメ(労働集約財)の価格が相対的安い(コメに比較優位)。2.日本が自動車を輸出し、アメリカがコメを輸入することで、
①日本では自動車の価格が上昇し、コメの価格が下落する。そのため、自動車生産で集約的に使用される生産要素=利子が上昇し、コメ生産で集約的に使用される生産要素=賃金は下落する。
②アメリカでは自動車の価格が下落し、コメの価格が上昇する。そのため、自動車生産で集約的に使用される生産要素=利子が下落し、コメ生産で集約的に使用される生産要素=賃金は上昇する。
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投機(speculation)
「異時点間の価格差を利用して利ざやを稼ぐ行為」
=「安い時に買って、高い時に売ること」
→「異時点間の価格の乱高下が平準化される」したがって、「投機」は(「裁定」と同様に)「望ましい」?
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為替投機の例
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あるトレーダーの証言• 「市場参加者の立場からすれば、資本自由化が望ましいという
ことになるが、実際には市場によるディシプリンの効果にかなり疑問を感じている。機関投資家の行動パターンはお互い似ているため、ある国が良いという話があればカネが集中し、集中すれば資産価格が上がって、さらにカネが集まる。逆に何かのきっかけでカネが流出しはじめると、いっせいに引き揚げる。
• そのため、市場ではいわゆる順バリ投資が多くなり、逆バリ投資は少なく、市場の安定性は損なわれがちだ。市場が安定的に動くためには多様なプレイヤーが必要であり、いわゆる「市場の深み」ないと自由化のメリットよりもデメリットの方が大きいと思う。」。
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空売り(Short sale)• 高い時に売って(空売りして)、安くなって買う(買い戻す)行為
• 一般に株式や為替を売るためには、予め買っておかなければならない(ロング・ポジション)。
• しかし、「空売り」の場合は、売るための株式や為替を持っていない(ショート・ポジション)。
• それを、証券会社や金融機関から借り入れ(いわゆる信用取引)、それを空売りし、値下がりした時点で買い戻し、それを返却する。
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空売りの例• 投資家は証券会社から株式を借り、それを市場で100円で売る。投
資家は株式を売った代金100円を得る。
• 後日、株価が下がり、市場で同じ数量の株式を代金で90円で買い、株式を手に入れる。
• この90円で買った株式を証券会社に返却する。差額の10円が投資家の手元に残り、これが投資家の利益になる。
• 実際には、投資家は売買に関する手数料のほか、株を借りたことによる賃貸料を証券会社に支払う。
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空売り cont.
• 空売りによる利益は、企業倒産などによる株価が0円まで下落した場合に最大となる。[⇒山一証券の倒産(1997)がこのケース]
• ただし、空売りした株式の価格が、上昇した場合、投資家は証券会社に株式を返却しなくてはならないので、空売りした時よりも高い価格で株式を買い戻さなくてはならない。この場合には投資家は損をすることになる。
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アジア通貨危機(1997)におけるバーツの空売り
• バーツは高すぎ(1ドル=25バーツ)、近い将来、バーツの切り下げ予想したヘッジファンドなどの投機家は、バーツの大量の空売りを仕掛けた。
• タイ中央銀行は必死でバーツを買い支えたが、外貨準備が尽き果てて、バーツは大きく下落した(1ドル=40バーツ)。
• 安くなった時点で、投機家はバーツを買い戻し、大儲けをした。
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2001・9・11と空売り
• ハイジャックを企て、航空会社に損害を与えれば、その会社の株価を下げることができる。
• 「ある航空会社の株式を、株価の高いときに空売り」⇒「ハイジャックをして株価を下げる」⇒「実際に株価が下がってときに、株式を買い戻し」
(高いときに[空]売り、安いときに買う[買い戻す])。• 9・11のテロリストたちが、空売りを利用して大幅な差益を得たと
考ない方が困難である(もちろん証明はできない単なる推測である)。
Rajan, Raghuram, Fault Lines, Princeton UP, 2010(伏見威蕃・月沢李歌子『フォールト・ラインズ「大断層」が金融危機を再び招く』新潮社,2011)
• 経済危機にまで発展する金融危機は、自然現象にたとえれば、巨大地震(メガクエイク)のようなものだ。
• 地震とは、地球の表面を覆う巨大な岩盤(プレート)に長年蓄積された歪(ひず)みが限界に達したとき、巨大なエネルギーとなって、断層を動かし岩盤を破壊するときに生じる振動のことである。
• 4 枚のプレートの境界に位置している日本は、岩盤中に大きな歪みが蓄えられるために、多くの地震が発生する。
• 経済現象である金融危機は、市場の歪(ゆが)みや価格の歪みが一定の限界を超えたとき、巨大なエネルギーとなって、その歪みを是正する(不均衡を調整する)ときに発生する。体に感じないような地震は日常的に頻発しているように、ほとんど全ての経済取引は、歪みの是正(不均衡の調整)を動機として行われている。
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『ハゲタカ』(NHK, 2007年)• 金融危機後の不良債権処理に苦しむ日本。投資ファンドの日本法人代表取締役に任
命された鷲津政彦は、本社から「日本を買い叩け(Buy Japan out)!」というミッションを受け、部下たちにこう告げる。
•「目標はただ一つ。安く買って高く売ること。そして腐ったこの国を買い叩く」。
• 鷲津が最初のターゲットにしたのは、巨額の不良債権を抱えた日本の都市銀行。同行が抱える額面総額1023億円の計53件の不良債権を、鷲津は93億円で買い叩き、そこに含まれる物件を高く売り飛ばすことによって、目標利回りの30%を達成。
• 他方で、安く買い叩かれた物件(ドラマではある老舗旅館)は、新たな債権者への返済が不可能となった経営者は自殺に追い込まれた(実体経済への痛み)。
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裁定と一物一価
自動車価格 名目為替レート 実質為替レート
日本 200万円(↗225万円) 1ドル=100円
(↘90円)1.5(↘1)
アメリカ 3万ドル(↘2.5万ドル)
200万円⇒日本製自動車⇒3万ドル⇒300万円
価格差
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実質為替レート(自国財に対する外国財の相対価格)
自国通貨で測った外国財の価格
自国通貨で測った実質為替レート
自国財の価格
3 100( / ) 300= 1.5
200 200
アメリカ製自動車 万㌦ 円㌦ 万円
日本製自動車 万円 万円
2.5 90( / ) 225= 1
225 225
アメリカ製自動車 万㌦ 円㌦ 万円
日本製自動車 万円 万円
一物一価になったときの名目為替レート=購買力平価(PPP)
)/(905.2
225)( ㌦円万㌦
万円購買力平価 PPP
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市場メカニズムは働くか?• 裁定取引によって実際に一物一価が成立するためには、次のような市場
メカニズムが働かなければならない。日米間で一物一価が成立するためには、以下の①と②のメカニズムが作用する必要がある。
① 日米の自動車市場(財市場)において価格が伸縮的でなければならない。すなわち、需要が増加すれば価格が上昇し、供給が増加すると価格が下落するといった市場メカニズム(価格メカニズム)が有効に作用しなければならない。
② また、外国為替市場においても為替レートが伸縮的でなければならない。すなわち、ドル買いが増えればドル高になり、ドル売りが増えればドル安になるといった変動相場制が有効に作用しなければならない。
①のメカニズムを働かせるためには?価格を下げるためには、
(a)労働生産性(y=Y/L)を上げるか(b)コストとりわけ人件費(W=wL)を下げるか
しかない (Yは生産高、Lは雇用者数、wは一人あたり賃金率)。
自動車の生産Yが全て労働という生産要素Lだけで行われているならば、
• 労働生産性(y)の上昇は技術進歩を伴わなければならないので、短期的には期待できない。
• したがってコストのうち多くを占める人件費(W)の削減しかないが、それには、賃金(w)のカットか、雇用(L)の削減かしかない。どちらにしても、アメリカ経済の実体経済への痛みを伴う。
1/
PY wL P w wL wY Y L y
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②のメカニズムを働かせるためには?• こうした痛みをともなう①の調整メカニズムを拒否すれば、②の調
整メカニズムを利用するしかない。• 日米間の自動車価格が全く変化しないくらい価格が硬直的ならば、
名目為替レートが1㌦=67円(200万円/3万㌦)へと、大きく円高に動けばよい。
• ただし、1㌦=100円から75円へといった大幅な円高には、為替リスクが伴う。つまり同じ3万㌦の自動車を販売しても、円建ての受取額が300万円から200万円へと大きく減少してしまう。
• 同じ財を輸出して、受取額が変動するというのも、日本経済の実体経済への痛みである。
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ユーロ圏の金融危機(Eurozone Crisis) [欧州債務危機(European sovereign-debt crisis)]
(1)(2)のメカニズムが全く働かなかった典型的な事例
① ユーロという共通通貨を採用しているユーロ圏諸国では、(2)のメカニズムは全く作用しない。そこでユーロ導入後、(1)のメカニズムを作用させるべく、生産性の上昇や労働市場改革を柱とした中期計画(構造改革)にユーロ圏諸国は合意した。そうしなければ、ユーロ圏内で一物一価は成立せず、大きな価格差が残存したまま共通通貨を使用することは、最適通貨圏の理論から考えても困難。
② しかし、(1)のメカニズムを有効に働かせるための構造改革に成功したのは、ドイツなどユーロ圏の一部の国に過ぎず、GIIPS諸国(ギリシャ・イタリア・アイルランド・ポルトガル・スペイン)では、この改革がほとんど進まなかった。
③ 特に労働人口の3分の1が公務員であるギリシャでは、大きな財政赤字へとつながった。財政の破綻が明らかなのに、強い通貨であるユーロ建ての国債を発行でき続けたという矛盾(ユーロ建てギリシャ国債の過大評価)によって、ギリシャ国債は売り捌かれ、国債価格が急落(利回りは急騰) 。
④ 自ら痛みを伴う構造改革ができない場合、マーケット(裁定業者)自らが市場メカニズムを作用させ、不均衡を調整。過大評価された価格差が裁定業者の利益。
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金融危機で儲けた一握りの人たち=裁定業者(arbitrager)≈投機筋?
• 市場(価格)の歪み=価格差(不均衡)
• 裁定業者は、市場(価格)の歪みを是正し(不均衡を調整)し、一物一価の世界に戻す。
• 彼らがターゲットとする市場の歪み=価格差は、過大評価されている価格・市場
⇒バブル崩壊後の日本の不良債権、タイの通貨バーツ(の空売り)、サブプライムローン、ギリシャ国債(PIIGSソブリン債)。
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長期(実質)と短期(名目)の区別
• 財市場と外国為替市場で、価格による調整メカニズムが働かなければ、裁定による一物一価は成立せず、日米間で内外価格差。
• 内外価格差がある世界よりも、一物一価になっている世界の方が望ましい⇒経済理論の多くは、市場経済は望ましいという価値判断を前提。
• 価格が伸縮的で市場メカニズムが働くケース:長期価格が硬直的で市場メカニズムが働かないケース:短期
⇒便宜的な区別